JP3974388B2 - 感熱性組成物、平版印刷版原版及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱性組成物、オフセット印刷分野で使用する平版印刷版原版及び画像形成方法に関し、特にコンピュータ等によるデジタル信号から直接製版できるコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)版として使用する平版印刷版原版用の感熱性組成物、平版印刷版原版、及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷分野で使用する平版印刷版原版として、PS版が長く用いられてきた。PS版とは、親水化処理を施した表面を有する基板上に感熱性樹脂層を形成させたものであり、銀塩マスクフィルムを通して露光、現像といったフォトリソグラフィ技術により画像を形成する。
【0003】
一方、近年のコンピュータ画像処理技術やレーザー技術の進展に伴い、デジタル化された画像情報をレーザーを用いて平版印刷版に描画するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)システムが提案され、脚光を浴びている。
CTPシステムで使用する平版印刷版原版(CTP版)は、可視光や紫外光に感応する銀塩や高感度フォトポリマー感剤を用いる感光型と、赤外線吸収剤(IR吸収剤)等を利用し、近赤外光や赤外光を吸収して発生する熱に感応する感剤を用いる感熱型とに大別できる。感光型は高感度であるため小出力のレーザーが使用可能であるが、保存安定性が悪く、更に暗室での作業が必要であり、取り扱い性や作業性に問題があった。これに対して感熱型は、感光型に比べて感度は低いが、最近小型で高出力の近赤外線レーザーが開発されたこと、可視光や紫外光には感応しないので明室(明るい場所)での作業性に優れていること、および、解像度が高いことから急速に普及してきた。
【0004】
このようなCTP版として、特開平7−20629号公報には、支持体上にレゾール樹脂、ノボラック樹脂、潜在性ブレンステッド酸、及び赤外線吸収剤よりなる感光層を形成させたCTP版が開示されている。これは、レーザー照射部の赤外線吸収剤がレーザーを吸収して熱を発生し、その熱によりブレンステッド酸を分解して酸を生成し、その酸が触媒となって架橋反応してアルカリ性現像液に不溶になり、画像形成するというシステムである。本システムで得られる版は、耐刷性に優れるが、架橋反応には相応のエネルギーが必要で、レーザー照射で発生する熱のみでは画像形成する能力に乏しい。すなわち、低感度であるために、現像前に加熱(プレヒート)してエネルギーを与え、潜像を強固に架橋反応させた後に現像を行う必要があった。
【0005】
これに対し、感熱型のCTP版として特に、感熱層に樹脂微粒子を含むタイプの、プレヒート工程を必要としないCTP版の開発が進められている。これは、熱により樹脂微粒子が溶融、融着する現象を利用したもので、樹脂微粒子及びIR吸収剤からなる感熱層に光を照射して、照射部のIR吸収剤が発生する熱により熱可塑性樹脂粒子を融着させて画像潜像を形成させた後、未露光部を現像除去して画像を形成する。潜像部分は光照射により現像液に対する溶解度が低下しているため、現像液で洗い流すだけで画像を形成することができる。
【0006】
例えば、特開平9−171249号公報、特開平11-268225号公報には、疎水性樹脂微粒子と、親水性結合材またはアルカリ可溶性樹脂からなる画像形成材料を用いた平版印刷版原版の製版方法が開示されている。しかしこれらの製法による印刷版の画像形成層は、結着樹脂となるアルカリ可溶性樹脂や親水性結合材を含んでおり、この割合が多い場合には、現像時に画像部までもが除去されてしまい、画像欠損が生じるといった問題や、得られた平版印刷版原版を高温高湿下で長期保存すると、現像性が低下するといった問題があった。
【0007】
一方、特開平9−127683号公報には、親水性表面を有する基板上に、熱により親油化可能な自己水分散性熱可塑性樹脂微粒子層を形成させた平版印刷版原版が、また、特開平11−348446号公報には、親水性表面を有する支持体上に、光を吸収し熱を発生する物質、アニオン型自己水分散性樹脂粒子及び弗素系界面活性剤を含有する感熱性組成物層を有する平版印刷版原版がそれぞれ開示されている。これらは、樹脂微粒子がアルカリ可溶性や親水性であるので、アルカリ可溶性を有する結着樹脂を使用する必要がなく、現像性、解像性に優れた刷版が得られる。しかし、このような原版に対しては、より湿熱保存安定性に優れた原版への要望が強く、特に高湿度下で原版を保存しても、感熱性組成物層中の粒子融着の進行による、現像性低下という問題のない原版が強く要望されている状況にある。
すなわち、現像性、耐刷性等に優れ、且つ高温高湿下の保存安定性に優れた樹脂微粒子融着システムの感熱型のCTP版が強く要望されているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、光照射により潜像を形成し、プレヒート工程を必要とせずに現像のみで高い解像性の画像が形成でき、且つ、高温高湿下での保存により現像性が低下することのない感熱性組成物、及び、該感熱性組成物を使用し、コンピュータ等のデジタル信号から直接製版可能であり高耐刷性を示す平版印刷版原版とその画像形成方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、上記課題を解決するために、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有し、該熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が2nm以上5nm未満である感熱性組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は上記課題を解決するために、親水性表面を有する支持体表面に、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有し、該熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が2nm以上5nm未満である感熱性組成物の乾燥塗膜を有する平版印刷版原版を提供する。
【0011】
また、本発明は上記課題を解決するために、親水性表面を有する支持体表面に、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有し、該熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が2nm以上5nm未満である感熱性組成物からなる感光層を有する平版印刷版原版に、レーザー光を照射して画像潜像を形成した後、pH9〜13のアルカリ性現像液を用いて現像する画像形成方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱性組成物は、熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有するもので、これからなる塗膜は、光を吸収して熱を発生する物質が、光照射を受けて光エネルギーを熱エネルギーに変換し、そのとき発生する熱により、熱可塑性樹脂粒子が溶融、融着する。
また、本発明の平版印刷版原版は、親水性表面を有する支持体表面に、本発明の感熱性組成物の乾燥塗膜を有している。そして、該塗膜に光を照射することで、発生する熱により、熱可塑性樹脂粒子を融着させて画像潜像を形成させた後、現像液で未露光部を除去して画像を形成する。潜像部分は現像液に対する溶解度が低下しているため、未露光部を現像液で洗い流すだけで画像を形成することができる。
【0013】
本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子は、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する樹脂の粒子(以下、本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子と略す)である。スチレン誘導体としては、例えば、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−フェニルスチレン、4−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−n−ヘキシルスチレン、4−n−オクチルスチレン、4−n−ノニルスチレン、4−n−デシルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン及びp−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
【0014】
本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子の平均粒径は2nm以上5nm未満である。2nm以上5nm未満の粒径とは、例えば光散乱法による粒径測定装置で得られる粒度分布のピークが2nm以上5nm未満の範囲にあることを示す。熱可塑性樹脂粒子の粒径が小さいほど該粒子の表面積が大きくなるために、より低い熱エネルギーで粒子を融着することができ、高感度となる。また、該粒子の粒径が小さいほど造膜性も良好となり、膜強度に優れた平滑な塗膜を得ることができるため、上記範囲内では粒径が小さい方が好ましい。
しかし平均粒径が2nm未満では、粒径の測定自体が困難となり、また、粒子を形成する熱可塑性樹脂の分子量が小さくなり、画像形成後の刷版の画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、平均粒径が5nm以上では、感度、耐刷性が下がる傾向にある。
【0015】
一般に、粒径を小さくして感度を上げると、保存安定性は下がる傾向にある。保存安定性、特に湿熱保存安定性を向上させる目的で、カルボキシル基等を多量に有する高酸価樹脂を使用すると、粒子の現像液に対する溶解度が高くなりすぎ、露光部の溶解度が十分低下せず、感度低下をもたらす。
【0016】
本発明では、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂からなる平均粒径2nm以上5nm未満の熱可塑性樹脂粒子を使用することによって、感度と保存安定性のバランスに優れた感熱性組成物が得られることを見いだした。
即ち、該粒子の疎水性を高め、現像液に対する溶解度をより低下させるために、スチレン又はスチレン誘導体の含有率を60〜85質量%とし、且つ、湿熱保存安定性を向上させるために、アクリル酸又はメタクリル酸の含有率を15〜40質量%とする。前記単量体を必須構成成分とした粒径2nm以上5nm未満の熱可塑性樹脂粒子を使用することで、感度と保存安定性のバランスに優れた感熱性組成物を得ることができる。
【0017】
アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂100g中のカルボキシル基量は、アクリル酸を用いた場合、208〜555ミリモル、メタクリル酸を用いた場合174〜465ミリモルの範囲となる。中でも、カルボキシル基量が250〜450ミリモルとなるように、アクリル酸又はメタクリル酸の含有率を設定することが好ましい。
特にアクリル酸を用いた場合は、より少ない含有率でカルボキシル基量の高い熱可塑性樹脂を得ることができるため、スチレン又はスチレン誘導体以外の構成単量体を第三成分として使用できるとともに、現像幅(ラティチュード)が広くなることからより好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂粒子がより低い熱エネルギーで融着するためには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は20〜150℃の範囲にあることが好ましい。Tgが150℃を越えると、該粒子の融着に比較的高い熱エネルギーが必要となり、一方20℃未満であると、室温での保存時に該粒子の融着が進行し現像性の低下をもたらす傾向にある。中でも、感熱性組成物を支持体に塗布した後、乾燥塗膜を得るため、加熱乾燥する場合もあるので、Tgが60〜150℃の範囲にあることがより好ましく、長期保存の際、熱可塑性樹脂が融着するおそれのない、90〜150℃の範囲が特に好ましい。
【0019】
本発明の感熱性組成物は、本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有し、水中に該熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質が分散しており、該熱可塑性樹脂粒子を水に分散させた分散体に光を吸収して熱を発生する物質を添加する方法、光を吸収して熱を発生する物質を水に分散させた分散体に熱可塑性樹脂粒子を添加する方法等により得ることができるが、前者の方法が簡便であり好ましい。本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子を水に分散させた分散体を得る方法としては、例えば、塊状の熱可塑性樹脂を粉砕する粉砕法、熱可塑性樹脂溶液を乳化剤とともに水中に混合して樹脂を乳化させる乳化法、転相乳化法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂溶液を塩基性化合物で中和し、水中に分散させることによって樹脂の水分散体を得る転相乳化法が、乳化剤を使用しないことや、平均粒径が2nm以上5nm未満の水分散体を容易に得ることができるなどから好ましい。
【0020】
本発明で使用する、必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂(以下、本発明で使用する熱可塑性樹脂と略す)は、例えば、スチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する単量体混合物を共重合させることで得ることができる。このときの重合方法は、塊状重合、溶液重合等各種方法が利用でき、中でも簡便な溶液重合が好ましく、使用する溶媒は有機溶媒であることが好ましい。
【0021】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、2種類以上を混合して用いることもできる。また、例えば転相乳化法によって本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子の水分散体を得る場合、転相乳化が容易な、水と親和性のある溶媒や、転相乳化後に容易に除去できる低沸点の有機溶媒を使用するのが好ましい。そのような溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノールが挙げられる。
【0022】
溶液重合の際に使用する重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ2−エチルへキサノエート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
【0023】
また、必要に応じて、スチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する範囲で、且つ、Tgが20〜150℃を超えない範囲で、その他の共重合用単量体を共重合させてもよい。
【0024】
本発明で使用する熱可塑性樹脂の分子量は、質量平均分子量(一般には重量平均分子量と称する)に換算して5,000〜200,000の範囲が好ましく、8,000〜100,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が5,000未満では、画像形成して得られる刷版の画像部が弱く、耐刷性に劣る傾向にある。一方、200,000を越える範囲では、粒子化することが困難となる傾向になる。
【0025】
次に、本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子の水分散体を得る方法を、転相乳化法を例に挙げて説明する。本発明で使用する熱可塑性樹脂を塩基性化合物で中和する際に使用する塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類;アンモニアなどが挙げられる。特にアンモニアは、画像形成後の刷版における画像部のインキ着肉性や、刷版の耐刷性を損なわないことから好ましい。塩基性化合物は、本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が2nm以上5nm未満となるような量を添加する。一般に、カルボキシル基の0.8〜1.2当量に相当する塩基性化合物を添加することが好ましい。
【0026】
次に、塩基性化合物で中和した熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液に、撹拌しながら水をゆっくりと加え、転相乳化を行う。あるいは、水に中和した熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液を加える方法、熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液に塩基性化合物を含む水を加える方法、塩基性化合物を含む水に熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液を加える方法等で行ってもよい。このとき使用する撹拌装置は、ホモミキサー等の通常の撹拌装置や、乳化分散機等の剪断力を与えるような分散機を用いることができる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂粒子の水分散体は、有機溶媒を含有していてもよい。得られる該分散体はチンダル現象を呈するコロイド分散体である。
【0027】
本発明においては、画像形成性を向上させるために。光を吸収して熱を発生する物質を用いる。本発明で使用する光を吸収して熱を発生する物質は、光、特に赤色から近赤外、赤外レーザー光の波長域に吸収波長を有する顔料や染料が使用でき、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、シアニン等の顔料や染料、ポリメチン系顔料や染料、スクワリリウム色素などの赤色吸収剤、近赤外吸収剤、赤外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に極大吸収波長(λmax)を有する物質を使用すると、得られる平版印刷版原版を明室下で取り扱えるようになるため、より好ましい。該物質の添加量は、概ね、レーザー光の波長域に対する感熱性組成物の吸光度が0.5〜3程度となるように調節するが、具体的には0.5〜70質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲がより好ましい。0.5質量%より少ないと熱の発生が少ないため、画像が充分に形成されず、また、70質量%より多い場合は、平版印刷版原版表面が傷つき易くなったり、非画像部の汚れが生じ易くなったりする。
【0028】
本発明の感熱性組成物は、前記の熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有する。本発明の感熱性組成物を作成する際に使用する分散機としては、例えば、超音波分散機、サンドミル、アトライター、バールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、ディスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー、ペイントコンディショナーなどが挙げられる。また、このとき有機溶媒を併用してもよく、その際には、水と均一に溶解しうる低沸点の有機溶媒の使用が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類が挙げられる。
【0029】
本発明の感熱性組成物は、平均粒径が2nm以上5nm未満の熱可塑性樹脂粒子を含有するため、保存安定性を低下させるおそれのある界面活性剤を特別使用せずに塗装でき、平滑で良好な塗装面を得ることが特徴である。そのため、通常の使用においては特別な助剤を必要とはしないが、例えば、粘度調整のための天然水溶性高分子や合成水溶性高分子;レベリング剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性の有機溶媒;ビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、又はメタアクリル酸ヒドロキシエチルのホモポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル共重合体、ゼラチン、多糖類等の天然高分子等の親水性結合剤等を、必要に応じて添加してもよい。一方、長期保存を目的としない場合には、適宜界面活性剤を使用しても構わないが、その量は少量であることが好ましい。
【0030】
本発明の感熱性組成物は、好ましくは不揮発成分が1〜50質量%となるように調製した後、親水性表面を有する支持体上に塗布後、乾燥し、親水性表面上に好ましくは約0.5〜10μmの感熱層を形成することによって、本発明の平版印刷版原版を得ることができる。
【0031】
支持体としては、通常平版印刷版原版用の支持体として使用されているものが挙げられ、例えば、アルミニウム、亜鉛、ステンレス、鉄等の金属板類;ポリエチレングリコールテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエチレン等のプラスチックフィルム類、合成樹脂を溶融塗布あるいは合成樹脂液を塗布した紙やプラスチックフィルムに真空蒸着やラミネート等の方法で金属が被覆された複合支持体等が挙げられる。これらは、必要に応じて表面に親水化処理を施した後、親水性表面を有する支持体として使用する。これらのうち、特にアルミニウム板や、プラスチックフィルムにアルミニウムで被覆した複合支持体の使用が好ましい。アルミニウム支持体の表面は、保水性を高め、感熱層との密着性を向上させる目的で砂目立てや陽極酸化処理等の表面処理をしてあることが望ましい。
【0032】
塗布方法としては例えば、スピンコーター等による回転塗布法、ディップ塗布法、ロール塗布法、カーテン塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、スプレー塗布法、バーコーター塗布法等が挙げられる。支持体上に塗布した後の、該感熱性組成物の乾燥方法には特に限定はないが、常温で乾燥させることが簡便であり好ましい。より短時間で乾燥させるために、30〜150℃で10秒〜10分間、温風乾燥機、赤外線乾燥機等を使用して乾燥させることもできる。
【0033】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。本発明の平版印刷版原版を使用した画像形成方法は、画像情報に基づいて原版上に直接レーザー光を照射して画像潜像を形成した後、現像液を用いて現像する方法であり、この画像情報がコンピュータ等からのデジタル化された画像情報であることが好ましい。画像潜像を形成する際に使用するレーザーとしては発振波長が500nmから3000nmのレーザーが挙げられる。特に760nm〜3000nmの近赤外から赤外領域に最大強度を有するレーザーを使用すると、平版印刷版原版を明室下で取り扱うことができ、より好ましい。このようなレーザーとしては、例えば半導体レーザー、YAGレーザーが挙げられる。これらのレーザーは、使用する光を吸収して熱を発生する物質の吸収波長と対応させて使用する。
【0034】
画像潜像を形成した後は、未露光部をアルカリ性現像液で溶解除去することにより現像を行う。アルカリ性現像液としてはアルカリ性物質の水溶液が好ましい。アルカリ性物質としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第二又は第三リン酸のナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機のアルカリ化合物;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン等の有機のアルカリ化合物が挙げられる。
【0035】
現像液中のアルカリ性物質の含有量は、0.005〜10質量%の範囲が好ましく、0.05〜5質量%の範囲が特に好ましい。これらの現像液には、必要に応じて、有機溶媒;亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性亜硫酸塩;アルカリ可溶性ピラゾロン化合物、アルカリ可溶性チオール化合物等のヒドロキシ芳香族化合物;ポリリン酸塩、アミノポリカルボン酸類等の硬水軟化剤;イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、n−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の各種界面活性剤や各種消泡剤を使用することもできる。
【0036】
該アルカリ性現像液は、市販されているネガ型PS版用又はポジ型PS版用の現像液を使用しても構わない。本発明の平版印刷版原版はアルカリ性現像液に対する溶解度が高いので、市販のPS版に使用するpH13.5〜14.0よりも希薄な、pH9〜13に調整して現像するのが好ましい。
【0037】
本発明の平版印刷版原版は、レーザー光を照射して画像潜像を形成した後、アルカリ性現像液に浸漬して現像する。このときの現像液の温度は、15〜40℃の範囲が好ましく、浸漬時間は1秒〜2分の範囲が好ましい。必要に応じて、現像中に軽く表面を擦ることもできる。
【0038】
現像後、水洗し、更に必要に応じて水系の不感脂化剤を塗布する。水系の不感脂化剤としては、例えば、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等の水溶性天然高分子やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性合成高分子等の水溶液が挙げられ、必要に応じて酸や界面活性剤等を加えることができる。不感脂化剤を塗布した後、平版印刷版原版を乾燥して、刷版が完成する。
【0039】
これらの工程は一工程づつ実施しても勿論良いが、実際には画像露光機や自動現像機を使用して連続して行うことが好ましい。例えば、YAGレーザーや赤外線半導体レーザー等のレーザーを光源とした画像露光機に本発明の平版印刷版原版を装着し、コンピュータからのデジタル情報を直接該印刷版原版上に画像書き込みを行って画像潜像を形成する。その後自動現像機を使用して現像を行い、刷版を得ることができる。
【0040】
本発明の平版印刷版原版は、主に赤外領域の光に感応するように処方することによって、通常室内光の下で作業を進めることができるという特長を有している。また、従来の平版印刷版原版では画像潜像を形成した後、現像前にプレヒート工程を必要としたが、本発明の平版印刷版原版では該工程を必要としないという特長も有している。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、不揮発成分の測定、平均粒径の測定、質量平均分子量の測定、ガラス転移温度(Tg)の測定、及び保存安定性試験は、下記の方法により、行った。
【0042】
[不揮発成分の測定]
試料約1gを130℃の乾燥機で1時間乾燥し、乾燥前後の質量測定から、不揮発成分を質量%で表した。
[平均粒径の測定]
レーザードップラー式粒度分布計マイクロトラックUPA−150で測定して得られる粒度分布のピークの粒径を平均粒径とした。
[質量平均分子量の測定]
ゲル・浸透・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算分子量として記した。
【0043】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
[保存安定性試験]
温度60℃、湿度75%の恒温恒湿機に平版印刷版原版を15時間静置して、保存前後での現像性の比較により保存安定性を調べた。
【0044】
<参考例1>(熱可塑性樹脂粒子の水分散体(A)の調製)
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管及び滴下装置を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、溶媒としてエタノール300gを仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温した後、スチレン230g、アクリル酸70g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに16時間撹拌を続けることによって、不揮発成分が50.0%、質量平均分子量15,000、Tg110℃の熱可塑性樹脂のエタノール溶液を得た。
【0045】
容量500mLのビーカーに、得られた熱可塑性樹脂のエタノール溶液100g、25%アンモニア水10gを加え、撹拌しながら総量200gの水を滴下することで、転相乳化を経て、乾燥固形分17%、平均粒径3.3nmの熱可塑性樹脂粒子のエタノールを含有する水分散体(A)を得た。
【0046】
<参考例2>(熱可塑性樹脂粒子の水分散体(B)の調製)
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管及び滴下装置を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン300gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した後、スチレン200g、メタクリル酸100g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに16時間撹拌を続けることによって、不揮発成分が50.0%、質量平均分子量16,000、Tg124℃の熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。
【0047】
容量500mLのビーカーに、得られた熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液100g、25%アンモニア水10gを加え、撹拌しながら総量300gの水を滴下することで、メチルエチルケトンを含有した水分散体を得た。エバポレータで減圧しながらメチルエチルケトンを留去して、乾燥固形分20%、平均粒径4.1nmの熱可塑性樹脂粒子の水分散体(B)を得た。
【0048】
<参考例3>(熱可塑性樹脂粒子の水分散体(C)の調製)
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管及び滴下装置を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン300gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した後、スチレン230g、アクリル酸70g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)12gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに16時間撹拌を続けることによって、不揮発成分が50.0%、質量平均分子量16,000、Tg112℃の熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。
【0049】
容量500mLのビーカーに、得られた熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液100g、25%アンモニア水10gを加え、撹拌しながら総量300gの水を滴下することで、メチルエチルケトンを含有する水分散体を得た。エバポレータで減圧しながらメチルエチルケトンを留去して、乾燥固形分20%、平均粒径3.6nmの熱可塑性樹脂粒子の水分散体(C)を得た。
【0050】
<参考例4>(熱可塑性樹脂粒子の水分散体(D)の調整)
撹拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管及び滴下装置を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン400gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した後、スチレン80g、メタクリル酸メチル238.9g、メタクリル酸24.5g、アクリル酸ブチル56.6g、パーブチルO(日本油脂(株)製の重合開始剤)の8gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、8時間撹拌後、パーブチルOを0.5g加え、さらに8時間撹拌を続けることによって、不揮発成分が49.5%、酸価39.1,質量平均分子量20,000の熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。
【0051】
容量500mLのビーカーに、得られた熱可塑性樹脂のメチルエチルケトン溶液を100g、トリエチルアミン2.71gを加え、撹拌しながら水を滴下した。プレポリマー溶液は徐々に増粘したが、約150gの水を滴下した辺りから著しく粘度が低下して、転相が完了した。さらに150gの水を加えた後、得られた分散液を30℃に加熱して、メチルエチルケトンならびに余剰の水を減圧除去することによって、不揮発成分37.7%、平均粒径120nmの熱可塑性樹脂粒子の水分散体(D)を得た。
【0052】
<実施例1>
参考例1で得た熱可塑性樹脂粒子の水分散体(A)20gに、赤外線吸収剤「YKR−3070」(山本化成社製)0.3g、水6g、および、1mmジルコニアビーズ180gを加え、ペイントコンディショナーで1時間攪拌した後、ジルコニアビーズを濾過除去することによって、赤外線吸収剤を分散した感熱性組成物(A’)を得た。
【0053】
A2サイズで厚さ0.3mm厚のアルミニウム板表面をパミストンの水懸濁液を用いてナイロンブラシで研磨して、その表面を砂目立てし、次いで20%硫酸電解液中、電流密度2A/dm2で陽極酸化して、2.7g/m2の酸化被膜を形成した後、水洗し、乾燥して支持体を得た。
この支持体に、感熱性組成物(A’)を8番のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で4分間乾燥させて、膜厚2μmの平版印刷版原版を得た。
【0054】
この平版印刷版原版を用い、近赤外線半導体レーザーを搭載した露光機トレンドセッター3244F(Creo社製)にて、レーザー光を照射して画像潜像を形成させた。次いで、ポジ用PS版現像液「PD−1」(コダックポリクロームグラフィックス社製)1:99水希釈溶液(pH12.3)を用いて30℃で25秒間浸漬して現像し、水洗した後、乾燥することによって、コンピュータ上の画像が版上に形成された刷版を得た。また、該平版印刷版原版の保存安定性試験でも、現像性に変化は見られなかった。
【0055】
<実施例2>
参考例2で得た熱可塑性樹脂粒子の水分散体(B)20gに、赤外線吸収剤「IRT」(昭和電工社製)0.3g、エタノール6g、水3g、および、1mmジルコニアビーズ180gを加え、ペイントコンディショナーで1時間攪拌した後、ジルコニアビーズを濾過除去することによって、赤外線吸収剤を分散した感熱性組成物(B’)を得た。
実施例1と同様にして表面を親水化処理した支持体に、この感熱性組成物(B’)を8番のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で4分間乾燥して、膜厚2μmの平版印刷版原版を得た。
この平版印刷版原版を用い、実施例1と同様にして刷版を得た。また、該平版印刷版原版の保存安定性試験でも、現像性に変化は見られなかった。
【0056】
<実施例3>
参考例3で得た熱可塑性樹脂粒子の水分散体(C)20gに、赤外線吸収剤として4−メチルベンゼンスルホン酸2−(2−(2−クロロ−3−((1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−2H−ベンズ(e)インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1,3−トリメチル−1H−ベンズ(e)インドリウムを0.3g、エタノール6g、水3g、および、1mmジルコニアビーズ180gを加え、ペイントコンディショナーで1時間攪拌した。次いで、ジルコニアビーズを濾過除去することによって、赤外線吸収剤を分散した感熱性組成物(C’)を得た。
【0057】
実施例1と同様と同様にして表面を親水化処理した支持体に、感熱性組成物(C’)を8番のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で4分間乾燥させて、膜厚2μmの平版印刷版原版を得た。
この平版印刷版原版を用い、実施例1と同様にして刷版を得た。また、該平版印刷版原版の保存安定性試験でも、現像性に変化は見られなかった。
【0058】
<比較例1>
参考例4で得られた熱可塑性樹脂粒子の水分散体(D)36.0gに、撹拌しながらアクリル酸樹脂をグラフト化したカーボンブラック「カーボンブラックCWA」分散液(チバガイギー社製)30.0g、蒸留水75.0g、メタノール30.0g及び弗素系界面活性剤メガファックF−470(大日本インキ化学工業社製)0.02gをこの順番で加え、さらに、室温にて10分間撹拌して感熱性組成物(D’)とした。
【0059】
予めマット剤を除去したポジ型PS版HP(コダックポリクロームグラフィックス社製)の上に、感熱性組成物(D’)を9番のバーコーターを用いて塗布し、50℃で3分間乾燥し、平版印刷版原版を得た。塗布量は、1.4g/m2であった。
この平版印刷版原版を用い、実施例1にして刷版を得た。また、該平版印刷版原版の保存安定性試験では、保存後の原版は、未露光部が現像液で溶出せず、画像形成できなかった。
【0060】
(印刷テスト)
実施例1〜3で得られた刷版を、それぞれ印刷機(TOHAMA N-600輪転機)に装着し、印刷テストを実施した。印刷条件としては、印刷速度:12万部/時間、印刷用紙:中越パルプ新聞用ザラ紙、インキ:MKHS-EZ(新聞用インキ墨)、湿し水:FST-212 2%、印圧0.25とし、20,000枚の促進耐刷試験を行った。その結果、印刷試験後の実施例1〜3で得られた刷版に何ら異常は見られなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の感熱性組成物は、保存安定性を低下させるおそれのある界面活性剤を使用せずに塗装できるので造膜性が良好で、膜強度に優れた平滑な塗膜となり、これを平版印刷版原版用塗膜として用いた場合、より低い熱エネルギーで融着することができるので高感度となる。又、本発明の平版印刷版原版は、光照射により潜像を形成し、本発明の感熱性組成物を使用することで、レーザー書き込み後、プレヒート工程を必要とせずに現像のみで高い解像性の画像が形成でき、且つ、高温高湿下での保存により現像性が低下することのなく、感度、保存安定性に優れ、高耐刷性を示すという特徴を有する。また、本発明の画像形成方法によれば、コンピュータ等からのデジタル化された画像情報を原版上に直接レーザー光照射で潜像を形成でき、プレヒート工程を必要とせずに現像でき、しかも、露光、現像にあたって暗室を必要とせずに明るいところで作業でき、感度が高いため良好な画像が得られ、耐刷性に優れる印刷版原版が得られるという特徴を有する。
Claims (7)
- 必須構成単量体としてスチレン又はスチレン誘導体を60〜85質量%、アクリル酸又はメタクリル酸を15〜40質量%含有する熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質、及び水を含有し、該熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が2nm以上5nm未満であることを特徴とする感熱性組成物。
- 熱可塑性樹脂のTgが90〜150℃の範囲である、請求項1に記載の感熱性組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の少なくとも一部がアンモニアで中和されたものである請求項1又は2に記載の感熱性組成物。
- 前記熱可塑性樹脂粒子が、転相乳化により得られる樹脂粒子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱性組成物。
- 親水性表面を有する支持体表面に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感熱性組成物の乾燥塗膜を有することを特徴とする平版印刷版原版。
- 親水性表面を有する支持体表面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感熱性組成物の乾燥塗膜からなる感光層を有する平版印刷版原版に、レーザー光を照射して画像潜像を形成した後、pH9〜13のアルカリ性現像液を用いて現像することを特徴とする画像形成方法。
- レーザー光の照射がデジタル化された画像情報に基づくものである請求項6に記載の画像形成方法。
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