JP2004190159A - ポリエステル繊維 - Google Patents
ポリエステル繊維 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004190159A JP2004190159A JP2002357926A JP2002357926A JP2004190159A JP 2004190159 A JP2004190159 A JP 2004190159A JP 2002357926 A JP2002357926 A JP 2002357926A JP 2002357926 A JP2002357926 A JP 2002357926A JP 2004190159 A JP2004190159 A JP 2004190159A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polyester fiber
- metal
- fiber
- ligand
- polyester
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
Abstract
【課題】洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維を提供すること。
【解決手段】[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤を繊維表面に固着したポリエステル繊維であり、更に、好ましくは、該必須成分の他に副成分として[D]制電剤を含んでいることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維。
【選択図】なし
【解決手段】[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤を繊維表面に固着したポリエステル繊維であり、更に、好ましくは、該必須成分の他に副成分として[D]制電剤を含んでいることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維に関する。さらに詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエステル繊維は、加工性、取扱易さ、仕事回復性などに優れた特性を有しているため、広範囲にわたって利用されている。衣料用としては勿論のこと、産業資材用あるいは衛生用品や布団用としても近年多量に使用されるようになってきた。布団用途としては、背当てクッションやシートクッションなどいわゆるクッション類、枕、座布団、さらにはキルティング分野の詰め綿にも利用されている。
【0003】
近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するために、ポリエステル繊維の抗菌・制菌性能が強く求められている。
【0004】
ポリエステル繊維に抗菌・制菌性能を付与するために、従来より抗菌油剤による表面被覆が提案されている。
【0005】
抗菌油剤として広く知られている、ハロゲン系対イオンをもつ四級アンモニウム塩およびシリコーン系四級アンモニウム(特許文献1など)では、処理機械の錆発生など好ましくない事態を招来するため、繊維用抗菌防臭剤としての用途が制限されるのを免れないという欠点を有している。
【0006】
抗菌性機能物質として酸化チタン等の光触媒誘導体が提案されている例もあるが(特許文献2、同3など)、このような粒子を付着させる量によっては、繊維布帛が触媒作用で劣化したり、手触りが硬化したりするという問題がある。
【0007】
抗菌油剤としてピリチオン錯体を用いて繊維を処理する方法が提案されている例もあるが(特許文献4など)、洗濯耐久性に関して満足のいく結果が得られていない。
【0008】
また、抗菌性物質とアミノプラスト樹脂を併用する場合(特許文献5など)では、アミノプラスト樹脂の付着量が多い場合、風合いの硬化や、遊離したホルムアルデヒドによる人体の影響が懸念される。
【0009】
【特許文献1】特開平7−116006号公報
【0010】
【特許文献2】特開平10−1879号公報
【0011】
【特許文献3】特開2000−54270号公報
【0012】
【特許文献4】特開2000−119960号公報
【0013】
【特許文献5】特開平6−228884号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明はポリエステル繊維の制菌剤として上述の課題を解決するために、本発明のポリエステル繊維は[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0016】
また、本発明のポリエステル短繊維は、かかる本発明のポリエステル繊維からなり、詰め綿として使用されるものであることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明のポリエステル繊維について説明をする。
【0018】
本発明のポリエステル繊維は、[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0019】
本発明において用いられる[A]金属錯体は、抗菌作用を有する有機化合物が金属に配位した化合物であり、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランとの親和性が良好のため繊維表面に対するしっかりと固着する一般式1で示すものが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、中心金属Mは遷移金属もしくはアルカリ土類金属のうちのいずれかの金属を表し、配位子Lは典型元素から成る多座配位子を表す。n、mおよびxはいずれも正の整数であり、n=xmの関係を満たす。)
一般式1における配位子Lは、典型元素で構成される多座配位子で、オキシン配位子、ヨージニン配位子及びピリチオン配位子のように、配位原子としてO、SおよびNの少なくとも1種類を含みヘテロ環構造をもつものは、金属の存在によりそれ自身の制菌作用が増強されるため好ましく、なかでもピリチオンキレートが特に好ましい。なお、配位子は1種類に限定されるものではなく、数種類の配位子から成る金属錯体であってよい。
【0022】
一般式1における中心金属Mとしては、Zn、Cu、Ag、Fe、Co、Mo、Mu、Mg、NiおよびCa等の遷移金属あるいはアルカリ土類金属が高い制菌性能を発現するという点で好ましく、中でも人体の必須成分である二価の金属がさらに好ましく、錯体化合物が経皮吸収されにくい金属としてZnが安全性という点で特に好ましい。
【0023】
また、かかる金属錯体の添加量としては、繊維重量に対して0.5〜2.5重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%含有しているものが用いられる。0.5重量%未満では十分な制菌効果が得られず、また2.5重量%を越えては、製糸性や糸物性が満足するものが得られない。
【0024】
本発明において用いられる[B]アミノシリコーンは、一般式3に示すものが好ましく、アミノ含量が0.1〜1.0%、アミノ等量が100〜10000、25℃における粘度が100から10000mPa・sであるとさらに好ましい。アミノ含量が0.1未満、アミノ等量が10000を越え、25℃における粘度が100未満であると、必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり、十分な洗濯耐久性のある制菌性能が得られない。逆に、アミノ含量が1.0を越え、アミノ等量が1000未満、25℃粘度が10000を越えていると平滑な風合いが乏しくなる。
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R2は水素もしくは炭素数1〜5のアルキル基、A1は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、hおよびkは正の整数をそれぞれ表す。)
本発明において用いられる[C]アミノシランは、一般式4に示すものが好ましく、アミノ含量が5〜25%であるとさらに好ましい。アミノ含量が5%未満であると必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり十分な洗濯耐久性が得られない。また、25%を越えると平滑な風合いが乏しくなる。
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、R3およびR4は炭素数1〜5のアルキル基、A2は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ表す。)
また、かかる[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランの添加量としては、それらの和([B]+[C])が繊維重量に対して0.5重量%以上が好ましく、1.5重量%以上が特に好ましい。0.5重量%未満では十分な洗濯耐久性が得られず、また平滑な風合いが乏しくなる。
【0029】
本発明における必須成分の比率に関しては、[A]/([B]+[C])=30/70〜70/30が好ましい。この範囲を外れると本発明の効果が小さくなる。
【0030】
本発明における油剤が該必須成分[A]〜[C]の他に副成分として[D]制電剤を含んでいることが好ましい。
【0031】
本発明において副成分として用いられる[D]制電剤は、公知の界面活性剤であってよい。界面活性剤としてはイオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤が挙げられるが、ノニオン系に比べ帯電防止性に優れるイオン系界面活性剤がより好ましい。例としては、炭素数8〜22の金属石鹸や炭素数8〜22のアルコールリン酸エステル塩などのアニオン系制電剤が挙げられる。なお、制電剤は1種類に限定されるものではなく、数種類を併用することができる。
【0032】
本発明において、副成分としてイオン性界面活性剤の制電剤を使用する場合、必須成分([A]+[B]+[C])および制電剤[D]との比率は([A]+[B]+[C])/[D]=50/50〜90/10が好ましく、65/35〜85/15がさらに好ましい。必須成分([A]+[B]+[C])の比率が50%未満となると本発明の効果が小さくなり、逆に90%を越えると制電性が悪くなる場合がある。
【0033】
本発明におけるポリエステル繊維とは、テレフタル酸とエチレングリコールあるいは、ブチレングリコールの縮合反応によって生成される高分子重合体およびセバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、イソフタル酸、パラオキシ安息香酸などとエチレングリコール、ブチレングリコールの縮合体、ならびに他のポリエステル類を含むポリエステル重合体などを意味するが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、特に限られているわけではないが、詰め綿用に好適な短繊維が好ましく、具体的には次のとおりである。
【0034】
単繊維繊度は0.1〜100dtexが好ましく、1〜30dtexが更に好ましい。
【0035】
繊維長は、10〜1000mmが好ましく、20〜100mmが更に好ましい。
【0036】
捲縮数は3〜20山/25mmが好ましく、捲縮度は10〜50%が好ましい。
【0037】
中空度は、0〜50%が好ましく、20〜40%が更に好ましい。
【0038】
また、本発明にかかる上述した油剤のポリエステル繊維への付着量は、特に限定はされないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本例中の制菌性、風合い耐久性および制電性はそれぞれ次の方法により求めた。
(1)制菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、接種直後の試料布に対する殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、抗菌性評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0040】
優秀(◎):殺菌活性値≧3.0
良 (○):殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):殺菌活性値<1.0
(2)風合耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2 の開繊した試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)を詰め込み、JIS L1096−1990 6.23のA法にて10回洗濯した後、その風合いを触感により以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0041】
優秀(◎):羽毛調のスベリ感がある
良 (○):羽毛調のスベリ感がややある
不良(△):ややきしみ感がある
不可(×):きしみ感がある
(3)制電性:
試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)300gを温度30℃、相対湿度40%の条件下で12時間静置した後、該温湿度条件でのカード工程において、50m/分の速度で走行しているウェブ上10cmの帯電圧[V]を測定し、帯電圧の絶対値に関して以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0042】
優秀(◎):|帯電圧|≦500
良 (○):|帯電圧|=501〜1000
不良(△):|帯電圧|=1001〜1500
不可(×):|帯電圧|>1500
ポリエステル洗浄綿(単繊維繊度6.6dtex、繊維長64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)に、表1に示す油剤をスプレー方式で給油付与し、150℃×15分の熱処理を施して上述の試料綿を作製した。
【0043】
油剤の成分として、[A]の金属錯体としてジンクピリチオン、[B]のアミノシリコーンとして、アミノ含量0.4%、アミノ等量4000の両末端メトキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]のアミノシランとしてアミノ含量14%のメチルジメトキシジアミノシラン、[D]の制電剤として、カチオン系界面活性剤であるトリメチルラウリルアンモニウム・ジメチルホスフェート、アニオン系界面活性剤であるラウリン酸カリウム及びアルキルホスフェートK塩、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルをそれぞれ用い、表1に記載した配合比率で油剤を調製し、処理したものである。
【0044】
これらの試料綿を用いて上述の(1)〜(3)の評価を行い、その結果を表2に示した。その結果、本発明のポリエステル繊維はいずれも洗濯耐久のあるやわらかな風合い、優れた抗菌性および良好な制電性を併せ持っていたが、比較例のポリエステル繊維は併せ待っていなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明により、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維に関する。さらに詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエステル繊維は、加工性、取扱易さ、仕事回復性などに優れた特性を有しているため、広範囲にわたって利用されている。衣料用としては勿論のこと、産業資材用あるいは衛生用品や布団用としても近年多量に使用されるようになってきた。布団用途としては、背当てクッションやシートクッションなどいわゆるクッション類、枕、座布団、さらにはキルティング分野の詰め綿にも利用されている。
【0003】
近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するために、ポリエステル繊維の抗菌・制菌性能が強く求められている。
【0004】
ポリエステル繊維に抗菌・制菌性能を付与するために、従来より抗菌油剤による表面被覆が提案されている。
【0005】
抗菌油剤として広く知られている、ハロゲン系対イオンをもつ四級アンモニウム塩およびシリコーン系四級アンモニウム(特許文献1など)では、処理機械の錆発生など好ましくない事態を招来するため、繊維用抗菌防臭剤としての用途が制限されるのを免れないという欠点を有している。
【0006】
抗菌性機能物質として酸化チタン等の光触媒誘導体が提案されている例もあるが(特許文献2、同3など)、このような粒子を付着させる量によっては、繊維布帛が触媒作用で劣化したり、手触りが硬化したりするという問題がある。
【0007】
抗菌油剤としてピリチオン錯体を用いて繊維を処理する方法が提案されている例もあるが(特許文献4など)、洗濯耐久性に関して満足のいく結果が得られていない。
【0008】
また、抗菌性物質とアミノプラスト樹脂を併用する場合(特許文献5など)では、アミノプラスト樹脂の付着量が多い場合、風合いの硬化や、遊離したホルムアルデヒドによる人体の影響が懸念される。
【0009】
【特許文献1】特開平7−116006号公報
【0010】
【特許文献2】特開平10−1879号公報
【0011】
【特許文献3】特開2000−54270号公報
【0012】
【特許文献4】特開2000−119960号公報
【0013】
【特許文献5】特開平6−228884号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明はポリエステル繊維の制菌剤として上述の課題を解決するために、本発明のポリエステル繊維は[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0016】
また、本発明のポリエステル短繊維は、かかる本発明のポリエステル繊維からなり、詰め綿として使用されるものであることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明のポリエステル繊維について説明をする。
【0018】
本発明のポリエステル繊維は、[A]金属錯体、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0019】
本発明において用いられる[A]金属錯体は、抗菌作用を有する有機化合物が金属に配位した化合物であり、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランとの親和性が良好のため繊維表面に対するしっかりと固着する一般式1で示すものが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、中心金属Mは遷移金属もしくはアルカリ土類金属のうちのいずれかの金属を表し、配位子Lは典型元素から成る多座配位子を表す。n、mおよびxはいずれも正の整数であり、n=xmの関係を満たす。)
一般式1における配位子Lは、典型元素で構成される多座配位子で、オキシン配位子、ヨージニン配位子及びピリチオン配位子のように、配位原子としてO、SおよびNの少なくとも1種類を含みヘテロ環構造をもつものは、金属の存在によりそれ自身の制菌作用が増強されるため好ましく、なかでもピリチオンキレートが特に好ましい。なお、配位子は1種類に限定されるものではなく、数種類の配位子から成る金属錯体であってよい。
【0022】
一般式1における中心金属Mとしては、Zn、Cu、Ag、Fe、Co、Mo、Mu、Mg、NiおよびCa等の遷移金属あるいはアルカリ土類金属が高い制菌性能を発現するという点で好ましく、中でも人体の必須成分である二価の金属がさらに好ましく、錯体化合物が経皮吸収されにくい金属としてZnが安全性という点で特に好ましい。
【0023】
また、かかる金属錯体の添加量としては、繊維重量に対して0.5〜2.5重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%含有しているものが用いられる。0.5重量%未満では十分な制菌効果が得られず、また2.5重量%を越えては、製糸性や糸物性が満足するものが得られない。
【0024】
本発明において用いられる[B]アミノシリコーンは、一般式3に示すものが好ましく、アミノ含量が0.1〜1.0%、アミノ等量が100〜10000、25℃における粘度が100から10000mPa・sであるとさらに好ましい。アミノ含量が0.1未満、アミノ等量が10000を越え、25℃における粘度が100未満であると、必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり、十分な洗濯耐久性のある制菌性能が得られない。逆に、アミノ含量が1.0を越え、アミノ等量が1000未満、25℃粘度が10000を越えていると平滑な風合いが乏しくなる。
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、R2は水素もしくは炭素数1〜5のアルキル基、A1は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、hおよびkは正の整数をそれぞれ表す。)
本発明において用いられる[C]アミノシランは、一般式4に示すものが好ましく、アミノ含量が5〜25%であるとさらに好ましい。アミノ含量が5%未満であると必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり十分な洗濯耐久性が得られない。また、25%を越えると平滑な風合いが乏しくなる。
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、R3およびR4は炭素数1〜5のアルキル基、A2は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ表す。)
また、かかる[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランの添加量としては、それらの和([B]+[C])が繊維重量に対して0.5重量%以上が好ましく、1.5重量%以上が特に好ましい。0.5重量%未満では十分な洗濯耐久性が得られず、また平滑な風合いが乏しくなる。
【0029】
本発明における必須成分の比率に関しては、[A]/([B]+[C])=30/70〜70/30が好ましい。この範囲を外れると本発明の効果が小さくなる。
【0030】
本発明における油剤が該必須成分[A]〜[C]の他に副成分として[D]制電剤を含んでいることが好ましい。
【0031】
本発明において副成分として用いられる[D]制電剤は、公知の界面活性剤であってよい。界面活性剤としてはイオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤が挙げられるが、ノニオン系に比べ帯電防止性に優れるイオン系界面活性剤がより好ましい。例としては、炭素数8〜22の金属石鹸や炭素数8〜22のアルコールリン酸エステル塩などのアニオン系制電剤が挙げられる。なお、制電剤は1種類に限定されるものではなく、数種類を併用することができる。
【0032】
本発明において、副成分としてイオン性界面活性剤の制電剤を使用する場合、必須成分([A]+[B]+[C])および制電剤[D]との比率は([A]+[B]+[C])/[D]=50/50〜90/10が好ましく、65/35〜85/15がさらに好ましい。必須成分([A]+[B]+[C])の比率が50%未満となると本発明の効果が小さくなり、逆に90%を越えると制電性が悪くなる場合がある。
【0033】
本発明におけるポリエステル繊維とは、テレフタル酸とエチレングリコールあるいは、ブチレングリコールの縮合反応によって生成される高分子重合体およびセバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、イソフタル酸、パラオキシ安息香酸などとエチレングリコール、ブチレングリコールの縮合体、ならびに他のポリエステル類を含むポリエステル重合体などを意味するが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、特に限られているわけではないが、詰め綿用に好適な短繊維が好ましく、具体的には次のとおりである。
【0034】
単繊維繊度は0.1〜100dtexが好ましく、1〜30dtexが更に好ましい。
【0035】
繊維長は、10〜1000mmが好ましく、20〜100mmが更に好ましい。
【0036】
捲縮数は3〜20山/25mmが好ましく、捲縮度は10〜50%が好ましい。
【0037】
中空度は、0〜50%が好ましく、20〜40%が更に好ましい。
【0038】
また、本発明にかかる上述した油剤のポリエステル繊維への付着量は、特に限定はされないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本例中の制菌性、風合い耐久性および制電性はそれぞれ次の方法により求めた。
(1)制菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、接種直後の試料布に対する殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、抗菌性評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0040】
優秀(◎):殺菌活性値≧3.0
良 (○):殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):殺菌活性値<1.0
(2)風合耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2 の開繊した試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)を詰め込み、JIS L1096−1990 6.23のA法にて10回洗濯した後、その風合いを触感により以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0041】
優秀(◎):羽毛調のスベリ感がある
良 (○):羽毛調のスベリ感がややある
不良(△):ややきしみ感がある
不可(×):きしみ感がある
(3)制電性:
試料綿(6.6dtex、64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)300gを温度30℃、相対湿度40%の条件下で12時間静置した後、該温湿度条件でのカード工程において、50m/分の速度で走行しているウェブ上10cmの帯電圧[V]を測定し、帯電圧の絶対値に関して以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0042】
優秀(◎):|帯電圧|≦500
良 (○):|帯電圧|=501〜1000
不良(△):|帯電圧|=1001〜1500
不可(×):|帯電圧|>1500
ポリエステル洗浄綿(単繊維繊度6.6dtex、繊維長64mm、捲縮数6山/25mm、捲縮度21%)に、表1に示す油剤をスプレー方式で給油付与し、150℃×15分の熱処理を施して上述の試料綿を作製した。
【0043】
油剤の成分として、[A]の金属錯体としてジンクピリチオン、[B]のアミノシリコーンとして、アミノ含量0.4%、アミノ等量4000の両末端メトキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]のアミノシランとしてアミノ含量14%のメチルジメトキシジアミノシラン、[D]の制電剤として、カチオン系界面活性剤であるトリメチルラウリルアンモニウム・ジメチルホスフェート、アニオン系界面活性剤であるラウリン酸カリウム及びアルキルホスフェートK塩、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルをそれぞれ用い、表1に記載した配合比率で油剤を調製し、処理したものである。
【0044】
これらの試料綿を用いて上述の(1)〜(3)の評価を行い、その結果を表2に示した。その結果、本発明のポリエステル繊維はいずれも洗濯耐久のあるやわらかな風合い、優れた抗菌性および良好な制電性を併せ持っていたが、比較例のポリエステル繊維は併せ待っていなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明により、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な制電性を有するポリエステル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なポリエステル短繊維を提供することができる。
Claims (5)
- 下記[A]〜[C]を必須成分とした油剤が付与されてなることを特徴とするポリエステル繊維。
[A]金属錯体
[B]アミノシリコーン
[C]アミノシラン - 該油剤が必須成分の他に、副成分として下記[D]を含むことを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維。
[D]制電剤 - 一般式2における二価の金属原子がZnであることを特徴とする請求項4記載のポリエステル繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002357926A JP2004190159A (ja) | 2002-12-10 | 2002-12-10 | ポリエステル繊維 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002357926A JP2004190159A (ja) | 2002-12-10 | 2002-12-10 | ポリエステル繊維 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004190159A true JP2004190159A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32757794
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002357926A Pending JP2004190159A (ja) | 2002-12-10 | 2002-12-10 | ポリエステル繊維 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004190159A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2458083A3 (en) * | 2010-11-23 | 2013-07-10 | Rohm and Haas Company | Method for durable fabric antimicrobial treatment |
-
2002
- 2002-12-10 JP JP2002357926A patent/JP2004190159A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2458083A3 (en) * | 2010-11-23 | 2013-07-10 | Rohm and Haas Company | Method for durable fabric antimicrobial treatment |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0942649B1 (en) | Durable and regenerable microbiocidal textiles | |
JP2003533613A (ja) | 抗微生物剤移行基材およびその使用法 | |
WO2013109493A1 (en) | Blanket for health care use | |
JP2010090523A (ja) | 繊維構造物の抗菌防臭・制菌加工方法 | |
EP1045065B1 (en) | Cellulose fiber-containing structure | |
JP5506265B2 (ja) | 繊維用処理剤、抗菌抗かび性繊維製品の製造方法及び抗菌抗かび性繊維製品 | |
JP2004190159A (ja) | ポリエステル繊維 | |
JPWO2012049978A1 (ja) | 繊維用抗菌加工薬剤とその製造方法及び抗菌性繊維の製造方法 | |
JP3605694B2 (ja) | 抗菌・消臭・吸水加工繊維製品及びその製造方法 | |
JP3165235B2 (ja) | 抗菌加工繊維製品およびその加工方法 | |
JP2992419B2 (ja) | 柔軟仕上剤 | |
JP2001348484A (ja) | 繊維加工用組成物および繊維加工方法 | |
JPH0957094A (ja) | 消臭性加工組成物 | |
JP2000119960A (ja) | 繊維類の抗菌抗かび加工法 | |
JPH0327183A (ja) | 繊維製品の抗菌防臭加工方法 | |
JP2004300599A (ja) | アクリル繊維 | |
JPH01260065A (ja) | 合成繊維の処理方法 | |
CN113718519B (zh) | 抗病毒整理剂、抗病毒织物及其制备方法 | |
JPH04108180A (ja) | 抗菌性を有する防汚性白色布帛の製造方法 | |
JPS61245378A (ja) | 抗菌性ポリエステル繊維 | |
JPH08311769A (ja) | 抗菌・消臭・吸水加工繊維製品及びその製造方法 | |
JPH06228884A (ja) | 繊維構造物の耐洗濯性抗菌加工方法 | |
JPH08302573A (ja) | 合成繊維用処理剤 | |
KR950007408B1 (ko) | 세탁내구성이 우수한 항균성 폴리에스텔섬유의 제조방법 | |
JP2007291549A (ja) | 繊維用水分散液および繊維構造物の製造方法、並びに繊維製品 |