JP2004196705A - パップ剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】保水性および形態保持性に優れ、温度および湿度の変化に影響されることなく長期に亘り膏体が常に適度な水分、稠度、風合、粘弾性、粘着性を保持し、かつ貼付中においても体温、発汗などによって短期間に水分含量が増減せず、従って乾燥したり、逆に吸湿軟化していわゆるだれ、べとつき現象を起こすことがなく、皮膚に対して刺激の少ないパップ剤を提供する。
【解決手段】(1)水溶性高分子物質および(2)水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを含有する組成物よりなるパップ剤。
【選択図】なし
【解決手段】(1)水溶性高分子物質および(2)水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを含有する組成物よりなるパップ剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保水性、形態保持性に優れ、しかも皮膚に対して悪影響を与えないパップ剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
水性膏体を用いたパップ剤は、打ち身、捻挫などの発熱を伴なう局所の急性炎症に対し、吸熱作用(湿布)によって炎症を抑制し、苦痛を和らげると共に、含まれる水の作用によって薬効成分の皮膚浸透を促進し、治療効果を高める有効な剤型である。このようなパップ剤としては、保水性に優れ、含水率が高く、かつ固化、離水、裏じみなどが生じないこと、保形性に優れ、ダレなどが生じないこと、適度な粘着性および柔軟性を有し、適時簡便に貼るだけですぐに使用できるなどの特性を有していることが望ましい。
【0003】
従来のパップ剤は、カオリン、ゼラチン、グリセリンをベースとしてこれにポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの水溶性高分子物質、有効成分、水などを加えて混練し、ペースト状とした膏体を支持体(例えば布)に塗布したもので、通常保水性を高めるためにグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、尿素や、吸湿性、潮解性の高い塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属などを膏体に配合すると共に、形態保持性を高めるために水溶性高分子物質を多価金属イオン、アルデヒド類、エポキシ化合物などにより一部架橋化することが行なわれている。
【0004】
パップ剤において、保水性および形態保持性の両者を共に良好に維持することは困難である。特に形態保持性を改良するために、水溶性高分子物質を多価金属塩で架橋する場合、その反応速度は極めて速く、部分的に不均一な架橋ゲル化が起こり、均一な膏体が得られず、膏体の支持体に対する塗布工程中で粘度上昇が著しく、均一に塗布できないなどの問題がある。
【0005】
また、従来のパップ剤における膏体はpHが6以上、通常7〜9であるため、サリチル酸エステル類の如き有効成分の安定性が悪く、また皮膚刺激性を有するなどの問題がある。このため、酸性の膏体が望まれるが、従来のパップ剤では、有効成分安定化や皮膚刺激緩和などのために酒石酸、クエン酸などの有機酸または塩酸などの鉱酸を加えてpHを下げて酸性にすると、配合高分子物質(特にゼラチンやアニオン性高分子物質)の粘度が著しく低下してダレや裏じみを生じることになる。
【0006】
従って、酸性のパップ剤の場合は、水溶性高分子物質の架橋ゲル化を充分に行なう必要があるが、pHが6以下の酸性では架橋反応が起こりにくく、起こっても架橋効果が満足しうる程達成できない場合が多い。また、架橋剤を多量にすると膏体が硬くなり、柔軟性や形態追従性が失われることになる。これらのことから、酸性のパップ剤において、保水性および形態保持性を共に満足するものは殆んど存在しなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、保水性および形態保持性に優れ、温度および湿度の変化に影響されることなく長期に亘り膏体が常に適度な水分、稠度、風合、粘弾性、粘着性を保持し、かつ貼付中においても体温、発汗などによって短期間に水分含量が増減せず、従って乾燥したり、逆に吸湿軟化していわゆるダレ、べとつき現象を起こすことのないパップ剤を得るために鋭意研究を行った結果、水溶性高分子物質を含有する膏体に対して、特定の無機粒子を配合することにより、前記目的が効果的に達成されることを知見した。
【0008】
すなわち、本発明者らは、水溶性高分子物質を含有するパップ剤膏体に金属イオン供与体として、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合した場合、酸性領域であっても水溶性高分子物質中の官能基と多価金属イオンとが結合するか或いはキレートを形成し、水溶性高分子物質が架橋されて安定な構造となり、保水性および形態保持性が共に改善されること、しかも架橋化反応がゆっくり起こるので、硬化が均一になり、混練操作が容易となることが見出された。しかも、前記特定の無機粒子を使用した場合、膏体の調製時および保存経過後のいずれも酸性に維持することができ、有効成分(例えばサリチル酸エステル類など)の安定化および皮膚の刺激の緩和に効果を有することも見出された。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記知見に基づいて到達されたものであり、(1)水溶性高分子物質および(2)水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを含有する組成物よりなるパップ剤である。以下、本発明のパップ剤についてさらに具体的に説明する。
【0010】
本発明のパップ剤に配合される水溶性高分子物質としては、通常、パップ剤において使用されているものであれば特に制限されないが、とりわけ多価金属イオンと反応し、架橋する官能基(例えばアミノ基、カルボキシル基など)を含有するものが適している。水溶性高分子物質の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテート共重合体、カルボキシメチルセルロース金属塩、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸金属塩、キサンタンガム、アラビアガムおよびメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体が挙げられ、これらは1種でも2種以上混合しても使用することができる。
【0011】
前記水溶性高分子物質は、パップ剤当り重量で2〜25%、好ましくは3〜20%の割合で配合するのが望ましい。本発明のパップ剤において、前記水溶性高分子物質の架橋のために使用される多価金属イオン共与体は、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しx=0.1〜2.0)]または水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・yMg(OH)2・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しy=1.1〜1.6およびx=0.1〜2.0)](これらを“多価金属イオン供与体”という)である。これらは、1種または2種以上混合して使用することができる。
なお、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しx=0.1〜2.0)]は、既存のジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート[H2N・CH2・COO・Al(OH)2]とは異なる物質である。このことは、X線回折パターンから水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは非晶質であり、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート[H2N・CH2・COO・Al(OH)2]は結晶性物質であることから容易に識別される。
【0012】
前記水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelおよび前記水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、それ自体公知であり市販されている。すなわち、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、「グリシナゲルA(登録商標名)」[協和化学工業(株)製]として、また、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、「グリシナゲルS(登録商標名)」[協和化学工業(株)製]として市販されており、それをそのまま使用することができる。
【0013】前記した多価金属イオン供与体は、パップ剤当り重量で0.05〜10%、好ましくは0.08〜8%の割合で配合される。また、本発明のパップ剤には、薬効(有効)成分およびその他の添加剤成分(保湿改良剤、無機粉末、物性調節剤および水など)が配合されていてもよい。
【0014】
すなわち、薬効成分としては、通常のパップ剤として使用されるものであり、例えばサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、l-メントール、ハッカ油、ユーカリ油、dl-カンフル、ノニル酸ワニリルアミド、ビタミンE、ジフエンヒドラミン、マレイン酸クロルフエニラミン、チモール、フルフエナム酸とその誘導体、メフエナム酸とその誘導体、ジクロフエナツクナトリウム、アスピリン、イブプロフエン、スリンダク、ナプロキセン、ピロキシカム、塩酸チアラミド、フエンブフエン、カプサイシン、唐辛子エキス、唐辛子粉末および唐辛子チンキなどが挙げられ、これらは1種のみならず2種以上併用することができる。これらの薬効成分はパップ剤に対して重量で0.01〜20%、好ましくは0.02〜15%の範囲で配合される。
【0015】
また、パップ剤には保湿改良剤として、通常使用される多価アルコールを配合することができる。かかる多価アルコールとしては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどが例示され、これらはパップ剤に対して重量で3〜50%、好ましくは5〜45%の割合で使用するのが適当である。
【0016】
さらに、無機粉末を粘着力の維持や人体に対する適応性のためにパップ剤に配合することができる。かかる無機粉末としては、例えばカオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、クレイなどがあり、これらはパップ剤当り重量で0〜25%の範囲、好ましくは2〜20%の範囲で配合される。
【0017】
パップ剤の柔軟性、粘着性や形態保持性などの物性調整剤として、さらにグアガム、キサンタンガム、アラビアガム、デンプン誘導体、ポリブテン、ラテックス、酢酸ビニルエマルション、アクリル樹脂エマルションなどの高分子物質を配合することができ、また有効成分の安定配合剤としてラノリン、流動パラフィン、植物油、豚脂、牛脂、高級アルコール、高級脂肪酸、活性剤などが必要に応じ適宜配合される。
【0018】
また、パップ剤には水が重量で10〜75%、好ましくは15〜70%の範囲で添加される。10%より水が少ないと、パップ剤としての効果が発揮されず、また75%よりも水が多いと全体が柔らかくなりすぎ、水が液体としてしみ出してくる恐れがある。本発明のパップ剤は、上記各成分のそれぞれの割合でよく混練してペースト状に調製し、これを紙、織布、不織布またはフィルムなどの支持体上に塗布し、さらに表面に他のフィルムを被覆することにより得られる。
【0019】
【発明の効果】
本発明のパップ剤は、水溶性高分子物質および特定の多価金属イオン供与体の組合せにより、保水性、形態保持性が優れ、湿度や温度の影響によって水のしみ出しや乾燥がなく、粘着力やフィット感がよく、皮膚の刺激が極めて少ない実用性の高いものである。
【0020】
実施例 以下実施例を示し本発明をさらに説明する。実施例中、部とあるのは重量部を意味する。
実施例1 水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel「グリシナゲルA(登録商標名)」1部、カオリン(日局)7部、ポリアクリル酸ナトリウム(登録商標名 アロンビスS)2部およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(登録商標名 CMCダイセル1380)3部を混合機内に入れ、これに濃グリセリン(日局)25部を徐々に加えてペースト状になるまで充分に攪拌して分散、混合する。別に、ゼラチン(登録商標名 ニッピ)3部を水54.5部で膨潤させて50〜60℃で均一液とし、これを上記ペーストに加えて均一になるまで混練する。これを35〜40℃になるまで冷却し、その後界面活性剤(ポリソルベート80、日局)0.5部および薬効成分4部を加えて全体が均一になるまで充分に混合する。
なお、薬効成分4部はサリチル酸メチル(日局)1部、l-メントール(日局)1部、dl-カンフル(日局)1部、マレイン酸クロルフエニラミン(日局)0.5部、および酢酸トコフエロール(日局)0.5部からなるものである。次に、これを展延機で不織布に一定の厚さに展延し、表面をポリエチレンフィルムで覆い、一定の面積に裁断してパップ剤を得、これをアルミニウム箔ラミネート袋に封入して製品とした。
【0021】
上記の各工程においては、容易に基材の均一化がなされ、混練に支障をきたすことはなかった。また、得られたパップ剤は、高温域で保存しても軟化し難く、かつ貼付時の発汗によっても軟化し難く、従って形くずれ、ダレ、べとつきが生じることがなく、長時間の貼付によっても冷感、密着性、弾力性、柔軟性を失わず、固化および分離現象も生じないものであった。
【0022】
次に得られたパップ剤について、下記試験方法にて評価した。評価基準は下記のとおりであった。
(a)試験方法
40±2℃、RH75%に調節した恒温恒湿器に各パップ剤をそれぞれ袋ごと入れ、2週間後に取り出して室温に戻し、開封した後、膏体部分のはみ出し、不織布への滲出(裏じみ)、ポリエチレンフィルムを剥した時のフィルムへの膏体の付着、ヒトの皮膚に貼付し、剥した時の皮膚への膏体の付着をそれぞれ官能検査により評価した。結果を下表1に示す。なお、評価基準は下記のとおりである。
【0023】
(b) 評価基準
1 : 全くなし
2 : わずかにあり
3 : 少量あり
4 : 多量にあり
5 : かなり多量にあり
【0024】
比較例1および2
前記実施例1における水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelの効果を確認するため、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合せず、その代わりに水を添加して比較例1のパップ剤を製造した。また、実施例1の水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelの代わりに酸化マグネシウム0.3部および酸化アルミニウム0.7部を配合した比較例2のパップ剤を製造した。その評価結果を表1にあわせて示した。
【0025】
実施例2
実施例1において、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel 1部の代わりに、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel (・グリシナゲルS・)1部を使用する以外、実施例1と同様にしてパップ剤を製造した。その評価結果を表1にあわせて示した。
【0026】
表1
【0027】
表1の結果により、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合した本発明のパップ剤は、比較例のパップ剤に比べて膏体の凝集性、保形性、保水性などが高く、優れた特性を有するものであることが認められた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、保水性、形態保持性に優れ、しかも皮膚に対して悪影響を与えないパップ剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
水性膏体を用いたパップ剤は、打ち身、捻挫などの発熱を伴なう局所の急性炎症に対し、吸熱作用(湿布)によって炎症を抑制し、苦痛を和らげると共に、含まれる水の作用によって薬効成分の皮膚浸透を促進し、治療効果を高める有効な剤型である。このようなパップ剤としては、保水性に優れ、含水率が高く、かつ固化、離水、裏じみなどが生じないこと、保形性に優れ、ダレなどが生じないこと、適度な粘着性および柔軟性を有し、適時簡便に貼るだけですぐに使用できるなどの特性を有していることが望ましい。
【0003】
従来のパップ剤は、カオリン、ゼラチン、グリセリンをベースとしてこれにポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの水溶性高分子物質、有効成分、水などを加えて混練し、ペースト状とした膏体を支持体(例えば布)に塗布したもので、通常保水性を高めるためにグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、尿素や、吸湿性、潮解性の高い塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属などを膏体に配合すると共に、形態保持性を高めるために水溶性高分子物質を多価金属イオン、アルデヒド類、エポキシ化合物などにより一部架橋化することが行なわれている。
【0004】
パップ剤において、保水性および形態保持性の両者を共に良好に維持することは困難である。特に形態保持性を改良するために、水溶性高分子物質を多価金属塩で架橋する場合、その反応速度は極めて速く、部分的に不均一な架橋ゲル化が起こり、均一な膏体が得られず、膏体の支持体に対する塗布工程中で粘度上昇が著しく、均一に塗布できないなどの問題がある。
【0005】
また、従来のパップ剤における膏体はpHが6以上、通常7〜9であるため、サリチル酸エステル類の如き有効成分の安定性が悪く、また皮膚刺激性を有するなどの問題がある。このため、酸性の膏体が望まれるが、従来のパップ剤では、有効成分安定化や皮膚刺激緩和などのために酒石酸、クエン酸などの有機酸または塩酸などの鉱酸を加えてpHを下げて酸性にすると、配合高分子物質(特にゼラチンやアニオン性高分子物質)の粘度が著しく低下してダレや裏じみを生じることになる。
【0006】
従って、酸性のパップ剤の場合は、水溶性高分子物質の架橋ゲル化を充分に行なう必要があるが、pHが6以下の酸性では架橋反応が起こりにくく、起こっても架橋効果が満足しうる程達成できない場合が多い。また、架橋剤を多量にすると膏体が硬くなり、柔軟性や形態追従性が失われることになる。これらのことから、酸性のパップ剤において、保水性および形態保持性を共に満足するものは殆んど存在しなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、保水性および形態保持性に優れ、温度および湿度の変化に影響されることなく長期に亘り膏体が常に適度な水分、稠度、風合、粘弾性、粘着性を保持し、かつ貼付中においても体温、発汗などによって短期間に水分含量が増減せず、従って乾燥したり、逆に吸湿軟化していわゆるダレ、べとつき現象を起こすことのないパップ剤を得るために鋭意研究を行った結果、水溶性高分子物質を含有する膏体に対して、特定の無機粒子を配合することにより、前記目的が効果的に達成されることを知見した。
【0008】
すなわち、本発明者らは、水溶性高分子物質を含有するパップ剤膏体に金属イオン供与体として、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合した場合、酸性領域であっても水溶性高分子物質中の官能基と多価金属イオンとが結合するか或いはキレートを形成し、水溶性高分子物質が架橋されて安定な構造となり、保水性および形態保持性が共に改善されること、しかも架橋化反応がゆっくり起こるので、硬化が均一になり、混練操作が容易となることが見出された。しかも、前記特定の無機粒子を使用した場合、膏体の調製時および保存経過後のいずれも酸性に維持することができ、有効成分(例えばサリチル酸エステル類など)の安定化および皮膚の刺激の緩和に効果を有することも見出された。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記知見に基づいて到達されたものであり、(1)水溶性高分子物質および(2)水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを含有する組成物よりなるパップ剤である。以下、本発明のパップ剤についてさらに具体的に説明する。
【0010】
本発明のパップ剤に配合される水溶性高分子物質としては、通常、パップ剤において使用されているものであれば特に制限されないが、とりわけ多価金属イオンと反応し、架橋する官能基(例えばアミノ基、カルボキシル基など)を含有するものが適している。水溶性高分子物質の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテート共重合体、カルボキシメチルセルロース金属塩、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸金属塩、キサンタンガム、アラビアガムおよびメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体が挙げられ、これらは1種でも2種以上混合しても使用することができる。
【0011】
前記水溶性高分子物質は、パップ剤当り重量で2〜25%、好ましくは3〜20%の割合で配合するのが望ましい。本発明のパップ剤において、前記水溶性高分子物質の架橋のために使用される多価金属イオン共与体は、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しx=0.1〜2.0)]または水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・yMg(OH)2・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しy=1.1〜1.6およびx=0.1〜2.0)](これらを“多価金属イオン供与体”という)である。これらは、1種または2種以上混合して使用することができる。
なお、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel[Al(OH)3・(NH2CH2COOH)x・nH2O(但しx=0.1〜2.0)]は、既存のジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート[H2N・CH2・COO・Al(OH)2]とは異なる物質である。このことは、X線回折パターンから水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは非晶質であり、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート[H2N・CH2・COO・Al(OH)2]は結晶性物質であることから容易に識別される。
【0012】
前記水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelおよび前記水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、それ自体公知であり市販されている。すなわち、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、「グリシナゲルA(登録商標名)」[協和化学工業(株)製]として、また、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelは、「グリシナゲルS(登録商標名)」[協和化学工業(株)製]として市販されており、それをそのまま使用することができる。
【0013】前記した多価金属イオン供与体は、パップ剤当り重量で0.05〜10%、好ましくは0.08〜8%の割合で配合される。また、本発明のパップ剤には、薬効(有効)成分およびその他の添加剤成分(保湿改良剤、無機粉末、物性調節剤および水など)が配合されていてもよい。
【0014】
すなわち、薬効成分としては、通常のパップ剤として使用されるものであり、例えばサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、l-メントール、ハッカ油、ユーカリ油、dl-カンフル、ノニル酸ワニリルアミド、ビタミンE、ジフエンヒドラミン、マレイン酸クロルフエニラミン、チモール、フルフエナム酸とその誘導体、メフエナム酸とその誘導体、ジクロフエナツクナトリウム、アスピリン、イブプロフエン、スリンダク、ナプロキセン、ピロキシカム、塩酸チアラミド、フエンブフエン、カプサイシン、唐辛子エキス、唐辛子粉末および唐辛子チンキなどが挙げられ、これらは1種のみならず2種以上併用することができる。これらの薬効成分はパップ剤に対して重量で0.01〜20%、好ましくは0.02〜15%の範囲で配合される。
【0015】
また、パップ剤には保湿改良剤として、通常使用される多価アルコールを配合することができる。かかる多価アルコールとしては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどが例示され、これらはパップ剤に対して重量で3〜50%、好ましくは5〜45%の割合で使用するのが適当である。
【0016】
さらに、無機粉末を粘着力の維持や人体に対する適応性のためにパップ剤に配合することができる。かかる無機粉末としては、例えばカオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、クレイなどがあり、これらはパップ剤当り重量で0〜25%の範囲、好ましくは2〜20%の範囲で配合される。
【0017】
パップ剤の柔軟性、粘着性や形態保持性などの物性調整剤として、さらにグアガム、キサンタンガム、アラビアガム、デンプン誘導体、ポリブテン、ラテックス、酢酸ビニルエマルション、アクリル樹脂エマルションなどの高分子物質を配合することができ、また有効成分の安定配合剤としてラノリン、流動パラフィン、植物油、豚脂、牛脂、高級アルコール、高級脂肪酸、活性剤などが必要に応じ適宜配合される。
【0018】
また、パップ剤には水が重量で10〜75%、好ましくは15〜70%の範囲で添加される。10%より水が少ないと、パップ剤としての効果が発揮されず、また75%よりも水が多いと全体が柔らかくなりすぎ、水が液体としてしみ出してくる恐れがある。本発明のパップ剤は、上記各成分のそれぞれの割合でよく混練してペースト状に調製し、これを紙、織布、不織布またはフィルムなどの支持体上に塗布し、さらに表面に他のフィルムを被覆することにより得られる。
【0019】
【発明の効果】
本発明のパップ剤は、水溶性高分子物質および特定の多価金属イオン供与体の組合せにより、保水性、形態保持性が優れ、湿度や温度の影響によって水のしみ出しや乾燥がなく、粘着力やフィット感がよく、皮膚の刺激が極めて少ない実用性の高いものである。
【0020】
実施例 以下実施例を示し本発明をさらに説明する。実施例中、部とあるのは重量部を意味する。
実施例1 水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel「グリシナゲルA(登録商標名)」1部、カオリン(日局)7部、ポリアクリル酸ナトリウム(登録商標名 アロンビスS)2部およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(登録商標名 CMCダイセル1380)3部を混合機内に入れ、これに濃グリセリン(日局)25部を徐々に加えてペースト状になるまで充分に攪拌して分散、混合する。別に、ゼラチン(登録商標名 ニッピ)3部を水54.5部で膨潤させて50〜60℃で均一液とし、これを上記ペーストに加えて均一になるまで混練する。これを35〜40℃になるまで冷却し、その後界面活性剤(ポリソルベート80、日局)0.5部および薬効成分4部を加えて全体が均一になるまで充分に混合する。
なお、薬効成分4部はサリチル酸メチル(日局)1部、l-メントール(日局)1部、dl-カンフル(日局)1部、マレイン酸クロルフエニラミン(日局)0.5部、および酢酸トコフエロール(日局)0.5部からなるものである。次に、これを展延機で不織布に一定の厚さに展延し、表面をポリエチレンフィルムで覆い、一定の面積に裁断してパップ剤を得、これをアルミニウム箔ラミネート袋に封入して製品とした。
【0021】
上記の各工程においては、容易に基材の均一化がなされ、混練に支障をきたすことはなかった。また、得られたパップ剤は、高温域で保存しても軟化し難く、かつ貼付時の発汗によっても軟化し難く、従って形くずれ、ダレ、べとつきが生じることがなく、長時間の貼付によっても冷感、密着性、弾力性、柔軟性を失わず、固化および分離現象も生じないものであった。
【0022】
次に得られたパップ剤について、下記試験方法にて評価した。評価基準は下記のとおりであった。
(a)試験方法
40±2℃、RH75%に調節した恒温恒湿器に各パップ剤をそれぞれ袋ごと入れ、2週間後に取り出して室温に戻し、開封した後、膏体部分のはみ出し、不織布への滲出(裏じみ)、ポリエチレンフィルムを剥した時のフィルムへの膏体の付着、ヒトの皮膚に貼付し、剥した時の皮膚への膏体の付着をそれぞれ官能検査により評価した。結果を下表1に示す。なお、評価基準は下記のとおりである。
【0023】
(b) 評価基準
1 : 全くなし
2 : わずかにあり
3 : 少量あり
4 : 多量にあり
5 : かなり多量にあり
【0024】
比較例1および2
前記実施例1における水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelの効果を確認するため、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合せず、その代わりに水を添加して比較例1のパップ剤を製造した。また、実施例1の水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelの代わりに酸化マグネシウム0.3部および酸化アルミニウム0.7部を配合した比較例2のパップ剤を製造した。その評価結果を表1にあわせて示した。
【0025】
実施例2
実施例1において、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel 1部の代わりに、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gel (・グリシナゲルS・)1部を使用する以外、実施例1と同様にしてパップ剤を製造した。その評価結果を表1にあわせて示した。
【0026】
表1
【0027】
表1の結果により、水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを配合した本発明のパップ剤は、比較例のパップ剤に比べて膏体の凝集性、保形性、保水性などが高く、優れた特性を有するものであることが認められた。
Claims (2)
- (1)水溶性高分子物質および(2)水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelを含有する組成物よりなるパップ剤。
- 水酸化アルミニウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelまたは水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム・アミノ酢酸・Co-Dried Gelの含有量が0.01〜10重量%である請求項1記載のパップ剤。
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WO2009030205A2 (de) * | 2007-09-03 | 2009-03-12 | Sinn Hannsjoerg | Neue gelatine-wirkstoff-konjugate |
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2002
- 2002-12-18 JP JP2002366895A patent/JP2004196705A/ja active Pending
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