JP2004207129A - 直接型メタノール燃料電池システム、携帯用電子機器及び直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法 - Google Patents
直接型メタノール燃料電池システム、携帯用電子機器及び直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜5と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンク12とを具備する燃料電池本体と、前記燃料電池本体の前記供給タンク12に前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンク14と、前記第1の液体燃料貯蔵タンク14に前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンク15と、前記第1の液体燃料貯蔵タンク14内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構17とを具備することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接型メタノール燃料電池システムと、この直接型メタノール燃料電池システムを備える携帯用電子機器と、直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報化社会を支える携帯用電子機器の電源として、あるいは大気汚染や地球温暖化に対処するための電源として、燃料電池に対する期待が高まっている。
【0003】
燃料電池のなかでも、メタノールから直接、プロトンを取り出すことにより発電を行う直接型メタノール燃料電池(DMFC)は、改質器が不要であり燃料容積が少なくて済む、という特性により携帯用電子機器への応用も考えられ、多方面への応用の期待が高まりつつある。
【0004】
特開2001−93551号公報には、直接型メタノール燃料電池の液体燃料収容容器を着脱交換可能な容器あるいは液体燃料を補充可能な容器にすることによって、燃料電池の小型化を図りつつ、長時間駆動が可能になることが記載されている。
【0005】
上述した公開公報に記載されたような直接型メタノール燃料電池を携帯用パーソナルコンピュータのような携帯用電子機器の電源として使用する場合、液体燃料収容容器内の残存量が少なくなったら電子機器の運転を退避運転に移行させ、携帯用電子機器に内蔵されているメモリ等のハードディスクにダメージを与えることなく電源をオフにする機構が必要である。退避運転を行なうために必要な残存量は、使用する電子機器の種類により異なるが、通常、数cc程度である。
【0006】
残存量の検出には、例えば、光学的手法を用いた液面センサが使用されているが、数cc程度の量についての測定精度が低いため、残存量が少ないにもかかわらず、退避運転に移行することなく通常運転が続けられ、液体燃料の枯渇により燃料電池の発電が中断されて電子機器に損傷を与えるという問題点を生じる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−93551号公報(段落[0046]〜[0047])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液体燃料の残存量が設定量以下であることを高精度で検出する直接型メタノール燃料電池システムと、この直接型メタノール燃料電池システムを備える携帯用電子機器とを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、高精度な直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の直接型メタノール燃料電池システムは、アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクに前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンク内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る第2の直接型メタノール燃料電池システムは、アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵部と、前記第1の液体燃料貯蔵部に前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵部とを備える貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵部内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る携帯用電子機器は、前記第1の直接型メタノール燃料電池システム及び前記第2の直接型メタノール燃料電池システムのうち少なくとも一方のシステムを備えるものである。
【0013】
本発明に係る直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法は、アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクに前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンクとを具備する直接型メタノール燃料電池システムにおける液体燃料残存量の検出方法であって、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクの前記液体燃料の液量変化により前記第2の液体燃料貯蔵タンクの液体燃料残存量が設定量以下であることを検出する工程を具備することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1、第2の直接型メタノール燃料電池システムと、直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法について説明する。
【0015】
まず、第1、第2の直接型メタノール燃料電池システムが搭載される携帯用電子機器としては、例えば、携帯用パーソナルコンピュータ(PC)、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、携帯電話、携帯用デジタルテレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ等を挙げることができる。
【0016】
本発明に係る第1の直接型メタノール燃料電池システムは、アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクに前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンク内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とするものである。
【0017】
第2の液体燃料貯蔵タンクでは、着脱自在にして未使用のタンクとの交換を可能にしても良いし、着脱自在にせずに外部から液体燃料を補充しても良いが、安全性を考慮すると、着脱自在な構成にすることが望ましい。
【0018】
本発明に係る第2の直接型メタノール燃料電池システムは、アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵部と、前記第1の液体燃料貯蔵部に前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵部とを備える貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵部内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とするものである。
【0019】
貯蔵タンクでは、着脱自在にして未使用のタンクとの交換を可能にしても良いし、着脱自在にせずに外部から液体燃料を補充しても良いが、安全性を考慮すると、着脱自在な構成にすることが望ましい。
【0020】
本発明に係る第1、第2の直接型メタノール燃料電池システムでは、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)の液量変化を液量変化検出機構により検出することによって、第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)の液体燃料残存量が設定量以下であるか否かの判定が行なわれる。
【0021】
すなわち、本発明に係る第1、第2の燃料電池システムでは、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)が供給タンクへの液体燃料の補充を行なうと、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)内の燃料量が減少するが、第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)から第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)に液体燃料が補充されるため、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)の液量を設定値以上に維持することができる。
【0022】
第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)内の燃料量が不足すると、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)が供給タンクへの補充を行なうことによる減少分を第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)が補うことができなくなるため、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)内の液量が設定値より少なくなる。この時に携帯用電子機器の運転を退避運転に切り替えることによって、第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)内の残存量を計測する機器が誤作動した場合にも退避運転に確実に移行させることが可能になる。なお、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)内の設定液量は、携帯用電子機器の退避運転に必要な最低燃料量か、もしくはそれ以上にすることが望ましい。最低燃料量は、使用する機器の種類により異なる。
【0023】
また、第1の燃料電池システムにおいて、第1の液体燃料貯蔵タンクを燃料電池本体からの着脱が自在なものにすることによって、電力を供給する機器の種類に応じて第1の液体燃料貯蔵タンクの容量を自由に変更することが可能になる。
【0024】
液量変化検出機構は、特に限定されるものではなく、誘電率変化、屈折率変化、導電率あるいは抵抗の変化、光の透過率変化などいかなる方法を利用した検出機構でも用いることができる。中でも、液量変化検出機構として二値センサーを使用することが望ましい。第一の液体燃料貯蔵タンク内の燃料が少しでも減少した場合、すぐに機器を退避運転へ移行する必要がある。従って、定常状態では第1の液体燃料貯蔵タンク内の液量を満タンに維持し、液量が減少して満タンでなくなったことを直ちに判別可能な機構にすることが望ましい。そのような理由から、本タンクに設置する液量変化検出機構は満タンか否かの二値を判別可能な二値センサーを使用することが望ましい。
【0025】
供給タンク、第1の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)および第2の液体燃料貯蔵タンク(貯蔵部)は、耐薬品性(耐食性)を考慮すると、ステンレス(SUS304、316等)、チタン、アルミニウム等の金属、フッ素樹脂(PTFE等)、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、メチルペンテン樹脂、ポリウレタンのような熱可塑性樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム(FKM、FPM等)等のゴム等の耐薬品性(耐食性)に優れた材料でそれぞれ形成することが望ましい。これら材料のなかでも、ステンレス、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、天然ゴムが好ましい。
【0026】
本発明に係る第1の直接型メタノール燃料電池システムの一例を図1〜図2を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る燃料電池の第1の実施形態である直接型メタノール燃料電池(DMFC)システムを示す模式図である。図2は、図1の直接型メタノール燃料電池システムの運転方法の一例を示すフローチャートである。
【0028】
この直接型メタノール燃料電池(DMFC)システムの燃料電池本体は、起電部と、アノード流路板6と、カソード流路板8と、メタノール水溶液容器12とを備える。起電部は、アノード集電体(例えば、アノードカーボンペーパー)1及びアノード触媒層2を含むアノード極と、カソード集電体3及びカソード触媒層4を含むカソード極と、アノード極およびカソード極の間に配置される電解質膜(例えば、高プロトン伝導性を有するナフィオン膜)5とを備えるものである。アノード触媒層2に用いられる触媒としては、例えば、被毒の少ないPtRuが挙げられる。アノード触媒層2はその厚さによりメタノール濃度が変化し、この厚さが薄くなる程メタノール濃度が薄くなる。アノード触媒層2の厚さは40μ以上、好ましくは40〜150μmにすることが望ましい。また、アノード触媒層2の多孔度(ナフィオン含有率ε)を0.4〜0.7にすることにより、メタノール水溶液の拡散速度を高くすることができる。一方、カソード触媒層4に用いられる触媒としては、例えばPtが挙げられる。
【0029】
アノード流路板6は、アノード集電体1側に配設されている。このアノード流路板6には、一端がメタノール供給口で、かつ他端がメタノール排出口である蛇行溝形状のアノード流路7が形成されている。一方、カソード流路板8は、起電部のカソード集電体3側に配設されている。このカソード流路板8には、一端が酸化剤供給口で、かつ他端が酸化剤排出口である蛇行溝形状のカソード流路9が形成されている。酸化剤供給口には、送気パイプ10を介して送気ポンプ11が接続されている。この送気ポンプ11により例えば空気のような酸化剤が外部から酸化剤供給口に供給される。
【0030】
メタノール水溶液を収容するためのメタノール水溶液容器12は、送液ポンプ13aを介してアノード流路7のメタノール供給口に接続されている。予備燃料タンク14は、送液ポンプ13bを介してメタノール水溶液容器12に接続されている。また、燃料カートリッジ15は、予備燃料タンク14と接続されている。この燃料カートリッジ15内には、高濃度(例えば98%)のメタノール水溶液が収容されている。燃料カートリッジ15には、残存量計測器16が接続されている。この残存量計測器16は、カートリッジ15内のメタノール水溶液残存量を測定すると共に、機器を安全な状態へ退避するために必要な電力を補償する最低燃料量であるとの測定結果を得ると、この測定結果を信号として機器の電源管理マイコンに伝達する。なお、携帯用電子機器の退避行動に必要な最低燃料量は、電力を供給する機器に応じて変動させることが望ましい。例えば、携帯用パーソナルコンピュータ(PC)として東芝製Librettoを用いる場合、最低燃料量は、5ccにすることが望ましい。また、残存量計測器16には、例えば、誘電率変化、屈折率変化、導電率あるいは抵抗の変化、光の透過率変化などいかなる方法を利用した検出機構でも用いることができる。中でも、抵抗の変化を用いた方法が好ましい。これは電源管理する場合、抵抗の変化=残量として管理できるからである。
【0031】
電源管理マイコンが、燃料カートリッジの液量の測定結果を信号として受信すると、即座に予備燃料タンク14の液面状態が満タンか否かの判別が行われる(図2の33で示す工程)。
【0032】
すなわち、予備燃料タンク14内には、高濃度(例えば、98%)のメタノール水溶液が収容されている。予備燃料タンク14内のメタノール水溶液量は、機器を安全な状態へ退避するために必要な電力を補償する最低燃料量以上である。予備燃料タンク14には、タンク14内の液面が設定水位を下回ったことを検出する液量変化検出機構17(例えば、二値センサー)が取り付けられている。本実施形態では、設定水位を最低燃料量での水位に等しくした。具体的には、予備燃料タンク14の内容積を最低燃料量と等しくし、予備燃料タンク14内の天井に二値センサーを設置した。この二値センサーは、予備燃料タンク14内のメタノール水溶液が満タンの時には作動せず、また、電源管理マイコンに、残存量計測器16による再測定の信号を送信することができる。一方、予備燃料タンク14内のメタノール水溶液が減少すると、タンク内の気液量が変化するため、二値センサーが作動する。その結果、即座に退避運転へ移行するように電源管理マイコンへ信号が送信され、携帯用電子機器は通常運転から退避運転に移行する(図2の工程34)。
【0033】
燃料パイプ18は、一端がメタノール水溶液容器12に接続され、かつ他端がアノード流路7のメタノール排出口に接続されている。気液分離材19は、メタノール水溶液容器12の上面に設けられている。この気液分離材19は、例えば、撥水性の織布や不織布などの撥水性多孔質体から形成されている。メタノール水溶液容器12内の圧力を調整するための気圧調整弁20は、メタノール水溶液容器12の気液分離材19の近くにガス排出口が外側を向くように配置されている。一方、排気パイプ21は、一端がメタノール水溶液容器12に接続され、かつ他端がカソード流路9のメタノール排出口に接続されている。
【0034】
上記のような構成のDMFC電池において、補助の電池により送液ポンプ13a及び送気ポンプ11を作動させる。これにより、メタノール水溶液容器12内のメタノール水溶液がメタノール供給口を通してアノード流路7に供給される。アノード流路板6の凸部分(アノード流路非形成領域)はアノード集電体1と接しており、アノード流路7を流れるメタノール水溶液がアノード集電体1にしみ込むことにより、アノード触媒層2にメタノール水溶液が供給される。
【0035】
また、送気ポンプ11により送気パイプ10を通って酸化剤供給口から取り入れられた空気は、カソード流路板8のカソード流路9を流れ、カソード触媒層4を通過する。
【0036】
アノード触媒層2にメタノール水溶液が供給されると、触媒反応によってプロトン(陽子)が発生し、発生したプロトンが電解質膜5を透過してカソード触媒層4に供給された酸素と触媒上で反応することにより、発電が行われる。
【0037】
なお、供給されたメタノール水溶液のすべてがアノード集電体1にしみ込むわけではなく、残ったメタノール水溶液はメタノール排出口から排出され、燃料パイプ18を通してメタノール水溶液容器12に戻される。この際、反応によって生じた炭酸ガスもメタノール水溶液容器12に収容されることになる。また、カソード触媒層4に残った空気は、酸化剤排出口から排出され、排気パイプ21を通ってメタノール水溶液容器12に収容される。このとき、発電反応により生じた水やこの水が反応熱により気体化した水蒸気もメタノール水溶液容器12に収容される。
【0038】
このようにしてメタノール水溶液容器12内に混入した空気、炭酸ガス、水蒸気などの気体は、一旦、メタノール水溶液中に拡散した後、気液分離材19によりメタノール水溶液と分離され、気液分離材19を通して外部に放出される。気圧調整弁20は、メタノール水溶液容器12の内圧が高くなった際に作動させる。
【0039】
発電の進行に伴い、燃料パイプ18から戻される未反応のメタノール水溶液や排気パイプ21から供給される発電生成水により容器12中のメタノール濃度が薄くなると、送液ポンプ13bが作動して予備燃料タンク14から容器12にメタノール水溶液が補充されるため、容器12内のメタノール濃度を所定値に維持することができる。この予備燃料タンク14から容器12への送液と同期して燃料カートリッジ15から予備燃料タンク14にメタノール水溶液が補充されるため、予備燃料タンク14内のメタノール水溶液量を満タンの状態に維持することができる。
【0040】
燃料カートリッジ15から予備燃料タンク14への送液後、残存量計測器16により燃料カートリッジ15内の残存量の計測が行われるが、最低燃料量よりも多いとの計測結果が得られた場合、このことが信号として電源管理マイコンへ送信される。その結果、二値センサーによる判別が行われるが、予備燃料タンク14内の燃料が満タンであるため、二値センサーは作動せず、図2の31に示すように携帯用電子機器は通常運転を続ける。この際、残存量計測器16が誤作動し、燃料カートリッジ15の燃料残存量が最低燃料量であるとの信号が電源管理マイコンへ送信されていても、予備燃料タンク14の二値センサーが作動しないため、携帯用電子機器は通常運転を続けることができる。なお、二値センサーが作動しない場合、電源管理マイコンに残存量計測器16による再測定の信号が送信されるため、貯蔵カートリッジ15内の燃料の残存量が再計測される。再計測の結果も最低燃料量より多く、かつ二値センサーが作動しない場合、再び、電源管理マイコンに残存量計測器16による再測定の信号が送信される。残存量計測器16による再測定の信号は、二値センサーが作動するまで繰り返し発信される。
【0041】
発電の続行により燃料カートリッジ15のメタノール水溶液の残存量が減少すると、予備燃料タンク14への補充量が減少するため、予備燃料タンク14内の燃料が満タンでなくなる。この場合、残存量計測器16が燃料カートリッジ15内の残存量が最低燃料量に到達していることを検出し、電源管理マイコンに信号を送信するため、二値センサーがオンの状態になり、二値センサーが作動する。その結果、即座に退避運転へ移行するように電源管理マイコンへ信号が送信され、携帯用電子機器は通常運転から退避運転に移行する(図2の工程34)。また、燃料カートリッジ15の燃料残存量が最低燃料量よりも多いと残存量計測器16が誤作動しても、予備燃料タンク14の二値センサーが作動するため、携帯用電子機器は退避運転に移行することができる(図2の工程32)。
【0042】
なお、前述した図1では、DMFC起電部として単セルを用いる例を示しているが、単セルを複数積層したスタック構造のものを起電部として用いることが可能である。
【0043】
また、前述した図1では、燃料カートリッジ15のみが着脱自在な例を説明したが、予備燃料タンク14も着脱自在にすることができる。この場合、予備燃料タンク14の容量を、搭載する機器の退避運転に必要な電力量に応じて自由に変更することができる。また、携帯用電子機器に予備燃料タンクのみを予め組み込んでおくことも可能になる。
【0044】
前述した図1では、予備燃料タンク14が燃料カートリッジ15から独立している例を説明したが、予備燃料タンク14と燃料カートリッジ15とを一体化させたものを貯蔵タンクとし、この貯蔵タンクを燃料電池本体の供給タンクに着脱自在な状態で取り付けても良い。この例を図3に示す。なお、図3では、前述した図1で説明したのと同様な部材については同符号を付して説明を省略する。
【0045】
貯蔵タンクには、中央付近に仕切り板41が設けられ、一方の空間が第1の貯蔵部42として機能し、他方の空間が第2の貯蔵部43として機能する。第1の貯蔵部42と第2の貯蔵部43は、底部付近に設けられた通路44で連通しており、第1の貯蔵部42から第2の貯蔵部43へ燃料が逆流しないように逆止弁46が設置されている。送液ポンプ13bには、貯蔵タンクの第1の貯蔵部42が接続されている。二値センサー47は、第1の貯蔵部42内の上面に設置されている。
【0046】
第2の貯蔵部43内のメタノール水溶液45量が最低燃料量より多い間は、第1の貯蔵部42から送液ポンプ13bを介してメタノール水溶液容器12にメタノール水溶液が供給されると、供給により減少した分だけ、第2の貯蔵部43内のメタノール水溶液45が第1の貯蔵部42に補充される。このため、第1の貯蔵部42内のメタノール水溶液45量を満タンの状態に維持することができ、二値センサー47が作動せず、通常運転を続けることができる。
【0047】
発電を続行していると、第2の貯蔵部43内のメタノール水溶液45量が減少して最低燃料量に到達し、第2の貯蔵部43から第1の貯蔵部42への補充量が少なくなるため、第1の貯蔵部42内のメタノール水溶液45が消費されて満タンの状態でなくなり、残存量計測器16により残存量が最低燃料量であることが検出されると共に、二値センサーが作動する。その結果、電源管理マイコンから退避運転開始の信号が送信され、携帯用電子機器は通常運転から退避運転に移行することができる。
【0048】
第2の貯蔵部43内のメタノール水溶液45量が減少して最低燃料量に到達しているにも拘わらず、残存量計測器16の誤作動により最低燃料量よりも多いと誤判定されると、電源管理マイコンへ信号が送信されないものの、第2の貯蔵部43からの補充量が少なくなるため、第1の貯蔵部42内のメタノール水溶液45が消費されて満タンの状態でなくなる。その結果、二値センサーが作動するため、電源管理マイコンから退避運転開始の信号が送信され、携帯用電子機器は通常運転から退避運転に移行することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、液体燃料の残存量が設定量以下であることを高精度で検出する直接型メタノール燃料電池システムと、この直接型メタノール燃料電池システムを備える携帯用電子機器とを提供することができる。また、本発明によれば、高精度な直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る直接型メタノール燃料電池(DMFC)システムの第1の実施形態を示す模式図。
【図2】図1の直接型メタノール燃料電池システムの運転方法の一例を説明するための流れ図。
【図3】本発明に係る直接型メタノール燃料電池(DMFC)システムの第2の実施形態の要部を示す模式図。
【符号の説明】
1…アノード集電体、2…アノード触媒層、3…カソード集電体、4…カソード触媒層、5…電解質膜、6…アノード流路板、7…アノード流路、8…カソード流路板、9…カソード流路、12…メタノール水溶液容器、13a,13b…送液ポンプ、14…予備燃料タンク、15…燃料カートリッジ、16…残存量計測器、17…液量変化検出機構、19…気液分離材、20…内圧調整弁、42…第1の貯蔵部、43…第2の貯蔵部、45…メタノール水溶液、47…二値センサー。
Claims (5)
- アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクに前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンク内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とする直接型メタノール燃料電池システム。 - 前記第1の液体燃料貯蔵タンクは、前記燃料電池本体からの着脱が自在であることを特徴とする請求項1記載の直接型メタノール燃料電池システム。
- アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵部と、前記第1の液体燃料貯蔵部に前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵部とを備える貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵部内の前記液体燃料の液量変化を検出する液量変化検出機構と
を具備することを特徴とする直接型メタノール燃料電池システム。 - 請求項1〜3いずれか1項記載の直接型メタノール燃料電池システムを備えることを特徴とする携帯用電子機器。
- アノード極と、カソード極と、前記アノード極及び前記カソード極の間に配置される電解質膜と、メタノールを含む液体燃料が収容され、前記アノード極に前記液体燃料を供給する供給タンクとを具備する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体の前記供給タンクに前記液体燃料を補充する第1の液体燃料貯蔵タンクと、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクに前記液体燃料を補充する第2の液体燃料貯蔵タンクとを具備する直接型メタノール燃料電池システムにおける液体燃料残存量の検出方法であって、
前記第1の液体燃料貯蔵タンクの前記液体燃料の液量変化により前記第2の液体燃料貯蔵タンクの液体燃料残存量が設定量以下であることを検出する工程を具備することを特徴とする直接型メタノール燃料電池システムの液体燃料残存量の検出方法。
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