JP2004205763A - 感光性組成物および感光性平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能なポジ型の感光性平版印刷版、これに用いられるポジ型の感光性組成物を提供する。
【解決手段】(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有する感光性組成物;および、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられている感光性平版印刷版。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有する感光性組成物;および、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられている感光性平版印刷版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポジ型の感光性組成物および感光性平版印刷版に関し、特に、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能なポジ型の感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル信号に対応した光照射により直接感光層に画像を書き込む方法が開発されている。本システムを平版印刷版に利用し、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、直接、感光性平版印刷版に画像を形成するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)システムが注目されている。光照射の光源として、近赤外または赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーを用いるCTPシステムは、短時間の露光で高解像度の画像が得られること、そのシステムに用いる感光性平版印刷版が明室での取り扱いが可能であること、などの利点を有している。特に、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになってきている。
【0003】
このような赤外線を放射する固体レーザーまたは半導体レーザーを用いて露光した後、現像液で現像処理することによって画像を形成することが可能なポジ型感光性平版印刷版としては、アルカリ可溶性樹脂(ノボラック樹脂等)、光熱変換剤(染料、顔料等の赤外線吸収剤)および熱の作用によりアルカリ可溶性樹脂を架橋しうる化合物を含むポジ型感光性組成物からなる感光層を有するものが、特開平11−202481号公報に提案されている。
【0004】
ところで最近では、製版現場の作業環境の改善、環境への配慮等の観点から、現像液として有機溶剤やアルカリ性物質を含まないものが要望されている。しかしながら、特開平11−202481号公報に記載のポジ型感光性組成物は、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂をバインダー樹脂として含んでいるので、これからなる感光層を有する感光性平版印刷版は、強アルカリ性の現像液で現像処理する必要があった。
【0005】
水または水性現像液で現像可能、あるいは印刷機上で現像可能な平版印刷版としては、疎水性熱可塑性重合体粒子およびおよび親水性結合剤を含む像形成層を有するネガ型の感光性平版印刷版が、特開平9−131850号公報に提案されている。しかしながら、この感光性平版印刷版は、支持体に対する画像部の接着性、水性現像液による現像性に問題があった。
【0006】
感光層に樹脂微粒子を含む平版印刷版の他の例としては、架橋剤(アミノ樹脂など)と、これと架橋可能な官能基を有する樹脂微粒子と、赤外線吸収剤とを含有する感光層を有するネガ型の感光性平版印刷版が、特開2000−338654号公報に提案されている。しかしながら、この感光性平版印刷版は、アルカリ現像液でしか現像処理することができなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−202481号公報(第2−36頁)
【特許文献2】
特開平9−131850号公報(第2−9頁)
【特許文献3】
特開2000−338654号公報(第2−15頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像可能な塗膜を得ることができるポジ型の感光性組成物、およびデジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能なポジ型の感光性平版印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、自己水分散性樹脂微粒子は、アニオン性基を有する熱可塑性の樹脂微粒子であることが望ましい。
また、メチロール化合物は、多官能メチロール化合物であることが望ましい。
また、本発明の感光性平版印刷版は、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
<感光性組成物>
(a)自己水分散性樹脂微粒子における自己水分散性樹脂とは、分子中に疎水性基とアニオン性基とを有する樹脂である。この自己水分散性樹脂を水中に投入した場合には、界面活性剤などの添加を必要とせずに、樹脂自身が微粒子となって水中に分散し、安定に存在する。この自己水分散性樹脂が微粒子となったものを、本発明においては自己水分散性樹脂微粒子と呼ぶ。本発明による自己水分散性樹脂は、熱可塑性樹脂であることが望ましい。
(a)自己水分散性樹脂微粒子は、具体的には、カルバニオン、スルホアニオン、ホスホアニオンなどのアニオン性基を有する、スチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ビニルケトン樹脂、などを水中に分散させて得られる樹脂微粒子である。より具体的には、アニオン性を発揮できるカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ビニルケトン樹脂を塩基性化合物を用いて水中に分散させることによって得ることができるものである。
【0012】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための樹脂(以下、前駆体樹脂と記す)としては、例えば、アニオン性の発現基を有する1種以上の単量体と、疎水性基を有する1種以上の単量体との共重合体が挙げられる。
アニオン性の発現基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸を示す。
疎水性基を有する単量体としては、例えば、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−フェニルスチレン、4−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−n−ヘキシルスチレン、4−n−オクチルスチレン、4−n−ノニルスチレン、4−n−デシルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−n−ドデシルスチレンなどのスチレン単量体類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビフェニルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体類;ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル単量体類;エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン単量体類、などが挙げられる。
特に、アニオン性の発現基を有する単量体として(メタ)アクリル酸および疎水性基を有する単量体としてスチレン単量体類を共重合させてなるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が、本発明における(a)自己水分散性樹脂微粒子として好ましく用いられる。
【0013】
スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体におけるスチレンまたはスチレン誘導体の含有率は、樹脂微粒子の疎水性を高め、現像液に対する溶解度をより低下させるために、60〜85質量%とすることが好ましい。また、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体におけるアクリル酸またはメタクリル酸の含有率は、湿熱保存安定性を向上させるために、15〜40質量%とすることが好ましい。
また、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体に、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステルなどをグラフト重合させて、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる外層と、スチレン重合体または(メタ)アクリル酸エステル重合体からなる内層とを有するコア・シェル型樹脂微粒子としてもよい。このコア・シェル型樹脂微粒子は、良好な耐スクラッチ性、広い現像ラチチュードなど、複数の特性を合わせ持つことができる。
【0014】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための前駆体樹脂は、例えば、スチレン、スチレン誘導体または(メタ)アクリル酸エステル、およびアクリル酸またはメタクリル酸を含有する単量体混合物を共重合させることで得ることができる。このときの重合方法は、塊状重合、ブロック重合、溶液重合等、各種方法が利用でき、中でも簡便な溶液重合が好ましく、使用する溶媒は有機溶媒であることが好ましい。
【0015】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジ置換アミド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、2種類以上を混合して用いることもできる。また、例えば転相乳化法によって(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る場合、転相乳化が容易な、水と親和性のある溶媒や、転相乳化後に容易に除去できる低沸点の有機溶媒を使用するのが好ましい。そのような溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0016】
溶液重合の際に使用する重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ2−エチルへキサノエート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
【0017】
また、(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための前駆体樹脂は、上述の単量体に、必要に応じて、(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、n−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド単量体類;N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの窒素原子含有単量体類などを共重合させたものでもよい。
【0018】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径は1nm以上10μm未満であることが好ましい。該粒子の粒径が小さいほど造膜性が良好となり、膜強度に優れた平滑な塗膜を得ることができるため、上記範囲内では粒径が小さい方が好ましい。しかしながら、平均粒径が1nm未満では、粒子を形成する熱可塑性樹脂の分子量が小さくなり、耐溶剤性が低下するなど、画像形成後の画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、平均粒径が10μm以上では、感度や解像度が下がる傾向にある。
【0019】
カルボキシル基等を多量に有する高酸価樹脂を使用すると、粒子の現像液に対する溶解度が高くなりすぎ、非露光部の溶解度が十分低下せず、感度が高くなりすぎる。スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる樹脂微粒子においては、共重合体の酸価は、5〜300mgKOH/gの範囲が好ましい。
特に、アクリル酸を用いた場合は、より少ない含有率で酸価の高い共重合体を得ることができるため、スチレンまたはスチレン誘導体以外の構成単量体を第三成分として使用できるとともに、現像幅(ラチチュード)が広くなることからより好ましい。
【0020】
(a)自己水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は40℃以上であることが好ましい。Tgが40℃未満であると、室温での保存時に該粒子の融着が進行し現像性の低下をもたらす傾向にある。中でも、感光性組成物を支持体に塗布した後、乾燥塗膜を得るため、加熱乾燥する場合もあるので、Tgが50℃以上であることがより好ましい。
【0021】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の質量平均分子量は、1000〜15万の範囲が好ましい。質量平均分子量が1000未満では、画像形成して得られる画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、15万を超える範囲では、粒子化することが困難となる傾向になる。
【0022】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲が特に好ましい。(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量が10質量%より少ない場合には、画像部の基板への接着性が悪く、版取れが生じやすくなる傾向があり、(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量が90質量%より多い場合には、非画像部に膜残りが多くなる傾向がある。
【0023】
(b)光熱変換剤とは、光を吸収して熱を発生する物質である。このような物質としては、例えば、種々の顔料または染料が挙げられる。
本発明で使用される顔料としては、市販の顔料、および、カラーインデックス便覧「最新顔料便覧日本顔料技術協会編、1977年刊」、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)等に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、その他ポリマー結合色素等が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染め付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0024】
これらの中でも、特に、近赤外から赤外線領域の光を吸収して効率よく熱を発生し、しかも経済的に優れた物質として、カーボンブラックが好ましく用いられる。また、このようなカーボンブラックとしては、種々の官能基を有する分散性のよいグラフト化カーボンブラックが市販されており、例えば、「カーボンブラック便覧第3版」(カーボンブラック協会編、1995年)の167ページ、「カーボンブラックの特性と最適配合及び利用技術」(技術情報協会、1997年)の111ページ等に記載されているものが挙げられ、いずれも本発明に好適に使用される。
【0025】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、また公知の表面処理を施して用いてもよい。公知の表面処理方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等の反応性物質を顔料表面に結合させる方法などが挙げられる。これらの表面処理方法については、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている。
本発明で使用される顔料の粒径は、0.01〜15マイクロメートルの範囲にあることが好ましく、0.01〜5マイクロメートルの範囲にあることがさらに好ましい。
【0026】
本発明で使用される染料としては、公知慣用のものが使用でき、例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編、昭和45年刊)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編、朝倉書店、1989年刊)、「工業用色素の技術と市場」(シーエムシー、1983年刊)、「化学便覧応用化学編」(日本化学会編、丸善書店、1986年刊)に記載されているものが挙げられる。より具体的には、アゾ染料、金属鎖塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、インジゴ染料、キノリン染料、ニトロ系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、アジン染料、オキサジン染料等の染料が挙げられる。これらの染料の中でも、近赤外から赤外領域の光を吸収するものが特に好ましい。
【0027】
近赤外光もしくは赤外光を吸収する染料としては、例えば、シアニン染料、メチン染料、ナフトキノン染料、スクワリリウム色素、アリールベンゾ(チオ)ピリジニウム塩、トリメチンチアピリリウム塩、ピリリウム系化合物、ペンタメチンチオピリリウム塩、赤外吸収染料等が挙げられる。
【0028】
(b)光熱変換剤は、上記の顔料または染料の中から、後述する光源の特定波長を吸収し、熱に変換できうる適当な顔料または染料を少なくとも1種を選び、感光性組成物に添加することにより使用される。特に760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に極大吸収波長(λmax )を有する(b)光熱変換剤を使用すると、得られる感光性平版印刷版を明室下で取り扱えるようになるため、より好ましい。
【0029】
(b)光熱変換剤の添加量は、概ね、レーザー光の波長域に対する感光性組成物の吸光度が0.5〜3程度となるように調節するが、具体的には感光性組成物の全固形分に対して、0.5〜70質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲がより好ましい。0.5質量%より少ないと熱の発生が少ないため、露光部の現像液に対する溶解性が不十分となる傾向があり、また、70質量%より多い場合は、感光性平版印刷版表面が傷つき易くなったり、非画像部の汚れが生じ易くなったりする。
【0030】
(c)メチロール化合物は、分子内にメチロール基(−CH2−OH )を有する有機化合物であり、熱により(a)自己水分散性樹脂微粒子と反応し、露光部を水または水性現像液へ溶解可能な状態にする物質である。
(c)メチロール化合物としては、N−メチロール化合物、トリメチロール化合物類およびその縮合物等が挙げられる。N−メチロール化合物としては、メチロール尿素化合物、下記一般式(I)で表されるメチロールメラミン化合物、メチロールエチレン尿素化合物、メチロールプロピレン尿素化合物、メチロールジヒドロキシエチレン尿素化合物、メチロールウロン化合物、トリメチロールトリアゾンなどが例示される。また、N−メチロールアクリルアミドおよび/またはN−メチロールメタクリルアミドからなるN−メチロール化合物およびその誘導体も含まれる。トリメチロール化合物としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等が挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1〜R6は、それぞれ−CH2−OH または水素原子を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは−CH2−OH である。)
中でも、熱変性効果が優れている点で、トリメチロールメタン、トリメチロールペンタン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどのメチロール基を2つ以上有する多官能メチロール化合物が好ましい。
【0033】
(c)メチロール化合物の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、15〜70質量%の範囲が好ましく、25〜60質量%の範囲が特に好ましい。(c)メチロール化合物の含有量が15質量%より少ない場合には、熱変性が不十分で、画像強度が得られない傾向があり、(c)メチロール化合物の含有量が70質量%より多い場合には、未反応メチロール基が残存し、保存安定性が悪くなる傾向がある。
【0034】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、着色材(染料、顔料)、界面活性剤、可塑剤、安定性向上剤を加えることができる。
好適な染料としては、例えば、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチレンブルー、エチルバイオレット、ローダミンB等の塩基性油溶性染料などが挙げられる。市販品としては、例えば、「ビクトリアピュアブルーBOH」〔保土谷化学工業(株)製〕、「オイルブルー#603」〔オリエント化学工業(株)製〕、「VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩)」〔保土谷化学工業(株)製〕、「D11」〔PCAS社製〕等が挙げられる。顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンレッド等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリ(2−クロロエチル)、クエン酸トリブチル等が挙げられる。
さらに、公知の安定性向上剤として、例えば、リン酸、亜リン酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、ジピコリン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等も併用することができる。
これら各種の添加剤の添加量は、その目的によって異なるが、通常、感光性組成物の固形分の0〜30質量%の範囲が好ましい。
【0036】
<感光性組成物の調製>
本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子を水に分散させた分散体に(b)光熱変換剤を添加し、さらに(c)メチロール化合物、必要に応じて公知の添加剤を添加する方法;(b)光熱変換剤を水に分散させた分散体に(a)自己水分散性樹脂微粒子を添加し、さらに(c)メチロール化合物、必要に応じて公知の添加剤を添加する方法等により得ることができる。本発明においては、前者の方法が簡便であり好ましい。
【0037】
本発明の感光性組成物を調製する際に使用する分散機としては、例えば、超音波分散機、サンドミル、アトライター、バールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、ディスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー、ペイントコンディショナーなどが挙げられる。また、このとき有機溶媒を併用してもよく、その際には、水と均一に溶解しうる低沸点の有機溶媒の使用が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。
【0038】
本発明の感光性組成物は、平均粒径が1nm以上10μm未満の(a)自己水分散性樹脂微粒子を含有する場合、保存安定性を低下させるおそれのある界面活性剤を特別使用せずに塗装でき、平滑で良好な塗装面を得ることが特徴である。そのため、通常の使用においては特別な助剤を必要とはしないが、例えば、粘度調整のための天然水溶性高分子や合成水溶性高分子;レベリング剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性の有機溶媒;ビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、又はメタアクリル酸ヒドロキシエチルのホモポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、ゼラチン、多糖類等の天然高分子等の親水性結合剤等を、必要に応じて添加してもよい。一方、長期保存を目的としない場合には、適宜界面活性剤を使用しても構わないが、その量は少量であることが好ましい。
【0039】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を水に分散させた分散体を得る方法としては、例えば、塊状の樹脂を粉砕する粉砕法;(a)自己水分散性樹脂微粒子溶液を乳化剤とともに水中に添加して樹脂を乳化させる乳化法;転相乳化法;乳化重合法などが挙げられる。中でも、樹脂を塩基性化合物で中和し、水中に分散させることによって(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る転相乳化法が、乳化剤を使用しないことや、平均粒径が1nm以上10μm未満の水分散体を容易に得ることができるなどから好ましい。
【0040】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る方法を、転相乳化法を例に挙げて具体的に説明する。
樹脂の有機溶媒溶液に塩基性化合物の水溶液を添加し、これを攪拌することにより、樹脂を中和し、水中に分散させる。
塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類;アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基性化合物類などが挙げられる。特に、アンモニアは、画像形成後の画像部のインキ着肉性や、耐刷性を損なわないことから好ましい。
【0041】
塩基性化合物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径が1nm以上10μm未満となるような量を添加する。一般に、カルボキシル基の0.8〜3.0当量に相当する塩基性化合物を添加することが好ましい。このとき使用する撹拌装置は、ホモミキサー等の通常の撹拌装置や、乳化分散機等の剪断力を与えるような分散機を用いることができる
【0042】
他に、塩基性化合物で中和した樹脂の有機溶媒溶液に、水を加える方法;水に、塩基性化合物で中和した樹脂の有機溶媒溶液を加える方法;塩基性化合物を含む水に、樹脂の有機溶媒溶液を加える方法等で行ってもよい。
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体は、有機溶媒を含有していてもよい。得られる該分散体はチンダル現象を呈するコロイド分散体である。
【0043】
<感光性平版印刷版>
本発明の感光性平版印刷版は、支持体と、該支持体上に設けられた、上述の感光性組成物からなる感光層とを有して概略構成される。
ここで、感光層は、光照射により発生した熱を利用することから、感熱性層と称しても構わないが、ここでは便宜上感光層と称する。
【0044】
支持体としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス、鉄等の金属板;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエチレン等のプラスチックフィルム;合成樹脂を溶融塗布あるいは合成樹脂溶液を塗布した紙、プラスチックフィルムに金属層を真空蒸着、ラミネート等の技術により設けた複合材料;その他印刷版の支持体として使用されている材料が挙げられる。これらのうち、特にアルミニウムおよびアルミニウムが被覆された複合支持体の使用が好ましい。
【0045】
アルミニウム支持体の表面は、保水性を高め、感光層との密着性を向上させる目的で表面処理されていることが望ましい。そのような表面処理としては、例えば、ブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学的エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト等の粗面化処理、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、特に電解エッチングの使用を含む粗面化処理が好ましい。
電解エッチングの際に用いられる電解浴としては、酸、アルカリまたはそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられる。これらの中でも、特に、塩酸、硝酸、またはそれらの塩を含む電解液が好ましい。
【0046】
さらに、粗面化処理の施されたアルミニウム支持体は、必要に応じて酸またはアルカリの水溶液にてデスマット処理される。このようにして得られたアルミニウム支持体は、陽極酸化処理されることが望ましい。特に、硫酸またはリン酸を含む浴で処理する陽極酸化処理が望ましい。
【0047】
また、必要に応じて、ケイ酸塩処理(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、フッ化ジルコニウム酸カリウム処理、ホスホモリブデート処理、アルキルチタネート処理、ポリアクリル酸処理、ポリビニルスルホン酸処理、ホスホン酸処理、フィチン酸処理、親水性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、スルホン酸基を有する水溶性重合体の下塗りによる親水化処理、酸性染料による着色処理、シリケート電着等の処理を行うことができる。
【0048】
また、粗面化処理(砂目立て処理)および陽極酸化処理後、封孔処理が施されたアルミニウム支持体も好ましい。封孔処理は、熱水、および無機塩または有機塩を含む熱水溶液へのアルミニウム支持体の浸漬、または水蒸気浴等によって行われる。
【0049】
本発明の感光性平版印刷版は、好ましくは不揮発分が1〜50質量%に調製された感光性組成物を支持体表面に塗布し、これを乾燥して支持体上に感光層を形成させることによって製造される。
【0050】
感光性組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング等の方法が用いられる。感光性組成物の塗布量は、10ml/m2 〜100ml/m2 の範囲が好適である。
【0051】
支持体上に塗布された感光性組成物の乾燥は、通常、常温で行われる。短時間で乾燥させるために、30〜150℃で10秒〜10分間、温風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いて乾燥を行ってもよい。
感光性組成物の塗布量は、乾燥質量で通常、約0.5〜約5g/m2 の範囲である。
【0052】
本発明の感光性平版印刷版は、コンピュータ等からのデジタル画像情報を基に、レーザーを使用して直接版上に画像書き込みができる、いわゆるコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)版として使用できる。
【0053】
本発明で用いられるレーザーの光源としては、発振波長が300nmから950nmまでの各種半導体レーザー、炭酸ガスレーザー(発振波長;10.6nm)、YAGレーザー(発振波長;532nm・1064nm)、エキシマレーザー(発振波長;193nm・308nm・351nm)、アルゴンレーザー(発振波長;488nm)等が挙げられる。いずれのレーザーも、光源の特定波長を吸収し、熱に変換できうる適当な顔料または染料((b)光熱変換剤)を前述した中から選び、感光性組成物に添加することにより使用できる。
【0054】
本発明においては、感光性平版印刷版を明室で取り扱うことができることから、近赤外から赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーが最も好ましく用いられる。このような近赤外から赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーとしては、760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に最大強度を有する各種レーザー、例えば、半導体レーザー、YAGレーザー等が挙げられる。
【0055】
本発明の感光性平版印刷版は、感光層にレーザー光を用いて画像を書き込んだ後、これを現像処理して非画像部が湿式法により除去されることによって、画線部が形成された平版印刷版となる。現像処理に使用される現像液としては、水、または水性現像液を使用できる。
ここで、水性現像液とは、印刷時に使用される各種湿し水などの水性溶液であり、着色剤、界面活性剤、可塑剤、キレート剤、安定向上剤等を含有していてもよいpH3.0〜10.0の水溶液である。
また、本発明の感光性平版印刷版は、水で現像可能なことから、感光層にレーザー光を用いて画像を書き込んだ後、通常のアルカリ性現像液による現像処理をすることなくそのまま印刷機に装着し、印刷機上で平版印刷版に湿し水を供給して、この湿し水で現像処理することも可能である。
【0056】
現像液の温度は、15〜40℃の範囲が好ましく、浸漬時間は1秒〜2分の範囲が好ましい。必要に応じて、現像中に軽く表面を擦ることもできる。
現像を終えた平版印刷版は、水洗および/または水系の不感脂化剤による処理が施される。水系の不感脂化剤としては、例えば、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロースの如き水溶性天然高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸の如き水溶性合成高分子、などの水溶液が挙げられる。必要に応じて、これらの水系の不感脂化剤に、酸や界面活性剤等が加えられる。不感脂化剤による処理が施された後、平版印刷版は乾燥され、印刷刷版として印刷に使用される。
また、現像後、加熱処理を行うことで、強固な画像を得ることができる。加熱処理は、通常70℃〜300℃の範囲が好ましく、好適な加熱時間は、加熱温度との兼ね合いで決まるが、10秒〜30分程度である。
【0057】
以上説明した本発明の感光性組成物は、従来はネガ型として機能していた(a)自己水分散性樹脂微粒子および(b)光熱変換剤からなる感光性組成物に、(c)メチロール化合物を添加することにより、ポジ型として機能させているものである。ネガ型の感光性組成物である(a)自己水分散性樹脂微粒子および(b)光熱変換剤からなる組成物に、(c)メチロール化合物を添加することにより、ポジ型の感光性組成物となる理由は、いまのところはっきりとはわかっていないが、露光前(非露光部)では、(a)自己水分散性樹脂微粒子のアニオン性基と(c)メチロール化合物の水酸基とが会合状態にあり、水または水性現像液への溶解度が極端に低くなっているが、露光により(b)光熱変換剤から熱が発生すると、その熱により(a)自己水分散性樹脂微粒子と(c)メチロール化合物とが熱変性し、露光部を水または水性現像液へ溶解可能な状態に変えるためであると考えられる。
【0058】
また、本発明の感光性平版印刷版は、本発明の感光性組成物からなる感光層を有しているので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能である。
【0059】
なお、本発明の感光性組成物は、平版印刷版以外にも、フォトレジスト等の様々な用途に使用することができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。不揮発成分の測定、平均粒径の判定、質量平均分子量の測定およびガラス転移温度(Tg)の測定は、下記の方法により行った。
【0061】
[不揮発成分の測定]
試料約1gを110℃の乾燥機で1時間乾燥し、乾燥前後の質量測定から、不揮発成分を質量%で表した。
[平均粒径の判定]
自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径の判定は、レーザードップラー式粒度分布計マイクロトラックUPA−150で測定して得られた粒度分布のピークを平均粒径として、不揮発性成分が20質量%の各種標準的水分散サンプルの測定で得られた以下の知見をもとに、本発明における自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径を判定した。
【0062】
【表1】
【0063】
[質量平均分子量の測定]
ゲル・浸透・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算分子量として記した。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0064】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体は、以下のようにして調製した。
[水分散体(1)]
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管および滴下装置を備えた容量300mlの四つ口フラスコに、エチレングリコールモノメチルエーテル20g、スチレン38.5g、アクリル酸11.5g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素雰囲気下、溶液を攪拌しながら80℃まで昇温した。溶液を80℃まで昇温した後、溶液の攪拌をさらに3時間続けた。アゾビスイソブチロニトリル0.2gを溶液に添加し、溶液の攪拌をさらに3時間続け、スチレン−アクリル酸共重合体(1)を得た。得られたスチレン−アクリル酸共重合体(1)は、質量平均分子量117000、酸価155mgKOH/gであった。
【0065】
スチレン−アクリル酸共重合体(1)10gに、濃度28質量%のアンモニア水5gおよび水35gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(1)を中和し、水中に分散させた。分散水溶液はクリヤであった(粒子径分類a)。
分散液を水で不揮発分が15.1質量%となるように希釈して得られた水溶液30gに、下記式(II)の「IR−dye 1」(光熱変換剤)0.36g、VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩、保土谷化学工業(株)製)0.05gおよびエタノール8.0の混合物を、50℃の希釈分散液に滴下した。この分散液を2時間攪拌し、IR−dye 1をコアに取り込んだスチレン−アクリル酸共重合体(1)からなる(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体(1)を得た。得られた水分散体(1)は、不揮発分13.0質量%であった。
【0066】
【化2】
【0067】
[水分散体(2)]
スチレン−アクリル酸共重合体(1)20gに、濃度28質量%のアンモニア水7.5gおよび水120gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(1)を中和し、水中に分散させた。この分散液を室温まで冷却した後、この分散液にスチレン10gおよび過硫酸カリウム0.8gを加えて攪拌し、窒素雰囲気下、分散液を攪拌しながら60℃で2時間加熱した。分散液は曇りのある透明液であった(粒子径分類b)。反応終了後、液温を50℃まで下げて、「IR−dye 1」(光熱変換剤)2.4gを、エタノール40gおよびエチレングリコールモノメチルエーテル13gに溶解した溶液を、分散液に滴下し、そのまま攪拌しながら50℃で2時間加熱し、スチレン−アクリル酸共重合体からなる外層と、スチレン重合体からなる内層とを有するコア・シェル型樹脂微粒子の水分散体(2)を得た。得られた水分散体(2)は、不揮発分16質量%あった。
【0068】
[水分散体(3)]
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管および滴下装置を備えた容量300mlの四つ口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド50g、スチレン23.5g、アクリル酸11.5g、アクリロニトリル15.0g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素雰囲気下、溶液を攪拌しながら80℃まで昇温した。溶液を80℃まで昇温した後、溶液の攪拌をさらに3時間続けた。アゾビスイソブチロニトリル0.2gを溶液に添加し、溶液の攪拌をさらに3時間続け、スチレン−アクリル酸共重合体(2)を得た。得られたスチレン−アクリル酸共重合体(2)は、質量平均分子量116000、酸価105mgKOH/gであった。
【0069】
スチレン−アクリル酸共重合体(2)10gに、濃度28質量%のアンモニア水5gおよび水35gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(2)を中和し、水中に分散させた。分散液は曇りのある透明液であった(粒子径分類b)。
分散液を水で不揮発分が15.1質量%となるように希釈した溶液30.0g、「IR−dye 1」(光熱変換剤)0.36g、VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩、保土谷化学工業(株)製)0.05gおよびエタノール8gの混合物を、50℃の希釈分散液に滴下した。この分散液を2時間攪拌し、IR−dye 1をコアに取り込んだスチレン−アクリル酸共重合体(2)からなる(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体(3)を得た。得られた水分散体(3)は、不揮発分13質量%であった。
【0070】
[アルミニウム支持体]
厚さ0.24mmのアルミニウム板を水酸化ナトリウム水溶液にて脱脂し、これを20%塩酸浴中で、電解研磨処理して中心線平均粗さ(Ra)0.5μmの砂目板を得た。ついで、この砂目板を、20%硫酸浴中、電流密度2A/dm2で陽極酸化処理して、2.7g/m2 の酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥してアルミニウム支持体を得た。
【0071】
[実施例1]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液20gに、上記水分散体(1)20gを加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0072】
得られた感光性平版印刷版に対して、近赤外線半導体レーザーを搭載した露光機(Trendsetter、Creo社製、波長830nm、レーザーパワー8.5W、回転数150rpm(200mJ/cm2 相当))にて画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、現像後の平版印刷版を印刷機((株)小森コーポレーション製、Sprint−26)に装着し、インキとしてナチュラリス紅N(大日本インキ化学工業株式会社製)を用いて印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0073】
[実施例2]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液12gを、上記水分散体(2)10gに加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0074】
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0075】
[実施例3]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液10gを、上記水分散体(3)10gに加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0076】
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0077】
[実施例4]
トリメチロールメラミンの代わりに、トリメチロールプロパンを用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0078】
[比較例1]
トリメチロールメラミンの代わりに、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA105)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、感光層がすべて流れ、画像は形成されなかった。
【0079】
[比較例2]
トリメチロールメラミンを添加せず、水分散体(1)のみを上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理すると、非露光部が除去され、ネガ画像が現像された。
【0080】
[比較例3]
水分散体(1)の代わりに、水溶性樹脂(アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体を中和したもの)の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、感光層がすべて流れ、画像は形成されなかった。
【0081】
[比較例4]
ノボラック樹脂(ZH−8011、大日本インキ化学工業株式会社製)のエチレングリコールモノメチルエーテル液を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理しても、現像はされなかった。
【0082】
[比較例5]
トリメチロールメラミン溶液の代わりに濃度10質量%のアルコキシメチル基を有するメラミン樹脂(三和ケミカル社製、MW−30M)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理すると、非露光部が除去され、ネガ画像が現像された。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有するものであるので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像可能であり、かつポジ画像を形成できる塗膜を得ることができる。
【0084】
また、本発明の感光性平版印刷版は、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられているものであるので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能で、かつポジ画像を形成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポジ型の感光性組成物および感光性平版印刷版に関し、特に、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能なポジ型の感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル信号に対応した光照射により直接感光層に画像を書き込む方法が開発されている。本システムを平版印刷版に利用し、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、直接、感光性平版印刷版に画像を形成するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)システムが注目されている。光照射の光源として、近赤外または赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーを用いるCTPシステムは、短時間の露光で高解像度の画像が得られること、そのシステムに用いる感光性平版印刷版が明室での取り扱いが可能であること、などの利点を有している。特に、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになってきている。
【0003】
このような赤外線を放射する固体レーザーまたは半導体レーザーを用いて露光した後、現像液で現像処理することによって画像を形成することが可能なポジ型感光性平版印刷版としては、アルカリ可溶性樹脂(ノボラック樹脂等)、光熱変換剤(染料、顔料等の赤外線吸収剤)および熱の作用によりアルカリ可溶性樹脂を架橋しうる化合物を含むポジ型感光性組成物からなる感光層を有するものが、特開平11−202481号公報に提案されている。
【0004】
ところで最近では、製版現場の作業環境の改善、環境への配慮等の観点から、現像液として有機溶剤やアルカリ性物質を含まないものが要望されている。しかしながら、特開平11−202481号公報に記載のポジ型感光性組成物は、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂をバインダー樹脂として含んでいるので、これからなる感光層を有する感光性平版印刷版は、強アルカリ性の現像液で現像処理する必要があった。
【0005】
水または水性現像液で現像可能、あるいは印刷機上で現像可能な平版印刷版としては、疎水性熱可塑性重合体粒子およびおよび親水性結合剤を含む像形成層を有するネガ型の感光性平版印刷版が、特開平9−131850号公報に提案されている。しかしながら、この感光性平版印刷版は、支持体に対する画像部の接着性、水性現像液による現像性に問題があった。
【0006】
感光層に樹脂微粒子を含む平版印刷版の他の例としては、架橋剤(アミノ樹脂など)と、これと架橋可能な官能基を有する樹脂微粒子と、赤外線吸収剤とを含有する感光層を有するネガ型の感光性平版印刷版が、特開2000−338654号公報に提案されている。しかしながら、この感光性平版印刷版は、アルカリ現像液でしか現像処理することができなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−202481号公報(第2−36頁)
【特許文献2】
特開平9−131850号公報(第2−9頁)
【特許文献3】
特開2000−338654号公報(第2−15頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像可能な塗膜を得ることができるポジ型の感光性組成物、およびデジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能なポジ型の感光性平版印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、自己水分散性樹脂微粒子は、アニオン性基を有する熱可塑性の樹脂微粒子であることが望ましい。
また、メチロール化合物は、多官能メチロール化合物であることが望ましい。
また、本発明の感光性平版印刷版は、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
<感光性組成物>
(a)自己水分散性樹脂微粒子における自己水分散性樹脂とは、分子中に疎水性基とアニオン性基とを有する樹脂である。この自己水分散性樹脂を水中に投入した場合には、界面活性剤などの添加を必要とせずに、樹脂自身が微粒子となって水中に分散し、安定に存在する。この自己水分散性樹脂が微粒子となったものを、本発明においては自己水分散性樹脂微粒子と呼ぶ。本発明による自己水分散性樹脂は、熱可塑性樹脂であることが望ましい。
(a)自己水分散性樹脂微粒子は、具体的には、カルバニオン、スルホアニオン、ホスホアニオンなどのアニオン性基を有する、スチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ビニルケトン樹脂、などを水中に分散させて得られる樹脂微粒子である。より具体的には、アニオン性を発揮できるカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ビニルケトン樹脂を塩基性化合物を用いて水中に分散させることによって得ることができるものである。
【0012】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための樹脂(以下、前駆体樹脂と記す)としては、例えば、アニオン性の発現基を有する1種以上の単量体と、疎水性基を有する1種以上の単量体との共重合体が挙げられる。
アニオン性の発現基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸を示す。
疎水性基を有する単量体としては、例えば、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−フェニルスチレン、4−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−n−ヘキシルスチレン、4−n−オクチルスチレン、4−n−ノニルスチレン、4−n−デシルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−n−ドデシルスチレンなどのスチレン単量体類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビフェニルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体類;ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル単量体類;エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン単量体類、などが挙げられる。
特に、アニオン性の発現基を有する単量体として(メタ)アクリル酸および疎水性基を有する単量体としてスチレン単量体類を共重合させてなるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が、本発明における(a)自己水分散性樹脂微粒子として好ましく用いられる。
【0013】
スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体におけるスチレンまたはスチレン誘導体の含有率は、樹脂微粒子の疎水性を高め、現像液に対する溶解度をより低下させるために、60〜85質量%とすることが好ましい。また、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体におけるアクリル酸またはメタクリル酸の含有率は、湿熱保存安定性を向上させるために、15〜40質量%とすることが好ましい。
また、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体に、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステルなどをグラフト重合させて、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる外層と、スチレン重合体または(メタ)アクリル酸エステル重合体からなる内層とを有するコア・シェル型樹脂微粒子としてもよい。このコア・シェル型樹脂微粒子は、良好な耐スクラッチ性、広い現像ラチチュードなど、複数の特性を合わせ持つことができる。
【0014】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための前駆体樹脂は、例えば、スチレン、スチレン誘導体または(メタ)アクリル酸エステル、およびアクリル酸またはメタクリル酸を含有する単量体混合物を共重合させることで得ることができる。このときの重合方法は、塊状重合、ブロック重合、溶液重合等、各種方法が利用でき、中でも簡便な溶液重合が好ましく、使用する溶媒は有機溶媒であることが好ましい。
【0015】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジ置換アミド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、2種類以上を混合して用いることもできる。また、例えば転相乳化法によって(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る場合、転相乳化が容易な、水と親和性のある溶媒や、転相乳化後に容易に除去できる低沸点の有機溶媒を使用するのが好ましい。そのような溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0016】
溶液重合の際に使用する重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ2−エチルへキサノエート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
【0017】
また、(a)自己水分散性樹脂微粒子を得るための前駆体樹脂は、上述の単量体に、必要に応じて、(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、n−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド単量体類;N−ビニルカルバゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの窒素原子含有単量体類などを共重合させたものでもよい。
【0018】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径は1nm以上10μm未満であることが好ましい。該粒子の粒径が小さいほど造膜性が良好となり、膜強度に優れた平滑な塗膜を得ることができるため、上記範囲内では粒径が小さい方が好ましい。しかしながら、平均粒径が1nm未満では、粒子を形成する熱可塑性樹脂の分子量が小さくなり、耐溶剤性が低下するなど、画像形成後の画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、平均粒径が10μm以上では、感度や解像度が下がる傾向にある。
【0019】
カルボキシル基等を多量に有する高酸価樹脂を使用すると、粒子の現像液に対する溶解度が高くなりすぎ、非露光部の溶解度が十分低下せず、感度が高くなりすぎる。スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる樹脂微粒子においては、共重合体の酸価は、5〜300mgKOH/gの範囲が好ましい。
特に、アクリル酸を用いた場合は、より少ない含有率で酸価の高い共重合体を得ることができるため、スチレンまたはスチレン誘導体以外の構成単量体を第三成分として使用できるとともに、現像幅(ラチチュード)が広くなることからより好ましい。
【0020】
(a)自己水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は40℃以上であることが好ましい。Tgが40℃未満であると、室温での保存時に該粒子の融着が進行し現像性の低下をもたらす傾向にある。中でも、感光性組成物を支持体に塗布した後、乾燥塗膜を得るため、加熱乾燥する場合もあるので、Tgが50℃以上であることがより好ましい。
【0021】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の質量平均分子量は、1000〜15万の範囲が好ましい。質量平均分子量が1000未満では、画像形成して得られる画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、15万を超える範囲では、粒子化することが困難となる傾向になる。
【0022】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲が特に好ましい。(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量が10質量%より少ない場合には、画像部の基板への接着性が悪く、版取れが生じやすくなる傾向があり、(a)自己水分散性樹脂微粒子の含有量が90質量%より多い場合には、非画像部に膜残りが多くなる傾向がある。
【0023】
(b)光熱変換剤とは、光を吸収して熱を発生する物質である。このような物質としては、例えば、種々の顔料または染料が挙げられる。
本発明で使用される顔料としては、市販の顔料、および、カラーインデックス便覧「最新顔料便覧日本顔料技術協会編、1977年刊」、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)等に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、その他ポリマー結合色素等が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染め付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0024】
これらの中でも、特に、近赤外から赤外線領域の光を吸収して効率よく熱を発生し、しかも経済的に優れた物質として、カーボンブラックが好ましく用いられる。また、このようなカーボンブラックとしては、種々の官能基を有する分散性のよいグラフト化カーボンブラックが市販されており、例えば、「カーボンブラック便覧第3版」(カーボンブラック協会編、1995年)の167ページ、「カーボンブラックの特性と最適配合及び利用技術」(技術情報協会、1997年)の111ページ等に記載されているものが挙げられ、いずれも本発明に好適に使用される。
【0025】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、また公知の表面処理を施して用いてもよい。公知の表面処理方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等の反応性物質を顔料表面に結合させる方法などが挙げられる。これらの表面処理方法については、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている。
本発明で使用される顔料の粒径は、0.01〜15マイクロメートルの範囲にあることが好ましく、0.01〜5マイクロメートルの範囲にあることがさらに好ましい。
【0026】
本発明で使用される染料としては、公知慣用のものが使用でき、例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編、昭和45年刊)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編、朝倉書店、1989年刊)、「工業用色素の技術と市場」(シーエムシー、1983年刊)、「化学便覧応用化学編」(日本化学会編、丸善書店、1986年刊)に記載されているものが挙げられる。より具体的には、アゾ染料、金属鎖塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、インジゴ染料、キノリン染料、ニトロ系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、アジン染料、オキサジン染料等の染料が挙げられる。これらの染料の中でも、近赤外から赤外領域の光を吸収するものが特に好ましい。
【0027】
近赤外光もしくは赤外光を吸収する染料としては、例えば、シアニン染料、メチン染料、ナフトキノン染料、スクワリリウム色素、アリールベンゾ(チオ)ピリジニウム塩、トリメチンチアピリリウム塩、ピリリウム系化合物、ペンタメチンチオピリリウム塩、赤外吸収染料等が挙げられる。
【0028】
(b)光熱変換剤は、上記の顔料または染料の中から、後述する光源の特定波長を吸収し、熱に変換できうる適当な顔料または染料を少なくとも1種を選び、感光性組成物に添加することにより使用される。特に760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に極大吸収波長(λmax )を有する(b)光熱変換剤を使用すると、得られる感光性平版印刷版を明室下で取り扱えるようになるため、より好ましい。
【0029】
(b)光熱変換剤の添加量は、概ね、レーザー光の波長域に対する感光性組成物の吸光度が0.5〜3程度となるように調節するが、具体的には感光性組成物の全固形分に対して、0.5〜70質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲がより好ましい。0.5質量%より少ないと熱の発生が少ないため、露光部の現像液に対する溶解性が不十分となる傾向があり、また、70質量%より多い場合は、感光性平版印刷版表面が傷つき易くなったり、非画像部の汚れが生じ易くなったりする。
【0030】
(c)メチロール化合物は、分子内にメチロール基(−CH2−OH )を有する有機化合物であり、熱により(a)自己水分散性樹脂微粒子と反応し、露光部を水または水性現像液へ溶解可能な状態にする物質である。
(c)メチロール化合物としては、N−メチロール化合物、トリメチロール化合物類およびその縮合物等が挙げられる。N−メチロール化合物としては、メチロール尿素化合物、下記一般式(I)で表されるメチロールメラミン化合物、メチロールエチレン尿素化合物、メチロールプロピレン尿素化合物、メチロールジヒドロキシエチレン尿素化合物、メチロールウロン化合物、トリメチロールトリアゾンなどが例示される。また、N−メチロールアクリルアミドおよび/またはN−メチロールメタクリルアミドからなるN−メチロール化合物およびその誘導体も含まれる。トリメチロール化合物としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等が挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1〜R6は、それぞれ−CH2−OH または水素原子を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは−CH2−OH である。)
中でも、熱変性効果が優れている点で、トリメチロールメタン、トリメチロールペンタン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミンなどのメチロール基を2つ以上有する多官能メチロール化合物が好ましい。
【0033】
(c)メチロール化合物の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、15〜70質量%の範囲が好ましく、25〜60質量%の範囲が特に好ましい。(c)メチロール化合物の含有量が15質量%より少ない場合には、熱変性が不十分で、画像強度が得られない傾向があり、(c)メチロール化合物の含有量が70質量%より多い場合には、未反応メチロール基が残存し、保存安定性が悪くなる傾向がある。
【0034】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、着色材(染料、顔料)、界面活性剤、可塑剤、安定性向上剤を加えることができる。
好適な染料としては、例えば、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチレンブルー、エチルバイオレット、ローダミンB等の塩基性油溶性染料などが挙げられる。市販品としては、例えば、「ビクトリアピュアブルーBOH」〔保土谷化学工業(株)製〕、「オイルブルー#603」〔オリエント化学工業(株)製〕、「VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩)」〔保土谷化学工業(株)製〕、「D11」〔PCAS社製〕等が挙げられる。顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンレッド等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリ(2−クロロエチル)、クエン酸トリブチル等が挙げられる。
さらに、公知の安定性向上剤として、例えば、リン酸、亜リン酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、ジピコリン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等も併用することができる。
これら各種の添加剤の添加量は、その目的によって異なるが、通常、感光性組成物の固形分の0〜30質量%の範囲が好ましい。
【0036】
<感光性組成物の調製>
本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子を水に分散させた分散体に(b)光熱変換剤を添加し、さらに(c)メチロール化合物、必要に応じて公知の添加剤を添加する方法;(b)光熱変換剤を水に分散させた分散体に(a)自己水分散性樹脂微粒子を添加し、さらに(c)メチロール化合物、必要に応じて公知の添加剤を添加する方法等により得ることができる。本発明においては、前者の方法が簡便であり好ましい。
【0037】
本発明の感光性組成物を調製する際に使用する分散機としては、例えば、超音波分散機、サンドミル、アトライター、バールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、ディスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー、ペイントコンディショナーなどが挙げられる。また、このとき有機溶媒を併用してもよく、その際には、水と均一に溶解しうる低沸点の有機溶媒の使用が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。
【0038】
本発明の感光性組成物は、平均粒径が1nm以上10μm未満の(a)自己水分散性樹脂微粒子を含有する場合、保存安定性を低下させるおそれのある界面活性剤を特別使用せずに塗装でき、平滑で良好な塗装面を得ることが特徴である。そのため、通常の使用においては特別な助剤を必要とはしないが、例えば、粘度調整のための天然水溶性高分子や合成水溶性高分子;レベリング剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性の有機溶媒;ビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、又はメタアクリル酸ヒドロキシエチルのホモポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、ゼラチン、多糖類等の天然高分子等の親水性結合剤等を、必要に応じて添加してもよい。一方、長期保存を目的としない場合には、適宜界面活性剤を使用しても構わないが、その量は少量であることが好ましい。
【0039】
(a)自己水分散性樹脂微粒子を水に分散させた分散体を得る方法としては、例えば、塊状の樹脂を粉砕する粉砕法;(a)自己水分散性樹脂微粒子溶液を乳化剤とともに水中に添加して樹脂を乳化させる乳化法;転相乳化法;乳化重合法などが挙げられる。中でも、樹脂を塩基性化合物で中和し、水中に分散させることによって(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る転相乳化法が、乳化剤を使用しないことや、平均粒径が1nm以上10μm未満の水分散体を容易に得ることができるなどから好ましい。
【0040】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体を得る方法を、転相乳化法を例に挙げて具体的に説明する。
樹脂の有機溶媒溶液に塩基性化合物の水溶液を添加し、これを攪拌することにより、樹脂を中和し、水中に分散させる。
塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類;アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基性化合物類などが挙げられる。特に、アンモニアは、画像形成後の画像部のインキ着肉性や、耐刷性を損なわないことから好ましい。
【0041】
塩基性化合物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径が1nm以上10μm未満となるような量を添加する。一般に、カルボキシル基の0.8〜3.0当量に相当する塩基性化合物を添加することが好ましい。このとき使用する撹拌装置は、ホモミキサー等の通常の撹拌装置や、乳化分散機等の剪断力を与えるような分散機を用いることができる
【0042】
他に、塩基性化合物で中和した樹脂の有機溶媒溶液に、水を加える方法;水に、塩基性化合物で中和した樹脂の有機溶媒溶液を加える方法;塩基性化合物を含む水に、樹脂の有機溶媒溶液を加える方法等で行ってもよい。
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体は、有機溶媒を含有していてもよい。得られる該分散体はチンダル現象を呈するコロイド分散体である。
【0043】
<感光性平版印刷版>
本発明の感光性平版印刷版は、支持体と、該支持体上に設けられた、上述の感光性組成物からなる感光層とを有して概略構成される。
ここで、感光層は、光照射により発生した熱を利用することから、感熱性層と称しても構わないが、ここでは便宜上感光層と称する。
【0044】
支持体としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス、鉄等の金属板;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエチレン等のプラスチックフィルム;合成樹脂を溶融塗布あるいは合成樹脂溶液を塗布した紙、プラスチックフィルムに金属層を真空蒸着、ラミネート等の技術により設けた複合材料;その他印刷版の支持体として使用されている材料が挙げられる。これらのうち、特にアルミニウムおよびアルミニウムが被覆された複合支持体の使用が好ましい。
【0045】
アルミニウム支持体の表面は、保水性を高め、感光層との密着性を向上させる目的で表面処理されていることが望ましい。そのような表面処理としては、例えば、ブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学的エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト等の粗面化処理、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、特に電解エッチングの使用を含む粗面化処理が好ましい。
電解エッチングの際に用いられる電解浴としては、酸、アルカリまたはそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられる。これらの中でも、特に、塩酸、硝酸、またはそれらの塩を含む電解液が好ましい。
【0046】
さらに、粗面化処理の施されたアルミニウム支持体は、必要に応じて酸またはアルカリの水溶液にてデスマット処理される。このようにして得られたアルミニウム支持体は、陽極酸化処理されることが望ましい。特に、硫酸またはリン酸を含む浴で処理する陽極酸化処理が望ましい。
【0047】
また、必要に応じて、ケイ酸塩処理(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、フッ化ジルコニウム酸カリウム処理、ホスホモリブデート処理、アルキルチタネート処理、ポリアクリル酸処理、ポリビニルスルホン酸処理、ホスホン酸処理、フィチン酸処理、親水性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、スルホン酸基を有する水溶性重合体の下塗りによる親水化処理、酸性染料による着色処理、シリケート電着等の処理を行うことができる。
【0048】
また、粗面化処理(砂目立て処理)および陽極酸化処理後、封孔処理が施されたアルミニウム支持体も好ましい。封孔処理は、熱水、および無機塩または有機塩を含む熱水溶液へのアルミニウム支持体の浸漬、または水蒸気浴等によって行われる。
【0049】
本発明の感光性平版印刷版は、好ましくは不揮発分が1〜50質量%に調製された感光性組成物を支持体表面に塗布し、これを乾燥して支持体上に感光層を形成させることによって製造される。
【0050】
感光性組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング等の方法が用いられる。感光性組成物の塗布量は、10ml/m2 〜100ml/m2 の範囲が好適である。
【0051】
支持体上に塗布された感光性組成物の乾燥は、通常、常温で行われる。短時間で乾燥させるために、30〜150℃で10秒〜10分間、温風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いて乾燥を行ってもよい。
感光性組成物の塗布量は、乾燥質量で通常、約0.5〜約5g/m2 の範囲である。
【0052】
本発明の感光性平版印刷版は、コンピュータ等からのデジタル画像情報を基に、レーザーを使用して直接版上に画像書き込みができる、いわゆるコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)版として使用できる。
【0053】
本発明で用いられるレーザーの光源としては、発振波長が300nmから950nmまでの各種半導体レーザー、炭酸ガスレーザー(発振波長;10.6nm)、YAGレーザー(発振波長;532nm・1064nm)、エキシマレーザー(発振波長;193nm・308nm・351nm)、アルゴンレーザー(発振波長;488nm)等が挙げられる。いずれのレーザーも、光源の特定波長を吸収し、熱に変換できうる適当な顔料または染料((b)光熱変換剤)を前述した中から選び、感光性組成物に添加することにより使用できる。
【0054】
本発明においては、感光性平版印刷版を明室で取り扱うことができることから、近赤外から赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーが最も好ましく用いられる。このような近赤外から赤外領域に最大強度を有する高出力レーザーとしては、760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に最大強度を有する各種レーザー、例えば、半導体レーザー、YAGレーザー等が挙げられる。
【0055】
本発明の感光性平版印刷版は、感光層にレーザー光を用いて画像を書き込んだ後、これを現像処理して非画像部が湿式法により除去されることによって、画線部が形成された平版印刷版となる。現像処理に使用される現像液としては、水、または水性現像液を使用できる。
ここで、水性現像液とは、印刷時に使用される各種湿し水などの水性溶液であり、着色剤、界面活性剤、可塑剤、キレート剤、安定向上剤等を含有していてもよいpH3.0〜10.0の水溶液である。
また、本発明の感光性平版印刷版は、水で現像可能なことから、感光層にレーザー光を用いて画像を書き込んだ後、通常のアルカリ性現像液による現像処理をすることなくそのまま印刷機に装着し、印刷機上で平版印刷版に湿し水を供給して、この湿し水で現像処理することも可能である。
【0056】
現像液の温度は、15〜40℃の範囲が好ましく、浸漬時間は1秒〜2分の範囲が好ましい。必要に応じて、現像中に軽く表面を擦ることもできる。
現像を終えた平版印刷版は、水洗および/または水系の不感脂化剤による処理が施される。水系の不感脂化剤としては、例えば、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロースの如き水溶性天然高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸の如き水溶性合成高分子、などの水溶液が挙げられる。必要に応じて、これらの水系の不感脂化剤に、酸や界面活性剤等が加えられる。不感脂化剤による処理が施された後、平版印刷版は乾燥され、印刷刷版として印刷に使用される。
また、現像後、加熱処理を行うことで、強固な画像を得ることができる。加熱処理は、通常70℃〜300℃の範囲が好ましく、好適な加熱時間は、加熱温度との兼ね合いで決まるが、10秒〜30分程度である。
【0057】
以上説明した本発明の感光性組成物は、従来はネガ型として機能していた(a)自己水分散性樹脂微粒子および(b)光熱変換剤からなる感光性組成物に、(c)メチロール化合物を添加することにより、ポジ型として機能させているものである。ネガ型の感光性組成物である(a)自己水分散性樹脂微粒子および(b)光熱変換剤からなる組成物に、(c)メチロール化合物を添加することにより、ポジ型の感光性組成物となる理由は、いまのところはっきりとはわかっていないが、露光前(非露光部)では、(a)自己水分散性樹脂微粒子のアニオン性基と(c)メチロール化合物の水酸基とが会合状態にあり、水または水性現像液への溶解度が極端に低くなっているが、露光により(b)光熱変換剤から熱が発生すると、その熱により(a)自己水分散性樹脂微粒子と(c)メチロール化合物とが熱変性し、露光部を水または水性現像液へ溶解可能な状態に変えるためであると考えられる。
【0058】
また、本発明の感光性平版印刷版は、本発明の感光性組成物からなる感光層を有しているので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能である。
【0059】
なお、本発明の感光性組成物は、平版印刷版以外にも、フォトレジスト等の様々な用途に使用することができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。不揮発成分の測定、平均粒径の判定、質量平均分子量の測定およびガラス転移温度(Tg)の測定は、下記の方法により行った。
【0061】
[不揮発成分の測定]
試料約1gを110℃の乾燥機で1時間乾燥し、乾燥前後の質量測定から、不揮発成分を質量%で表した。
[平均粒径の判定]
自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径の判定は、レーザードップラー式粒度分布計マイクロトラックUPA−150で測定して得られた粒度分布のピークを平均粒径として、不揮発性成分が20質量%の各種標準的水分散サンプルの測定で得られた以下の知見をもとに、本発明における自己水分散性樹脂微粒子の平均粒径を判定した。
【0062】
【表1】
【0063】
[質量平均分子量の測定]
ゲル・浸透・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算分子量として記した。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0064】
(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体は、以下のようにして調製した。
[水分散体(1)]
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管および滴下装置を備えた容量300mlの四つ口フラスコに、エチレングリコールモノメチルエーテル20g、スチレン38.5g、アクリル酸11.5g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素雰囲気下、溶液を攪拌しながら80℃まで昇温した。溶液を80℃まで昇温した後、溶液の攪拌をさらに3時間続けた。アゾビスイソブチロニトリル0.2gを溶液に添加し、溶液の攪拌をさらに3時間続け、スチレン−アクリル酸共重合体(1)を得た。得られたスチレン−アクリル酸共重合体(1)は、質量平均分子量117000、酸価155mgKOH/gであった。
【0065】
スチレン−アクリル酸共重合体(1)10gに、濃度28質量%のアンモニア水5gおよび水35gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(1)を中和し、水中に分散させた。分散水溶液はクリヤであった(粒子径分類a)。
分散液を水で不揮発分が15.1質量%となるように希釈して得られた水溶液30gに、下記式(II)の「IR−dye 1」(光熱変換剤)0.36g、VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩、保土谷化学工業(株)製)0.05gおよびエタノール8.0の混合物を、50℃の希釈分散液に滴下した。この分散液を2時間攪拌し、IR−dye 1をコアに取り込んだスチレン−アクリル酸共重合体(1)からなる(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体(1)を得た。得られた水分散体(1)は、不揮発分13.0質量%であった。
【0066】
【化2】
【0067】
[水分散体(2)]
スチレン−アクリル酸共重合体(1)20gに、濃度28質量%のアンモニア水7.5gおよび水120gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(1)を中和し、水中に分散させた。この分散液を室温まで冷却した後、この分散液にスチレン10gおよび過硫酸カリウム0.8gを加えて攪拌し、窒素雰囲気下、分散液を攪拌しながら60℃で2時間加熱した。分散液は曇りのある透明液であった(粒子径分類b)。反応終了後、液温を50℃まで下げて、「IR−dye 1」(光熱変換剤)2.4gを、エタノール40gおよびエチレングリコールモノメチルエーテル13gに溶解した溶液を、分散液に滴下し、そのまま攪拌しながら50℃で2時間加熱し、スチレン−アクリル酸共重合体からなる外層と、スチレン重合体からなる内層とを有するコア・シェル型樹脂微粒子の水分散体(2)を得た。得られた水分散体(2)は、不揮発分16質量%あった。
【0068】
[水分散体(3)]
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管および滴下装置を備えた容量300mlの四つ口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド50g、スチレン23.5g、アクリル酸11.5g、アクリロニトリル15.0g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素雰囲気下、溶液を攪拌しながら80℃まで昇温した。溶液を80℃まで昇温した後、溶液の攪拌をさらに3時間続けた。アゾビスイソブチロニトリル0.2gを溶液に添加し、溶液の攪拌をさらに3時間続け、スチレン−アクリル酸共重合体(2)を得た。得られたスチレン−アクリル酸共重合体(2)は、質量平均分子量116000、酸価105mgKOH/gであった。
【0069】
スチレン−アクリル酸共重合体(2)10gに、濃度28質量%のアンモニア水5gおよび水35gを加え、攪拌しながら90℃に昇温し、この温度を2時間保持してスチレン−アクリル酸共重合体(2)を中和し、水中に分散させた。分散液は曇りのある透明液であった(粒子径分類b)。
分散液を水で不揮発分が15.1質量%となるように希釈した溶液30.0g、「IR−dye 1」(光熱変換剤)0.36g、VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩、保土谷化学工業(株)製)0.05gおよびエタノール8gの混合物を、50℃の希釈分散液に滴下した。この分散液を2時間攪拌し、IR−dye 1をコアに取り込んだスチレン−アクリル酸共重合体(2)からなる(a)自己水分散性樹脂微粒子の水分散体(3)を得た。得られた水分散体(3)は、不揮発分13質量%であった。
【0070】
[アルミニウム支持体]
厚さ0.24mmのアルミニウム板を水酸化ナトリウム水溶液にて脱脂し、これを20%塩酸浴中で、電解研磨処理して中心線平均粗さ(Ra)0.5μmの砂目板を得た。ついで、この砂目板を、20%硫酸浴中、電流密度2A/dm2で陽極酸化処理して、2.7g/m2 の酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥してアルミニウム支持体を得た。
【0071】
[実施例1]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液20gに、上記水分散体(1)20gを加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0072】
得られた感光性平版印刷版に対して、近赤外線半導体レーザーを搭載した露光機(Trendsetter、Creo社製、波長830nm、レーザーパワー8.5W、回転数150rpm(200mJ/cm2 相当))にて画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、現像後の平版印刷版を印刷機((株)小森コーポレーション製、Sprint−26)に装着し、インキとしてナチュラリス紅N(大日本インキ化学工業株式会社製)を用いて印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0073】
[実施例2]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液12gを、上記水分散体(2)10gに加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0074】
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0075】
[実施例3]
トリメチロールメラミン(日本カーバイド工業(株)製、S−305)を水−エタノール(質量比1:1)溶液に溶解させ、濃度10質量%のトリメチロールメラミン溶液を調製した。
このトリメチロールメラミン溶液10gを、上記水分散体(3)10gに加え、攪拌した。得られた溶液を上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
【0076】
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0077】
[実施例4]
トリメチロールメラミンの代わりに、トリメチロールプロパンを用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、露光部が除去され、ポジ画像が現像された。版面が水で濡れた状態でインキを版面に付けると、画像部にインキが付着し、非画像部にはインキによる汚れは生じなかった。また、実施例1と同様にして印刷試験を行った。1000枚印刷したが、印刷物の品質に何ら問題はなかった。
【0078】
[比較例1]
トリメチロールメラミンの代わりに、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA105)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、感光層がすべて流れ、画像は形成されなかった。
【0079】
[比較例2]
トリメチロールメラミンを添加せず、水分散体(1)のみを上記アルミニウム支持体上にバーコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥して感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理すると、非露光部が除去され、ネガ画像が現像された。
【0080】
[比較例3]
水分散体(1)の代わりに、水溶性樹脂(アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体を中和したもの)の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬すると、感光層がすべて流れ、画像は形成されなかった。
【0081】
[比較例4]
ノボラック樹脂(ZH−8011、大日本インキ化学工業株式会社製)のエチレングリコールモノメチルエーテル液を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理しても、現像はされなかった。
【0082】
[比較例5]
トリメチロールメラミン溶液の代わりに濃度10質量%のアルコキシメチル基を有するメラミン樹脂(三和ケミカル社製、MW−30M)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性平版印刷版を得た。乾燥塗膜量は2.0g/m2 であった。
得られた感光性平版印刷版に対して、実施例1と同様に画像露光を行った。
露光後の平版印刷版を水に浸漬しても、現像はされなかった。強アルカリ性の現像液で現像処理すると、非露光部が除去され、ネガ画像が現像された。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の感光性組成物は、(a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有するものであるので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像可能であり、かつポジ画像を形成できる塗膜を得ることができる。
【0084】
また、本発明の感光性平版印刷版は、支持体表面に、本発明の感光性組成物からなる感光層が設けられているものであるので、デジタル信号に基づいた走査露光による画像記録が可能であり、画像記録したものは水または水性現像液で現像でき、あるいは現像処理することなくそのまま印刷機に装着して印刷が可能で、かつポジ画像を形成できる。
Claims (4)
- (a)自己水分散性樹脂微粒子、(b)光熱変換剤、および(c)メチロール化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。
- 自己水分散性樹脂微粒子が、アニオン性基を有する樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1記載の感光性組成物。
- メチロール化合物が、多官能メチロール化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の感光性組成物。
- 支持体表面に、請求項1ないし3いずれか一項に記載の感光性組成物からなる感光層が設けられていることを特徴とする感光性平版印刷版。
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