JP2004191400A - 単一モード紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置 - Google Patents

単一モード紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置 Download PDF

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Katsuyuki Imoto
克之 井本
Masataka Nakazawa
正隆 中沢
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Abstract

【課題】紫外線による劣化や紫外線レーザー光の吸収損失が殆どない、新規な低損失紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置の提供。
【解決手段】入射端2aから入射された紫外線レーザー光を伝播して出射端2bから出射する紫外線伝送ファイバ1において、合成石英ガラスからなるガラスファイバ2の略軸心部に、その入射端2aと出射端2bとの間を連通する連通孔3を備えると共に、その連通孔3を囲繞するようにその長手方向に延びる空孔4を複数備え、各空孔4の断面積を上記連通孔3の断面積より50%〜10%小さくする。これにより、紫外線による劣化や光パワーの減衰・吸収損失が殆どなくなり、効率的に単一モードの紫外線レーザー光を伝播できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単一モードの紫外線レーザー光を効率良く伝播させることができる単一モード紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フォトレジスト膜の直接描画装置や光造形装置、あるいは高速コールドマーキング装置や高速トリミング装置等といった光加工装置には、紫外線レーザー光を発生させてこれを被照射物に対して精度良く照射させるための紫外線照射装置が備えられている。
【0003】
この紫外線照射装置は、紫外線レーザー光を発生させる光源と、この光源から発生する紫外線レーザー光を被照射物側に伝播して案内する伝播路と、この伝播路を伝わってきた紫外線レーザー光を被照射物に対して精度良く照射させるための照射部とから主に構成されており、例えばYAGレーザーやエキシマレーザー等の光源で発生する紫外線レーザー光を、多数の微細レンズやミラー等からなる伝播路を介して照射部に伝播し、その照射部に設置された被照射物に対して所望の箇所にその紫外線レーザー光を照射するようになっている。
【0004】
ところで、このような従来の紫外線照射装置にあっては、特にその伝播路が多数の微細レンズやミラー等の光学部品を組み合わせて構成されていることから、これら光学部品相互の熱膨張係数の違いやこれら光学部品を保持・固定する金具等の誤差・変動等により、伝播される紫外線レーザー光の光軸がずれたり、レーザー光の揺らぎやパワー分布の変動等といった不都合を招くことがある。特に、装置の小型化等のためにその伝播路を複雑化するほどこれらの不都合が顕著になってくる。
【0005】
そのため、最近ではその伝播路として従来の微細レンズやミラー等の光学部品からなるものに代えて、図14に示すような構成をした紫外線伝送ファイバaが徐々に用いられるようになってきている。
【0006】
この紫外線伝送ファイバaは、例えばSiOガラスからなるコアbの周囲にフッ素添加SiOガラスからなるクラッドcを備えたものであり、その入射端を上記光源側に、出射端を照射部側にそれぞれ位置させ、入射端から入射された紫外線レーザー光をそのコアb内を伝播させて出射端から照射部側に出射させることで紫外線レーザー光の光軸ずれや揺らぎ、あるいはビームのパワー分布の変動を抑制してガウス分布を保持した良好なビーム伝播を可能とし、加えて装置の小型化やコストの低減に大いに貢献することを可能とするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の紫外線伝送ファイバaにあっては、耐紫外線特性が低いため、紫外線レーザー光を長時間伝播させるとその入・出射端面が徐々に劣化して着色し、これによって紫外線レーザー光が大幅に減衰してしまうといった欠点がある。特に、この現象は紫外線レーザー光のパワーが大きいほど顕著となる。
【0008】
一方、この耐紫外線特性を向上させるためにはファイバa中のOH基含有量を高くすること、例えばOH基含有量を800ppm以上にすることが有効であることが知られている(特開平4−342427号公報や特開平4−342436号公報等)。しかしながら、紫外線レーザー光が伝播するコアbにOH基が高濃度に存在していると、このOH基に紫外線レーザー光の一部が吸収されてしまい、伝送損失が大きくなってしまうといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、紫外線による劣化や紫外線レーザー光の吸収損失が殆どない、新規な単一モード紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、請求項1に示すように、入射端から入射された紫外線レーザー光を伝播して出射端から出射する紫外線伝送ファイバにおいて、ガラスファイバの略軸心部に、上記紫外線レーザー光を伝播すべくその入射端と出射端との間を連通する連通孔を備えると共に、その連通孔周囲のガラスファイバ内にこの連通孔を囲繞するようにその長手方向に延びる空孔を複数備え、かつそれら各空孔の断面積を上記連通孔の断面積より50%〜10%小さくしたものである。
【0011】
このように本発明の単一モード紫外線伝送ファイバは、ガラスファイバの略軸心部にその入射端と出射端との間を連通する連通孔を備えることにより、紫外線レーザー光が何も存在しないこの連通孔内に閉じ込められて伝播していくことになるため、紫外線による劣化や光パワーの減衰・吸収損失が殆どなくなり、効率的に紫外線レーザー光を伝播することができる。また、その連通孔周囲のガラスファイバ内に複数の空孔を備え、かつそれら各空孔の断面積を上記連通孔の断面積より50%〜10%小さくしたことから、請求項9に示すように、波長が200nmから450nmの広い範囲の大パワーの紫外線レーザー光を連通孔内に閉じ込めて単一モード伝送させることができる。
【0012】
また、請求項2に示すように、上記各空孔間の距離を0.8μm〜1.5μmとし、かつ、それら各空孔の直径を0.3μm〜1.9μmの範囲とし、また、請求項3に示すように、上記連通孔を除く各空孔による空隙率を60%〜75%とすれば、実効屈折率を下げ、超広帯域単一モード伝送領域、大きな実効コア断面積、高屈折率差、大きな構造分散など、通常の光ファイバでは実現できない特性を発揮することができる。
【0013】
また、請求項4に示すように、上記ガラスファイバとしてフッ素を添加した合成石英ガラスから形成すれば、OH基による紫外線レーザー光の伝送損失の増大を防止することが可能となり、また、請求項5に示すように、上記連通孔の内壁面にフッ素を添加したガラス膜を備えれば、ファイバ作製工程中に進入したOH基をフッ素と反応させて外部へ放出させることが可能となるため、紫外線レーザー光の伝送損失を招くOH基のガラスファイバ内への進入を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、請求項6に示すように、上記ガラスファイバの外周部に、さらにそのガラスファイバの屈折率よりも低い低屈折率層を備えれば、ファイバ外周への不純物の付着による伝送損失の劣化を抑制できると共に、ファイバを曲げたときの伝送損失の増大を効果的に抑えることができる。
【0015】
また、請求項7に示すように、上記ガラスファイバの出射端付近を、その出射端側に縮径するようにテーパ状に細径化すれば、その出射端に大パワーの近接場光を発生させることが可能となる。
【0016】
さらに、請求項8に示すように、上記ガラスファイバの出射端付近のテーパ部外周に金属膜を備えれば、その近接場光をより効率良く発生させることができる。
【0017】
そして、請求項10に示すように、波長が200nmから450nmの紫外線レーザー光を発生させる光源と、その紫外線レーザー光を被照射物に照射する照射部との間を上記の低損失紫外線伝送ファイバで接続すれば、大パワーの紫外線レーザー光を効率良く照射可能で、かつ高信頼性で小型・高性能の紫外線照射装置を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明に係る低損失紫外線伝送ファイバ1の斜視図、図2はその拡大断面図である。
【0020】
図示するように、この低損失紫外線伝送ファイバ1は、OH基含有量が1000ppb以下の合成石英ガラスからなる断面円形をしたガラスファイバ2の軸心部に、その入射端2aと出射端2bとの間を連通する連通孔3が形成されており、その入射端2a側から入射された紫外線レーザー光を伝播して出射端2bから出射するようになっている。すなわち、ガラスファイバ2が従来のファイバのクラッドに相当し、連通孔3がコアに相当するようになっている。
【0021】
また、このガラスファイバ2内であって、その連通孔3周囲にはその長手方向に延びる空孔4が六角格子状(八角格子状でも良い)に同ピッチ間隔で複数形成されている。
【0022】
ここで、この空孔4の数は本実施の形態にあっては60個であるが、その数は、特に限定されるものでないが、その空孔率は、連通孔3を除くガラスファイバ2の断面積に比して60%〜75%(好ましくは70%)の範囲となっている。
【0023】
また、これら各空孔4,4…の断面積は上記連通孔3のそれよりも50%〜10%小さくなっている。すなわち、上記連通孔3の断面積を空孔4の2倍から10倍程度に大きくすることにより、紫外線領域(波長200nmから450nmの範囲)での光導波路を実現することができる。紫外線レーザー光の波長は、図2に示すように、空孔4の直径do、空孔4の距離S、連通孔3の直径dcによって決めることができる。つまり、フルベクトルの平面波展開を用いた変分法により解析することができる。空気中での光の波数k、空孔4,4間の距離Sの積ksが9,12.5,14.5近辺でバンドギャップが開く。ここで、フォトニックバンドギャップの波長が上記紫外線の波長で開き、かつファイバ2の作製が容易な構造はSが大きい値、すなわち、高次の第3番目のバンドギャップの方が好ましい。上記いずれのバンドギャップを用いても良いが、例えばks=14.5の第3番目のバンドギャップで計算すると、Sは0.89μmにする必要がある。また、この場合の空孔率(70%)から算出される値として、doは0.3μm〜1.9μmが好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲がさらに好ましい。Sは0.8μm〜1.5μmの範囲が好ましく、dcは0.5μm〜0.6μmが好ましく、0.71μm〜4.7μmの範囲がさらに好ましい。すなわち、連通孔3の面積Aは、空孔4の面積の2倍から10倍の範囲で大きくすることができる。これにより、大パワーの紫外線レーザー光をコアとなる連通孔3内に閉じ込めて単一モード伝送させることが可能となる。
【0024】
一方、クラッドとなるガラスファイバ2の材質としては、OH基含有量が1000ppbの低OH基ガラス材料である合成石英ガラス、フッ素を添加した合成石英ガラスが好ましい。すなわち、これよりもOH基の含有量が多くなるとこれを伝播する紫外線レーザー光がOH基に吸収されて徐々に着色されていき、伝送特性の劣化を招くからである。また、フッ素を添加した合成石英ガラスを用いれば、ファイバ作製工程中の高温プロセスにおいて混入するOH基を効果的に除去することが可能となる。この時、フッ素添加量は1モル%〜4モル%の範囲でSiOの屈折率に比して−0.5%〜−1.4%程度低くなるように添加するのが好ましい。
【0025】
そして、このような構成をした本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1にあっては、従来の紫外線伝送ファイバに比べてコアに相当する部分の面積を1.5倍以上に大きくすることができ、かつ連通孔3内に紫外線レーザー光が閉じ込められて伝播するので、大パワーの紫外線レーザー光を効率良く伝送することができる。しかも紫外線レーザー光の伝播によってファイバが着色することもないため、紫外線レーザー光の減衰を効果的に回避することができる。
【0026】
この結果、本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1を用いれば、フォトレジスト膜の直接描画装置、光造形装置、高速コールドマーキング装置、高速トリミング装置、高速光CVD装置等の光加工装置の高性能化が実現可能となる。すなわち、単一モード条件で大パワーの紫外線レーザー光を伝送させたり、紫外線レーザー光の品質をガウシャン分布に保って伝送させたり、パワー変動を抑えて伝送させることが可能となる。また紫外線レーザー光の大パワー伝送により高速の光加工が可能となり、高スループットで種々の機能を持った部品の生産を期待することができる。
【0027】
また、OH基含有量が1000ppb以下の合成石英ガラスを用いることにより、軸心部の連通孔周辺部に僅かに励起された紫外線レーザー光のクラッディングモードによるファイバ端面の着色劣化のおそれもない。すなわち、OH基含有量を1000ppb以下に抑制することにより、紫外線レーザー光がOH基に吸収される割合が極めて少なく、また、軸心部の連通孔内に紫外線レーザー光が極めて効率良く閉じ込められて伝播するため、ファイバ端面の紫外線レーザー光吸収による伝送損失の増加や着色劣化も殆ど生じなくなる。
【0028】
また、本発明のファイバ1を単一モード伝播用とすることにより、装置内に配置する光部品の熱膨張係数の差による光軸ずれを回避し、中心部の連通孔3内を伝播するレーザー光の揺らぎやパワー分布の変動を抑えることが可能となり、ガウス分布を持ったレーザー光を所望位置に伝播させることができる。
【0029】
次に、図3〜図13は本発明の他の実施の形態を示したものである。
【0030】
先ず、図3〜図5の低損失紫外線伝送ファイバは、ガラスファイバの軸心部に設けられる連通孔3の断面形状を多角形(八角形、四角形、菱形)としたものであり、この場合は上記断面円形のものに比べて比較的作製しやすいといった長所を有している。
【0031】
次に、図6の低損失紫外線伝送ファイバは、その連通孔3の内壁にフッ素を添加したガラス膜5をさらに備えたものであり、このような構成とすることにより、連通孔3内を大パワーの紫外線レーザー光が伝播してもその内面が着色することを効果的に防止することができる。また、このようなガラス膜5を高温プロセスでファイバ1を製作する際に連通孔3の内面にOH基が混入するのを防止することができるため、高湿度な環境下で使用しても連通孔3の内面の着色劣化を予防することができる。また、連通孔3の内面に滲み出して伝播することによる着色劣化も抑えることができる。尚、このガラス膜5は、図3〜図5のように断面多角形の連通孔3に適用しても同様な効果が得られることは勿論である(図7)。
【0032】
図8は、ガラスファイバの外周をこれよりも低い屈折率の低屈折率層6で覆ったものであり、これによりガラスファイバの外周への不純物の付着による伝送損失の劣化を抑制し、また、クラッディングモードによる光学特性の変動を抑えることが可能となる。また、耐屈曲性を向上させることができるため、ファイバ1を小さい曲率で曲げて狭い空間内に容易に実装することができる。尚、この低屈折率層6にはフッ素を添加したSiOが好適である。また、図9に示すようにこの低屈折率層6の外周部にこれを保護すべく、さらに高分子材料やカーボン被覆材料、金属被覆材料等から成る被覆層7を被覆しても良い。
【0033】
図10は、ガラスファイバ2の出射端2b付近をその出射端2b方向に縮径するように細径化したテーパ部8を形成したものであり、これによりその出射端2bから大パワーの近接場光を発生させることが可能となるため、半導体部品や半導体回路あるいは電気配線のリペア用に最適である。また、光信号処理回路の光学特性(波長特性、振幅特性、位相特性等)の微調な特性トリミング用、極微細光、あるいは電気素子や回路形成用等への応用が期待できる。また、図11に示すようにそのテーパ部8の外周部に金属膜9を被覆すれば、近接場光をより効率良く発生させることが可能となる。
【0034】
図12は、前述したような本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1を用いた紫外線照射装置の実施の一形態を示したものであり、紫外線レーザー光を発生する光源10と、この光源10で発生した紫外線レーザー光を被照射物11に照射する照射部との間を、伝播路となる低損失紫外線伝送ファイバ1で接続したものである。
【0035】
具体的に説明すると、この紫外線照射装置はフォトレジスト膜をレーザービームで直接描画する装置であり、例えばHe−Cdレーザー光源10で発生した波長442nmの平行レーザービームをレンズL1で集光して本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1の入射端から入射させると、その平行レーザービームがこのファイバ1内を伝播してその出射端から出射される。その出射端から出射された平行レーザービームは、照射部のレンズL2で平行光に戻され、ミラー13で直角に曲げられてレンズL3に入射され、このレンズL3で再び集光されて被照射物(試料)11の表面に照射されることにより、その被照射物11の表面にフォトレジスト膜を描画することができる。
【0036】
そして、このように光源10で発生した紫外線レーザー光を照射部側に伝播する伝播路として本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1を適用すれば、描画パターンの乱れを確実に防止して高精度な描画を行うことが可能となる。すなわち、この伝播路として複数のミラーを用いるような従来の構成では、装置を小型化した場合にレーザービームを立体的に複雑に曲げて伝播させる必要があるため、前述したように複数のミラーを用いて伝播させる構造では、例えば各ミラーを保持する金属部品の熱膨張係数と装置筐体を構成する金属の熱膨張係数とレンズとの熱膨張係数のミスマッチングによる光軸系のずれやレーザービームの揺らぎが発生し、これによって描画パターンの乱れが生ずる。これに対し、その伝播路として低損失紫外線伝送ファイバ1を用いれば、これらの不都合を確実に解消し、高精度な描画を行うことが可能となる。また、ファイバ1内を伝播してきたレーザービームは単一モード伝播してきたレーザービームであるので、均一な線幅の描画パターンをフォトレジスト膜に形成することができる。加えて、伝播過程における紫外線による劣化や紫外線レーザー光の吸収損失が殆どないため、高精度で信頼性の高い描画装置を提供することができる。尚、図中14は被照射物11をX,Y方向に移動させるためのステージ、15は描画パターンをモニタするためのCCDカメラ、16はそれを表示するためのモニタTVである。
【0037】
一方、図13は、本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1を用いたレーザー加工装置を示したものである。これは紫外線レーザー光を発生させるレーザー光源10からのレーザー光を図10及び図11に示した近接場光用の低損失紫外線伝送ファイバ1内を伝播させてその出射端に発生した近接場光を試料12の表面に照射して半導体部品や半導体回路あるいは電気配線のリペアを実現するようにしたものであり、大パワーの近接場光を試料12の表面に照射することが可能となると共に、長期的な使用でも殆ど径時劣化しないため、優れた信頼性を発揮することができる。
【0038】
尚、上述したような本発明の低損失紫外線伝送ファイバ1は、1本でも紫外線レーザー光の伝播路として十分適用可能であるが、これを複数本束ねバンドルファイバとして用いることも可能である。また、このファイバの断面形状は真円形に限らず、楕円形や多角形であっても良い。
【0039】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、以下に示すような優れた効果を発揮する。
【0040】
▲1▼紫外線による劣化や吸収損失が殆どないため、高性能で信頼性の高い装置を提供することができる。また、大パワーの紫外線レーザー光を伝播・照射することができるため、短時間で光加工が可能となり、生産性に優れた装置を提供することができる。
【0041】
▲2▼紫外線レーザー光の波長帯として、200nmから450nmの範囲の紫外線レーザー光を効率良く伝播できるため、非常に応用範囲の広い種々の装置を提供できる。
【0042】
▲3▼単一モード伝播用低損失紫外線伝送ファイバを構成することにより、装置内の光部品やそれを保持・固定している機械部品等の熱膨張係数の差による光軸のずれが生ずることがない。またレーザービームの揺らぎやパワー分布の変動を抑えることができ、ガウス分布を持ったレーザービームを所望位置に精度良く伝播させることができる。
【0043】
▲4▼ファイバ材料としてフッ素を添加した合成石英ガラス等を用いているため、OH含有量が極めて少ないより低損失なファイバを提供でき、また、クラッド内に僅かに漏れて伝播する紫外線レーザー光のクラッディングモードの伝播による径時劣化も効果的に抑制することができる。
【0044】
▲5▼連通孔の内面にフッ素を添加したガラス膜を備えることにより、製造工程中に生じたOH基の進入を抑制できるため、OH含有量が極めて少ないファイバを容易に得ることができる。
【0045】
▲6▼ガラスファイバの外周部を低屈折率層で覆うことにより、不純物の付着や曲げによる伝送損失の増大、クラデッィングモードによる光学特性の変動を抑制することができる。また、小さな曲率半径で狭い装置内に実装することができる。
【0046】
▲7▼出射端付近をテーパ状に細径化することにより、大パワーの近接場光を発生させることができるため、半導体装置や回路や配線のリペア用、光回路のトリミング用、極微細回路形成用等への広い範囲への応用が期待できる。
【0047】
▲8▼加えて、このテーパ部に金属膜を形成することにより、近接場光をより効率良く発生させることができる。
【0048】
▲9▼本発明の紫外線伝送ファイバを光源から照射部間の伝播路として用いることにより、高性能なフォトレジスト膜の直接描画装置、光造形装置、高速コールドマーキング装置、高速トリミング装置、高速CVD装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る単一モード紫外線伝送ファイバの実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1の単一モード紫外線伝送ファイバの拡大断面図である。
【図3】本発明ファイバの連通孔を断面八角形にした一形態を示す拡大断面図である。
【図4】本発明ファイバの連通孔を断面四角形にした一形態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明ファイバの連通孔を断面菱形にした一形態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明ファイバの連通孔内面にガラス膜を備えた一形態を示す拡大断面図である。
【図7】本発明ファイバの連通孔内面にガラス膜を備えた他の形態を示す拡大断面図である。
【図8】本発明ファイバの外周に低屈折率層を備えた一形態を示す拡大断面図である。
【図9】本発明ファイバの外周に低屈折率層を備えると共にその外周を被覆層で覆ったた一形態を示す拡大断面図である。
【図10】本発明に係る単一モード紫外線伝送ファイバのうち、特に近接場光の発生に適した実施の一形態を示す斜視図である。
【図11】図10に示す単一紫外線伝送ファイバのテーパ部に金属膜を形成した一形態を示す斜視図である。
【図12】本発明の単一モード紫外線伝送ファイバを用いた紫外線照射装置の実施の一形態を示す構成図である。
【図13】本発明の単一モード紫外線伝送ファイバを用いた紫外線照射装置の他の実施の形態を示す構成図である。
【図14】従来の紫外線伝送ファイバの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 単一モード紫外線伝送ファイバ
2 ガラスファイバ
2a 入射端
2b 出射端
3 連通孔
4 空孔
5 ガラス膜
6 低屈折率層
7 被覆層
8 テーパ部
9 金属層
10 光源
11 被照射物

Claims (10)

  1. 入射端から入射された紫外線レーザー光を伝播して出射端から出射する紫外線伝送ファイバにおいて、ガラスファイバの略軸心部に、上記紫外線レーザー光を伝播すべくその入射端と出射端との間を連通する連通孔を備えると共に、その連通孔周囲のガラスファイバ内にこの連通孔を囲繞するようにその長手方向に延びる空孔を複数備え、かつそれら各空孔の断面積を上記連通孔の断面積より50%〜10%小さくしたことを特徴とする単一モード紫外線伝送ファイバ。
  2. 上記各空孔間の距離が0.8μm〜1.5μmであり、かつ、それら各空孔の直径が0.3μm〜1.9μmであることを特徴とする請求項1に記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  3. 上記連通孔を除く各空孔による空隙率が60%〜75%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  4. 上記ガラスファイバが、フッ素を添加した合成石英ガラスからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  5. 上記連通孔の内壁面にフッ素を添加したガラス膜を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  6. 上記ガラスファイバの外周部に、そのガラスファイバの屈折率よりも低い低屈折率層を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  7. 上記ガラスファイバの出射端付近が、その出射端側に縮径するようにテーパ状になっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  8. 上記ガラスファイバの出射端付近のテーパ部外周に金属膜を備えたことを特徴とする請求項7に記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  9. 上記連通孔を伝播させる紫外線レーザー光の波長が200nmから450nmの範囲の単一モードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバ。
  10. 波長が200nmから450nmの範囲の紫外線レーザー光を発生させる光源と、その紫外線レーザー光を被照射物に照射する照射部との間を上記請求項1〜9のいずれかに記載の単一モード紫外線伝送ファイバで接続してなることを特徴とする紫外線照射装置。
JP2002355529A 2002-12-06 2002-12-06 単一モード紫外線伝送ファイバ及びそれを用いた紫外線照射装置 Pending JP2004191400A (ja)

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