JP2004300599A - アクリル繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な染色性を有するアクリル繊維、詳しくは詰め綿素材として最適なアクリル短繊維を提供すること。
【解決手段】[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤を繊維表面に固着することを特徴とするアクリル繊維。
【選択図】なし
【解決手段】[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤を繊維表面に固着することを特徴とするアクリル繊維。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な染色性と浸透性を有するアクリル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、アクリル繊維は、加工性、染色性、取扱易さ、仕事回復性などに優れた特性を有しているため、トレーニングウェア、靴下、肌着等、衣料用途、毛布等の寝具用途、ぬいぐるみ等の生地として広範囲にわたって利用されている。
【0003】
近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するために、アクリル繊維の抗菌・制菌性能が強く求められている。
【0004】
アクリル繊維に抗菌・制菌性能を付与するために、従来より抗菌油剤による表面被覆が提案されている。
【0005】
抗菌油剤として広く知られている、ハロゲン系対イオンをもつ四級アンモニウム塩およびシリコーン系四級アンモニウム(特許文献1など)では、処理機械の錆発生など好ましくない事態を招来するため、繊維用抗菌防臭剤としての用途が制限されるのを免れないという欠点を有している。
【0006】
抗菌性機能物質として例えばチタンとケイ素の複合酸化物からなる光触媒を繊維表面に付着させる方法が提案されている例もあるが(特許文献2など)、このような粒子を付着させる量によっては、繊維布帛が触媒作用で劣化したり、手触りが硬化したりするという問題がある。
【0007】
抗菌油剤として安全性の高いソルビン酸エステルを用いて繊維を処理する方法が提案されている例もあるが(特許文献3など)、洗濯耐久性に関して満足のいく結果が得られていない。
【0008】
また、抗菌油剤と含弗素撥水剤をともに用いることにより、選択耐久性を向上させている例もあるが(特許文献4など)、撥水性を付与するため、満足する染色性を得ることができていない。
【0009】
【特許文献1】特開平7−116006号公報
【0010】
【特許文献2】特開2001−245781号公報
【0011】
【特許文献3】特開2000−256963号公報
【0012】
【特許文献4】特開平5−33270号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な染色性と浸透性を有するアクリル繊維、詳しくは衣料・寝具用として最適なアクリル短繊維を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はアクリル繊維の制菌剤として上述の課題を解決するために、本発明のアクリル繊維は[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0015】
また、本発明のアクリル短繊維は、かかる本発明のアクリル繊維からなり、衣料・寝具用として使用されるものであることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明のアクリル繊維について説明をする。
【0017】
本発明のアクリル繊維は、[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0018】
本発明において用いられる[A]カチオン系界面活性剤は、抗菌作用を有する第四級アンモニウム塩が対イオンとして有機酸イオンをもつ化合物であり、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランとの親和性が良好のため繊維表面に対してしっかりと固着する一般式1で示すものが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、R1〜R4はアルキル基を示し、対イオンX−は有機酸イオンを表す。)
一般式1における第四級アンモニウムカチオンの置換基R1〜R4は、アルキル基で、各々炭素数20以下のものが好ましく、炭素数が10〜12の置換基と1〜3の置換基を共存させたものが好ましい。炭素数が20を超えると十分な抗菌性能が得られない。
【0021】
一般式1における対イオンX− としては有機酸イオンであり、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、乳酸イオン、アジピン酸イオン、グルコン酸イオンが特に好ましい。対イオンX− が塩化物イオンなどの無機酸イオンの場合、製造する工程や後加工する工程で処理機械の金属部分に錆が発生するという問題が生じる。
【0022】
また、かかるカチオン系界面活性剤の添加量としては、繊維重量に対して0.1〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.3重量%含有しているものが用いられる。0.1重量%未満では十分な制菌効果が得られず、また0.5重量%を越えては、製糸性や糸物性が満足するものが得られない。
【0023】
本発明において用いられる[B]アミノシリコーンは、一般式2に示すものが好ましく、アミノ含量が0.1〜1.0%、アミノ等量が100〜10000、25℃における粘度が100から10000mPa・sであるとさらに好ましい。アミノ含量が0.1未満、アミノ等量が10000を越え、25℃における粘度が100未満であると、必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり、十分な洗濯耐久性のある制菌性能が得られない。逆に、アミノ含量が1.0を越え、アミノ等量が1000未満、25℃粘度が10000を越えていると平滑な風合いが乏しくなる。
【0024】
【化3】
【0025】
(式中、R5は炭素数1〜5のアルキル基、R6は水素もしくは炭素数1〜5のアルキル基、A1は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、hおよびkは正の整数をそれぞれ表す。)
本発明において用いられる[C]アミノシランは、一般式3に示すものが好ましく、アミノ含量が5〜25%であるとさらに好ましい。アミノ含量が5%未満であると必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり十分な洗濯耐久性が得られない。また、25%を越えると平滑な風合いが乏しくなる。
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、R7およびR8は炭素数1〜5のアルキル基、A2は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ表す。)
また、かかる[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランの添加量としては、それらの和([B]+[C])が繊維重量に対して0.2重量%以上が好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。0.2重量%未満では十分な洗濯耐久性が得られず、また平滑な風合いが乏しくなる。
【0028】
本発明における必須成分の比率に関しては、[A]/([B]+[C])=30/70〜70/30が好ましい。[A]/([B]+[C])が30/70未満では十分な抗菌性能が得られない。また70/30を越えると、十分な染色性と浸透性が得られず、また熱処理工程で抗菌剤が変質し、繊維が黄変してしまう。
【0029】
本発明にかかる上述した抗菌油剤を繊維表面に固着させたアクリル繊維は、以下に記載する方法で製造することができる。すなわち、例えば、まず繊維に対して目標付着量になるように該抗菌油剤を水中へ乳化分散してエマルジョン組成物とし、次いで該組成物をパディング方式、スプレー方式、浸漬・遠心脱水方式、あるいはコーティング方式などにより繊維表面に付与し、必要に応じて80〜120℃で予備乾燥した後、100〜150℃で加熱処理することにより製造することができる。
【0030】
本発明におけるアクリル繊維とは、繊維形成性を有するアクリル系ポリマー、すなわちアクリロニトリルを90%以上含有するアクリル系ポリマーを意味し、特に限定されるものではないが、製造ポリマーとして製糸性、耐失透性、染色性等の面から、共重合成分の共重合量が10モル%以下、好ましくは8モル%以下のものが使用される。このアクリル系ポリマーの共重合成分には、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの低級アルキルエステル類、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、塩化ビニリデン等のビニル化合物の他に、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸およびそれらの塩類等のモノマー類の同種または異種を用いることができる。また、繊維の形態は、特に限られているわけではないが、衣料・寝具用途に好適な短繊維が好ましく、具体的には次のとおりである。
【0031】
単繊維繊度は0.1〜100dtexが好ましく、1〜30dtexが更に好ましい。
【0032】
繊維長は、10〜1000mmが好ましく、20〜100mmが更に好ましい。
【0033】
捲縮数は3〜20山/25mmが好ましく、捲縮度は10〜50%が好ましい。
【0034】
また、本発明にかかる上述した油剤のアクリル繊維への付着量は、特に限定はされないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましい。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本例中の制菌性、風合い耐久性および制電性はそれぞれ次の方法により求めた。
(1)抗菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、接種直後の試料布に対する殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0036】
優秀(◎):殺菌活性値≧3.0
良 (○):殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):殺菌活性値<1.0
(2)風合耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2 の開繊した試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を詰め込み、JISL1096−1990 6.23のA法にて10回洗濯した後、その風合いを触感により以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0037】
優秀(◎):羽毛調のスベリ感がある
良 (○):羽毛調のスベリ感がややある
不良(△):ややきしみ感がある
不可(×):きしみ感がある
(3)染色性
試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊してウェブ状とした試料布を用い、以下の染色液を用いて浴温度を50分で100℃まで昇温しそのまま100℃で60分間の染色を行った。
【0038】
<染色液>
Astrzon Gollden Yellow GL−E 0.129owf%
Astrzon Red GTL−N 0.18 owf%
Sumiacryl Blue N−SL 0.16 owf%
D−267(日華化学(株)社製) 3.80 owf%
酢酸 0.60 owf%
油剤付与を行っていない洗浄綿について同じ条件で染色を行い、これを対照綿として試料綿とのL値の差を比較し、次の4段階で判定して優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0039】
優秀(◎):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|<0.5
良 (○):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|=0.5〜1.0
不良(△):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|=1.0〜2.0
不可(×):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|≧2.0
(4)浸透性
試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊して0.7g量りとったものを直径2cmの球状にし、水中に静かに落として水面に触れたところから完全に沈むまでの時間を測定した。その沈降時間を以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0040】
優秀(◎):沈降時間<1.0秒
良 (○):沈降時間=1.0〜2.5秒
不良(△):沈降時間=2.5〜4.0秒
不可(×):沈降時間≧4.0秒
洗浄綿(単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)に、表1に示す油剤をスプレー方式で繊維に対して0.6重量%となるように給油付与し、140℃×20分の熱処理を施して上述の試料綿を作製した。
【0041】
油剤の成分として、[A]のカチオン系界面活性剤としてジデシルジメチルアンモニウムアジピン酸塩およびジデシルジメチルアンモニウム乳酸塩、[B]のアミノシリコーンとして、アミノ含量0.4%、アミノ等量4000および、アミノ含量0.8%、アミノ等量2000のアルコキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]のアミノシランとしてアミノ含量13.8%および8.6%のアミノアルコキシシランをそれぞれ用い、表1に記載した配合比率で油剤を調製し、処理したものである。
【0042】
これらの試料綿を用いて上述の(1)〜(3)の評価を行い、その結果を表2に示した。その結果、本発明のアクリル繊維はいずれも洗濯耐久のあるやわらかな風合い、優れた抗菌性および良好な染色性を併せ持っていたが、比較例のアクリル繊維は併せ待っていなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な染色性を有するアクリル繊維、詳しくは衣料・寝具用途として最適なアクリル短繊維を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な染色性と浸透性を有するアクリル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、アクリル繊維は、加工性、染色性、取扱易さ、仕事回復性などに優れた特性を有しているため、トレーニングウェア、靴下、肌着等、衣料用途、毛布等の寝具用途、ぬいぐるみ等の生地として広範囲にわたって利用されている。
【0003】
近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するために、アクリル繊維の抗菌・制菌性能が強く求められている。
【0004】
アクリル繊維に抗菌・制菌性能を付与するために、従来より抗菌油剤による表面被覆が提案されている。
【0005】
抗菌油剤として広く知られている、ハロゲン系対イオンをもつ四級アンモニウム塩およびシリコーン系四級アンモニウム(特許文献1など)では、処理機械の錆発生など好ましくない事態を招来するため、繊維用抗菌防臭剤としての用途が制限されるのを免れないという欠点を有している。
【0006】
抗菌性機能物質として例えばチタンとケイ素の複合酸化物からなる光触媒を繊維表面に付着させる方法が提案されている例もあるが(特許文献2など)、このような粒子を付着させる量によっては、繊維布帛が触媒作用で劣化したり、手触りが硬化したりするという問題がある。
【0007】
抗菌油剤として安全性の高いソルビン酸エステルを用いて繊維を処理する方法が提案されている例もあるが(特許文献3など)、洗濯耐久性に関して満足のいく結果が得られていない。
【0008】
また、抗菌油剤と含弗素撥水剤をともに用いることにより、選択耐久性を向上させている例もあるが(特許文献4など)、撥水性を付与するため、満足する染色性を得ることができていない。
【0009】
【特許文献1】特開平7−116006号公報
【0010】
【特許文献2】特開2001−245781号公報
【0011】
【特許文献3】特開2000−256963号公報
【0012】
【特許文献4】特開平5−33270号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、洗濯耐久のある柔らかい風合い、優れた抗菌性および良好な染色性と浸透性を有するアクリル繊維、詳しくは衣料・寝具用として最適なアクリル短繊維を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はアクリル繊維の制菌剤として上述の課題を解決するために、本発明のアクリル繊維は[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン、及び[C]アミノシランを必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0015】
また、本発明のアクリル短繊維は、かかる本発明のアクリル繊維からなり、衣料・寝具用として使用されるものであることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明のアクリル繊維について説明をする。
【0017】
本発明のアクリル繊維は、[A]カチオン系界面活性剤、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランを必須成分としてなる制菌油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0018】
本発明において用いられる[A]カチオン系界面活性剤は、抗菌作用を有する第四級アンモニウム塩が対イオンとして有機酸イオンをもつ化合物であり、[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランとの親和性が良好のため繊維表面に対してしっかりと固着する一般式1で示すものが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、R1〜R4はアルキル基を示し、対イオンX−は有機酸イオンを表す。)
一般式1における第四級アンモニウムカチオンの置換基R1〜R4は、アルキル基で、各々炭素数20以下のものが好ましく、炭素数が10〜12の置換基と1〜3の置換基を共存させたものが好ましい。炭素数が20を超えると十分な抗菌性能が得られない。
【0021】
一般式1における対イオンX− としては有機酸イオンであり、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、乳酸イオン、アジピン酸イオン、グルコン酸イオンが特に好ましい。対イオンX− が塩化物イオンなどの無機酸イオンの場合、製造する工程や後加工する工程で処理機械の金属部分に錆が発生するという問題が生じる。
【0022】
また、かかるカチオン系界面活性剤の添加量としては、繊維重量に対して0.1〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.3重量%含有しているものが用いられる。0.1重量%未満では十分な制菌効果が得られず、また0.5重量%を越えては、製糸性や糸物性が満足するものが得られない。
【0023】
本発明において用いられる[B]アミノシリコーンは、一般式2に示すものが好ましく、アミノ含量が0.1〜1.0%、アミノ等量が100〜10000、25℃における粘度が100から10000mPa・sであるとさらに好ましい。アミノ含量が0.1未満、アミノ等量が10000を越え、25℃における粘度が100未満であると、必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり、十分な洗濯耐久性のある制菌性能が得られない。逆に、アミノ含量が1.0を越え、アミノ等量が1000未満、25℃粘度が10000を越えていると平滑な風合いが乏しくなる。
【0024】
【化3】
【0025】
(式中、R5は炭素数1〜5のアルキル基、R6は水素もしくは炭素数1〜5のアルキル基、A1は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基、hおよびkは正の整数をそれぞれ表す。)
本発明において用いられる[C]アミノシランは、一般式3に示すものが好ましく、アミノ含量が5〜25%であるとさらに好ましい。アミノ含量が5%未満であると必須成分の繊維表面に対する固着が弱くなり十分な洗濯耐久性が得られない。また、25%を越えると平滑な風合いが乏しくなる。
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、R7およびR8は炭素数1〜5のアルキル基、A2は1〜5個のアミノ基を有する炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ表す。)
また、かかる[B]アミノシリコーン及び[C]アミノシランの添加量としては、それらの和([B]+[C])が繊維重量に対して0.2重量%以上が好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。0.2重量%未満では十分な洗濯耐久性が得られず、また平滑な風合いが乏しくなる。
【0028】
本発明における必須成分の比率に関しては、[A]/([B]+[C])=30/70〜70/30が好ましい。[A]/([B]+[C])が30/70未満では十分な抗菌性能が得られない。また70/30を越えると、十分な染色性と浸透性が得られず、また熱処理工程で抗菌剤が変質し、繊維が黄変してしまう。
【0029】
本発明にかかる上述した抗菌油剤を繊維表面に固着させたアクリル繊維は、以下に記載する方法で製造することができる。すなわち、例えば、まず繊維に対して目標付着量になるように該抗菌油剤を水中へ乳化分散してエマルジョン組成物とし、次いで該組成物をパディング方式、スプレー方式、浸漬・遠心脱水方式、あるいはコーティング方式などにより繊維表面に付与し、必要に応じて80〜120℃で予備乾燥した後、100〜150℃で加熱処理することにより製造することができる。
【0030】
本発明におけるアクリル繊維とは、繊維形成性を有するアクリル系ポリマー、すなわちアクリロニトリルを90%以上含有するアクリル系ポリマーを意味し、特に限定されるものではないが、製造ポリマーとして製糸性、耐失透性、染色性等の面から、共重合成分の共重合量が10モル%以下、好ましくは8モル%以下のものが使用される。このアクリル系ポリマーの共重合成分には、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの低級アルキルエステル類、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、塩化ビニリデン等のビニル化合物の他に、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸およびそれらの塩類等のモノマー類の同種または異種を用いることができる。また、繊維の形態は、特に限られているわけではないが、衣料・寝具用途に好適な短繊維が好ましく、具体的には次のとおりである。
【0031】
単繊維繊度は0.1〜100dtexが好ましく、1〜30dtexが更に好ましい。
【0032】
繊維長は、10〜1000mmが好ましく、20〜100mmが更に好ましい。
【0033】
捲縮数は3〜20山/25mmが好ましく、捲縮度は10〜50%が好ましい。
【0034】
また、本発明にかかる上述した油剤のアクリル繊維への付着量は、特に限定はされないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましい。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本例中の制菌性、風合い耐久性および制電性はそれぞれ次の方法により求めた。
(1)抗菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、接種直後の試料布に対する殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0036】
優秀(◎):殺菌活性値≧3.0
良 (○):殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):殺菌活性値<1.0
(2)風合耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2 の開繊した試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を詰め込み、JISL1096−1990 6.23のA法にて10回洗濯した後、その風合いを触感により以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0037】
優秀(◎):羽毛調のスベリ感がある
良 (○):羽毛調のスベリ感がややある
不良(△):ややきしみ感がある
不可(×):きしみ感がある
(3)染色性
試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊してウェブ状とした試料布を用い、以下の染色液を用いて浴温度を50分で100℃まで昇温しそのまま100℃で60分間の染色を行った。
【0038】
<染色液>
Astrzon Gollden Yellow GL−E 0.129owf%
Astrzon Red GTL−N 0.18 owf%
Sumiacryl Blue N−SL 0.16 owf%
D−267(日華化学(株)社製) 3.80 owf%
酢酸 0.60 owf%
油剤付与を行っていない洗浄綿について同じ条件で染色を行い、これを対照綿として試料綿とのL値の差を比較し、次の4段階で判定して優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0039】
優秀(◎):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|<0.5
良 (○):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|=0.5〜1.0
不良(△):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|=1.0〜2.0
不可(×):|L値(対照綿)−L値(試料綿)|≧2.0
(4)浸透性
試料綿(1.7dtex、38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)を開繊して0.7g量りとったものを直径2cmの球状にし、水中に静かに落として水面に触れたところから完全に沈むまでの時間を測定した。その沈降時間を以下の4段階で判定し、優秀(◎)と良(○)を合格とした。
【0040】
優秀(◎):沈降時間<1.0秒
良 (○):沈降時間=1.0〜2.5秒
不良(△):沈降時間=2.5〜4.0秒
不可(×):沈降時間≧4.0秒
洗浄綿(単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mm、捲縮数11山/25mm、捲縮度13%)に、表1に示す油剤をスプレー方式で繊維に対して0.6重量%となるように給油付与し、140℃×20分の熱処理を施して上述の試料綿を作製した。
【0041】
油剤の成分として、[A]のカチオン系界面活性剤としてジデシルジメチルアンモニウムアジピン酸塩およびジデシルジメチルアンモニウム乳酸塩、[B]のアミノシリコーンとして、アミノ含量0.4%、アミノ等量4000および、アミノ含量0.8%、アミノ等量2000のアルコキシ末端アミノ変性シリコーン、[C]のアミノシランとしてアミノ含量13.8%および8.6%のアミノアルコキシシランをそれぞれ用い、表1に記載した配合比率で油剤を調製し、処理したものである。
【0042】
これらの試料綿を用いて上述の(1)〜(3)の評価を行い、その結果を表2に示した。その結果、本発明のアクリル繊維はいずれも洗濯耐久のあるやわらかな風合い、優れた抗菌性および良好な染色性を併せ持っていたが、比較例のアクリル繊維は併せ待っていなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、洗濯耐久性のある柔らかい風合い、優れた制菌性および良好な染色性を有するアクリル繊維、詳しくは衣料・寝具用途として最適なアクリル短繊維を提供することができる。
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