JP2004201576A - 光学活性1、3−アルキルジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法 - Google Patents
光学活性1、3−アルキルジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】簡便な光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の新規な製造方法。
【解決手段】1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー化合物の立体選択的酸化能を有する微生物を用いて、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導を製造する。立体選択的酸化能を有する微生物としては、バシルス(Bacillus)属に属する微生物種が好ましい。さらに好ましくは、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)である。
【解決手段】1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー化合物の立体選択的酸化能を有する微生物を用いて、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導を製造する。立体選択的酸化能を有する微生物としては、バシルス(Bacillus)属に属する微生物種が好ましい。さらに好ましくは、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造法に関する。光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体は、種々の医薬品や光学活性な生理活性物質、およびその誘導体の中間体として重要である。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法としては、4−ベンジルオキシ−2−ブタノンをパン酵母で不斉還元する方法(Synthesis,1007(1987))、リパーゼによりラセミ体1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルのアセチル誘導体を立体選択的に加水分解する方法(特開平2−39899)等が知られている。
【0003】
しかし、前者の方法は数十グラムの目的化合物を得るために数十キログラムの糖を使用する必要があり回収操作の煩雑さを考慮すると工業的な製造方法として難がある。また後者は酵素反応後、光学活性アセチル誘導体を光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体へ変換する操作がさらに必要とされ、回収収率が低下する。
【0004】
以上のことから、回収操作の煩雑さと回収率の低下を解決した簡便な手段で、高収率に光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造しうる方法が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は上記種々の問題点を解決し、簡便な手段で高収率に光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造する方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物に対し極めて高い立体選択的酸化能を有する微生物を作用させて一方のエナンチオマーを優先的に酸化させ、残った光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収することで、効率良く光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、以下に示す光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法である。
一般式(I)で示される1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物
【化2】
(式中、Rは水素、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を、Xは水素、またはハロゲン基を表す)に立体選択的酸化能を有する微生物を作用させて一方のエナンチオマーを酸化し、残存する光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収することを特徴とする、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法。
【0008】
立体選択的酸化能を有する微生物は、バシルス(Bacillus)属に属する微生物であることが好ましく、バシルス(Bacillus)属に属する微生物が、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、またはバシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)であることがさらに好ましい。
【0009】
光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体は光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルまたは光学活性4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオールであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明において1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体とは一般式(I)で示される化合物を指す。
【0012】
【化3】
一般式(I)においてRは水素、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を、Xは水素、またはハロゲン基を表す。本発明に実施にあたっては、Rは水素、水酸基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、または炭素数1〜3のアルキル基が、Xは水素、F、Cl、Br、I原子が好ましく、その中でもRは水素、水酸基が、Xは水素が特に好ましい。
【0013】
立体選択的酸化能を有する微生物とは、一般式(I)で示された1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物のうち、一方のエナンチオマーの3位の水酸基を優先的に酸化しケトンへと変換する能力を有する微生物のことを言う。
【0014】
本発明に使用する微生物は、1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物から、立体選択的酸化反応を触媒し光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を生産する能力を有すればその種類及び起源を問わない。
【0015】
そのような微生物としては、 バシルス(Bacillus)属等に属する微生物が挙げられる。
【0016】
バシルス(Bacillus)属に属する微生物としてはバシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)MU0054(FERM P-19112)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)MU0073、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)MU0103 (FERM P-19111)等が例示される。
【0017】
上記微生物は本発明者が新たに土壌中より分離したもので、上記寄託番号にて産業総合技術研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。MU0073株に関しては、バイオセイフティーレベル2に該当する微生物であり、上記寄託センターでの受託は拒否されている。
【0018】
次にそれら菌株の生物学的性状は示す。
【0019】
また、これらの微生物から単離した酵素遺伝子を各種宿主ベクター系に導入した遺伝子操作微生物の利用も可能である。
【0020】
さらに、上記のような微生物菌体のみならず、その処理存在下で1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造することもできる。
【0021】
ここで「処理物」とは、微生物を培地中で培養して得られる培養物をそのままか、又は該培養物から遠心分離などの集菌操作によって得られる培養上清、菌体、菌体をアセトン、トルエン等で処理したもの、菌体の破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物、固定化処理された菌体、粗酵素、精製酵素などをいう。
【0022】
本発明においては、これら微生物菌体、菌体処理物又は酵素を通常1種類用いるが、同様な能力を有する2種以上のそれを混合して用いることも可能である。
【0023】
本発明においてこれらの微生物を培養するための培地としては、通常これらの微生物が生育し得るものであれば何れのものでも使用できる。炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロースやマルトース等の糖類、酢酸、クエン酸等の有機酸あるいはその塩、エタノールやグリセロール等のアルコール類等を使用できる。窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキスやアミノ酸等の一般天然窒素源の他、各種無機、有機酸アンモニウム塩等が使用できる。その他、無機塩、微量金属塩、ビタミン等が必要に応じて適宜添加される。
【0024】
その培養は常法に従って行えばよく、例えば、pH4〜10、温度15〜40℃の範囲にて好気的に6〜96時間培養する。また、静置培養で同様に培養することで高い酵素活性を得ることができる場合がある。
【0025】
本発明において、立体選択的酸化反応による光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の生産は、以下の方法で行うことができる。
【0026】
水または緩衝液等の反応溶媒中で1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物に上記微生物、またはその処理物を接触させることにより行うことができる。そして、反応温度、必要により反応液のpHを制御しながら反応を行う。
【0027】
該能力を有する微生物を用いた光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法については、酸化反応後、残存する1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体にエナンチオマー過剰が認められれば反応形態等について特に制限は無く、これを反応液より回収することで光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できる。
【0028】
反応液の基質濃度は、0.01〜50重量%の間で特に制限はないが、生産性等を考慮すると0.05〜20重量%の濃度で実施するのが好ましい。
【0029】
反応液中の微生物等の濃度は、通常、0.001〜20重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0030】
反応液のpHは用いる酵素の至適pH等を考慮し、総合的に決定され、特に制限はないが、一般的にはpH4〜11の範囲であり、好ましくはpH5〜9である。また、反応が進行するに従いpHが変化してくる場合、適当な中和剤を添加して最適pHに調整することができる。
【0031】
反応温度は0〜60℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。
【0032】
反応溶媒は、通常イオン交換水、緩衝液等の水性媒体を使用するが、1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物の溶解を促進させるために有機溶媒あるいは界面活性剤を含んだ系でも反応を行うことができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、その他アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド等を適宜使用できる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルピリジニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(スパン系界面活性剤)、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(トゥイーン系界面活性剤)、ポリオキシエチレングリコールp-t-オクチルフェニルエーテル(トリトン系界面活性剤)、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン等の両性界面活性剤等を適宜使用できる。
【0033】
また、これらの有機溶媒あるいは界面活性剤を水への溶解度以上に加えて2層系で反応を行うことも可能である。有機溶媒を反応系に共存させることで、選択率、変換率、収率などが向上することも多い。反応時間は、通常、1時間〜1週間、好ましくは1〜72時間であり、そのような時間で反応が終了する反応条件を選択することが好ましい。
【0034】
尚、以上のような基質濃度、微生物濃度、pH、温度、溶媒、反応時間およびその他の反応条件はその条件における反応収率等を考慮して目的とする光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体が最も多く採取できる条件を適宜選択することが望ましい。
【0035】
反応終了後、混合液からの残存する光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収・単離することで光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できる。目的化合物の回収・単離は、濃縮、抽出、カラム分離、結晶化、クロマト分離等通常の公知の方法によって行うことができる。また回収・単離操作前に必要に応じて除菌操作、反応液濃縮操作を行っても良い。例えば反応液からジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類; ブタノール、イソブタノール、t-アミルアルコール等のアルコール系溶媒等一般的な溶媒により目的化合物を抽出回収することができる。
【0036】
また、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体製造の最副生する4−ベンジルオキシ−2−ブタノン誘導体は、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体と分離、回収した後、例えば化学的に還元して1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物へ変換し、再び立体選択的酸化反応へ供することも可能である。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する
<実施例1>
バシルス・セレウス(Bacillus cereus)MU0073を、500mL容バッフル付き三角フラスコ中の50mL滅菌培地〔0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)中、1.0%グルコース、0.7%ポリペプトン、0.5%酵母エキスを含む。〕に接種し、30℃で48時間振とう培養した。ラセミ体1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル50mgをジメチルスルフォキシド0.5mLに溶解し、これを培養液に加え、さらに30℃で24時間振とうした。酢酸エチルで生成物を抽出、溶媒溜去後残渣をプレパラティブTLCで精製することで(S)−1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル18.5mgを得た(収率37%)。その光学純度は以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを使用し、測定した。
【0038】
〔高速液体クロマトグラフィー分析条件〕
カラム:DAICEL、CHIRALCEL OJ(4.6×250mm)
キャリア:n-ヘキサン:IPA(180:1)、1.0mL/min.
検出:UV(254nm)
光学純度は99%e.e.以上であった。また4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は22.0mgであった(収率44%)。
【0039】
<実施例2>
バシルス・エスピー(Bacillus sp.)MU0103(FERM P-19111)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応後、(S)−1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテ12.5mgを得た(収率25%)。その光学純度は97%e.e.であった。また4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は18.5mgであった(収率37%)。
【0040】
<実施例3>
バシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)MU0054(FERM P-19112)を実施例1と同組成の培地に接種し、30℃で48時間培養した。この培養液にラセミ体4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオール50mgを加え、さらに30℃で24時間振とうした。酢酸エチルで生成物を抽出、溶媒溜去後残渣をプレパラティブTLCで精製することで(S)−4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオール26.5mgを得た(収率53%)。その光学純度は58%e.e.であった。また1−ヒドロキシ―4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は19.0mgであった(収率38%)。
【発明の属する技術分野】
本発明は光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造法に関する。光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体は、種々の医薬品や光学活性な生理活性物質、およびその誘導体の中間体として重要である。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法としては、4−ベンジルオキシ−2−ブタノンをパン酵母で不斉還元する方法(Synthesis,1007(1987))、リパーゼによりラセミ体1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルのアセチル誘導体を立体選択的に加水分解する方法(特開平2−39899)等が知られている。
【0003】
しかし、前者の方法は数十グラムの目的化合物を得るために数十キログラムの糖を使用する必要があり回収操作の煩雑さを考慮すると工業的な製造方法として難がある。また後者は酵素反応後、光学活性アセチル誘導体を光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体へ変換する操作がさらに必要とされ、回収収率が低下する。
【0004】
以上のことから、回収操作の煩雑さと回収率の低下を解決した簡便な手段で、高収率に光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造しうる方法が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は上記種々の問題点を解決し、簡便な手段で高収率に光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造する方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物に対し極めて高い立体選択的酸化能を有する微生物を作用させて一方のエナンチオマーを優先的に酸化させ、残った光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収することで、効率良く光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、以下に示す光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法である。
一般式(I)で示される1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物
【化2】
(式中、Rは水素、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を、Xは水素、またはハロゲン基を表す)に立体選択的酸化能を有する微生物を作用させて一方のエナンチオマーを酸化し、残存する光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収することを特徴とする、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法。
【0008】
立体選択的酸化能を有する微生物は、バシルス(Bacillus)属に属する微生物であることが好ましく、バシルス(Bacillus)属に属する微生物が、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、またはバシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)であることがさらに好ましい。
【0009】
光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体は光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルまたは光学活性4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオールであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明において1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体とは一般式(I)で示される化合物を指す。
【0012】
【化3】
一般式(I)においてRは水素、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキル基を、Xは水素、またはハロゲン基を表す。本発明に実施にあたっては、Rは水素、水酸基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、または炭素数1〜3のアルキル基が、Xは水素、F、Cl、Br、I原子が好ましく、その中でもRは水素、水酸基が、Xは水素が特に好ましい。
【0013】
立体選択的酸化能を有する微生物とは、一般式(I)で示された1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物のうち、一方のエナンチオマーの3位の水酸基を優先的に酸化しケトンへと変換する能力を有する微生物のことを言う。
【0014】
本発明に使用する微生物は、1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物から、立体選択的酸化反応を触媒し光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を生産する能力を有すればその種類及び起源を問わない。
【0015】
そのような微生物としては、 バシルス(Bacillus)属等に属する微生物が挙げられる。
【0016】
バシルス(Bacillus)属に属する微生物としてはバシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)MU0054(FERM P-19112)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)MU0073、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)MU0103 (FERM P-19111)等が例示される。
【0017】
上記微生物は本発明者が新たに土壌中より分離したもので、上記寄託番号にて産業総合技術研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。MU0073株に関しては、バイオセイフティーレベル2に該当する微生物であり、上記寄託センターでの受託は拒否されている。
【0018】
次にそれら菌株の生物学的性状は示す。
【0019】
また、これらの微生物から単離した酵素遺伝子を各種宿主ベクター系に導入した遺伝子操作微生物の利用も可能である。
【0020】
さらに、上記のような微生物菌体のみならず、その処理存在下で1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造することもできる。
【0021】
ここで「処理物」とは、微生物を培地中で培養して得られる培養物をそのままか、又は該培養物から遠心分離などの集菌操作によって得られる培養上清、菌体、菌体をアセトン、トルエン等で処理したもの、菌体の破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物、固定化処理された菌体、粗酵素、精製酵素などをいう。
【0022】
本発明においては、これら微生物菌体、菌体処理物又は酵素を通常1種類用いるが、同様な能力を有する2種以上のそれを混合して用いることも可能である。
【0023】
本発明においてこれらの微生物を培養するための培地としては、通常これらの微生物が生育し得るものであれば何れのものでも使用できる。炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロースやマルトース等の糖類、酢酸、クエン酸等の有機酸あるいはその塩、エタノールやグリセロール等のアルコール類等を使用できる。窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキスやアミノ酸等の一般天然窒素源の他、各種無機、有機酸アンモニウム塩等が使用できる。その他、無機塩、微量金属塩、ビタミン等が必要に応じて適宜添加される。
【0024】
その培養は常法に従って行えばよく、例えば、pH4〜10、温度15〜40℃の範囲にて好気的に6〜96時間培養する。また、静置培養で同様に培養することで高い酵素活性を得ることができる場合がある。
【0025】
本発明において、立体選択的酸化反応による光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の生産は、以下の方法で行うことができる。
【0026】
水または緩衝液等の反応溶媒中で1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物に上記微生物、またはその処理物を接触させることにより行うことができる。そして、反応温度、必要により反応液のpHを制御しながら反応を行う。
【0027】
該能力を有する微生物を用いた光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法については、酸化反応後、残存する1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体にエナンチオマー過剰が認められれば反応形態等について特に制限は無く、これを反応液より回収することで光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できる。
【0028】
反応液の基質濃度は、0.01〜50重量%の間で特に制限はないが、生産性等を考慮すると0.05〜20重量%の濃度で実施するのが好ましい。
【0029】
反応液中の微生物等の濃度は、通常、0.001〜20重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0030】
反応液のpHは用いる酵素の至適pH等を考慮し、総合的に決定され、特に制限はないが、一般的にはpH4〜11の範囲であり、好ましくはpH5〜9である。また、反応が進行するに従いpHが変化してくる場合、適当な中和剤を添加して最適pHに調整することができる。
【0031】
反応温度は0〜60℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。
【0032】
反応溶媒は、通常イオン交換水、緩衝液等の水性媒体を使用するが、1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物の溶解を促進させるために有機溶媒あるいは界面活性剤を含んだ系でも反応を行うことができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、その他アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド等を適宜使用できる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルピリジニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(スパン系界面活性剤)、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(トゥイーン系界面活性剤)、ポリオキシエチレングリコールp-t-オクチルフェニルエーテル(トリトン系界面活性剤)、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン等の両性界面活性剤等を適宜使用できる。
【0033】
また、これらの有機溶媒あるいは界面活性剤を水への溶解度以上に加えて2層系で反応を行うことも可能である。有機溶媒を反応系に共存させることで、選択率、変換率、収率などが向上することも多い。反応時間は、通常、1時間〜1週間、好ましくは1〜72時間であり、そのような時間で反応が終了する反応条件を選択することが好ましい。
【0034】
尚、以上のような基質濃度、微生物濃度、pH、温度、溶媒、反応時間およびその他の反応条件はその条件における反応収率等を考慮して目的とする光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体が最も多く採取できる条件を適宜選択することが望ましい。
【0035】
反応終了後、混合液からの残存する光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を回収・単離することで光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体を製造できる。目的化合物の回収・単離は、濃縮、抽出、カラム分離、結晶化、クロマト分離等通常の公知の方法によって行うことができる。また回収・単離操作前に必要に応じて除菌操作、反応液濃縮操作を行っても良い。例えば反応液からジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類; ブタノール、イソブタノール、t-アミルアルコール等のアルコール系溶媒等一般的な溶媒により目的化合物を抽出回収することができる。
【0036】
また、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体製造の最副生する4−ベンジルオキシ−2−ブタノン誘導体は、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体と分離、回収した後、例えば化学的に還元して1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体のエナンチオマー混合物へ変換し、再び立体選択的酸化反応へ供することも可能である。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する
<実施例1>
バシルス・セレウス(Bacillus cereus)MU0073を、500mL容バッフル付き三角フラスコ中の50mL滅菌培地〔0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)中、1.0%グルコース、0.7%ポリペプトン、0.5%酵母エキスを含む。〕に接種し、30℃で48時間振とう培養した。ラセミ体1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル50mgをジメチルスルフォキシド0.5mLに溶解し、これを培養液に加え、さらに30℃で24時間振とうした。酢酸エチルで生成物を抽出、溶媒溜去後残渣をプレパラティブTLCで精製することで(S)−1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル18.5mgを得た(収率37%)。その光学純度は以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを使用し、測定した。
【0038】
〔高速液体クロマトグラフィー分析条件〕
カラム:DAICEL、CHIRALCEL OJ(4.6×250mm)
キャリア:n-ヘキサン:IPA(180:1)、1.0mL/min.
検出:UV(254nm)
光学純度は99%e.e.以上であった。また4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は22.0mgであった(収率44%)。
【0039】
<実施例2>
バシルス・エスピー(Bacillus sp.)MU0103(FERM P-19111)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応後、(S)−1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテ12.5mgを得た(収率25%)。その光学純度は97%e.e.であった。また4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は18.5mgであった(収率37%)。
【0040】
<実施例3>
バシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)MU0054(FERM P-19112)を実施例1と同組成の培地に接種し、30℃で48時間培養した。この培養液にラセミ体4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオール50mgを加え、さらに30℃で24時間振とうした。酢酸エチルで生成物を抽出、溶媒溜去後残渣をプレパラティブTLCで精製することで(S)−4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオール26.5mgを得た(収率53%)。その光学純度は58%e.e.であった。また1−ヒドロキシ―4−ベンジルオキシ−2−ブタノンの取得量は19.0mgであった(収率38%)。
Claims (4)
- 立体選択的酸化能を有する微生物がバシルス(Bacillus)属に属する微生物である請求項1記載の光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法。
- バシルス(Bacillus)属に属する微生物が、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、またはバシルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)である請求項2記載の光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法の製造方法。
- 光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体が、光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルまたは光学活性4−ベンジルオキシ−1、2−ブタンジオールである請求項1〜3のいずれかに記載の光学活性1、3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体の製造方法。
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