JP2004195742A - 光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】DVD−ROMと同等の容量で記録線速が2.5倍速から10倍速以上の記録スピードの範囲においても、十分な変調度が確保され、かつ保存信頼性が高く繰り返し記録特性が良好な光記録媒体を提供する。
【解決手段】透明基板1上に、例えばZnS−SiO2からなる下部保護層2、Ge15Sb85からなる記録層3、ZnS−SiO2からなる上部保護層4、Ag−Pd(1at%)−Cu(1at%)からなる反射層5、を順次スパッタリング法により形成し、反射層5上にスピンコート法により環境保護層6を形成し光記録媒体とする。
【選択図】 図1
【解決手段】透明基板1上に、例えばZnS−SiO2からなる下部保護層2、Ge15Sb85からなる記録層3、ZnS−SiO2からなる上部保護層4、Ag−Pd(1at%)−Cu(1at%)からなる反射層5、を順次スパッタリング法により形成し、反射層5上にスピンコート法により環境保護層6を形成し光記録媒体とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ビームを照射することにより記録層材料に光学的な変化を生じさせ、情報の記録あるいは再生を行なうとともに、書換えが可能な相変化型の光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
相変化材料としては、例えば、GaおよびSbを含む記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1には、記録層を構成する相変化材料が、どのような結晶構造変化(結晶相の変化)をすることによって、異なる反射率に変化したか記載されていない。しかし、本発明者らが検討を行なった結果によれば、結晶粒径の違うGaSb結晶とSb結晶との存在比が異なる2つの相間での相変化、すなわち結晶−結晶状態間の相変化によるものであり、それぞれの結晶の存在比によって反射率が変わることを利用している。なお、この相変化材料にはTe元素は含まれていない。
【0003】
ところが、上記方法では、書きこみ(溶融)、消去を繰り返すことによりGaSbとSbとの相分離が更に進むため、相変化による安定した繰り返し特性を得ることができない。また、反射率が70%程度の値であるため、変調度が小さくなるなどの問題点がある。
上記のように特許文献1の記録媒体は、結晶−結晶状態間の相変化に起因する反射率の変化から情報の記録、再生、消去、再記録を行なう光記録媒体であって、結晶−非晶質間に起因する反射率の変化から情報の記録を行なう本発明の光記録媒体とは異なるものである。
【0004】
また、本発明者らは、DVD−ROMと同容量以上の高密度記録が可能で、更にこの2倍速以上(約7m/s以上)、すなわち具体的には3.0m/sから14m/sの範囲にある高記録線速度で記録を可能とする相変化型光記録媒体と、その記録媒体にCAV(Constant Angular Velocity)記録する方法、あるいは記録媒体の記録半径位置を複数に区切ってCLV(Constant Linear Velocity)記録する記録媒体と、その記録方法に関して既に開示している。(例えば、特許文献2参照)。
上記記録媒体は、SbTeを必須成分とし、これに1種以上の元素を添加した相変化型記録層(特にAgInSbTeからなる組成が好ましい)をレーザ光の照射により結晶相からアモルファス相に変化して記録を行うものである。
【0005】
現在、DVD+RW用の記録材料に用いられているものとしては、CDに採用されているAgInSbTe系記録材料を改良し、高線速記録領域(記録線速度=約8.5m/s)まで記録消去を可能にした相変化材料がある。
AgInSbTe系は、不均一核生成によりマークの端から結晶化が進むため、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、エッジ記録には最適な材料系である。なお、これに対してDVD−RAMで使用されているGeSbTe系は均一核生成により結晶化を起す。
【0006】
不均一核生成による結晶過程はマークサイズに依存し、マーク全部を結晶化させる時間が変るため、マークサイズが小さくなればなるほど、不均一核生成の材料系の方が高速化には有利となる。従って、高密度化に好適である。
このような理由から、GeSbTe系よりもAgInSbTe系の方が高速化には有利であるが高速記録に限界がある。すなわち、AgInSbTe系では、高線速記録領域の記録スピードに対応できるようにするため、CD−RW対応の記録材料よりもSbの含有量を多くしたものが用いられている。
【0007】
しかし、Sbの含有量を多くした高Sb組成比のAgInSbTe系材料は、結晶化スピードが促進されるものの、結晶化温度が低下するという問題がある。この結晶化温度の低下は、記録媒体の保存信頼性の悪化につながることが実験により確認されている。現在、ディスクの保存信頼性の問題は、記録材料中のAgの増加、あるいはGeなどの第5の元素の添加により、実用上問題にならない程度に抑えられている。
【0008】
ところが、更に高線速記録を達成するためにSbの含有量を増加すると、ついにはSbとその他の相とに分相してしまい、記録層は相変化層として機能しなくなってしまう。このときの限界記録スピードは、DVDの記録密度において20m/s前後と推定される。
【0009】
上述のように、現在のDVD系の記録材料に関しては、2.5Xのスピード(記録線速度=約8.5m/s)で記録ができるシステムはすでに市販されているが、更に高速記録の要求が高まってきており、この要求に対応できる記録媒体が求められている。
【0010】
【特許文献1】
特公平3−55892号公報
【特許文献2】
特開2000−322740号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的はDVD−ROMと同等の容量で記録線速が2.5倍速から10倍速以上の記録スピードの範囲においても、十分な変調度が確保され、保存信頼性が高く、しかも繰り返し記録特性が良好な製品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者らは相変化型光記録媒体に使用する記録材料の開発を進めた結果、GeおよびSbの共晶組成近傍の組成で準安定結晶相が得られ、この結晶相を用いた記録層は高速結晶化に好適であり、高融点で室温環境での記録層の安定性が良く、保存信頼性があり、しかも準安定結晶相ではGeSb比が特定の範囲内であれば他の元素を添加しても基本的な結晶構造は変化せず、特にBiを添加することにより、結晶化温度を下げる効果のあることを見出し、本発明に至った。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
請求項1の発明は、相変化記録材料を記録層とし、該記録層が少なくとも1つの準安定結晶相を含む単数または複数の結晶相を有する結晶化状態とアモルファス相からなるアモルファス状態との間の相転移により発現する光学的性質の変化を利用した光記録媒体であって、前記記録層は組成式GeαSbβで表され、α、βはそれぞれ原子比率で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲であることを特徴とする光記録媒体である。
【0014】
請求項1の構成によれば、DVD−ROMと同等の記録容量で、記録線速が従来の8.5m/sを大幅に超えるとともに、2.5m/sから35m/sの広範囲の高記録線速に対応でき、かつ高速記録においても十分な変調度を確保し、繰り返し特性が良好で、保存信頼性にも優れた光記録媒体が提供される。
【0015】
請求項2の発明は、前記記録層の組成式にBiを加えたことを特徴とする光記録媒体である。
【0016】
請求項2の構成によれば、記録層の結晶化温度を下げることができ、初期結晶化が容易な光記録媒体が提供される。
【0017】
請求項3の発明は、前記記録層の結晶化温度は、昇温速度10℃/分において150〜250℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体である。
【0018】
請求項4の発明は、前記記録層の融点は、500〜600℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体である。
【0019】
請求項3および4の構成によれば、長期保管においてもジッタや変調度の変化は小さく保存安定性が良い光記録媒体が提供される。
【0020】
請求項5の発明は、前記記録層は、結晶化状態への相転移において不均一核生成により結晶化することを特徴とする光記録媒体である。
【0021】
請求項5の構成によれば、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、制御性の良いアモルファスマークが形成できる光記録媒体が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、前記のように相変化記録材料を記録層とし、該記録層が少なくとも1つの準安定結晶相を含む単数または複数の結晶相を有する結晶化状態とアモルファス相からなるアモルファス状態との間の相転移により発現する光学的性質の変化を利用した光記録媒体であり、記録層の組成式はGeαSbβで表され、α、βはそれぞれ原子比率(at%)で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲とすることにより、DVD−ROMと同等の容量で高記録スピード(記録線速が2.5倍速から10倍速以上の範囲)においても、十分な変調度が確保され、かつ保存信頼性が高く繰り返し記録特性の良好な光記録媒体を提供するものである。
【0023】
すなわち、本発明者らは、AgInSbTe系と同様な結晶化過程(不均一核生成)を有し、更に高速化に対応できる材料系を実験により検討した結果、光記録媒体の記録層として、組成式がGeαSbβで表記され、α、βはそれぞれ原子比率(at%)で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲である相変化記録材料を用いれば、約35m/sまでの記録スピードにおいても充分な変調度が得られ、更に記録層中の結晶相が準安定結晶相Ge−SbまたはGe−Sb−Bi固溶体単相である相変化記録材料を記録層に用いると、相分離を起こすことなく安定した良好な繰り返し記録特性を達成することが可能なことを見出した。
【0024】
また、上記記録層の結晶化温度が昇温速度10℃/分の条件で150〜250℃で、該記録層の相変化記録材料の結晶とアモルファスとの相変化における、いわゆる相転移の活性化エネルギーが2.0eV以上であり、更に該記録層の融点が500〜600℃である相変化記録材料を用いた光記録媒体は、保存信頼性が優れていることを確認した。
今回、発明者らが見い出したGeSb系材料系は、AgInSbTe系と同様に、不均一核生成により結晶化を起すので、マークエッジがシャープで制御性の良いアモルファスマークを形成することができ、高密度化が進むほど高速化に有利である。
【0025】
また、安定してアモルファスマークを形成し、十分な変調度が取れるようにディスク層構成および構成材料について検討したところ、下記条件の構成が特に変調度が大きく、繰り返し記録特性が良好であることが分った。
すなわち、透明な基板上に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層の順番に成膜した構成の光記録媒体とし、各構成層の膜厚t(nm)は照射するレーザ光の波長をλ(nm)とした場合に、以下のように制御して成膜するものである。
下部保護層 t1 : 0.070 ≦ t1 /λ ≦ 0.16
記録層 t2 : 0.015 ≦ t2 /λ ≦ 0.032
上部保護層 t3 : 0.011 ≦ t3 /λ ≦ 0.040
反射層 t4 : 0.10 ≦ t4 /λ
【0026】
上記本発明の光記録媒体の構成における基板材料としては、通常、ガラス、セラミックスまたは樹脂などが用いられるが、特に樹脂が成形性、コストの点から好適である。樹脂の代表例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、加工性、光学特性等の点からポリカーボネート樹脂が好ましい。また、基板の形状は、ディスク状、カード状またはシート状のいずれであってもよい。
【0027】
下部保護層または上部保護層に用いる材料としては、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボンあるいは、それらの混合物が挙げられる。これらの材料を単体で用いて保護層とすることもできるが、前記材料を混合して保護層としてもよい。なお、保護層には不純物を含んでもよい。ただし、保護層の融点は記録層よりも高いことが必要である。
このような保護層の材料は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
【0028】
反射層としては、Al、Au、Ag、Cuなどの金属材料、またはそれらの合金などを用いることができるが、特に熱伝導率が150W・m-1・Kから450 W・m-1・Kの間である材料を用いることにより、放熱性が良好になって変調度を大きくすることができる。
更に、必要に応じて反射層上に樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂)などの環境保護層を設けてもよい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はなんら実施例に限定されるものではない。
実施例1、比較例1c
〈実施例1の光記録媒体〉
まず、図1に示す本発明の基本的な層構成からなる光記録媒体(メディア)を下記のような条件で作製した。
トラックピッチ0.74μmで深さ400Åの溝を有する厚さ0.6mm、直径20mmφのポリカーボネート製透明基板1上に、SiO2を20mol%含むZnS−SiO2混合ターゲットを用いて下部保護層2を75nmの厚さで形成した後、Ge15Sb85(添字はat%を示す。)ターゲットを用いて記録層3を16nmの厚さで形成した。次いで、記録層3上に下部保護層2と同じターゲットを用いて上部保護層4を12nmの厚さで形成し、この上にAg−Pd(1at%)−Cu(1at%)ターゲットを用いて反射層5(反射放熱層)を150nmの厚さで形成した。なお、上記それぞれの層は、スパッタリング法により順次設けた。更に、反射層5の上には、紫外線硬化樹脂を用いてスピンコート法により環境保護層6(オーバーコート)を設けた。
〈比較例1の光記録媒体〉
実施例1において記録層ターゲットに用いたGe15Sb85に替えて、Ag3In3Sb84Te10(添字はat%を示す。)を用いたほかは、実施例1とまったく同様にして図1に示す層構成で光記録媒体(メディア)を作製した。
【0030】
次に、上記で得られた実施例1および比較例1のメディアに対して、波長が810nmの半導体レーザを照射してそれぞれの初期結晶化を行なった。
初期化したそれぞれのメディアに対して、波長660nm、対物レンズ0.65のピックアップヘッドを用いて、EFM+変調方式によりランダムパターンでオーバーライトの繰り返し(DOW)を行ない、ジッタ(data to clock ジッタ)の変化を調べた。なお、記録線速、記録パワーを8.5m/s(14mW)、17.5m/s(18mw)、35m/s(28mW)の3条件に設定して評価した。結果を図2に示す。
【0031】
評価の結果、実施例1のメディアでは、上記3条件のいずれの記録線速(記録パワー)の場合でも、オーバーライト1000回後もジッタは10%以内であった。なお、変調度は60%以上であった。
これに対して、比較例1の場合、8.5m/s(14mW)ではオーバーライト1000回後でもジッタ10%以内であったが、17.5m/s(18mw)では初回記録できたもののオーバーライトすることはできなかった。更に、35m/s(28mW)ではどのような記録条件にしてもアモルファス化することができなかった(このため、図2に表示されていない)。
また、実施例1のメディアの保存特性について、初期記録した記録媒体を80℃、85%RHで300時間保存した後に初期記録マークを再生して評価した。本発明のメディアは、ジッター、変調度ともほとんど変化はなく良好な保存特性を示した。一方、比較例1のメディアは、室温で1日放置していただけでアモルファスマークが結晶化してしまった。
【0032】
実施例2
前記実施例1において記録層ターゲットに用いたGe15Sb85に替えて、Ge18Sb78 Bi4を用いたほかは、実施例1とまったく同様な方法で図1に示す層構成の光記録媒体(メディア)を作製し、次に得られた記録媒体の初期結晶化を波長が810nmの半導体レーザで行なった。
初期結晶化後の反射率分布を調べたところ、反射率分布が小さく光記録媒体全面が均一に結晶化できていることが分かった。
【0033】
得られたメディアに対して、実施例1と同様にして3条件の記録線速/記録パワーでオーバーライトの繰り返しを行ない、ジッタ(data to clock ジッタ)の変化を調べ評価を行なった。図3に各線速でオーバーライト記録したときのオーバーライト回数(DOW)に対するジッタの変化を示した。
いずれの記録線速(記録パワー)でも、オーバーライト1000回後におけるジッタは10%以内であった。なお、変調度は60%以上であった。また、80℃、85%RHで300時間保存した後に初期記録マークを再生したところ、ジッター、変調度ともほとんど変化はなく、良好な保存特性を示した。
【0034】
実施例3
相変化材料組成としてGe15Sb85、およびGe18Sb78 Bi4の合金ターゲットを用い、それぞれガラス基板上に、スパッタリング法で厚さ約200nmに堆積させて記録層を形成し、各サンプルを作製した。
得られた各サンプルに波長810nm、ビーム径100×11μmの半導体レーザを照射し、初期結晶化を行なった。
それぞれのサンプルについて、示差走査熱量測定器により結晶化温度を測定し、結晶とアモルファス間を相転移するときの記録材料の活性化エネルギーを計算により求めた。なお、結晶化温度は、昇温速度を10℃/分の条件で測定したときの値である。また、示差熱熱重量同時測定器によりそれぞれのサンプルの融点を測定した。比較のため、前記比較例1のAg3In3Sb84Te10に関しても同様の評価を実施した。
【0035】
評価の結果、本発明の相変化材料であるGe15Sb85の場合には、結晶化温度が240℃であり、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは3.8eVであった。また、融点は595℃であった。また、Ge18Sb78 Bi4の場合には、結晶化温度が190℃、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは3.0eVであり、融点は585℃であった。
一方、比較例1のAg3In3Sb84Te10の場合には、結晶化温度が125℃であり、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは1.7eVであった。また、融点は552℃であった。
以上の結果から、本発明の記録媒体に較べて比較例1の保存特性が著しく悪いのは、結晶化温度が低く、しかも結晶とアモルファス間を相転移するときの活性化エネルギーが低いためであることが分かった。
【0036】
実施例4
前記実施例1のメディアに記録線速17.5m/sでEFM+変調方式によりランダムパターンを記録し、透過電子顕微鏡で観察したところ、マーク部はアモルファスとなっており、結晶とマークの境界が明確であることが確認された。また、この材料系(GeSb系)の結晶化のモードは、結晶粒界の観察結果により、マークエッジから結晶化が進む、いわゆる不均一核生成によるものであると推測された。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、組成式GeαSbβ(式中、α、βはそれぞれ原子比率で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲である。)で表される相変化記録材料を記録層とすることにより、GeおよびSbの共晶組成近傍の組成で準安定結晶相が得られ、この結晶相を用いた記録層は高速結晶化に好適で、しかも高融点であるため室温環境での記録層の安定性が良く、保存信頼性のある光記録媒体が提供される。
しかも、準安定結晶相ではGeSb比が特定の範囲内であれば他の元素を添加しても基本的な結晶構造は変化せず、特にBiを添加することにより、結晶化温度を下げる効果があり、初期結晶化が容易な光記録媒体が提供される。
更に、上記記録層の相変化記録材料は、結晶化状態への相転移において不均一核生成により結晶化を起すため、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、制御性の良いアモルファスマークが形成できる光記録媒体が提供される。
従って、本発明の構成によれば、DVD−ROMと同等の記録容量で、高速記録(記録線速:2.5m/sから35m/sの広範囲)おいても十分な変調度を確保し、繰り返し特性が良好で、保存信頼性にも優れた光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における光記録媒体の層構成を示す概略断面図である。
【図2】実施例1および比較例1のメディアに対して線速と記録パワーを変えてオーバーライト記録したときのオーバーライト回数とジッタとの関係を示す図である。
【図3】実施例2のメディアに対して線速と記録パワーを変えてオーバーライト記録したときのオーバーライト回数とジッタとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 下部保護層
3 記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 環境保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ビームを照射することにより記録層材料に光学的な変化を生じさせ、情報の記録あるいは再生を行なうとともに、書換えが可能な相変化型の光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
相変化材料としては、例えば、GaおよびSbを含む記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1には、記録層を構成する相変化材料が、どのような結晶構造変化(結晶相の変化)をすることによって、異なる反射率に変化したか記載されていない。しかし、本発明者らが検討を行なった結果によれば、結晶粒径の違うGaSb結晶とSb結晶との存在比が異なる2つの相間での相変化、すなわち結晶−結晶状態間の相変化によるものであり、それぞれの結晶の存在比によって反射率が変わることを利用している。なお、この相変化材料にはTe元素は含まれていない。
【0003】
ところが、上記方法では、書きこみ(溶融)、消去を繰り返すことによりGaSbとSbとの相分離が更に進むため、相変化による安定した繰り返し特性を得ることができない。また、反射率が70%程度の値であるため、変調度が小さくなるなどの問題点がある。
上記のように特許文献1の記録媒体は、結晶−結晶状態間の相変化に起因する反射率の変化から情報の記録、再生、消去、再記録を行なう光記録媒体であって、結晶−非晶質間に起因する反射率の変化から情報の記録を行なう本発明の光記録媒体とは異なるものである。
【0004】
また、本発明者らは、DVD−ROMと同容量以上の高密度記録が可能で、更にこの2倍速以上(約7m/s以上)、すなわち具体的には3.0m/sから14m/sの範囲にある高記録線速度で記録を可能とする相変化型光記録媒体と、その記録媒体にCAV(Constant Angular Velocity)記録する方法、あるいは記録媒体の記録半径位置を複数に区切ってCLV(Constant Linear Velocity)記録する記録媒体と、その記録方法に関して既に開示している。(例えば、特許文献2参照)。
上記記録媒体は、SbTeを必須成分とし、これに1種以上の元素を添加した相変化型記録層(特にAgInSbTeからなる組成が好ましい)をレーザ光の照射により結晶相からアモルファス相に変化して記録を行うものである。
【0005】
現在、DVD+RW用の記録材料に用いられているものとしては、CDに採用されているAgInSbTe系記録材料を改良し、高線速記録領域(記録線速度=約8.5m/s)まで記録消去を可能にした相変化材料がある。
AgInSbTe系は、不均一核生成によりマークの端から結晶化が進むため、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、エッジ記録には最適な材料系である。なお、これに対してDVD−RAMで使用されているGeSbTe系は均一核生成により結晶化を起す。
【0006】
不均一核生成による結晶過程はマークサイズに依存し、マーク全部を結晶化させる時間が変るため、マークサイズが小さくなればなるほど、不均一核生成の材料系の方が高速化には有利となる。従って、高密度化に好適である。
このような理由から、GeSbTe系よりもAgInSbTe系の方が高速化には有利であるが高速記録に限界がある。すなわち、AgInSbTe系では、高線速記録領域の記録スピードに対応できるようにするため、CD−RW対応の記録材料よりもSbの含有量を多くしたものが用いられている。
【0007】
しかし、Sbの含有量を多くした高Sb組成比のAgInSbTe系材料は、結晶化スピードが促進されるものの、結晶化温度が低下するという問題がある。この結晶化温度の低下は、記録媒体の保存信頼性の悪化につながることが実験により確認されている。現在、ディスクの保存信頼性の問題は、記録材料中のAgの増加、あるいはGeなどの第5の元素の添加により、実用上問題にならない程度に抑えられている。
【0008】
ところが、更に高線速記録を達成するためにSbの含有量を増加すると、ついにはSbとその他の相とに分相してしまい、記録層は相変化層として機能しなくなってしまう。このときの限界記録スピードは、DVDの記録密度において20m/s前後と推定される。
【0009】
上述のように、現在のDVD系の記録材料に関しては、2.5Xのスピード(記録線速度=約8.5m/s)で記録ができるシステムはすでに市販されているが、更に高速記録の要求が高まってきており、この要求に対応できる記録媒体が求められている。
【0010】
【特許文献1】
特公平3−55892号公報
【特許文献2】
特開2000−322740号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的はDVD−ROMと同等の容量で記録線速が2.5倍速から10倍速以上の記録スピードの範囲においても、十分な変調度が確保され、保存信頼性が高く、しかも繰り返し記録特性が良好な製品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者らは相変化型光記録媒体に使用する記録材料の開発を進めた結果、GeおよびSbの共晶組成近傍の組成で準安定結晶相が得られ、この結晶相を用いた記録層は高速結晶化に好適であり、高融点で室温環境での記録層の安定性が良く、保存信頼性があり、しかも準安定結晶相ではGeSb比が特定の範囲内であれば他の元素を添加しても基本的な結晶構造は変化せず、特にBiを添加することにより、結晶化温度を下げる効果のあることを見出し、本発明に至った。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
請求項1の発明は、相変化記録材料を記録層とし、該記録層が少なくとも1つの準安定結晶相を含む単数または複数の結晶相を有する結晶化状態とアモルファス相からなるアモルファス状態との間の相転移により発現する光学的性質の変化を利用した光記録媒体であって、前記記録層は組成式GeαSbβで表され、α、βはそれぞれ原子比率で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲であることを特徴とする光記録媒体である。
【0014】
請求項1の構成によれば、DVD−ROMと同等の記録容量で、記録線速が従来の8.5m/sを大幅に超えるとともに、2.5m/sから35m/sの広範囲の高記録線速に対応でき、かつ高速記録においても十分な変調度を確保し、繰り返し特性が良好で、保存信頼性にも優れた光記録媒体が提供される。
【0015】
請求項2の発明は、前記記録層の組成式にBiを加えたことを特徴とする光記録媒体である。
【0016】
請求項2の構成によれば、記録層の結晶化温度を下げることができ、初期結晶化が容易な光記録媒体が提供される。
【0017】
請求項3の発明は、前記記録層の結晶化温度は、昇温速度10℃/分において150〜250℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体である。
【0018】
請求項4の発明は、前記記録層の融点は、500〜600℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体である。
【0019】
請求項3および4の構成によれば、長期保管においてもジッタや変調度の変化は小さく保存安定性が良い光記録媒体が提供される。
【0020】
請求項5の発明は、前記記録層は、結晶化状態への相転移において不均一核生成により結晶化することを特徴とする光記録媒体である。
【0021】
請求項5の構成によれば、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、制御性の良いアモルファスマークが形成できる光記録媒体が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、前記のように相変化記録材料を記録層とし、該記録層が少なくとも1つの準安定結晶相を含む単数または複数の結晶相を有する結晶化状態とアモルファス相からなるアモルファス状態との間の相転移により発現する光学的性質の変化を利用した光記録媒体であり、記録層の組成式はGeαSbβで表され、α、βはそれぞれ原子比率(at%)で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲とすることにより、DVD−ROMと同等の容量で高記録スピード(記録線速が2.5倍速から10倍速以上の範囲)においても、十分な変調度が確保され、かつ保存信頼性が高く繰り返し記録特性の良好な光記録媒体を提供するものである。
【0023】
すなわち、本発明者らは、AgInSbTe系と同様な結晶化過程(不均一核生成)を有し、更に高速化に対応できる材料系を実験により検討した結果、光記録媒体の記録層として、組成式がGeαSbβで表記され、α、βはそれぞれ原子比率(at%)で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲である相変化記録材料を用いれば、約35m/sまでの記録スピードにおいても充分な変調度が得られ、更に記録層中の結晶相が準安定結晶相Ge−SbまたはGe−Sb−Bi固溶体単相である相変化記録材料を記録層に用いると、相分離を起こすことなく安定した良好な繰り返し記録特性を達成することが可能なことを見出した。
【0024】
また、上記記録層の結晶化温度が昇温速度10℃/分の条件で150〜250℃で、該記録層の相変化記録材料の結晶とアモルファスとの相変化における、いわゆる相転移の活性化エネルギーが2.0eV以上であり、更に該記録層の融点が500〜600℃である相変化記録材料を用いた光記録媒体は、保存信頼性が優れていることを確認した。
今回、発明者らが見い出したGeSb系材料系は、AgInSbTe系と同様に、不均一核生成により結晶化を起すので、マークエッジがシャープで制御性の良いアモルファスマークを形成することができ、高密度化が進むほど高速化に有利である。
【0025】
また、安定してアモルファスマークを形成し、十分な変調度が取れるようにディスク層構成および構成材料について検討したところ、下記条件の構成が特に変調度が大きく、繰り返し記録特性が良好であることが分った。
すなわち、透明な基板上に下部保護層、記録層、上部保護層、反射層の順番に成膜した構成の光記録媒体とし、各構成層の膜厚t(nm)は照射するレーザ光の波長をλ(nm)とした場合に、以下のように制御して成膜するものである。
下部保護層 t1 : 0.070 ≦ t1 /λ ≦ 0.16
記録層 t2 : 0.015 ≦ t2 /λ ≦ 0.032
上部保護層 t3 : 0.011 ≦ t3 /λ ≦ 0.040
反射層 t4 : 0.10 ≦ t4 /λ
【0026】
上記本発明の光記録媒体の構成における基板材料としては、通常、ガラス、セラミックスまたは樹脂などが用いられるが、特に樹脂が成形性、コストの点から好適である。樹脂の代表例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、加工性、光学特性等の点からポリカーボネート樹脂が好ましい。また、基板の形状は、ディスク状、カード状またはシート状のいずれであってもよい。
【0027】
下部保護層または上部保護層に用いる材料としては、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボンあるいは、それらの混合物が挙げられる。これらの材料を単体で用いて保護層とすることもできるが、前記材料を混合して保護層としてもよい。なお、保護層には不純物を含んでもよい。ただし、保護層の融点は記録層よりも高いことが必要である。
このような保護層の材料は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。なかでも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
【0028】
反射層としては、Al、Au、Ag、Cuなどの金属材料、またはそれらの合金などを用いることができるが、特に熱伝導率が150W・m-1・Kから450 W・m-1・Kの間である材料を用いることにより、放熱性が良好になって変調度を大きくすることができる。
更に、必要に応じて反射層上に樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂)などの環境保護層を設けてもよい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はなんら実施例に限定されるものではない。
実施例1、比較例1c
〈実施例1の光記録媒体〉
まず、図1に示す本発明の基本的な層構成からなる光記録媒体(メディア)を下記のような条件で作製した。
トラックピッチ0.74μmで深さ400Åの溝を有する厚さ0.6mm、直径20mmφのポリカーボネート製透明基板1上に、SiO2を20mol%含むZnS−SiO2混合ターゲットを用いて下部保護層2を75nmの厚さで形成した後、Ge15Sb85(添字はat%を示す。)ターゲットを用いて記録層3を16nmの厚さで形成した。次いで、記録層3上に下部保護層2と同じターゲットを用いて上部保護層4を12nmの厚さで形成し、この上にAg−Pd(1at%)−Cu(1at%)ターゲットを用いて反射層5(反射放熱層)を150nmの厚さで形成した。なお、上記それぞれの層は、スパッタリング法により順次設けた。更に、反射層5の上には、紫外線硬化樹脂を用いてスピンコート法により環境保護層6(オーバーコート)を設けた。
〈比較例1の光記録媒体〉
実施例1において記録層ターゲットに用いたGe15Sb85に替えて、Ag3In3Sb84Te10(添字はat%を示す。)を用いたほかは、実施例1とまったく同様にして図1に示す層構成で光記録媒体(メディア)を作製した。
【0030】
次に、上記で得られた実施例1および比較例1のメディアに対して、波長が810nmの半導体レーザを照射してそれぞれの初期結晶化を行なった。
初期化したそれぞれのメディアに対して、波長660nm、対物レンズ0.65のピックアップヘッドを用いて、EFM+変調方式によりランダムパターンでオーバーライトの繰り返し(DOW)を行ない、ジッタ(data to clock ジッタ)の変化を調べた。なお、記録線速、記録パワーを8.5m/s(14mW)、17.5m/s(18mw)、35m/s(28mW)の3条件に設定して評価した。結果を図2に示す。
【0031】
評価の結果、実施例1のメディアでは、上記3条件のいずれの記録線速(記録パワー)の場合でも、オーバーライト1000回後もジッタは10%以内であった。なお、変調度は60%以上であった。
これに対して、比較例1の場合、8.5m/s(14mW)ではオーバーライト1000回後でもジッタ10%以内であったが、17.5m/s(18mw)では初回記録できたもののオーバーライトすることはできなかった。更に、35m/s(28mW)ではどのような記録条件にしてもアモルファス化することができなかった(このため、図2に表示されていない)。
また、実施例1のメディアの保存特性について、初期記録した記録媒体を80℃、85%RHで300時間保存した後に初期記録マークを再生して評価した。本発明のメディアは、ジッター、変調度ともほとんど変化はなく良好な保存特性を示した。一方、比較例1のメディアは、室温で1日放置していただけでアモルファスマークが結晶化してしまった。
【0032】
実施例2
前記実施例1において記録層ターゲットに用いたGe15Sb85に替えて、Ge18Sb78 Bi4を用いたほかは、実施例1とまったく同様な方法で図1に示す層構成の光記録媒体(メディア)を作製し、次に得られた記録媒体の初期結晶化を波長が810nmの半導体レーザで行なった。
初期結晶化後の反射率分布を調べたところ、反射率分布が小さく光記録媒体全面が均一に結晶化できていることが分かった。
【0033】
得られたメディアに対して、実施例1と同様にして3条件の記録線速/記録パワーでオーバーライトの繰り返しを行ない、ジッタ(data to clock ジッタ)の変化を調べ評価を行なった。図3に各線速でオーバーライト記録したときのオーバーライト回数(DOW)に対するジッタの変化を示した。
いずれの記録線速(記録パワー)でも、オーバーライト1000回後におけるジッタは10%以内であった。なお、変調度は60%以上であった。また、80℃、85%RHで300時間保存した後に初期記録マークを再生したところ、ジッター、変調度ともほとんど変化はなく、良好な保存特性を示した。
【0034】
実施例3
相変化材料組成としてGe15Sb85、およびGe18Sb78 Bi4の合金ターゲットを用い、それぞれガラス基板上に、スパッタリング法で厚さ約200nmに堆積させて記録層を形成し、各サンプルを作製した。
得られた各サンプルに波長810nm、ビーム径100×11μmの半導体レーザを照射し、初期結晶化を行なった。
それぞれのサンプルについて、示差走査熱量測定器により結晶化温度を測定し、結晶とアモルファス間を相転移するときの記録材料の活性化エネルギーを計算により求めた。なお、結晶化温度は、昇温速度を10℃/分の条件で測定したときの値である。また、示差熱熱重量同時測定器によりそれぞれのサンプルの融点を測定した。比較のため、前記比較例1のAg3In3Sb84Te10に関しても同様の評価を実施した。
【0035】
評価の結果、本発明の相変化材料であるGe15Sb85の場合には、結晶化温度が240℃であり、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは3.8eVであった。また、融点は595℃であった。また、Ge18Sb78 Bi4の場合には、結晶化温度が190℃、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは3.0eVであり、融点は585℃であった。
一方、比較例1のAg3In3Sb84Te10の場合には、結晶化温度が125℃であり、結晶化温度から求めた活性化エネルギーは1.7eVであった。また、融点は552℃であった。
以上の結果から、本発明の記録媒体に較べて比較例1の保存特性が著しく悪いのは、結晶化温度が低く、しかも結晶とアモルファス間を相転移するときの活性化エネルギーが低いためであることが分かった。
【0036】
実施例4
前記実施例1のメディアに記録線速17.5m/sでEFM+変調方式によりランダムパターンを記録し、透過電子顕微鏡で観察したところ、マーク部はアモルファスとなっており、結晶とマークの境界が明確であることが確認された。また、この材料系(GeSb系)の結晶化のモードは、結晶粒界の観察結果により、マークエッジから結晶化が進む、いわゆる不均一核生成によるものであると推測された。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、組成式GeαSbβ(式中、α、βはそれぞれ原子比率で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲である。)で表される相変化記録材料を記録層とすることにより、GeおよびSbの共晶組成近傍の組成で準安定結晶相が得られ、この結晶相を用いた記録層は高速結晶化に好適で、しかも高融点であるため室温環境での記録層の安定性が良く、保存信頼性のある光記録媒体が提供される。
しかも、準安定結晶相ではGeSb比が特定の範囲内であれば他の元素を添加しても基本的な結晶構造は変化せず、特にBiを添加することにより、結晶化温度を下げる効果があり、初期結晶化が容易な光記録媒体が提供される。
更に、上記記録層の相変化記録材料は、結晶化状態への相転移において不均一核生成により結晶化を起すため、結晶とアモルファスマークの境界がはっきりしており、制御性の良いアモルファスマークが形成できる光記録媒体が提供される。
従って、本発明の構成によれば、DVD−ROMと同等の記録容量で、高速記録(記録線速:2.5m/sから35m/sの広範囲)おいても十分な変調度を確保し、繰り返し特性が良好で、保存信頼性にも優れた光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における光記録媒体の層構成を示す概略断面図である。
【図2】実施例1および比較例1のメディアに対して線速と記録パワーを変えてオーバーライト記録したときのオーバーライト回数とジッタとの関係を示す図である。
【図3】実施例2のメディアに対して線速と記録パワーを変えてオーバーライト記録したときのオーバーライト回数とジッタとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 下部保護層
3 記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 環境保護層
Claims (5)
- 相変化記録材料を記録層とし、該記録層が少なくとも1つの準安定結晶相を含む単数または複数の結晶相を有する結晶化状態とアモルファス相からなるアモルファス状態との間の相転移により発現する光学的性質の変化を利用した光記録媒体であって、前記記録層は組成式GeαSbβで表され、α、βはそれぞれ原子比率で5≦α≦40、60≦β≦95の範囲であることを特徴とする光記録媒体。
- 前記記録層の組成式にBiを加えたことを特徴とする光記録媒体。
- 前記記録層の結晶化温度は、昇温速度10℃/分において150〜250℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
- 前記記録層の融点は、500〜600℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
- 前記記録層は、結晶化状態への相転移において不均一核生成により結晶化することを特徴とする光記録媒体。
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