JP2004209087A - 超音波診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】符号化送信を用いた超音波診断技術において、タイムサイドローブをより低減する。
【解決手段】超音波診断装置を、記送信手段3は、元信号をそれぞれ異なる符号により変調して連結してなる少なくとも4個の符号化送信信号を生成し、該生成された少なくとも4個の符号化送信信号を探触子1に時間をずらして出力する符号変調手段21を有してなり、受信手段11は、各符号化送信信号にそれぞれ対応する複数の受信信号をそれぞれ復調する符号復調手段29と、復調された受信信号を合成した受信信号を生成する合成手段33とを有して構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置に係り、特に送信信号を符号化した超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波診断装置は、超音波探触子を介して例えば生体等の被検体内に超音波を送信し、その反射波等からなる反射エコー信号に基づいて画像等の診断に有用な情報を得るものである。
【0003】
また、このような超音波信号の送受信に際し、送信信号を符号化することによって、時間方位に超音波のエネルギーを拡散させるとともに、この送信信号に対応する受信信号を復調し、時間方位に拡散されている超音波エネルギーを集束させるいわゆる符号化送受信技術を適用することが提案されている。これによれば、高いエネルギーを有する復調受信信号が得られるので画質が向上する。ちなみに、このような符号として、例えばゴレイ(Golay)符号が知られている。
【0004】
一方、超音波信号が被検体内を伝播する際に、伝播媒質としての被検体の非線形性に起因して、波形に周波数歪みが生じる。このような周波数歪みが生じると、時間方位に拡散した超音波エネルギに対する収束度が低下し、タイムサイドローブが発生する。そこで、このような媒質の非線形性による影響を低減するため、通常の符号化送信信号と、その符号の極性を反転した符号化送信信号とを時間間隔をおいてそれぞれ送信し、これらに対応する受信信号を合成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−59766号公報(段落番号0021−0022、図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しがしながら、符号化送受信を行なう場合、媒質の非線形性だけでなく、被検体自体の位置や形状が変化する、いわゆる体動によってもタイムサイドローブが発生する。すなわち、体動によって被検体内を伝播する超音波信号の振幅および位相に歪みが生じ、これらも周波数歪みと同様にタイムサイドローブの発生する原因となる。上述した従来技術においては、体動に起因するタイムサイドローブについて配慮されていない。このため、タイムサイドローブの更なる低減が要求されている。
【0007】
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、符号化送信を用いた超音波診断技術において、タイムサイドローブをより低減することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波診断装置は、探触子と、該探触子を駆動する超音波の送信信号を出力する送信手段と、前記探触子により受信される超音波の受信信号を処理する受信手段と、該受信手段により処理された前記受信信号に基づいて画像を再構成する画像処理手段と、該再構成された画像を表示する表示手段とを備えてなり、 前記送信手段は、元信号をそれぞれ異なる符号により変調して連結した少なくとも4個の符号化送信信号を生成し、該生成された少なくとも4個の符号化送信信号を前記探触子に時間をずらして出力する符号変調手段を有してなり、前記受信手段は、前記各符号化送信信号にそれぞれ対応する複数の受信信号をそれぞれ復調する符号復調手段と、復調された受信信号を合成した受信信号を生成する合成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記符号変調手段は、前記元信号をそれぞれ異なる符号により変調して連結した第1及び第2の符号化送信信号と、第2の符号化送信信号の符号の極性が実質的に反転された第3の符号化送信信号と、第1の符号化送信信号の符号の極性が実質的に反転された第4の符号化送信信号とを生成し、前記受信手段は、前記第1ないし第4の符号化送信信号にそれぞれ対応する第1ないし第4の受信信号をそれぞれ復調する符号復調手段と、復調された受信信号を合成した受信信号を生成する合成手段とを有してなるものとすることができる。
【0010】
上記の場合において、符号は、極性を有する複数の符号からなり、時間軸方向に超音波のエネルギを拡散させるように組まれた符号である。要は、復調して合成した時に、体動による位相歪、振幅歪あるいは周波数歪によるタイムサイドローブを軽減できるように符号を決める。
【0011】
例えば、異なる符号として、一対のゴレイ符号A(1、1、1、−1)及びB(−1、1、−1、―1)を第1及び第2の符号化送信信号として用いる場合、第3の符号化送信信号は第2の符号化送信信号の符号の極性を実質的に反転したゴレイ符号−Bにより符号化し、第4の符号化送信信号は第1の符号化送信信号の符号の極性を実質的に反転したゴレイ符号−Aにより符号化することができる。これによって、体動に起因する振幅歪や位相歪などにより生ずるタイムサイドローブを低減できる。ここで、符号の極性を実質的に反転したとは、符号の極性を反転することと、送受信する符号のタイミングを逆向きにすることが等価であることから、これらを含む概念とするためである。さらに、第1及び第2の符号化送信信号の符号A及び符号Bに対し、位相を180度回転させることによって、周波数歪を軽減することができることに鑑み、位相を180度回転させることをも符号の極性を実質的に反転する概念に含むものである。また、これらを組み合わせて、第1及び第2の符号化送信信号A、Bに対し、第3と第4の符号化送信信号を−B、−Aのように、符号か送受信するタイミングを逆向きにし、かつ位相を180°回転することにより、位相歪、振幅歪、および周波数歪に対するタイムサイドローブを軽減できる。
【0012】
また、送信手段は、第1ないし第4の符号化送信信号を被検体内の隣り合う送信方向に配分して送信し、合成手段は、送信方向が隣り合う符号化送信信号に対応する復調された受信信号を合成するようにしてもよい。これによれば、1本のビームラインあたりの送受信回数を減らせるから、フレームレートを向上できる効果がある。
【0013】
また、第1ないし第4の符号化送信信号を被検体内の隣接する複数の送信方向毎にそれぞれ送信し、複数の送信方向への送信に対応する復調された受信信号を合成するようにしてもよい。これによれば、複数のビームラインにそれぞれ第1ないし第4の送信信号をそれぞれ送信して得られた受信信号を復調後合成することによって、感度をより向上することができる。また、複数のビームライン間を、このようなライン間の合成によって得られた信号によって補間することにより、見かけ上のビームライン数を増やし、診断画像の画質を向上できる効果がある。
【0014】
さらに、送信手段は、同一ビームライン方向に超音波の送信信号を複数回繰返して送信し、前記受信処理手段により受信される前記送信信号に対応する受信信号を取り込んで受信信号相互の相関を求め、該求めた相関に基づいて前記符号化送信信号の数を決定する相関判定手段を備えて構成することができる。
【0015】
また、送信手段は、複数の符号化送信信号を被検体内の異なる送信方向に送信し、合成手段は、複数の送信方向にまたがって符号化送信信号に対応する復調された受信信号を合成するようにすることができる。この場合、送信手段は、ビームライン方向を変えながら超音波の送信信号を繰返して送信し、前記受信処理手段により受信される前記送信信号に対応する受信信号を取り込んで受信信号相互の相関を求め、該求めた相関に基づいて前記合成手段における合成に係る送信方向の数を決定する相関判定手段を備えて構成することが好ましい。
【0016】
すなわち、複数回送信された送信信号に対応する受信信号が類似する場合には、当該部位は時間的な変化が少ない部位であると考えられるから、同じ送信方向に送信する符号化送信信号の回数を増やすことによって、感度のよい合成後受信信号を得ることができる。反面、複数回送信された受信信号が類似しない場合には、当該部位は時間的な変化が大きい部位であると考えられるから、第1ないし第4の符号化送信信号を多くの送信方向に配分してフレームレートを向上したほうが有用である。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置は、探触子1と、探触子1を介して図示しない被検体に符号化された超音波信号を送信する送信手段3と、探触子1を介して被検体から受信信号を受信する受信手段5とを有する。そして、送信手段3が出力した送信信号を探触子1に送りかつ探触子1が出力した受信信号を受信手段5に送る送受分離回路7が設けられている。そして、探触子1と送受分離回路7との間には、探触子1が有する図示しない複数の振動子のうち、信号の送受信に用いる振動子を選択するいわゆる口径選択スイッチである走査口径切替回路9が設けられている。
【0018】
また、受信手段5が出力した信号に対し復調処理を行なう符号復調手段11が設けられている。そして、符号復調手段11の出力信号を処理する信号処理手段13と、信号処理手段13の出力信号に基づいて画像生成処理を行なう画像処理手段15と、画像処理手段15が生成した画像を表示する表示部17とが設けられている。
【0019】
送信手段3は、予め準備した変調符号係数群から所望の係数を選択し出力する変調波形選択手段19と、変調波形選択手段19の出力信号に応じて送信超音波信号パルスを出力する送信パルス発生手段21と、送信パルス発生手段21の出力信号を増幅して送受分離回路7に送るパワーアンプ部23とを有する。そして、変調波形選択手段19と、送信パルス発生手段21と、パワーアンプ部23とを制御する送信制御手段25が設けられている。送信制御手段25は、バス制御部、レジスタ、セレクタ、メモリ及びバッファ等を有して構成されている。
【0020】
符号復調手段11は、送信手段3が送信した符号化送信信号に対応する復調係数を選択し出力する復調係数選択手段27と、復調係数選択手段27が出力した復調係数に応じて受信信号を復調する復調フィルタ29とを有する。さらに、符号復調手段11は、復調フィルタ29の出力信号を一時的に保持するラインメモリ部31と、復調フィルタ29の出力信号およびラインメモリ部31から読み出された信号を合成する合成部33とを有する。そして、復調係数選択手段27とラインメモリ部31とを制御する符号復調制御手段35が設けられている。
【0021】
そして、超音波診断装置には、送信制御手段25、符号復調制御手段35、走査口径切替回路9、信号処理手段13および画像処理手段15を総括的に制御する制御部37が設けられている。
【0022】
図2は、上述した送信手段3の詳細な構成を示すブロック図である。変調波形選択手段19は、符号選択手段39と、波形選択手段41とを有して構成されている。符号選択手段39は、符号種類選択手段43と、符号長選択手段45と、符号間隔選択手段47とを有し、これらはそれぞれ送信制御手段25によって制御され、またそれぞれレジスタ、セレクタを含んで構成されている。符号選択手段はさらにSRAMまたはDRAMなどの記憶素子を含む変調符号用係数メモリ49を有する。変調符号用係数メモリ49は予め演算によって求めた変調符号係数群を保持しており、符号種類選択手段43、符号長選択手段45および符号間隔選択手段47からの指示に応じて適当な変調符号係数が読み出され、送波パルス発生手段21に送られる。
【0023】
また、波形選択手段41は、包絡線選択手段51と、波数選択手段53とを有する。これらはともに送信制御手段25によって制御され、レジスタ、セレクタ等を含んで構成されている。そして、SRAMやDRAMなどの記憶素子を有する送信波形形状選択メモリ55が設けられている。送信波形形状選択メモリ55は、予め演算によって求められた波形群に係るデータを保持してなり、包絡線選択手段51および波数選択手段53からの指示に応じて適当な波形のデータを出力し、送信パルス発生手段21に送る。
【0024】
送信パルス発生手段21は、レジスタ、セレクタを含む送信フォーカス選択手段57と、シフトレジスタ、セレクタ、カウンタ及び分周器を含む送信フォーカス遅延生成手段59とを有する。また、送信パルス発生手段21はさらにSRAMやDRAM等の記憶素子を含む送信パルス波形一時記憶メモリ61と、ディジタルアナログ(D/A)変換器およびバッファアンプを含む送信パルス発生器63とを有してなる。
【0025】
また、パワーアンプ部23は、送信制御手段25によって制御されかつレジスタ、セレクタを含んでなる利得制御手段63と、パワートランジスタ、増幅用FET、可変ゲインアンプ等を含むパワーアンプ65とを有して構成されている。
【0026】
図3は、上述した符号復調手段11の詳細な構成を示すブロック図である。図3に示すように、符号復調手段11の復調係数選択手段27は、復調符号種類選択手段67と、復調符号長選択手段69と、復調符号間隔選択手段71とを有する。これらはそれぞれレジスタおよびセレクタを含んでなり、符号復調制御手段35によって制御されている。また、復調係数選択手段には、さらにSRAM、DRAM等の記憶素子を有してなる復調符号用係数メモリ73が設けられている。復調符号用係数メモリ73は、予め演算により求めた復調符号用係数群を保持しており、復調符号種類選択手段67、復調符号長選択手段69、および復調符号間隔選択手段71からの指示に応じて適当な復調符号用係数が読み出され出力される。
【0027】
復調フィルタ29は、シフトレジスタ、セレクタ、カウンタおよび分周器等を含む受信信号遅延手段75と、乗算演算手段、加算演算手段およびセレクタ等を含む積和演算手段77とを有して構成されている。受信信号遅延手段75には受信手段5が出力した受信信号が入力され、いわゆる受信フォーカスのための遅延処理が施される、受信信号遅延手段75が出力した受信信号は積和演算手段77に入力され、符号復調フィルタ処理を施されて出力され、ラインメモリ部31に入力される。
【0028】
ラインメモリ部31は、レジスタ、分周器、比較器、カウンタおよびセレクタを含むラインメモリ制御部79と、SRAMまたはDRAM等の記憶素子を含むラインメモリ81とを有して構成される。なお、ラインメモリ制御部79は符号復調制御手段35によって制御され、またラインメモリ81はラインメモリ制御部79によって制御される。ラインメモリ81には復調フィルタ29の積和演算手段が出力した復調後の受信信号が入力され、一時的に保持された後に後段の合成部33によって読み出される。
【0029】
合成部33は、レジスタ、セレクタを含む合成係数選択手段83と、乗算演算手段、加算手段および正負反転演算手段等を含む合成手段85とを有して構成されている。合成係数選択手段83は符号復調制御手段によって制御されている。
【0030】
以下、上述した超音波診断装置の動作について説明する。はじめに、送信手段3は、制御部37からの指示に応じて送信信号を発生し、送受分離回路7及び走査口径切替回路9を介して探触子1へ送信信号を出力する。具体的には、制御部37は、送信手段3の送信制御手段25に対して、具体的な送信条件の指示を送る。送信制御手段25は、前記送信条件に基づいて、変調符号種類選択手段43、変調符号長選択手段45、変調符号間隔選択手段47、包絡線選択手段51、波数選択手段53、送信フォーカス選択手段57および利得制御手段63の各手段に対して制御信号を供給する。変調符号選択手段43、変調符号長選択手段45および変調符号間隔選択手段47は、それぞれ与えられた制御信号に応じて変調符号の種類、長さおよび間隔の各情報を変調符号用係数メモリ49に入力し、予め演算により求めておいた変調符号係数群から所望の変調符号係数を選択して読出し、これを送信パルス波形一時記憶メモリ61に出力する。変調符号の種類は、本実施形態の場合ゴレイ符号である。また、変調符号の長さは、例えば4符号長である。そして、変調符号の間隔は、例えば送信される超音波信号の中心周波数に対応する波長がλである場合に、1λである。これによって、例えば1対のゴレイ符号に対応する係数A(1、1、1、−1)およびB(−1、1、−1、−1)が得られる。なお、符号間隔が離れるほどレスポンスによる影響が少なくなるから、符号間隔を1.5λや2λにすると、タイムサイドローブレベルを低減できる。例えば、2λのときの係数A(1、0、1、0、1、0、−1)およびB(−1、0、1、0、−1、0、−1)でもよい。また、上述では、変調符号係数群を予め演算により求めて変調符号用係数メモリ49に格納しておく例を示したが、本発明はこれに限らず、変調符号の種類、長さおよび間隔の各情報に基づいてCPUなどで変調符号係数を演算して求めることもできる。
【0031】
また、包絡線選択手段51および波数選択手段53は、それぞれ送信制御手段25からの制御信号に応じてそれぞれ送信信号の包絡線の形状および送信波数を設定し、これをもとに送信波形形状選択メモリ55が保持している予め定めた送信波形形状群から、所望の送信波形データを選択して読み出し、送信パルス波形一時記憶メモリ61に出力する。そして、送信フォーカス選択手段57は、送信制御手段25からの制御信号に応じて超音波ビームが被検体内で収束する深さである送信フォーカス深さを設定する。そして、送信フォーカス遅延生成手段59は、設定されたフォーカス深さに応じて振動子の送信用に選択された口径に対応するチャンネルのそれぞれについて、遅延時間を設定し、この遅延時間だけ送信タイミングを遅らせた各チャンネルの送信タイミングパルスを出力し、送信パルス波形一時記憶メモリ61に入力する。
【0032】
送信パルス波形一時記憶メモリ61は、変調用符号係数メモリ49から出力された変調符号係数および送信波形形状選択メモリ55から出力された送信波形データに基づいて、予め演算により求めた送信波形パルス波形群から所望の送信波形パルス波形を選択する。そして、送信フォーカス遅延生成手段59が出力する送信タイミングパルスのイネーブル時にサンプリングクロックに同期した送信パルス波形データのディジタル信号を出力する。そして、送信パルス発生器63は、送信波形パルス波形データをアナログの電圧値または電流値に変換してパワーアンプ65に出力する。なお、上述では、送信波形パルス波形群を予め演算により求めて送信波形形状選択メモリ55に格納しておく例を示したが、本発明はこれに限らず、変調符号係数などに基づいてCPUなどで送信波形形状を演算処理により求めることもできる。
【0033】
利得制御手段63は、送信制御手段25からの制御信号に応じて所望の利得を選択し、選択された利得をパワーアンプ65に設定する。そして、パワーアンプ65は、設定された利得において送信パルス発生器から入力された送信パルス波形データを増幅して送受分離回路7に出力する。なお、ここで出力される送信パルス波形データは、制御部37により設定された送信用口径に対応する複数の振動子にそれぞれ割り当てられる複数チャンネルの信号である。以下、この信号を送信信号と称して説明する。
【0034】
送信信号は、送受分離回路7を介して走査口径切替回路9に入力され、ここで制御部37からの制御信号に基づいて、送信用として選択された口径に対応する各振動子に割り当てられ、探触子1に伝達される。そして、送信信号を入力された探触子1の振動子はそれぞれ振動し、超音波を発生する。これによって、図示しない被検体内を各振動子が発生する超音波の波面が一致する方向に進行する超音波ビームが形成される。
【0035】
ところで、本実施形態の超音波診断装置は、被検体内に符号化された符号化送信信号を複数回、例えば4回繰り返して送信することを特徴とする。4回の場合には、例えば一対のゴレイ符号A(1、1、1、−1)およびB(−1、1、−1、−1)をそれぞれ第1番目および第2番目の符号化送信信号とし、これらの順序と符号の極性を反転した−B(1、−1、1、1)および−A(−1、−1、−1、1)をそれぞれ第3番目および第4番目の符号化送信信号とする。なお、これら第1番目ないし第4番目の符号化送信信号をまとめて1つの「パケット」と称する。
【0036】
超音波ビームは被検体内を伝播し、例えば臓器の表面等の音響インピーダンスが変化する部位において一部が反射される。反射波の一部は探触子1の振動子に戻り、ここで電気的な信号に変換される。以下、この信号を受信信号と称して説明する。
【0037】
図4は、本実施形態における超音波ビームの送信方法を示す図である。図4に示すように、超音波ビームはその送信される方向(ビームライン)をずらしながら被検体内を走査(スキャン)して繰り返し送信される。そして、本実施形態においては、各ビームライン(1、2、・・N−2、N−1、N、N+1、N+2)に対してそれぞれ先ず第1番目の符号化送信信号を送信してから、この符号化送信信号に対応する受信信号を受信し、次いで第2番目ないし第4番目の符号化送信信号に対応する送受信を順次行い、その後に隣りのビームラインについて同様の送受信を行ない、これを繰り返しながら被検体を走査する。
【0038】
複数の振動子がそれぞれ受信した受信信号は走査口径切替回路9に入力される。そして、制御部37からの制御信号に応じて選択された受信用の口径に対応する振動子からの受信信号が選択され、これらは送受分理回路7を介して受信手段5に入力される。ここでの受信信号は受信用として選択された複数の振動子にそれぞれ対応する複数チャンネルの信号である。受信手段5は、各チャンネルの受信信号をそれぞれ増幅し、受信信号の反射源から各振動子までの受信信号の伝播時間の違いを考慮し、各チャンネルの受信信号を相互異なった遅延量ずらしてチャンネル間の受信信号の位相を揃える受信フォーカス処理を施す。そして、受信フォーカス処理を施された各チャンネルの受信信号は相互に加算され、受信ビーム信号が生成される。受信手段5は受信ビーム信号を出力し、この受信ビーム信号は符号復調手段11に入力される。
【0039】
符号復調手段11の符号復調制御手段35は、制御部37からの具体的な符号復調条件の指示に対して、復調符号種類選択手段67、復調符号長選択手段69および復調符号間隔選択手段71に制御信号を供給する。そして、復調符号種類選択手段67、復調符号長選択手段69および復調符号間隔選択手段71は制御信号に応じ、送信手段3の変調符号種類選択手段43、変調符号長選択手段45および変調符号間隔選択手段47が送信時に選択したものと同じ符号種類、符号長および符号間隔をそれぞれ選択する。これらに応じて復調符号用メモリ73から予め定めた復調符号用係数が読み出され、復調フィルタ29の積和演算手段77に入力される。
【0040】
符号復調手段11に入力された受信ビーム信号は、受信信号遅延手段75のシフトレジスタにて遅延処理を施された後に積和演算手段77に入力され、ここで復調符号用メモリ73から読み出された復調符号用係数に応じて復調される。復調された受信信号は、ラインメモリ部31のラインメモリ81に入力される。ラインメモリ部31は、そのラインメモリ制御部79が符号復調制御手段から制御信号を受けることによって、以下説明するように動作する。
【0041】
図5は、本実施形態の超音波診断装置における符号復調手段11の動作を示す図である。図5(i)ないし(iv)は、それぞれ第N番目のビームラインに対する第1番目ないし第4番目の送信信号に対応する受信信号を符号復調する際の動作を示している。先ず、図5(i)に示すように、第1番目の符号化送信信号に対応する受信信号が符号復調手段11に入力されると、受信信号は復調フィルタ29によって符号復調され、この復調後の受信信号はラインメモリ部31に入力され、ここで保持される。次に、図5(ii)、図5(iii)に示すように、第2、3番目の符号化送信信号に対応する受信信号についても、第1番目の場合と同様に復調後の受信信号はラインメモリ部31に入力され、ここで保持される。そして、図5(iv)に示すように、第4番目の符号化送信信号に対応する受信信号が符号復調手段11に入力されると、受信信号は第1番目ないし第3番目と同様に復調フィルタ29によって符号復調されてラインメモリ部31に入力され、その後従前より保持されていた第1番目ないし第3番目の復調後の受信信号とともに読み出され、合成部33に入力される。そして、合成部33において、第1番目から第4番目の符号化送信信号にそれぞれ対応する復調後の受信信号は、被検体内の深さ方向に対応するサンプリング時点が等しくなるようにして加算され、合成される。この合成された受信信号は符号復調手段11から出力され、後段の信号処理手段13以降における処理に供される。
【0042】
以下、本実施形態の超音波診断装置における符号変調受信信号、符号復調後の受信信号および合成後の符号復調受信信号のシミュレーション結果について、既存の符号化送受信技術を用いた比較例を参照して説明する。
【0043】
(実施例1)
図6は、本実施形態の超音波診断装置による第1番目ないし第4番目の送信信号にそれぞれ対応する符号変調受信信号、この符号変調受信信号を符号復調フィルタ処理したものである復調手段後信号、第1番目と第2番目、第3番目と第4番目の復調手段後信号をそれぞれ合成したものである符号復調信号およびこれら符号復調信号を合成した最終的な信号である合成後信号の波形を示すグラフである。各グラフの縦軸は信号強度を表わし、横軸は時間を表わす。そして、図6は、体動等に起因して受信信号に振幅歪みが生じている状態を示す図である。図6に示すように、第1番目ないし第4番目の符号化送信信号にそれぞれ対応する符号変調受信信号は、符号化送信信号と同じ符号種類、符号長および符号間隔を有している。しかし、振幅ひずみの発生によって、第3番目と第4番目の振幅が小さくなっている。このため、復調手段後信号も同様に振幅が小さくなっている。そして、第1番目および第2番目の送信信号に対応する復調手段後信号を合成したものと、第3番目および第4番目の送信信号に対応する復調手段後信号を合成したものとは、仮に振幅歪みがなかったとすればいずれも元信号の波形、すなわち波長λのパルス波1周期を再現できるはずであるが、本実施例の場合には図6に示すように、前後にタイムサイドローブが発生している。しかし、これらの符号復調信号をさらに合成することによって、図6の最右欄に示すように、合成後信号においてはタイムサイドローブは無視し得る程度まで低減され、元信号の波形が再現される。つまり、合成によって復調信号に含まれるタイムサイドローブが相殺されている。
【0044】
(実施例2)
図7は、図6と同様のグラフであるが、振幅歪みに代えて位相歪みが生じた場合を示している。この場合も、符号復調信号にはタイムサイドローブの発生が認められるが、合成後信号においては、タイムサイドローブは無視し得る程度まで低減され、元波形が再現される。
【0045】
(実施例3)
図8もまた図6と同様のグラフであるが、振幅歪みに代えて周波数歪みが生じた場合を示している。この場合も、符号復調信号にはタイムサイドローブの発生が認められるが、合成後信号においては、タイムサイドローブは無視し得る程度まで低減され、元波形が再現される。
【0046】
(比較例1)
図9は、従来技術に係る1対のゴレイ符号A(1、1、1、−1)およびB(−1、1、−1、−1)を順次送信したときの第1番目の送信信号(符号A)および第2番目の送信信号(符号B)にそれぞれ対応する符号変調受信信号、復調手段後信号および符号復調信号を示すグラフである。このとき、符号長は4符号長であり、符号間隔は1λである。なお、各グラフはいずれも縦軸に信号強度を表わし、横軸に時間を表わしている。そして、図9においては、媒質起因の周波数歪み、体動起因の振幅歪みおよび位相歪みが発生しない状態を示している。この場合、図9に示すように符号Aと符号Bに対応する復調後フィルタ後信号において、タイムメインローブの振幅は等しくかつ極性が同じである。このため、これらを合成した符号復調信号のタイムメインローブの信号強度は、元信号を送信した場合の受信信号の信号強度に対して符号長及び符号化送受信回数を乗じたものとなる。したがって、本比較例の場合には、符号長が4、符号化送受信回数が2回であるから、タイムメインローブの信号強度は、4x2=8倍となる。一方、これらの復調後フィルタ信号において、タイムサイドローブの振幅は等しくかつ極性が反転しているので、符号復調後信号においてはタイムサイドローブが相殺され、消失する。
【0047】
(比較例2)
図10は、図9と同様のグラフであるが、符号変調受信信号に体動起因の振幅歪みがある状態を示すものである。図10に示すように、復調手段後信号において、タイムメインローブの信号強度は符号A、Bにそれぞれ係るものの間で異なっているが、極性は同一であり、その結果符合復調信号においてもタイムサイドローブは強調される。しかし、復調手段後信号のタイムサイドローブは極性は反転しているが振幅が異なっており、その結果、符合復調信号においてもタイムサイドローブは完全には相殺されずに残ってしまう。
【0048】
(比較例3)
図11は、図9と同様のグラフであるが、符号変調受信信号に体動起因の位相歪みがある状態を示すものである。図11に示すように、復調手段後信号において、タイムメインローブの信号強度は符号A、Bにそれぞれ係るものの間で異なっているが、極性は同一であり、その結果符合復調信号においてもタイムサイドローブは強調される。しかし、復調手段後信号のタイムサイドローブは振幅が異なり、また位相の回転が生じている箇所があることにより、符合復調信号においてもタイムサイドローブは完全には相殺されずに残ってしまう。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、1対のゴレイ符号を構成する第1番目および第2番目の符号化送信信号A、Bと、このゴレイ符号の順序を入換えかつ極性を反転させて第3番目および第4番目の符号化送信信号−B、−Aを順次被検体に送信し、各送信信号に対してそれぞれ得られた変調受信信号を符号復調後合成しているから、体動起因の振幅ひずみおよび位相ひずみに起因するタイムサイドローブを低減できる効果がある。
(第2の実施形態)
次に、本発明を適用してなる超音波診断装置の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態と同一の部分については説明を省略し、相違点について説明する。なお、相互に対応する箇所については同一の符号を付して説明する。図12は、本実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。また、本実施形態の場合の超音波送信手段3を図13に示し、符号復調手段11を図14に示す。図12に示すように、本実施形態の超音波診断装置は、送信手段3の変調波形選択手段19と送信パルス発生手段21との間に、変調波形回転手段87を設けたことを特徴とする。そして、符号復調手段11の復調係数選択手段27と復調フィルタ29との間に、復調係数回転手段89を設けたことを特徴とする。
【0050】
変調波形回転手段87は、変調波形選択手段19が送信制御手段25から制御信号に応じて出力した変調波形を複数記憶し、これを予め定められた送信シーケンスに従ってパワーアンプ部23に順次出力する。例えば、符号A、B、―B、−Aにそれぞれ係る変調波形をそれぞれ記憶し、送信シーケンスに従って繰り返し順次出力する。一方、復調係数回転手段は、復調符号用係数メモリ73から読み出される復調用符号を複数記憶し、送信シーケンスに従って変調波形回転手段が出力する変調波形に対応する復調用符号を順次出力する。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、上述した第1の実施形態における効果と同様の効果に加え、複数の変調波形を記憶する変調波形回転手段と、複数の復調用符号を記憶する変調用符号回転手段とを設けているから、送受信の度に変調波形または変調用符号を生成する必要がなく、演算負荷が低減される効果がある。
【0052】
なお、上述した各実施形態においては、ゴレイ符号A、B、−B、−Aそれぞれに対応する4回の送信信号を1パケットとしたが、送受信回数を増やすことによってさらにタイムサイドローブを低減できることが知られている。従って、1パケットを例えば8回、16回等、より多くの回数の送信信号により構成してもよい。
【0053】
また、上述した各実施形態においては、個々のビームラインに対しそれぞれ1パケットの送信信号を送信し、これらに対する受信信号を符号復調後合成しているが、異なったビームラインに対する送受信から得られた符号復調後信号を合成するようにしてもよい。例えば、ビームラインN−1に対し、符号A、B、−B、−Aに対応する送受信を順次行い、次にビームラインNに対して符号−B、−A、A、Bに対応する送受信を順次行って、ビームラインNに対応する合成後信号とビームラインN−1に対応する合成後信号とを合成して得られた信号に基づいてビームラインNに該当する画素位置の診断画像を生成するようにしてもよい。これによっても、タイムサイドローブをさらに低減することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の第3の実施形態であって、上述したビームライン間の受信信号の合成を行うものについて説明する。なお、上述した第1の実施形態と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。図15は、本発明を適用してなる超音波診断装置の第3の実施形態であって、上述したビームライン間の合成後信号を合成するのに好適なものの符号復調手段の構成および動作を示す図である。図15に示すように、符号復調手段6は、上述した第1の実施形態におけるラインメモリ部31および合成部33に代えて、復調フィルタ29の出力信号が入力されるパケットラインメモリ91と、復調フィルタ29およびパケットラインメモリ91の出力信号が入力されるパケットライン合成部93とを有する。そしてさらに、符号復調部11は、パケットライン合成部93の出力信号が入力される走査ラインメモリ95と、パケットライン合成部93および走査ラインメモリ95の出力信号が入力される走査ライン合成部97とを有する。なお、パケットラインメモリ91および走査ラインメモリ95は、それぞれ符号復調制御手段35によって制御されている。
【0054】
以下、上述した本実施形態の符合復調部11の動作について説明する。図15(i)ないし(iii)に示すように、第N番目のビームラインに対する第1番目ないし第3番目の符号化送受信時において、復調フィルタ29の出力信号はそれぞれパケットラインメモリ91に入力され、保持される。そして、第N番目のビームラインに対する最後の送受信である第4番目の符号化送受信において、復調フィルタ29の出力信号はパケットライン合成部に入力され、このときパケットラインメモリに保持されている第1番目ないし第3番目の送受信に対応する信号も読み出されてパケットライン合成部に入力される。そして、第1番目ないし第4番目の送受信にそれぞれ対応する復調フィルタの出力信号は合成されてパケットライン合成部から出力され、走査ラインメモリ95および走査ライン合成部97にそれぞれ入力される。ところで、走査ラインメモリ95には、従前のビームラインN−1に対応する送受信において入力された当該ビームラインに係るパケットライン合成部93の出力信号を保持している。この第N−1番目ラインに係るパケットライン合成部の出力信号は、走査ラインメモリ95から読み出されて走査ライン合成部97に入力され、ここで第N番目ラインに係るパケットライン合成部の出力信号と合成される。この合成された信号は、符号復調手段11の出力信号として出力され、信号処理手段13以下の後段の処理に供される。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、あるビームラインに係る合成後信号を他のビームラインにかかる合成後信号とさらに合成しているから、タイムサイドローブをさらに低減することができる。
(第4の実施形態)
また、図16は、本発明を適用してなる超音波診断装置の第4の実施形態における符号復調部11の構成および動作を示す図である。本実施形態は上述した第3の実施形態と類似するが、図16(ii)および(iii)に示すように、第2番目および第3番目の送受信時に、復調フィルタ29の出力信号がパケットライン合成部93に直接入力されるとともに、このときパケットラインメモリに保持されている従前の送受信までの復調フィルタ29からの出力信号を合成した信号が読み出され、これと合成された後に再びパケットラインメモリ91に保持させるようにした点で相違する。本実施形態のようにしても、上述した第3の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
また、1パケットの送信信号を複数のビームラインに分けて送信し、各送信信号に対応する復調手段後受信信号を合成するようにしてもよい。例えば、ビームライン2本ごとに符号AおよびBと、―Bおよび−Aとをそれぞれ繰り返し送信し、隣り合ったビームラインの復調手段後受信信号を合成するようにしてもよい。さらに、ビームライン4本ごとに符号A、B、−B、−Aをそれぞれ順次送信し、各ビームラインの復調手段後受信信号を合成するようにしてもよい。このように1ビームラインあたりの送受信回数を減らし、異なったビームライン間で復調手段後信号を合成することによって、タイムサイドローブを低減しつつフレームレートを向上することができる。
【0057】
また、複数のライン間で復調手段後の合成信号を合成することによって実際に送受信を行ったビームライン間のデータを補間演算により求めてもよい。例えば、ビームラインNとN+1との間に、各ビームラインに対応する復調手段後の受信信号を例えば1:1の比で合成したデータを用いて補間ラインを設け、見かけ上のビームライン本数を増やすようにしてもよい。さらに、ライン間の合成係数を例えば(1/4、3/4)、(1/2、1/2)および(3/4、1/4)として、ビームライン間に3本の補間ラインを設けるようにしてもよい。また、3本以上のビームラインに対応する復調手段後の受信信号を合成して補間を行うようにしてもよい。
(第5の実施形態)
また、符号化送受信を行なうに先立って、被検体の例えば呼吸運動等の体動の状態や、診断ターゲットの大きさ等を調べる、いわゆるプレスキャンを行ない、その結果に基づいて同一ラインに対する符号化送受信回数、つまり1パケットの符号化送受信回数や、複数のビームラインにまたがり合成するビームライン数を設定するようにしてもよい。図17に、本発明の第5の実施形態に係るプレスキャンを行なって同一ラインに対する符号化送受信回数や、複数のビームラインにまたがり合成するビームライン数を判定する相関判定手段98の一例を示す。相関判定手段98は、メモリ99、相関処理手段100、判定手段101および閾値選択手段102から構成される。メモリ99は、SRAMなどから構成される。相関処理手段100は、DSPやCPUなどの差分演算、積算演算などを行なう演算器である。閾値選択手段102は、セレクタなどからなり諸条件により閾値を選択する。判定手段101は、相関処理手段100から出力される相関係数と、閾値選択手段102から出力される閾値とを比較して、条件を満たす同一ビームラインに対する符号化送受信回数や、複数のビームライン間にまたがり合成するビームライン数を判定する。
【0058】
図18に、プレスキャンと相関判定手段98の具体的なシーケンスおよび判定方法について、時間的相関と空間的相関を求める場合の例を示す。まず、スキャンを開始する前に、同図(A)のように、ターゲット103を含む関心領域(ROI)104を自動またはトラックボールなどの入力手段を用いて設定する。そして、ターゲット103に対してプレスキャンのビームライン105を設定する。次に、時間的相関を求める場合には、同図(B)に示すように、同一ビームライン105に対して複数回送受信する。図示例では、同一ビームラインに対して6回送受信し、それぞれの受信信号間の相関係数を求める。ここで、受信信号の相関係数の演算例を説明する。例えば、受信信号S1と他の受信信号S2との相関係数は、各受信信号の同一位相の代表点を例えば等間隔に4点設定し、各代表点1〜4における受信信号の差の絶対値|S1−S2|を加算して、その平均値を求め、さらに一方の受信信号の絶対値|S1|で割ったものを1から引いて求めることができる。これを式で表すと、次式になる。
【0059】
相関係数=1−Σ|S1−S2|/4|S1|
例えば、体動によりターゲット103が動いたため、1回目と2回目、2回目と3回目、3回目と4回目、4回目と5回目、5回目と6回目の各相関係数が、0、0.6、0.7、0.4、0であったとする。ここで、閾値として相関係数が0.4以上の送受信回数を有効とした場合、2回目から5回目の4回の送受信が有効となり、同一ビームラインへの符号化送受信回数は4と判断される。
【0060】
以上より、時間的な変化が小さければ、同一ビームラインに対する符号化送受信回数を増やし、信号感度向上や、タイムサイドローブを低減することができる。また、時間的な変化が大きければ、同一ビームラインに対する符号化送受信回数を減らし、画像のにじみやボケを防ぐことができる。
【0061】
また、空間的相関を求める場合は、同図(C)のように、方向の異なるビームラインに対して送受信する。図示例では、6方向の異なるビームライン105に対して送受信し、それぞれの受信信号間の相関を求める。ここで、第1方向と第2方向、第2方向と第3方向、第3方向と第4方向、第4方向と第5方向、第5方向と第6方向の各相関係数が、それぞれ0、0.4、0.6、0.3、0であったとする。また、閾値として、相関係数が0.4以上の送受信回数を有効とした場合、第2方向から第4方向までの3方向が有効となり、異なるビームラインへの符号化送受信は3方向と判断される。
【0062】
このように、空間的な変化が小さければ、複数のビームライン間にまたがり合成するビームライン数を増やし、信号感度向上や、タイムサイドローブを低減することができる。また、空間的な変化が大きければ、複数のビームライン間にまたがり合成するビームライン数を減らし、画像のにじみやボケを防ぐことができる。また、時間的相関関数及び空間的相関を求め、同一ビームラインに対する符号化送受信回数や、複数のビームライン間にまたがり合成するビームライン数を許容する最大数を判定し、この範囲内で符号化送受信を行なうことにより、画像のにじみやボケを防ぎつつ、所望の信号感度を実現できる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、タイムサイドローブをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる超音波診断装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の超音波診断装置の送信手段の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の超音波診断装置の受信手段の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】図1の超音波診断装置における超音波ビームの送信方法を示す図である。
【図5】図1の超音波診断装置における符号復調手段の動作を示す図である。
【図6】図1の超音波診断装置における符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の一実施例を示す図である。
【図7】図1の超音波診断装置における符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の他の実施例を示す図である。
【図8】図1の超音波診断装置における符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の他の実施例を示す図である。
【図9】従来技術に係る符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の比較例を示す図である。
【図10】従来技術に係る符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の比較例を示す図である。
【図11】従来技術に係る符号変調受信信号およびその復調信号等の波形の比較例を示す図である。
【図12】本発明を適用してなる超音波診断装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図13】図12の超音波診断装置の送信手段の詳細な構成を示すブロック図である。
【図14】図12の超音波診断装置の受信手段の詳細な構成を示すブロック図である。
【図15】本発明を適用してなる超音波診断装置の第3の実施形態における符号復調部の構成および動作を示す図である。
【図16】本発明を適用してなる超音波診断装置の第4の実施形態における符号復調部の構成および動作を示す図である。
【図17】本発明を適用してなる超音波診断装置の第5の実施形態に係るプレスキャンを行なって同一ラインに対する符号化送受信回数や、複数のビームラインにまたがり合成するビームライン数を判定する相関判定手段の一例を示す図である。
【図18】図17の第5実施形態の動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 探触子
3 送信手段
5 受信手段
7 送受分離回路
9 走査口径切替回路
11 符号復調手段
13 信号処理手段
15 画像処理手段
17 表示部

Claims (8)

  1. 探触子と、該探触子を駆動する超音波の送信信号を出力する送信手段と、前記探触子により受信される超音波の受信信号を処理する受信手段と、該受信手段により処理された前記受信信号に基づいて画像を再構成する画像処理手段と、該再構成された画像を表示する表示手段とを備えてなり、
    前記送信手段は、元信号をそれぞれ異なる符号により変調して連結した少なくとも4個の符号化送信信号を生成し、該生成された少なくとも4個の符号化送信信号を前記探触子に時間をずらして出力する符号変調手段を有してなり、
    前記受信手段は、前記各符号化送信信号にそれぞれ対応する複数の受信信号をそれぞれ復調する符号復調手段と、復調された受信信号を合成した受信信号を生成する合成手段とを有してなる超音波診断装置。
  2. 前記符号変調手段は、前記元信号をそれぞれ異なる符号により変調して連結した第1及び第2の符号化送信信号と、第2の符号化送信信号の符号の極性が実質的に反転された第3の符号化送信信号と、第1の符号化送信信号の符号の極性が実質的に反転された第4の符号化送信信号とを生成し、
    前記受信手段は、前記第1ないし第4の符号化送信信号にそれぞれ対応する第1ないし第4の受信信号をそれぞれ復調する符号復調手段と、復調された受信信号を合成した受信信号を生成する合成手段とを有してなることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  3. 前記符号は、極性を有する複数の符号からなり、時間軸方向に超音波のエネルギを拡散させるように組まれた符号であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
  4. 前記異なる符号は、一対のゴレイ符号であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
  5. 前記送信手段は、前記第1ないし第4の符号化送信信号を前記被検体内の隣り合う送信方向に配分して送信し、
    前記合成手段は、前記送信方向が隣り合う符号化送信信号に対応する復調された受信信号を合成することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の超音波診断装置。
  6. 前記送信手段は、前記第1ないし第4の送信信号を前記被検体内の隣接する複数の送信方向毎にそれぞれ送信し、
    前記合成手段は、前記複数の送信方向への送信に対応する復調された受信信号を合成することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の超音波診断装置。
  7. 前記送信手段は、同一ビームライン方向に超音波の送信信号を複数回繰返して送信し、前記受信処理手段により受信される前記送信信号に対応する受信信号を取り込んで受信信号相互の相関を求め、該求めた相関に基づいて前記符号化送信信号の数を決定する相関判定手段を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  8. 前記送信手段は、前記複数の符号化送信信号を前記被検体内の異なる送信方向に送信し、前記合成手段は、複数の前記送信方向にまたがって前記符号化送信信号に対応する復調された受信信号を合成するものであり、
    前記送信手段は、ビームライン方向を変えながら超音波の送信信号を繰返して送信し、前記受信処理手段により受信される前記送信信号に対応する受信信号を取り込んで受信信号相互の相関を求め、該求めた相関に基づいて前記合成手段における合成に係る送信方向の数を決定する相関判定手段を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
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