JP4233383B2 - 蒸着用ポリエステルフィルムロール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸着加工に適したポリエステルフィルムロールおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、蒸着加工を施こして磁気記録媒体、反射板、拡散板、タッチパネル、発光素子に代表される光学フィルム、食品や医薬品の包装フィルムとするのに適したポリエステルフィルムを円筒状に巻きとったフィルムロールおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、力学特性、耐熱性、耐久性、柔軟性、表面特性等の性能に優れているので、ビデオテープ、オーディオテープ、メモリーテープ、磁気シート、磁気ディスク等の磁気記録媒体に好適に用いられている。また光学用としても同様にこれらの特性を生かし、液晶ディスプレイ(以下LCD)用反射板、拡散板、タッチパネル用基材、有機エレクトロルミネッセンス用基材として好適に用いられる。
【0003】
これらの用途に用いる場合、ポリエステルフィルムはその表面に蒸着膜が形成される。蒸着膜を形成する工程は真空条件下で行う必要があり、蒸着加工が施されるポリエステルフィルムは、円筒状に巻かれたフィルムロールの状態で真空条件下にさらされる。すなわち、フィルムロールの状態で真空引きされるのである。その際に、フィルムロールの層間に存在する空気量が多過ぎたり、フィルムロールの層間に存在する空気が過度に流出しやすいと、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルムにしわやずれが生じたりする。一方、フィルムロールの層間に存在する空気量が過度に少なかったり、フィルムロールの層間に存在する空気が過度に流出しにくいと、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルム同士が密着してしまう。
【0004】
このような真空下における問題を解決するため、例えば、特開平9−277472号公報(特許文献1)、特開2001−243615号公報(特許文献2)、特開2002−128916号公報(特許文献3)にポリエステルフィルム表面の粗さや空気洩れ指数、ロール体の空気含有比率、表面形成に使用する粒子が提案されている。しかしながら、近年のポリエステルフィルムの表面のさらなる平坦化、例えば表面粗さを5nm以下にするといった極めて厳しい要求に応えようとすると、上記の提案された方法を採用しても、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルムにしわやずれが生じることが判明した。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−277472号公報
【特許文献2】
特開2001−243615号公報
【特許文献3】
特開2002−128916号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、基材表面に蒸着加工を施す、すなわちフィルムロールを真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際に、フィルム同士が密着したり、フィルムにしわやずれが生じない、少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを巻きつけたフィルムロールおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意研究した結果、フィルムロールを真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際に、フィルムロールの表層側でしわやずれが生じていることを確認した。通常、ポリエステルフィルムを円筒状に巻取ってフィルムロールとする工程は、円筒状の巻芯にポリエステルフィルムを巻きつけて、徐々に巻取り速度をある目標速度まで加速させる巻き始め工程、目標速度で一定に巻き取る中間巻取り工程、および徐々に巻取り速度を減速させて回転しているフィルムロールを停止させる巻き終わり工程からなる。そして、本発明者らがさらに鋭意研究した結果、巻き終わり工程における減速によって、フィルムロールの層間の空気量が変化しており、それがフィルムロールの表層側で生じているしわやずれを惹起していることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
かくして、本発明によれば、少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを円筒状の巻芯に巻きつけたフィルムロールであって、
最表層のポリエステルフィルムの端部を0mおよび最内層のポリエステルフィルムの端部をXmとして、ポリエステルフィルムの0〜1000mを第1区間、1000〜2000mを第2区間、2000〜3000mを第3区間、3000〜4000mを第4区間および4000〜5000mを第5区間としたとき、
第1〜5区間のそれぞれの層間空気量は1.0%以上5.0%以下の範囲にあり、かつ隣接する区間の層間空気量の変動率が50%以下にある蒸着用ポリエステルフィルムロールが提供される。
【0009】
さらにまた、本発明のフィルムロールは、その好ましい態様として、(1)フィルムロール全体の層間空気量が1.0%以上5.0%以下の範囲にあること、(2)ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.05〜1.0μmでかつ長径/短径が1.0〜1.2の有機粒子含有すること、(3)ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、(4)ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであること、(5)ポリエステルフィルムの厚みが2〜20μmであること、(6)ポリエステルフィルムを光学用フィルムに用いること、(7)ポリエステルフィルムを包装用フィルムに用いること、および(8)ポリエステルフィルムを磁気記録媒体のベースフィルムに用いることのいずれかを具備するフィルムロールも包含するものである。
【0010】
さらにまた、本発明によれば、少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを円筒状の巻芯に、巻取速度を徐々に加速させつつ巻き取る巻き始め工程、巻取速度を一定で巻き取る中間巻き取り工程および巻取り速度を徐々に減速しつつ巻き取る巻き終わり工程からなるフィルムロールの製造方法であって、
中間巻取り工程における平均巻き取り速度が50〜200m/min、巻き終わり工程における平均減速度が10m/min2以下および巻き終わり時の接圧が、中間巻取り工程の接圧に対して、1.1〜1.8の範囲にある蒸着用フィルムロール体の製造方法も提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0012】
[ポリエステル]
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、実質的に線状であり、フィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する熱可塑性ポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とする熱可塑性ポリエステルが好ましい。
【0013】
具体的な熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを例示できる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0014】
上記ポリエステルはホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよい。コポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリオキシエチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(但し、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(但し、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などがあげられる。なお、共重合成分の量は全酸成分に対し20モル%以下、更には10モル%以下とするのが好ましい。また、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多官能化合物を共重合させることもできる。この場合ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下共重合させることが好ましい。
【0015】
ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート以外のポリエステルにおける共重合成分についても、上記の説明と同様に考えられることは容易に理解されるであろう。上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0016】
上記ポリエステルは、フィルムにしたときに優れた巻取り性や取り扱い性を発現させる、すなわち、フィルム表面を適度にあらすために、不活性粒子を含有させることが好ましい。含有させる不活性粒子としては、シリコン樹脂粒子や架橋ポリスチレン粒子などの有機粒子、球状シリカ、多孔質シリカ、炭酸カルシウム、シリカアルミナ、アルミナ、二酸化チタン、カオリンクレー、硫酸バリウム、ゼオライトのごとき無機粒子を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。なお、無機粒子のみの場合、フィルム表面にある無機粒子がロール状態で接する他のフィルム表面に窪みなどの表面欠陥を生じやすいことから、少なくとも有機粒子を含有することが好ましい。
【0017】
不活性粒子の平均粒子径は、0.05〜1.0μm、さらに0.1〜0.7μmの範囲であることが好ましく、また、不活性粒子の長径を短径で割った値(長径/短径)は1.0〜1.2の範囲にあることが好ましい。平均粒径が下限よりも小さい場合、添加しても巻取り性向上効果が乏しくなりやすい。一方、平均粒径が上限よりも大きい場合、蒸着する際の空気抜けや突起部分に蒸着抜けの問題を生じたり、添加粒子による影響でフィルム表面にうねりを生じることがある。
【0018】
無機粒子は粒径が均一であることなどの理由で天然品よりも合成品であることが好ましく、あらゆる結晶形態、硬度、比重、色の無機粒子を使用することができる。フィルムに添加する不活性粒子は上記に例示した中から選ばれた単一成分でも良く、二成分あるいは三成分以上を含む多成分でも良いが、単一成分の場合は、記述の通り、有機粒子を含有させることが好ましい。必要がある。
【0019】
[ポリエステルフィルム]
本発明におけるポリエステルフィルムは、上述のポリエステルからそれ自体公知の製膜方法によって製造でき、実用に耐えうる機械的力学特性を得られることから二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムは、溶融ポリエステルを冷却ロールでシート化した後、二軸延伸して製造することができる。二軸延伸には、逐次2軸延伸、あるいは同時2軸延伸、多段延伸法などの公知の延伸方法を用いることができる。
【0020】
具体的には、押出し口金以前で、上述のポリエステルを高精度濾過し、次いで口金より融点Tm℃〜(Tm+70)℃の温度(ただし、Tm:ポリエステルの融点)でフィルム状に押出した後、20〜90℃の冷却ロールで急冷固化して未延伸フィルムを得る。しかる後に、該未延伸フィルムを常法に従って一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで前記方向とは直角方向にTg〜(Tg+70)℃の温度において2.5〜8.0倍の倍率、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段、あるいは多段の延伸を行ってもよい。全延伸倍率は、面積延伸倍率として、通常9倍以上、好ましくは12〜42倍である。さらに引き続いて、二軸配向フィルムを(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば180〜250℃で熱固定結晶化することによって優れた寸法安定性が付与される。なお、熱固定時間は1〜60秒間が好ましい。
【0021】
また、本発明におけるポリエステルフィルムには、その少なくとも片面に塗布層を設けてもよい。塗布層の塗設は最終延伸処理を施す以前のポリエステルフィルムの表面に塗液を塗布することで行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で塗膜は乾燥される。その中で、塗布は未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されてないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0022】
上記塗布層の形成に用いられる塗液は、特に水性塗液の場合、固形分濃度が、0.2〜8.0wt%、さらに0.3〜6.0wt%であることが好ましい。そして、塗液(好ましくは水性塗液)には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば、他の界面活性剤、安定剤、分散剤、UV吸収剤、増粘剤等を添加してもよい。
【0023】
本発明におけるポリエステルフィルムは、蒸着加工後の少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下である。ポリエステルフィルムの両表面の粗さ(Ra)が5nmを超えると、磁気用途では再生した際、ヘッドとテープとのギャップ(スペースロス)が大きくなり、出力低下に繋がる。また包装用途においては蒸着層が不均一になりガスバリア性が保てなくなる。好ましいポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)は0.5〜4nmである。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層フィルムでもよいが、2つ以上の層が積層された積層フィルムであっても良い。ポリエステルフィルムが積層フィルムである場合、フィルムの少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下で、他方の表面の粗さは5〜10nm、特に5〜8nmであることがフィルムに巻き取り性と平坦性を高度に具備できることから好ましい。
【0025】
[フィルムロール]
本発明のフィルムロールは、上述の通り、少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを、円筒状の巻芯に巻きつけたものである。フィルムロールの巻き長は、少なくとも5000mであり、好ましくは1〜3万mである。
【0026】
本発明のフィルムロールは、最表層のポリエステルフィルムの端部を0mおよび最内層のポリエステルフィルムの端部をXmとして、ポリエステルフィルムの0〜1000mを第1区間、1000〜2000mを第2区間、2000〜3000mを第3区間、3000〜4000mを第4区間および4000〜5000mを第5区間としたとき、第1〜5区間のそれぞれの層間空気量は1.0%以上5.0%以下の範囲にあり、かつ隣接する区間の層間空気量の変動率が50%以下である。第1〜5区間のそれぞれの層間空気量が、いずれかでも上限を超えると、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルムにしわやずれが生じたりする。一方、第1〜5区間のそれぞれの層間空気量が、いずれかでも下限を下回ると、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルム同士が密着してしまう。好ましい第1〜5区間のそれぞれの層間空気量は、1.0〜4.0%、さらに1.0〜3.0%である。また、隣接する区間の層間空気量の比が、本発明の範囲を外れると、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルムにしわやずれが生じたりする。好ましい隣接する区間の層間空気量の変動率が、40%以下、さらに30%以下である。
【0027】
ところで、本発明のフィルムロールは、全体としての層間空気量が、1〜8%の範囲であることが好ましい。フィルムロール全体の層間空気量が上限を超えると、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルムにしわやずれが生じることがある。一方、フィルムロール全体の層間空気量が下限を下回ると、真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際にフィルム同士が密着してしまうことがある。好ましいフィルムロール全体の層間空気量は、1.0〜6.0%、さらに1.0〜3.0%である。
【0028】
[フィルムロールの製造方法]
本発明の蒸着用フィルムロールは、例えばもう一つの本発明である蒸着用フィルムロールの製造方法によって製造することができる。
【0029】
本発明のフィルムロールの製造方法は、少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを円筒状の巻芯に、巻取速度を徐々に加速させつつ巻き取る巻き始め工程、一定の巻取速度、すなわち平均巻き取り速度50〜200m/minの巻取り速度で巻き取る中間巻き取り工程および巻取り速度を徐々に減速しつつ巻き取る巻き終わり工程からなる。そして、本発明のフィルムロールの製造方法の最大の特徴は、巻き終わり工程における平均減速度が10m/min2以下および巻き終わり時の接圧が、中間巻取り工程の接圧に対して、1.1〜1.8の範囲とすることにある。
【0030】
巻き終わり工程における平均減速度が10m/min2を超えると、隣接する区間の層間空気量の比が本発明の範囲を外れ、フィルムロールを真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際に、フィルムにしわやずれが生じる。好ましい平均減速度の上限は、7m/min2以下、更に5m/min2以下である。なお、平均減速度の下限は、作業性の観点から、少なくとも1m/min2、さらに少なくとも2m/min2であることが好ましい。平均減速は減速し始めの速度V(m/min)から巻き終わり(速度0m/min)までの時間T(min)とした際にV/T(m/min2)で算出される値である。また、巻き終わり工程におけるフィルムロールは、瞬間的にも減速度が15m/min2を超えないことが好ましい。巻き終わり工程における減速度が15m/min2を超えると、隣接する区間の層間空気量の比が本発明の範囲を外れたり、フィルムロールを真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際に、フィルムにしわやずれが生じやすくなる。好ましい減速度の上限は、12m/min2以下、更に10m/min2以下である。なお、減速度の下限は、作業性の観点から、少なくとも1m/min2、さらに少なくとも2m/min2であることが好ましい。
【0031】
また、巻き終わり時の接圧が、中間巻取り工程の接圧に対して、下限未満であると、フィルムロールの表層部分における層間空気量が過度に多くなったり、巻取り速度の減速と相まって、隣接する区間における層間空気量の比が変動し、フィルムロールを真空下にしていく過程や真空下でフィルムロールを繰り出し巻取りする際に、フィルムにしわやずれが生じる。一方、巻き終わり時の接圧が、中間巻取り工程の接圧に対して、上限を超えると、過度に巻き取る際にフィルム同士が押さえつけられ、フィルム同士が貼りつく、ブロッキングといった現象が生じる。好ましい巻き終わり時の接圧は、中間巻取り工程の接圧に対して、1.1〜1.8、更に1.2〜1.5である。
【0032】
ところで、巻き取り時の張力は、フィルムロールのしわ発生状況を見ながら調整でき、10〜35N/mの範囲に調整することが好ましい。
【0033】
このようにして、本発明の蒸着用フィルムロールは製造することができる。そして、本発明の蒸着用フィルムロールを用いると、表面粗さが5nm以下という極めて平坦なポリエステルフィルムに真空引きによるシワやずれを発生させることなく蒸着加工を施すことができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明をさらに実施例をもちいて説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準である。本発明における物性値および特性は、それぞれ以下の方法で測定し、かつ、定義されるものである。
【0035】
(1)フィルム厚み
フィルムを10枚重ね、打点式電子マイクロメータにて厚みを測定し、1枚当たりのフィルム厚みを計算した。
【0036】
(2)層間空気量
フィルムロールの直径を、フィルムの幅方向にほぼ均等に10点測定し、その平均値をフィルムロールの実際の巻径(d1)とし、それからフィルムロールの断面積を(S2)を算出する。なお、S2は巻芯の断面積は除かれた面積である。一方、フィルムロールの実際の巻き長とフィルム厚みから、空気層を巻き込んでいないと仮定した理論上の巻径(d1)からロール側面の断面積(S1)を算出する。なお、S1も巻芯の断面積は除かれた面積である。そして、層間空気量は、(S2/S1−1)×100(%)により求めた。
【0037】
(3)層間空気量の2点間での変化率
層間空気量の算出方法を用い、ロール最表層から5000mの部分まで1000m区切りで分割してその間の空気量を求めた。得られた5点の空気量A1、A2・・A5(%)において近接する2点の比を、下記式より全て求めた。
(AL−AS)/AS×100(%)
ここで、ALは各2点間で空気量を比較した際の多い方の空間の層間空気量、ASは各2点間で空気量を比較した際の少ない方の区間の層間空気量である。
【0038】
(4)フィルムの表面粗さ(Ra)
ディジタルインストゥルメント株式会社(Digital Instruments Inc.)製の原子間力顕微鏡、商品名「Nano Scope III AFM」のスキャナーを使用し、以下の条件で測定、算出される中心線平均粗さをRaとする。
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :2μm×2μm
画素数 :256×256データポイント
スキャン速度 :1.0Hz
測定環境 :室温、大気中
数値は5回測定した平均値で表示する。
【0039】
(5)不活性粒子の平均粒子径
(株)島津製作所製CP−50型セントリフュグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定した。得られた遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその残存量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とした。(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247参照)
【0040】
(6)不活性粒子の長径/短径比
サンプルを走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、白金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて10,000〜50,000倍で観察し、ニレコ株式会社製ルーゼックスにて3,000〜5,000個の粒子の画像解析を行い、平均一次粒径比(長径/短径)を求める。
【0041】
(7)ポリエステルのガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
サンプル20mgをアルミニウムパンに封入し、示差走査型熱量計(DuPont Instrument 910 DSC)にセットし、室温から20℃/分の昇温速度の条件で測定した。
【0042】
(8)蒸着加工性
フィルムロールを真空釜に投入し、常温常圧下から15分かけて10-4Torrまで真空引きした後、張力35N/m、速度100m/分にてフィルムロールを繰り出し、ずれやしわの状態を観察し、下記の基準にて評価した。
【0043】
[実施例1]
有機粒子として平均粒子径0.3μm、長径/短径比1.0のシリコンを0.1wt%と粒子径0.2μmのアルミナ0.1wt%含有した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.8のポリエチレンテレフタレート(PET−1)と実質的に粒子を含有していない固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレンテレフタレート(PET−2)を得た。
【0044】
これらポリエチレンテレフタレートをそれぞれ170℃で3時間乾燥後、別々の押出機に供給し、溶融温度290℃にて溶融して、共押出しにより2層シート状に押出した。押出しの際、PET−1とPET−2との押出し量比は1.0:5.5であった。急冷して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを予熱し、更に低速・高速のロール間でフィルム温度90℃にて縦方向に3.5倍に延伸し、急冷し、次いで縦延伸フィルムの一方の面に下記の組成の塗布層Aの水溶性塗液を、粒子を含んでいない面に2.8g/m2の塗布重量となるよう塗布し、続いてステンターに供給し、100℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを230℃の熱風で2秒間熱固定し、厚み6.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
塗布層Aの形成に用いた水溶性塗液:固形分濃度1.0%
固形分組成
・バインダー樹脂(高松油脂(株)製、アクリル変性ポリエステル IN−170−B):68.7部
・不活性粒子(架橋アクリル樹脂粒子、平均粒径30nm):4.3部
・界面活性剤(三洋化成工業(株)製、ナロアクティー N85):27部
【0045】
得られた2軸配向ポリエステルフィルムを550mm幅にスリットし、外径152.4mmのアルミ製円筒状コアに、巻き取り速度100m/分になるまで巻取り加速度50m/min2で巻き始め工程を行い、その後、巻き取り速度100m/分、張力35MPa、接圧550N/mにて中間巻取り工程を行い、巻き終わりにかけて巻き取り速度を平均3m/min2ずつ均等に下げつつ接圧を700N/mまで徐々に上げながら巻き終わり工程を行い、巻き長20000mのフィルムロールを得た。このフィルムロールをフィルムカバー(ポリエチレンテレフタレートフィルム)で覆い、製品である2軸配向ポリエステルフィルムに直接触れないよう、シリカゲル(平均粒径3000μm)が200g入った袋を接着テープでフィルムカバーの内側に取り付け後、アルミ箔で製品表面が露出しないように梱包した。これを20℃、相対湿度50%にコントロールされた倉庫に1日保管した後、層間空気量を求めた。また、同様にして得られたフィルムロールを、10-4Torr、繰り出し速度100m/min、張力35N/mの条件で真空釜に投入した。得られたフィルムロールの特性および蒸着加工結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2〜5及び比較例1〜7]
表1に示したように変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムロールの特性および蒸着加工結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みを125μmとし、粒子を含んでいる樹脂(PET−1)と実質粒子を含んでいない樹脂(PET−2)との押出し量比を1:99に変更、フィルムスリット時の巻き長を5000mに変更し、塗布層Aの塗剤を下記の組成の水可溶性塗剤Bを10g/m2片面に塗工した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムロールの特性および蒸着加工結果を表1に示す。
塗布層Bの形成に用いた水溶性塗液:固形分濃度3.0%
固形分組成
・バインダー樹脂(ポリエステル(酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸63モル%/イソフタル酸32モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%)67部とアクリル(メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%)20部):87部
・不活性粒子(平均粒径100nm、シリカとチタニアの複合無機粒子):3部
・カルナバワックス(中京油脂株式会社製 商品名セロゾール524):5部
・ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名 ナロアクティーN−70):5部
【0048】
[比較例8]
表1に示した通り条件を変更した以外は実施例6と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムロールの特性と蒸着加工結果をを表1に示す。
【0049】
[実施例7、8及び比較例9、10]
PET−1を固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN−1)と実質的に粒子を含有していない固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN−2)に変更し、乾燥温度と時間をそれぞれ180℃と6時間に変更し、縦方向と横方向の延伸時のフィルム温度をそれぞれ145℃と150℃に変更し、かつ表1に示した通り条件を変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムロールの特性と蒸着加工結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルム表面に真空下において蒸着を行っても、フィルムのずれやしわが発生することなく、蒸着加工性に優れた蒸着用ポリエステルフィルムロールおよびその製造方法を提供できる。
Claims (10)
- 少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを円筒状の巻芯に巻きつけたフィルムロールであって、
最表層のポリエステルフィルムの端部を0mおよび最内層のポリエステルフィルムの端部をXmとして、ポリエステルフィルムの0〜1000mを第1区間、1000〜2000mを第2区間、2000〜3000mを第3区間、3000〜4000mを第4区間および4000〜5000mを第5区間としたとき、
第1〜5区間のそれぞれの層間空気量は1.0%以上5.0%以下の範囲にあり、かつ隣接する区間の層間空気量の変動率が50%以下にあることを特徴とする蒸着用ポリエステルフィルムロール。 - フィルムロール全体の層間空気量が1.0%以上5.0%以下の範囲にある請求項1に記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.05〜1.0μmでかつ長径/短径が1.0〜1.2の有機粒子含有する請求項1に記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである請求項1に記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムの厚みが2〜20μmである請求項1に記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムを光学用フィルムに用いる請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムを包装用フィルムに用いる請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- ポリエステルフィルムを磁気記録媒体のベースフィルムに用いる請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着用ポリエステルフィルムロール。
- 少なくとも一方の表面の粗さ(Ra)が5nm以下であるポリエステルフィルムを円筒状の巻芯に、巻取速度を徐々に加速させつつ巻き取る巻き始め工程、巻取速度を一定で巻き取る中間巻き取り工程および巻取り速度を徐々に減速しつつ巻き取る巻き終わり工程からなるフィルムロールの製造方法であって、
中間巻取り工程における平均巻き取り速度が50〜200m/min、巻き終わり工程における平均減速度が10m/min2以下および巻き終わり時の接圧が、中間巻取り工程の接圧に対して、1.1〜1.8の範囲にあることを特徴とする蒸着用フィルムロール体の製造方法。
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