本発明の一実施形態の超音波撮像装置について図面を用いて説明する。
<<第一実施形態>>
図1に示すように、第一実施形態の超音波撮像装置100は、超音波探触子108と、送信部102と、受信部105と、開口合成部25とを有している。超音波探触子108は、複数の送信開口グループ110、111等と、1以上の受信領域109とを有する。送信開口グループ(例えば、110)は、2以上の送信開口110A、110B等を含む。送信開口グループ(例えば、111)は、2以上の送信開口111A、111B等を含む。
送信部102は、図2(a)のように、送信開口グループ(例えば110)に含まれる2以上の送信開口(110A,110B等)から同時に空間符号化した超音波を送信する。この動作を、送信開口グループ110,111等ごとに順番に一巡(1スキャン)以上行わせる。2以上の送信開口(110A,110B等)から送信される超音波は、撮像対象120の所定の位置(送信焦点)に向かって送信されてもよいし、それぞれ異なる方向に向かって送信されてもよい。このとき、超音波は、フォーカス送信されてもよいし,デフォーカス送信されてもよい。フォーカス送信する場合は、送信開口グループ(110,111等)ごとに送信焦点が異なっていても良いし,重なっていても良い。
受信領域109は、撮像対象120からの超音波のエコーを受信し、電気信号を出力する。受信部105は、受信領域の出力に対して、復号部41による復号処理と、整相処理とを施して、図2(b)のように、撮像対象の所望の受信焦点(例えば52)についての受信信号を得る。
送信部102は、複数の送信開口グループ(110,111等)のうち一部の送信開口グループ(例えば、111)が送信する超音波の空間符号化の符号を、他の送信開口グループ(例えば110)が送信する超音波の空間符号化の符号に対して反転させる。これにより、撮像対象120に体動が生じた場合に、図3のように、復号部41の復号処理で受信信号18−1、18−2に生じる不要信号18−1b、18−2bは、送信時の空間符号化の異なる2つの送信開口グループ(110,111)について、位相が反転する。一方、受信焦点52からの本来の受信信号18−1a、18−2aは、位相が反転しない。
開口合成部25は、2以上の送信開口グループ(110、111等)のうち1の送信開口グループ110の送信した超音波で生じたエコーから受信部105が得た所望の受信焦点52について得た受信信号18−1と、別の送信開口グループ111の送信した超音波で生じたエコーから受信部105が得た同一の受信焦点52についての受信信号18−2とを加算処理する。複数の送信開口グループ(110,111等)のうち一部の送信開口グループ(例えば110)は、他の送信開口グループ(111)に対して空間符号化の符号が反転しているため、図3のように、撮像対象120の体動により生じた不要信号18−1b、18−2bを加算処理により打ち消し合わせて低減することができる。また、受信焦点52からの本来の受信信号18−1a、18−2aを足し合わせて強めることができる。
したがって、本実施形態の超音波撮像装置は、空間符号化送受信を行う際に、撮像対象に動きが生じた場合であっても、不要信号18−1b、18−1bに起因して画像にアーチファクトが生じるのを抑制することができる。
なお、送信部102による空間符号化方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、Hadamard空間符号化や、直交したGolay符号による空間符号化等を用いることができる。
つぎに、空間符号化および復号処理の原理について以下説明する。
(空間符号化および復号の原理)
空間符号化により,同時に複数の領域に送信し,どの領域からのエコー信号かを区別して分離する超音波撮像の原理について説明する。
空間符号化は,空間的に符号化された送信事象を使用した撮像手法である。符号化に用いる行列の逆行列を使って,複数方向へ同時に送信した信号を,独立に送信した場合の受信信号として分離することができる。例えば,式(1)に示す2行2列のHadamard行列を符号化行列として用いることができる。
式(1)の行列の逆行列は、それ自身をスケーリングした行列H-1=1/4Hである。この行列を用いることにより、空間符号化された送信信号の生成や受信信号の復号の演算を容易に行うことができる。例えば、送信開口グループ110の送信開口110A,110Bの送信信号を空間符号化する場合、一巡目の送信(第一スキャン)では、行列の行ベクトル[1 1]を使って、送信開口110A,110Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する。これにより、同位相の音波波形が送信開口110A,110Bから同時に送信される。すなわち、図4の波形71を基準波形とすると,波形71を使って送信開口110A,110Bから送信を行う。二巡目の送信(第二スキャン)では行ベクトル[1 −1] を使って、送信開口A,Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する。すなわち、送信開口110A、110Bのうち一方の送信波形の符号を、他方の送信波形に対して逆位相とし,一巡目の送信(第一スキャン)で送信した方向と同じ2方向へ送信を行う。逆位相の波形は,図4の波形72を用いる。
各送信について得られた受信信号をRx=[y1 y2]
tとすると,一方の送信開口(110A)についての受信信号x1、他方の送信開口(110B)についての受信信号x2は、式(2)の復号演算で求めることができる。
なお、ここでは逆行列のスケーリングは無視した。
したがって,それぞれの送信事象で受信した受信信号y1およびy2を同時刻で加算すると,受信信号x1を抽出することができる。一方,減算すると,受信信号x2を抽出することができる。この受信信号の演算過程が復号処理となる。
この空間符号化の概念を,図5を使ってさらに説明する。超音波は,2箇所の送信開口110A,110Bから、上述の符号化を行って2回送信される。エコーは,撮像対象120の点散乱体11から発生する。上記の符号化を行った2回の送信(一巡目の送信Tx1,二巡目の送信Tx)を行う。受信領域(チャネル)109は、それぞれの送信イベントに対しての受信信号R1,R2を受信する。受信信号R1,R2にそれぞれ含まれる受信信号18aは、送信開口110Aの送信によるエコーの信号で,受信信号18bは送信開口110Bの送信によるエコーの信号である。したがって受信信号R1,R2を加算器14で加算すると,送信開口110Bの送信による受信信号18bが打ち消され,送信開口110Aの送信による受信信号18aのみが残る。受信信号R1,R2を減算器15で減算すると,送信開口110Aの送信による受信信号18aが打ち消され,送信開口110Bの送信による受信信号18bのみが残る。したがって,2か所の送信開口110A、110Bからの同時送信によるエコーが混ざった状態の受信信号を,各送信を独立に行った場合の受信信号として分離できる。
ここで、上記復号処理において、2回の送信間において撮像対象120の体動が生じたり、超音波探触子108が撮像対象120に対して動くと、それぞれの送信におけるエコーの伝搬距離が変動する。その結果、各受信信号が互いに時間シフトした状態となる。例えば、図6は、2回の送信中に撮像対象120が超音波探触子108に近づき、受信信号R1に対して受信信号R2の信号出現時間がシフトしている状態を示している。この場合、復号後受信信号HA1、HB1には、打ち消し残りの不要信号18b、18aが生じる。
(不要信号の抑制の原理)
本実施形態では、図3および図7(a)、(b)に示すように、複数の送信開口グループ110、111等のうち1の送信開口グループ110の送信に対応する受信焦点52についての受信信号18−1と、他の送信開口グループ111の空間符号化の符号を反転させた送信に対応する受信焦点52についての受信信号18−2とを加算処理する。これにより、図3のように、撮像対象120の体動により生じた不要信号18−1b、18−2bを打ち消し合わせて低減すると同時に、受信焦点52からの本来の受信信号18−1a、18−2aを足し合わせて強める。
なお,図7(a)に示すように,空間符号化の符号とは,第一回の送信Tx1においては[1 1]であり,第二回の送信Tx2においては[1 -1]であることを指す。この空間符号化の符号を反転させた空間符号化とは,[1 1]と[1 -1]を入れ替えた符号を指し,図7(b)に示すような第一回の送信Tx1においては[1 -1]となり,第二回の送信Tx2においては[1 1]となることを指す。空間符号化の符号の反転は,符号化の順番が[1 1]から[1 -1]であったものを,[1 -1]から[1 1]の順番へ入れ替える動作を行うことにも等しい。
不要信号の抑制の原理を数式を用いてさらに説明する。送信開口グループ110から図7に示すように、空間符号化した2回の送信を行ってそれぞれチャネル109で受信された受信信号R1およびR2は、任意の各周波数ωを用いた複素数exp(jωt)により、下式(3)のように表される。上述の式(2)により、これら受信信号R1とR2を加算器14で加算処理して、一方の送信開口(110A)について復号処理した復号後受信信号H1(18−1)は、下式(3)で表される。
式(3)の復号後受信信号H1(18−1)において、送信開口110Aに対応する本来の受信信号18−1aは、式(3)の第一項であり,打ち消し残った不要信号18−1bは第二項である(図7(a)参照)。
一方,送信開口グループ110とは異なる送信開口グループ111から、空間符号化の符号を送信開口グループ110の2回の送信とはそれぞれ反転させて2回送信を行った場合の受信信号R1とR2、およびこれらを加算処理した復号後受信信号H1
-(18−2)は、下式(4)で表される。
式(4)の復号後受信信号H1-(18−2)において、送信開口110Aに対応する本来の受信信号18−2aは、式(4)の第一項であり,打ち消し残った不要信号18−2bは第二項である(図7(b)参照)。
式(3)と式(4)より,異なる送信開口グループ110と111から送信を行って得た本来の受信信号18−1aと18−2aは、同位相の波形となるのに対し,不要信号18−1bと18−2bは,互いに反転した位相になる。よって、異なる送信開口グループ110と111のそれぞれ2回の送信によって得た復号後受信信号H1とH1-を加算すれば,不要成分が打ち消し合い,必要成分のみを残すことができる。
なお、上述の送信開口グループ111から送信開口グループ110とは空間符号化の順番を入れ変えて(空間符号化の符号を反転させて)行った2回の送信に対する受信信号をRx=[y1 y2]
tとすると,一方の送信開口(111A)についての受信信号x1、他方の送信開口(111B)についての受信信号x2を求める復号処理は、式(5)で表すことできる(式(2)参照)。
このように,空間符号化の符号の順番を入れ変えて2回の送信を行った場合は,2回の送信に対する受信信号R1,R2とすると,受信信号R2,R1を加算器14で加算することで送信開口111Aの送信による受信信号13aのみが残る。受信信号R2,R1を減算器15で減算すると,送信開口111Bの送信による受信信号13bのみが残る。
なお,直交したGolay符号を用いた空間符号化においても,同様に不要成分が打ち消し合い,必要成分のみを残すことができる。直交したGolay符号による空間符号化は,下式(6)のように表す行列を用いる。
ここで,X1とX2は相補関係のペアとなるGolay符号であり,Y1とY2は異なる種類の相補関係のペアとなるGolay符号である。符号Y1、Y2は、X1とX2に対するY1とY2の相互相関関数の和が、全ての点でゼロとなるような符号であり,このような関係を持つGolay符号の組合せを直交したGolay符号と呼ぶ。たとえば,X1=[1 1]とX2=[1 −1],Y1=[−1 1]とY2=[−1 −1]のGolay符号の組合せがある。
このGolay符号による空間符号化を用いた場合,復号処理は以下の式(7)のようになる。式(7)において、Golay符号による空間符号化送信における各送信事象で得られた受信信号をR1,R2とする。
この演算により,Golay符号Xを用いた送信方向からのエコーと,Golay符号Yを用いた送信方向からのエコーを分離する。図27に、直交したGolay符号を使った場合の空間符号化送信と、復号処理を示す。R1はX1との相互相関処理を行う相関処理部54−1と,Y1との相互相関処理を行う相関処理部55−1に入力される。R2はX2との相互相関処理を行う相関処理部54−2と,Y2との相互相関処理を行う相関処理部55−2に入力される。それぞれ加算処理56を得て,復号後受信信号H
A1、H
B1を得る。
この復号処理において、体動が生じ,各受信信号が互いに時間シフトした状態である場合,Golay符号の自己相関関数で生じるタイムサイドローブの打ち消し残りが生じ、Hadamard空間符号化で生じる不要成分と同様に,アーチファクトの原因である不要成分となる。図3で示すHadamard空間符号化を用いた不要成分の打ち消し方法と同様に,Golay符号を用いた場合も、複数の送信開口グループ110、111等のうち1の送信開口グループ110の送信に対応する受信焦点52についての受信信号18−1と、他の送信開口グループ111の空間符号化を反転させた送信に対応する受信焦点52についての受信信号18−2とを加算処理する。これにより、体動により生じた不要信号18−1b、18−2bを打ち消し合わせて低減すると同時に、受信焦点52からの本来の受信信号18−1a、18−2aを足し合わせて強めることができる。
直交したGolay符号を使った場合の空間符号化の場合では,復号処理が異なるだけで,その他の形態は,Hadamard空間符号化をもちいた場合と同様である。以降,Hadamard空間符号化を用いた場合で説明を行う。
<<第二実施形態>>
第二実施形態の超音波撮像装置について説明する。
第二実施形態の超音波撮像装置の基本的な構成は、第一実施形態の装置の構成と同様であるが、第二実施形態では、送信開口グループ(110,111等)はそれぞれ、2つの送信開口(例えば110A,110B)を含む。よって、以下の説明では、送信開口グループを、送信開口ペアと呼ぶ。送信部102は、2以上の送信開口ペア(110,111等)ごとに順番に超音波を送信させる。この際、空間符号化の符号を交互に順番を反転させる。
また、送信部102は、送信開口ペア(110,111等)ごとに順番に送信させる動作を二巡以上繰り返し行わせ、二巡目の送信では、複数の送信開口ペア(110,111等)のそれぞれの空間符号化の符号を、一巡目とは異なる符号にさせる。受信部105の復号部41は、受信領域109の、送信開口ペア(例えば110)の一巡目の送信による出力と、二巡目の送信による出力とを用いて復号処理を行う。
以下、第二実施形態の超音波撮像装置の具体例について詳細に説明する。
<装置の全体構成>
第二実施形態の超音波撮像装置100の全体構成について詳しく説明する。図8は、本実施形態の超音波撮像装置100の具体例の概略構成を示すブロック図である。図8において、第一実施形態の図1の構成と同様の構成は、図1と同じ符号を付す。超音波撮像装置100は、超音波探触子108と送信部102と受信部105と開口合成部25を備える。これらに加えて、制御部106と、ユーザインタフェース(UI)121と、送受切替部101と、画像処理部107と、表示部122とを備えている。UI121は、ユーザからの指示、各種パラメータの入力等を受け付けるインタフェースである。制御部106は、全体の動作を制御する。
超音波探触子108は、所定の配列で1次元または2次元に配列されたトランスデューサを複数個備えている。トランスデューサは、電気信号を音波へ、音波を電気信号へと変換する機能を持つ電気音響変換素子(振動子)である。超音波探触子108は、トランスデューサが配置された面(超音波送受面)を撮像対象120に接触させて使用するのに適した外形に仕立てられている。
配列された複数のトランスデューサは、図9のように、予め定められた複数(P個)のチャネル1091〜109Pに仮想的もしくは物理的に分割されている。各チャネル1091〜109Pは、それぞれ1つもしくは複数のトランスデューサによって構成される。送信時に設定される送信開口110A等は、チャネル1091等と同じ大きさであってもよいし、異なっていてもよい。以下の説明では、一つの送信開口110Aとして、隣り合う複数(図9では、4個)のチャネルを用いる例について説明する。送信開口ペア110をそれぞれ構成する送信開口110Aと送信開口110Bは、ここでは所定の距離だけ超音波探触子108上で離れている例について以下説明するが、一部重なるように形成してもよい。他の送信開口ペア111、112,113、114についても同様である。またすべての送信開口ペアが重なるように形成してもよい。
また、以下の説明では、チャネル1091〜109Pの一つ一つを、受信領域109として用いる。なお、2以上のチャネルを一つの受信領域109として用いることももちろん可能である。
送信部102は、制御部106からの指示に従って、超音波探触子108の予め定めた送信開口ペア(例えば110)を選択し、選択した送信開口ペア110の送信開口110A,110Bに送信させる送信信号を生成する。具体的には、波形種類、送信開口110A,110Bごとの遅延時間、振幅変調、重み付け等を決定し、それに応じた送信信号を生成する。このとき、送信信号は、後述のHadamard空間符号で空間符号化する。
送信部102は、生成した送信信号を、送信開口110A、110Bを構成するチャネルのトランスデューサにそれぞれ受け渡し、送信開口110A、110Bから、Hadamard空間符号で空間符号化した超音波を同時に異なる方向へ送信させる。この動作を、複数の送信開口ペア110〜113等のすべてに順番に実行させる。超音波はフォーカス送信させてもよいし,デフォーカス送信させてもよい。フォーカス送信の場合,送信開口ペア110〜113ごとの送信焦点は、異なっていても構わない。送信部102は、送信開口ペア110〜113等に順番に超音波を送信させる際に、Hadamardの空間符号を交互に反転させる。これを、二巡以上繰り返す。ただし、二巡目は、送信開口ペア110〜113等ごとに一巡目とは異なる符号の空間符号化になるように反転させる。
このように送信を二巡以上繰り返すことにより、一巡目の送信で得た受信信号と、二巡目の送信で得た受信信号とを組み合わせてHadamardの空間符号を復号することができる。なお、フォーカス送信の場合,送信開口ペア110〜113等ごとの送信焦点は,少なくとも一巡目および二巡目の送信において同一にする。
送信開口ペア110〜113等から順に撮像対象120に送信された超音波によって、撮像対象120ではエコーが生じる。エコーは、超音波探触子108の受信領域(チャネル)109で受信される。受信に用いるチャネルは、超音波探触子108のすべてのチャネル1091・・・109Pを用いてもよいし、予め定められた受信開口(アクティブチャネル)内のチャネルのみを用いてもよい。制御部106は、各チャネル1091・・・109Pの受信信号R11,R21...RP1(下付き文字は、チャネルの番号を示し、1は、ある送信開口ペアの一巡目の送信(以下、第一スキャンとも呼ぶ)で得た受信信号であることを示す)を、受信部105に受け渡す。
受信部105は、図10に示すように、第1の記憶部(以下、チャネルメモリと呼ぶ)40と、Hadamardの空間符号を復号する復号部41とを含むチャネル信号処理部20をチャネル1091〜109Pごとに備えている。また、受信部105には、上述した整相加算部22と、第2の記憶部24が備えられている。
図11のように、チャネルメモリ40には、送信開口ペア110〜113等ごとに2つずつの記憶領域40−1,40−2が備えられている。制御部106は、送信開口ペア110の送信開口110A,110Bからの送信によってチャネル1091が得た受信信号R11を、送信開口110A,110B用の記憶領域40−1に格納させる。同様に、制御部106は、他のチャネル1092・・・109Pが、送信開口ペア110の送信開口110A,110Bからの送信によってそれぞれ得た受信信号R21...RP1について、それぞれのチャネルに接続されているチャネルメモリ40の送信開口110用の記憶領域40−1に格納させる。
その後、制御部106は、送信開口ペア111〜113等から順番に送信させるたびに、チャネル1091、1092・・・109Pがそれぞれ得た受信信号R11,R21...RP1を、それぞれのチャネルに接続されているチャネルメモリ40内の対応する送信開口ペア用の記憶領域40−1に格納させる。
次に、制御部106は、送信開口ペア110〜113から順番に、二巡目の送信(第二スキャン)を送信部102に行わせ、得られたチャネル1091、1092・・・109Pの受信信号R12,R22..RP2を、それぞれのチャネルに接続されているチャネルメモリ40内の対応する記憶領域40−2に順次格納させる。
復号部41は、Hadamard空間符号を復号するために、加算器14と、減算器15と、受け渡し部16と、第一および第二受け取り部17−1,17−2とを備える構成である。二巡目の送信(第二スキャン)が終了したならば、制御部106の制御下で、復号部41は、送信開口ペア110用の記憶領域40−1、40−2から受信信号R11、R12を読み出し、復号部41内の受け渡し部16へ入力させる。制御部106は、受け渡し部16に,空間符号化の符号の順番を反転させていない送信で得られた受信信号の場合は,受信信号R11を復号部41の第一受け取り部17−1へ入力させ,受信信号R12を第二受け取り部17−2へ入力させる。一方,空間符号化の符号の順番を反転させた送信で得られた受信信号の場合は,受信信号R11を第二受け取り部17−2へ入力させ,受信信号R12を第一受け取り部17−1へ入力させる。制御部106は、図11のように,第一受け取り部17−1および第二受け取り部17−2の信号をそれぞれ加算器14と減算器15にそれぞれ入力させる。上で述べた,送信開口ペア110用の記憶領域40−1、40−2から受信信号を入力させた場合,加算器14の加算処理により、送信開口110Aからの送信によって得られた受信信号(以下、復号後受信信号と呼ぶ)H1A1(下付き数字は、チャネルの番号を示し、下付きのAは、送信開口110Aに対応する復号後受信信号であることを示し、半角の1は、1番目に得られた復号後受信信号であることを示す)が得られる。減算器15による減算処理により、送信開口110Bからの送信によって得られた復号後受信信号H1B1(下付き数字は、チャネルの番号を示し、下付きのBは、送信開口110Bに対応する復号後受信信号であることを示し、半角の1は、1番目に得られた復号後受信信号であることを示す)が得られる。
同様に、制御部106は、他のチャネル1092・・・109Pに接続されたチャネルメモリ40についても、それぞれ復号部41に受信信号を入力させ、送信開口110Aからの復号後受信信号および送信開口110Bからの送信による復号後受信信号を演算させる。
整相加算部22は、各チャネル信号処理部20から出力される送信開口110Aに対応する復号後受信信号H1A1、H2A1、H3A1・・・にそれぞれ、所定の受信焦点に焦点を結ぶ遅延時間を与え、合算処理をさせる(受信ビームフォーミング)。これにより、復号後信号H1A、H2A、H3A・・・を整相加算した受信信号HsumA(sumは、整相加算後であることを示し、下付きのAは、送信開口110Aに対応する受信信号であることを示す)を得る。
このとき、整相加算部22は、パラレルビームフォーミングを行い、図12に示したように、送信開口110Aの超音波の照射領域に、送信開口110Aを中心とした予め定めた広がり角でM本の受信走査線(beam#1〜#M)を設定し、それぞれの受信走査線上に予め定めた間隔でG個の受信焦点31−1〜31−Gを設定する。それぞれの受信焦点について、復号後受信信号H1A1、H2A1、H3A1・・・の焦点を結ばせるために、受信焦点の位置に応じた遅延カーブ32a,32b,34a,34b等に対応する遅延時間を設定し、整相加算後の受信信号HsumAを得る。すなわち、整相加算部22は、送信開口110Aに対応する復号後受信信号H1A1、H2A1、H3A1・・・から、G×M個の受信焦点についての整相加算後の受信信号HsumAをそれぞれ得る。これにより、図12の複数の受信走査線が配置された扇形領域35−110Aの受信焦点の遅延整相データを生成することができる。すなわち、送信開口110Aについての復号後受信信号によって,扇形領域35−110Aの像(すなわち、受信焦点の集合)が生成される。
なお、受信走査線の本数は、送信開口110Aの送信ビームの中心軸を超音波中心として2〜8本程度形成することも可能であるし、送信開口110Aの指向角30(例えば90°)内に、32本,64本,128本等の多数の受信走査線を並列に生成することも可能である。
図12では、遅延時間のカーブ32a,32b、34a、34bが送信開口110Aの中心を時刻ゼロとする遅延法で求められている例を示しているが、送信焦点位置を時刻ゼロとする遅延法(仮想音源法)を用いることももちろん可能である。
受信ビームの集合体の形状は、扇型形状であっても、探触子108におけるチャネル109の表層面の法線ベクトル方向にビーム方向を選んだような受信ビーム形状であっても良い。また、送信する送信ビームの範囲内を網羅するような任意の複数ビームの集合体であってもよい。また、図12において,探触子108は直線上に配置されたリニア型の形状であるが、素子配置が湾曲したコンベックス形状であってもよい。また、送信ビームの走査方式がセクタ型であっても良い。
同様に、整相加算部22は、各チャネル信号処理部20から出力される送信開口110Bからの送信に対応する復号後信号H1B、H2B、H3B・・・を整相加算した受信信号HsumBを得る。このとき、整相加算部22は、パラレルビームフォーミングを行い、送信開口110Bの超音波の照射領域に、送信開口110Aを中心とした予め所定の広がり角でM本の受信走査線(beam#1〜#M)を設定し、それぞれの受信走査線上に予め定めた間隔でG個の受信焦点31−1〜31−Gを設定する。それぞれの受信焦点について、復号後受信信号H1B1、H2B1、H3B1・・・の焦点を結ばせるための遅延時間32a,32b,34a,34b等を設定し、整相加算後の受信信号HsumBを得る。すなわち、整相加算部22は、送信開口110Bに対応する復号後受信信号H1B1、H2B1、H3B1・・・から、G×M個の受信焦点についての整相加算後の受信信号HsumBをそれぞれ得る。これにより、図2(b)のように扇形領域35−110Bの像が形成される。
図10の第2の記憶部24は、図13のようにG×M個の受信焦点の整相加算後の受信信号Hsumを格納するための記憶領域を、送信開口ペアの送信開口ごとに備えている。整相加算部22は、送信開口110Aについて得たG×M個の受信焦点の整相加算後の受信信号HsumAを図13の送信開口ペア110用の記憶領域24Aに格納する。また、送信開口110Bについて得たG×M個の受信焦点についての整相加算後の受信信号HsumBを図13の送信開口110B用の記憶領域24Bに格納する。
整相加算部22は、送信開口ペア111〜113等についても同様に、各チャネル信号処理部20から出力される一方の送信開口についての復号後受信信号H1A1、H2A1、H3A1・・・から、G×M個の受信焦点についての整相加算後の受信信号HsumAを得る。同様に、他方の送信開口について、G×M個の受信焦点についての整相加算後の受信信号HsumBを得る。そして、第2の記憶部24の送信開口ペア111〜113等ごとの記憶領域24A、24Bに、それぞれの整相加算後の受信信号HsumA、HsumBを格納する。
送信開口ペア111〜113は、超音波探触子108のそれぞれ少しずつずれた位置にあるため、その照射領域は、図2(a)のように、異なる送信開口ペア110〜113同士で一部重なり、図2(b)に示した扇形領域35(受信焦点の集合)も、異なる送信開口ペア110〜113同士で一部重なっている。そのため、ある送信開口ペア110の扇形領域35−110A,Bの受信焦点の一部は、隣接する送信開口ペア111等の扇形領域35−111A,Bの受信焦点と一致している。開口合成部25は、同一位置の受信焦点(例えば、図3の52−1と52−2)の整相加算後の受信信号Hsumを、第2の記憶部24のすべての記憶領域24A,24Bの中から選択して読み出し、加算(合成)する。
本実施形態では、複数の送信開口ペア111〜113の送信時の空間符号化の符号を交互に反転させているため、撮像対象120の体動に起因して復号後受信信号に含まれる不要信号の位相は、送信開口ペアごとに反転している。よって、整相加算後の受信信号を異なる送信開口ペア間で開口合成部25が合成することにより、図3に示したように、撮像対象120の体動に起因して復号後受信信号に含まれる不要信号18−1b、18−2bを打消し合わせて低減することができ、体動に起因するアーチファクトを抑制できる。
本実施形態の超音波撮像装置100は、複数の送信開口ペア110〜113等により二巡以上の送信(スキャン)を行って、連続して撮像対象120の画像を出力することができる。この動作を、図14〜図16を用いて以下説明する。
以下の説明においては、4組の送信開口ペア110〜113を用いて順番に送信を行う。送信開口ペアからの送信を送信走査線と呼び、送信開口ペア110、111、112、113の送信をそれぞれ、送信走査線k=1、2、3、4と呼ぶ。また、送信開口ペアの2つの送信開口から同位相の信号をそれぞれ送信する式(1)の行ベクトル[1 1]の空間符号化を第一空間符号化と、互いに逆位相の信号をそれぞれ送信する行ベクトル[1 −1]の空間符号化を第二空間符号化と呼ぶ。さらに、送信開口ペア110〜113から順に送信することをスキャンと呼び、n巡目の送信(第nスキャン)をスキャン番号nと呼ぶ。
制御部106は、図14のフローに示すように、一巡目の送信(スキャンn=1)(ステップ141〜148)で、各送信開口ペア110〜113について順に送信を行う。このとき、送信開口ペアごとに交互に空間符号化の符号を反転させる。
具体的には、まず、制御部106は、送信走査線k=1(送信開口ペア110)を選択し(ステップ142)、スキャン番号nが奇数かどうか判定する(ステップ143)。スキャン番号nは1(一巡目の送信)であるので奇数であり、ステップ144に進み。そして、送信走査線k(=1)が奇数かどうか判定し(ステップ144)、送信走査線k=1は奇数であるので、第一空間符号化による送信を送信開口ペア110に行わせる(ステップ145)(図15のk=1参照)。制御部106は、チャネル109ごとに得られた受信信号を、チャネル109ごとに接続された図11のチャネルメモリ40の送信開口ペア110用の記憶領域40−1に格納する(ステップ146)。
つぎに、制御部106は、送信走査線番号kをk=2にインクリメントし(ステップ156)、ステップ142に戻って、送信走査線k=2の送信開口ペア111を選択し、k=2が偶数であるので(ステップ144)、第二空間符号化による送信を送信開口ペア111に行わせる(ステップ147)(図15のk=2参照)。制御部106は、チャネル109ごとに得られた受信信号を、チャネル109ごとに接続された図11のチャネルメモリ40の送信開口ペア111用の記憶領域40−1に格納する(ステップ148)。
同様に、送信走査線k=3(送信開口ペア112)については、第一空間符号化した送信を行い、k=4(送信開口ペア113)については、第二空間符号化した送信を行い、それぞれ送信開口ペア112,113用の記憶領域40−1に格納する。
以上により、ステップ155のk=K(K=4)に到達し、スキャン番号n=1(一巡目の送信)が終了する(ステップ155)。これにより、すべての送信開口ペア110〜113用の記憶領域40−1に受信信号が格納された状態となる。しかし、スキャン番号n=1では、まだ記憶領域40−2に受信信号が格納されていないので、復号処理はできない。よって、スキャン番号n=2にインクリメントし(ステップ158)、ステップ142に戻る。
スキャン番号n=2(二巡目の送信)は、n=1とは空間符号化の符号を入れ替えて行う。具体的には、制御部106は、ステップ143、149でnが偶数であるのでステップ150に進み、送信走査線kが奇数(k=1,3)の送信開口ペア111,113については、第二空間符号化した送信を行う(ステップ151)(図15のスキャン番号n=2の送信走査線k=1、3を参照)。制御部106は、チャネル109ごとに得られた受信信号を、チャネル109ごとに接続された図11のチャネルメモリ40の送信開口ペア110、112用の記憶領域40−2に格納する(ステップ152)。また、制御部106は、送信走査線kが偶数(k=2,4)の送信開口ペア110,112については、第一空間符号化した送信を行う(ステップ153)(図15のスキャン番号n=2の送信走査線k=2、4を参照)。制御部106は、チャネル109ごとに得られた受信信号を、チャネル109ごとに接続された図11のチャネルメモリ40の送信開口ペア111、113用の記憶領域40−2に格納する(ステップ154)。
以上により、スキャン番号n=2におけるステップ155のk=K(K=4)に到達し、スキャン番号n=2(二巡目の送信)が終了する。すべての送信開口ペア110〜113用の記憶領域40−2に受信信号が格納された状態となる。これにより、すべての送信開口ペア110〜113の記憶領域40−1、および40−2に受信信号が格納されたので、復号処理が可能になる。よって、ステップ157でステップ159に進み、復号化処理を行う。
制御部106は、ステップ159において、送信開口ペア110を選択し、送信開口ペア110用の記憶領域40−1,40−2に格納されている受信信号を、復号部41に受け渡させる。復号部41は、復号後受信信号HA,HBを生成する(ステップ160、161)。さらに復号後受信信号HA,HBを、それぞれパラレルビームフォーミングにより整相加算部22で整相加算させる(ステップ162)。これにより、2つの送信開口について、それぞれ図2(b)および図16(a)のように、扇形領域35−110A,35−110Bを設定し、予め定めたM本の受信走査線(beam#1〜#M)上のそれぞれG個の受信焦点31−1〜31−Gについて、整相加算後の受信信号HsumA,HsumBを得る。制御部106は、得られた扇形領域35−110A、35−110Bの整相加算後受信信号HsumA,HsumBを、図13の第2の記憶部24の送信開口ペア110用の記憶領域24A,24Bに格納する(ステップ163)。
上記ステップ159〜163をすべての送信開口ペア111〜113について、それぞれ扇形領域のG×M個の受信焦点の整相加算後受信信号HsumA,HsumBを得て、各送信開口ペア111〜113用の記憶領域24A,24Bに格納するまで繰り返す(ステップ164)。
制御部106は、予め定めておいた複数の位置Mのうちの一つの位置について、その位置と同じ座標の受信焦点の整相加算後受信信号を、図16(b)のように、すべての送信開口ペア110〜113用の記憶領域24A,24Bから読み出す(ステップ165)。開口合成部25は、図2(c)および図16(c)のように、読み出された同じ座標の複数の整相加算後受信信号を加算することにより合成し、図13の記憶部34に格納する(ステップ167、168)。上記ステップ165〜168を、すべての位置Mについて完了するまで繰り返す(ステップ169)。すべての位置Mについて、合成が終了したならば、画像処理部107は、記憶部34に格納された合成後の整相加算後受信信号を、位置ごとに並べることにより画像を構築する(ステップ170)。構築した画像は、表示部122に表示される。
その後、制御部106は、ステップ158に戻って、スキャン番号nをインクリメントし、スキャン番号n=3(三巡目の送信)を行う。制御部106は、三巡目の送信では、ステップ146,148において、受信信号を記憶領域40−1、40−2に格納する。よって、ステップ157において、ステップ159〜170に進むことにより、記憶領域40−1に格納されたスキャン番号n=3(三巡目の送信)で得られた受信信号と、記憶領域40−2に格納されたスキャン番号n=2(二巡目の送信)で得られた受信信号を用いて復号化処理を行って復号化後受信信号を得て、画像を構築することができる。これにより、スキャン番号n=2以降は、スキャンごとに撮像対象120の画像を構築して順次表示することができる。
このように、ステップ165〜169において、同一の位置の整相加算後受信信号を合成することにより、空間符号化の符号の異なる複数の送信で得た整相加算後受信信号を加算することができる。よって、撮像対象120の体動等に起因する不要信号18−1b、18−2bを打消し合わせて抑制することができ、ステップ170で構築される画像は、アーチファクトが抑制されている。
なお、図14のステップ141〜157では、制御部106は、スキャン番号nが奇数回のときに、送信走査線kが奇数で第一空間符号化の送信を、偶数のときに第二空間符号化の送信を行わせ、スキャン番号nが偶数のときは、送信走査線kが偶数で第一空間符号化の送信を、偶数のときに第二空間符号化の送信を行わせる構成であったが、第一空間符号化と第二空間符号化を入れ替えることも可能である。
また、送信開口ペア110〜113ごとの扇形領域35の重なり具合は、受信焦点の位置によって異なる。このため、ステップ165において選択される整相加算後受信信号の数は、受信焦点の位置によって異なるが、異なったまま合成しても構わない。また、本来受信すべき信号18−1a、18−2a等の強度を、合成される整相加算後受信信号の数に応じて補正する処理を行うことも可能である。
ここで,ステップ167で整相加算後受信信号を合成することで、不要信号が抑制される原理を数式を用いてさらに説明する。図15のスキャン番号n=2の送信走査線番号k=1の時点(送信番号K+1とする)で得られた受信信号(エコー)が,スキャン番号n=1の送信走査線番号k=1の送信(送信番号1とする)に対して出現時間がΔTシフトしているとする。この場合,スキャン番号n=2のときに、ステップ161における復号処理(加算処理)で、送信開口110Aについて得られる信号H1は、上述の式(3)で表す通りである。この信号が,図3の受信焦点52−1における信号とする。
一方、送信開口111Aの受信焦点52−2の信号は,スキャン番号n=1の送信走査線番号k=2の時点での送信(送信番号2とする)と,スキャン番号n=1の送信走査線番号k=2の時点での送信(送信番号K+2とする)の送信で得られた受信信号(エコー)によって生成される。このため、スキャンを繰り返している間,体動が一様であれば,送信番号1と送信番号2の送信の間に生じる体動による時間シフトは,単純にΔτ=ΔT/Kと表される。また,送信番号2と,送信番号K+2の送信による受信信号は,互いに出現時間がΔTシフトしている。したがって,送信番号2と送信番号K+2の送信におけるエコーによる復号処理(加算処理)で、送信開口111Aについて得られる信号H2は,上述の式(4)を用いて、下式(8)のように表すことができる。この信号が、図3の受信焦点52−2の信号に相当する。
Kは、送信走査線(送信開口ペア)の数であり、一般的な探触子108の大きさを考慮すると、超音波診断装置の送信走査線(送信開口ペア)の数は、100本以上になる。したがって,ΔτはΔTに対して十分小さく,ほとんど0に近いと見なすことができる。このため,式(8)で表される受信焦点52−2の信号H2は,式(4)で表される信号H1-とほとんど等価となる。受信焦点52−1と焦点52−2の信号を,開口合成処理によって加算すると、式(3)と式(4)の第二項目に当たる不要信号が互いに打ち消し合い,アーチファクトを抑圧した画像を生成することができる。
なお、図15に示した例では、制御部106が、送信開口ペア110の送信開口110Aを探触子108の端部に設定し、送信開口110Bを探触子108の中央に設定し、他の送信開口ペアの送信開口が順次、隣合うように設定している。この場合、送信走査線k=Kの送信開口ペアのA側の送信開口(送信走査線#aK)は、送信開口110B(送信走査線#b1)と隣り合う。隣り合う送信開口から送信される超音波の空間符号化の符号は、異なっている方が、不要信号をより低減することができる。
なお、本実施形態は、図15の送信開口ペア(送信走査線)の配置に限定されるものではない。図15の配置の場合、上述したように走査線#aKと走査線#b1は隣り合い、隣り合う位置は、探触子108の中央部である。上述したように、k=1とk=Kの送信による受信信号の時間差ΔTは、上述するΔτよりも大きく、開口合成を行っても不要信号の打ち消し残りは、他の送信走査線の組み合わせよりも大きくなる可能性がある。そのため、走査線#aKと走査線#b1が隣り合う位置が、探触子108の中央部にあると、画像の中心付近に、打消し残りの不要信号のアーチファクトが出現する可能性がある。そこで、画像中心におけるアーチファクトを避けるため,送信開口ペア(送信走査線)の配置を、次のような構成にしてもよい。
例えば,図17のように、送信走査線が連続して送信される領域を探触子108の中心に位置した構成とする。具体的には、k=1の送信開口110Aの位置は、探触子108の端部からではなく,端部からずれた位置にする。具体的には、図17のように探触子108の長さの1/4程度ずれた位置にk=1の送信開口110Aを配置すると、探触子110の中央領域では、隣り合う走査線の番号を連続させることができる。また図28に示すような,送信走査線の配置にしてもよい。
また、本実施形態では、復号処理に用いる2つの受信信号が得られる送信開口の位置が同位置であれば、送信走査線は、探触子108に沿って順番にならんでいなくてもよい。すなわち送信開口Aと送信開口Bの送信領域の位置が、各スキャンにおいて同じであれば,送信走査線の探触子108上の位置は、並んでいなくてもよい。したがって,図18に示すように、ランダムに送信走査線を設定する構成にしてもよい。
これらの送信走査線(送信開口ペア)の探触子108上での配置のパターンは,制御部106が,撮像条件にしたがって適切に選ぶ構成にしてもよいし,ユーザが選ぶことができる構成にしてもよい。例えば、図19に示すように、送信走査線の配置のパターンを複数種類格納した格納部124を、超音波撮像装置100内に配置し、制御部106が適切なパターンを選択するか、もしくは、UI121を介して、ユーザからの選択を受け付ける。これは,図14のフローチャートのステップ142で行われる。制御部106は,選択したパターンにしたがって,送信部102と受信部105の動作を制御する。
なお、本実施形態の超音波撮像装置は、図10に示したように、復号部41の後に整相加算部22を配置しており、復号処理後に整相加算処理を行う構成であったが、整相加算処理を復号処理の前に行ってもよい。その場合,復号部41を整相加算部22の後に配置すればよいため、復号部41を受信チャネル109ごとに配置する必要がなく、受信部105の回路規模を小さくすることができる。なお、復号部41は、復号処理のため、各チャネルが受信した送信ごとの受信信号を2回用いる必要がある。そのため、第1の記憶部(チャネルメモリ)40から整相加算部22が2回づつ読みだして整相処理後、復号部41に受け渡す構成にすることが可能である。もしくは,図20に示すように,第1の記憶部40の代わりに、チャネル109ごとに複製器21を配置し、1回の送信事象で得られた各チャネルの受信信号を、複製器21によって2つの複製された信号R11、R11’(下付きの数字はチャネルの番号を示し,ダッシュは2回目の読み出し(もしくは複製後)の信号であることを示し,1は、一巡目の送信(第一送信)で得た受信信号であることを示す)を出力するように構成することも可能である。整相加算部は、2つの信号R11、R11’をそれぞれ別々に整相加算処理する。また、整相加算部22の後には、ビームメモリ23を配置し、その後段に復号部41を配置する。
複製器21が生成した2つの同一の受信信号受信信号R11、R11’は,整相加算処理部22へ受け渡される。制御部106は、整相加算処理部22に各チャネルの受信信号R11に送信開口Aからの送信ビーム軸上の領域の各点に焦点を結ぶ遅延時間を与えてRsumA1を得,ビームメモリ23の記憶領域23A−1に保存する。同様に,制御部106は、整相加算処理部22に各チャネルの受信信号R11’に開口Bからの送信ビーム軸上の領域の各点に焦点を結ぶ遅延時間を与えてRsumB1を得,ビームメモリ23の記憶領域23B−1に保存する。
二巡目の送信(第二送信)においても,制御部106は、同様にしてRsumA2とRsumB2を得,ビームメモリ23の記憶領域23A−2および23B−2にそれぞれ保存する。
制御部106は記憶領域23A−1,23A−2から受信信号RsumA1とRsumA2を読み出し,復号部41の加算器14に入力させる。加算器14の加算処理により送信開口110Aからの送信による整相後復号化受信信号HsumA(sumは、整相加算後であることを示し、下付きのAは、送信開口110Aに対応する整相後復号化受信信号であることを示す)が得られる。また,制御部106は、記憶領域23B−1,23B−2から受信信号RsumB1とRsumB2を読み出し,復号部41の減算器15に入力させる。減算器15の減算処理により送信開口110Bからの送信による整相後復号化受信信号HsumB(sumは、整相加算後であることを示し、下付きのBは、送信開口110Bに対応する整相後復号化受信信号であることを示す)が得られる。
この整相加算後の受信信号HsumAおよびHsumBはそれぞれ送信開口110A、110Bに対応する扇形領域35内のある受信焦点のデータである。
<第三実施形態>
第三実施形態の超音波撮像装置について、図21〜図25を用いて説明する。
第三実施形態は、第二実施形態と同様の構成であるが、開口合成部25が、同一の受信焦点についての複数の整相後受信信号を重み付けした後加算する点で第二実施形態とは異なる。具体的には、開口合成部25は、同一の受信焦点についての複数の受信信号の重みを、複数の受信信号が得られた時間のばらつきの中心に近い受信信号ほど重く設定する。
図21に示すように,各送信走査線(k=1〜K)で得られた同一の受信焦点52−1〜52−Kについての整相加算後受信信号18−1〜18−Kは、本来の受信信号18−1a〜18−Kaは互いに同位相であり,不要信号18−1b〜18−Kbは交互に反転した位相となる。
第三実施形態では,図21のように、開口合成部25内に重み付け部32を配置する。重み付け部32は、受信信号18−1〜18−Kの振幅に重み付けを行い,その後,加算する。重み付け部32−1,32−2・・・32−Kは、時系列に生成された受信信号18−1〜18−Kのうち、時系列の中心時間に近いものほど大きく重み付けすることが望ましい。これにより、図21のように本来の受信信号119aをより強め、不要信号119bをより抑制した開口合成後の画像を得ることができる。
図22を用いて具体的な構成を説明する。本実施形態は、第二実施形態の超音波診断装置100内に図22のように,重みテーブル格納部86を配置する。制御部106は、各受信焦点における受信信号18−1〜18−K(HsumA(m,σ,k))に対する重みデータ(w(m,σ,k))を,重みテーブル格納部86から読み出し,重み付け部32−1,32−2・・・32−Kに設置する(図23(a),(b))。ただし、mは、受信走査線の番号、σは、受信走査線における受信焦点の番号、kは、送信走査線の番号を示す。重み付け部32−1,32−2・・・32−Kは、受信信号18−1〜18−Kにそれぞれ重みデータ(w(m,σ,k))を乗算する。その後,合成部25は、重み付けされた受信信号を合成する(図23(c))。他の構成は、第二実施形態の超音波撮像装置と同様な構成である。
第三実施形態についてさらに説明する。復号部41が、時系列に生成する受信焦点52についての整相加算後受信信号18−1〜18−Kに含まれる、本来の受信信号18−1a〜18−Kaは、図21に示すように、常に同位相の波形である。これらの受信信号は、図24(a)のように撮像対象120の動きによって少しずつ時間方向にシフトした状態である。そのため、図24(a)のように単純にこれらの受信信号を加算した開口合成後のデータよりも、図24(b)のように、信号出現時間(受信時間)の中心(時系列の中心)に近いものほど重みづけを大きくしてから開口合成部25で開口合成した後のデータの方が、信号の時間軸方向の広がりが小さくなり、空間分解能が向上する。
一方、復号部41が、時系列に生成する受信焦点52についての整相加算後受信信号18−1〜18−Kに含まれる不要信号18−1b〜18−Kbは、交互に逆位相の波形となる。これらの信号も少しずつ時間シフトした状態であるため、すべての信号を加算するより、時間シフトが小さい信号同士(不要信号18−1bと18−2b、不要信号18−2bと18−3b)をそれぞれ加算して不要信号を最小限にしてから、加算結果同士を加算した方が、全体の不要信号成分を抑圧させることができる。これは、時系列な遅延整相データの時系列の中心に近い信号ほど重みづけを大きくして加算することと等価である。
このように、時系列の中心時間に近い復号化復号後受信信号ほど大きく重み付けすることにより、合成後の本来の受信信号119aの時間軸方向の広がりを抑えて空間分解能を向上させ、かつ、不要信号119bをより抑制することができる。
受信信号に重みづけを行って加算を行う具体的な方法としては、ガウシアンフィルタを使った高画質化画像処理の方法と同様の方法を用いることができる。例えば,同じ受信焦点52についての3つの整相加算後受信信号を開口合成する場合に、各信号に対して重み付け係数α、β、γを乗算してから加算する。時系列の中心となる信号に乗算するβは、その前後の信号に乗算するするα、γよりも大きい値に設定する。たとえば、ガウシアン関数の中心の最大振幅値をβに用い、その前後の任意の2点に相当する値をα、γに用いる。また、ガウシアン関数の他に、二項分布に基づいた二項係数値[1 2 1]の要素をα、β、γの重み付け係数にそれぞれ割り当ててもよい。
このとき、送信を行う送信走査線の順番が図15のように、探触子108の端から順番に配置されている場合,重み付けの方法は,1つの走査線における受信信号に対して,受信走査線の位置に沿って重み付けを行うことと同等である。例えば,図25(a)に示すように,1つの送信走査線について受信走査線を9本設定する場合は,それぞれの受信走査線に1から70の2項係数による重み付けを行う。各送信走査線の受信焦点52について,重み係数を見ると,図25(b)に示すように,受信焦点52の位置は,送信走査線の番号が大きくなるほど内側の受信走査線に移動する。このため,受信焦点52について開口合成される受信信号を、中心近い受信走査線の受信信号ほど振幅が大きくなる重み付けがされる。
したがって,図25(b)に示すように,第二の記憶部24に記憶されたすべての整相後受信信号に対し、受信走査線の番号が中心に近い受信信号ほど大きい重み付けを行う重み付け部250を合成部25に配置すればよい(図26参照)。
なお、図25(b)では,送信走査線の間隔が、受信ビームの間隔とちょうど等しくなる場合を例に記載している。
なお、上述の実施形態では、図14のフローチャートを用いて超音波撮像装置の動作を説明したが、制御部106は、CPUが予め定めたプログラムを読み込んで実行することにより図14の動作を実現させるソフトウエア構造であってもよいし、ASIC(application specific integrated circuit)等のハードウエア回路や、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルハードウエア回路の動作によって実現するハードウエア構造であってもよい。また、開口合成部25の動作についても同様であり、ソフトウエアによって実現される構造であっても、ASICやFPGA等のハードウエア回路によって動作を実現する構造であってもよい。送信部102や受信部105についても同様である。