JP2004201274A - アンテナ装置、無線装置およびレーダ - Google Patents

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Abstract

【課題】 ビーム走査を高速化でき、ビーム走査に要する消費電力を節減でき、ビーム走査に伴う作動音をなくし、さらに故障率を低下させることができ、必要な時点でビーム方位を任意の方位へ向けられるアンテナ装置を得る。また、必要に応じてビームの放射パターンを変更できるようにする。
【解決手段】 1次放射器1とレンズ3との間に共振素子アレイ200を配置する。共振素子アレイ200は、線状導体からなる共振素子と可変リアクタンス回路を誘電体基板上に配列してなる。制御部4が所定の可変リアクタンス回路に対して制御電圧を印加することによって、1次放射器1からの電磁波で所定の共振素子を励振させ、レンズ3によってコリメートされる光路の方位を電子的に変化させる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、指向性を電子的に制御できるようにしたアンテナ装置、それを備えた無線装置およびレーダに関するものである。
従来、例えばミリ波帯の電磁波を用いて物標の探知を行うミリ波レーダのアンテナ装置として特許文献1が開示されている。この特許文献1に示されているアンテナ装置は、誘電体線路および誘電体線路スイッチを用いて複数の1次放射器を時分割的に切り替えて、有効な1次放射器の位置を誘電体レンズの焦点面内で移動させるようにして、送受波ビームの走査を行うようにしたものである。
特開平11−127001号公報
特許文献1に示されているアンテナ装置は、比較的単純な構造で単純な動作によってビーム走査を行うことができる利点を備えている。しかし、この特許文献1に示されているアンテナ装置では、1次放射器の位置を機械的に変位させてビームの走査を行うようにしたものであるので、ビーム走査の速度をある程度以上に速くすることが困難であること、ビーム走査に要する消費電力が比較的大きいこと、ビーム走査時に作動音が生じることといった問題が挙げられる。さらに、1次放射器の位置を機械的に変位させる構造上、摺動部の磨耗による寿命があったり、他の電子的な構成要素に比べて故障率が大きいことが予想される。
また、複数の1次放射器の位置の変位が常に同じパターンで行われるため、必要な時点で所望の方位へビームを向けたりビーム方位をランダム走査するといったことは不可能であった。
また、レンズに対する1次放射器の相対位置関係を変位させるだけであるので、必要に応じてビームの放射パターンを変更するようなことは不可能であった。
この発明の目的は、上述した従来の課題を解消して、ビーム走査を高速化でき、ビーム走査に要する消費電力を節減でき、ビーム走査に伴う作動音をなくし、さらに故障率を低下させることができ、必要な時点でビーム方位を任意の方位へ向けられるアンテナ装置を提供することにある。
また、この発明の他の目的は、上述した従来の課題を解消して、必要に応じてビームの放射パターンを変更できるようにしたアンテナ装置を提供することにある。
この発明のアンテナ装置は、複数の共振素子を配列するとともに、該共振素子のそれぞれに接続され該共振素子の共振周波数を制御する回路を設けた共振素子アレイと、この共振素子アレイに対して励振用の電磁波を放射する、または共振素子から放射された電磁波を受ける1次放射器と、共振素子アレイの位置が略焦点面となるように配置したレンズまたはレフレクタによるコリメート手段とを備えたことを特徴としている。
また、この発明のアンテナ装置は、所定周波数で共振する複数の共振素子を配列するとともに、該共振素子のそれぞれに接続され、印加電圧によってリアクタンスが変化する可変リアクタンス回路を設けた共振素子アレイと、可変リアクタンス回路に対して印加する電圧を制御する制御部と、共振素子アレイに対して励振用の電磁波を放射する、または共振素子から放射された電磁波を受ける1次放射器と、共振素子アレイを略焦点面とする位置に配置したレンズまたはレフレクタによるコリメート手段とを備えたことを特徴としている。
このように、レンズやレフレクタによるコリメート手段の略焦点面に存在する複数の共振素子のうち任意の共振素子を励振させることによって、高い自由度の下でアンテナの指向性を電子的に制御できるようになる。また、複数の共振素子のうち複数の任意の共振素子を同時に励振させることによって、必要に応じてビームの放射パターンを変更できるようになる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記制御部が前記可変リアクタンス回路に対する印加電圧の制御によって、配列された複数の共振素子のうち所定位置または所定位置付近の共振素子を導波器として作用させるとともに、該導波器として作用させる共振素子の位置を切り替えるようにしたことを特徴としている。
このように、共振素子アレイの複数の共振素子は、それらに接続された可変リアクタンス回路に対する印加電圧の制御によって所定の共振素子の共振周波数を制御する。これらの複数の共振素子のうち、1次放射器から放射された電磁波の周波数に共振する共振素子は導波器として作用し、その導波器としての共振素子から再放射された電磁波がコリメート手段によってコリメートされ、その共振素子とコリメート手段の位置関係により定まる方向にビームを形成する。アンテナの可逆定理により、このアンテナ装置が受信アンテナとして作用する時も同様である。
したがって、前記可変リアクタンス回路に対する印加電圧の制御によってビームの指向方向を電子的に制御することが可能となる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記1次放射器を、前記共振素子アレイに対する放射位置または共振素子アレイから放射された電磁波を受ける位置に応じて複数個備える。これにより、共振素子アレイに設ける複数の共振素子の分布が広くなっても、励振すべき共振素子に近い1次放射器を用いて、その共振素子を励振させることができる。また、所定の共振素子から放射された電磁波をそれに近い位置の1次放射器で受けることができる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記1次放射器を、開口空洞共振器と該開口空洞共振器を励振させる励振源とで構成する。これにより、空洞共振器の開口部に前記共振素子アレイを配置するだけで、共振素子アレイの各共振素子と励振源との空間的な結合が容易となる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記複数の共振素子を、その配列方向に対して略垂直で且つ互いに平行な向きにのびる線状導体で構成する。これにより、誘電体基板上に共振素子アレイを容易に構成できるようになる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記複数の共振素子を、その配列方向に対して略45度に傾いて且つ互いに平行な向きにのびる線状導体で構成する。これにより、同様構成の他アンテナ装置から送信された電波を正面方向から受けた際に、その偏波面が自アンテナ装置の偏波面に対して直交する関係となるので、交差偏波の影響を軽減できる。
また、この発明のアンテナ装置は、前記可変リアクタンス回路に、共振素子に対する装荷リアクタンスを変化させる可変容量ダイオードを設け、制御部が可変容量ダイオードに対して逆バイアス電圧を印加するように構成する。
また、この発明のアンテナ装置は、前記可変リアクタンス回路に、共振素子に対する装荷リアクタンスを切り替えるスイッチ素子を設け、制御部がスイッチ素子に対して制御電圧を印加するように構成する。
また、この発明のアンテナ装置は、前記可変リアクタンス回路に、制御電圧によって電極間距離が変化するMEMS素子を設け、制御部がMEMS素子に対して制御電圧を印加するようにように構成する。
また、この発明のアンテナ装置は、前記スイッチ素子を、制御電圧によって電極間のスイッチ制御を行うMEMS素子とする。
また、この発明のアンテナ装置は、前記1次放射器を、給電素子を中心に備え、リアクタンスを装荷した無給電素子を前記給電素子の周囲に配置してなる電子制御導波器アレーアンテナで構成する。これにより、共振素子アレイ方向に形成する電磁波の放射パターンを制御可能とする。
また、この発明の無線装置は、上記のいずれかの構成によるアンテナ装置を備える。
さらに、この発明のレーダは、上記のいずれかの構成によるアンテナ装置を備える。
この発明によれば、レンズやレフレクタによるコリメート手段の略焦点面に存在する複数の共振素子のうち任意の共振素子を励振させることによって、高い自由度の下でアンテナの指向性を電子的に制御できるようになる。また、複数の共振素子のうち複数の任意の共振素子を同時に励振させることによって、必要に応じてビームの放射パターンを変更できるようになる。
また、この発明によれば、可変リアクタンス回路に対する印加電圧の制御によって、配列された複数の共振素子のうち導波器として作用させる共振素子の位置を切り替えるようにしたのでビームの指向方向を電子的に制御することが可能となり、必要な時点で所望の方位へビームを向けたりビーム方位をランダムに走査することも可能となる。
また、この発明によれば、1次放射器を、共振素子アレイに対する放射位置または共振素子アレイから放射された電磁波を受ける位置に応じて複数個備えたことにより、共振素子アレイに設ける複数の共振素子の分布が広くなっても、励振すべき共振素子に近い1次放射器を用いて、その共振素子を励振させることができる。また、所定の共振素子から放射された電磁波をそれに近い位置の1次放射器で受けることができ、広範囲に亘って均等な感度を得ることができる。
また、この発明によれば、1次放射器を開口空洞共振器と該開口空洞共振器を励振させる励振源とで構成することにより、空洞共振器の開口部に共振素子アレイを配置するだけで、共振素子アレイの各共振素子と励振源との空間的な結合が容易となる。
また、この発明によれば、複数の共振素子を、その配列方向に対して略垂直で且つ互いに平行な向きにのびる線状導体で構成することにより、誘電体基板上に共振素子アレイを容易に構成できるようになる。
また、この発明によれば、複数の共振素子を、その配列方向に対して略45度に傾いて且つ互いに平行な向きにのびる線状導体で構成することにより、同様構成の他アンテナ装置から送信された電波を正面方向から受けた際に、その偏波面が自アンテナ装置の偏波面に対して直交する関係となって、交差偏波の影響を軽減できる。
また、この発明によれば、可変リアクタンス回路に、共振素子に対する装荷リアクタンスを変化させる可変容量ダイオードを設け、制御部が可変容量ダイオードに対して逆バイアス電圧を印加するように構成することにより、比較的広い周波数範囲に亘って共振素子の共振周波数を変化させることができ、例えば使用周波数帯の切り替えなども容易となる。
また、この発明によれば、可変リアクタンス回路に、共振素子に対する装荷リアクタンスを切り替えるスイッチ素子を設け、制御部がスイッチ素子に対して制御電圧を印加するように構成することにより、共振素子の共振/非共振状態、または導波器/反射器状態という2状態の切り替えを容易に行えるようになる。
また、この発明によれば、可変リアクタンス回路に、制御電圧によって電極間距離が変化するMEMS素子を設け、制御部がMEMS素子に対して制御電圧を印加する構成とすることにより、小型化でき、また可変リアクタンス回路を共振素子アレイとともにモノリシック化でき、さらにミリ波領域やサブミリ波領域への応用も容易となる。
また、この発明によれば、スイッチ素子を、制御電圧によって電極間のスイッチ制御を行うMEMS素子とすることにより、小型化でき、また可変リアクタンス回路を共振素子アレイとともにモノリシック化でき、さらにミリ波領域やサブミリ波領域への応用も容易となる。
また、この発明によれば、1次放射器を、給電素子を中心に備え、リアクタンスを装荷した無給電素子を給電素子周囲に配置してなる電子制御導波器アレーアンテナで構成することにより、共振素子アレイ方向に形成する電磁波の放射パターンが制御可能となり、例えば共振素子アレイに設けた複数の共振素子の形成範囲が比較的広くても、走査範囲の両側付近で感度が低下するという問題が解消できる。
また、この発明の無線装置によれば、上記のいずれかの構成によるアンテナ装置を備えるので、低消費電力で所望の方位へ速やかにアンテナを指向させて、無線通信が可能となる。
さらに、この発明のレーダによれば、上記のいずれかの構成によるアンテナ装置を備えるので、高速なビーム走査で広範囲に亘って物標の探知を行うことができる。
第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図1〜図4を参照して説明する。
図1は、アンテナ装置の全体の構成を示す図である。ここで、1はホーンアンテナによる1次放射器、200は共振素子アレイである。この共振素子アレイ200には後述するように複数の共振素子をアレイ状に設けている。このアンテナ装置を送信アンテナとして用いる際、1次放射器1は共振素子アレイ200に対して励振用の電磁波を放射する。
1次放射器1は例えばTE10モードの直線偏波の電磁波を放射する。図1の(B)は、1次放射器1の放射パターンを示している。このように、1次放射器1は共振素子アレイ200方向に指向性を持っているが、共振素子アレイ200に設けた複数の共振素子に対して略均等な電力を与える。
共振素子アレイ200に設けている複数の共振素子のうち、所定の共振素子は、1次放射器1から放射された電磁波の周波数に共振して導波器として作用する。
図1の(A)において、3は共振素子アレイ200を焦点面とする誘電体からなるレンズである。共振素子アレイ200に構成している複数の共振素子はレンズ3の焦点面に存在するため、複数の共振素子のうち共振状態にある(すなわち導波器として作用する)共振素子の位置に応じてビームの方位が定まる。
図2は、上記共振素子アレイの構成および作用を示す図である。図2の(A)は、図1の(A)に示したレンズ3側から見た平面図である。この共振素子アレイ200は、誘電体基板203の一方の面に形成した、それぞれ線状導体からなる複数の共振素子201を互いに平行に配列してなる。これらの線状導体は1次放射器から放射されるTE10モードの偏波方向に平行となるように配置している。
また、1本の共振素子201の略中央部には可変リアクタンス回路202を設けている。制御部4はこれら共振素子201a〜201kの各可変リアクタンス回路202に対して制御信号線9を介して選択的に制御電圧を与える。例えば、共振素子201fを使用周波数で完全な共振状態または略共振状態とし、その他の共振素子201a〜201e,201g〜201kを非共振状態とすれば、共振素子201fが導波器として作用する。同様に、例えば共振素子201dを完全な共振状態または略共振状態とし、残る共振素子201a〜201c,201e〜201kを非共振状態とすれば、共振素子201dが導波器として作用する。
このことによって、上記完全な共振状態または略共振状態の共振素子は、1次放射器から放射された電磁波で励振されて電磁波を再放射する。すなわち、その共振素子がレンズ3にとってちょうど1次放射器のように作用する。
なお、非共振状態とする共振素子の共振周波数を使用周波数より所定比率だけ低く定めて、その共振素子を使用周波数で反射器として作用させてもよい。
図2の(B)は、共振素子201dが導波器として作用している状態を示している。このように、1次放射器1によって励振された共振素子201dから電磁波が再放射され、これが図1に示したレンズ3によってコリメートされることになる。
図3は、共振素子アレイ200に設けた複数の共振素子のうち、導波器として作用する共振素子の位置に応じて変化するビームの方位の例を示している。この例では、共振素子201fが1次放射器からの電磁波によって励振され導波器として作用する時、光路5fで示す方向、すなわち正面方向にビームを形成する。また、共振素子201dが1次放射器からの電磁波によって励振され導波器として作用する時、光路5dで示す方向、すなわち正面に対してθ分チルトした方向にビームを形成する。
上記導波器として作用する共振素子の位置は電子的に定めることができるため、必要な時点で所望の方位へビームを向けたりビーム方位をランダムに走査することが可能となる。
また、導波器として作用させる共振素子の数は単一に限らず、配列された複数の共振素子のうち連続する2つまたは3つ以上の共振素子を導波器として作用させ、残りの共振素子を反射器として作用させるようにしてもよい。このことによって、ビームの放射パターンの幅を広げることができる。
また、複数の共振素子を導波器として作用させる場合に、連続する位置の共振素子ではなく、必要に応じて、例えば飛び飛びの位置関係にある共振素子を導波器として作用させてもよい。これにより、コリメートされた後のビームの放射パターンを種々に変更することができる。
図4は、図2の(A)に示した可変リアクタンス回路部分のより具体的な例を示す図である。この例では、可変リアクタンス回路202として、バラクタダイオードDv,抵抗R,コンデンサCからなる回路を対称形に2組設けるとともに、2つのバラクタダイオードDvのカソード側を共振素子201のそれぞれの端部に接続し、アノード側を接地している。ここで、抵抗RおよびコンデンサCは制御部4への高周波信号の漏れを阻止するフィルタ回路として作用する。
このような構成により、線状導体からなる共振素子201の端部と接地との間にバラクタダイオードDvを装荷した容量装荷型アンテナとしての形態をもつ。このバラクタダイオードDvのアノード−カソード間に生じる容量は、制御部4から印加される制御電圧によって変化する。したがって、制御部4から印加される制御電圧に応じて共振素子201の装荷容量の容量値が変化する。すなわち共振素子201の等価的な電気長が変化する。例えば、バラクタダイオードDvに対する逆バイアス電圧が大きくなる程(バイアスが深くなる程)、バラクタダイオードDvの容量値が小さくなり、共振素子201の共振周波数が上昇する。逆に、バラクタダイオードDvに対する逆バイアス電圧が小さくなる程(バイアスが浅くなる程)、バラクタダイオードDvの容量値が大きくなり、共振素子201の共振周波数が低下する。
このように、制御部4から与える制御電圧によって共振素子の共振周波数を制御することができる。
なお、図4に示した例では、可変リアクタンス回路にバラクタダイオードを用いたが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を用いて、その駆動電圧を印加することによって電極間距離を制御し、結果的にリアクタンスを変化させるようにしてもよい。
以上のようにして、比較的低い利得しか持たない1次放射器を用いているにもかかわらず、共振素子アレイにおいて導波器として作用する共振素子の位置を電子的に定め、且つ焦点面を共振素子アレイ位置にもつレンズにより、共振素子から放射される電磁波をコリメートすることにより、高利得なビームを形成し、且つ放射方位を変化させることができるようにしたので、従来の電子制御アンテナとして構成されているフェーズドアレイアンテナと異なり、高周波回路部が1系統ですむ。すなわち、基本的に単一の1次放射器を用いるだけであるので、フェーズドアレーアンテナに比べても、安価・小型・低消費電力化が図れる。
なお、図1に示した例では、誘電体レンズとして通常の凸レンズを用いたが、フレネルレンズを用いることにより、軽量化および小型化を図ってもよい。
次に、第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図5に示す。第1の実施形態で図4に示したアンテナ装置と異なり、この例では、可変リアクタンス回路202に、制御電圧の印加によって共振素子201に対する装荷容量を2通りに切り替えるスイッチ回路204を設けている。図5の(A)はその概略図、(B)は具体的な回路図である。
可変リアクタンス回路202は、コンデンサC1とスイッチ回路204とからなり、スイッチ回路204にはダイオードD1をスイッチ素子として設けている。制御電圧を印加しなければ、またはダイオードD1が逆バイアスとなる電圧を印加すれば、ダイオードD1はオフ状態となり、共振素子201にコンデンサC1のみが装荷された状態となる。制御電圧として正の所定電圧を印加すると、ダイオードD1がオンして共振素子201に対してコンデンサC1,C2が並列に装荷されることになる。したがって、制御電圧の切り替えによって装荷容量が変化し、共振素子201の共振周波数が2通りに切り替わることになる。なお、インダクタL1とコンデンサC3は、制御部への高周波信号の漏れを阻止するフィルタ回路として作用する。
上記制御電圧の切り替えにより、共振素子201が導波器としてまたは反射器として作用するように、共振素子201の物理的な長さと、コンデンサC1,C2の容量値を設定しておく。
このようなリアクタンス回路202の構成により、制御電圧の単純な切り替えによって、所定の1つまたはいくつかの共振素子201を導波器として作用させ、残りの共振素子を反射器として作用させることが容易に行える。
図5に示した例では、スイッチ素子としてダイオードD1を用いたが、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)素子を用いて、その駆動電圧を印加することによって電極間をオン/オフ制御するようにしてもよい。
次に、第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図6に示す。第1の実施形態で図1に示したアンテナ装置と異なり、この例では、1次放射器として3つの1次放射器1a,1b,1cを設けている。これは、共振素子アレイ200に設けた複数の共振素子の形成範囲が比較的広くて、単一の1次放射器を用いた場合に1次放射器の中心軸から離れた共振素子に対する供給電力が低下する問題を解消するものである。すなわち、共振素子アレイ200に設けた複数の共振素子のうち、中央略1/3の区間は中央の1次放射器1bが担当し、図における上方略1/3の区画に設けた共振素子については1次放射器1aが担当し、同様に図における下方略1/3の区画に設けた共振素子については1次放射器1cが担当する。これにより、すべての共振素子に対して、より均等な電力を放射できるようになる。
次に、第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図7に示す。ここで、6はレンズ3方向に開口した開口空洞共振器である。その内部には励振素子7を配置している。開口空洞共振器6の開口部には、図2に示したものと同様の共振素子アレイ200を配置している。この開口空洞共振器6はTE10モードで共振し、その偏波面が共振素子アレイ200に設けた共振素子の長手方向(線状導体の延びる方向)と平行となるように配置している。したがって、励振素子7の励振によって開口空洞共振器6の開口面で共振素子アレイ200の各共振素子に電磁界が与えられる。この時、第1・第2の実施形態の場合と同様に、共振状態にある共振素子が導波器として電磁波を再放射する。したがって、第1・第2の実施形態の場合と同様に、導波器として作用する共振装置の位置を切り替えることによって、レンズ3によってコリメートされるビームの方位が制御できる。
次に、第5の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図8に示す。第1〜第4の実施形態では、コリメート手段としてレンズ3を用いたが、この図8に示す例ではコリメート手段としてレフレクタ8を用いている。すなわち、共振素子アレイ200の所定の共振素子から放射された電磁波を反射する位置にオフセットパラボラ反射鏡であるレフレクタ8を配置している。共振素子アレイ200に設けた共振素子201fが1次放射器からの電磁波によって励振され導波器として作用する時、光路5fで示す方向にビームを形成する。また、共振素子201dが1次放射器からの電磁波によって励振され導波器として作用する時、光路5dで示す方向にビームを形成する。このようにして、制御部の印加電圧制御によってビームの方位を電子的にチルトさせることができる。
次に、第6の実施形態に係るアンテナ装置の主要部の構成を図9に示す。図9は、共振素子アレイの正面図である。この例では、それぞれ線状導体である複数の共振素子201を互いに平行に、且つ配列方向に対して略45度に傾けて誘電体基板203上に配列している。各共振素子201にリアクタンス回路202を接続している構成は図2に示したものと同様である。
このように、複数の共振素子201を、その配列方向に対して略45度に傾けて配列したことにより、水平面に対して偏波面が略45度に傾いた直線偏波の電磁波が送信されることになる。そのため、同様構成のアンテナ装置を用いたミリ波レーダからの送信電波を正面方向から受ける際に、その偏波面がこのアンテナ装置の偏波面に対して直交する関係(交差偏波の関係)となる。したがって、この構成により、ミリ波レーダへ応用した場合の他装置間の干渉の問題が軽減できる。
次に、第7の実施形態に係るアンテナ装置の主要部の構成を図10に示す。図10において、200は共振素子アレイであり、その構成は図2に示したものと同様である。1は電子制御導波器アレーアンテナによる1次放射器である。すなわち、給電素子11を中心に備え、リアクタンスを装荷した複数の無給電素子12a〜12fを前記給電素子の周囲に配置している。無給電素子12a〜12fは中央部に可変リアクタンス回路を備えた共振素子であり、その可変リアクタンス回路のリアクタンスが装荷されたアンテナを構成している。これらの可変リアクタンス回路の構成は図4・図5に示したものと同様である。したがって、リアクタンスの値に応じて等価的な電気長が変化し、導波器としてまたは反射器として選択的に作用する。
給電素子11は放射器として作用し、この給電素子11と無給電素子12a〜12fとによって、放射パターンが様々に変化する。ここでは、共振素子アレイ200方向への放射パターンを変化させる。例えば、共振素子アレイ200上の導波器として作用させるべき共振素子の方向に放射パターンの中心が向くように、無給電素子12a〜12fの可変リアクタンス回路への制御電圧を制御する。
このことによって、共振素子アレイに設ける複数の共振素子の分布が広くなっても、共振素子アレイ上の各共振素子に対して等しく電力供給を行うことができ、また、所定の共振素子から放射された電磁波を均等な感度で1次放射器が受けることができ、広範囲に亘って均等な感度を得ることができる。
なお、以上に示した各実施形態では、所定の共振素子の共振周波数を制御するために印加電圧によってリアクタンスが変化する可変リアクタンス回路を設けたが、印加電圧の変化以外の制御によって共振素子の等価的な電気長を変化させるように制御回路を設けてもよい。
次に第8の実施形態に係るアンテナ装置の構成を図11,図12を参照して説明する。
図2に示した例では、誘電体基板203に対して複数の共振素子201を形成するとともに、各共振素子201の略中央部に可変リアクタンス回路202を設けたが、この図11に示す例では、共振素子201の両端に可変リアクタンス回路202を設け、さらにその外側に補助素子205をそれぞれ形成している。その他の構成は図2に示したものと同様である。制御部4は、複数の可変リアクタンス回路202に対して、制御信号線9を介して選択的に制御電圧を与える。例えば、ある1つの共振素子201を使用周波数で完全な共振状態または略共振状態とし、その他の共振素子を非共振状態とすれば、共振状態または略共振状態の共振素子が導波器として作用する。
図12は、図11に示した可変リアクタンス回路202部分の具体的な例を示す図である。この例では、可変リアクタンス回路202として、コンデンサCとそれに並列接続したスイッチ回路204とから構成している。スイッチ回路204は制御信号線9からの制御電圧の印加によってオン/オフするMEMS素子である。
スイッチ回路204がオフ状態のとき、共振素子201の端部にコンデンサCを介して補助素子205が接続された状態となる。また、スイッチ回路204がオン状態のとき、共振素子201の端部に所定電気長の補助素子205が接続された状態となる。このようにスイッチ回路204のオン/オフによって、共振素子の等価的な素子長が切り替わる。その際、共振素子201の両端に補助素子205を接続することになるので、共振素子の対称性を保つことができる。
図13は、第9の実施形態に係るアンテナ装置の主要部である共振素子アレイ200の正面図である。この共振素子アレイ200は、図11に示した共振素子201、リアクタンス回路202および補助素子205からなる素子アンテナを互いに平行に、且つ配列方向に対して略45度に傾けて誘電体基板203上に配列したものである。
このようにして、図9に示したアンテナ装置の場合と同様に、水平面に対して偏波面が略45°に傾いた直線偏波の電磁波を送受信することができる。
次に、第10の実施形態に係る無線装置について図14を参照して説明する。図14において、CPU11は送信信号をディジタルコード列として出力する。DAコンバータ12はそれをアナログ信号に変換する。ローパスフィルタ13は不要な高域の信号を減衰させる。ミキサ14はRF発振器15の発振信号とローパスフィルタ13からの出力信号とをミキシングする。バンドパスフィルタ16はミキサ14の出力信号のうち所定の周波数帯域のみを通過させ、ハイパワーアンプ17はそれを電力増幅し、サーキュレータ18を介してアンテナ19から無線送信する。アンテナ19で受けた受信信号はサーキュレータ18を介してローノイズアンプ20へ入力される。ローノイズアンプ20はその受信信号を増幅し、バンドパスフィルタ21はローノイズアンプ20の出力信号のうち不要な周波数信号を減衰させる。ミキサ22は、RF発振器15の発振信号とバンドパスフィルタ21の出力信号とをミキシングする。ローパスフィルタ23はミキサ22の出力信号のうち不要な高域の周波数成分を減衰させる。ADコンバータ24はその信号をディジタルデータ列に変換する。CPU11はそのデータ列を順に処理する。また、CPU11はビーム方位制御装置25を制御してアンテナ19の指向方向(指向性パターンの中心)が所定方位を向くように制御する。このビーム方位制御装置25は既に説明した各実施形態における制御部4に相当し、共振素子アレイ200の所定の共振素子を励振させることによって、または所定のリアクタンス回路のリアクタンスを制御することによって、アンテナの指向性を制御する。
次に、第11の実施形態に係るレーダについて図15を参照して説明する。
図15はレーダの全体の構成を示すブロック図である。ここでVCO31は、DAコンバータ48から出力される制御電圧に応じて発振周波数を変化させる。送信波変調部47は、DAコンバータ48に対して変調信号のデジタルデータを順次出力する。これにより、VCO31の発振周波数を三角波状に連続してFM変調させる。
アイソレータ32は、VCO31からの発振信号をカプラ33側へ伝送し、VCO31へ反射信号が入射するのを阻止する。カプラ33は、アイソレータ32を経由した信号をサーキュレータ34側へ伝送するとともに、所定の分配比で送信信号の一部をローカル信号Loとしてミキサ36へ与える。サーキュレータ34は、送信信号をアンテナ35側へ伝送し、また、アンテナ35からの受信信号をミキサ36へ与える。アンテナ35は、VCO31の連続波を三角波状にFM変調した送信信号を送信し、物標からの反射信号を受信する。また、そのビームの方向を探知角度範囲に亘って周期的に変化させる。
ミキサー36は、カプラ33からのローカル信号Loとサーキュレータ34からの受信信号とをミキシングして中間周波信号IFを出力する。IF増幅回路37は、その中間周波信号を、距離に応じた所定の増幅度で増幅する。ADコンバータ38は、その電圧信号をサンプリングデータ列に変換する。DC除去部39はADコンバータ38により求められたサンプリングデータ列のうち、後段のFFTの処理対象となる所定のサンプリング区間の平均値を直流成分として求め、すべてのサンプリング区間のそれぞれのデータから直流成分を減じる。
FFT演算部40は、直流成分の除去された上記サンプリング区間のデータについて周波数成分を分析する。ピーク検出部41は、予め定めた閾値を超えるレベルの周波数成分につき、その極大位置を検出する。
距離・速度算出部42は、送信信号の周波数が次第に上昇する上り変調区間におけるビート信号(アップビート信号)の周波数と、送信信号の周波数が次第に下降する下り変調区間におけるビート信号(ダウンビート信号)の周波数とに基づいて、アンテナから物標までの距離および相対速度を算出し、これらを表示器44へ出力する。
DC除去部39、FFT演算部40、ピーク検出部41、距離・速度算出部42は、DSP(ディジタル信号処理回路)等の演算素子43に組み込まれている。
ビーム方位制御装置46は、アンテナ35の指向方向を制御する。このビーム方位制御装置46は各実施形態に示した制御部4に相当し、共振素子アレイ200の所定の共振素子を励振させることによって、または所定のリアクタンス回路のリアクタンスを制御することによって、アンテナの指向性を制御する。
同期信号発生装置45は、ビーム方位制御装置46と表示器44に対して同期信号を与える。
表示器44は同期信号発生装置45からの同期信号と距離,速度算出部42からの出力信号とを基にして2次元のレーダ探知画像を表示する。
第1の実施形態に係るアンテナ装置の全体の構成を示す図 共振素子アレイ、共振素子および可変リアクタンス回路の構成を示す図 共振素子アレイ上の導波器として作用する共振素子の位置とレンズによりコリメートされた光路との関係を示す図 可変リアクタンス回路の例を示す図 第2の実施形態に係るアンテナ装置の可変リアクタンス回路の構成を示す図 第3の実施形態に係るアンテナ装置の全体の構成を示す図 第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 第5の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 第6の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 第7の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 第8の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 同アンテナ装置の可変リアクタンス回路部分の構成を示す図 第9の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図 第10の実施形態に係る無線装置の構成を示す図 第11の実施形態に係るレーダの構成を示す図
符号の説明
1−1次放射器
3−レンズ
4−制御部
5−光路
6−開口空洞共振器
7−励振素子
8−レフレクタ
9−制御信号線
11−給電素子
12−無給電素子
200−共振素子アレイ
201−共振素子(線状導体)
202−可変リアクタンス回路
203−誘電体基板
204−スイッチ回路
205−補助素子

Claims (14)

  1. 複数の共振素子を配列するとともに、該共振素子のそれぞれに接続され該共振素子の共振周波数を制御する回路を設けた共振素子アレイと、
    前記共振素子アレイに対して励振用の電磁波を放射する、または前記共振素子から放射された電磁波を受ける1次放射器と、
    前記共振素子アレイの位置が略焦点面となるように配置したレンズまたはレフレクタによるコリメート手段とを備えたアンテナ装置。
  2. 所定周波数で共振する複数の共振素子を配列するとともに、該共振素子のそれぞれに接続され、印加電圧によってリアクタンスが変化する可変リアクタンス回路を設けた共振素子アレイと、
    前記可変リアクタンス回路に対して印加する電圧を制御する制御部と、
    前記共振素子アレイに対して励振用の電磁波を放射する、または前記共振素子から放射された電磁波を受ける1次放射器と、
    前記共振素子アレイの位置が略焦点面となるように配置したレンズまたはレフレクタによるコリメート手段とを備えたアンテナ装置。
  3. 前記制御部は、前記可変リアクタンス回路に対する印加電圧の制御によって、前記配列された複数の共振素子のうち所定位置の共振素子を導波器として作用させるとともに、該導波器として作用させる共振素子の位置を切り替えるようにした請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記1次放射器は前記共振素子アレイに対する放射位置または前記共振素子アレイから放射された電磁波を受ける位置に応じて複数個備えた請求項2に記載のアンテナ装置。
  5. 前記1次放射器を、開口空洞共振器と該開口空洞共振器を励振させる励振源とで構成した請求項2,3または4に記載のアンテナ装置。
  6. 前記複数の共振素子は、配列方向に対して略垂直で且つ互いに平行な向きにのびる線状導体である請求項2〜5のいずれかに記載のアンテナ装置。
  7. 前記複数の共振素子は、配列方向に対して略45度に傾いて且つ互いに平行な向きにのびる線状導体である請求項2〜5のいずれかに記載のアンテナ装置。
  8. 前記可変リアクタンス回路に、前記共振素子に対する装荷リアクタンスを変化させる可変容量ダイオードを設け、前記制御部が前記可変容量ダイオードに対して逆バイアス電圧を印加するようにした請求項2〜7のいずれかに記載のアンテナ装置。
  9. 前記可変リアクタンス回路に、前記共振素子に対する装荷リアクタンスを切り替えるスイッチ素子を設け、前記制御部が前記スイッチ素子に対して制御電圧を印加するようにした請求項2〜7のいずれかに記載のアンテナ装置。
  10. 前記可変リアクタンス回路に、制御電圧によって電極間距離が変化するMEMS素子を設け、前記制御部が前記MEMS素子に対して制御電圧を印加するようにした請求項2〜7のいずれかに記載のアンテナ装置。
  11. 前記スイッチ素子を、制御電圧によって電極間のスイッチ制御を行うMEMS素子とした請求項9に記載のアンテナ装置。
  12. 前記1次放射器は、給電素子を中心に備え、リアクタンスを装荷した無給電素子を前記給電素子の周囲に配置してなる電子制御導波器アレーアンテナである請求項1〜11のいずれかに記載のアンテナ装置。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のアンテナ装置を備えた無線装置。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載のアンテナ装置を備えたレーダ。
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