JP2004197014A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【目的】寸法安定性、耐衝撃性と剛性のバランスに優れ、かつ、導電性や帯電防止性などの電気的性質にも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【構成】結晶性熱可塑性樹脂{(a)成分}、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂{(b)成分、(a)成分と(b)成分と不均一混合するゴム状樹脂{(c)成分}、および導電性物質{(d)成分}からなる熱可塑性樹脂組成物において、(c)成分が(a)成分および/または(b)成分中でネットワーク形態を形成し、かつ、(d)成分が実質的に(b)成分および/または成分(c)中に存在することを特徴とする。
【効果】上記目的が達成される。
【選択図】 図1
【構成】結晶性熱可塑性樹脂{(a)成分}、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂{(b)成分、(a)成分と(b)成分と不均一混合するゴム状樹脂{(c)成分}、および導電性物質{(d)成分}からなる熱可塑性樹脂組成物において、(c)成分が(a)成分および/または(b)成分中でネットワーク形態を形成し、かつ、(d)成分が実質的に(b)成分および/または成分(c)中に存在することを特徴とする。
【効果】上記目的が達成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、寸法安定性(寸法精度、低線膨張率などと同じ意味である)、耐衝撃性、剛性などが優れ、かつ、導電性や帯電防止性などの電気的性質に優れた熱可塑性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車は軽量化による燃費の向上を目的とし、自動車部品の樹脂化が急速に進んでいる。すなわち、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール(ハンドル)、トリムなどの内装部品、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの外装部品のほか、従来金属で製造されていたバンパー、ファイシヤ、フェンダー、ドアパネルおよびボディー(一部分)なども、各種樹脂材料で製造されるようになった。
【0003】
このような自動車部品に用いられる樹脂材料としては、例えば、RIM(Reaction Injection Molding)・ウレタン、複合ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリアミドなどの無機物強化プラスチック、ポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド物(アロイと呼称されることもある)、ポリフェニレンエーテル(PPE)とポアイアミド(PA)とのブレンド物などが挙げられる。
【0004】
自動車部品の中でも、フェイシア、フェンダーおよびドアパネルに用いられる樹脂材料は、従来の樹脂製部品と比較して、例えばさらに高いレベルの性能が要求されるようになってきた。(1)耐衝撃性:衝突時のエネルギーを外形を変形することによって吸収し、その後回復する特性や、低温時の衝撃破壊が延性を示す特性、(2)寸法安定性(低線膨張率):塗装後の樹脂成形品が高温環境下で使用される際に、塗膜の剥離や塗装面に微細な亀裂が生じ、外観や意匠性が悪化する。また、樹脂製大型成形品を他の材質、例えば木材、金属などの成形品と併用する場合、高温使用環境下では熱膨張が異なるために、寸法差や噛み合い不良という問題が生じる。これらはいずれも、樹脂成形品と他の材料との線膨張率に差があることに原因がある。(3)導電性:樹脂成形品の表面に静電塗装法によって塗装する際には、樹脂パネルに電気を流し、それと反対の電荷を付与した塗料と吹き付けるので、樹脂パネルは導電性を有することが要求される。
【0005】
従来の自動車部品製造用樹脂材料では、高温における寸法精度(線膨張係数)、優れた耐衝撃性、静電塗装が可能な優れた導電性などの総ての特性を付与することは困難であった。これら要求される特性の中の耐衝撃性は、例えばエラストマーを多量配合することにより上させることができるが、高温における寸法精度が悪化する。そこで、エラストマーの配合量を少ない量に抑制して衝撃強度を向上させる手法として、一般にモルホロジーの改良がある。
【0006】
寸法安定性、耐衝撃性および剛性などがバランスに優れた樹脂材料として、例えば特開平7−18188号公報に、ネットワーク形態を有する熱可塑性樹脂組成物が提案されており、また、特開2002−105343号公報には、結晶性樹脂、非結晶性樹脂およびゴム状重合体が特定の分散形態を有する熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【0007】
さらに、導電性を付与した樹脂材料が検討され、PPEとPAとのブレンド物のミクロ形態が海−島構造を形成し、PAよりなる海相にカーボンブラックを選択的に含有させ、少量のカーボンブラックによって導電性を向上させる手法が提案されている(特開平2−20811号公報参照)。しかし、本発明者らの実験によれば、樹脂材料の導電性は向上するが、成形加工性が大幅に低下することが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−18188号公報
【特許文献2】
特開2002−105343号公報
【特許文献3】
特開平2−20811号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況にあって、上記諸欠点を改良し、成形加工性を低下させず、高温での寸法精度が優れ、低温における耐衝撃性と剛性とのバランスが優れた成形品が得られ、同時に優れた導電性を発揮する成形品が得られる樹脂組成物を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成したものである、すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.高温での寸法精度が優れた成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
2.低温での耐衝撃性と剛性とのバランスが優れた成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
3.優れた導電性を発揮する成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、結晶性熱可塑性樹脂{(a)成分}、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂{(b)成分}、(a)成分と(b)成分と不均一混合するゴム状樹脂{(c)成分}、および導電性材料{(d)成分}からなる熱可塑性樹脂組成物において、(c)成分は(a)成分および/または(b)成分中でネットワーク形態を形成し、かつ、(c)成分が実質的に(a)成分および/または(b)成分の界面に存在し、さらに、(d)成分が実質的に(b)成分および/または(c)成分中に存在することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
以下、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を構成する(a)成分、(b)成分、(c)成分の熱可塑性樹脂は、一般に、加熱することにより、成形品に成形できる程度に溶融して可塑性を発揮する樹脂を意味する。以下に、具体例を示す。
【0012】
1.(a)成分(結晶性熱可塑性樹脂):
(a)成分は、結晶性熱可塑性樹脂を意味する。結晶性熱可塑性樹脂とは、明確に結晶構造または結晶化可能な分子構造を有し、非ガラス様特性を示す熱可塑性樹脂であり、測定可能な融解熱を有し明確な融点を示すものをいう。融点および融解熱は、示差走査熱量測定装置、例えば、パーキン・エルマー(PERKIN-ELMER)社製、DSC−IIを用いて測定することができる。すなわち、この装置を用いて測定される融解熱が、1カロリー/グラム以上のものを、結晶性熱可塑性樹脂と定義する。融解熱および融点は、示差走査熱量測定装置を用いて、1分間当り10℃の昇温速度で、試料を予測される融点以上の温度に加熱し、次に試料を1分間当り10℃の速度で降温し、20℃まで冷却し、そのまま約1分間放置した後、再び1分間当り10℃の速度で加熱昇温することにより測定することができる。融解熱は、昇湿と降温のサイクルで測定した値が、実験誤差範囲内で一定値となるものを採用する。
【0013】
(a)成分である結晶性熱可塑性樹脂の具体例としては、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネートなどが挙げられる。以下、(a)成分を詳細に説明する。
【0014】
(a1) (a)成分の例としての飽和ポリエステル樹脂には、種々のポリエステルが挙げられる。飽和ポリエステルは、ジカルボン酸類、その低級アルキルエステル類、酸ハライド類または酸無水物誘導体と、グリコール類または二価フェノール類とを縮合させて製造する熱可塑性ポリエステル樹脂をいう。ジカルボン酸類は、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸のいずれであってもよい。具体例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p,p´−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフエノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、または2,7−ナフタリンジカルボン酸、またはこれらのカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0015】
グリコール類は、脂肪族グリコール類または芳香族グリコール類のいずれであってもよい。脂肪族グリコール類としては、炭素数2〜12個の直鎖アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテングリコール、1,6−へキセングリコール、1,1,2−ドデカメチレングリコールなどが挙げられる。また、芳香族グリコール類としては、p−キシリレングリコールが挙げられ、二価フェノ一ルとしては、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンまたはこれらの化合物のアルキル置換誘導体が挙げられる。他の適当なグルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールも挙げられる。
【0016】
他の好ましい飽和ポリエステル樹脂としては、ラクトンの開環重合によるポリエステル樹脂も挙げられる。例えば、ポリピバロラクトン、ポリ(ε一カプロラクトン)などである。さらに他の好ましいポリエステルとしては、溶融状態で液晶を形成する樹脂(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)としての液晶ポリエステルが挙げられる。液晶ポリエステルは市販されており、市販品としてはイーストマンコダック社のX7G、ダートコ社のザイダー(Xyder)、住友化学社のエコノール、セラニーズ社のペクトラなどが挙げられる。
【0017】
以上、挙げた飽和ポリエステル樹脂の中で(a)成分として好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、または液晶性ポリエステルなどである。
【0018】
上に挙げた飽和ポリエステル樹脂の粘度は、フェノールと1,1,2,2−テトラクロルエタンとを、重量比で60対40の混合液中、20℃で測定した固有粘度が0.5〜5.0dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.5dl/g未満であると耐衝撃性が不足し、5.0dl/g以上では成形性に難があり、いずれも好ましくない。上記固有粘度の範囲では1.0〜4.0dl/gがさらに好ましく、中でも特に好ましいのは2.0〜3.5dl/gである。
【0019】
(a2) (a)成分の例としてのポリアミド樹脂は、樹脂の主鎖に−CO−NH−結合を有し、加熱溶融できるものである。その代表的なものとしては、ポリアミド−4、ポリアミド−6、ポリアミド−6・6、ポリアミド−4・6、ポリアミド−12、ポリアミド−10など挙げられる。その他、公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸などのモノマー成分を含む低結晶性および非晶性のポリアミドなどが挙げられる。好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド−6、またはポリアミド6・6であり、中でもポリアミド−6が特に好ましい。
【0020】
上記ポリアミド樹脂は、温度25℃、98%濃硫酸中で測定した相対粘度が2.0〜8.0の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.0未満であると機械的強度が劣り、8.0を越えると成形性が劣り、いずれも好ましくない。
【0021】
(a3) (a)成分の例としてのポリオレフィン樹脂は、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体、α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体とのランダム、グラフトまたはブロックなどの共重合体、これらオレフィン系重合体に酸化、ハロゲン化、スルホン化などの処理を施したものであり、少なくとも部分的にポリオレフィンに由来する結晶性を示すものであり、結晶化度は20%以上のものをいう。これらポリオレフィン樹脂は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などが挙げられる。α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和カルボン酸、またはその誘導体類、酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類、ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン類、ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類などが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン樹脂は、従来から知られている方法による重合、または変性などにより得られるが、市販されている製品群から適宜選ぶこともできる。ポリオレフィン樹脂の中では、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などの単独重合体、またはこれらを主成分とする共重合体が好ましい。中でも特に、結晶性プロピレン系重合体、すなわち結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィンブロックまたはランダム共重合体、これらの結晶性プロピレン重合体とα−オレフイン系ゴム、すなわちゴム状の複数のα−オレフィンよりなる共重合体、または複数のα−オレフィンと非共役ジエンとの混合物が、機械的物性バランスの観点から好ましい。
【0024】
上記結晶性プロピレン系重合体、またはこれらとα−オレフィン系ゴムを含む混合物は、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定したメルトフローレイト(MFR)が、0.01〜250g/10分の範囲が好ましい。MFRの値が0.01g/10分より低い範囲では成形加工性に難があり、250g/10分より高い範囲では機械的物性バランスのレベルが低く、いずれも好ましくない。上記MFRの範囲では、0.05〜150g/10分がより好ましく、中でも0.1〜50g/10分の範囲が特に好ましい。これらの中には、高分子量のものをラジカル発生剤、例えば有機過酸化物などの存在下で加熱処理により分子量を変化させて、MFRを上記範囲に調節したものも含まれる。
【0025】
上記に挙げた以外の結晶性熱可塑性樹脂の例としては、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。(a)成分としての結晶性熱可塑性樹脂として好ましいのは、(a1)飽和ポリエステル樹脂、(a2)ポリアミド樹脂、(a3)ポリオレフィン樹脂などであり、中でも特に好ましいのは、(a1)飽和ポリエステル樹脂、(a2)ポリアミド樹脂などである。上記結晶性熱可塑性樹脂は、2種以上の混合物であってもよい。
【0026】
2.(b)成分(非晶性熱可塑性樹脂):
(b)成分は、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂を意味する。(b)成分の非晶性熱可塑性樹脂とは、一般にガラス様の性質をもち、加熱した際にガラス転移温度を示すものをいう。非晶性熱可塑性樹脂は、明確な融点や測定可能な融解熱を示さないが、ゆっくり冷却する場合には多少の結晶性を示すものを含み、また、本発明の効果を大きく損なわない範囲で結晶性を示すものも含むものとする。ガラス転移温度、融点および融解熱は、示差走査熱量測定装置を用い、上に記載した方法で測定することができる。すなわち、上に記載した方法で測定される融解熱が、1カロリー/グラム未満のものを、非晶性熱可塑性樹脂と定義する。(b)成分のガラス転移温度は、50℃以上が好ましい。
【0027】
(b)成分の具体例としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族非晶性ポリアミド、ケイ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリ(アルキル)アクリレートなどが挙げられる。以下、(b)成分を詳細に説明する。
【0028】
(b1) (b)成分の具体例としてのPPEは、下記の一般式(I)で示される構造を有する化合物の単独重合体または共重合体をいう。
【0029】
【化1】
【0030】
一般式(I)において、Q1は各々ハロゲン原子、第一級または第二級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、もしくはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、Q2は各々水素原子、ハロゲン原子、第一級または第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、もしくはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、mは10以上の整数を表す。Q1およびQ2の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−へキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−または4−メチルペンチル、もしくはヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec-ブチルまたは1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1はアルキル基またはフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2は水素原子である。
【0031】
好適なPPEの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものであり、好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体が挙げられる。分子量、溶融粘度、および/または、耐衝撃性などの特性を改良する特別な分子構成部分を含むPPEも、また好適である。これら多くの好適なPPEの単独重合体、またはランダム共重合体は、特許公報、一般技術文献に記載され、提案されている。
【0032】
好適なPPEの固有粘度は、クロロホルム中、30℃の温度で測定した値が0.2〜0.8dl/gの範囲のものが好ましい。固有粘度が0.2dl/g未満では樹脂組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/g以上では樹脂組成物の成形性と成形品外観に難が生じ、いずれも好ましくない。上記固有粘度の範囲では、0.2〜0.5dl/gがさらに好ましく、中でも好ましいのは0.25〜0.4dl/gのものである。
【0033】
(b2) (b)成分としてのPCは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどをいう。中でも好ましいのは、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン、スルフィドまたはスルホキサイド系などのビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートは、ハロゲンで置換されたビスフェノール類からなるものであってもよい。
【0034】
芳香族ポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度から換算した粘度平均分子量で、1万〜4万の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が1万未満であると、樹脂組成物の機械的強度が劣り、4万を越えると樹脂組成物の成形性が劣り、いずれも好ましくない。粘度平均分子量の好ましい範囲は、2万〜4万である。
【0035】
(b)成分(非晶性熱可塑性樹脂)の種類は、上に例示したとおりである。上に例示した(b)成分の中でも好ましいのは、PPE、PCおよびポリスチレン系樹脂であり、中でも特に好ましいのは、PPEである。(b)成分は、2種類以上の混合物であってもよい。
【0036】
3.(c)成分(ゴム状重合体):
(c)成分は、(a)成分および/または(b)成分と不均一混合する熱可塑性樹脂であって、ゴム状重合体を意味する。ゴム状重合体は、好ましいのは、ASTMD882に準拠して測定した引張弾性率が5000kg/cm2以下のものである。ゴム状重合体としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体(S−Bブロック共重合体)の水素添加物、ポリオレフィン系ゴム状共重合体が挙げられる。ゴム状重合体は、(a)成分および/または(b)成分と相溶性を有するのが好ましい。特に前者は、(a)成分および(b)成分と相溶性を向上させる目的で、ポリオレフィン系ゴム状共重合体に他の単量体をグラフト共重合や、ブロック共重合させたものが好ましい。
【0037】
(c1) (c)成分としてのS−Bブロック共重合体の水素添加物は、ビニル芳香族化合物重合体ブロックSと共役ジエン化合物重合体ブロックBとからなるブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。そのブロック共重合体の水素添加物は、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖ブロックSと共役ジエン化合物に由来する連鎮ブロックBとを、各々少なくとも一個有する構造を持ち、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック化合物共重合体のブロックBの脂肪族不飽和基が、水素化によって少なくされたブロック共重合体である。
【0038】
ブロックSおよびブロックBの配列は、線状構造を呈するもの、または分岐構造(ラジカルテレブロック)を呈するものなどを含んでいてもよい。また、これら構造を呈するものの一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これらのうちで線状構造をなすものが好ましく、ジブロック構造を呈するものがより好ましい。ビニル芳香族化合物として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンであり、さらに好ましくは、スチレンである。共役ジエン化合物としては、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0039】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物において、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲がより好ましい。これらブロック共重合体における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が、水素添加されたものであってもよい。
【0040】
これらの水素添加ブロック共重合体は、それらの分子量の目安として、25℃における濃度15重量%のトルエン溶融粘度の値が、10cps〜30000cpsの範囲のものが好ましい。この値が10cps未満では、樹脂組成物の機械的強度レベルが低く好ましくなく、30000cpsより大きいと樹脂組成物の成形加工性に難点を生じ、いずれも好ましくない。より好ましいトルエン溶融粘度の値は30cps〜10000cpsである。
【0041】
(c2) (c)成分としてのポリオレフィン系ゴム状共重合体としては、エチレン・プロピレン系ゴム状共重合体、およびエチレン・ブテン系ゴム状共重合体であり、具体的には、エチレンとプロピレン、およびエチレン・ブテンを主成分とする無定型ランダムゴム状共重合体(EPR、EBR)などであり、これに少量の非共役ジエンを共重合させたゴム状共重合体(EPDM、EBDM)である。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1、4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0042】
これらエチレン・プロピレン系ゴム状共重合体は、塩化バナジュウム、バナジュウムオキシクロリドなどのバナジュウム化合物とトリエチルアルミニュウムセスキクロリドなどの、有機アルミニュウム化合物とからなるバナジュウム系触媒を用いる重合法によって、製造することができる。このような触媒系によって製造されたゴム状共重合体は、一般に、ランダム性の良好なものであり、結晶性はほとんど示さず、結晶化度は0〜20%の範囲となる。
【0043】
また、上記の(c2)ポリオレフィン系ゴム状共重合体にグラフト共重合、ブロック共重合させることができる他の単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸類、またはエンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2、3−ジカルボン酸、もしくはこれらの誘導体などの脂環式カルボン酸類、またはグリシジル基と(メタ)アクリレ−ト基とを同一分子内に持つ化合物類、グリシジルオキシ基とアクリルアミド基とを同一分子内に持つ化合物類、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体、およびブチルグリシジルマレートなどの含エポキシ化合物類が挙げられる。上記他の単量体をグラフト共重合やブロック共重合させる方法としては、パーオキサイド、電離放射線、紫外線などを利用する方法が挙げられる。
【0044】
4.(a)成分と(c)成分の溶融剪断粘度比
(a)成分と(c)成分とは、それぞれの溶融剪断粘度比は特に制限されるものではないが、(a)成分の溶融剪断粘度を[A]、(c)成分の溶融剪断粘度を[C]とするとき、両者の比{[A]/[C]}が1.0未満であり、より好ましいのは0.9以下であり、特に好ましいのは0.85以下であり、とりわけ好ましくは0.8以下である。なお、本発明で溶融剪断粘度とは、JIS K7210の参考試験として記載されている方法、すなわち、溶融した樹脂を一定速度で毛細管から押出した時の剪断粘度(ずり粘度)をいう。具体的には、高架式フローテスター(インストロン・キャピラリー・レオメーター)を使用し、例えば、シリンダー温度280℃、ノズル径1mm、ノズル長さ10mmに設定し、押出速度を変化させて測定することができる。溶融剪断粘度は、剪断速度を50〜300
sec-1のとして測定する。
【0045】
5.(d)成分(導電性材料)
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に含まれる(d)成分は、導電性材料である。導電性材料としては、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリル、カーボンファイバーの粉砕物、銅、ニッケル、亜鉛などの金属粉、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆した無機または有機化合物、イオン性や非イオン性などの有機界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤などが挙げられる。中でも、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好適である。
【0046】
導電性材料として好ましい導電性カーボンブラックは、ペイントなどに着色目的で加えて顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態をしているもので、ケッチンブラックとして市販されているので、容易に入手することができる。
【0047】
導電性材料として好ましい中空炭素フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが、フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nm、フィブリル外径が3.5〜70nm、アスペクト比が5以上のものが好ましい。フィブリル外径が3.5nm未満では樹脂中への分散性に劣り、70nmを越えると樹脂組成物の導電性が不十分であり、いずれも好ましくない。また、アスペクト比が5未満では、樹脂組成物の導電性が不十分であり、好ましくない。
【0048】
上記物性の中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4663230号明細書に詳しく記載されている。その製法は、上記公表公報や米国特許明細書に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素などの含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解により生じた炭素を、遷移金属含有粒子を起点として繊維状に成長させる方法が挙げられる。このような中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社よりグラファイト・フィブリルという商品名で市販されているので、容易に入手できる。
【0049】
(d)成分は、(a)成分、(b)成分または(c)成分とあらかじめ混合することができる。中でも、(c)成分とあらかじめ混合するのが好ましい。混合方法は特に限定されるものではなく、ドライブレンド法、溶液混合法、溶融混練法などのいずれの方法でもよい。中でも好ましいのは、溶融混練法である。溶融混練法によるときは、単軸押出機、多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーなどの溶融混練機を使用することができる。
【0050】
6.付加成分{(e)成分}
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、他の付加的成分を添加することができる。他の付加的成分としては、異なる熱可塑性樹脂同士を相溶させる相溶化剤のほか、熱可塑性樹脂添加剤として知られている酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤、各種着色剤、これらの分散剤などが挙げられる。さらに、剛性、耐熱性、寸法精度などを向上させる有機・無機充填剤、補強剤、特にガラス繊維、マイカ、タルク、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられる。場合によっては、有機過酸化物を添加することができる。
【0051】
7.構成成分の組成比
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の四成分によって構成されるが、四成分の合計量を100重量%とした場合、(a)成分を5〜95重量%、(b)成分を5〜95重量%、(c)成分を10〜60重量%、(d)成分を0.1〜20重量%とするのが好ましい。(a)成分が5重量%未満では、寸法安定性(線膨張率)および剛性が不満足であり、95重量%を超えると寸法安定性(線膨張率)および衝撃強度が不満足となる。(b)成分5重量%未満では、寸法安定性(線膨張率)および剛性が不満足であり、95重量%を超えると寸法安定性(線膨張率)および衝撃強度が不満足となる。(c)成分が10重量%未満では、寸法安定性および衝撃強度が不満足であり、60重量%を超えると寸法安定性および剛性が不足する。(d)成分が0.1重量%未満では、導電性および帯電防止性が不十分であり、20重量%を超えると衝撃強度および成形性が劣り、好ましくない。
【0052】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に占める四成分の好ましい割合は、(a)成分が15〜80重量%、(b)成分が7〜70重量%、(c)成分が15〜55重量%、(d)成分は0.5〜16重量%であり、中でも特に好ましい割合は、(a)成分が20〜70重量%、(b)成分が10〜50重量%、(c)成分が20〜45重量%、(d)成分が1〜13重量%である。
【0053】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物では、(c)成分を(a)成分と(b)成分の界面に存在させることが必要であり、(c)成分の80重量%以上を、さらに95%以上を(a)成分と(b)成分の界面に存在させるのが好ましい。(c)成分を(a)成分と(b)成分の界面に存在させることにより、最終樹脂組成物の耐衝撃性と寸法安定性(線膨張率)を向上させることができる。また、(d)成分を(b)成分および/または(c)成分の中に存在させることが必要である。(d)成分を、(b)成分および/または(c)成分の中に存在させることによって、樹脂組成物から得られる成形品の導電性および帯電防止性を向上させることができる。(d)成分を(b)成分および/または(c)成分の中に存在させるには、所定量の(d)成分を(b)成分および/または(c)成分に溶融・混練する方法によればよい。
【0054】
8.熱可塑性樹脂組成物の調製
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物の調製法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)まず所定量の(d)成分を(b)成分および/または(c)成分に溶融・混練し、ついでこれに(a)成分、さらに要すれば付加成分を所定量混合し、溶融・混練する方法が挙げられる。溶融混練機としては、一軸押出機、多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。また、(2)各成分を適当な溶媒に溶解または分散させ、(d)成分が(b)成分および/または(c)成分に含まれるような順序で、溶液混合法する方法が挙げられる。さらに、(2)(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、さらに要すれば付加成分を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練機で溶融・混練する方法が挙げられる。
【0055】
9.モルフォロジー的な特徴
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物は、(c)成分が(a)成分および/または(b)成分中でネットワークの形態で存在する。本発明においてネットワークの形態とは、(a)成分および/または(b)成分の中に、(c)成分がネットワーク{連続した網または連続した海を形成し、(a)成分および/または(b)成分が不連続の島を形成する}を形成している形態をいう。ネットワークの形態は、例えば、成形品または溶融・混練により得られたペレットから小片を切り出し、その表面をRuO4(酸化ルテニウム)またはOsO4(酸化オスミウム)によって染色した後、ウルトラミクロトーム(ライヘルト社製、ウルトラカットN)を用いて超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、NJEM100CX)によって観察することができる。
【0056】
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物は、電子顕微鏡で観察した写真を画像処理することにより、一辺1μmの正方形内に存在し、(c)成分のネットワークで閉鎖されたマトリックス領域の数であるmを計測し、式[I]で算出されるインデックスRの平均値が0.9以下の形態を有する。インデックスRの平均値が0.9を超えると樹脂組成物から得られる成形品の導電性および帯電防止性が低下し好ましくない。Rの平均値は、好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下である。
【0057】
【数2】
【0058】
ここで、式[A]におけるmの算出方法について述べる。上記した電子顕微鏡で観察した写真につき、画像処理解析装置(日本ヴィオニクス社製、スピカ2)により、熱可塑性樹脂の分散形態を二値化し、一辺が1μmの正方形内に存在する(c)成分のネットワークで閉鎖されている閉鎖領域mを算出する。このmの値を式[I]に入れ、Rを算出することができる。この解析をペレットの代表的な区域について行い、その平均値を求め、ネットワーク構造のインデックスRの値とする。
【0059】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、導電性、帯電防止性、剛性および耐衝撃性などに優れているので、静電塗装が適用される自動車用部品の製造用材料として、好適に使用される。これら部品を製造する際には、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によることができる。成形法としては、例えば、押出成形法、中空成形法、回転成形法、積層成形法、圧縮成形法、押出成形法、熱成形法などが挙げられる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下に記載の例に限定されるものではない。以下に記載の例において、使用した各成分の略号、物性などの詳細は次のとおりである。なお、以下に記載の例において、配合量は重量部を意味し、得られた熱可塑性樹脂組成物についての評価試験は、下記の方法で行った。
【0061】
(a)成分:
(a1)PBT:飽和ポリエステル(鐘紡社製、ポリブチレンテレフタレート、商品名:128)である。
(a2)ポリアミド:JIS K6810に準拠して測定した相対粘度が2.7のポリアミド6である。
(a3)ポリオレフィン:JIS K7210に準拠して測定したMFRが1.2g/10分のプロピレン−エチレンブロック共重合体であって、赤外線分光分析法によって分析したエチレン含量が5.5重量%のものである。
【0062】
(b)成分:
(b1)PPE:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルで、温度30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度[η]が0.30dl/gのものである。
(b2)変性PPE:上の(b1)PPE100重量部に、無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、上の(a-2)ポリアミド4重量部を、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)を用いて、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化し、減圧乾燥して得た変性樹脂である。
(b3)PC:ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、商品名:ユーピロンE−200)である。
【0063】
(c)成分:
(c1)導電性CB(カーボンブラック)添加SEBS1:SEBSは、市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)であり、このSEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS1を得た。
(c2)導電性CB添加SEBS2:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)100部に、不飽和極性化合物としてのエポキシ化アクリルアミド化合物(鐘淵化学工業社製、商品名:カネカAXE)5部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。この変性樹脂につき、赤外線吸収スペクトル法によって測定を行った結果、不飽和極性化合物のグラフト含量は、1.6重量%であった。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS2を得た。
【0064】
(c3)導電性CB添加SEBS3:市販されている無水マレイン酸変性ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1901X)である。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS3を得た。
【0065】
(c4)導電性CB添加SEBS4:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1651)100重量部に、不飽和極性化合物としての無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。この変性樹脂につき、赤外線吸収スペクトル法によって測定を行った結果、不飽和極性化合物のグラフト含有量は、0.8重量%であった。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS4を得た。
【0066】
(c5)変性SEBS:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)100重量部に、不飽和極性化合物としての無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。
【0067】
(d)成分:
(d1)導電性CB:導電性カーボンブラック(ライオン社製、商品名:ケッチンブラック600JD)である。
(d2)PSBN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリルを20重量%と、ポリスチレン80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PS/20BN)である。
【0068】
(d3)PABN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル20重量%と、ポリアミド6が80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PA/20BN)である。
(d4)PBTBN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル20重量%と、ポリブチレンテレフタレートを80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PBT/20BN)である。
【0069】
(e)成分(その他の成分)
(e1)ワラストナイト:繊維長34μm、平均繊維径4μmのワラストナイト(NYCO社製、商品名:NYGLOS4)である。
(e2)PEP36:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(電化社製、商品名:MARK PEP−36)である。
【0070】
(1)溶融剪断粘度比{(c)成分の粘度[C]/(a)成分の粘度[A]}:JIS K7210の参考試験として記載されている方法に準拠し、インストロン・キャピラリ・レオメーターを使用して、(a)成分と(c)成分の溶融剪断粘度を測定し、測定値から算出する方法。
(2)ネットワーク分散形態とインデックスR:ネットワーク分散形態は、試料のペレットから小片を切り出し、その表面を染色し透過型電子顕微鏡によって、上に記載した方法で測定し、インデックスRは、上に記載した方法で測定した。
(3)導電性物質の存在部位:電子顕微鏡によって観察する方法。
(4)MFR(単位:g/10分):JIS K7210に準拠し、温度28℃、荷重5kgの条件下で測定する方法。
【0071】
(5)曲げ弾性率(単位:MPa):ISO R178−1974 Procedure12(JIS K7203)に準拠し、インストロン試験機を使用して測定する方法。
【0072】
(6)耐衝撃強度(単位:J/m):ISO R180−1969(JIS K7110)に準拠し、アイゾット衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用いて測定した。
(7)線膨脹係数{単位:×10-5(1/℃)}:ASTM D696に準拠し、温度23〜80℃の範囲で測定する方法。
(8)導電性(単位:Ωcm):インラインスクリュ−式射出成型機(東芝機械製作所製、型式:IS−90B型)を用い、シリンダ−温度280℃、金型冷却温度80℃で、平板(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成した。この平板の長さ方向(成形時の流れ方向)の両端に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥後に、テスターで抵抗値(RL)を測定し、体積抵抗R=RL×AL/L(ALは断面積、Lは長さである)から体積固有抵抗値Rを計算する方法。
【0073】
[実施例1〜実施例5]
まず、(b)成分、(c)成分および(d)成分の三成分を、表−1に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分に混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットと(a)成分とを、表−1に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44CT)によって、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。
【0074】
上記ペレットを、成形直前まで0.1mmHg、80℃の条件下で48時間乾燥を行い、インラインスクリュ−式射出成形機(東芝機械製作所製、型式:IS−90B型)を用い、シリンダ−温度280℃、金型冷却温度80℃で、試験片を作成した。このなお、作成した試験片は、作成直後にデシケ−タに入れ、23℃の温度で4〜6日間静置した後、上に記載した評価試験に供した。評価結果を、表−1に示した。
【0075】
また、実施例2のペレットにつき、上記(2)に記載の方法で観察された約7.5万倍に拡大したネットワーク分散形態の概略図、図−1に示した。図−1において、aは結晶性熱可塑性樹脂部分、bは非晶性熱可塑性樹脂部分、cはゴム状樹脂と導電性物質の混合物部分であり、(c)成分はネットワ−ク構造を形成していることが観察された。
【0076】
【表1】
【0077】
[比較例1〜比較例2]
まず、(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の四成分を、表−2に記載した割合で秤量し、表−2に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44CT)によって、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、評価試験を行った。評価結果を、表−2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
表−1および表−2より、つぎのことが分かる。
(1)相互に不均一に混合する(a)成分と(b)成分が、(c)成分中でネットワーク形態を呈し、かつ、(d)成分が実質的に(b)成分および/または(c)成分中に存在する実施例の熱可塑性樹脂組成物は、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性に優れている(実施例1〜実施例5参照)。
(2)これに対して、(d)成分がおもに(a)成分中に粒状に分散して存在している比較例1および比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、流動性と耐衝撃性に劣る(
(3)さらに、(d)成分が(c)成分中に存在しても、(a)成分と(b)成分が、(c)成分中でネットワーク形態を呈しない比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、流動性と導電性に劣る。
【0080】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に優れた効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れている。
2.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性に優れている。
3.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、導電性に優れているので、静電塗装が適用される自動車用部品製造用として好適である。
4.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、流動性、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性などの総てにおいて優れ、かつ、バランスしているので、これらが要求される製品製造用の材料として、広範囲に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の樹脂組成物についての約7.5万倍に拡大したネットワーク分散形態の概略図である。
【符号の説明】
a:ポリアミドからなる部分
b:PPEからなる部分
c:ゴム状樹脂と導電性物質の混合物部分
【産業上の利用分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、寸法安定性(寸法精度、低線膨張率などと同じ意味である)、耐衝撃性、剛性などが優れ、かつ、導電性や帯電防止性などの電気的性質に優れた熱可塑性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車は軽量化による燃費の向上を目的とし、自動車部品の樹脂化が急速に進んでいる。すなわち、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール(ハンドル)、トリムなどの内装部品、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの外装部品のほか、従来金属で製造されていたバンパー、ファイシヤ、フェンダー、ドアパネルおよびボディー(一部分)なども、各種樹脂材料で製造されるようになった。
【0003】
このような自動車部品に用いられる樹脂材料としては、例えば、RIM(Reaction Injection Molding)・ウレタン、複合ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリアミドなどの無機物強化プラスチック、ポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド物(アロイと呼称されることもある)、ポリフェニレンエーテル(PPE)とポアイアミド(PA)とのブレンド物などが挙げられる。
【0004】
自動車部品の中でも、フェイシア、フェンダーおよびドアパネルに用いられる樹脂材料は、従来の樹脂製部品と比較して、例えばさらに高いレベルの性能が要求されるようになってきた。(1)耐衝撃性:衝突時のエネルギーを外形を変形することによって吸収し、その後回復する特性や、低温時の衝撃破壊が延性を示す特性、(2)寸法安定性(低線膨張率):塗装後の樹脂成形品が高温環境下で使用される際に、塗膜の剥離や塗装面に微細な亀裂が生じ、外観や意匠性が悪化する。また、樹脂製大型成形品を他の材質、例えば木材、金属などの成形品と併用する場合、高温使用環境下では熱膨張が異なるために、寸法差や噛み合い不良という問題が生じる。これらはいずれも、樹脂成形品と他の材料との線膨張率に差があることに原因がある。(3)導電性:樹脂成形品の表面に静電塗装法によって塗装する際には、樹脂パネルに電気を流し、それと反対の電荷を付与した塗料と吹き付けるので、樹脂パネルは導電性を有することが要求される。
【0005】
従来の自動車部品製造用樹脂材料では、高温における寸法精度(線膨張係数)、優れた耐衝撃性、静電塗装が可能な優れた導電性などの総ての特性を付与することは困難であった。これら要求される特性の中の耐衝撃性は、例えばエラストマーを多量配合することにより上させることができるが、高温における寸法精度が悪化する。そこで、エラストマーの配合量を少ない量に抑制して衝撃強度を向上させる手法として、一般にモルホロジーの改良がある。
【0006】
寸法安定性、耐衝撃性および剛性などがバランスに優れた樹脂材料として、例えば特開平7−18188号公報に、ネットワーク形態を有する熱可塑性樹脂組成物が提案されており、また、特開2002−105343号公報には、結晶性樹脂、非結晶性樹脂およびゴム状重合体が特定の分散形態を有する熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【0007】
さらに、導電性を付与した樹脂材料が検討され、PPEとPAとのブレンド物のミクロ形態が海−島構造を形成し、PAよりなる海相にカーボンブラックを選択的に含有させ、少量のカーボンブラックによって導電性を向上させる手法が提案されている(特開平2−20811号公報参照)。しかし、本発明者らの実験によれば、樹脂材料の導電性は向上するが、成形加工性が大幅に低下することが分かった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−18188号公報
【特許文献2】
特開2002−105343号公報
【特許文献3】
特開平2−20811号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況にあって、上記諸欠点を改良し、成形加工性を低下させず、高温での寸法精度が優れ、低温における耐衝撃性と剛性とのバランスが優れた成形品が得られ、同時に優れた導電性を発揮する成形品が得られる樹脂組成物を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成したものである、すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.高温での寸法精度が優れた成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
2.低温での耐衝撃性と剛性とのバランスが優れた成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
3.優れた導電性を発揮する成形品が得られる樹脂組成物を提供すること。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、結晶性熱可塑性樹脂{(a)成分}、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂{(b)成分}、(a)成分と(b)成分と不均一混合するゴム状樹脂{(c)成分}、および導電性材料{(d)成分}からなる熱可塑性樹脂組成物において、(c)成分は(a)成分および/または(b)成分中でネットワーク形態を形成し、かつ、(c)成分が実質的に(a)成分および/または(b)成分の界面に存在し、さらに、(d)成分が実質的に(b)成分および/または(c)成分中に存在することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
以下、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を構成する(a)成分、(b)成分、(c)成分の熱可塑性樹脂は、一般に、加熱することにより、成形品に成形できる程度に溶融して可塑性を発揮する樹脂を意味する。以下に、具体例を示す。
【0012】
1.(a)成分(結晶性熱可塑性樹脂):
(a)成分は、結晶性熱可塑性樹脂を意味する。結晶性熱可塑性樹脂とは、明確に結晶構造または結晶化可能な分子構造を有し、非ガラス様特性を示す熱可塑性樹脂であり、測定可能な融解熱を有し明確な融点を示すものをいう。融点および融解熱は、示差走査熱量測定装置、例えば、パーキン・エルマー(PERKIN-ELMER)社製、DSC−IIを用いて測定することができる。すなわち、この装置を用いて測定される融解熱が、1カロリー/グラム以上のものを、結晶性熱可塑性樹脂と定義する。融解熱および融点は、示差走査熱量測定装置を用いて、1分間当り10℃の昇温速度で、試料を予測される融点以上の温度に加熱し、次に試料を1分間当り10℃の速度で降温し、20℃まで冷却し、そのまま約1分間放置した後、再び1分間当り10℃の速度で加熱昇温することにより測定することができる。融解熱は、昇湿と降温のサイクルで測定した値が、実験誤差範囲内で一定値となるものを採用する。
【0013】
(a)成分である結晶性熱可塑性樹脂の具体例としては、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネートなどが挙げられる。以下、(a)成分を詳細に説明する。
【0014】
(a1) (a)成分の例としての飽和ポリエステル樹脂には、種々のポリエステルが挙げられる。飽和ポリエステルは、ジカルボン酸類、その低級アルキルエステル類、酸ハライド類または酸無水物誘導体と、グリコール類または二価フェノール類とを縮合させて製造する熱可塑性ポリエステル樹脂をいう。ジカルボン酸類は、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸のいずれであってもよい。具体例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p,p´−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフエノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、または2,7−ナフタリンジカルボン酸、またはこれらのカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0015】
グリコール類は、脂肪族グリコール類または芳香族グリコール類のいずれであってもよい。脂肪族グリコール類としては、炭素数2〜12個の直鎖アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテングリコール、1,6−へキセングリコール、1,1,2−ドデカメチレングリコールなどが挙げられる。また、芳香族グリコール類としては、p−キシリレングリコールが挙げられ、二価フェノ一ルとしては、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンまたはこれらの化合物のアルキル置換誘導体が挙げられる。他の適当なグルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールも挙げられる。
【0016】
他の好ましい飽和ポリエステル樹脂としては、ラクトンの開環重合によるポリエステル樹脂も挙げられる。例えば、ポリピバロラクトン、ポリ(ε一カプロラクトン)などである。さらに他の好ましいポリエステルとしては、溶融状態で液晶を形成する樹脂(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)としての液晶ポリエステルが挙げられる。液晶ポリエステルは市販されており、市販品としてはイーストマンコダック社のX7G、ダートコ社のザイダー(Xyder)、住友化学社のエコノール、セラニーズ社のペクトラなどが挙げられる。
【0017】
以上、挙げた飽和ポリエステル樹脂の中で(a)成分として好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、または液晶性ポリエステルなどである。
【0018】
上に挙げた飽和ポリエステル樹脂の粘度は、フェノールと1,1,2,2−テトラクロルエタンとを、重量比で60対40の混合液中、20℃で測定した固有粘度が0.5〜5.0dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.5dl/g未満であると耐衝撃性が不足し、5.0dl/g以上では成形性に難があり、いずれも好ましくない。上記固有粘度の範囲では1.0〜4.0dl/gがさらに好ましく、中でも特に好ましいのは2.0〜3.5dl/gである。
【0019】
(a2) (a)成分の例としてのポリアミド樹脂は、樹脂の主鎖に−CO−NH−結合を有し、加熱溶融できるものである。その代表的なものとしては、ポリアミド−4、ポリアミド−6、ポリアミド−6・6、ポリアミド−4・6、ポリアミド−12、ポリアミド−10など挙げられる。その他、公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸などのモノマー成分を含む低結晶性および非晶性のポリアミドなどが挙げられる。好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド−6、またはポリアミド6・6であり、中でもポリアミド−6が特に好ましい。
【0020】
上記ポリアミド樹脂は、温度25℃、98%濃硫酸中で測定した相対粘度が2.0〜8.0の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.0未満であると機械的強度が劣り、8.0を越えると成形性が劣り、いずれも好ましくない。
【0021】
(a3) (a)成分の例としてのポリオレフィン樹脂は、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体、α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体とのランダム、グラフトまたはブロックなどの共重合体、これらオレフィン系重合体に酸化、ハロゲン化、スルホン化などの処理を施したものであり、少なくとも部分的にポリオレフィンに由来する結晶性を示すものであり、結晶化度は20%以上のものをいう。これらポリオレフィン樹脂は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などが挙げられる。α−オレフィンと共重合可能な他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和カルボン酸、またはその誘導体類、酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類、ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン類、ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類などが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン樹脂は、従来から知られている方法による重合、または変性などにより得られるが、市販されている製品群から適宜選ぶこともできる。ポリオレフィン樹脂の中では、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1などの単独重合体、またはこれらを主成分とする共重合体が好ましい。中でも特に、結晶性プロピレン系重合体、すなわち結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィンブロックまたはランダム共重合体、これらの結晶性プロピレン重合体とα−オレフイン系ゴム、すなわちゴム状の複数のα−オレフィンよりなる共重合体、または複数のα−オレフィンと非共役ジエンとの混合物が、機械的物性バランスの観点から好ましい。
【0024】
上記結晶性プロピレン系重合体、またはこれらとα−オレフィン系ゴムを含む混合物は、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定したメルトフローレイト(MFR)が、0.01〜250g/10分の範囲が好ましい。MFRの値が0.01g/10分より低い範囲では成形加工性に難があり、250g/10分より高い範囲では機械的物性バランスのレベルが低く、いずれも好ましくない。上記MFRの範囲では、0.05〜150g/10分がより好ましく、中でも0.1〜50g/10分の範囲が特に好ましい。これらの中には、高分子量のものをラジカル発生剤、例えば有機過酸化物などの存在下で加熱処理により分子量を変化させて、MFRを上記範囲に調節したものも含まれる。
【0025】
上記に挙げた以外の結晶性熱可塑性樹脂の例としては、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。(a)成分としての結晶性熱可塑性樹脂として好ましいのは、(a1)飽和ポリエステル樹脂、(a2)ポリアミド樹脂、(a3)ポリオレフィン樹脂などであり、中でも特に好ましいのは、(a1)飽和ポリエステル樹脂、(a2)ポリアミド樹脂などである。上記結晶性熱可塑性樹脂は、2種以上の混合物であってもよい。
【0026】
2.(b)成分(非晶性熱可塑性樹脂):
(b)成分は、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂を意味する。(b)成分の非晶性熱可塑性樹脂とは、一般にガラス様の性質をもち、加熱した際にガラス転移温度を示すものをいう。非晶性熱可塑性樹脂は、明確な融点や測定可能な融解熱を示さないが、ゆっくり冷却する場合には多少の結晶性を示すものを含み、また、本発明の効果を大きく損なわない範囲で結晶性を示すものも含むものとする。ガラス転移温度、融点および融解熱は、示差走査熱量測定装置を用い、上に記載した方法で測定することができる。すなわち、上に記載した方法で測定される融解熱が、1カロリー/グラム未満のものを、非晶性熱可塑性樹脂と定義する。(b)成分のガラス転移温度は、50℃以上が好ましい。
【0027】
(b)成分の具体例としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族非晶性ポリアミド、ケイ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリ(アルキル)アクリレートなどが挙げられる。以下、(b)成分を詳細に説明する。
【0028】
(b1) (b)成分の具体例としてのPPEは、下記の一般式(I)で示される構造を有する化合物の単独重合体または共重合体をいう。
【0029】
【化1】
【0030】
一般式(I)において、Q1は各々ハロゲン原子、第一級または第二級アルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、もしくはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、Q2は各々水素原子、ハロゲン原子、第一級または第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、もしくはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、mは10以上の整数を表す。Q1およびQ2の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−へキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−または4−メチルペンチル、もしくはヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec-ブチルまたは1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1はアルキル基またはフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2は水素原子である。
【0031】
好適なPPEの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものであり、好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体が挙げられる。分子量、溶融粘度、および/または、耐衝撃性などの特性を改良する特別な分子構成部分を含むPPEも、また好適である。これら多くの好適なPPEの単独重合体、またはランダム共重合体は、特許公報、一般技術文献に記載され、提案されている。
【0032】
好適なPPEの固有粘度は、クロロホルム中、30℃の温度で測定した値が0.2〜0.8dl/gの範囲のものが好ましい。固有粘度が0.2dl/g未満では樹脂組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/g以上では樹脂組成物の成形性と成形品外観に難が生じ、いずれも好ましくない。上記固有粘度の範囲では、0.2〜0.5dl/gがさらに好ましく、中でも好ましいのは0.25〜0.4dl/gのものである。
【0033】
(b2) (b)成分としてのPCは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどをいう。中でも好ましいのは、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン、スルフィドまたはスルホキサイド系などのビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートは、ハロゲンで置換されたビスフェノール類からなるものであってもよい。
【0034】
芳香族ポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度から換算した粘度平均分子量で、1万〜4万の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が1万未満であると、樹脂組成物の機械的強度が劣り、4万を越えると樹脂組成物の成形性が劣り、いずれも好ましくない。粘度平均分子量の好ましい範囲は、2万〜4万である。
【0035】
(b)成分(非晶性熱可塑性樹脂)の種類は、上に例示したとおりである。上に例示した(b)成分の中でも好ましいのは、PPE、PCおよびポリスチレン系樹脂であり、中でも特に好ましいのは、PPEである。(b)成分は、2種類以上の混合物であってもよい。
【0036】
3.(c)成分(ゴム状重合体):
(c)成分は、(a)成分および/または(b)成分と不均一混合する熱可塑性樹脂であって、ゴム状重合体を意味する。ゴム状重合体は、好ましいのは、ASTMD882に準拠して測定した引張弾性率が5000kg/cm2以下のものである。ゴム状重合体としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体(S−Bブロック共重合体)の水素添加物、ポリオレフィン系ゴム状共重合体が挙げられる。ゴム状重合体は、(a)成分および/または(b)成分と相溶性を有するのが好ましい。特に前者は、(a)成分および(b)成分と相溶性を向上させる目的で、ポリオレフィン系ゴム状共重合体に他の単量体をグラフト共重合や、ブロック共重合させたものが好ましい。
【0037】
(c1) (c)成分としてのS−Bブロック共重合体の水素添加物は、ビニル芳香族化合物重合体ブロックSと共役ジエン化合物重合体ブロックBとからなるブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。そのブロック共重合体の水素添加物は、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖ブロックSと共役ジエン化合物に由来する連鎮ブロックBとを、各々少なくとも一個有する構造を持ち、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック化合物共重合体のブロックBの脂肪族不飽和基が、水素化によって少なくされたブロック共重合体である。
【0038】
ブロックSおよびブロックBの配列は、線状構造を呈するもの、または分岐構造(ラジカルテレブロック)を呈するものなどを含んでいてもよい。また、これら構造を呈するものの一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これらのうちで線状構造をなすものが好ましく、ジブロック構造を呈するものがより好ましい。ビニル芳香族化合物として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンであり、さらに好ましくは、スチレンである。共役ジエン化合物としては、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0039】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物において、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲がより好ましい。これらブロック共重合体における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が、水素添加されたものであってもよい。
【0040】
これらの水素添加ブロック共重合体は、それらの分子量の目安として、25℃における濃度15重量%のトルエン溶融粘度の値が、10cps〜30000cpsの範囲のものが好ましい。この値が10cps未満では、樹脂組成物の機械的強度レベルが低く好ましくなく、30000cpsより大きいと樹脂組成物の成形加工性に難点を生じ、いずれも好ましくない。より好ましいトルエン溶融粘度の値は30cps〜10000cpsである。
【0041】
(c2) (c)成分としてのポリオレフィン系ゴム状共重合体としては、エチレン・プロピレン系ゴム状共重合体、およびエチレン・ブテン系ゴム状共重合体であり、具体的には、エチレンとプロピレン、およびエチレン・ブテンを主成分とする無定型ランダムゴム状共重合体(EPR、EBR)などであり、これに少量の非共役ジエンを共重合させたゴム状共重合体(EPDM、EBDM)である。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1、4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0042】
これらエチレン・プロピレン系ゴム状共重合体は、塩化バナジュウム、バナジュウムオキシクロリドなどのバナジュウム化合物とトリエチルアルミニュウムセスキクロリドなどの、有機アルミニュウム化合物とからなるバナジュウム系触媒を用いる重合法によって、製造することができる。このような触媒系によって製造されたゴム状共重合体は、一般に、ランダム性の良好なものであり、結晶性はほとんど示さず、結晶化度は0〜20%の範囲となる。
【0043】
また、上記の(c2)ポリオレフィン系ゴム状共重合体にグラフト共重合、ブロック共重合させることができる他の単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸類、またはエンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2、3−ジカルボン酸、もしくはこれらの誘導体などの脂環式カルボン酸類、またはグリシジル基と(メタ)アクリレ−ト基とを同一分子内に持つ化合物類、グリシジルオキシ基とアクリルアミド基とを同一分子内に持つ化合物類、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体、およびブチルグリシジルマレートなどの含エポキシ化合物類が挙げられる。上記他の単量体をグラフト共重合やブロック共重合させる方法としては、パーオキサイド、電離放射線、紫外線などを利用する方法が挙げられる。
【0044】
4.(a)成分と(c)成分の溶融剪断粘度比
(a)成分と(c)成分とは、それぞれの溶融剪断粘度比は特に制限されるものではないが、(a)成分の溶融剪断粘度を[A]、(c)成分の溶融剪断粘度を[C]とするとき、両者の比{[A]/[C]}が1.0未満であり、より好ましいのは0.9以下であり、特に好ましいのは0.85以下であり、とりわけ好ましくは0.8以下である。なお、本発明で溶融剪断粘度とは、JIS K7210の参考試験として記載されている方法、すなわち、溶融した樹脂を一定速度で毛細管から押出した時の剪断粘度(ずり粘度)をいう。具体的には、高架式フローテスター(インストロン・キャピラリー・レオメーター)を使用し、例えば、シリンダー温度280℃、ノズル径1mm、ノズル長さ10mmに設定し、押出速度を変化させて測定することができる。溶融剪断粘度は、剪断速度を50〜300
sec-1のとして測定する。
【0045】
5.(d)成分(導電性材料)
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に含まれる(d)成分は、導電性材料である。導電性材料としては、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリル、カーボンファイバーの粉砕物、銅、ニッケル、亜鉛などの金属粉、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆した無機または有機化合物、イオン性や非イオン性などの有機界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤などが挙げられる。中でも、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好適である。
【0046】
導電性材料として好ましい導電性カーボンブラックは、ペイントなどに着色目的で加えて顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態をしているもので、ケッチンブラックとして市販されているので、容易に入手することができる。
【0047】
導電性材料として好ましい中空炭素フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが、フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nm、フィブリル外径が3.5〜70nm、アスペクト比が5以上のものが好ましい。フィブリル外径が3.5nm未満では樹脂中への分散性に劣り、70nmを越えると樹脂組成物の導電性が不十分であり、いずれも好ましくない。また、アスペクト比が5未満では、樹脂組成物の導電性が不十分であり、好ましくない。
【0048】
上記物性の中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4663230号明細書に詳しく記載されている。その製法は、上記公表公報や米国特許明細書に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素などの含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解により生じた炭素を、遷移金属含有粒子を起点として繊維状に成長させる方法が挙げられる。このような中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社よりグラファイト・フィブリルという商品名で市販されているので、容易に入手できる。
【0049】
(d)成分は、(a)成分、(b)成分または(c)成分とあらかじめ混合することができる。中でも、(c)成分とあらかじめ混合するのが好ましい。混合方法は特に限定されるものではなく、ドライブレンド法、溶液混合法、溶融混練法などのいずれの方法でもよい。中でも好ましいのは、溶融混練法である。溶融混練法によるときは、単軸押出機、多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーなどの溶融混練機を使用することができる。
【0050】
6.付加成分{(e)成分}
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、他の付加的成分を添加することができる。他の付加的成分としては、異なる熱可塑性樹脂同士を相溶させる相溶化剤のほか、熱可塑性樹脂添加剤として知られている酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤、各種着色剤、これらの分散剤などが挙げられる。さらに、剛性、耐熱性、寸法精度などを向上させる有機・無機充填剤、補強剤、特にガラス繊維、マイカ、タルク、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられる。場合によっては、有機過酸化物を添加することができる。
【0051】
7.構成成分の組成比
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の四成分によって構成されるが、四成分の合計量を100重量%とした場合、(a)成分を5〜95重量%、(b)成分を5〜95重量%、(c)成分を10〜60重量%、(d)成分を0.1〜20重量%とするのが好ましい。(a)成分が5重量%未満では、寸法安定性(線膨張率)および剛性が不満足であり、95重量%を超えると寸法安定性(線膨張率)および衝撃強度が不満足となる。(b)成分5重量%未満では、寸法安定性(線膨張率)および剛性が不満足であり、95重量%を超えると寸法安定性(線膨張率)および衝撃強度が不満足となる。(c)成分が10重量%未満では、寸法安定性および衝撃強度が不満足であり、60重量%を超えると寸法安定性および剛性が不足する。(d)成分が0.1重量%未満では、導電性および帯電防止性が不十分であり、20重量%を超えると衝撃強度および成形性が劣り、好ましくない。
【0052】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に占める四成分の好ましい割合は、(a)成分が15〜80重量%、(b)成分が7〜70重量%、(c)成分が15〜55重量%、(d)成分は0.5〜16重量%であり、中でも特に好ましい割合は、(a)成分が20〜70重量%、(b)成分が10〜50重量%、(c)成分が20〜45重量%、(d)成分が1〜13重量%である。
【0053】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物では、(c)成分を(a)成分と(b)成分の界面に存在させることが必要であり、(c)成分の80重量%以上を、さらに95%以上を(a)成分と(b)成分の界面に存在させるのが好ましい。(c)成分を(a)成分と(b)成分の界面に存在させることにより、最終樹脂組成物の耐衝撃性と寸法安定性(線膨張率)を向上させることができる。また、(d)成分を(b)成分および/または(c)成分の中に存在させることが必要である。(d)成分を、(b)成分および/または(c)成分の中に存在させることによって、樹脂組成物から得られる成形品の導電性および帯電防止性を向上させることができる。(d)成分を(b)成分および/または(c)成分の中に存在させるには、所定量の(d)成分を(b)成分および/または(c)成分に溶融・混練する方法によればよい。
【0054】
8.熱可塑性樹脂組成物の調製
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物の調製法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)まず所定量の(d)成分を(b)成分および/または(c)成分に溶融・混練し、ついでこれに(a)成分、さらに要すれば付加成分を所定量混合し、溶融・混練する方法が挙げられる。溶融混練機としては、一軸押出機、多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。また、(2)各成分を適当な溶媒に溶解または分散させ、(d)成分が(b)成分および/または(c)成分に含まれるような順序で、溶液混合法する方法が挙げられる。さらに、(2)(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、さらに要すれば付加成分を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練機で溶融・混練する方法が挙げられる。
【0055】
9.モルフォロジー的な特徴
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物は、(c)成分が(a)成分および/または(b)成分中でネットワークの形態で存在する。本発明においてネットワークの形態とは、(a)成分および/または(b)成分の中に、(c)成分がネットワーク{連続した網または連続した海を形成し、(a)成分および/または(b)成分が不連続の島を形成する}を形成している形態をいう。ネットワークの形態は、例えば、成形品または溶融・混練により得られたペレットから小片を切り出し、その表面をRuO4(酸化ルテニウム)またはOsO4(酸化オスミウム)によって染色した後、ウルトラミクロトーム(ライヘルト社製、ウルトラカットN)を用いて超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、NJEM100CX)によって観察することができる。
【0056】
本発明に係る熱可塑製樹脂組成物は、電子顕微鏡で観察した写真を画像処理することにより、一辺1μmの正方形内に存在し、(c)成分のネットワークで閉鎖されたマトリックス領域の数であるmを計測し、式[I]で算出されるインデックスRの平均値が0.9以下の形態を有する。インデックスRの平均値が0.9を超えると樹脂組成物から得られる成形品の導電性および帯電防止性が低下し好ましくない。Rの平均値は、好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下である。
【0057】
【数2】
【0058】
ここで、式[A]におけるmの算出方法について述べる。上記した電子顕微鏡で観察した写真につき、画像処理解析装置(日本ヴィオニクス社製、スピカ2)により、熱可塑性樹脂の分散形態を二値化し、一辺が1μmの正方形内に存在する(c)成分のネットワークで閉鎖されている閉鎖領域mを算出する。このmの値を式[I]に入れ、Rを算出することができる。この解析をペレットの代表的な区域について行い、その平均値を求め、ネットワーク構造のインデックスRの値とする。
【0059】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、導電性、帯電防止性、剛性および耐衝撃性などに優れているので、静電塗装が適用される自動車用部品の製造用材料として、好適に使用される。これら部品を製造する際には、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によることができる。成形法としては、例えば、押出成形法、中空成形法、回転成形法、積層成形法、圧縮成形法、押出成形法、熱成形法などが挙げられる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下に記載の例に限定されるものではない。以下に記載の例において、使用した各成分の略号、物性などの詳細は次のとおりである。なお、以下に記載の例において、配合量は重量部を意味し、得られた熱可塑性樹脂組成物についての評価試験は、下記の方法で行った。
【0061】
(a)成分:
(a1)PBT:飽和ポリエステル(鐘紡社製、ポリブチレンテレフタレート、商品名:128)である。
(a2)ポリアミド:JIS K6810に準拠して測定した相対粘度が2.7のポリアミド6である。
(a3)ポリオレフィン:JIS K7210に準拠して測定したMFRが1.2g/10分のプロピレン−エチレンブロック共重合体であって、赤外線分光分析法によって分析したエチレン含量が5.5重量%のものである。
【0062】
(b)成分:
(b1)PPE:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルで、温度30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度[η]が0.30dl/gのものである。
(b2)変性PPE:上の(b1)PPE100重量部に、無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、上の(a-2)ポリアミド4重量部を、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)を用いて、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化し、減圧乾燥して得た変性樹脂である。
(b3)PC:ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、商品名:ユーピロンE−200)である。
【0063】
(c)成分:
(c1)導電性CB(カーボンブラック)添加SEBS1:SEBSは、市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)であり、このSEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS1を得た。
(c2)導電性CB添加SEBS2:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)100部に、不飽和極性化合物としてのエポキシ化アクリルアミド化合物(鐘淵化学工業社製、商品名:カネカAXE)5部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。この変性樹脂につき、赤外線吸収スペクトル法によって測定を行った結果、不飽和極性化合物のグラフト含量は、1.6重量%であった。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS2を得た。
【0064】
(c3)導電性CB添加SEBS3:市販されている無水マレイン酸変性ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1901X)である。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS3を得た。
【0065】
(c4)導電性CB添加SEBS4:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1651)100重量部に、不飽和極性化合物としての無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。この変性樹脂につき、赤外線吸収スペクトル法によって測定を行った結果、不飽和極性化合物のグラフト含有量は、0.8重量%であった。この変性SEBSに導電性CB(後記d1成分)を最終的に得られる樹脂組成物に対し2重量%となる割合とし、溶融混練して導電性CB添加SEBS4を得た。
【0066】
(c5)変性SEBS:市販されているビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)100重量部に、不飽和極性化合物としての無水マレイン酸(市販されている、試薬グレード)2重量部、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン(化薬ヌーリー社製、商品名:パーカドックス14)0.1部とを、スーパーミキサーによって十分に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数200rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットをアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して得た変性樹脂である。
【0067】
(d)成分:
(d1)導電性CB:導電性カーボンブラック(ライオン社製、商品名:ケッチンブラック600JD)である。
(d2)PSBN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリルを20重量%と、ポリスチレン80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PS/20BN)である。
【0068】
(d3)PABN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル20重量%と、ポリアミド6が80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PA/20BN)である。
(d4)PBTBN:外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル20重量%と、ポリブチレンテレフタレートを80重量%とよりなるマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PBT/20BN)である。
【0069】
(e)成分(その他の成分)
(e1)ワラストナイト:繊維長34μm、平均繊維径4μmのワラストナイト(NYCO社製、商品名:NYGLOS4)である。
(e2)PEP36:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(電化社製、商品名:MARK PEP−36)である。
【0070】
(1)溶融剪断粘度比{(c)成分の粘度[C]/(a)成分の粘度[A]}:JIS K7210の参考試験として記載されている方法に準拠し、インストロン・キャピラリ・レオメーターを使用して、(a)成分と(c)成分の溶融剪断粘度を測定し、測定値から算出する方法。
(2)ネットワーク分散形態とインデックスR:ネットワーク分散形態は、試料のペレットから小片を切り出し、その表面を染色し透過型電子顕微鏡によって、上に記載した方法で測定し、インデックスRは、上に記載した方法で測定した。
(3)導電性物質の存在部位:電子顕微鏡によって観察する方法。
(4)MFR(単位:g/10分):JIS K7210に準拠し、温度28℃、荷重5kgの条件下で測定する方法。
【0071】
(5)曲げ弾性率(単位:MPa):ISO R178−1974 Procedure12(JIS K7203)に準拠し、インストロン試験機を使用して測定する方法。
【0072】
(6)耐衝撃強度(単位:J/m):ISO R180−1969(JIS K7110)に準拠し、アイゾット衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用いて測定した。
(7)線膨脹係数{単位:×10-5(1/℃)}:ASTM D696に準拠し、温度23〜80℃の範囲で測定する方法。
(8)導電性(単位:Ωcm):インラインスクリュ−式射出成型機(東芝機械製作所製、型式:IS−90B型)を用い、シリンダ−温度280℃、金型冷却温度80℃で、平板(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成した。この平板の長さ方向(成形時の流れ方向)の両端に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥後に、テスターで抵抗値(RL)を測定し、体積抵抗R=RL×AL/L(ALは断面積、Lは長さである)から体積固有抵抗値Rを計算する方法。
【0073】
[実施例1〜実施例5]
まず、(b)成分、(c)成分および(d)成分の三成分を、表−1に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分に混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44)によって、シリンダー設定温度180℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットと(a)成分とを、表−1に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44CT)によって、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。
【0074】
上記ペレットを、成形直前まで0.1mmHg、80℃の条件下で48時間乾燥を行い、インラインスクリュ−式射出成形機(東芝機械製作所製、型式:IS−90B型)を用い、シリンダ−温度280℃、金型冷却温度80℃で、試験片を作成した。このなお、作成した試験片は、作成直後にデシケ−タに入れ、23℃の温度で4〜6日間静置した後、上に記載した評価試験に供した。評価結果を、表−1に示した。
【0075】
また、実施例2のペレットにつき、上記(2)に記載の方法で観察された約7.5万倍に拡大したネットワーク分散形態の概略図、図−1に示した。図−1において、aは結晶性熱可塑性樹脂部分、bは非晶性熱可塑性樹脂部分、cはゴム状樹脂と導電性物質の混合物部分であり、(c)成分はネットワ−ク構造を形成していることが観察された。
【0076】
【表1】
【0077】
[比較例1〜比較例2]
まず、(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の四成分を、表−2に記載した割合で秤量し、表−2に記載した割合で秤量し、スーパーミキサーによって十分混合し、混合物を得た。ついで、この混合物を二軸押出機(日本製鋼社製、型式:TEX44CT)によって、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数350rpmの混練条件下で溶融混練した後、ペレット化した。このペレットから、実施例1におけると同様の手順で試験片を作成し、評価試験を行った。評価結果を、表−2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
表−1および表−2より、つぎのことが分かる。
(1)相互に不均一に混合する(a)成分と(b)成分が、(c)成分中でネットワーク形態を呈し、かつ、(d)成分が実質的に(b)成分および/または(c)成分中に存在する実施例の熱可塑性樹脂組成物は、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性に優れている(実施例1〜実施例5参照)。
(2)これに対して、(d)成分がおもに(a)成分中に粒状に分散して存在している比較例1および比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、流動性と耐衝撃性に劣る(
(3)さらに、(d)成分が(c)成分中に存在しても、(a)成分と(b)成分が、(c)成分中でネットワーク形態を呈しない比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、流動性と導電性に劣る。
【0080】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に優れた効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れている。
2.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性に優れている。
3.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、導電性に優れているので、静電塗装が適用される自動車用部品製造用として好適である。
4.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、流動性、寸法安定性(線膨張率)、耐衝撃性および導電性などの総てにおいて優れ、かつ、バランスしているので、これらが要求される製品製造用の材料として、広範囲に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の樹脂組成物についての約7.5万倍に拡大したネットワーク分散形態の概略図である。
【符号の説明】
a:ポリアミドからなる部分
b:PPEからなる部分
c:ゴム状樹脂と導電性物質の混合物部分
Claims (3)
- 結晶性熱可塑性樹脂{(a)成分}、(a)成分と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂{(b)成分}、(a)成分と(b)成分と不均一混合するゴム状樹脂{(c)成分}、および導電性材料{(d)成分}からなる熱可塑性樹脂組成物において、(c)成分は(a)成分および/または(b)成分中でネットワーク形態を形成し、かつ、(c)成分が実質的に(a)成分および/または(b)成分の界面に存在し、さらに、(d)成分が実質的に(b)成分および/または(c)成分中に存在することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- (a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の合計を100重量%とするとき、(a)成分5〜95重量%、(b)成分5〜95重量%、(c)成分10〜60重量%、(d)成分0.1〜20重量%である、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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