JP2004195483A - ラミネート缶溶接部補修テープ及びラミネート缶溶接部の補修方法 - Google Patents
ラミネート缶溶接部補修テープ及びラミネート缶溶接部の補修方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】鋼板の少なくとも缶内面となる面にポリプロピレンを主体とする樹脂を被覆したラミネート鋼板からなるラミネート缶の缶胴溶接部内面を補修する補修テープであって、前記補修テープは、厚みが20〜200μmであり、かつ、90℃における弾性率が1.0×109(dyne/cm2)以下の、またはさらに前記変性ポリオレフィン樹脂中の変性ポリプロピレンの比率が50%以上である熱可塑性変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とするラミネート缶溶接部補修テープ。前記補修テープを用いてラミネート缶溶接部を被覆し、次いで補修テープが被覆された前記溶接部を熱融着することを特徴とするラミネート缶溶接部の補修方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン樹脂を被覆したラミネート鋼板からなり、胴部、蓋部、底部で構成され、胴部が溶接によって接合されたラミネート缶の溶接部補修に使用される補修用樹脂テープ、及び前記補修用樹脂テープを用いたラミネート缶溶接部の補修方法に関する。詳しくは溶接するためにポリプロピレン樹脂が被覆されておらず鋼板面が露出した胴溶接部の腐食防止、金属溶出等の防止を目的として胴溶接部に被覆される補修用のテープ、及び前記補修用樹脂テープを用いたラミネート缶溶接部の補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製溶接缶は、食品、非食品問わず保存容器として幅広い用途に使用されている。金属製溶接缶の缶材表面はそのままで用いられることは少なく、例えば塗料塗布やフィルムラミネートにより、缶内外面を錆、傷、汚れ等から保護するための処理が施されている。
【0003】
例えば、ラミネート溶接缶では、まず鋼板に表面保護のためのラミネートを行い、所望のサイズに切断し、次いで切り出されたラミネート鋼板から溶接により円筒状の缶胴部を製造し、その後、缶胴上下に缶蓋を巻き締めて缶体を製造する。
【0004】
ところが、上記製缶工程では、缶銅部の溶接後に、溶接部近傍にはフィルムがのっておらず、下地の鋼板面が露出した状態となってしまい、そのままの状態では缶内容物あるいは外気との接触により露出した鋼板部分が腐食してしまうという問題を有している。
【0005】
現状では、上記問題に対して、腐食防止処理として、下記特許文献に示すような有機樹脂系補修材料を用いた補修が缶胴製造後に実施されている。
【0006】
特許文献1では、缶胴用金属板の両端部と両端部間のラミネートされていない部分とを変性ポリオレフィン系樹脂粉体で溶融被覆して缶胴を形成する溶接缶が記載されている。
【0007】
特許文献2では、溶接缶の側部内面溶接継目をカルボン酸濃度と曇り度を規定した変性オレフィン樹脂で覆う樹脂質被覆が設けられた溶接缶が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−47342号公報
【0009】
【特許文献2】
特公昭63−50265号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの技術も熱融着後の溶接部エッジでのテープ切断での切れ性は、十分ではない。通常、樹脂製のテープを缶胴溶接部に熱融着させて補修した場合、熱を受けて軟化した樹脂テープに張力をかけることにより、溶接部のエッジ部でテープを切断させる方式が取られる。このとき、樹脂テープの切れ性が不足すると、エッジ部でテープを切り損ね、テープが缶胴に残ったり、缶の外面に回り込んでしまうトラブルを発生させ、安定した製缶が行えない。また、溶接部の補修は、鋼板表面への密着力のみならず鋼板上に被覆したポリプロピレン樹脂への密着力も必要であるが、上記技術はいずれも、鋼板上に被覆したポリプロピレン樹脂への密着力が劣っている。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、熱融着後のテープ切断での切れ性及び鋼板上に被覆したポリプロピレン樹脂への密着力に優れたラミネート缶溶接部補修テープ及びラミネート缶溶接部の補修方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、補修テープとして変性ポリオレフィンを用い、テープ厚みと弾性率を規定し、またはさらに、変性ポリオレフィン中の変性ポリプロピレンの比率を規定することにより、熱融着後のテープの切れ性が改善され、鋼板上に被覆したポリプロピレン樹脂への密着力も向上することを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は以下を特徴とする。
【0013】
[1]鋼板の少なくとも缶内面となる面にポリプロピレンを主体とする樹脂を被覆したラミネート鋼板からなるラミネート缶の缶胴溶接部内面を補修する補修テープであって、前記補修テープは、厚みが20〜200μmであり、かつ、90℃における弾性率が1.0×109(dyne/cm2)以下の熱可塑性変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とするラミネート缶溶接部補修テープ。
【0014】
[2]上記[1]において、前記変性ポリオレフィン樹脂中の変性ポリプロピレンの比率が50%以上であることを特徴とするラミネート缶溶接部補修テープ。
【0015】
[3]上記[1]または[2]に記載の補修テープを用いてラミネート缶溶接部を被覆し、次いで補修テープが被覆された前記溶接部を熱融着することを特徴とするラミネート缶溶接部の補修方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の補修テープを構成する熱可塑性変性ポリオレフィン樹脂としては、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で変性することで接着性(熱接着性)を付与したものが好ましい。この変性に使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、酸ハライドなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、無水マレイン酸を用いるのが一般的である。が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂を用いない場合、鋼板との密着力が不足するだけでなく、熱軟化性も劣るため切れ性を確保するのも困難であるため、本発明において、補修テープとして用いるポリオレフィン樹脂は上述のような変性ポリオレフィン樹脂とする。
【0018】
さらに、変性ポリオレフィン中の変性ポリプロピレンの比率は50%以上が好ましい。変性ポリプロピレンの比率が50%未満では、鋼板上に被覆したポリプロピレンラミネート樹脂との相溶性が低くなるため、テープとラミネート樹脂との間の密着力が不足する場合がある。
【0019】
本発明のテープを構成する変性ポリオレフィン樹脂の90℃における弾性率は1.0×109(dyne/cm2)以下とする。90℃における弾性率が1.0×109(dyne/cm2)超えでは、熱融着後のテープ切断での切れ性が劣ってしまう。
【0020】
さらに、本発明のテープを構成するポリエステル樹脂は、上記弾性率を有するとともに、厚みを20〜200μmとする。厚みが20μm未満では、補修すべき溶接部段差での被覆性が確保できない。一方、200μm超えでも、厚くなることで切れにくくなるばかりか、いたずらにコスト高を招くだけである。
【0021】
本発明のラミネート缶溶接部補修テープは、上記で構成されるものであれば、単層構造であっても、積層構造であってもよい。
【0022】
さらに、本発明の補修テープは、本発明の要旨を越えない限り、その製造法については特に限定されない。一般的には、キャスティングドラム法、インフレーション法等が挙げられる。
【0023】
そして、ラミネート缶溶接部の補修は、上記補修テープでラミネート缶溶接部を被覆し、完全に溶接部を覆うように溶接部に上記補修テープを熱融着させて行う。ラミネート缶溶接部に補修テープを熱融着させる際の溶接部加熱方法としては、高周波誘導加熱、赤外線照射、直火加熱、熱風吹付加熱、加熱ローラとの接触等の局所的な加熱方法や、熱風炉、オーブン等の全体加熱を行う方法がある。
【0024】
補修テープでラミネート缶溶接部に圧着する方法としては、ラミネート缶を連続して走行させ、ラミネート缶のスチール露出面と接触するアプリケータロールに補修テープを供給して行う方法などがある。
【0025】
本発明の溶接部を補修テープにより補修する対象となるラミネート缶とは、少なくとも片面(缶内面となる面)にポリプロピレンを主体とする樹脂を被覆したラミネート鋼板を素材として、胴部、蓋部、底部で構成され、溶接により缶胴部が製造されるものである。
【0026】
また、本発明のラミネート缶の素材種類には特に制限はなく、一般的に製缶に供される金属材料であれば構わず、例えば、ブリキ、TFS(チンフリースチール)等が挙げられる。そして、ラミネート缶の溶接方法に関しても特に制限はなく、従来用いられている方法で構わない。ただし、ここで言う溶接とは、溶接後に缶材の露出があり、補修を必要とするものである。また、缶胴を接着剤により貼り合わせる缶であっても、缶材の露出がある場合は本発明の補修テープを使用することができる。
【0027】
【実施例】
本発明に該当する補修テープの実施例及び本発明に該当しない補修テープの比較例を、表1に示す。
(1)密着性試験(Tピール強度測定)方法
板厚0.32mmのTFSとポリプロピレンラミネート鋼板の各々のサンプルを5mm幅×100mm長に剪断し、TFSとポリプロピレンラミネート鋼板の間に5mm幅×50mm長の補修テープを挟んで、200℃で加熱融着させ、試験片とした。テープを挟んでいない部分を外側に90°づつ開き、T字様の形状にしたのち、開いた両端を引っ張り試験機に固定し、引っ張り試験を行い、テープ熱融着部分の剥離強度を測定した。この試験により、補修テープと、ラミネート鋼板下地のTFS、およびポリプロピレンラミネート樹脂、両方との密着力を評価できる。缶胴の補修テープ部分がラミネート缶蓋に巻き締められた際の気密性において、実用上問題のない剥離強度として、1.0kgf以上が必要である。また、危険物など、気密性に対してより厳しい用途に対しては1.5kgf以上あることが望ましい。これらの値をTピール強度の判断基準とした。
(2)弾性率測定方法
表1に示す補修テープそのものを、動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製:バイブロン)を用いて測定した。
【0028】
具体的な測定法としては、以下の通りである。
【0029】
○テープサイズ:幅3mm×長さ50mm
○プリロード荷重 :5.0g
○加振モード :単一波形
○加振振幅 :16μm
○加振周波数 :110Hz
(3)切れ性評価
実製缶ラインで、ポリプロピレン樹脂ラミネート溶接缶の溶接部内面に、表1に記載のテープを用いて実際に補修を行った。缶胴エッジにおける補修テープの切れ方を以下の基準で評価した。
○‥1000缶の連続補修中、切れの不良が認められた缶が0缶であった。
△‥1000缶の連続補修中、切れの不良が認められた缶が1〜2缶であった。
×‥1000缶の連続補修中、切れの不良が認められた缶が3缶以上であった。
(△以上であれば実用は可能である)
得られた結果を表1に示す
【0030】
【表1】
【0031】
表1より、本発明例では、切れ性に優れ、かつTピール強度すなわち密着性にも優れていることがわかる。
【0032】
一方、比較例では、Tピール強度が劣っている。
【0033】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、高度の耐食性を要求される内容物に対して、缶内面に塗装を施された缶の代替として、本発明のラミネート缶を使用することが可能となる。また、缶内面側の塗装を省略でき、▲1▼缶コストの低減▲2▼塗装焼付け時に発生するSOX、NOXの低減▲3▼塗装工程での熱源および廃液の低減を図ることができる。
Claims (3)
- 鋼板の少なくとも缶内面となる面にポリプロピレンを主体とする樹脂を被覆したラミネート鋼板からなるラミネート缶の缶胴溶接部内面を補修する補修テープであって、前記補修テープは、厚みが20〜200μmであり、かつ、90℃における弾性率が1.0×109(dyne/cm2)以下の熱可塑性変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とするラミネート缶溶接部補修テープ。
- 前記変性ポリオレフィン樹脂中の変性ポリプロピレンの比率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のラミネート缶溶接部補修テープ。
- 請求項1または2記載の補修テープを用いてラミネート缶溶接部を被覆し、次いで補修テープが被覆された前記溶接部を熱融着することを特徴とするラミネート缶溶接部の補修方法。
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