JP2004195758A - 金型シェルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】温調パイプの固定による変形防止および該温調パイプの固定強度向上を図った金型シェルと、製造作業に係る時間短縮化および作業簡易化等を可能とした金型シェルの製造方法を提供する。
【解決手段】金型シェル10は、入槽モデルの成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層16と、1次電鋳メッキ層16と温調パイプ14との間に位置する導電性のシート状多孔体18と、シート状多孔体18および温調パイプ14の外面に形成され、該シート状多孔体18を介して1次電鋳メッキ層16と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層20とからなる。相互に一体化した1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、シート状多孔体18および温調パイプ14が固定される。
【選択図】 図1
【解決手段】金型シェル10は、入槽モデルの成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層16と、1次電鋳メッキ層16と温調パイプ14との間に位置する導電性のシート状多孔体18と、シート状多孔体18および温調パイプ14の外面に形成され、該シート状多孔体18を介して1次電鋳メッキ層16と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層20とからなる。相互に一体化した1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、シート状多孔体18および温調パイプ14が固定される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金型シェルおよびその製造方法に関し、更に詳細には、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に敷設して構成される成形型用の金型シェルと、この金型シェルを好適に製造するための製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、乗用車等における乗員室内に設置されるインストルメントパネルの各種車両内装部材では、質感向上および触感向上等を図るために、乗員室内へ露出する外表面に合成樹脂製の表皮材を被着する場合が多い。この表皮材は、真空成形型を使用した真空成形技術により成形されるもの、パウダースラッシュ成形型を使用したパウダースラッシュ成形技術により成形されるもの、スプレー成形型を使用したウレタンスプレー成形技術により成形されるもの等が好適に採用されている。
【0003】
このうち、パウダースラッシュ成形技術に使用される前記パウダースラッシュ成形型は、入槽モデルを使用した公知の電鋳技術に基づいて所要形状に成形されたニッケル製の金型シェルを、その表皮成形面として装着されている。そして、前記金型シェルの背面(表皮成形面の裏側)には、該表皮成形面の温度調整に供される温調パイプが配管され、該温調パイプ内を流通するオイル等の熱媒体の温度調節に基づいて前記表皮成形面の温度調整が行なわれる。すなわち、加熱した熱媒体を前記温調パイプ内に流通させ、前記金型シェルの表皮成形面を例えば250℃程度まで加熱したもとで、パウダースラッシュ成形型を回転させて内部の樹脂粉末を該表皮成形面に接触させ、該樹脂粉末を漸次溶融させながら付着させていく。そして、溶融した樹脂粉末が所要厚に付着したら、冷却した熱媒体を前記温調パイプ内に流通させ、前記金型シェルの表皮成形面を70℃程度まで冷却して該樹脂粉末を硬化させることで、前記表皮成形面の形状および模様が転写された所要厚の表皮材が成形される。ここで前記温調パイプは、該温調パイプがスチール製である場合、前記金型シェルの背面に対して銀ロウで溶接する場合が多い。なお、これに関連する技術は特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−227851号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記銀ロウは溶融温度が600〜700℃であるため、前記金型シェルの背面に対する前記温調パイプの固定に際しては、該銀ロウおよび金型シェルをこれ以上の温度に加熱して溶接作業を行なわなければないない。このため、前記金型シェルの剛性が低いことに起因して(厚みが小さいため)、溶接作業完了後に常温まで冷却した前記銀ロウが収縮することに伴って、該金型シェルに歪みや捻れおよび収縮等が発生する問題を内在していた。このように金型シェルが変形するようになると、当該金型シェルを使用して成形される前記表皮材の成形精度も低くなってしまい、前記車両内装部材の質感にも影響を及ぼす不都合があった。
【0006】
なお前記特許文献1には、前述した問題を解決するために、母型(入槽モデル)で型用電鋳殻(金型シェル)を成形した後、該型用電鋳殻の背面に温度調節管(調温パイプ)を成形(折曲成形)しながら配設すると共に、多数の貫通孔を有しかつ表面に導電性を有する薄状体を前記型用電鋳殻および温度調節管に被覆した後、これら型用電鋳殻および温度調節管に電鋳被覆部を形成することで、該温度調節管の固定を図るようにした固定構造が開示されている。しかしながら、このような温度調節管の固定構造では、前記型用電鋳殻の成形工程と、前記温度調節管の成形・配設作業および前記薄状体の被覆固定作業工程とを同時に進行することができないため、型用電鋳殻の製造時間が長くなってしまう欠点を内在している。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、温調パイプの固定による変形防止および該温調パイプの固定強度向上を図った金型シェルと、製造作業に係る時間短縮化および作業簡易化等を可能とした金型シェルの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、所期の目的を達成するため本発明は、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に固定して構成される成形型用の金型シェルにおいて、
前記入槽モデルの成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層と、
前記温調パイプに付帯させたもとで前記1次電鋳メッキ層の背面を被覆し、これら1次電鋳メッキ層と温調パイプとの間に位置する導電性のシート状多孔体と、
前記シート状多孔体および前記温調パイプの外面に形成され、該シート状多孔体を介して前記1次電鋳メッキ層と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層とからなり、
相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層により、前記シート状多孔体および温調パイプが固定されていることを特徴とする。
【0009】
同じく前記課題を解決して、所期の目的を達成するため別の発明は、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に固定して構成される成形型用の金型シェルの製造方法において、
前記入槽モデルを電解槽に浸漬して1次電鋳加工を行ない、該入槽モデルの成形面に所要厚の1次電鋳メッキ層を成形する一方で、
前記入槽モデルの成形面と同一または略同一形状の成形面を有する配管用モデルを準備し、該成形面に沿って導電性のシート状多孔体を密着的に貼り込むと共に、該シート状多孔体の背面に沿って前記温調パイプを敷設固定し、
前記入槽モデルの成形面で成形された前記1次電鋳メッキ層の背面に前記シート状多孔体を被覆して、該シート状多孔体の背面に前記温調パイプをセットし、
前記温調パイプをセットした前記入槽モデルを再び電解槽に浸漬して2次電鋳加工を行ない、前記シート状多孔体および前記温調パイプの外面に、該シート状多孔体を介して前記1次電鋳メッキ層と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層を成形するようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る金型シェルおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0011】
図1は、本発明の好適実施例に係る金型シェルの構造を概略的に示した説明断面図、図2は、図1のA部拡大図である。本実施例の金型シェル10は、図7に示した入槽モデル30を使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、表皮材等を成形するための表皮成形面(成形面)12の温度調整に供される温調パイプ14を背面に固定して構成されるものが前提とされる。
【0012】
このような実施例の金型シェル10は、前記入槽モデル30の成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層16と、前記温調パイプ14に付帯させたもとで前記1次電鋳メッキ層16の背面を被覆し、これら1次電鋳メッキ層16と温調パイプ14との間に位置する導電性のシート状多孔体18と、前記シート状多孔体18および前記温調パイプ14の外面に形成され、該シート状多孔体18を介して前記1次電鋳メッキ層16と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層20とから構成されている。
【0013】
前記1次電鋳メッキ層16は、後述すると共に図8等に示すように、前記入槽モデル30を使用した「1次電鋳メッキ層成形工程」において該入槽モデル30の成形面32で成形され、例えば厚みt1=2〜3mm程度に設定したニッケル合金製であって、その表面には該成形面32の模様が忠実に転写再現されている。前記厚みt1は、1次電鋳メッキ層成形工程における電鋳加工の所要時間を長短調整することで、これより厚く設定したり或いは薄く設定することが可能である。
【0014】
前記温調パイプ14は、外径=10〜15mm程度、肉厚=1mm程度のスチール管であって、前記表皮成形面12の均一的な温度調整を図り得るように、相互に臨接する温調パイプ14とが適切な間隔で配管されている。この温調パイプ14は、後述すると共に図11等に示すように、別途準備した配管用モデル40を使用した「温調パイプ準備工程」において適宜屈曲加工または湾曲加工等を実施して、該配管用モデル40の成形面42の形状に沿った形状に成形される。前記配管用モデル40の成形面42は、前記入槽モデル30の成形面32と同一または略同一形状に形成されており、この成形面42に沿った形状に予備成形された温調パイプ14は、前記入槽モデル30の成形面32で成形された1次電鋳メッキ層16の背面に沿った形状となっている。
【0015】
前記シート状多孔体18は、例えば図3に示すように、多数の空隙22を有する網目状構造とされているものや、図4に示すように、多数の通孔24を適宜間隔毎に穿設したものである。このうち前者のシート状多孔体18は、例えば極細針金を編んだ金網や、ナイロン、ポリプロピレン等の極細繊維を編んだり溶着した樹脂網等であり、樹脂網等の導電性を有しない材質からなるものは、外表面に導電性材料を塗布したり電気メッキを施す等の公知技術により導電性を付与する。また後者のシート状多孔体18は、肉厚の小さな金属板または樹脂板に多数の通孔を穿設したパンチングシート等であり、樹脂板等の導電性を有しない材質からなるものは、外表面に導電性材料を塗布したり電気メッキを施す等の公知技術により導電性を付与する。何れの形態であっても、前記配管用モデル40の成形面42に形状に沿って好適に成形し易いものとされる。
【0016】
前記2次電鋳メッキ層20は、後述すると共に図14等に示すように、前記入槽モデル30を使用した「2次電鋳メッキ層成形工程」において、前記1次電鋳メッキ層16の背面に被覆した前記シート状多孔体18および該シート状多孔体18に固定した前記温調パイプ14の外面で成形され、例えば厚みt2=2〜3mm程度のニッケル合金製である。この厚みt2は、2次電鋳メッキ層成形工程における電鋳加工時間の所要時間を長短調整することで、これより厚く設定したり或いは薄く設定することが可能である。そして前記2次電鋳メッキ層20は、2次電鋳メッキ層成形工程において成形される際に、前記シート状多孔体18の空隙22または通孔24を介して前記1次電鋳メッキ層16に融着し、該1次電鋳メッキ層16と一体化するようになる。
【0017】
このような実施例の金型シェル10は、図2に示すように、前記シート状多孔体18の空隙22または通孔24を介して相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、前記シート状多孔体18および温調パイプ14の固定が図られる。すなわち温調パイプ14は、1次電鋳メッキ層16と一体化する2次電鋳メッキ層20で略完全に被覆されるようになり、該1次電鋳メッキ層16に対する温調パイプ14の固定強度の向上が図られている。しかも、温調パイプ14と2次電鋳メッキ層20との間に隙間が画成されないので、該温調パイプ14の熱が該2次電鋳メッキ層20へ伝導し易くなると共に、この熱が前記1次電鋳メッキ層16へ伝導され易くなり、金型シェル10における前記表皮成形面12の効率的な温度制御が期待できる。
【0018】
前記実施例の金型シェル10は、例えば図5に示すように、車両内装部材等に採用される表皮材54を成形する表皮成形型であるパウダースラッシュ成形型50の本体52に装着して、該成形型50の表皮成形部として実施に供される。具体的には、前記温調パイプ14に加熱した熱媒体を流通させることで、該温調パイプ14の熱が前記1次電鋳メッキ層16に伝達されて前記表皮成形面12が所要温度に昇温するようになり、このもとで当該成形型50を回転させると、本体52の内部に投入してある樹脂粉末Pが加熱されている該表皮成形面12に接触して漸次溶融しつつ付着するようになる。そして、溶融した樹脂が所要厚に付着した時点で、前記温調パイプ14に冷却した熱媒体を流通させて前記表皮成形面12を冷却することで、該樹脂が硬化して所要厚の表皮材54が成形される。
【0019】
次に、前述のように構成された本実施例の金型シェル10を製造する方法につき、詳細に説明する。本実施例の金型シェルの製造方法は、図6に概略図示するように、前記入槽モデル30を利用して前記1次電鋳メッキ層16を成形する「1次電鋳メッキ層成形工程」と、前記配管用モデル40を利用して前記温調パイプ14の成形を行なう「温調パイプ準備工程」と、前記入槽モデル30を利用して前記2次電鋳メッキ層20を成形する「2次電鋳メッキ層成形工程」との、3工程から構成されている。そして、前記「1次電鋳メッキ層成形工程」と「温調パイプ準備工程」とは、夫々異なるモデル30,40を使用して実施されるため、夫々の工程を同時に進行することが可能となっている。
【0020】
図7は、1次電鋳メッキ層成形工程において前記1次電鋳メッキ層16を成形するために実施される入槽モデル30の概略断面図、図8は、この入槽モデル30を使用して成形面32に1次電鋳メッキ層16を成形している状態を示した説明断面図である。前記入槽モデル30は、公知技術であるシリコン反転技術に基づいて表皮モデルから成形された熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等)を材質としたもので、前記成形面32は導電処理(銀鏡反応処理等により導電膜を付与する処理)を施してある。なお電鋳加工は、公知技術であるから、ここでは詳細な図示および説明は省略する。
【0021】
このような入槽モデル30を使用した1次電鋳メッキ層成形工程は、該入槽モデル30を所謂カソード電極として図示しない電鋳装置の電解槽内に浸漬したもとで、所要の設定時間に亘って1次電鋳加工を実施するものである。この1次電鋳加工を所要時間に亘って実施することで、前記入槽モデル30の成形面32にニッケルが漸次析出させて、該成形面32に所要厚の1次電鋳メッキ層16を成形する(図8)。そして、所要厚の1次電鋳メッキ層16の成形が完了したら、前記入槽モデル30を前記電解槽から一旦取出す。
【0022】
図9は、温調パイプ準備工程において前記温調パイプ14を所要形状に成形するために実施される配管用モデルの概略断面図である。この配管用モデル40は、前記入槽モデル30の成形面32と同一または略同一形状に形成したした成形面42を有しており、例えば適宜剛性を有する金属製または合成樹脂製とされている。なお配管用モデル40は、シリコン反転技術に基づいて前記入層モデル30を製作する基準型をそのまま使用して簡単に製作可能であり、専用の基準型を別途製作して準備する必要がないため型製作費用が嵩むことがない。
【0023】
このような配管用モデル40を使用した温調パイプ準備工程は、先ず図10に示すように、該配管用モデル40の成形面42に沿って導電性の前記シート状多孔体18を密着的に貼込む。なお、前記成形面42にアンダーカット部位がある場合や、該成形面42が複雑な凹凸形状となっている場合には、前記シート状多孔体18の正確な成形および円滑な脱型のために、該シート状多孔体18を複数枚に分割するようにしてもよい。
【0024】
前記シート状多孔体18の貼込み作業が完了したら、図11に示すように、該シート状多孔体18の背面に沿って前記温調パイプ14を適宜成形しながら敷設固定する。この際に前記温調パイプ14は、成形前には略真直状を呈しているので、成形面42の凹凸形状に応じて所要部位を適宜に屈曲させたり湾曲させる等の加工を施すことで、その全長に亘って前記シート状多孔体18の背面に密着するようにする。なお、シート状多孔体18に対する温調パイプ14の固定は、接着剤による接着形態や貼着剤による貼着形態、またはスポット的な溶接による溶着形態等とされる。
【0025】
前記温調パイプ14の成形および敷設固定が完了したら、図12に示すように、該温調パイプ14およびこれに付帯させた該シート状多孔体18を一体的に脱型する。これにより成形された前記温調パイプ14は、前記配管用モデル40の成形面42と略同一形状に予備成形されており、従って前記入槽モデル30の成形面32と略同一形状を呈している。
【0026】
前記1次電鋳メッキ層成形工程において前記入槽モデル30の成形面32での1次電鋳メッキ層16の成形が完了し、かつ前記温調パイプ準備工程において温調パイプ14の成形およびシート状多孔体18に対する該温調パイプ14の固定が完了したら、図13〜図15に示すように2次電鋳メッキ層成形工程を実施する。この2次電鋳メッキ層成形工程では、先ず図13(a)に示すように、前記入槽モデル30の成形面32で成形された前記1次電鋳メッキ層16の背面に、前記温調パイプ14に付帯させた前記シート状多孔体18を装着して該1次電鋳メッキ層16を被覆する。これによりシート状多孔体18の背面、すなわち前記1次電鋳メッキ層16の背面に、該シート状多孔体18を介して前記温調パイプ14がセットされる(図13(b))。このとき、前記温調パイプ14が既に予備成形されているため、1次電鋳メッキ層16に対するシート状多孔体18および該温調パイプ14のセットは短時間で行なうことができる。また、温調パイプ14との接触により、1次電鋳メッキ層16を傷つけることもない。
【0027】
そして、1次電鋳メッキ層16の背面に対して前記温調パイプ14のセットが完了したら、該温調パイプ14をセットした入槽モデル30を、カソード電極として再び図示しない前記電鋳装置における電解槽内へ浸漬したもとで、所要の設定時間に亘って2次電鋳加工を実施する。この2次電鋳加工を所要時間に亘って実施することで、前記シート状多孔体18および前記温調パイプ14の外面にニッケルが漸次析出させて、所要厚の2次電鋳メッキ層20を成形する(図14)。このとき2次電鋳メッキ層20は、前記シート状多孔体18の前記空隙22または通孔24を介して前記1次電鋳メッキ層16と融着するようになり、これら1次電鋳メッキ層16と2次電鋳メッキ層20とが一体化するようになる一方、該シート状多孔体18および温調パイプ14を全体的に被覆する。
【0028】
そして、所要厚の2次電鋳メッキ層20の成形が完了したら、前記入槽モデル30を前記電解槽から取出し、製造された金型シェル10を該入槽モデル30から脱型することで製造作業が完了する(図15)。このような実施例の製造方法に基づいて製造された本実施例の金型シェル10は、前述したように、相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、前記温調パイプ14が該1次電鋳メッキ層16の背面に好適に固定されるようになる。
【0029】
このような実施例に係る金型シェルの製造方法では、前記温調パイプ14の配管・固定に際して、1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20が高温に晒されることがないので、該温調パイプ14の固定後に金型シェル10に歪みや曲げおよび撓み等の変形が生ずることがない。従って、この金型シェル10を装着した前記パウダースラッシュ成形型50によって成形される前記表皮材54に、成形精度が低下する等の不都合が発生することがない。
【0030】
また、本実施例に係る金型シェルの製造方法では、前記1次電鋳メッキ層16を成形する前記1次電鋳メッキ層成形工程と、前記温調パイプ14の成形およびシート状多孔体18に対する該温調パイプ14の固定を行なう前記温調パイプ準備工程とを、別工程で同時に進行させることが可能であるから、前記1次電鋳メッキ層成形工程の完了と同時に成形された1次電鋳メッキ層16の背面に前記温調パイプ14を短時間でセットでき、引続いて前記2次電鋳メッキ層成形工程を実施することができる。これにより、従来の製造方法よりも金型シェル10の製造時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る金型シェルによれば、シート状多孔体を介して相互に一体化した1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層により、前記シート状多孔体および温調パイプの固定が図られ、殊に温調パイプ14が2次電鋳メッキ層で略完全に被覆されるようになるので、1次電鋳メッキ層に対する該温調パイプの固定強度が好適に向上する有益な効果を奏する。しかも、温調パイプと2次電鋳メッキ層との間に隙間が画成されないので、該温調パイプの熱が該2次電鋳メッキ層へスムーズに伝導すると共に、この熱が1次電鋳メッキ層へ伝導されるようになり、成形面の効率的な温度制御が期待できる等の利点がある。
【0032】
また、別の発明に係る金型シェルの製造方法によれば、温調パイプの配管・固定に際して、1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層が高温に晒されることがないので、該温調パイプの固定後に金型シェルに歪みや曲げおよび撓み等の変形が生ずることがない有益な効果を奏する。従って、この金型シェルの成形精度が低下する不都合が発生することがない。
また、本願の金型シェルの製造方法では、1次電鋳メッキ層を成形する工程と前記温調パイプを成形する工程とを、別工程で同時に進行させることが可能であるから、前記1次電鋳メッキ層の成形完了と同時に該1次電鋳メッキ層の背面に成形された温調パイプを短時間でセットでき、引続いて2次電鋳メッキ層を成形する工程を実施することができる。従って、従来の製造方法よりも金型シェルの製造時間を大幅に短縮することが可能となる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係る金型シェルの概略断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】1次電鋳メッキ層と温調パネルとの間に位置するシート状多孔体として、多数の空隙を有する網目状構造のものを実施した場合を示した説明斜視図である。
【図4】1次電鋳メッキ層と温調パネルとの間に位置するシート状多孔体として、多数の通孔を適宜間隔毎に穿設したものを実施した場合を示した説明断面図である。
【図5】実施例の金型シェルを装着したパウダースラッシュ成形型を、表皮材を成形している状態で示した断面図である。
【図6】実施例に係る金型シェルの製造方法における各工程を例示したブロック図である。
【図7】1次電鋳メッキ層を成形するために使用される入槽モデルを示した説明断面図である。
【図8】図示しない電鋳装置の電解槽に入槽モデルを浸漬して1次電鋳加工を実施することで、該入槽モデルの成形面で1次電鋳メッキ層を成形している状態を示した説明断面図である。
【図9】温調パイプを成形するために使用される配管用モデルを示した説明断面図である。
【図10】配管用モデルの成形面に沿ってシート状多孔体を密着的に貼り込む状態を示した説明断面図である。
【図11】配管用モデルの成形面に貼り込んだシート状多孔体の背面に沿って温調パイプを成形しながら敷設固定する状態を示した説明断面図である。
【図12】シート状多孔体に固定した温調パイプを、該シート状多孔体と共に配管用モデルから脱型する状態を示した説明断面図である。
【図13】(a)は、入槽モデルの成形面で成形された1次電鋳メッキ層の背面に、温調パイプに付帯させたシート状多孔体を被覆する状態を示した説明断面図、(b)は、シート状多孔体を被覆することで1次電鋳メッキ層の背面に温調パイプがセットされた状態を示した説明断面図である。
【図14】図示しない電鋳装置の電解槽に再び入槽モデルを浸漬して2次電鋳加工を実施することで、シート状多孔体の外面および温調パイプの外面に、前記1次電鋳メッキ層と一体化する2次電鋳メッキ層を成形している状態を示した説明断面図である。
【図15】成形された金型シェルを入槽モデルから脱型する状態を示した説明断面図である。
【符号の説明】
14 温調パイプ
16 1次電鋳メッキ層
18 シート状多孔体
20 2次電鋳メッキ層
22 空隙
24 通孔
30 入槽モデル
32 成形面(入槽モデル30の)
40 配管用モデル
42 成形面(配管用モデル40の)
【発明の属する技術分野】
この発明は、金型シェルおよびその製造方法に関し、更に詳細には、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に敷設して構成される成形型用の金型シェルと、この金型シェルを好適に製造するための製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、乗用車等における乗員室内に設置されるインストルメントパネルの各種車両内装部材では、質感向上および触感向上等を図るために、乗員室内へ露出する外表面に合成樹脂製の表皮材を被着する場合が多い。この表皮材は、真空成形型を使用した真空成形技術により成形されるもの、パウダースラッシュ成形型を使用したパウダースラッシュ成形技術により成形されるもの、スプレー成形型を使用したウレタンスプレー成形技術により成形されるもの等が好適に採用されている。
【0003】
このうち、パウダースラッシュ成形技術に使用される前記パウダースラッシュ成形型は、入槽モデルを使用した公知の電鋳技術に基づいて所要形状に成形されたニッケル製の金型シェルを、その表皮成形面として装着されている。そして、前記金型シェルの背面(表皮成形面の裏側)には、該表皮成形面の温度調整に供される温調パイプが配管され、該温調パイプ内を流通するオイル等の熱媒体の温度調節に基づいて前記表皮成形面の温度調整が行なわれる。すなわち、加熱した熱媒体を前記温調パイプ内に流通させ、前記金型シェルの表皮成形面を例えば250℃程度まで加熱したもとで、パウダースラッシュ成形型を回転させて内部の樹脂粉末を該表皮成形面に接触させ、該樹脂粉末を漸次溶融させながら付着させていく。そして、溶融した樹脂粉末が所要厚に付着したら、冷却した熱媒体を前記温調パイプ内に流通させ、前記金型シェルの表皮成形面を70℃程度まで冷却して該樹脂粉末を硬化させることで、前記表皮成形面の形状および模様が転写された所要厚の表皮材が成形される。ここで前記温調パイプは、該温調パイプがスチール製である場合、前記金型シェルの背面に対して銀ロウで溶接する場合が多い。なお、これに関連する技術は特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−227851号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記銀ロウは溶融温度が600〜700℃であるため、前記金型シェルの背面に対する前記温調パイプの固定に際しては、該銀ロウおよび金型シェルをこれ以上の温度に加熱して溶接作業を行なわなければないない。このため、前記金型シェルの剛性が低いことに起因して(厚みが小さいため)、溶接作業完了後に常温まで冷却した前記銀ロウが収縮することに伴って、該金型シェルに歪みや捻れおよび収縮等が発生する問題を内在していた。このように金型シェルが変形するようになると、当該金型シェルを使用して成形される前記表皮材の成形精度も低くなってしまい、前記車両内装部材の質感にも影響を及ぼす不都合があった。
【0006】
なお前記特許文献1には、前述した問題を解決するために、母型(入槽モデル)で型用電鋳殻(金型シェル)を成形した後、該型用電鋳殻の背面に温度調節管(調温パイプ)を成形(折曲成形)しながら配設すると共に、多数の貫通孔を有しかつ表面に導電性を有する薄状体を前記型用電鋳殻および温度調節管に被覆した後、これら型用電鋳殻および温度調節管に電鋳被覆部を形成することで、該温度調節管の固定を図るようにした固定構造が開示されている。しかしながら、このような温度調節管の固定構造では、前記型用電鋳殻の成形工程と、前記温度調節管の成形・配設作業および前記薄状体の被覆固定作業工程とを同時に進行することができないため、型用電鋳殻の製造時間が長くなってしまう欠点を内在している。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、温調パイプの固定による変形防止および該温調パイプの固定強度向上を図った金型シェルと、製造作業に係る時間短縮化および作業簡易化等を可能とした金型シェルの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、所期の目的を達成するため本発明は、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に固定して構成される成形型用の金型シェルにおいて、
前記入槽モデルの成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層と、
前記温調パイプに付帯させたもとで前記1次電鋳メッキ層の背面を被覆し、これら1次電鋳メッキ層と温調パイプとの間に位置する導電性のシート状多孔体と、
前記シート状多孔体および前記温調パイプの外面に形成され、該シート状多孔体を介して前記1次電鋳メッキ層と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層とからなり、
相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層により、前記シート状多孔体および温調パイプが固定されていることを特徴とする。
【0009】
同じく前記課題を解決して、所期の目的を達成するため別の発明は、入槽モデルを使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプを背面に固定して構成される成形型用の金型シェルの製造方法において、
前記入槽モデルを電解槽に浸漬して1次電鋳加工を行ない、該入槽モデルの成形面に所要厚の1次電鋳メッキ層を成形する一方で、
前記入槽モデルの成形面と同一または略同一形状の成形面を有する配管用モデルを準備し、該成形面に沿って導電性のシート状多孔体を密着的に貼り込むと共に、該シート状多孔体の背面に沿って前記温調パイプを敷設固定し、
前記入槽モデルの成形面で成形された前記1次電鋳メッキ層の背面に前記シート状多孔体を被覆して、該シート状多孔体の背面に前記温調パイプをセットし、
前記温調パイプをセットした前記入槽モデルを再び電解槽に浸漬して2次電鋳加工を行ない、前記シート状多孔体および前記温調パイプの外面に、該シート状多孔体を介して前記1次電鋳メッキ層と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層を成形するようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る金型シェルおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0011】
図1は、本発明の好適実施例に係る金型シェルの構造を概略的に示した説明断面図、図2は、図1のA部拡大図である。本実施例の金型シェル10は、図7に示した入槽モデル30を使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、表皮材等を成形するための表皮成形面(成形面)12の温度調整に供される温調パイプ14を背面に固定して構成されるものが前提とされる。
【0012】
このような実施例の金型シェル10は、前記入槽モデル30の成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層16と、前記温調パイプ14に付帯させたもとで前記1次電鋳メッキ層16の背面を被覆し、これら1次電鋳メッキ層16と温調パイプ14との間に位置する導電性のシート状多孔体18と、前記シート状多孔体18および前記温調パイプ14の外面に形成され、該シート状多孔体18を介して前記1次電鋳メッキ層16と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層20とから構成されている。
【0013】
前記1次電鋳メッキ層16は、後述すると共に図8等に示すように、前記入槽モデル30を使用した「1次電鋳メッキ層成形工程」において該入槽モデル30の成形面32で成形され、例えば厚みt1=2〜3mm程度に設定したニッケル合金製であって、その表面には該成形面32の模様が忠実に転写再現されている。前記厚みt1は、1次電鋳メッキ層成形工程における電鋳加工の所要時間を長短調整することで、これより厚く設定したり或いは薄く設定することが可能である。
【0014】
前記温調パイプ14は、外径=10〜15mm程度、肉厚=1mm程度のスチール管であって、前記表皮成形面12の均一的な温度調整を図り得るように、相互に臨接する温調パイプ14とが適切な間隔で配管されている。この温調パイプ14は、後述すると共に図11等に示すように、別途準備した配管用モデル40を使用した「温調パイプ準備工程」において適宜屈曲加工または湾曲加工等を実施して、該配管用モデル40の成形面42の形状に沿った形状に成形される。前記配管用モデル40の成形面42は、前記入槽モデル30の成形面32と同一または略同一形状に形成されており、この成形面42に沿った形状に予備成形された温調パイプ14は、前記入槽モデル30の成形面32で成形された1次電鋳メッキ層16の背面に沿った形状となっている。
【0015】
前記シート状多孔体18は、例えば図3に示すように、多数の空隙22を有する網目状構造とされているものや、図4に示すように、多数の通孔24を適宜間隔毎に穿設したものである。このうち前者のシート状多孔体18は、例えば極細針金を編んだ金網や、ナイロン、ポリプロピレン等の極細繊維を編んだり溶着した樹脂網等であり、樹脂網等の導電性を有しない材質からなるものは、外表面に導電性材料を塗布したり電気メッキを施す等の公知技術により導電性を付与する。また後者のシート状多孔体18は、肉厚の小さな金属板または樹脂板に多数の通孔を穿設したパンチングシート等であり、樹脂板等の導電性を有しない材質からなるものは、外表面に導電性材料を塗布したり電気メッキを施す等の公知技術により導電性を付与する。何れの形態であっても、前記配管用モデル40の成形面42に形状に沿って好適に成形し易いものとされる。
【0016】
前記2次電鋳メッキ層20は、後述すると共に図14等に示すように、前記入槽モデル30を使用した「2次電鋳メッキ層成形工程」において、前記1次電鋳メッキ層16の背面に被覆した前記シート状多孔体18および該シート状多孔体18に固定した前記温調パイプ14の外面で成形され、例えば厚みt2=2〜3mm程度のニッケル合金製である。この厚みt2は、2次電鋳メッキ層成形工程における電鋳加工時間の所要時間を長短調整することで、これより厚く設定したり或いは薄く設定することが可能である。そして前記2次電鋳メッキ層20は、2次電鋳メッキ層成形工程において成形される際に、前記シート状多孔体18の空隙22または通孔24を介して前記1次電鋳メッキ層16に融着し、該1次電鋳メッキ層16と一体化するようになる。
【0017】
このような実施例の金型シェル10は、図2に示すように、前記シート状多孔体18の空隙22または通孔24を介して相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、前記シート状多孔体18および温調パイプ14の固定が図られる。すなわち温調パイプ14は、1次電鋳メッキ層16と一体化する2次電鋳メッキ層20で略完全に被覆されるようになり、該1次電鋳メッキ層16に対する温調パイプ14の固定強度の向上が図られている。しかも、温調パイプ14と2次電鋳メッキ層20との間に隙間が画成されないので、該温調パイプ14の熱が該2次電鋳メッキ層20へ伝導し易くなると共に、この熱が前記1次電鋳メッキ層16へ伝導され易くなり、金型シェル10における前記表皮成形面12の効率的な温度制御が期待できる。
【0018】
前記実施例の金型シェル10は、例えば図5に示すように、車両内装部材等に採用される表皮材54を成形する表皮成形型であるパウダースラッシュ成形型50の本体52に装着して、該成形型50の表皮成形部として実施に供される。具体的には、前記温調パイプ14に加熱した熱媒体を流通させることで、該温調パイプ14の熱が前記1次電鋳メッキ層16に伝達されて前記表皮成形面12が所要温度に昇温するようになり、このもとで当該成形型50を回転させると、本体52の内部に投入してある樹脂粉末Pが加熱されている該表皮成形面12に接触して漸次溶融しつつ付着するようになる。そして、溶融した樹脂が所要厚に付着した時点で、前記温調パイプ14に冷却した熱媒体を流通させて前記表皮成形面12を冷却することで、該樹脂が硬化して所要厚の表皮材54が成形される。
【0019】
次に、前述のように構成された本実施例の金型シェル10を製造する方法につき、詳細に説明する。本実施例の金型シェルの製造方法は、図6に概略図示するように、前記入槽モデル30を利用して前記1次電鋳メッキ層16を成形する「1次電鋳メッキ層成形工程」と、前記配管用モデル40を利用して前記温調パイプ14の成形を行なう「温調パイプ準備工程」と、前記入槽モデル30を利用して前記2次電鋳メッキ層20を成形する「2次電鋳メッキ層成形工程」との、3工程から構成されている。そして、前記「1次電鋳メッキ層成形工程」と「温調パイプ準備工程」とは、夫々異なるモデル30,40を使用して実施されるため、夫々の工程を同時に進行することが可能となっている。
【0020】
図7は、1次電鋳メッキ層成形工程において前記1次電鋳メッキ層16を成形するために実施される入槽モデル30の概略断面図、図8は、この入槽モデル30を使用して成形面32に1次電鋳メッキ層16を成形している状態を示した説明断面図である。前記入槽モデル30は、公知技術であるシリコン反転技術に基づいて表皮モデルから成形された熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等)を材質としたもので、前記成形面32は導電処理(銀鏡反応処理等により導電膜を付与する処理)を施してある。なお電鋳加工は、公知技術であるから、ここでは詳細な図示および説明は省略する。
【0021】
このような入槽モデル30を使用した1次電鋳メッキ層成形工程は、該入槽モデル30を所謂カソード電極として図示しない電鋳装置の電解槽内に浸漬したもとで、所要の設定時間に亘って1次電鋳加工を実施するものである。この1次電鋳加工を所要時間に亘って実施することで、前記入槽モデル30の成形面32にニッケルが漸次析出させて、該成形面32に所要厚の1次電鋳メッキ層16を成形する(図8)。そして、所要厚の1次電鋳メッキ層16の成形が完了したら、前記入槽モデル30を前記電解槽から一旦取出す。
【0022】
図9は、温調パイプ準備工程において前記温調パイプ14を所要形状に成形するために実施される配管用モデルの概略断面図である。この配管用モデル40は、前記入槽モデル30の成形面32と同一または略同一形状に形成したした成形面42を有しており、例えば適宜剛性を有する金属製または合成樹脂製とされている。なお配管用モデル40は、シリコン反転技術に基づいて前記入層モデル30を製作する基準型をそのまま使用して簡単に製作可能であり、専用の基準型を別途製作して準備する必要がないため型製作費用が嵩むことがない。
【0023】
このような配管用モデル40を使用した温調パイプ準備工程は、先ず図10に示すように、該配管用モデル40の成形面42に沿って導電性の前記シート状多孔体18を密着的に貼込む。なお、前記成形面42にアンダーカット部位がある場合や、該成形面42が複雑な凹凸形状となっている場合には、前記シート状多孔体18の正確な成形および円滑な脱型のために、該シート状多孔体18を複数枚に分割するようにしてもよい。
【0024】
前記シート状多孔体18の貼込み作業が完了したら、図11に示すように、該シート状多孔体18の背面に沿って前記温調パイプ14を適宜成形しながら敷設固定する。この際に前記温調パイプ14は、成形前には略真直状を呈しているので、成形面42の凹凸形状に応じて所要部位を適宜に屈曲させたり湾曲させる等の加工を施すことで、その全長に亘って前記シート状多孔体18の背面に密着するようにする。なお、シート状多孔体18に対する温調パイプ14の固定は、接着剤による接着形態や貼着剤による貼着形態、またはスポット的な溶接による溶着形態等とされる。
【0025】
前記温調パイプ14の成形および敷設固定が完了したら、図12に示すように、該温調パイプ14およびこれに付帯させた該シート状多孔体18を一体的に脱型する。これにより成形された前記温調パイプ14は、前記配管用モデル40の成形面42と略同一形状に予備成形されており、従って前記入槽モデル30の成形面32と略同一形状を呈している。
【0026】
前記1次電鋳メッキ層成形工程において前記入槽モデル30の成形面32での1次電鋳メッキ層16の成形が完了し、かつ前記温調パイプ準備工程において温調パイプ14の成形およびシート状多孔体18に対する該温調パイプ14の固定が完了したら、図13〜図15に示すように2次電鋳メッキ層成形工程を実施する。この2次電鋳メッキ層成形工程では、先ず図13(a)に示すように、前記入槽モデル30の成形面32で成形された前記1次電鋳メッキ層16の背面に、前記温調パイプ14に付帯させた前記シート状多孔体18を装着して該1次電鋳メッキ層16を被覆する。これによりシート状多孔体18の背面、すなわち前記1次電鋳メッキ層16の背面に、該シート状多孔体18を介して前記温調パイプ14がセットされる(図13(b))。このとき、前記温調パイプ14が既に予備成形されているため、1次電鋳メッキ層16に対するシート状多孔体18および該温調パイプ14のセットは短時間で行なうことができる。また、温調パイプ14との接触により、1次電鋳メッキ層16を傷つけることもない。
【0027】
そして、1次電鋳メッキ層16の背面に対して前記温調パイプ14のセットが完了したら、該温調パイプ14をセットした入槽モデル30を、カソード電極として再び図示しない前記電鋳装置における電解槽内へ浸漬したもとで、所要の設定時間に亘って2次電鋳加工を実施する。この2次電鋳加工を所要時間に亘って実施することで、前記シート状多孔体18および前記温調パイプ14の外面にニッケルが漸次析出させて、所要厚の2次電鋳メッキ層20を成形する(図14)。このとき2次電鋳メッキ層20は、前記シート状多孔体18の前記空隙22または通孔24を介して前記1次電鋳メッキ層16と融着するようになり、これら1次電鋳メッキ層16と2次電鋳メッキ層20とが一体化するようになる一方、該シート状多孔体18および温調パイプ14を全体的に被覆する。
【0028】
そして、所要厚の2次電鋳メッキ層20の成形が完了したら、前記入槽モデル30を前記電解槽から取出し、製造された金型シェル10を該入槽モデル30から脱型することで製造作業が完了する(図15)。このような実施例の製造方法に基づいて製造された本実施例の金型シェル10は、前述したように、相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20により、前記温調パイプ14が該1次電鋳メッキ層16の背面に好適に固定されるようになる。
【0029】
このような実施例に係る金型シェルの製造方法では、前記温調パイプ14の配管・固定に際して、1次電鋳メッキ層16および2次電鋳メッキ層20が高温に晒されることがないので、該温調パイプ14の固定後に金型シェル10に歪みや曲げおよび撓み等の変形が生ずることがない。従って、この金型シェル10を装着した前記パウダースラッシュ成形型50によって成形される前記表皮材54に、成形精度が低下する等の不都合が発生することがない。
【0030】
また、本実施例に係る金型シェルの製造方法では、前記1次電鋳メッキ層16を成形する前記1次電鋳メッキ層成形工程と、前記温調パイプ14の成形およびシート状多孔体18に対する該温調パイプ14の固定を行なう前記温調パイプ準備工程とを、別工程で同時に進行させることが可能であるから、前記1次電鋳メッキ層成形工程の完了と同時に成形された1次電鋳メッキ層16の背面に前記温調パイプ14を短時間でセットでき、引続いて前記2次電鋳メッキ層成形工程を実施することができる。これにより、従来の製造方法よりも金型シェル10の製造時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る金型シェルによれば、シート状多孔体を介して相互に一体化した1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層により、前記シート状多孔体および温調パイプの固定が図られ、殊に温調パイプ14が2次電鋳メッキ層で略完全に被覆されるようになるので、1次電鋳メッキ層に対する該温調パイプの固定強度が好適に向上する有益な効果を奏する。しかも、温調パイプと2次電鋳メッキ層との間に隙間が画成されないので、該温調パイプの熱が該2次電鋳メッキ層へスムーズに伝導すると共に、この熱が1次電鋳メッキ層へ伝導されるようになり、成形面の効率的な温度制御が期待できる等の利点がある。
【0032】
また、別の発明に係る金型シェルの製造方法によれば、温調パイプの配管・固定に際して、1次電鋳メッキ層および2次電鋳メッキ層が高温に晒されることがないので、該温調パイプの固定後に金型シェルに歪みや曲げおよび撓み等の変形が生ずることがない有益な効果を奏する。従って、この金型シェルの成形精度が低下する不都合が発生することがない。
また、本願の金型シェルの製造方法では、1次電鋳メッキ層を成形する工程と前記温調パイプを成形する工程とを、別工程で同時に進行させることが可能であるから、前記1次電鋳メッキ層の成形完了と同時に該1次電鋳メッキ層の背面に成形された温調パイプを短時間でセットでき、引続いて2次電鋳メッキ層を成形する工程を実施することができる。従って、従来の製造方法よりも金型シェルの製造時間を大幅に短縮することが可能となる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係る金型シェルの概略断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】1次電鋳メッキ層と温調パネルとの間に位置するシート状多孔体として、多数の空隙を有する網目状構造のものを実施した場合を示した説明斜視図である。
【図4】1次電鋳メッキ層と温調パネルとの間に位置するシート状多孔体として、多数の通孔を適宜間隔毎に穿設したものを実施した場合を示した説明断面図である。
【図5】実施例の金型シェルを装着したパウダースラッシュ成形型を、表皮材を成形している状態で示した断面図である。
【図6】実施例に係る金型シェルの製造方法における各工程を例示したブロック図である。
【図7】1次電鋳メッキ層を成形するために使用される入槽モデルを示した説明断面図である。
【図8】図示しない電鋳装置の電解槽に入槽モデルを浸漬して1次電鋳加工を実施することで、該入槽モデルの成形面で1次電鋳メッキ層を成形している状態を示した説明断面図である。
【図9】温調パイプを成形するために使用される配管用モデルを示した説明断面図である。
【図10】配管用モデルの成形面に沿ってシート状多孔体を密着的に貼り込む状態を示した説明断面図である。
【図11】配管用モデルの成形面に貼り込んだシート状多孔体の背面に沿って温調パイプを成形しながら敷設固定する状態を示した説明断面図である。
【図12】シート状多孔体に固定した温調パイプを、該シート状多孔体と共に配管用モデルから脱型する状態を示した説明断面図である。
【図13】(a)は、入槽モデルの成形面で成形された1次電鋳メッキ層の背面に、温調パイプに付帯させたシート状多孔体を被覆する状態を示した説明断面図、(b)は、シート状多孔体を被覆することで1次電鋳メッキ層の背面に温調パイプがセットされた状態を示した説明断面図である。
【図14】図示しない電鋳装置の電解槽に再び入槽モデルを浸漬して2次電鋳加工を実施することで、シート状多孔体の外面および温調パイプの外面に、前記1次電鋳メッキ層と一体化する2次電鋳メッキ層を成形している状態を示した説明断面図である。
【図15】成形された金型シェルを入槽モデルから脱型する状態を示した説明断面図である。
【符号の説明】
14 温調パイプ
16 1次電鋳メッキ層
18 シート状多孔体
20 2次電鋳メッキ層
22 空隙
24 通孔
30 入槽モデル
32 成形面(入槽モデル30の)
40 配管用モデル
42 成形面(配管用モデル40の)
Claims (5)
- 入槽モデル(30)を使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプ(14)を背面に固定して構成される成形型用の金型シェルにおいて、
前記入槽モデル(30)の成形面で成形される所要厚の1次電鋳メッキ層(16)と、
前記温調パイプ(14)に付帯させたもとで前記1次電鋳メッキ層(16)の背面を被覆し、これら1次電鋳メッキ層(16)と温調パイプ(14)との間に位置する導電性のシート状多孔体(18)と、
前記シート状多孔体(18)および前記温調パイプ(14)の外面に形成され、該シート状多孔体(18)を介して前記1次電鋳メッキ層(16)と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層(20)とからなり、
相互に一体化した前記1次電鋳メッキ層(16)および2次電鋳メッキ層(20)により、前記シート状多孔体(18)および温調パイプ(14)が固定されている
ことを特徴とする金型シェル。 - 前記シート状多孔体(18)は、多数の空隙(22)を有する網目状構造とされている請求項1記載の金型シェル。
- 前記シート状多孔体(18)は、多数の通孔(24)を適宜間隔毎に穿設したものである請求項1記載の金型シェル。
- 入槽モデル(30)を使用した電鋳技術に基づいて所要形状に成形され、成形面の温度調整に供される温調パイプ(14)を背面に固定して構成される成形型用の金型シェルの製造方法において、
前記入槽モデル(30)を電解槽に浸漬して1次電鋳加工を行ない、該入槽モデル(30)の成形面(32)に所要厚の1次電鋳メッキ層(16)を成形する一方で、
前記入槽モデル(30)の成形面(32)と同一または略同一形状の成形面(42)を有する配管用モデル(40)を準備し、該成形面(42)に沿って導電性のシート状多孔体(18)を密着的に貼り込むと共に、該シート状多孔体(18)の背面に沿って前記温調パイプ(14)を敷設固定し、
前記入槽モデル(30)の成形面(32)で成形された前記1次電鋳メッキ層(16)の背面に前記シート状多孔体(18)を被覆して、該シート状多孔体(18)の背面に前記温調パイプ(14)をセットし、
前記温調パイプ(14)をセットした前記入槽モデル(30)を再び電解槽に浸漬して2次電鋳加工を行ない、前記シート状多孔体(18)および前記温調パイプ(14)の外面に、該シート状多孔体(18)を介して前記1次電鋳メッキ層(16)と一体化する所要厚の2次電鋳メッキ層(20)を成形するようにした
ことを特徴とする金型シェルの製造方法。 - 前記2次電鋳メッキ層(20)を、前記シート状多孔体(18)の空隙(22)または通孔(24)を介して前記1次電鋳メッキ層(16)と一体化させるようにした請求項4記載の金型シェルの製造方法。
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- 2002-12-17 JP JP2002365803A patent/JP2004195758A/ja active Pending
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