JP2004190552A - ロッカアーム内油路切換装置およびバルブメカニズム - Google Patents

ロッカアーム内油路切換装置およびバルブメカニズム Download PDF

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Katsumi Takenaka
勝美 竹中
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Abstract

【課題】本発明は、例えばバルブ開閉用等に用いられる作動油が他の部材に供給される潤滑油と同じロッカシャフト内の油路より供給された場合であっても、簡便な機構により問題無く切換を行うことができるロッカアーム内油路切換装置およびこの装置を用いたバルブメカニズムを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、ロッカアームのロッカシャフトには、上記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、上記ロッカシャフト回動手段は、上記作動油用油圧ポートと上記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは、上記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とするロッカアーム内油路切換装置を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロッカアーム内に設けられたロッカアーム内油路切換装置およびそれを用いたエンジンのバルブメカニズムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膨張行程の途中で排気バルブを補助的に開弁させることによりピストンに加わる膨張力を軽減してエンジンブレーキの効きを改善するようにした圧縮開放型ブレーキ、あるいは、吸入行程の途中で排気バルブを一時的に開弁させることにより排気ポートに残留する排気の一部をシリンダ内に戻して燃焼温度を制御するようにした内部EGRはよく知られている。
【0003】
このように排気バルブを補助的に開閉させるために、特許文献1には、ロッカアームのバルブを押圧する側の端部下面にシリンダおよびシリンダ内に収納されたピストンからなるシリンダ部を形成し、上記ピストン上面に形成される油室内に油圧を加えることによりピストンを押し下げ、これにより排気バルブに所定のリフト量を与えるシステムが開示されている。
【0004】
しかしながら、この方法では、ピストンを作動させるための作動油をロッカシャフト内の油路を用いて提供しているので、ピストンを作動させる場合は外部の油圧供給手段から油圧が供給されるが、ピストンを作動させない場合は、ロッカシャフト内には油圧が供給されないことになる。
【0005】
一方、この油路は、従来より例えばカムと接触するローラフォロアの軸周りの潤滑を得る等の種々の部材に対して潤滑油を供給するものであった。したがって、ピストンを作動させない状態では、これらの潤滑油の供給が途絶えてしまい、問題となる場合があった。
【0006】
このような問題を解決するために、ロッカシャフトの油圧ポートを分割したり、またロッカシャフト内の油路に別のパイプを挿入して油路を分割したりする技術が開示されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、このような方法は極めて煩雑であり、製造上の問題、もしくはコスト面での問題を引き起こすものであった。
【0008】
【特許文献1】
特表平8−500872号公報
【特許文献2】
特許第2741844号公報
【特許文献3】
特公平3−18003号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、例えばバルブ開閉用等に用いられる作動油が他の部材に供給される潤滑油と同じロッカシャフト内の油路より供給された場合であっても、簡便な機構により問題無く切換を行うことができるロッカアーム内油路切換装置およびこの装置を用いたバルブメカニズムを提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、カムの回転に伴い揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路切換装置であって、上記ロッカシャフトには、作動油用油圧ポートおよび潤滑油用油圧ポートがそれぞれロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続されて設けられており、上記作動油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、上記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して作動油を必要な部位に供給する制御ポートが設けられ、上記潤滑油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、上記ロッカアーム内に形成された潤滑油油路を介して潤滑油を必要な部位に供給する供給ポートが形成されており、上記ロッカシャフトには、上記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、上記ロッカシャフト回動手段は上記作動油用油圧ポートと上記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは、上記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とするロッカアーム内油路切換装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、例えばバルブの開閉等の作動油を用いることにより駆動させる種々の装置に対し、単にロッカシャフト回動手段によるロッカシャフトの回動により、上記種々の装置に対する作動油の油圧の供給を行ったり、停止したりすることができる。また、このようにロッカシャフトが回動しても、潤滑油を供給する上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは接続するように形成されている。したがって、上記作動油に対する油圧の供給の有無にかかわらず、ロッカシャフト内油路に常に油圧を供給することが可能となり、供給ポートから常に各潤滑油供給箇所に潤滑油を供給することができる。
【0012】
本発明はまた、請求項2に記載するように、カムシャフトに並設されたカムと、上記カムの回転に伴い基端部が揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアームと、上記ロッカアームの他端部の揺動に連動して開閉駆動を行うバルブとを有するエンジンのバルブメカニズムにおいて、上記ロッカアームの他端部下面には、シリンダと上記シリンダ内に収納されたピストンとを有するシリンダ部が形成され、上記ピストンの上面にはシリンダ内面との間に油室が形成され、上記ピストンの下面にはシート部を介して上記バルブのバルブステムを下方に押圧するボール部が形成されており、上記ロッカシャフトには、作動油用油圧ポートが上記ロッカアーム他端側に、潤滑油用油圧ポートが上記ロッカアーム基端側に、それぞれロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続されて設けられており、上記作動油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、上記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して上記油室と接続する制御ポートが設けられ、上記潤滑油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、潤滑油を必要な部位に供給する供給ポートが形成されており、上記ロッカシャフトには、上記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、上記ロッカシャフト回動手段は、エンジンの運転状態に応答して上記作動油用油圧ポートと上記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは、上記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とするバルブメカニズムを提供する。
【0013】
本発明によれば、バルブを補助的に開閉するためのシリンダ部に供給される油圧が、単にロッカシャフト回動手段によるロッカシャフトの回動により接続/切断される。また、このようにロッカシャフトが回動しても、潤滑油を供給する上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは接続するように形成されている。したがって、ロッカシャフト内油路に常に油圧を供給することが可能となり、供給ポートから常に各潤滑油供給箇所に潤滑油を供給することができる。
【0014】
上記請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記シリンダ部に、上記シリンダ内部における上記ピストンの上端位置を決める上部ストッパと下端位置を決定する下部ストッパとが設けられていることが好ましい。このように上部ストッパおよび下部ストッパを設けることにより、これらのストッパによりストロークを所望の大きさに規定することができるからである。
【0015】
上記請求項2または請求項3に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記油室と接続するように上記ピストンの上面から上記ボール部底部にかけて貫通孔が形成され、上記ボール部底部が、上記ピストンの動きに伴い上記シート部を介して上記バルブステムを押圧する際には、上記ボール部底部と上記シート部上面とが密着して上記貫通孔をシールするように形成されていることが好ましい。このような貫通孔が形成されていることにより、油室内のオイルの抜けが早く、応答性が向上するからである。
【0016】
上記請求項2から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記下部ストッパ上面には、上記ピストンを上方へ押し上げるスプリングが設けられていることが好ましい。このようなスプリングを設けることにより、油室内への油圧の供給が解除され、かつ油密状態が解除された際に、即座にスプリングの作用により、ピストンを上方へ押し上げることができ、速やかにオイルを油室外へ排出させることができるため、より一層応答性を向上させることができるからである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のロッカアーム内油路切換装置について説明する。本発明のロッカアーム内油路切換装置は、カムの回転に伴い揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路切換装置であって、上記ロッカシャフトには、作動油用油圧ポートおよび潤滑油用油圧ポートがそれぞれロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続されて設けられており、上記作動油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、上記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して作動油を必要な部位に供給する制御ポートが設けられ、上記潤滑油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、上記ロッカアーム内に形成された潤滑油油路を介して潤滑油を必要な部位に供給する供給ポートが形成されており、上記ロッカシャフトには、上記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、上記ロッカシャフト回動手段は上記作動油用油圧ポートと上記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは、上記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とする。
【0018】
従来よりエンジンのヘッドの上方部分に配置されたロッカアーム等の種々の装置に対して潤滑油を供給するために、上記ロッカアームを軸支するロッカシャフト内に油路を形成し、この油路を潤滑油が必要とされる部位へ潤滑油の油路として用いる方法が採られていた。
【0019】
一方、ロッカアーム周辺には、例えばエンジンの運転状態に応じてブレーキを補助すべく、所定のリフト量を排気バルブに与えるための装置等、油圧を供給することにより駆動する装置が配置される場合がある。
【0020】
このような装置に供給される作動油も上記ロッカシャフト内油路により供給されれば、別途油路を設ける必要が無いことから好ましいといえる。しかしながら、上述した潤滑油と作動油とを同一のロッカシャフト内油路を用いて供給する場合は、以下のような問題が生じる。
【0021】
すなわち、通常このような作動油に対する油圧の供給は、油圧供給手段により供給され、この油圧供給手段からロッカシャフト内油路への油圧供給を制御することにより、上記作動油により駆動される装置の駆動を制御している。したがって、装置を駆動しているときはロッカシャフト内油路に油圧供給手段から油圧が供給されているが、装置の駆動を停止するときは、油圧はロッカシャフト内油路に供給されないことになる。この場合、ロッカシャフト内油路を用いて潤滑油を供給していることから、潤滑油の供給も停止してしまうといった問題が生じるのである。
【0022】
本発明は、このような問題点をロッカシャフト回動手段を設けることにより解決したものであり、ロッカシャフト内油路に常に油圧を供給していた場合でも、作動油により油圧が供給される装置の駆動をロッカシャフト回動手段の回動に伴うロッカシャフト内油路とロッカアーム内油路との接続/切断により制御したものであり、これにより潤滑油の供給を止めることなく作動油に対する油圧の供給を制御することができるようにしたものである。
【0023】
以下、このようなロッカアーム内油路切換装置について、作動油をロッカアームに形成されたシリンダ部に供給することにより補助ブレーキを駆動するエンジンのバルブメカニズムに用いた例により説明する。
【0024】
図1は、このようなバルブメカニズムの一実施態様を示すものであり、カムシャフトに並設されたカム1と、上記カム1の回転に伴い基端部3aが揺動し得るようにロッカシャフト2に軸支されたロッカアーム3とが示されている。このロッカアーム3においては、カム1の回転に応じて基端部3aが押し上げられると、ロッカアーム3の他端部3bは逆に押し下げられ、このロッカアーム3の揺動に連動してバルブステム4が昇降駆動し、バルブの開閉駆動が行われる。
【0025】
さらに、本実施態様においては、ロッカアーム3の他端部3b下面に、シリンダ部5が形成されている。このシリンダ部5は、シリンダ6と、このシリンダ6内に昇降自在に嵌合・収納されているピストン7とを有する。当該シリンダ部5を構成するピストン7の上面には、シリンダ6内面との間に油室8が形成され、当該油室8と制御ポート10とはロッカアーム3内に形成されたロッカアーム内油路11を介して接続されている。また、シリンダ6の内面には、ピストン7が昇降駆動する際に、ピストン7の上端位置を決める上部ストッパー12aと、下端位置を決定する下部ストッパー12bとが設けられている。このように上部ストッパー12aおよび下部ストッパー12bを設けることにより、これらのストッパーによりストロークを所望の大きさに規定することができる。
【0026】
このようなピストン7のストロークを一定に規定する上部ストッパー12a、下部ストッパー12bとしては、ピストン7が所望のストローク範囲以外に昇降することを阻止できるものであれば特に限定はされない。具体的には、シリンダ部5の径方向内側に張り出すように凸部を設ける場合や、シリンダ部5の上方または下方の側壁をシリンダ部5の径方向内側に張り出すように形成する場合、さらにピストン7の内径よりも開口部分の内径が狭いワッシャーを設置する場合等を挙げることができる。
【0027】
本実施態様においては、上記ピストン7の下面には、ピストンステム7aを介して、底部が曲面状のボール部13が設けられている。さらに、このようなボール部13の下方には、ボール部13底部を覆うように、シート部14が配置されている。当該シート部14は、外部から力が加えられていない状態において、ボール部13底部とシート部14内部との間に所定の空間が形成されるように配置されている。
【0028】
一方、ロッカシャフト2のロッカアーム他端部3b側周面には、ロッカシャフト内油路21を介して油圧供給手段に接続している作動油油圧ポート9が設けられ、ロッカアーム側周面には、この作動油油圧ポート9に対向する位置に制御ポート10が設けられている。そして、制御ポート10と油室8とは、ロッカアーム3内に設けられたロッカアーム内油路11を介して接続されている。上記作動油油圧ポート9と制御ポート10とは、少なくともロッカアーム3の他端部3bが下降してシート部14がバルブステム4を押し下げるとき以外、すなわち、排気バルブである場合は排気行程、吸気バルブである場合は吸気行程以外の工程において接続されるように、通常配置されるが、これに限定されるものではなく、全工程において接続されるように油圧ポートおよび制御ポートを形成してもよく、後述するようにカムに凹部を設ける場合は、その凹部の位置でのみ接続するように配置してもよい。
【0029】
また、ロッカシャフト2のロッカアーム基端部3a側周面には、同様にロッカシャフト内油路21を介して油圧供給手段に接続している潤滑油油圧ポート15が形成されている。そして、この潤滑油油圧ポート15に対向するロッカアーム3側周面には、供給ポート16が形成されており、この供給ポート16は、ロッカアーム3内に形成された潤滑油油路17を介して、種々の潤滑油が必要とされる部位(図1の例では、カム1と接触するローラの軸)に潤滑油を供給する。
【0030】
さらに、ロッカシャフト2には、ロッカシャフト2を回動させることができるロッカシャフト回動手段が設けられている。図1に示す例では、ロッカシャフト回動手段としてロッカシャフト2に固定して取り付けられたレバー18が示されている。このレバー18は、このレバー18の先端を押圧可能なように配置されて取り付けられているアクチュエータ19により駆動され、図1に示す位置から、図2に示す位置まで移動できるようにされている。
【0031】
図1に示す位置では、作動油油圧ポート9と制御ポート10とが接続している。したがって、エンジン駆動中は常に油圧が供給されているロッカシャフト内油路21から油室8に油圧が加えられ、ピストン7が下降することにより、バルブに所定のリフト量を付与することができ、バルブが排気バルブである場合は、補助ブレーキが作動することになる。また、潤滑油油圧ポート15と供給ポート16とが接続しており、潤滑油油路17を介して潤滑油が必要とされる部位に潤滑油を供給する。
【0032】
一方、アクチュエータ19を用いてレバー18を図2に示す位置に移動させることにより、作動油油圧ポート9と制御ポート10とが離れ、接続しない状態となる。これにより油室8にはロッカシャフト内油路21から油圧が供給されない状態となり、例えば図示略の排出孔が開かれる等の油室8の油密状態が解除されことにより、ピストン7は上昇し、通常運転に復帰することになる。この場合でも、図2に示すように潤滑油油圧ポート15と供給ポート16とは接続しており、潤滑油油路17を介して潤滑油が必要とされる部位に潤滑油を供給することができる。
【0033】
このように、本発明においては、ロッカシャフト回動手段により、ロッカシャフトを回動させ、これにより作動油油圧ポートと制御ポートとの接続および遮断を行うようにしている。したがって、ロッカシャフト内油路内の油圧のON/OFFを行うことなく、油室8内への油圧の供給を制御することができる。
【0034】
一方、上述したように、潤滑油を潤滑油が必要な部位に供給する潤滑油油圧ポートと供給ポートとは、ロッカシャフト回動手段によりロッカシャフトが回動した場合でも常に両者が接続できるように形成されている。すなわち、作動油油圧ポートと制御ポートが接続されている位置でも、ロッカシャフトが回動して作動油油圧ポートと制御ポートとが接続しない位置となった場合でも、潤滑油油圧ポートと供給ポートとは接続状態を保つように形成されているのである。また、上述したようにロッカシャフト内油路には常に油圧が供給されている。したがって、潤滑油はロッカシャフト内油路から潤滑油油圧ポート、供給ポート、さらには潤滑油油路を介して、潤滑油が必要な部位に常に供給することができるのである。
【0035】
このように、ロッカシャフトの回動位置にかかわりなく潤滑油油圧ポートと供給ポートとを接続するためには、通常、各ポートの周方向長さを調節することにより行われるが、特にこれに限定されるものではない。
【0036】
ロッカアーム3の他端部3b下面に形成されたシリンダ部5は、シート部14を介してバルブステム4と当接している。ロッカアーム3の基端部3a先端にはローラ等を介してカム1を当接させることにより、エンジンの運転にともなってカム1が回転駆動されると、ロッカアーム3は揺動する。このロッカアーム3の揺動と連動してロッカアーム3の他端部3bの下端に位置するボール部13が昇降駆動し、このような昇降駆動するボール部13により、シート部14を介してバルブステム4が押し下げられてバルブが開かれる。
【0037】
カム1は、吸気行程もしくは排気行程においてバルブを押し下げるノーズ1aを備えている。ノーズ1aにより吸気もしくは排気行程においてロッカアーム3などを介して吸気もしくは排気バルブを開弁作動させる。
【0038】
また、本実施態様においては、図3に示すように、ピストン7の上面からボール部13の底部にかけて貫通する貫通孔31が形成されていることが好ましい。このような貫通孔31は、ボール部13底部がシート部14を介してバルブステム4を押圧していない場合には、シート部14内部とボール部13底部との間には所定の空間が形成されているので、開放状態となる。一方、後述するように油室8が油密状態となり、この状態でボール部13がシート部14を介してバルブステム4を押圧する場合は、少なくとも貫通孔31が形成されている部分のボール部13底部とシート部14内部とは密着するので、これにより貫通孔31の下側はシールされることとなる。
【0039】
このようにピストン7の上面からボール部13底部にかけて貫通孔31を設けることにより、例えば、油室8が油密状態にあり、ロッカアーム3の基端部3aがカム1により押し上げられ、ボール部13底部がシート部14を介してバルブステム4を押圧している場合には、貫通孔31はシート部14内部によりシールされているため、油室8内のオイルが貫通孔31から漏れるおそれがなく、油密状態を維持することができる。一方、このような状態から、油室8内の油圧の供給が停止され、油室8内の油密状態が解除された場合は、ボール部13底部からシート部14は離れ、貫通孔31は開放となる。したがって、貫通孔31からオイルが流出し、さらに、シート部14は可動な状態でボール部13に設けられているため、オイルは、ボール部13とシート部14との隙間から排出される。これにより、油室8は油密状態から速やかに油圧を低下させることができるため、通常運転への復帰に対する応答性を向上させることができるのである。
【0040】
また、このように貫通孔31を設けた場合において、ボール部13底部が、ピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、貫通孔31をより良好にシールする手段としては、例えば、図3に示すように、シート部14内部において少なくとも貫通孔31が形成されているボール部13底部と当接する部分に、シール材32を設ける手段等を挙げることができる。このようにシール材32を設けることにより、ボール部13底部とシート部14内部とが当接している際のシール性を向上させることができる。したがって、ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、貫通孔31からの油漏れを十分に防止することができる。
【0041】
さらに、本実施態様においては、図3に示すように、ピストン7の側面にO−リング33を設けることが好ましい。ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際には、油室8に過度な油圧がかかる場合があり、このような過度な油圧は、シリンダ部5においてシリンダ6内面とピストン7とにおける摺動部分から油圧がリークするといった不都合を引き起こす可能性がある。しかしながら、このようにピストン7の側面にO−リング33を設けることにより、O−リング33がシリンダ6内面へ密着するため、特に、油室8が油密状態にある際に、シリンダ6内面とピストン7とにおける摺動部分からの油漏れを防止することができる。従って、ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、油室8内部の油圧の低下を防止することができる。
【0042】
さらに、図4に示すように、ピストン7の最下端位置を決定する下部ストッパー12b上面には、スプリング34が配置されていることが好ましい。このようなスプリング34を設けることにより、油室8が油密状態にあり、ボール部13がシート部14を介してバルブステム4を押圧している状態から、油圧の供給が停止され、油室8の油密状態が解除されて、通常運転に復帰する際に、スプリング34の作用により、素早くピストン7は上方へ押し上げられ、貫通孔31から速やかにオイルを油室8外へ排出させることができるため、より一層ピストン7の応答性を向上させることができ、通常運転への復帰をスムースに行うことができるからである。
【0043】
本実施態様においては、図5に示すように、上記カム1に、シリンダ部5において形成されるバルブのリフト量を吸収する凹部1bが形成されていてもよい。
【0044】
カム1に上記シリンダ部5において形成される上記バルブのリフト量を吸収する凹部1bが形成することにより、カム1の凹部1bがロッカアーム3の基端部3aと接する領域において圧油供給手段からの油圧を油室8に加えるようにすると、比較的小さな圧力で少なくともバルブのリフト量の距離分だけシリンダ6内のピストン7を押し上げることが可能となる。
【0045】
上記の構成からなるエンジンのバルブメカニズムにおいて、エンジンの運転にともなって、図示略の油圧ポンプが駆動されると、油圧がロッカシャフト内油路21に供給される。また、エンジンが通常の状態で運転されているときは、レバー18は図2に示す位置にアクチュエータ19により移動されており、作動油油圧ポート9と制御ポート10とが接続されていないことから、ロッカシャフト内油路21に供給された油圧は油室8には供給されず、油室8の圧力は大気圧とほぼ等しくなっている。
【0046】
この状態で、図2示すカム1を回転させると、ロッカアーム3の他端部3b下面が下がり、ボール部13は、シート部14を介してバルブステム4を押圧して押し下げようとするが、バルブステム4は排気バルブの開弁付勢力で上昇位置に保持されようとしている。したがって、ピストン7が上部ストッパー12aに当接するまでは、ピストン7の上昇にともなって油室8のオイルは、別途形成された排出孔(図示略)から排出される。これにより、バルブは閉弁状態に保持される。この際、例えば図3に示す実施態様のように、ピストン7の上面からボール部13底部にかけて貫通孔31が形成されている場合は、当該貫通孔31からオイルが流出するようになる。
【0047】
さらに、ロッカアーム3の揺動角度が大きくなってピストン7が上部ストッパー12aに当接すると、ピストン7はロッカアーム3と一体となって下降するために、シリンダ部5の下降にともなってバルブステム4が押し下げられて排気バルブが開かれる。
【0048】
一方、排気バルブを所定のリフト量で開弁しておくことによりブレーキ力を得る場合は、以下のような制御が行われる。この点について、カムに凹部が形成されている図5に示す実施態様を用いて説明する。
【0049】
すなわち、カム1を回転させて凹部1bがロッカアーム3のローラに接触した際に、レバー18はアクチュエータ19により、図5に示す位置とされ、これにより作動油油圧ポート9と制御ポート10とは接続される。ここで、カムの形状が図5に示すように凹部1bを有するものであると、ロッカアーム3の基端部3aのローラが凹部1bに接触していることから、ボール部13底部は、シート部14を介しても、バルブステム4の表面から離れた状態となっている。したがって、油室8に加わる油圧ポンプの吐出圧力が比較的小さい場合や、ピストン7の径が比較的小さい場合であっても、容易に凹部1bで他端部3bが上昇した距離分だけピストン7を下方に押し下げることができる。この量を必要なリフト量としておくことにより、上述したような油圧ポンプ22の吐出圧力が小さい場合やピストン7の径が小さい場合であっても対応することが可能となる。そして、必要なリフト量分だけピストン7を押し下げた後、図2に示すようにレバー18をアクチュエータ19により移動させてロッカシャフト2を回動させて、作動油油圧ポート9と制御ポート10とを接続させないようにすることにより、油室8は油密状態となる。したがって、その後は、油圧ポンプの吐出圧力やピストン7の径に関係なく、上記必要なリフト量分だけ排気バルブを押し下げた状態で、排気バルブはカム1のプロファイルにしたがって開弁駆動される。なお、このように油室8を油密状態とする場合は、上述した図示略の排出孔は閉鎖される。
【0050】
本実施態様においては、特に上記バルブが排気バルブである場合には、カム1には吸気行程でバルブのリフト量を吸収するように上記凹部1bが形成されていることが好ましい。このように凹部1bを形成することにより、吸気行程におけるポンピングロスの大幅な減少を防止することができるからである。
【0051】
また、レバー18を図1または図5に示す状態で保持しておくことにより、エンジンの運転中は油圧ポンプの吐出圧力が作動油油圧ポート9に供給保持されている。従って、この場合も制御ポート10からオイルが流出しないために、ピストン7が上部ストッパ12aに当接する以前に油室8は油密状態となり、シリンダ部5の下降当初から、バルブステム4を押し下げることになり、排気バルブはカム1のプロフィールに従って開弁駆動される。
【0052】
なお、上記説明では、図5に示すカムに凹部1bが形成されている例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹部1bが形成されていないものであってもよい。この場合は、油室8に油圧を供給し、ピストンを押し下げた状態で油密状態とする時期は特に限定されるものではなく、いずれの時期であってもよい。ただし、通常は加える圧力の関係から、ロッカアーム3の他端部3bが下降してボール部13がバルブステム4を押圧している工程以外の工程、すなわちバルブが排気バルブの場合は排気行程、吸気バルブの場合は吸気行程以外の工程において行われる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
例えば、上記説明では、作動油により排気バルブを開閉駆動する例を用いてロッカアーム内油路切換装置の説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
また、上記実施態様では主として排気バルブを開閉駆動するバルブメカニズムに適用しているが、これを吸気バルブのバルブメカニズムに適用してエンジンの運転状態に応答して吸気バルブの開弁時期を最適制御することもできる。さらに、上記実施態様においては油圧ポンプで圧油供給手段を構成しているが、エンジンに装備されているオイルポンプで圧油供給手段を構成することもできる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、例えばバルブの開閉等の作動油を用いることにより駆動させる種々の装置に対し、単にロッカシャフト回動手段によるロッカシャフトの回動により、上記種々の装置に対する作動油の油圧の供給を行ったり、停止したりすることができる。また、このようにロッカシャフトが回動しても、潤滑油を供給する上記潤滑油用油圧ポートと上記供給ポートとは接続するように形成されている。したがって、上記作動油に対する油圧の供給の有無にかかわらず、ロッカシャフト内油路に常に油圧を供給することが可能となり、供給ポートから常に各潤滑油供給箇所に潤滑油を供給することができるといった効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルブメカニズムの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す本発明のバルブメカニズムのレバーが移動した状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明におけるシリンダ部、ボール部およびシート部の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明におけるシリンダ部、ボール部およびシート部の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のバルブメカニズムの他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … カム
2 … ロッカシャフト
3 … ロッカアーム
3a … 基端部
3b … 他端部
4 … バルブステム
5 … シリンダ部
6 … シリンダ
7 … ピストン
8 … 油室
9 … 作動油油圧ポート
10 … 制御ポート
11 … ロッカアーム内油路
12a … 上部ストッパー
12b … 下部ストッパー
13 … ボール部
14 … シート部
15 … 潤滑油油圧ポート
16 … 供給ポート
17 …潤滑油油路
21 …ロッカシャフト内油路
31 …貫通孔

Claims (5)

  1. カムの回転に伴い揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路切換装置であって、
    前記ロッカシャフトには、作動油用油圧ポートおよび潤滑油用油圧ポートがそれぞれロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続されて設けられており、
    前記作動油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、前記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して作動油を必要な部位に供給する制御ポートが設けられ、前記潤滑油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、前記ロッカアーム内に形成された潤滑油油路を介して潤滑油を必要な部位に供給する供給ポートが形成されており、
    前記ロッカシャフトには、前記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、前記ロッカシャフト回動手段は前記作動油用油圧ポートと前記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、
    前記潤滑油用油圧ポートと前記供給ポートとは、前記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とするロッカアーム内油路切換装置。
  2. カムシャフトに並設されたカムと、前記カムの回転に伴い基端部が揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアームと、前記ロッカアームの他端部の揺動に連動して開閉駆動を行うバルブとを有するエンジンのバルブメカニズムにおいて、
    前記ロッカアームの他端部下面には、シリンダと前記シリンダ内に収納されたピストンとを有するシリンダ部が形成され、前記ピストンの上面にはシリンダ内面との間に油室が形成され、前記ピストンの下面にはシート部を介して前記バルブのバルブステムを下方に押圧するボール部が形成されており、
    前記ロッカシャフトには、作動油用油圧ポートが前記ロッカアーム他端側に、潤滑油用油圧ポートが前記ロッカアーム基端側に、それぞれロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続されて設けられており、
    前記作動油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、前記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して前記油室と接続する制御ポートが設けられ、前記潤滑油用油圧ポートに対向するロッカアーム側周面には、潤滑油を必要な部位に供給する供給ポートが形成されており、
    前記ロッカシャフトには、前記ロッカシャフトを軸回りに回動させるロッカシャフト回動手段が設けられ、前記ロッカシャフト回動手段は、エンジンの運転状態に応答して前記作動油用油圧ポートと前記制御ポートとを接続または切断するようにロッカシャフトを回動させ、
    前記潤滑油用油圧ポートと前記供給ポートとは、前記ロッカシャフト回動手段により回動されたロッカシャフトの位置に関わり無く常に接続されるように形成されていることを特徴とするバルブメカニズム。
  3. 前記シリンダ部に、前記シリンダ内部における前記ピストンの上端位置を決める上部ストッパと下端位置を決定する下部ストッパとが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のバルブメカニズム。
  4. 前記油室と接続するように前記ピストンの上面から前記ボール部底部にかけて貫通孔が形成され、前記ボール部底部が、前記ピストンの動きに伴い前記シート部を介して前記バルブステムを押圧する際には、前記ボール部底部と前記シート部上面とが密着して前記貫通孔をシールするように形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバルブメカニズム。
  5. 前記下部ストッパ上面には、前記ピストンを上方へ押し上げるスプリングが設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかの請求項に記載のバルブメカニズム。
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