JP2004197852A - 車両用動力伝達装置の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】経過時間算出手段92により算出された経過時間が予め設定された再操作判定時間αまたはβに到達する前に「N」ポジションから走行ポジションへのシフトレバー77の再操作が行われた場合には、シフト油圧制御手段98により、通常の第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で、前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)へ供給される係合過渡油圧が上昇させられるので、油圧式摩擦係合装置内に残圧が存在していても、その前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1の早すぎる係合開始が好適に防止され、シフトレバー77が「N」ポジションから走行ポジションへ再操作されたときのシフト操作時の係合ショックが好適に防止される。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用動力伝達装置の油圧制御装置に係り、特に、シフト操作部材の操作位置を走行ポジションからニュートラルポジションへ操作した直後にそのニュートラルポジションから走行ポジションへ操作したときに生じる切換えショックを好適に抑制する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
所定の油圧式摩擦係合装置の係合作動により走行状態とされる動力伝達装置と、シフト操作部材の操作によりニュートラル(N)ポジションおよび走行(DまたはR)ポジションへ選択的に切り換えられるマニアルバルブを備え、そのマニアルバルブが走行ポジションへ操作されているときにそのマニアルバルブから出力される走行用出力圧に基づいて前記所定の油圧式摩擦係合装置が作動させられる形式の車両用動力伝達装置の油圧制御装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載された車両用動力伝達装置の油圧制御装置がそれである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−213590号公報
【特許文献2】特開2002−213594号公報
【0004】
ところで、上記のような車両用動力伝達装置の油圧制御装置においては、マニアルバルブの切換により前進用或いは後進用の油圧式摩擦係合装置へ作動油が供給されるのであるが、シフト操作部材の操作がニュートラルポジションから走行ポジションヘ操作されて作動油がその油圧式摩擦係合装置へ供給される際に、その油圧式摩擦係合装置の係合油圧が急速に上昇し、シフトショック或いはN→D(R)ショックとも称される係合ショックが発生する不都合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、たとえば、シフト操作部材がニュートラルポジションから走行ポジションへ操作されると、予め設定された第1上昇状態で上昇させることにより油圧式摩擦係合装置をゆるやかに或いは滑らかに係合させるようにするシフト油圧制御手段を設けるようにした油圧制御装置が提案されている。しかしながら、このような油圧制御装置においても、上記シフト操作時の係合ショックが未だ解消されない場合があった。
【0006】
たとえば、シフト操作部材が走行ポジションからニュートラルポジションへ操作された直後にそのニュートラルポジションから走行ポジションへ再び操作されると、上記第1上昇状態で係合過渡油圧が昇圧させられるのであるが、その第1上昇状態は油圧式摩擦係合装置の油圧がニュートラルポジションにおいて完全に解放されていることが前提として定められているので、油圧式摩擦係合装置内の油圧が所期よりも早く昇圧して油圧式摩擦係合装置の係合が急激に開始されるので、係合ショックが発生する不都合があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、シフト操作部材がニュートラルポジションから走行ポジションへ再操作されたときの係合ショックが好適に防止される車両用動力伝達装置の油圧制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、所定の油圧式摩擦係合装置の係合作動により走行状態とされる動力伝達装置と、シフト操作部材の操作によりニュートラルポジションおよび走行ポジションへ選択的に切り換えられるマニアルバルブを備え、そのマニアルバルブが走行ポジションへ操作されたときにそのマニアルバルブから前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を予め設定された第1上昇状態で上昇させる形式の車両用動力伝達装置の油圧制御装置であって、(a) 前記シフト操作部材が前記走行ポジションから前記ニュートラルポジションへの操作が検出されてからの経過時間を算出する経過時間算出手段と、(b) その経過時間算出手段により算出された経過時間が予め設定された再操作判定時間に到達する前に、前記ニュートラルポジションから前記走行ポジションへの前記シフト操作部材の再操作が行われた場合には、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるシフト油圧制御手段とを、含むことにある。
【0009】
【発明の効果】
このようにすれば、シフト油圧制御手段により、経過時間算出手段により算出された経過時間が予め設定された再操作判定時間に到達する前に、前記ニュートラルポジションから前記走行ポジションへの前記シフト操作部材の再操作が行われた場合には、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧が上昇させられるので、油圧式摩擦係合装置内に残圧が存在していても、その油圧式摩擦係合装置の早すぎる係合開始が好適に防止され、シフト操作部材がニュートラルポジションから走行ポジションへ再操作されたときのシフト操作時の係合ショックが好適に防止される。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記シフト油圧制御手段は、供給開始当初において速やかに係合過渡油圧を供給する急速充填期間を含む予め定められた昇圧手順にしたがって前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるシフト油圧制御を実行するとともに、その急速充填期間における係合過渡油圧を減少させることによって、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるものである。このようにすれば、急速充填期間における係合過渡油圧を減少(低下或いは短期化)させることによって、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧が上昇させられるので、シフト操作部材がニュートラルポジションから走行ポジションへ再操作されたときのシフト操作時の係合ショックが好適に防止される。
【0011】
また、好適には、(c) 前記油圧式摩擦係合装置に作動油を供給するための油圧源と、(d) 指令に従ってその油圧源からの油圧を調圧した係合過渡油圧を発生させる係合過渡油圧調圧弁と、(e) その係合過渡油圧調圧弁から出力される係合過渡油圧を前記マニアルバルブに供給する第1位置と前記油圧源からの油圧をそのマニアルバルブに供給する第2位置とに切り換えられる切換弁とを備え、前記シフト油圧制御手段は、その第1位置に切り換えられてから切換弁を通して前記マニアルバルブへ供給される係合過渡油圧を係合過渡油圧調圧弁を用いて調圧することにより、前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧の上昇状態を制御するものである。このようにすれば、係合過渡油圧が好適に油圧式摩擦係合装置へ供給される。
【0012】
また、好適には、前記走行ポジションは、前進走行ポジションまたは後進走行ポジションである。このようにすれば、ニュートラルポジションから前進走行ポジションまたは後進走行ポジションへ再び操作するシフト操作時において、そのシフト操作時の係合ショックが好適に防止される。
【0013】
また、好適には、前記再操作判定時間は、前記作動油温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つの函数である。このようにすれば、再操作判定時間として、作動油温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つに応じた適切な値が用いられる。
【0014】
また、好適には、前記再操作判定時間は、前記シフト操作部材のニュートラルポジションから前記走行ポジションへの再操作直前のそのニュートラルポジションへの戻し操作が、後進走行ポジションからの場合と前進走行ポジションからの場合とで異なる値に設定されるものである。このようにすれば、後進用油圧式摩擦係合装置の容積と前進用油圧式摩擦係合装置の容積が異なる場合でも、それに供給される係合過渡油圧が適切に抑制される。
【0015】
また、好適には、前記油圧式摩擦係合装置は、前記シフト操作部材が前記前進走行ポジションへ操作されたときに係合させられる前進走行用油圧式摩擦係合装置と、その前進走行用油圧式摩擦係合装置よりも大きなトルク容量を有し、そのシフト操作部材が前記後進走行ポジションへ操作されたときに係合させられる後進走行用油圧式摩擦係合装置とを備えたものであり、前記シフト油圧制御手段は、前記シフト操作部材が前記後進走行ポジションへ操作されたときは、前記前進走行ポジションへ操作されたときに比較して、前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を大きく抑制するものである。このようにすれば、前進走行或いは後進走行のための再シフト操作時において、前進走行用油圧式摩擦係合装置と後進走行用油圧式摩擦係合装置のトルク容量差に拘わらず、シフト操作時の係合ショックがそれぞれ好適に防止される。
【0016】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の油圧制御装置が適用された車両用動力伝達装置10の骨子図である。この車両用動力伝達装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の駆動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。上記トルクコンバータ14、前後進切換装置16、ベルト式無段変速機18などにより動力伝達機構が構成されている。
【0018】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路86(図2参照)の切換弁などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。上記ポンプ翼車14pには、ベルト式無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が設けられている。上記タービン軸34は、トルクコンバータ14の出力側部材に相当する。
【0019】
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、ベルト式無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置であり、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置16は一体回転状態とされることにより前進用動力伝達経路が成立させられて、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される一方、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されることにより、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力がベルト式無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
【0020】
上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、油圧制御回路86のマニュアルバルブ120(図3参照)がシフト操作部材として機能するシフトレバー77の操作に従って機械的に切り換えられることにより、係合、解放されるようになっている。シフトレバー77は、順次位置させられている駐車用の「P」ポジション、後進走行用の「R」ポジション、動力伝達を遮断する「N」ポジション、前進走行用の「D」ポジションおよび「L」ポジションへ択一的に操作されるようになっており、「P」ポジションおよび「N」ポジションでは、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1内の作動油は何れもマニュアルバルブ120からドレーンされて共に解放される。マニュアルバルブ120の入力ポート120aには、ガレージシフトバルブ114を介して、シフト操作過渡時にはガレージシフトコントロールバルブ112により調圧された係合過渡油圧PGが供給されるが、定常時には油圧式摩擦係合装置の油圧源として機能するモジュレータバルブ122によってライン圧から一定のモジュレータ油圧PMに調圧された作動油が供給される。このため、「R」ポジションでは、マニュアルバルブ120の後進用出力ポート120rからの後進走行用出力圧すなわち上記係合過渡油圧PGまたはモジュレータ油圧PMが後進用ブレーキB1に供給されてそれが係合させられるとともに、前進用クラッチC1内の作動油はマニュアルバルブ120からドレーンされて解放される。また、「D」ポジションおよび「L」ポジションでは、マニュアルバルブ120の前進用出力ポート120fからの前進走行用出力圧すなわち上記係合過渡油圧PGまたはモジュレータ油圧PMが前進用クラッチC1に供給されてそれが係合させられるとともに、後進用ブレーキB1内の作動油はマニュアルバルブ120からドレーンされて解放される。
【0021】
図1に戻って、ベルト式無段変速機18は、前記入力軸36に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。可変プーリ42、46はそれぞれV溝幅が可変で、油圧シリンダを備えて構成されており、入力側可変プーリ42の油圧シリンダの油圧が油圧制御回路86によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。
【0022】
一方、出力側可変プーリ46の油圧シリンダの油圧は、伝動ベルト48が滑りを生じないように油圧制御回路86の挟圧力コントロールバルブ110(図3参照)によって調圧制御される。挟圧力コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート110tを開閉するスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し、スプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLT を受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力した挟圧力制御圧PBELTを受け入れるフィードバック油室110dとを備えており、リニアソレノイド弁SLTからの制御油圧PSLT をパイロット圧としてライン油圧PLを連続的に調圧制御して挟圧力制御圧PBELTを出力するようになっており、この挟圧力制御圧PBELTに応じてベルト挟圧力すなわち可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力が増減させられる。上記リニアソレノイド弁SLTは、たとえば、その駆動電流ISLT が増加するに従ってその出力油圧である制御油圧PSLT が減少する特性を備えている。
【0023】
図2は、図1のエンジン12やベルト式無段変速機18などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、電子制御装置60には、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ64、車速センサ66、アイドルスイッチ付きスロットルセンサ68、冷却水温センサ70、CVT油温センサ72、アクセル操作量センサ74、フットブレーキスイッチ76、レバーポジションセンサ78などが接続され、エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NE、タービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NT、車速V、電子スロットル弁80の全閉状態(アイドル状態)およびその開度(スロットル弁開度)θTH、エンジン12の冷却水温TW 、ベルト式無段変速機18等の油圧回路の油温TCVT 、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量(アクセル操作量)Acc、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無、シフトレバー77のレバーポジション(操作位置)PSH、などを表す信号が供給されるようになっている。タービン回転速度NTは、前進用クラッチC1が係合させられた前進走行時には入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINと一致し、車速Vは、ベルト式無段変速機18の出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTに対応する。また、アクセル操作量Accは運転者の出力要求量を表している。また、上記レバーポジションセンサ78は、たとえばニュートラル位置検出スイッチ、ドライブ位置検出スイッチ、リバース位置検出スイッチなどの複数のスイッチを備えている。
【0024】
電子制御装置60は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御やベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放制御、などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。エンジン12の出力制御は電子スロットル弁80、燃料噴射装置82、点火装置84などによって行われ、ベルト式無段変速機18の変速制御、ベルト挟圧力制御、およびロックアップクラッチ26の係合、解放制御は、何れも油圧制御回路86によって行われる。油圧制御回路86は、電子制御装置60により励磁されて油路を開閉するソレノイド弁や油圧制御を行うリニアソレノイド弁、それらのソレノイド弁から出力される信号圧に従って油路を開閉したり油圧制御を行ったりする開閉弁、調圧弁などを備えて構成されている。
【0025】
図3は、油圧制御回路86のうちベルト式無段変速機18のベルト挟圧力制御、およびシフトレバー77が「N」ポジションから「D」ポジション或いは「R」ポジションへ操作されるガレージシフト(N→Dシフト或いはN→Rシフト)時における前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の係合過渡油圧制御に関する部分を示す要部油圧回路図であり、前記挟圧力コントロールバルブ110、マニュアルバルブ120の他、係合過渡油圧PGを出力する係合過渡油圧調圧弁として機能するガレージシフトコントロールバルブ112、係合過渡油圧PGをマニアルバルブ120を経て前進用クラッチC1或いはB1へ供給する第1位置とモジュレータ圧PMをマニアルバルブ120を経て前進用クラッチC1或いはB1へ供給する第2位置とに切り換える切換弁として機能するガレージシフトバルブ114を備えている。
【0026】
ガレージシフトコントロールバルブ112は、係合過渡油圧調圧弁として機能するものであり、軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート112tを開閉するスプール弁子112aと、そのスプール弁子112aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング112bと、スプール弁子112aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置60によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLT をパイロット圧として受け入れる油室112cとを備え、モジュレータ油圧PMをその制御油圧PSLT に応じた大きさの係合過渡油圧(ガレージシフト油圧)PGに調圧制御してを出力するように構成されている。この係合過渡油圧PGは、N→Dシフト或いはN→Rシフトにおいて前進用クラッチC1或いはB1へ過渡的に供給されるガレージシフト油圧として機能するものであり、ガレージシフトバルブ114およびマニュアルバルブ120を経て前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ供給されることにより、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1が滑らかに係合させられ、係合時のショックが抑制される。
【0027】
また、ガレージシフトバルブ114は、軸方向へ移動可能に設けられることにより上記ガレージシフトコントロールバルブ112からの係合過渡油圧PGを出力ポート114tからマニュアルバルブ120へ出力する第1位置(ON位置)とモジュレータ圧PMを出力ポート114tからマニュアルバルブ120へ出力する第2位置(OFF位置)とに位置させられるスプール弁子114aと、そのスプール弁子114aを第2位置に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング114bと、スプール弁子114aに第1位置に向かう推力を付与するためにソレノイド弁SLの信号圧を受け入れる油室114cと、上記スプリング114bを収容し、スプール弁子114aに第2位置に向かう推力を付与するために電子制御装置60によって開閉制御されるソレノイド弁DSUの信号圧(ソレノイドの非励磁で出力)を受け入れる油室114dとを備え、常には図の右半分に示すOFF位置に保持されて、モジュレータ油圧PMをそのままマニュアルバルブ120側へ出力し、そのモジュレータ油圧PMにより後進用ブレーキB1や前進用クラッチC1を係合状態に保持するが、ガレージシフトに関連する過渡時には、ソレノイド弁DSUのソレノイドが励磁されてそれからの信号圧の出力が停止させられることにより、図の左半分に示すON位置に切り換えられ、ガレージシフトコントロールバルブ112から出力されるガレージシフト油圧PGがマニュアルバルブ120側へ出力されるように構成されている。このガレージシフトバルブ114は切換弁として機能するものである。
【0028】
ここで、リニアソレノイド弁SLTは、通常は挟圧力コントロールバルブ110を介して前記ベルト式無段変速機18のベルト挟圧力を制御するために用いられるものである一方で、ガレージシフトのようなシフトレバー77による発進用シフト操作時すなわちN→D操作時やN→R操作時だけ前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の係合圧であるガレージシフト油圧PGを制御するようになっており、共通の信号油圧すなわち制御油圧PSLT を出力する共通の制御弁装置として機能している。この場合に、ガレージシフト時にも、リニアソレノイド弁SLTからの制御油圧PSLT に応じて挟圧力コントロールバルブ110によりベルト挟圧力が制御されることになるが、たとえば前進用クラッチC1がガレージシフト油圧PGに従って係合させられる際に発生する伝達トルクでもベルト滑りが発生することがない範囲でできるだけ低い所定のベルト挟圧力が得られるように、挟圧力コントロールバルブ110のスプリング110bの付勢力などが定められている。
【0029】
図4は、前記電子制御装置60の信号処理によって実行される各種の機能のうち、ガレージシフト時における前進用クラッチC1の係合過渡油圧(ガレージシフト油圧PG)の制御に関する部分などの要部を説明する機能ブロック線図である。
【0030】
図4において、シフトポジション検出手段90は、レバーポジションセンサ78からの信号に基づいて、シフトレバー(シフト操作部材)77或いはマニアルバルブ120の操作位置を検出する。N(ニュートラル)位置操作後経過時間算出手段92は、シフトレバー77が走行ポジション(「D」ポジション或いは「R」ポジション)から「N(ニュートラル)」ポジションへ操作されてからの経過時間tELを算出する。第1経過時間判定手段94は、上記N位置操作後経過時間算出手段92により算出された経過時間tELが予め設定された第1再操作判定時間α以内であるか否かを判定する。また、第2経過時間判定手段96は、上記N位置操作後経過時間算出手段92により算出された経過時間tELが上記第1再操作判定時間αを超え且つその第1再操作判定時間αよりも大きく予め設定された第2再操作判定時間β以内であるか否かを判定する。第1再操作判定時間αおよび第2再操作判定時間βは、走行ポジションへのシフト操作直前に係合させられていた油圧式摩擦係合装置の容積あるいは構造に従ってその油圧式摩擦係合装置がトルクを持たなくなった状態を確認するための値であり、たとえば100乃至500msの範囲内から選択された一定値である。たとえば、第1再操作判定時間αは走行ポジションへのシフト操作直前の「N」ポジションへの操作がR→N操作であるときに用いられる値であり、第2再操作判定時間βは走行ポジションへのシフト操作直前の「N」ポジションへの操作がD→N操作であるときに用いられる値である。
【0031】
シフト油圧制御手段98は、シフトポジション検出手段90により「N」ポジションから「D(走行)」ポジション或いは「R(リバース)」ポジション(走行ポジション)へのN→Dシフト操作或いはN→Rシフト操作が検出されると、ガレージシフトバルブ114をその第1位置へ切り換えることによりガレージシフトコントロールバルブ112からの係合過渡油圧PGをマニアルバルブ120の入力ポート120aへ供給開始し、リニアソレノイド弁SLTからの制御油圧PSLT を用いてガレージシフトコントロールバルブ112からマニアルバルブ120を経て前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ供給される係合過渡油圧PGを昇圧制御する(図5のt2 乃至t5 時点)。この状態を示している。次いで、前進クラッチC1或いは後進ブレーキB1(走行用油圧式摩擦係合装置)の係合が完了すると(図5のt5 時点)、ガレージシフトバルブ114をその第1位置から第2位置へ切り換えることにより、一定のモジュレータ圧PMを上記マニアルバルブ120の入力ポート120aへ供給し、そのマニアルバルブ120を経て前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ供給する。
【0032】
上記シフトレバー77によるN→Dシフト操作或いはN→Rシフト操作が検出されてから前進クラッチC1或いは後進ブレーキB1(走行用油圧式摩擦係合装置)の係合が完了するまでの過渡期間において、上記第2経過時間判定手段96により、N位置操作後経過時間算出手段92により算出された経過時間tELが予め設定された第1再操作判定時間αを超えていると判定されているときに、シフトレバー77による「N」ポジションから「D」ポジション或いは「R」ポジションへの再操作が検出されると、シフト油圧制御手段98は、図5のt2 乃至t5 区間に示すように、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ供給される係合過渡油圧PGを所定の第1上昇状態に沿って昇圧制御する。このとき、第3ファーストフィル制御手段104或いは第4ファーストフィル制御手段106は、t2 乃至t3 の充填期間(ファーストフィル期間)における油圧を、図5の点線に示すように制御する。なお、上記経過時間tELが予め設定された第2再操作判定時間βを超えているときは、シフト油圧制御手段98はそのシフト油圧制御を実行せず、他の通常の油圧制御が実行される。
【0033】
しかし、シフト油圧制御手段98は、上記経過時間tELが予め設定された第1再操作判定時間α或いは第2再操作判定時間β以下であると判定されると、後進用ブレーキB1或いは前進用クラッチC1へ供給される係合過渡油圧PGを所定の第1上昇状態よりも緩和した上昇状態で昇圧制御する。たとえば、シフトレバー77による「N」ポジションから「D」ポジション或いは「R」ポジションへの再操作が検出されたとき、その直前の戻し操作がR→N操作であるときは経過時間tELが予め設定された第1再操作判定時間α以下であると判定されると、或いはその直前の戻し操作がD→N操作であるときは経過時間tELが予め設定された第2再操作判定時間β以下であると判定されると、たとえば図5のt2 乃至t3 の充填区間において示すように、第1ファーストフィル制御手段100或いは第2ファーストフィル制御手段102は、上記充填期間(ファーストフィル期間)における油圧を、図5の実線或いは1点鎖線に示すように、通常の第1上昇状態よりも小さく制御する。後進用ブレーキB1のトルク容量が前進用クラッチC1よりも大きいため、第1ファーストフィル制御手段100による後進用ブレーキB1に対するファーストフィル圧の指令値は、第2ファーストフィル制御手段102による前進用クラッチC1に対するファーストフィル圧の指令値が小さく或いは短く設定されている。
【0034】
図6は、前記電子制御装置60の制御作動の要部すなわちシフトレバー77によるN→Dシフト再操作或いはN→Rシフト再操作時の係合過渡油圧制御作動を説明するフローチャートである。
【0035】
図6において、前記第1経過時間判定手段94に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1では、R→N操作からの経過時間tELが予め設定された第1再操作判定時間α以下であるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合は、前記第2経過時間判定手段96に対応するS2において、D→N操作からの経過時間tELが予め設定された第2再操作判定時間β以下である否かが判断される。このS1またはS2の判断が肯定される場合は、前記シフトポジション検出手段90に対応するS3において「N」ポジションから「D」ポジションへの再操作であるか否かが判断され、そのS3の判断が否定される場合は、前記シフトポジション検出手段90に対応するS4において「N」ポジションから「R」ポジションへの再操作であるか否かが判断される。
【0036】
上記S4の判断が肯定される場合は、前記第1ファーストフィル制御手段100に対応するS5において、たとえば図5のt2 乃至t5 の過渡期間内で上昇させられる係合過渡油圧のうち、ファーストフィル期間(図5のt2 乃至t3 )におけるファーストフィル油圧が図5の実線に示すように通常の第1上昇状態に比較して抑制される。また、上記S3の判断が肯定される場合は、前記第2ファーストフィル制御手段102に対応するS6において、たとえば図5のt2 乃至t5 の過渡期間内で上昇させられる係合過渡油圧のうち、ファーストフィル期間(図5のt2 乃至t3 )におけるファーストフィル油圧が図5の1点鎖線に示すように通常の第1上昇状態に比較して抑制される。
【0037】
前記S2の判断が否定される場合は、前記シフトポジション検出手段90に対応するS7において「N」ポジションから「D」ポジションへの再操作であるか否かが判断され、そのS7の判断が否定される場合は、前記シフトポジション検出手段90に対応するS8において「N」ポジションから「R」ポジションへの再操作であるか否かが判断される。上記S7の判断が肯定される場合は、前記第3ファーストフィル制御手段104に対応するS9において、たとえば図5のt2 乃至t5 の過渡期間内で上昇させられる係合過渡油圧のうち、ファーストフィル期間(図5のt2 乃至t3 )におけるファーストフィル油圧が図5の破線に示すように制御されることにより通常の第1上昇状態とされる。また、上記S8の判断が肯定される場合は、前記第4ファーストフィル制御手段106に対応するS10において、たとえば図5のt2 乃至t5 の過渡期間内で上昇させられる係合過渡油圧のうちのファーストフィル油圧がS9と同様に破線に示すような通常の第1上昇状態とされる。なお、上記S8の判断が否定された場合は、通常の他の油圧制御が実行される。
【0038】
上述のように、本実施例によれば、経過時間算出手段92により算出された経過時間が予め設定された再操作判定時間αまたはβに到達する前に、「N」ポジションから走行ポジションへのシフトレバー77の再操作が行われた場合には、シフト油圧制御手段98(S5、S6)により、通常の第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で、前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)へ供給される係合過渡油圧が上昇させられるので、油圧式摩擦係合装置内に残圧が存在していても、その前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1の早すぎる係合開始が好適に防止され、シフトレバー77が「N」ポジションから「D」或いは「R」ポジションへ再操作されたときのシフト操作時の係合ショックが好適に防止される。
【0039】
また、本実施例では、シフト油圧制御手段98は、供給開始当初において速やかに作動油或いは係合過渡油圧PGを供給する急速充填期間(図5のt2 乃至t3 )を含む予め定められた昇圧手順にしたがって前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)へ供給される係合過渡油圧PGを上昇させるシフト油圧制御を実行するものであって、その急速充填期間における係合過渡油圧PGを減少させることによって、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)へ供給される係合過渡油圧PGを上昇させるものであることから、シフトレバー77が「N」ポジションから「D」或いは「R」ポジション(走行ポジション)へ再操作されたときのN→D或いはN→Rシフト再操作時の係合ショックが好適に防止される。
【0040】
また、本実施例では、前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)に係合過渡油圧PGを供給するためのモジュレータバルブ(油圧源)122と、指令に従ってそのモジュレータバルブ122からの油圧を調圧した係合過渡油圧PGを発生させるガレージシフトコントロールバルブ(係合過渡油圧調圧弁)112と、そのガレージシフトコントロールバルブ112から出力される係合過渡油圧PGをマニアルバルブ120に供給する第1位置とモジュレータバルブ122からのモジュレータ油圧PMをそのマニアルバルブ120に供給する第2位置とに切り換えられるガレージシフトバルブ(切換弁)114とを備え、シフト油圧制御手段98は、その第1位置に切り換えられてからガレージシフトバルブ114を通してマニアルバルブ120へ供給される係合過渡油圧PGをガレージシフトコントロールバルブ112を用いて調圧することにより、前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1へ供給される係合過渡油圧PGの上昇状態を制御するものであるので、係合過渡油圧PGが好適に前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1へ供給される。
【0041】
また、本実施例では、再操作判定時間αおよびβは、シフトレバー77の「N」ポジションから「D」或いは「R」ポジション(走行ポジション)へ再操作直前のその「N」ポジションへの戻し操作が、「R」(後進走行)ポジションからの場合と「D」(前進走行)ポジションからの場合とで相互に異なる値に設定されるので、後進用ブレーキB1の容積と前進用クラッチC1の容積が異なる場合でも、それに供給される係合過渡油圧PGが適切に抑制される。
【0042】
また、本実施例では、車両の走行用油圧式摩擦係合装置は、シフトレバー77が「D」(前進走行)ポジションへ操作されたときに係合させられる前進用クラッチC1と、その前進用クラッチC1よりも大きなトルク容量を有し、シフトレバー77が「R」(後進走行)ポジションへ操作されたときに係合させられる後進走行用ブレーキB1とを備えたものであり、シフト油圧制御手段98は、シフトレバー77が「R」(後進走行)ポジションへ操作されたときは、「D」(前進走行)ポジションへ操作されたときに比較して、前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧PGを大きく抑制するものであるので、前進走行或いは後進走行のための再シフト操作時において、前進用クラッチC1と後進走行用ブレーキB1とのトルク容量差に拘わらず、シフト操作時の係合ショックがそれぞれ好適に防止される。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【0044】
たとえば、前述の実施例の車両は、エンジン12を走行用駆動力源として備えているとともに、そのエンジン12の出力を流体を介して伝達するトルクコンバータ14を有するものであったが、電動モータなどの他の駆動力源を備えているハイブリッド車両などにも適用され得る。また、トルクコンバータ14に替えて、流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式動力伝達装置が採用されてもよい。
【0045】
また、前述の実施例において、前進用油圧式摩擦係合装置はクラッチC1から構成され、後進用油圧式摩擦係合装置はブレーキB1から構成されていたが、複数のクラッチ或いはブレーキから構成されていてもよい。
【0046】
また、前述の実施例において、係合過渡油圧調圧弁として機能するガレージシフトコントロールバルブ112や、切換弁として機能するガレージシフトバルブ114は、そのポートの数、スプール弁子112a、114aの形状、スプリング112a、114bの位置や有無などが異なる他の構成であっても差し支えない。
【0047】
また、前述の実施例において、再操作判定時間として、2つの値αおよびβがシフトレバー77によるシフト操作の直前の戻し操作がR→N操作であるかD→N操作であるかに応じて使い分けられていたが、1個の値が共通に用いられてもよい。
【0048】
また、前述の実施例において、再操作判定時間α或いはβは、一定値が用いられていたが、予め記憶された関係から実際の作動油の温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つに基づいて決定する再操作判定時間決定手段が設けられていてもよい。すなわち、再操作判定時間α或いはβは、作動油の温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つの函数であってもよい。このようにすれば、再操作判定時間α或いはβとして、作動油温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つに応じた適切な値が用いられる。上記関係は、作動油の温度が高くなるほど、車両の走行距離やエンジンの累積作動時間(弁などの油圧回路の経時変化)が長くなるほど、エンジン回転速度が低くなるほど、小さい値とされる特性が備えられる。
【0049】
また、前述の実施例において、シフト油圧制御手段98は、係合過渡油圧PGのうちファーストフィル期間内の値を低く或いは短くすることによって、通常の第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で、前進走行用クラッチC1或いは後進走行用ブレーキB1(油圧式摩擦係合装置)へ供給される係合過渡油圧PGを上昇させるものであったが、ファーストフィル期間以外の部分の係合過渡油圧PGの上昇を抑制するものであってもよい。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油圧制御装置が適用された車両用動力伝達装置の骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置の制御系統を説明するブロック線図である。
【図3】図1の車両用動力伝達装置が備えている油圧制御回路の要部であって、前後進切換装置の係合過渡油圧およびベルト式無段変速機のベルト挟圧力の制御に関する部分を説明する回路図である。
【図4】図2の電子制御装置の制御機能の要部を説明するブロック線図である。
【図5】図2の電子制御装置の制御作動を説明するタイムチャートである。
【図6】図2の電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10:車両用動力伝達装置
60:電子制御装置
77:シフトレバー(シフト操作部材)
90:シフトポジション検出手段
92:N位置操作後経過時間算出手段(経過時間算出手段)
98:シフト油圧制御手段
112:ガレージシフトコントロールバルブ(係合過渡油圧調圧弁)
114:ガレージシフトバルブ(切換弁)
120:マニアルバルブ
122:モジュレータバルブ(油圧源)
C1:クラッチ(前進用油圧式摩擦係合装置)
B1:ブレーキ(後進用油圧式摩擦係合装置)
Claims (7)
- 所定の油圧式摩擦係合装置の係合作動により走行状態とされる動力伝達装置と、シフト操作部材の操作によりニュートラルポジションおよび走行ポジションへ選択的に切り換えられるマニアルバルブを備え、該マニアルバルブが走行ポジションへ操作されたときに該マニアルバルブから前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を予め設定された第1上昇状態で上昇させる形式の車両用動力伝達装置の油圧制御装置であって、
前記シフト操作部材が前記走行ポジションから前記ニュートラルポジションへの操作が検出されてからの経過時間を算出する経過時間算出手段と、
該経過時間算出手段により算出された経過時間が予め設定された再操作判定時間に到達する前に、前記ニュートラルポジションから前記走行ポジションへの前記シフト操作部材の再操作が行われた場合には、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるシフト油圧制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用動力伝達装置の油圧制御装置。 - 前記シフト油圧制御手段は、供給開始当初において速やかに係合過渡油圧を供給する急速充填期間を含む予め定められた昇圧手順にしたがって前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるシフト油圧制御を実行するとともに、該急速充填期間における係合過渡油圧を減少させることによって、前記第1上昇状態よりも抑制された上昇状態で前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を上昇させるものである請求項1の車両用動力伝達装置の油圧制御装置。
- 前記油圧式摩擦係合装置に作動油を供給するための油圧源と、
指令に従って該油圧源からの油圧を調圧した係合過渡油圧を発生させる係合過渡油圧調圧弁と、
該係合過渡油圧調圧弁から出力される係合過渡油圧を前記マニアルバルブに供給する第1位置と前記油圧源からの油圧を該マニアルバルブに供給する第2位置とに切り換えられる切換弁とを備え、
前記シフト油圧制御手段は、前記第1位置に切り換えられてから切換弁を通して前記マニアルバルブへ供給される係合過渡油圧を係合過渡油圧調圧弁を用いて調圧することにより、前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧の上昇状態を制御するものである請求項1または2の車両用動力伝達装置の油圧制御装置。 - 前記走行ポジションは、前進走行ポジションまたは後進走行ポジションである請求項1乃至3のいずれかの車両用動力伝達装置の油圧制御装置。
- 前記再操作判定時間は、前記作動油温度、車両の走行距離、エンジンの累積作動時間、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つの函数である請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用動力伝達装置の油圧制御装置。
- 前記再操作判定時間は、前記シフト操作部材のニュートラルポジションから前記走行ポジションへの再操作直前の該ニュートラルポジションへの戻し操作が、後進走行ポジションからの場合と前進走行ポジションからの場合とで異なる値に設定されるものである請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用動力伝達装置の油圧制御装置。
- 前記油圧式摩擦係合装置は、前記シフト操作部材が前記前進走行ポジションへ操作されたときに係合させられる前進走行用油圧式摩擦係合装置と、該前進走行用油圧式摩擦係合装置よりも大きなトルク容量を有し、該シフト操作部材が前記後進走行ポジションへ操作されたときに係合させられる後進走行用油圧式摩擦係合装置とを備えたものであり、
前記シフト油圧制御手段は、前記シフト操作部材が前記後進走行ポジションへ操作されたときは、前記前進走行ポジションへ操作されたときに比較して、前記所定の油圧式摩擦係合装置へ供給される係合過渡油圧を大きく抑制するものである請求項1乃至6のいずれかの車両用動力伝達装置の油圧制御装置。
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