本発明の実施形態について説明する。
<<第一実施形態>>
本発明の第一の実施形態の超音波撮像装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の超音波撮影装置の全体構成を示すブロック図であり、図2(a),(b),(c)は、送信される超音波と撮像点(受信焦点)の設定範囲等を概念的に示す説明図であり、図3は、送信開口グループの送信順番の例を示す説明図であり、図4は、送受信の動作を示すフローチャートである。
図1に示すように、第一実施形態の超音波撮像装置100は、超音波探触子108と、送信部102と、受信部105を有している。超音波探触子108は、異なる位置に設定された少なくとも2組の送信開口グループ110、111等と、1以上の受信開口109とを有する。送信開口グループ110は、例えば2以上の送信開口110A、110B等を含む。送信開口グループ111は、例えば2以上の送信開口111A、111B等を含む。超音波探触子108は、電気信号を音波へ、音波を電気信号へと変換する機能を持つ超音波素子(電気音響変換素子、振動子とも呼ばれる)を1次元または2次元の所定の配列で配置した構成である。送信開口110A等および受信開口109は、1つもしくは複数の超音波素子を含むように設定される。
送信部102は、図2(a)のように、一つの送信開口グループ(例えば110)に含まれる2以上の送信開口(110A,110B)から同時に空間符号化した超音波を撮像対象120に対して送信する(図4のステップ140、141)。送信のたびに、送信を行う送信開口グループを変更し、複数の送信開口グループ110,111から順番に送信を行わせる(図3)。このとき、送信部102は、連続して送信を行う2組の送信開口グループ(例えば110と111)の超音波の撮像対象への照射領域33が、一部重なるように送信させる。なお、図3では、一例として4組の送信開口グループ110〜113から順に送信を行う例を示しているが、この場合、4組の送信開口グループ110〜113のうち連続して送信を行う2組の送信開口グループ(110と111、111と112、112と113)の照射領域33がそれぞれ一部重なるように送信させる。
受信開口109内の超音波素子は、送信部102による超音波の送信のたびに、送信された超音波の撮像対象120からのエコーを受信し、電気信号(受信信号)を出力する(図4のステップ142)。受信部105は、撮像対象120内に連続して送信された超音波の、照射領域33が重なる範囲に、図2(b)のように1以上の撮像点(受信焦点とも呼ぶ)52を設定する。受信部105は、受信開口109の出力を用いて、撮像点52についての受信信号を得る(ステップ143)。2回目以降の送信である場合には、今回の送信で撮像点52についてステップ143で得た受信信号と、前回の送信で同一の撮像点52についてステップ143で得た受信信号とを復号処理し、撮像点52についての復号後受信信号を得る(ステップ144、146)。
複数の送信開口グループ110,111等の数が、3以上ある場合には、順番に各送信開口グループから送信し、所望の撮像点について受信信号を得ることにより、送信のたびに、その前の送信において同一の撮像点について得た受信信号との間で復号処理する(ステップ147,145)。これにより、送信のたびに、復号後受信信号を得ることができる。
このように、本実施形態では、n−1回目とn回目の送信事象によって連続して送信される超音波の照射領域33(例えば、図2(a)の33−(n-1)A,(n-1)Bと33−nA、nB)が重なるようにし、この重なる領域135−nA,135−nBに設定した1以上の撮像点52について受信信号を得る(図2(c))。ただし、領域135−nA,135−nBのnは、n回目の送信とその前のn−1回目の送信の照射領域がなる領域であることを示す。アルファベットのAは、A側の開口による照射領域であり、アルファベットのBは、B側の開口による照射領域であることを示す。これにより、送信のたびに撮像点52について得た受信信号と、その前の送信で得た撮像点52について得た受信信号とを復号処理して復号後受信信号を得ることができる。よって、符号化送受信でありながら、送信のたびに、1以上の撮像点52の復号後受信信号が得られ、撮像点52の集合である画像の構築を行うことができる。よって、送信から画像構築までの実質時間を短縮することができ、リアルタイム性を高めた高フレームレート撮像を行うことができる。
なお、送信間で超音波の照射領域33が重なる領域が、撮像点52を設定して復号後受信信号を生成可能な領域となるため、送信間で照射領域33が重なる領域が大きくなるように設定することが、フレームレート向上の観点から望ましい。そのため、例えば、A側の送信開口の照射領域33同士、および、B側の送信開口の照射領域33同士がそれぞれ送信間で重なるように設定することが望ましい。具体的には、図2(a)のように、n−1回目の送信を行う送信開口グループ110の送信開口110Aの照射領域33−(n-1)Aと、n回目の送信を行う送信開口グループ111の送信開口111Aの照射領域33−nAとが一部が重なり、送信開口110Bの照射領域33−(n-1)Bと、送信開口111Bの照射領域33−nBとが一部重なるように設定することが望ましい。なお、送信開口グループ110等の2以上の送信開口(110A,110B等)から送信される超音波は、撮像対象120の同一点に向かって送信されてもよいし、それぞれ異なる方向に向かって送信されてもよい。送信される超音波は、撮像対象120内で送信焦点をもつフォーカス送信であってもよいし,撮像対象120内には送信焦点を持たないデフォーカス送信であってもよい。
また、送信される超音波の空間符号化は、連続して2回送信される超音波のそれぞれの受信信号を用いて復号処理を行うことができるように、送信する超音波の空間符号化に用いる符号を設定する(図3参照)。空間符号化および復号処理については、後で詳しく説明する。
なお、受信開口109が、複数の超音波素子を含む場合には、例えば送信開口111Aから撮像点52に到達した超音波がエコーとなって受信開口109内の複数の超音波素子に到達し受信される。この場合、受信開口109内の各超音波素子の出力信号を、エコーが撮像点52からその超音波素子に到達する時間に応じて遅延させた後加算することにより、撮像点52からのエコーの受信信号(遅延後加算信号)を得ることができる。
一方、受信開口109が一つの超音波素子からなる場合には、その超音波素子の連続した出力から、送信開口111Aから送信されて撮像点52に到達した超音波がエコーとなって受信開口109の超音波素子に到達する時間帯の信号を、抽出することにより、撮像点52からのエコーの受信信号を得ることができる。
本実施形態の超音波撮像装置は、異なる送信開口グループから連続して送信した2回の送信事象によりそれぞれ得た受信信号に基づいて、復号処理を行う。これにより、図3に示すように、送信事象を繰り返すたびに、復号後受信信号を得ることができる。よって、復号処理に必要な受信信号を得るまでに必要な2回の送信事象の間隔が短くなるため、リアルタイム性が高く、かつ、高フレームレートの撮影が可能になる。
なお、ここでは2つの空間符号化された受信信号から復号処理を行う構成について説明したが、3以上の空間符号化された受信信号から復号処理を行う構成にすることももちろん可能である。その場合には、3回以上の送信を連続して行って、得られた3つ以上の受信信号から復号処理を行う。以降、送信のたびに得られる受信信号と、その前2回以上の送信でそれぞれ得られた受信信号の計3つ以上の受信信号を用いて、復号処理を行うことにより、送信のたびに、復号後受信信号が得られ、リアルタイム性および高フレームレート化の効果を得られる。
以下、第一実施形態の超音波撮像装置について具体的に説明する。
<装置の具体的構成>
第一実施形態の超音波撮像装置100の全体構成について詳しく説明する。
図5は、本実施形態の超音波撮像装置100の具体例の概略構成を示すブロック図である。図5において、図1と同じ構成は、同じ符号を付している。超音波撮像装置100は、超音波探触子108、送信部102および受信部105の他に、データ合成部25と、制御部106と、ユーザインタフェース(UI)121と、送受切替部101と、画像処理部107と、表示部122とを備えている。UI121は、ユーザからの指示、各種パラメータの入力等を受け付けるインタフェースである。制御部106は、全体の動作を制御する。
(*超音波探触子)
超音波探触子108は、超音波の送受面に、1次元または2次元に配列された複数の超音波素子を備えている。超音波探触子108の外形は、超音波送受面を撮像対象120に接触させて使用するのに適した外形に仕立てられている。
配列された複数の超音波素子は、図6のように、予め定められた複数(P個)のチャネル1091・・・109Pに仮想的もしくは物理的に分割されている。各チャネル1091〜109Pは、1つもしくは複数の超音波素子によって構成されている。送信時に設定される送信開口110A等は、一つの超音波素子のみを用いてもよいし、チャネル1091等と同じ大きさであってもよいし、複数のチャネル1091等の集合を一つの送信開口110A等として用いてもよい。
以下の説明では、隣り合う複数(図6では、4個)のチャネルの集合を一つの送信開口(例えば110A)として用いる例について説明する。また、一つの送信開口ペア(例えば110)を構成する2つの送信開口110Aと送信開口110Bは、ここでは所定の距離だけ超音波探触子108上で離れている例について以下説明する。ただし、送信開口110Aと送信開口110Bとが一部重なるように設定することも可能である。
超音波探触子108には、複数組の送信開口ペア110、111、112,113がそれぞれ異なる位置に設定されている。
また、以下の説明では、チャネル1091〜109Pの一つ一つを、受信開口109として用いる。なお、2以上のチャネル1091等の集合を一つの受信開口109として用いることも可能である。
(*送信部)
送信部102は、制御部106からの指示に従って、超音波探触子108の予め定めた送信開口ペア(例えば110)を選択し、選択した送信開口ペア110の送信開口110A,110Bに送信させる送信信号を生成する。具体的には、波形種類、送信開口110A,110Bごとに超音波素子に設定する遅延時間、振幅変調、重み付け等を決定し、それに応じた送信信号を生成する。本実施形態では、送信信号を空間符号化する。
空間符号化は,空間的に符号化された送信事象を使用する撮像手法である。所定の行列を用いて符号化した送信信号(超音波)を、複数の送信開口から同時に送信する。複数の送信開口からの同時送信により生じたエコーには、複数の送信開口から同時に送信された超音波によりそれぞれ生じたエコーが重なり合って含まれるが、これらのエコーを受信した受信信号を、符号化に用いた行列の逆行列を用いて復号することにより、複数の送信開口からそれぞれ送信されたエコーの受信信号を分離することができる。
例えば,式(1)に示す2行2列のHadamard行列を符号化行列として用いることができる。
Hadamard行列を用いることにより、空間符号化された送信信号の生成や受信信号の復号の演算を容易に行うことができる。例えば、1回目の送信事象では、送信開口ペア110の2つの送信開口110A,110Bを使って空間符号化送信を行い、2回目の送信事象では、送信開口ペア111の送信開口111A、111Bを使って空間符号化送信を行う場合、1回目の送信事象では,式(1)の行列の1行目の行ベクトル[1 1]を使って、送信開口110A,110Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する。2回目の送信事象では,2行目の行ベクトル[1 −1]を使って、送信開口111A,111Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する。このとき、1回目及び2回目の送信ともに、Hadamard行列の1列目の列ベクトルの符号により符号化された送信波形が,送信開口ペアのうちの所定の一方の側(例えば、A側の送信開口110A,111A)から送信され、2列目の列ベクトルの符号により符号化された送信波形が、所定の他方の側(例えば、B側の送信開口110B,111B)から送信されることが望ましい。したがって、1行目の行ベクトル[1 1]を使って、送信開口110A,110Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する際には、送信開口110Aから送信する送信波形を符号1により符号化し、送信開口110Bが送信する送信波形を符号1により符号化することが望ましい。また、2行目の行ベクトル[1 −1]を使って、送信開口111A,111Bがそれぞれ送信する送信波形を符号化する際には、送信開口110Aから送信する送信波形を符号1により符号化し、送信開口110Bが送信する送信波形を符号−1により符号化することが望ましい。なお、本実施形態では1行目の行ベクトルによる符号化を第1空間符号化と呼び,2行目の行ベクトルによる符号化を第2空間符号化とも呼ぶ。
符号1と符号−1による符号化は、送信波形の位相により実現できる。例えば、図7のように送信波形の位相を反転させた波形を用い、図7の波形71を基準波形、すなわち符号1で符号化された送信波形として用い、反転波形である波形71を符号−1で符号化された送信波形として用いることができる。
よって、1回目の送信事象では、行ベクトル[1 1](第1空間符号化)で符号化された送信波形の超音波,すなわち波形71の超音波を送信開口110A,110Bから同時に送信する。2回目の送信事象では、行ベクトル[1 −1]で符号化された送信波形の超音波、例えば図7の波形71の超音波を送信開口111Aから、波形72の超音波が送信開口111Bから同時に送信する。
これを実現するために、送信部102は、送信開口110A、110Bを構成するチャネルの超音波素子に、符号化した送信波形の送信信号を、それぞれ受け渡し、送信開口110A、110Bから、Hadamard行列で空間符号化した超音波を同時に送信させる(図4のステップ141)。この動作を、複数の送信開口ペア110〜113等のすべてに順番に実行させる(ステップ140、141、145、147)。
送信部102は、複数の送信開口ペア110〜113等に順番に超音波を送信させる際に、図3に示すように、Hadamard行列の1行目と2行目の行ベクトル(第1空間符号化ベクトルと第2空間符号化ベクトル)を交互に用いる。これにより2回目以降の送信では、その送信で得た受信信号と、直前の送信で得た受信信号とを組み合わせてHadamard行列による空間符号化信号を復号することができるため、送信のたびに復号化受信信号を得ることが可能になる(ステップ144、146)。
送信する超音波は、フォーカス送信させてもよいし,デフォーカス送信させてもよい。フォーカス送信の場合,送信開口ペア110〜113ごとの送信焦点は、異なっていても構わない。
(*受信部 遅延加算処理)
送信開口ペア110〜113等から撮像対象120に超音波が送信されると、撮像対象120ではエコーが生じる。超音波探触子108の受信開口(チャネル)109は、超音波が送信されるたびに生じたエコーを受信する(図4のステップ142)。本実施形態では、超音波探触子108のすべてのチャネル1091・・・109Pを受信に用いる例について以下説明するが、予め定められた受信開口(アクティブチャネル)内のチャネルのみを用いてもよい。
受信部105は、図8に示すように、チャネルメモリ40と、遅延加算部21と、第二のメモリ42と,Hadamard行列による空間符号化された信号を復号する復号部41とを備えている。
図9に示すように、チャネルメモリ40にはそれぞれ、送信開口ペア110〜113等からの送信1回で得られる受信信号を記憶するための記憶領域40−1等が,少なくとも1つ備えられている。図9の例では、チャネルメモリ40に2つの記憶領域40−1,40−2がそれぞれ配置され、記憶領域40−1には、奇数回目の送信(n=1、3,5・・)で得られた受信信号が格納される。記憶領域40−2には、偶数回目の送信(n=2,4,6・・・)で得られた受信信号が格納される。受信信号を記憶領域40−1、40−2に格納する際に、以前に格納された受信信号がある場合には、それを消去して今回得られた受信信号を格納してかまわない。これにより、常に直近2回の送信事象で得られた受信信号がチャネルメモリ40の記憶領域40−1,40−2に格納される。
制御部106は、n回目の送信事象によって生じたエコーを受信したチャネル1091〜109Pがそれぞれ出力する受信信号R1n〜RPn(図8参照、ただし、R1n〜RPnの下付き数字およびアルファベットは、チャネルの番号を示し、nは、n回目の送信事象で得た受信信号であることを示す)を、それぞれ対応するチャネルメモリ40の記憶領域40−1に格納させる。なお、チャネルメモリ40を超音波探触子108全体に対して一つ配置し、一つのチャネルメモリ40内に全てのチャネル1091〜109Pの数に対応する数の記憶領域を設けた構成にすることも可能である。
遅延加算部21は、送信開口110Aのエコーを受信した複数の超音波素子の出力する受信信号を、所定の遅延量だけ遅延させた後、合算処理することにより、所定の撮像点52に焦点を結ばせる(受信ビームフォーミング)。そのため、遅延加算部21は、図9のように、遅延量選択部22と、遅延量適用部23と、加算部24とを備えている。また、受信部105には、遅延データ格納部124が備えられている。遅延データ格納部124には、送信開口110A、110B等から照射された超音波を受信した受信開口(チャネル)1091〜109Pの超音波素子の受信信号を、所定の撮像点52に受信焦点を結ばせるための遅延量データが、複数の撮像点52についてそれぞれ予め格納されている。本実施形態では、n回目の送信を行う送信開口(例えば111A,111B)のそれぞれの超音波の照射領域35−nA,35−nB内に撮像点52をそれぞれ設定する。各照射領域35−nA,nBには、2つの送信開口111A,111Bから超音波が到来するが、本実施形態では、近い方の送信開口(例えば照射領域35−nAの場合は送信開口111A、照射領域35−nBの場合は送信開口111B)から送信された超音波のエコーの受信信号を撮像点52に焦点を結ばせるための、遅延量が格納されている。
制御部106は,送信開口(例えば111A,111B)のそれぞれの超音波の照射領域35−nA,35−nB内に、1以上の受信走査線241を図2(b)のように設定し、受信走査線241上に所定の間隔で撮像点52を複数設定する。このとき制御部106は、前回(n−1)回の照射領域35−(n-1)A,35−(n-1)Bと今回(n回)の照射領域35−nA,35−nB内とが重なる範囲135−nA,135−nBにおいては、前回の走査線241および撮像点52と、今回の走査線241および撮像点52が重なるよう設定する。制御部106は,遅延量選択部22に指示し、超音波の照射領域35−nA,35−nB内に設定した撮像点52にそれぞれ受信焦点を結ばせるための遅延量を,遅延量データ格納部124の中から選択させる。そして,制御部106は,遅延量適用部23に指示し、チャネルメモリ40の記憶領域40−1に格納されている各チャネル1091〜109Pの受信信号をそれぞれ読み出させ,遅延量選択部22が選択した遅延量だけ遅延させる。そして,制御部106は、遅延量を適用した各チャネル1091〜109Pの受信信号を,加算部24にチャネル方向に和算させる。これにより、撮像点52について受信焦点を結ばせた遅延加算後の受信信号RnAまたはRnBが得られる(図4のステップ143、および図8参照))。ただし、受信信号RnAまたはRnBのnは、n番目の送信開口ペア、たとえばn=1の場合は、送信開口ペア110による送信で得た受信信号であることを示し,アルファベットAはA側の送信開口111Aの照射領域35−nAの撮像点52についての遅延加算後の受信信号であることを示し、アルファベットBは、B側の送信開口111Bの照射領域35−nBの撮像点52についての遅延加算後の受信信号であることを示す。
制御部106は、上述のように撮像点52について遅延加算後の受信信号を得る処理を、1回の送信事象ごとに照射領域35−nA,35−nBに設定したすべての撮像点52について行って、撮像点52ごとに遅延加算後の受信信号RnAまたはRnBを得る。制御部106は、すべての撮像点52の遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBを第二のメモリ42に格納する。その後、制御部106は、次の送信で得られた受信信号をもう一つの記憶領域40−2から読み出して、すべての撮像点52についての遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBを求めるように、遅延加算部21に指示して、上記処理を繰り返させる。
第二のメモリ42には、図10のように,遅延加算後の受信信号RnAまたはRnBを格納するための、記憶領域42−1、42−2が備えられている。記憶領域42−1には、奇数回目の送信で得た受信信号の、すべての撮像点52についての遅延加算後受信信号RnAおよびRnBが格納される。記憶領域42−2には、偶数回目の送信で得た受信信号の、すべての撮像点52についての遅延加算後受信信号RnAおよびRnBが格納される。遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBを記憶領域42−1または42−2に格納する際に、以前に格納した遅延加算後の受信信号がある場合には、それを消去して今回得られた遅延加算後の受信信号を格納する。これにより、常に直近2回の送信事象で得られた遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBが第二のメモリ42の記憶領域42−1および42−2に格納される。
本実施形態では、図3に示したように、送信のたびに、異なる送信開口ペアを用いるため、記憶領域42−1に格納されている遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBと、記憶領域42−1に格納されている遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBとは、異なる送信開口を用いて連続して送信された超音波によって発生した受信信号である。このとき、本実施形態では、連続して送信される超音波の照射領域(例えば35−(n-1)A、(n-1)Bと、35−nA、nB)が重なり合うように設定しているため、両者の撮像点52も一部重なり合っている。よって、異なる送信で重なり合う撮像点52の遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBを用いて以下のように復号処理を行うことができる。
(*受信部 復号処理)
2回の送信事象によってそれぞれ同一の撮像点52について得た受信信号をy1、y2で表すと、一方の送信開口(例えば111A)からの超音波で生じたエコーの受信信号をx1、他方の送信開口(例えば111B)からの超音波で生じたエコーの受信信号x2は、行列Rx=[y1 y2]
tを用いて、式(2)の復号演算で求めることができる。ただし、H
−1は、式(1)のHadamard行列Hの逆行列である。
なお、ここでは逆行列のスケーリングは無視した。
式(2)より,2回の送信事象で受信した受信信号y1およびy2を同時刻で加算すると,受信信号x1を抽出することができることがわかる。一方,減算すると,受信信号x2を抽出することができる。この演算過程が復号処理となる。
受信部105の復号部41は、図10のように,Hadamard行列による空間符号を復号するために、加算器14と減算器15とを備える構成である。また、復号部41は、第二のメモリ42から遅延加算後の受信データを加算器14および減算器15に受け渡すための受け渡し部16と、受け渡し部16からデータを受け取って加算または減算させるべきをデータを選択して加算器14と減算器15にそれぞれ受け渡す受け取り部17−1,17−2,17−3,17−4を備えている。
第二のメモリ42の記憶領域42−1または42−2に、今回(n回目)の送信事象で得た各撮像点52の遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBが格納されたならば、制御部106の制御下で、復号部41は、第二のメモリ42から記憶領域42−1および42−2の一方から、今回(n回目)の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnA、RnAを読み出すとともに、記憶領域42−1および42−2の他方から、前回(n−1)回目の送信事象で得た各撮像点52の遅延加算後の受信信号R(n-1)A,R(n-1)Bを読み出し、受け渡し部16へ入力させる。受け渡し部16は,制御部106の制御下で、n回目の送信事象の超音波の照射領域(例えば35−nA,35−nB)と(n−1)回目の送信事象の超音波の照射領域(例えば35−(n-1)A,35−(n-1)B)とが重なり合う領域135−nA,135−nB(図2(c)参照)内に含まれるすべて撮像点52を選択する。そして、領域135−nA内の撮像点52について、n回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnAを受け取り部17−1に受け渡す。領域135−nA内の同一の撮像点52について、(n−1)回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号R(n-1)Aを受け取り部17−2に受け渡す。また、領域135−nB内の撮像点52について、n回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnBを受け取り部17−3に受け渡す。領域135−nB内の同一の撮像点52について、(n−1)回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号R(n-1)Bを受け取り部17−4に受け渡す。
本実施形態では、送信事象のたびに、第一空間符号化送信と第二空間符号化送信とを交互に繰り返しているため、n回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnA、RnBと、(n−1)回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号R(n-1)A、R(n-1)Bとは、一方が、式(2)における第一空間符号化送信で得た信号y1であり、他方が、第二空間符号化送信で得た信号y2である。よって、加算器14で両者を加算することにより、式(2)により空間符号化を復号し、A側の送信開口(例えば110A,111A)からの超音波で生じたエコーの受信信号を抽出することができる。また、減算器で両者を減算することにより、式(2)により空間符号化を復号し、B側の送信開口(例えば110B,111B)からの超音波で生じたエコーの受信信号を抽出することができる。
すなわち、受け取り部17−1および17−2は、A側の送信開口(例えば110Aおよび111A)の照射領域が重なり合う領域135−nAの撮像点52についてのn回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnAと、同一の撮像点52について(n−1)回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号R(n-1)Aとを加算器14にそれぞれ受け渡す。これにより,共通の撮像点52について、A側の送信開口(例えば110Aおよび111A)からの送信によって得られた遅延加算後の受信信号を抽出した復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nAが得られる。H(n-1)nAのHは、復号後の信号であることを示し,(n-1)nは、(n-1)番目の送信による受信信号と,n番目の送信による受信信号を復号処理した復号後信号であることを示し,アルファベットAは、A側の送信開口(例えば、110A,111A)の重畳領域135−nAの撮像点52の受信信号であることを示す。
同様に受け取り部17−3および17−4は、B側の送信開口(例えば110Bおよび111B)の照射領域が重なり合う領域135−nBの撮像点52についてのn回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号RnBと、同一の撮像点52について(n−1)回目の送信事象で得た遅延加算後の受信信号R(n-1)Bとを減算器15にそれぞれ受け渡す。これにより,共通の撮像点52について、B側の送信開口(例えば110Bおよび111B)からの送信によって得られた遅延加算後の受信信号を抽出した復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nBが得られる。
これを(n−1)回目の送信とn回目の送信とで超音波の照射領域の重なり合う領域135−nA,135−nBに含まれるすべての撮像点52について行うことにより、各撮像点52において復号が完了する(図4のステップ146)。それぞれの復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nA、H(n-1)nBは、データ合成部25へ送られる。
データ合成部25は、制御部106の制御下で、n回目の送信により復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nA、H(n-1)nBを画像処理部107に受け渡す。領域135−nA,135−nBが操作者が所望する撮像領域の全てを含む場合には、領域135−nA,135−nBの全ての撮像点52についての復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nA、H(n-1)nBを、データ合成部25は画像処理部107に受け渡す。画像処理部107は、各撮像点52の復号後の遅延加算後受信信号H(n-1)nA、H(n-1)nBから撮像領域の各画素値を生成し、画像を生成する。
一方、データ合成部25は、n回目の送信で復号後遅延加算後受信信号を得た領域135−nA,135−nBが、図11(a)のように操作者が所望する撮像領域235の一部である場合には、制御部106の制御下で(n+1)回目以降の所定回数の送信事象を繰り返し、送信事象のたびに領域135−nA,135−nBについて得られた復号後の遅延加算後受信信号を合成する。これにより、撮像領域235のすべての撮像点52について復号後の遅延加算後受信信号を得る。本実施形態では送信事象のたびに、超音波探触子108の異なる位置の送信開口ペア(110〜113等)を用いるため、送信事象の復号後の遅延加算後受信信号が得られる領域135−nA,135−nBの位置が送信事象ごとにずれる。よって、複数の送信事象で得られた復号後の遅延加算後受信信号をデータ合成部25において合成(加算)することにより、撮像領域235のすべての撮像点52についての復号後の遅延加算後受信信号を得ることができる。加算の際に、同一の撮像点52について複数の復号後の遅延加算後受信信号が得られている場合には加算することで、画像の精度を向上させることができる。データ合成部25は、合成後の遅延加算後受信信号を画像処理部107に受け渡す。画像処理部107は、受け取った合成後の遅延加算後受信信号から撮像領域の画像を生成する。
図11(a)から明らかなように、本実施形態では、空間符号化送受信によって、n回目の送信と(n−1)回目の送信でそれぞれ得られた受信信号について復号処理を行うため、2回目の送信以降については、送信のたびに、2つの領域135−nA,135−nBについて復号後の遅延加算後受信信号が得られる。よって、比較例として、図11(b)に示した空間符号化を行わない送受信と比較して、約1/2の送信回数で画像を生成することができ、高速撮像が可能である。また、本実施形態では、比較例と同じ回数の送受信を行った場合には、ほぼ2倍の遅延加算後受信信号が得られるため、情報量の高密度化により高精度の画像を生成することができる。
なお、各送信において用いる送信開口ペア110等の2つの送信開口は、図11(a)の例では、超音波探触子108のチャネルを2つの領域に分け、各送信開口ペアのA側の送信開口(110A,111A,112A,113A等)が超音波探触子108の片側半分に、B側の送信開口(110B,111B、112B、113B等)が、超音波探触子108のもう片側半分に位置するように設定され、かつ、送信開口ペアの2つの送信開口の間隔は、常に超音波探触子108の全体長さの約半分に設定されている。ただし、本実施形態はこのような送信開口ペアの配置に限定されるものではない。例えば、図12(a)のように、送信事象のたびに、送信開口の間隔が変化してもよい。また、図12(b)のように、送信開口の間隔は、一定であるが、超音波探触子108の全体長さの半分よりも小さくてもよい。
<第二実施形態>
本発明の第二の実施形態について説明する。第一実施形態では、図4のステップ143において、n回目の送信において所定の撮像点52について遅延加算後受信信号を求め、この信号と、(n−1)回目の送信において同一の撮像点52について求めた遅延加算後受信信号とを、ステップ146において復号部41において加算器14で加算、または減算器15で減算することにより、復号する構成であった。しかしながら、n回目の送信で用いる送信開口ペア(例えば111)と、n−1回目の送信で用いる送信開口ペア(例えば110)は、超音波探触子108における位置が異なるため、送信開口から撮像対象120の撮像点52までの音波伝搬時間(距離)が送信ごとに異なる。これにより、送信から撮像点52についてのエコー信号を受信するまでの時間が、送信間でずれる撮像領域が存在する。
これを図13を用いて具体的に説明する。送信開口ペアの送信開口の間隔は、各送信において一定とする。図13に示したように、撮像点52について、n−1回目の送信で得た遅延加算後受信信号18−1に、送信開口110Aから送信された超音波のエコーに対応する信号18−1aが発生する時刻をtA1、送信開口110Bから送信された超音波のエコーに対応する信号18−1bが発生する時刻をtB1とする。また、同一の撮像点52について、n回目の送信で得た遅延加算後受信信号18−2に、送信開口111Aから送信された超音波のエコーに対応する信号18−2aが発生する時刻をtA2、送信開口111Bから送信された超音波のエコーに対応する信号18−2bが発生する時刻をtB2とする。このとき、送信開口110Aと送信開口111Aの位置が異なることに起因して、信号18−1aの発生時刻tA1と、信号18−2aとの発生時刻tA2とは、Δtaだけ異なる。また、同様に,送信開口110Bと送信開口111Bの位置が異なることに起因して、信号18−1bの発生時刻tB1、信号18−2bとの発生時刻tB2とは、Δtbだけ異なる。
そのため、このまま、復号部41において加算器14で加算した場合、Δtのずれがない場合と比較して、信号18−1aと信号18−2aとは完全には強め合わず、信号18−1bと18−2bとは、完全には打消し合わない領域が生じる。このため、送信開口110A,111Aから送信された超音波のエコーに対応する信号18−1a,18−2aの抽出性能が低下する。
そこで、第二実施形態では、復号処理におけるエコー信号の抽出性能を高めるために,図14に示すように、ステップ143’において撮像点52についての遅延加算後受信信号を得る際に、n回目と(n−1)回目の送信開口(例えば110Aと111A)が異なることにより送信開口と撮像点52との間の生じる超音波の伝搬時間の差Δtを調整し、よりコヒーレント性の高い信号に変換されたと遅延加算後受信信号を得る。そして、n回目と(n−1)回目の送信でそれぞれ得たコヒーレント性の高い遅延加算後受信信号を用いて、復号処理を行う(ステップ146)。これにより、復号部41において加算器14で加算した際に、Δtのずれがある場合よりも、信号18−1aと信号18−2aとを精度よく強め合わせることができるとともに、信号18−1bと18−2bとをより精度よく打消し合わせ、不要信号である信号18−1b、18−2bの振幅のより小さい復号化後受信信号を得ることができる。これにより、ノイズを低減し、画像の精度を向上させることができる。
具体的には、第二実施形態では、図15のように受信部105に、遅延加算部21に代えて、伝搬時間調整後加算部221を備える。伝搬時間調整後加算部221は、伝搬時間選択部222と、伝搬時間調整部223と、加算部224とを備えている。また、受信部105には、伝搬時間データ記憶部324が備えられている。伝搬時間データ記憶部324には、送信開口から送信された超音波が撮像点52に到達し、撮像点52で生じたエコーが受信開口(チャネル)に到達するまでの時間が、複数の送信開口110〜113等、複数の撮像点52、および、複数の受信開口(チャネル)1091〜109P、の三者の組み合わせにごとに、予め格納されている。
制御部106は,ステップ143’において、伝搬時間選択部222に対して、チャネルメモリ40の記憶領域40−1に格納された超音波の送信開口、受信焦点を結ばせるべき撮像点52の位置を指示し、送信開口から送信された超音波が撮像点52に到達した後各チャネル1091〜109Pに到達する伝搬時間を、チャネル1091〜109Pごとに伝搬時間データ記憶部324から選択させる。そして,制御部106は,伝搬時間適用部223に指示し、チャネルメモリ40の記憶領域40−1に格納されている各チャネル1091〜109Pの受信信号をそれぞれ読み出させ,伝搬時間選択部22が選択した伝搬時間を差し引かせる。伝搬時間を差し引いた受信信号を加算部224で加算することにより、遅延加算後受信信号RnAまたはRnBを得ることができる。この遅延加算後受信信号は、送信間で送信開口が異なっても、超音波の伝搬時間を受信信号から差し引くことにより調整しているため、送信間でよりコヒーレント性の高い遅延加算後受信信号が得られる。
制御部106は、1回の送信事象ごとに照射領域35−nA,35−nBに設定したすべての撮像点52について同様に遅延加算後の受信信号RnAまたはRnBを伝搬時間調整後加算部221に算出させ、第二のメモリ42に格納させる。その後、制御部106は、次の送信で得られた受信信号をもう一つの記憶領域40−2から読み出して、すべての撮像点52についての遅延加算後の受信信号RnAおよびRnBを求めるように、伝搬時間調整後加算部221に指示して、上記処理を繰り返させる。復号部41は、第二のメモリ42に格納された、n回目と(n−1)回目の送信でそれぞれ得たコヒーレント性の高い遅延加算後受信信号を用いて、復号処理を行う(ステップ146)。これにより、復号処理におけるエコー信号の抽出性能を高めることができる。
他の構成は、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
<第三実施形態>
第三実施形態の超音波撮像装置は,第一および第二実施形態の復号処理において打ち消し残った不要信号を抑圧することにより,更に高画質な画像データを得ることのできる構成である。
第一実施形態では図11(a)を用いて説明したように、データ合成部25は、2回目以降の送信ごとに領域135−nA、135−nBについて得られた復号後の遅延加算後受信信号を送信間で加算して画像処理部107に受け渡すことにより、所望の撮像領域235の画像を生成する構成であった。第三実施形態では、n回目の送信後に復号後の遅延加算後受信信号が得られる領域135−nA、135−nBが、n−1回目の送信後に復号後の遅延加算後受信信号が得られる領域135−(n-1)A、135−(n-1)Bまたはn+1回目の送信後に復号後の遅延加算後受信信号が得られる領域135−(n+1)A、135−(n+1)Bに対して一部が重なり合うように設定する。これにより、同一の撮像点52について、復号後の遅延加算後受信信号が2以上得られるため、データ合成部25によってこれらを加算することができる。よって、復号時の打消し残りの不要信号を抑制することができる。
本実施形態を図2、図3、図16を使ってさらに説明する。本実施形態では、図3に示したように、第一実施形態と同様に,複数の送信開口グループ110、111,112等を用いて,空間符号化した超音波を順次送信して受信信号を受信する。このとき、連続する送信で用いる空間符号は、これらの送信の受信信号同士で復号ができるように、例えば、Hadamard符号の第一空間符号と第二空間符号とを送信間で交互に用いる。これにより、図2(c)のように、2回目の送信以降は、送信のたびに、その送信(n回目)の送信領域35−nA、35−nBとその前の送信(n−1回目)の送信領域35−(n−1)A、35−(n−1)Bとが重なり合う領域135−nA、135−nBについて復号後の遅延加算後受信信号が得られる。本実施形態では、この領域135−nA、135−nBが、連続する送信間で重なるように、送信開口グループ110、111、112等の照射領域を設定する。具体的には、n−1回目の送信開口の照射領域35−(n-1)A、35−(n-1)Bと、n回目の送信開口の照射領域35−nA、35−nBと、n+1回目の送信開口の照射領域35−(n+1)A、35−(n+1)Bの3つが重なる領域が形成されるように、それぞれの照射領域を設定する。
n−1回目、n回目、n+1回目の照射領域が重畳する領域の焦点52について、それぞれの送信後に得られる遅延加算後受信信号は、図16の信号18−1,信号18−2,信号18−3のようになる。これらの信号には、復号処理により抽出すべき信号(例えばA側の送信開口の超音波のエコーによる信号18−1a,18−2a、18−3a)と、復号処理により打消し合わせるべき信号(例えばB側の送信開口の超音波の混入エコーによる信号18−1b,18−2b、18−3b)とが含まれている。復号部41は、図16のように、信号18−1と信号18−2とを加算(または減算),信号18−2と信号18−3とを加算(または減算)することにより、抽出すべき信号18−1a、18−2a、18−3aを強め合わせ、混入エコーによる信号18−1b,18−2b、18−3bを打ち消しあわせ、復号後の遅延加算後受信信号19−1,19−2をそれぞれ得る。復号後の遅延加算後受信信号19−1,19−2には、抽出すべき信号19−1a、19−2aの他に、打消し残りの混入エコーによる不要信号19−1b、19−2bが残存する。
このとき、図3のように、送信ごとに第一空間符号と第二空間符号とを交互に用いているため、混入エコーによる信号18−1b,18−2b、18−3bの波形は、交互に反転している。また,送信事象が連続する送信開口グループ同士の位置関係は、隣合っているため、混入エコーの出現時刻は送信事象を追うごとにゆるやかに一定方向に移動する。このため,復号部41による復号後の遅延加算後受信信号19−1に生じる不要信号19−1bと遅延加算後受信信号19−2に生じる19−2bは、互いに反転する関係となっている。
そこで、データ合成部25において、同一の撮像点52についての復号後の遅延加算後受信信号19−1と19−2とを合成(加算)する処理を行うことで不要信号を打ち消し合わせることができ、必要信号をより高感度に抽出することができる。
他の構成は、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
<第四実施形態>
第四実施形態の超音波撮像装置について説明する。
第四実施形態の装置は、第三実施形態の装置と同様の構成であるが、データ合成部25が複数の復号後の遅延加算後受信信号19−1、19−2等を合成する際に、重み付けしてから加算する点が第三実施形態とは異なっている。これにより、必要信号をより高感度に抽出することができる。
図17に示すように,データ合成部25は、合成する複数の復号後の遅延加算後受信信号の重み付けする重み付け部32−1〜32−Kと、重み付け部32−1〜32−Kに重み係数を設定する重み設定部26とを備えている。重み設定部26は、データ合成部25が合成を行う複数の復号後の遅延加算後受信信号が得られた送信が行われた時刻を時系列に並べた場合に、時系列の中心時間に近いものほど大きな重みを設定する。合成する復号後の遅延加算後受信信号の数をK個とすると、例えばK=3の場合,重み係数は時系列にならべた復号後の遅延加算後受信信号に対して順に[1,2,1],K=4の場合は[1,3,3,1]を設定する。重み付け部32−1は、設定された重み係数を復号後の遅延加算後受信信号の振幅に掛けあわせて重み付けを行う。データ合成部25は、重み付け後の信号を加算する。
このように重み付けを行うことにより、データ合成部25により合成後の、復号後の遅延加算後受信信号は、抽出すべき信号119aの振幅がより強められ、不要信号119bの振幅がより抑制される。また,抽出すべき信号119aの時間軸方向の広がりが小さくなるため、生成される画像の空間分解能を向上させることができる。
第三および第四実施形態においては、データ合成部25において合成される復号後の遅延加算後受信信号の数が多いほど,打ち消し残った不要信号を抑圧し,必要信号をより高感度に抽出できる。上述した図11(a)の例では、送信開口が超音波探触子108にK個ある場合、1回目の送信では同時送信する2つの送信開口のうち一方の送信開口は、超音波探触子108の端部の位置:1の位置から,もう一方の送信開口は、超音波探触子108の中央の位置:K/2+1から送信する。2回目以降の送信事象では、送信開口の間隔は一定として、送信開口の位置を同じ方向に徐々にずらす。これにより、K/2回の送信事象を行うことによって、超音波の照射領域で撮像領域を順次スキャンすることができる。このとき、隣合う送信開口同士の照射領域ができるだけ大きく重なるように設定することにより、送信開口に近く、感度が高い(振幅が大きい)遅延後加算受信信号同士で復号処理することのできる撮像点52の領域を大きく設定することができる。また、復号後の遅延加算後受信信号の感度も高くなる。さらに、復号後の遅延加算後受信信号同士をデータ合成部25で合成処理することにより、合成後の信号の感度も高くなる。したがって,図11(a)のように送信開口を一方向に順次選択して得られたエコー信号をつかって,遅延加算,復号,合成処理することで,各撮像点において感度の高い信号同士の信号処理が可能となり,必要信号をより感度高く抽出できる。また,図11(a)の例では、送信開口位置が一様に移動することで,復号処理で生じる不要信号は時系列に緩やかに発生時間が移動するため,合成時に効率的に抑圧できる。よって、送信事象数を必要最小限に抑えてフレームレートを向上させつつ、データ合成部25で合成される信号数を最大化することができる。
また、上述の実施形態では、n回目と(n−1)回目の送信開口(例えば110Aと111A)が異なることによって生じる不要信号を抑圧することについて説明したが、不要信号を撮像対象が送信間で大きく動く場合にも生じる。上記第二,第三および第四実施形態の構成は,撮像対象が大きく動く場合に生じる不要信号についても同様に抑圧でき、同様な高画質化効果が得られる。
なお、本実施形態は図11(a)に示したように送信開口を選択および移動させる構成に限れるものではなく、上述の図12(a)や(b)に示す構成を用いることも可能である。図12(a)や(b)の構成も同様に復号処理に用いる送信事象同士の送信開口位置を空間的に互いに近くすることができ、送信事象数を必要最小限にしつつ合成回数を最大化し,必要信号をより高感度に抽出することができる。
第一から第四実施形態において、送信開口から送信される超音波は、送信される超音波は、撮像対象120内で送信焦点をもつフォーカス送信であってもよいし,撮像対象120内には送信焦点を持たないデフォーカス送信であってもよい。フォーカス送信は、送信開口に含まれる複数のチャンネルの送信信号に対して送信焦点とチャンネルとの超音波伝搬時間(距離)に対応した遅延時間を与えることにより、実現できる。これにより、例えば図18に示したように、撮像領域のある深度に送信焦点171を結んだ送信ビームを照射することができる。送信ビームを照射する場合、遅延加算後受信信号を生成するための遅延量は、仮想音源法などの公知の遅延量計算手法に基づいて算出することができる。送信ビームを送信した場合、感度の高い遅延加算後受信信号を生成できる撮像点52の範囲は、図18に示したように所定の照射領域35に限られるが、第一から第四実施形態で説明したように,送信事象同士の送信開口位置を空間的に互いに近くすることにより、送信焦点171の近傍においても送信間で照射領域35−nA、35−nB等が一部重なるように順次超音波を照射することは可能である。よって、照射領域35が限られた形状の場合であっても、撮像領域の全体に撮像点52を設定して遅延加算後受信信号を生成でき、復号処理することができる。また、データ合成部25で得られた遅延加算後受信信号を合成することにより、感度高く必要な信号を抽出できる。
また,上述の送信ビームを用いる場合,遅延加算後受信信号に発生する、他方の送信開口からの混入エコー信号(たとえば図13の信号18−1b)を抑制することができる。その理由は、送信ビームを用いることにより、回折波(サイドローブ)を低減させることができるためである。これにより、復号後の遅延加算後受信信号119に生じる打ち消し残り信号119を、デフォーカス送信の場合よりも低減することができる。なお、サイドローブの低減は、送信部102や受信部105にサイドローブ低減部を付与することにより実現可能である。サイドローブ低減部は、送信および受信開口にアポダイゼーションを適用する構成や,同時に送信する送信ビームのサイドローブが重ならないような遅延処理を加える構成や,開口幅を小さくする構成を用いることができる。
なお,各実施形態の超音波撮像装置は,図8に示したように、遅延加算部21の後に復号部41を配置した構成であり、遅延量適用部23による遅延処理,加算部24による加算処理,復号部41による復号処理の順番で信号が処理される構成であった。しかしながら、本実施形態は、この順序に限定されるものではなく、遅延処理よりも後に加算処理が行われれば、どの時点で復号処理を行ってもよい。例えば,復号処理,遅延処理,加算処理の順番で信号を処理してもよいし、遅延処理,復号処理,加算処理の順番で信号を処理してもよい。
また、空間符号化の方法は,Hadamard行列による空間符号化に限られるものではなく、他の方法を用いることもできる。例えば、直交Golay符号による空間符号化等を用いることができる。
直交したGolay符号による空間符号化は,下式(3)の行列を用いる。
式(3)において、X1とX2は相補関係のペアとなるGolay符号であり,Y1とY2は異なる種類の相補関係のペアとなるGolay符号である。符号Y1、Y2は、X1とX2に対するY1とY2の相互相関関数の和が、全ての点でゼロとなるような符号である。このような関係を持つGolay符号の組合せを直交したGolay符号と呼ぶ。たとえば,X1=[1 1]とX2=[1 −1],Y1=[−1 1]とY2=[−1 −1]のGolay符号の組合せがある。この空間符号化を用いた場合,復号処理は、式(4)で表される。
上記式(4)の演算を復号部41で行うことにより,Golay符号Xを用いた送信方向からのエコーと,Golay符号Yを用いた送信方向からのエコーを分離することができる。