JP2004200676A - 高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高密度、高強度および高飽和磁束密度を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】軟磁性金属粉末の表面に金属Zn層が形成された金属Zn層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、非酸化雰囲気中または酸素分圧制御雰囲気中、温度:300〜1000℃で焼結することにより図1(1:軟磁性金属粒子相、2:FeとZnの混合酸化物相、3:ZnO型相、4:粒界相)に示される組織を有する高密度、高強度および高飽和磁束密度を有する複合軟磁性焼結材を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】軟磁性金属粉末の表面に金属Zn層が形成された金属Zn層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、非酸化雰囲気中または酸素分圧制御雰囲気中、温度:300〜1000℃で焼結することにより図1(1:軟磁性金属粒子相、2:FeとZnの混合酸化物相、3:ZnO型相、4:粒界相)に示される組織を有する高密度、高強度および高飽和磁束密度を有する複合軟磁性焼結材を製造する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、モータ、アクチュエータ、磁気センサなどの製造に使用される高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法に関するものである。
一般に、モータ、アクチュエータ、磁気センサなどの磁心には鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末(以下、これらを軟磁性金属粉末と総称する)を燒結して得られた軟磁性焼結材料が用いられることは知られており、さらに、この軟磁性焼結材料の一つとしてフェライトが知られている。
前記軟磁性金属粉末などを燒結して得られた軟磁性焼結材料は、磁束密度が高いが、高周波特性が悪く、一方、フェライトなど鉄酸化亜鉛粉末を焼結して得られた酸化亜鉛軟磁性焼結材料は、抵抗が高いために高周波特性に優れ、初透磁率が比較的高いが、磁束密度が低い欠点があり、これらを改善するために、軟磁性金属粉末の表面にフェライトを被覆してなるフェライト被覆軟磁性金属粉末が提案されており、このフェライト被覆鉄軟磁性粉末を焼結して得られた焼結材料は高強度を有し、磁束密度および高周波特性に共に優れると言われている。
このフェライト被覆軟磁性金属粉末を製造するための方法として、軟磁性金属粉末の表面に湿式フェライトメッキによりフェライトを形成する方法(特許文献1または2参照)、
軟磁性金属粉末およびフェライト粉末を高速衝撃撹拌装置に入れて高速回転させることにより軟磁性金属粉末の表面にフェライト粉末を埋め込み、それによって軟磁性金属粉末の表面にフェライトを形成する方法(特許文献3参照)などが知られており、これらフェライト被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形し、焼結して複合軟磁性焼結材を製造する方法も知られている。
特開昭56−38402号公報
特開平11−1702号公報
特開平4−226003号公報
軟磁性金属粉末およびフェライト粉末を高速衝撃撹拌装置に入れて高速回転させることにより軟磁性金属粉末の表面にフェライト粉末を埋め込み、それによって軟磁性金属粉末の表面にフェライトを形成する方法(特許文献3参照)などが知られており、これらフェライト被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形し、焼結して複合軟磁性焼結材を製造する方法も知られている。
しかし、前記軟磁性金属粉末の表面にフェライトを被覆してなるフェライト被覆軟磁性金属粉末を原料粉末とし、これを圧粉、成形、焼結して得られた複合軟磁性焼結材は、密度が低いところから抗折強度が十分でなく、また、密度が低いところから十分な磁束密度が得られないという欠点があった。
そこで、本発明者らは、かかる課題を解決すべく研究を行った結果、(イ)軟磁性金属粉末の表面にZn層、Zn−Fe合金層、またはZn層およびZn−Fe合金層からなる複合層(以下、Zn成分層という)が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱すると、軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層が形成された酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製することができ、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結することにより得られた複合軟磁性焼結材は、従来のフェライト被覆軟磁性粉末を燒結して得られた複合軟磁性焼結材と比べて抵抗値がほぼ同程度に高く、さらにこの複合軟磁性焼結材は密度が高いところから抗折強度および磁束密度が一層向上する、
(ロ)前記軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層が形成された酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末にZn粉末を0.02〜10質量%(好ましくは、0.1〜5質量%)添加した混合粉末を加熱しながら撹拌すると、Znは気化してZn蒸気となり、軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成され、この軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより作製することもできる、
(ハ)前記Zn成分層被覆軟磁性金属粉末を構成するZn成分層は、軟磁性金属粉末にZn粉末を0.02〜10質量%(好ましくは、0.1〜5質量%)添加した混合粉末を加熱しながら撹拌して形成されるが、前記混合粉末を比較的低温で加熱しながら撹拌すると主としてZn層からなるZn成分層が形成され、前記混合粉末を比較的高温で加熱しながら撹拌すると主としてZn−Fe合金層からなるZn成分層が形成される、
(ニ)このようにして得られた複合軟磁性焼結材は、軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は主として前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は主として前記ZnO型相に挟まれて粒界相中心部に分散している組織を有し、前記六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は何れも平均粒径:1〜500nmの微細粒子相からなる、という研究結果が得られたのである。
(ロ)前記軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層が形成された酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末にZn粉末を0.02〜10質量%(好ましくは、0.1〜5質量%)添加した混合粉末を加熱しながら撹拌すると、Znは気化してZn蒸気となり、軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成され、この軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより作製することもできる、
(ハ)前記Zn成分層被覆軟磁性金属粉末を構成するZn成分層は、軟磁性金属粉末にZn粉末を0.02〜10質量%(好ましくは、0.1〜5質量%)添加した混合粉末を加熱しながら撹拌して形成されるが、前記混合粉末を比較的低温で加熱しながら撹拌すると主としてZn層からなるZn成分層が形成され、前記混合粉末を比較的高温で加熱しながら撹拌すると主としてZn−Fe合金層からなるZn成分層が形成される、
(ニ)このようにして得られた複合軟磁性焼結材は、軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は主として前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は主として前記ZnO型相に挟まれて粒界相中心部に分散している組織を有し、前記六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は何れも平均粒径:1〜500nmの微細粒子相からなる、という研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は、六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は前記ZnO型相に挟まれて分散している組織を有する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材、
(2)軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は、六方晶構造を有しかつ平均粒径:1〜500nmを有するZnO型相および立方晶構造を有しかつ平均粒径:1〜500nmを有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は前記ZnO型相に挟まれて分散している組織を有する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材、
(3)軟磁性金属粉末の表面にZn層、Zn−Fe合金層、またはZnおよびZn−Fe合金の混合層(以下、Zn成分層という)が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(4)軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(5)軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(6)軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、に特徴を有するものである。
(1)軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は、六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は前記ZnO型相に挟まれて分散している組織を有する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材、
(2)軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は、六方晶構造を有しかつ平均粒径:1〜500nmを有するZnO型相および立方晶構造を有しかつ平均粒径:1〜500nmを有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は前記ZnO型相に挟まれて分散している組織を有する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材、
(3)軟磁性金属粉末の表面にZn層、Zn−Fe合金層、またはZnおよびZn−Fe合金の混合層(以下、Zn成分層という)が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(4)軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(5)軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、
(6)軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結する高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法、に特徴を有するものである。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法において、炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気とは、不活性ガス中に炭酸ガス:1質量%以上含む雰囲気を言う。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法をさらに一層具体的に説明する。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法において使用する軟磁性金属粉末は、従来から一般に知られている鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末であり、一層具体的には、
鉄粉末は純鉄粉末であり、
Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末はAl:0.1〜20を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Al系鉄基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−15%Alからなる組成を有するアルパーム粉末)であり、
Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末はNi:35〜85%を含有し、必要に応じてMo:5%以下、Cu:5%以下、Cr:2%以下、Mn:0.5%以下の内の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるニッケル基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−49%Ni粉末)であり、
Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末はCr:1〜20%を含有し、必要に応じてAl:5%以下、Ni:5%以下の内の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末であり、
Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末であり、
Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10%、Al:0.1〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末(以上、%は質量%を示す)であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
そして、これら軟磁性金属粉末は平均粒径:5〜150μmの範囲内にある軟磁性金属粉末を使用することが好ましい。その理由は、平均粒径が小さすぎると、粉末の圧縮性が低下し、軟磁性金属粉末の体積割合が低くなるために磁束密度の値が低下するので好ましくなく、一方、平均粒径が150μmより大きすぎると、軟磁性金属粉末内部の渦電流が増大して高周波における透磁率が低下するので好ましくないことによるものである。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性材の組織について説明する。軟磁性金属粒子相は、上記軟磁性金属粉末(鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末など)と同じ組成を有する相である。粒界相のうち、六方晶構造を有するZnO型相は、一般的には、Zn1+xOで表され、x=0〜0.001の範囲をとる。前記ZnO型相の成分は、Znの他にFe,Al,Ni,Cr,Mn,Si,Li,Na,K,Mg,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Biのうち少なくとも1種をZnに対して最大5質量%と不可避不純物を含んでいるものもこの発明に含まれ、特に1価のイオンとなり得るLi,Na,Kのうちの少なくとも1種をZnに対して最大5質量%含んだ場合、複合軟磁性材の比抵抗値を上げ、磁気性能を向上させる効果がある。粒界相のうち、立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は、γ(Fe、Zn)2O3,(Fe、Zn)Fe2O4,(Fe、Zn)Oからなる酸化物の混合相であり、(Fe、Zn)のほかにAl,Ni,Cr,Mn,Si,Li,Na,K,Mg,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Biのうち少なくとも1種をFe+Znに対して最大20質量%と不可避不純物を含んでいるものもこの発明に含まれる。前記六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は、高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性材を得るには、何れも平均結晶粒径:1〜500nmの微細粒子相からなることが好ましい。平均結晶粒径が1nmよりも小さいと高強度が得られず、500nmよりも大きいと複合軟磁性材中の粒界相が占める割合が多くなり、高磁束密度がられないので好ましくない。粒界相における六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相の平均結晶粒径のより好ましい範囲は1〜200nmであり、さらに好ましくは1〜80nmが良い。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法をさらに一層具体的に説明する。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法において使用する軟磁性金属粉末は、従来から一般に知られている鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末であり、一層具体的には、
鉄粉末は純鉄粉末であり、
Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末はAl:0.1〜20を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Al系鉄基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−15%Alからなる組成を有するアルパーム粉末)であり、
Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末はNi:35〜85%を含有し、必要に応じてMo:5%以下、Cu:5%以下、Cr:2%以下、Mn:0.5%以下の内の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるニッケル基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−49%Ni粉末)であり、
Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末はCr:1〜20%を含有し、必要に応じてAl:5%以下、Ni:5%以下の内の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末であり、
Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末であり、
Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10%、Al:0.1〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末(以上、%は質量%を示す)であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
そして、これら軟磁性金属粉末は平均粒径:5〜150μmの範囲内にある軟磁性金属粉末を使用することが好ましい。その理由は、平均粒径が小さすぎると、粉末の圧縮性が低下し、軟磁性金属粉末の体積割合が低くなるために磁束密度の値が低下するので好ましくなく、一方、平均粒径が150μmより大きすぎると、軟磁性金属粉末内部の渦電流が増大して高周波における透磁率が低下するので好ましくないことによるものである。
この発明の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性材の組織について説明する。軟磁性金属粒子相は、上記軟磁性金属粉末(鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末など)と同じ組成を有する相である。粒界相のうち、六方晶構造を有するZnO型相は、一般的には、Zn1+xOで表され、x=0〜0.001の範囲をとる。前記ZnO型相の成分は、Znの他にFe,Al,Ni,Cr,Mn,Si,Li,Na,K,Mg,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Biのうち少なくとも1種をZnに対して最大5質量%と不可避不純物を含んでいるものもこの発明に含まれ、特に1価のイオンとなり得るLi,Na,Kのうちの少なくとも1種をZnに対して最大5質量%含んだ場合、複合軟磁性材の比抵抗値を上げ、磁気性能を向上させる効果がある。粒界相のうち、立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は、γ(Fe、Zn)2O3,(Fe、Zn)Fe2O4,(Fe、Zn)Oからなる酸化物の混合相であり、(Fe、Zn)のほかにAl,Ni,Cr,Mn,Si,Li,Na,K,Mg,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Biのうち少なくとも1種をFe+Znに対して最大20質量%と不可避不純物を含んでいるものもこの発明に含まれる。前記六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は、高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性材を得るには、何れも平均結晶粒径:1〜500nmの微細粒子相からなることが好ましい。平均結晶粒径が1nmよりも小さいと高強度が得られず、500nmよりも大きいと複合軟磁性材中の粒界相が占める割合が多くなり、高磁束密度がられないので好ましくない。粒界相における六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相の平均結晶粒径のより好ましい範囲は1〜200nmであり、さらに好ましくは1〜80nmが良い。
これら軟磁性金属粉末に、Zn粉末:0.02〜10質量%(好ましくは0.1〜5質量%)を添加して混合粉末を作製し、この混合粉末を真空または不活性ガスガスの減圧雰囲気中で温度:350〜400℃に保持しながら撹拌すると、Znは気化して蒸発し、気化したZnは軟磁性金属粉末の表面に付着してZn成分層または/および合金Γ相(Fe4Zn9,Fe3Zn10,Feの1部をAl,Ni,Cr,Siで置換した合金)を主体とする合金相が形成され、Zn成分層被覆軟磁性金属粉末が得られる。このとき使用される亜鉛粉末は、粒径が300μm以下であることが好ましい。
このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱処理することによりZn成分層が酸化されて軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛膜が形成された酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製することができる。酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製する際にZn成分層被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら加熱処理する雰囲気は、いかなる酸化雰囲気中でも可能であるが、酸化雰囲気中でも炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中で行なうことことにより得られた酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を原料粉末として得られた複合軟磁性焼結材が最も優れた密度、強度および磁束密度が得られる。炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中で加熱するときの温度を300〜1000℃にした理由は、300℃未満ではほとんど酸化せず、また酸化しても酸化時間が著しく長くなり工業的見地から効率が低くなるので好ましくなく、一方、1000℃を越える温度で加熱処理すると、ZnO被膜の破れが起こるので好ましくない理由によるものである。
なお、亜鉛よりも蒸発し難い金属M(Si,P,S,K,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Pd,Ta,W,Au)を不純物として10質量%以下含まれるような低純度の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を使用することができる。これは、加熱・攪拌中にZnが先に気化して軟磁性金属粉末の表面にZn成分層を形成し、低純度の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に含まれるM金属の蒸発は微量であるところから軟磁性金属粉末の表面のZn成分層に含まれるM金属量は極めて微量であり、無視できる程度であるからである。
また、比較的低融点の金属Me(Li,Mg,Al,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Bi)粉末をZn粉末と共に軟磁性金属粉末と混合、あるいはZn−Me合金粉末と軟磁性金属粉末と混合して加熱・撹拌すると、軟磁性金属粉末の表面にZnとMeの合金であるZn合金蒸着膜が形成され、このようにして作製したZn合金膜被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱処理すると、Zn合金膜が酸化されて軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛合金膜が形成された酸化亜鉛合金被覆軟磁性金属粉末を作製することができる。
このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱処理することによりZn成分層が酸化されて軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛膜が形成された酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製することができる。酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製する際にZn成分層被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら加熱処理する雰囲気は、いかなる酸化雰囲気中でも可能であるが、酸化雰囲気中でも炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中で行なうことことにより得られた酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を原料粉末として得られた複合軟磁性焼結材が最も優れた密度、強度および磁束密度が得られる。炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中で加熱するときの温度を300〜1000℃にした理由は、300℃未満ではほとんど酸化せず、また酸化しても酸化時間が著しく長くなり工業的見地から効率が低くなるので好ましくなく、一方、1000℃を越える温度で加熱処理すると、ZnO被膜の破れが起こるので好ましくない理由によるものである。
なお、亜鉛よりも蒸発し難い金属M(Si,P,S,K,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Pd,Ta,W,Au)を不純物として10質量%以下含まれるような低純度の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を使用することができる。これは、加熱・攪拌中にZnが先に気化して軟磁性金属粉末の表面にZn成分層を形成し、低純度の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に含まれるM金属の蒸発は微量であるところから軟磁性金属粉末の表面のZn成分層に含まれるM金属量は極めて微量であり、無視できる程度であるからである。
また、比較的低融点の金属Me(Li,Mg,Al,Ga,Ge,Ag,In,Sn,Sb,Ba,Bi)粉末をZn粉末と共に軟磁性金属粉末と混合、あるいはZn−Me合金粉末と軟磁性金属粉末と混合して加熱・撹拌すると、軟磁性金属粉末の表面にZnとMeの合金であるZn合金蒸着膜が形成され、このようにして作製したZn合金膜被覆軟磁性金属粉末を撹拌しながら炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱処理すると、Zn合金膜が酸化されて軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛合金膜が形成された酸化亜鉛合金被覆軟磁性金属粉末を作製することができる。
このようにして得られた酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結すると高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材が得られる。この場合、酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末における酸化亜鉛層の厚さは特に限定されるものではないが0.005〜5μmが特に好ましい。また、焼結温度が300℃未満では十分な抗折強度を持つ複合軟磁性焼結材が得られず、一方、1000℃を越える温度で焼結すると、ZnO被膜が破れ、比抵抗が低下するので好ましくない。したがって、酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末の焼結温度は300〜1000℃に定めた。
この発明において焼結は、大気雰囲気、Arガスもしくは窒素ガスなどの不活性ガスなどの非酸化雰囲気、またArガスもしくは窒素ガスに対して酸素ガス:0.0001〜30%含む混合ガス雰囲気などで行なうことができる。
この発明において焼結は、大気雰囲気、Arガスもしくは窒素ガスなどの不活性ガスなどの非酸化雰囲気、またArガスもしくは窒素ガスに対して酸素ガス:0.0001〜30%含む混合ガス雰囲気などで行なうことができる。
この発明によると、簡単な方法により高密度、高強度および高磁束密度を有しさらに比抵抗の高い複合軟磁性焼結材を提供することができ、電気および電子産業において優れた効果をもたらすものである。
実施例1〜5および比較例1〜2
原料粉末として、平均粒径:70μmを有する純鉄粉末を用意し、この純鉄粉末に対して純亜鉛粉末を1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:370℃に1時間加熱することにより亜鉛を気化させ、この亜鉛蒸気中に純鉄粉末を曝すことで表面にZn成分層が形成されたZn被覆純鉄粉末を作製した。
このZn被覆純鉄粉末を炭酸ガス中、表1に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して表面に酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆純鉄粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆純鉄粉末を金型に入れ、プレス成形して縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を大気雰囲気中、表1に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表1に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、さらに複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡で観察し、軟磁性金属粒子相(純鉄相)を包囲する本発明の粒界相の有無およびZnO型相とFeとZnの混合酸化物相の平均粒径を測定し、それらの結果を表1に示した。
さらに、実施例1で作製した複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡により観察して得られた模式図を図1に示した。図1に示されるように、αFe結晶粒からなる軟磁性金属粒子相1とこの軟磁性金属粒子相1を包囲する粒界相4からなり、前記粒界相4は六方晶構造を有するZnO型相3および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相2とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相3は前記軟磁性金属粒子相1に接して主として分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相2は前記ZnO型相3に挟まれて粒界相中心部に主として分散している組織を有し、前記六方晶構造を有するZnO型相3およびFeとZnの混合酸化物相2は何れも平均粒径:50nmの微細粒子相からなることが分かる。
原料粉末として、平均粒径:70μmを有する純鉄粉末を用意し、この純鉄粉末に対して純亜鉛粉末を1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:370℃に1時間加熱することにより亜鉛を気化させ、この亜鉛蒸気中に純鉄粉末を曝すことで表面にZn成分層が形成されたZn被覆純鉄粉末を作製した。
このZn被覆純鉄粉末を炭酸ガス中、表1に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して表面に酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆純鉄粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆純鉄粉末を金型に入れ、プレス成形して縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を大気雰囲気中、表1に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表1に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、さらに複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡で観察し、軟磁性金属粒子相(純鉄相)を包囲する本発明の粒界相の有無およびZnO型相とFeとZnの混合酸化物相の平均粒径を測定し、それらの結果を表1に示した。
さらに、実施例1で作製した複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡により観察して得られた模式図を図1に示した。図1に示されるように、αFe結晶粒からなる軟磁性金属粒子相1とこの軟磁性金属粒子相1を包囲する粒界相4からなり、前記粒界相4は六方晶構造を有するZnO型相3および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相2とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相3は前記軟磁性金属粒子相1に接して主として分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相2は前記ZnO型相3に挟まれて粒界相中心部に主として分散している組織を有し、前記六方晶構造を有するZnO型相3およびFeとZnの混合酸化物相2は何れも平均粒径:50nmの微細粒子相からなることが分かる。
従来例1
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe粉末を用意し、この粉末を用いて実施例1と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表1に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表1に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe粉末を用意し、この粉末を用いて実施例1と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表1に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表1に示した。
表1に示される結果から、実施例1〜5で作製した複合軟磁性焼結材は、本発明の粒界相を有するとともに従来例1により製造した複合軟磁性焼結材と比べて、相対密度、抗折強度および磁束密度が一層優れており、比抵抗はほぼ同じであることが分かる。しかし、比較例1〜2で作製した複合軟磁性焼結材は相対密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の内の少なくとも1つの特性が劣るので好ましくないことが分かる。
実施例6〜10および比較例3〜4
原料粉末として、平均粒径:70μmを有し、その組成がAl:10質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、このFe−Al鉄基軟磁性合金粉末に対してZn−5質量%Al合金粉末を0.1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Al系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を作製した。
原料粉末として、平均粒径:70μmを有し、その組成がAl:10質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、このFe−Al鉄基軟磁性合金粉末に対してZn−5質量%Al合金粉末を0.1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Al系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表2に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して表面に酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形して縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体をArガス雰囲気中、表2に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表2に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、さらに複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡で観察し、軟磁性金属粒子相(Fe−Al系相)を包囲する本発明の粒界相の有無およびZnO型相とFeとZnの混合酸化物相の平均粒径を測定し、それらの結果を表2に示した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Al系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形して縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体をArガス雰囲気中、表2に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表2に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、さらに複合軟磁性焼結材の組織を透過電子顕微鏡で観察し、軟磁性金属粒子相(Fe−Al系相)を包囲する本発明の粒界相の有無およびZnO型相とFeとZnの混合酸化物相の平均粒径を測定し、それらの結果を表2に示した。
従来例2
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を用いて実施例6と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表2に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表2に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を用いて実施例6と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表2に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表2に示した。
表2に示される結果から、実施例6〜10で作製した複合軟磁性焼結材は、本発明の粒界相を有するとともに従来例2で作製した複合軟磁性焼結材と比べて、相対密度、抗折強度および磁束密度が一層優れており、比抵抗はほぼ同じであることが分かる。しかし、比較例3〜4で作製した複合軟磁性焼結材は相対密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の内の少なくとも1つの特性が劣るので好ましくないことが分かる。
実施例11〜15および比較例5〜6
原料粉末として、平均粒径:90μmを有し、その組成がNi:49質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、このFe−Ni鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を5質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Ni系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表3に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素ガス雰囲気中、表3に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表3に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表3に示した。
原料粉末として、平均粒径:90μmを有し、その組成がNi:49質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、このFe−Ni鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を5質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Ni系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表3に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Ni系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素ガス雰囲気中、表3に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表3に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表3に示した。
従来例3
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例11と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表3に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表3に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例11と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表3に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表3に示した。
表3に示される結果から、実施例11〜15で作製した複合軟磁性焼結材は、従来例3で作製した複合軟磁性焼結材と比べて密度、抗折強度および磁束密度が優れており、比抵抗はほぼ同等であることが分かる。しかし、比較例5〜6で作製した複合軟磁性焼結材は密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の少なくともいずれか一つが劣るので好ましくないことが分かる。
実施例16〜20および比較例7〜8
原料粉末として、平均粒径:50μmを有し、その組成がCr:10質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。
このFe−Cr鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を2質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:350℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Cr系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表4に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して酸化亜鉛層を形成して酸化亜鉛被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を作製した。
原料粉末として、平均粒径:50μmを有し、その組成がCr:10質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。
このFe−Cr鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を2質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:350℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Cr系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表4に示される温度で加熱することによりZn成分層を酸化して酸化亜鉛層を形成して酸化亜鉛被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Cr系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた板状およびリング状圧粉体を不活性ガス雰囲気中、表4に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の密度および抗折強度を測定してその結果を表4に示した。さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表4に示した。
従来例4
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例16と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表4に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表4に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例16と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表4に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表4に示した。
表4に示される結果から、実施例16〜20で作製した複合軟磁性焼結材は、従来例4で作製した複合軟磁性焼結材と比べて相対密度、抗折強度及び磁束密度に優れ、比抵抗はほぼ同じ値を示すことが分かる。しかし、比較例7〜8で作製した複合軟磁性焼結材は密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の少なくともいずれか一つが劣ることが分かる。
実施例21〜25および比較例9〜10
原料粉末として、平均粒径:80μmを有し、その組成がSi:3質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。このFe−Si鉄基軟磁性合金粉末に対してZn−0.6質量%Li合金粉末を1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Si系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を炭酸ガス:5質量%を含み、残部が窒素ガスからなる炭酸ガスを含む窒素ガス雰囲気中、表5に示される温度で加熱することにより亜鉛蒸着膜を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を作製した。
原料粉末として、平均粒径:80μmを有し、その組成がSi:3質量%、残部:FeからなるアトマイズFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。このFe−Si鉄基軟磁性合金粉末に対してZn−0.6質量%Li合金粉末を1質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Si系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を作製した。
このZn被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を炭酸ガス:5質量%を含み、残部が窒素ガスからなる炭酸ガスを含む窒素ガス雰囲気中、表5に示される温度で加熱することにより亜鉛蒸着膜を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Si系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体をArガス雰囲気中、表5に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表5に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表5に示した。
従来例5
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例21と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表5に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表5に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例21と同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表5に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表5に示した。
表5に示される結果から、実施例21〜25で作製した複合軟磁性焼結材は、従来例5で作製した複合軟磁性焼結材と比べて密度、抗折強度および磁束密度が優れており、比抵抗はほぼ同等であることが分かる。しかし、比較例5〜6で作製した複合軟磁性焼結材は密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の少なくともいずれか一つが劣るので好ましくないことが分かる。
実施例26〜30および比較例11〜12
原料粉末として、平均粒径:55μmを有し、その組成がSi:3質量%、Al:3質量を含有し、残部:FeからなるアトマイズFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。このFe−Si−Al鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を0.3質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Si−Al系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を作製した。このZn被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表6に示される温度で加熱することにより亜鉛蒸着膜を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体をArガス雰囲気中、表6に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表6に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表6に示した。
原料粉末として、平均粒径:55μmを有し、その組成がSi:3質量%、Al:3質量を含有し、残部:FeからなるアトマイズFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意した。このFe−Si−Al鉄基軟磁性合金粉末に対して純亜鉛粉末を0.3質量%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を電気炉内の円筒状ボードに装入し、円筒状ボードを回転しながら1×10-5torrの真空雰囲気中、温度:400℃に2時間加熱することにより亜鉛金属を気化させ、この亜鉛蒸気中にFe−Si−Al系軟磁性合金粉末を曝すことでその表面にZn成分層が形成されたZn被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を作製した。このZn被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を炭酸ガス中、表6に示される温度で加熱することにより亜鉛蒸着膜を酸化して酸化亜鉛層を形成した酸化亜鉛被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を作製した。
得られた酸化亜鉛被覆Fe−Si−Al系軟磁性合金粉末を金型に入れ、プレス成形することにより縦:40mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体をArガス雰囲気中、表6に示される温度で焼結することにより板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を作製した。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表6に示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表6に示した。
従来例6
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例26同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表6示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表6に示した。
高速衝撃撹拌法により作製した市販のフェライト被覆純Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末を用意し、この粉末を実施例26同様にして板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性焼結材を得た。このようにして得られた複合軟磁性焼結材の相対密度および抗折力を測定してその結果を表6示し、さらに複合軟磁性焼結材の磁束密度および比抵抗を測定し、その結果を表6に示した。
表6に示される結果から、実施例26〜30で作製した複合軟磁性焼結材は、従来例6で作製した複合軟磁性焼結材と比べて密度、抗折強度および磁束密度が優れており、比抵抗はほぼ同等であることが分かる。しかし、比較例11〜12で作製した複合軟磁性焼結材は密度、抗折強度、磁束密度、比抵抗の少なくともいずれか一つが劣るので好ましくないことが分かる。
1 軟磁性金属粒子相
2 FeとZnの混合酸化物相
3 ZnO型相
4 粒界相
2 FeとZnの混合酸化物相
3 ZnO型相
4 粒界相
Claims (7)
- 軟磁性金属粒子相とこの軟磁性金属粒子相を包囲する粒界相からなり、前記粒界相は六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相とからなり、前記六方晶構造を有するZnO型相は前記軟磁性金属粒子相に接して分散しており、前記立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は前記ZnO型相に挟まれて分散している組織を有することを特徴とする高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材。
- 前記六方晶構造を有するZnO型相および立方晶構造を有するFeとZnの混合酸化物相は、何れも平均粒径:1〜500nmの微細粒子相からなる組織を有することを特徴とする請求項1記載の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材。
- 軟磁性金属粉末の表面にZn層、Zn−Fe合金層、またはZnおよびZn−Fe合金の混合層(以下、Zn成分層という)が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結することを特徴とする高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
- 軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、燒結することを特徴とする高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
- 軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結することを特徴とする高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
- 軟磁性金属粉末にZn粉末を添加した混合粉末を加熱しながら撹拌することにより軟磁性金属粉末の表面にZn成分層が形成されたZn成分層被覆軟磁性金属粉末を作製し、このZn成分層被覆軟磁性金属粉末を炭酸ガスあるいは炭酸ガスを含む不活性ガス雰囲気中、温度:300〜1000℃で加熱することにより軟磁性金属粉末の表面に酸化亜鉛層を形成してなる酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を作製し、この酸化亜鉛被覆軟磁性金属粉末を圧粉、成形した後、温度:300〜1000℃で焼結することを特徴とする高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
- 前記軟磁性金属粉末は、鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末またはFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末であることを特徴とする請求項3、4、5または6記載の高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材の製造方法。
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JP2003405304A Withdrawn JP2004200676A (ja) | 2002-12-04 | 2003-12-04 | 高密度、高強度および高磁束密度を有する複合軟磁性焼結材およびその製造方法 |
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-
2003
- 2003-12-04 JP JP2003405304A patent/JP2004200676A/ja not_active Withdrawn
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WO2016152460A1 (ja) * | 2015-03-20 | 2016-09-29 | 東光株式会社 | 金属磁性材料及び電子部品 |
JP2016178205A (ja) * | 2015-03-20 | 2016-10-06 | 東光株式会社 | 金属磁性材料及び電子部品 |
CN107430919A (zh) * | 2015-03-20 | 2017-12-01 | 株式会社村田制作所 | 金属磁性材料和电子部件 |
KR101898834B1 (ko) * | 2015-03-20 | 2018-10-04 | 가부시키가이샤 무라타 세이사쿠쇼 | 금속 자성 재료 및 전자 부품 |
CN107430919B (zh) * | 2015-03-20 | 2019-09-06 | 株式会社村田制作所 | 金属磁性材料和电子部件 |
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