JP2004190053A - 繰り返し曲げ特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Takashi Terajima
敬 寺島
Minoru Takashima
稔 高島
Yasuyuki Hayakawa
康之 早川
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Abstract

【課題】特にSおよびSeを50ppm 以下に低減した場合に問題となる、被膜の均一性並びに密着性の劣化を防止するとともに、製品板における繰り返し曲げ特性の劣化を回避する。
【解決手段】Alを100ppm未満、SおよびSeをそれぞれ50ppm 以下に低減した成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍を行い、その後MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤として、MgO :100 重量部に対してTi酸化物を0.1 〜9.0 重量部含有するものを用いて、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1050℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50 vol%以上の雰囲気中にて行う、工程を含み、かつこの工程における950 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、磁気特性および繰り返し曲げ特性の良好な方向性電磁鋼板を安定して製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板の製造に際しては、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して、最終仕上焼鈍中にゴス方位粒と呼ばれる{110}<001>方位粒を優先的に二次再結晶させることが、一般的な技術として使用されている。
例えば、特許文献1には、インヒビターとしてAlN,MnSを使用する方法が、また特許文献2には、インヒビターとしてMnS, MnSeを使用する方法が開示され、いずれも工業的に実用化されている。
これらとは別に、CuSeとBNを添加する技術が特許文献3に、またTi,Zr,V等の窒化物を使用する方法が特許文献4に、それぞれ開示されている。
【0003】
これらのインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、析出物を微細に分散させなければならないので、熱延前のスラブ加熱を1300℃以上の高温で行うことが必要とされる。
しかしながら、スラブの高温加熱は、設備コストが嵩むことの他、熱間圧延時に生成するスケール量も増大することから歩留りが低下し、また設備のメンテナンスが煩雑になる等の問題がある。
【0004】
これに対して、インヒビターを使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法が、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8に開示されている。これらの技術に共通していることは、表面エネルギーを駆動力として{110}面を優先的に成長させることを意図していることである。
表面エネルギー差を有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求される。例えば、特許文献5に開示の技術では板厚が 0.2mm以下に、また特許文献6に開示の技術では板厚が0.15mm以下に、それぞれ制限されている。
しかしながら、現在使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるため、上記したような表面エネルギーを利用した方法で磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することは難しい。
【0005】
ここに、表面エネルギーを利用するためには、表面酸化物の生成を抑制した状態で高温の最終仕上焼鈍を行わなければならない。例えば、特許文献5に開示の技術では、1180℃以上の温度で、しかも焼鈍雰囲気として、真空または不活性ガス、あるいは水素ガスまたは水素ガスと窒素ガスとの混合ガスを使用することが記載されている。
また、特許文献6に開示の技術では、950 〜1100℃の温度で、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気で、しかもこれらを減圧することが推奨されている。さらに、特許文献8に開示の技術では、1000〜1300℃の温度で酸素分圧が0.5 Pa以下の非酸化性雰囲気中または真空中で最終仕上焼鈍を行うことが記載されている。
【0006】
このように、表面エネルギーを利用して良好な磁気特性を得ようとすると、最終仕上焼鈍の雰囲気は不活性ガスや水素が必要とされ、また推奨される条件として真空とすることが要求されるけれども、高温と真空の両立は設備的には極めて難しく、またコスト高ともなる。
【0007】
また、表面エネルギーを利用した場合には、原理的には{110}面の選択のみが可能であるにすぎず、圧延方向に<001>方向が揃ったゴス粒の成長が選択されるわけではない。
方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁化容易軸<001>を揃えてこそ磁気特性が向上するので、{110}面の選択のみでは原理的に良好な磁気特性は得られない。そのため、表面エネルギーを利用する方法で良好な磁気特性を得ることができる圧延条件や焼鈍条件は極めて限られたものとなり、その結果、得られる磁気特性は不安定とならざるを得ない。
【0008】
さらに、表面エネルギーを利用する方法では、表面酸化層の形成を抑制して最終仕上焼鈍を行わねばならず、たとえばMgO のような焼鈍分離剤を塗布焼鈍することができないので、最終仕上焼鈍後に通常の方向性電磁鋼板と同様な酸化物被膜を形成することはできない。例えば、フォルステライト被膜は、焼鈍分離剤としてMgO を主成分として塗布した時に形成される被膜であるが、この被膜は鋼板表面に張力を与えるだけでなく、フォルステライト被膜の上にさらに塗布焼き付けるリン酸塩を主体とする絶縁張力コーティングの密着性を確保する機能を担っている。従って、フォルステライト被膜の無い場合には鉄損は大幅に劣化する。
【0009】
そこで、発明者らは、インヒビター形成成分を含有しない素材について、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術を、特許文献9に提案した。この技術は、表面エネルギーを用いることなく結晶粒をゴス方位に揃えることが可能であるため、上記した鋼板表面の制約がなく、従って最終仕上焼鈍時に焼鈍分離剤を塗布してフォルステライト被膜を形成することができる。
【0010】
ところで、特許文献9に提案した技術では、Al含有量を所定の範囲に低減するとともに、SおよびSeを含有も制限しているが、かようにSおよびSe量を低減した場合、脱炭焼鈍もしくは仕上焼鈍時に素材が著しく酸化し易く、製品被膜の均一性並びに密着性が劣化することが新たな問題となっていた。
【0011】
ここで、AlN およびSbをインヒビターとして用いる電磁鋼板に関してではあるが、このSおよびSeの低減に伴う問題に対して、焼鈍分離剤中にSr化合物を含有させることによって、フォルステライト被膜の均一性並びに密着性を改善する技術が、特許文献10に記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特公昭40−15644 号公報
【特許文献2】
特公昭51−13469 号公報
【特許文献3】
特公昭58−42244 号公報
【特許文献4】
特公昭46−40855 号公報
【特許文献5】
特開昭64−55339 号公報
【特許文献6】
特開平2−57635 号公報
【特許文献7】
特開平7−76732 号公報
【特許文献8】
特開平7−197126号公報
【特許文献9】
特開2000−129356号公報
【特許文献10】
特開平11−199932号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、SおよびSeをそれぞれ50ppm 以下に低減しかつインヒビターを用いない方向性電磁鋼板に、特許文献10に記載の技術を適用すると、被膜の均一性並びに密着性は改善されるものの、製品板の繰り返し曲げ特性が悪化するという、新たな問題が派生することが明らかになった。
【0014】
ここで、繰り返し曲げ特性とは、JIS C2550に規定された、繰り返し曲げ試験に従って、鋼板を幅30mmに切り出し、これに張力をかけて繰り返し直角に曲げて、鋼板に亀裂が生じるまでの回数を測定して評価される。この繰り返し曲げ特性に劣ると、鋼板の打ち抜きラインの途中で鋼板が破断したり、巻トランスの製造において鋼板に割れが発生し易くなる。
【0015】
この発明は、インヒビターを用いる方向性電磁鋼板における、熱延前の高温スラブ加熱に付随する問題を回避した、上記特許文献9に開示した方向性電磁鋼板の製造技術の改良に係り、特にSおよびSeを50ppm 以下に低減した場合に問題となる、被膜の均一性並びに密着性の劣化を防止するとともに、製品板における繰り返し曲げ特性の劣化を回避しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
さて、SおよびSeをそれぞれ50ppm 以下に低減しかつインヒビターを用いない方向性電磁鋼板に、特許文献10に記載の技術を適用すると、被膜の均一性並びに密着性は改善されるものの、製品板の繰り返し曲げ特性が悪化する理由について検討した結果、被膜特性の改善により地鉄からの窒素の純化が不良になって、粒界に窒化珪素が析出する結果、製品板における繰り返し曲げ特性が劣化されることが明らかとなった。さらに、析出する窒化物は、磁気の履歴損にも影響を与え、これが増大して鉄損の劣化を招くことにもなる。そこで、地鉄における窒素の残留を解消する手法について鋭意究明し、この発明を導くに到った。
【0017】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) C:0.08mass%以下、Si:2.0 〜8.0 mass%およびMn:0.005 〜3.0 mass%を含み、かつAlを100ppm未満、SおよびSeをそれぞれ50ppm 以下に低減した成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍を行い、その後MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を製造するに当たり、
焼鈍分離剤として、MgO :100 重量部に対してTi酸化物を0.1 〜9.0 重量部含有するものを用いて、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1050℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50 vol%以上の雰囲気中にて行う、工程を含み、かつこの工程における950 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させることを特徴とする繰り返し曲げ特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
【0018】
(2) 上記(1) において、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1025℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50 vol%以上の雰囲気中にて行う、工程を含み、かつこの工程における975 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させることを特徴とする繰り返し曲げ特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
【0019】
(3) 上記(1) または(2) において、鋼スラブが、さらに、Ni:0.005 〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005 〜0.50mass%、Cu:0.01〜1.50mass%、P:0.0050〜0.50mass%およびCr:0.01〜1.50mass%のうちから選んだ少なくとも1種を含有する成分組成を有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
この発明では、インヒビターを使用しないで二次再結晶を発現させる方法を利用する。
さて、発明者らは、ゴス方位粒が二次再結晶する理由について鋭意研究を重ねた結果、一次再結晶組織における方位差角が20〜45°である粒界が重要な役割を果たしていることを発見し、Acta Material 45巻(1997)1285頁に報告した。
【0021】
すなわち、方向性電磁鋼板の二次再結晶直前の状態である一次再結晶組織を解析し、様々な結晶方位を持つ各々の結晶粒周囲の粒界について、粒界方位差角が20〜45°である粒界の全体に対する割合(mass%)について調査した結果を、図1に示す。図1において、結晶方位空間はオイラー角(Φ 、Φ、Φ )のΦ=45°断面を用いて表示しており、ゴス方位など主な方位を模式的に表示してある。
【0022】
図1は、方向性電磁鋼板の一次再結晶組織における、方位差角20〜45°である粒界の存在頻度を示したものであるが、ゴス方位が最も高い頻度を持つことがわかる。ここに、方位差角20〜45°の粒界は、C .G .Dunnらによる実験データ(AIME Transaction 188巻(1949)368 頁)によれば、高エネルギー粒界である。この高エネルギー粒界は、粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をしている。 粒界拡散は、粒界を通じて原子が移動する過程であるので、粒界中の自由空間の大きい高エネルギー粒界のほうが粒界拡散が速い。
【0023】
二次再結晶は、インヒビターと呼ばれる析出物の拡散律速による成長・粗大化に伴って発現することが知られている。高エネルギー粒界上の析出物は、仕上焼鈍中に優先的に粗大化が進行するため、ゴス方位となる粒の粒界が優先的にピン止めがはずれて粒界移動を開始し、ゴス方位粒が成長すると考えられる。
【0024】
発明者らは、上記の研究をさらに発展させて、二次再結晶におけるゴス方位粒の優先的成長の本質的要因は、一次再結晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、インヒビターの役割は、高エネルギー粒界であるゴス方位粒の粒界と他の粒界との移動速度差を生じさせることにあるのを見出した。
従って、この理論に従えば、インヒビターを用いなくとも、粒界の移動速度差を生じさせることができれば、ゴス方位に二次再結晶させることが可能となる。
【0025】
さて、鋼中に存在する不純物元素は、粒界とくに高エネルギー粒界に偏析し易いため、不純物元素を多く含む場合には、高エネルギー粒界と他の粒界との移動速度に差がなくなっているものと考えられる。
よって、素材を高純度化し、上記のような不純物元素の影響を排除することにより、高エネルギー粒界の構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、ゴス方位粒に二次再結晶させることが可能になる。
【0026】
さらに、粒界の移動速度差を利用して安定した二次再結晶を可能とするためには、一次再結晶組織をできる限り均一な粒径分布に保つことが肝要である。なぜなら、均一な粒径分布が保たれている場合には、ゴス方位粒以外の結晶粒は粒界移動速度の小さい低エネルギー粒界の頻度が高いために、粒成長が抑制されている状態、すなわちTexture Inhibitionが効果的に発揮され、粒界移動速度が大きい高エネルギー粒界の頻度が最大である、ゴス方位粒の選択的粒成長が促進されて、ゴス方位への二次再結晶が実現するからである。
【0027】
これに対して、粒径分布が一様でない場合には、隣接する結晶粒同士の粒径差を駆動力とする正常粒成長が起こるため、すなわち粒界の移動速度差とは異なる要因で成長可能となる結晶粒が選択されるために、上記したTexture Inhibitionの効果が発揮されずに、ゴス方位粒の選択的粒成長が起こらなくなる。
【0028】
ところが、工業的生産では、インヒビター成分を完全に除去することは困難なので、実際はこれら成分が不可避的に含有されてしまい、さらには熱延時の加熱温度が高い場合、加熱時に固溶した微量不純物としてのインヒビター形成成分が熱延中に不均一に微細析出する。その結果、不均一に分布した析出物により、粒界移動が局所的に抑制されて粒径分布も極めて不均一になり、上記したとおりゴス方位への二次再結晶粒の発達が阻害される。従って、インヒビター形成成分をを低減しつつ、熱延前並びに熱延時の加熱温度を圧延可能な範囲でできる限り低めに抑えることが、不可避的に含まれてしまう微量のインヒビター形成成分の微細析出を回避して無害化するために有効である。
【0029】
上述のように、この発明では、表面エネルギーを利用せずに、ゴス方位に二次再結晶させるため、焼鈍分離剤を用いてフォルステライト被膜を形成させることが可能である。しかしながら、インヒビターを用いないこと、特にSおよびSeを50ppm 以下とすることが必要になるため、脱炭焼鈍や最終仕上焼鈍途中での鋼板の酸化挙動が変化し、製品板の被膜の均一性や密着性が阻害されていた。この問題に対しては、焼鈍分離剤中へのTi化合物の添加が有効である。
【0030】
すなわち、焼鈍分離剤としてMgO のみのものを用いると、厚みが薄くまた外観が不均一なフォルステライト被膜しか得られない。この間題を解決するために、特公昭49−29409 号や特開平7−76736 号各公報では、MgO 中にTi化合物、特にTiOを添加することが提案されている。この場合、最終仕上焼鈍は1180℃以上の高温度で行われるのが一般的であり、これは、鋼中のS、Se、Alといったインヒビター成分を純化し鉄損の向上や、純化不良が原因となる繰り返し曲げ不良を防ぐためである。
【0031】
しかしながら、この発明が対象とする、SおよびSeを50ppm 以下に低減した鋼板では、上記した公報の技術に従って焼鈍分離剤中にTi化合物を添加すると、最終仕上焼鈍後に繰り返し曲げ特性が極めて劣化してしまうという問題が明らかとなった。
【0032】
そこで、まず、繰り返し曲げ特性が劣化する原因を調査したところ、SおよびSeを50ppm 以下に低減した鋼板が酸化されやすいために、二次再結晶後の粒界が酸化され、粒界にシリカの内部酸化層が形成され、その後1180℃以上での高温の最終仕上焼鈍中にシリカが還元されて鋼中の窒素と反応し、コイルを徐冷する過程においてSiの窒化物が粒界に析出して、粒界から割れを生じることにより繰り返し曲げ特性が劣化することが明らかとなった。この粒界酸化は、Ti酸化物による酸素の供給が原因であることも判明した。しかしながら、Ti酸化物無くしては均一な被膜が得られないことから、Ti酸化物をMgO に含有した焼鈍分離剤を用いることは必須であり、この焼鈍分離剤の使用を前提に、繰り返し曲げ特性の劣化を防ぐことが肝要である。
【0033】
このような背景の下、さらに上記した一連のSi窒化物の析出を防ぐ手段を鋭意研究した結果、Si窒化物が粒界に形成されるのを防ぐには、最終仕上焼鈍の純化焼鈍での最高到達温度を規制するのが有効であることを見出したが、粒界以外の部分には依然として窒素が残留して、粒界以外では窒化物が形成されるために履歴損の増加から交流鉄損の劣化を招くことが判明した。この純化焼鈍後に鋼板中に窒素が残留するのは、純化焼鈍で窒素がフォルステライト被膜中に15ppm 程度しか吸収されないことが原因とわかった。
【0034】
通常は、良好な被膜を得るために、焼鈍分離剤中にTi酸化物を含有させ、このTiが地鉄中のNと反応してフォルステライト被膜中に窒素が固定される。しかしながら、この発明の鋼成分系では、理由は定かでないが、被膜中に固定されるはずの窒素が少量であり、多くは地鉄に残ってしまうのである。
【0035】
なお、地鉄中からの窒素の純化は、2つの段階に分けられる。すなわち、
(i) フォルステライト被膜形成前に行われる窒素の焼鈍雰囲気中への拡散による純化
(ii)フォルステライト被膜形成後の被膜中への窒素の固定
と考えられている。
よって、この発明では、純化焼鈍後の鋼板中の窒素を低減するために、この発明の成分系では、上の(i) の段階での純化、つまりフォルステライト被膜形成前に行われる窒素の焼鈍雰囲気中への拡散による、純化を行う必要のあることがわかる。そこで、最終仕上焼鈍でのフォルステライト被膜形成前の段階に関して、次の実験を行ったところ、窒素の純化に及ぼす、焼鈍雰囲気と温度との関係が明らかになった。
【0036】
(実験1)
C:0.050 mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.070 mass%、Al:80ppm 、Sb:0.005 mass%、N:40ppm 、S:20ppm およびSe:20ppm を含有する電磁鋼スラブを、1200℃の温度に加熱後、熱間圧延にて2.2 mm厚の熱延板コイルとした。この熱延板に1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施し、鋼板表面のスケールを除去したのち、タンデム圧延機により冷間圧延し、最終板厚0.28mmとした。その後、脱脂処理を行い、均熱温度840 ℃で120 秒間保持する脱炭焼鈍の後、MgO を主体とする焼鈍分離剤中にTi酸化物としてMgO :100 重量部にTiOを5.0 重量部を含有したものを塗布してから、最終仕上焼鈍を施して製品板とした。最終仕上焼鈍は、25℃/h の昇温速度で目的の温度まで加熱し、その温度に10時間保持してから、地鉄中の窒素量を調べた。その際、900 ℃から保持終了までの雰囲気は一定とした。この調査結果を、表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 2004190053
【0038】
表1に示すように、焼鈍雰囲気を水素にしたものは、いずれの保持温度においても、窒素の残留量はほぼスラブの成分と一致していた。一方、雰囲気をArにしたものは、950 ℃以上の温度で窒素の純化が進むことがわかった。また、900 ℃で保持したものは、窒素の純化がはかれなかった。これは、温度が低いことが原因であると考えられる。
【0039】
(実験2)
次に、実験1と同じ工程を経て、MgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布したものを、950 ℃まで25℃/h の昇温速度での焼鈍を施した後、950 ℃、10時間でAr雰囲気で保持した。この焼鈍後の製品板の地鉄中の窒素濃度について調査した結果を、表2に示す。
【0040】
【表2】
Figure 2004190053
【0041】
表2に示す結果から、900 ℃以上の温度域において、H 以外の雰囲気で焼鈍を行って被膜形成を阻止することによって、窒素の焼鈍雰囲気への拡散が可能になったものと考えられる。ただし、窒素を用いた場合は、窒化によって残留窒素が多くなってしまうことも確認された。
【0042】
ここに、最終仕上焼鈍の保持温度が900 ℃以上の領域では、不活性雰囲気で焼鈍を行うことが、残留窒素の低減に有効であることを見出すに到ったのである。さらに、かような雰囲気の下での焼鈍における保持時間について検討した結果、適正な保持時間を見出すに到り、この発明を完成することができた。
【0043】
次に、この発明の電磁鋼板の製造方法について詳しく述べる。
まず、素材となる鋼スラブの各成分の限定理由について説明する。
C:0.08mass%以下
C量が0.08mass%を超えると、脱炭焼鈍を施してもCは磁気時効の起こらない50ppm 以下に低減することが困難になるため、C量は0.08mass%以下に制限しておく必要がある。
【0044】
Si:2.0 〜8.0 mass%
Siは、電気抵抗を高めて鉄損の向上に有効に寄与するが、含有量が2.0 mass%に満たないと十分な鉄損低減効果が得られず、一方8.0 mass%を超えると加工性が劣化するため、Si量は2.0 〜8.0 mass%とする。
【0045】
Mn:0.005 〜3.0 mass%
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005 mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方3.0 mass%を超えると磁束密度が低下するため、Mn量は0.005 〜3.0 mass%とする。
【0046】
Al:100ppm未満かつN、SおよびSe:それぞれ50ppm 以下
不純物元素であるAlは100ppm未満、SおよびSeについてはそれぞれ50ppm 以下に低減することが、良好な二次再結晶を実現する上で必要になる。また、Nについては、最終仕上焼鈍後のSi窒化物の生成を防止するために、50ppm 以下とすることが望ましい。
【0047】
その他、窒化物形成元素であるTi、Nb、B、TaおよびV等についても、それぞれ50ppm 以下に低減することが鉄損の劣化を防ぎ、良好な加工性を確保する上で有利である。
【0048】
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、この発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
すなわち、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる目的で、Niを添加することができる。しかしながら、添加量が0.005 mass%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50mass%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、Ni添加量は0.005 〜1.50mass%とすることが好ましい。
【0049】
さらに、鉄損の向上を目的として、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005 〜0.50mass%、Cu:0.01〜1.50mass%、P:0.005 〜0.50mass%およびCr:0.01〜1.5mass%等を単独または複合して添加することができる。しかしながら、それぞれ添加量が下限値に満たないと鉄損向上効果が小さく、一方上限を超えると二次再結晶粒の発達が抑制されるため、いずれも上記範囲で添加することが好ましい。
【0050】
次に、上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、転炉、電気炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用いてスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて 100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
【0051】
スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
熱間圧延前のスラブ加熱温度は1250℃以下に抑えることが、熱間圧延時に生成するスケール量を低減する上で特に望ましい。また、結晶組織の微細化および不可避的に混入するインヒビター形成成分の弊害を無害化して、均一な整粒一次再結晶組織を実現する意味でもスラブ加熱温度の低温化が望ましい。
【0052】
次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。すなわち、ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は 800〜1100℃の範囲が好適である。というのは、熱延板焼鈍温度が 800℃未満では熱間圧延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になり、二次再結晶の発達が阻害され、一方熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、不可避的に混入するインヒビター形成成分が固溶し冷却時に不均一に再析出するために、整粒一次再結晶組織を実現することが困難となり、やはり二次再結晶の発達が阻害されるからである。さらに、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎることも、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。
【0053】
上記熱延板焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施したのち、脱炭焼鈍を行い、Cを磁気時効の起こらない50ppm 以下、好ましくは30ppm 以下に低減する。
【0054】
なお、冷間圧延に際しては、圧延温度を100 〜300 ℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100 〜300 ℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる点で有効である。
【0055】
また、最終冷延後の脱炭焼鈍は、湿潤雰囲気を使用して 700〜1000℃の温度範囲で行うことが好適である。また、脱炭焼鈍後に浸珪法によってSi量を増加させる技術を併用してもよい。
【0056】
その後、MgO を主体とする焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させる。ここで、均一な被膜を形成するためには、焼鈍分離剤中にTi酸化物を含有させる必要がある。このTi酸化物は、MgO :100 重量部に対して、TiO換算で0.1 〜9.0 重量部で含有することが肝要である。すなわち、Ti酸化物が0.1 重量部未満であると被膜の均一性が失われ、一方9.0 重量部より多いと鋼中にTiが侵入し磁性劣化を起こしたり、鋼板の酸素目付量が過多となり被膜不良となる。
【0057】
ここで、焼鈍分離剤に含有させるTi酸化物としては、TiO、 TiO ・HO 、Ti(OH) および Ti(OH)等を用いることができる。
【0058】
そして、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍は、まず二次再結晶を発現するために 800℃以上であればよく、その際の 800℃までの加熱速度は、磁気特性に大きな影響を与えないので任意の条件でよい。
【0059】
引き続き、高温での焼鈍を行うに当たり、繰り返し曲げ特性および鉄損特性の向上を目指して、窒素の焼鈍雰囲気中への拡散による純化を行うために、上述したように、900 ℃以上1050℃以下の温度域では不活性ガスを含む雰囲気とすることが肝要である。すなわち、温度域が900 ℃未満では、不活性雰囲気でなくとも問題が生じることがなく、一方1050℃を超えると、被膜形成が阻害されて被膜特性が劣化することになる。より好ましくは、1025℃以下とする。なお、不活性ガス濃度は、50 vol%以上でなければ効果が得られない。不活性ガスとしては、Arの他、HeやNe等の希ガス元素が使用可能である。
【0060】
また、窒素の焼鈍雰囲気への拡散が生じる温度は、900 ℃であり、とりわけ950 ℃以上の温度域で促進される。そこで、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1050℃以下の温度域に5時間以上15時間以下で保持する工程を含むこと、特に、この工程において950 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させることが肝要である。
【0061】
すなわち、900 ℃以上1050℃以下の温度域での保持時間が5時間未満、または950 ℃以上の温度域での滞留が2時間未満では、窒素の焼鈍雰囲気中への拡散による純化が不十分となり、一方900 ℃以上1050℃以下の温度域での保持時間が15時間を超えるか、または950 ℃以上の温度域での滞留が10時間を超えると焼鈍分離剤中のMgが拡散して内部酸化層が変質し、内部酸化層を形成するSiO等の酸化物が鋼板表面へと移動してフォルステライトへ変化する反応が妨げられるために、その後の被膜生成に悪影響を及ぼす。
【0062】
さらに、被膜特性の向上をより重視する場合には、不活性ガス雰囲気の焼鈍を900 〜1025℃の温度域で行うことが有利であるが、その際、900 ℃以上1025℃以下の温度域での保持時間を 5〜15時間とし、特に975 ℃以上の温度域での滞留時間を2〜10時間として、より高温域において純化を促進することが有利である。
【0063】
なお、最終仕上焼鈍後は平坦化焼鈍によって形状矯正する。さらに、鉄損を改善するために、鋼板表面に張力を付与する絶縁コーティングを施すことが有効である。
【0064】
【実施例】
実施例1
C:0.050 mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.070 mass%、Al:80ppm 、Sb:0.005 mass%、N:40ppm 、S:20ppm およびSe:20ppm を含有する鋼スラブを、1200℃の温度に加熱後、熱間圧延にて2.2 mm厚の熱延板コイルとした。この熱延板に1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施し、鋼板表面のスケールを除去したのち、タンデム圧延機により冷間圧延し、最終板厚0.28mmとした。その後、脱脂処理を行い、均熱温度840 ℃で120 秒間保持する、脱炭焼鈍の後、MgO を主体とする焼鈍分離剤中にTi化合物としてTiOを5.0 重量部含有したものを塗布してから、最終仕上焼鈍を施して製品板とした。
【0065】
最終仕上焼鈍に際しては、900 ℃までを25℃/h の昇温速度で加熱し、それ以降950 ℃から1050℃までを一定の昇温速度で加熱する処理を、種々の昇温速度および昇温時間について行った。このとき、900 ℃から950 ℃までの昇温に要した時間は2時間であった。また、950 ℃から1050℃まではArの雰囲気下で焼鈍を行った。その後の1050℃から1180℃の間の昇温速度は、25℃/h であり、1050℃以降はH 雰囲気にて焼鈍を行った。
【0066】
かくして得られた製品板について、磁気特性、繰り返し曲げ特性、地鉄窒素量および被膜特性を調査したところ、表3に示す結果を得た。ここで、繰り返し曲げ特性は、JIS C2550に規定された繰り返し曲げ試験において、6回未満で亀裂が生じたものを不良とした(以下の実施例も同様)。また、被膜特性は、曲げ剥離試験を行い、40mmφ曲げで被膜剥離しないものを良好、それ以外を不良とした。また、被膜の外観が不均一あるいは点状の欠陥が存在したものも不良とした。
【0067】
【表3】
Figure 2004190053
【0068】
実施例2
C:0.050 mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.070 mass%、Al:80ppm 、Sb:0.005 mass%、N:40ppm 、S:20ppm およびSe:20ppm を含有する鋼スラブを、1200℃の温度に加熱後、熱間圧延にて2.2 mm厚の熱延板コイルとした。この熱延板に1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施し、鋼板表面のスケールを除去したのち、タンデム圧延機により冷間圧延し、最終板厚0.28mmとした。その後、脱脂処理を行い、均熱温度840 ℃で120 秒間保持する、脱炭焼鈍の後、MgO を主体とする焼鈍分離剤中にTi化合物としてTiOを5.0 重量部含有したものを塗布してから、最終仕上焼鈍を施して製品板とした。
【0069】
最終仕上焼鈍に際しては、900 ℃までを25℃/h の昇温速度で加熱し、それ以降950 ℃から1050℃までを8時間かけて昇温した。このとき、900 ℃から950 ℃までの昇温に要した時間は2時間であった。また、950 ℃から1050℃まで焼鈍雰囲気のAr濃度を種々に変化させた。その後、1180℃の仕上げ温度で5時間の焼鈍を行った。1050℃から1180℃の間の昇温速度は、25℃/h であった。1050℃以降は、H 雰囲気にて焼鈍を行った。
【0070】
かくして得られた製品板について、磁気特性、繰り返し曲げ特性および地鉄窒素量を調査したところ、表4に示す結果を得た。
【0071】
【表4】
Figure 2004190053
【0072】
実施例3
C:0.050 mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.070 mass%、Al:80ppm 、Sb:0.005 mass%、N:40ppm 、S:20ppm およびSe:20ppm を含有する鋼スラブを、1200℃の温度に加熱後、熱間圧延にて2.2 mm厚の熱延板コイルとした。この熱延板に1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施し、鋼板表面のスケールを除去したのち、タンデム圧延機により冷間圧延し、最終板厚0.28mmとした。その後、脱脂処理を行い、均熱温度840 ℃で120 秒間保持する、脱炭焼鈍の後、MgO を主体とする焼鈍分離剤中にTi化合物としてTiOを5.0 重量部含有したものを塗布してから、最終仕上焼鈍を施して製品板とした。
【0073】
最終仕上焼鈍に際しては、900 ℃までを25℃/h の昇温速度で加熱した。その後、
条件(i) :900 ℃から950 ℃までを12.5℃/h で昇温し、950 ℃から1050℃までを15℃/h で昇温した。このとき、1050℃までの焼鈍は、Ar雰囲気とした。
条件(ii):900 ℃から975 ℃までを12.5℃/h で昇温し、975 ℃から1025℃までを15℃/h で昇温した。このとき、1025℃までの焼鈍は、Ar雰囲気とした。
その後、いずれの条件も、ArからH 雰囲気として、25℃/h の昇温速度で加熱し、1180℃で5時間の純化焼鈍を行った。
【0074】
かくして得られた製品板について、磁気特性、繰り返し曲げ特性および地鉄窒素量に加えて、曲げ剥離径、外観を調査したところ、表5に示す結果を得た。ここで、曲げ剥離径は被膜が剥離する曲げ径を求めたものである。
【0075】
【表5】
Figure 2004190053
【0076】
表5に示したように、Ar雰囲気にて焼鈍する温度を1025℃までとすると、同温度を1050℃までとした場合に比べて、良好な被膜特性が得られる。
【0077】
実施例4
表6に示す成分組成になる鋼スラブを、1200℃の温度に加熱後、熱間圧延し、2.2 mm厚の熱延板コイルとした。この熱延板に、1000℃の温度で30秒間の熱延板焼鈍を施し、鋼板表面のスケールを除去したのち、タンデム圧延機により冷間圧延し、最終板厚0.28mmとした。その後、脱脂処理を行い、均熱温度840 ℃で120秒間保持する脱炭焼鈍の後、MgO :100 質量部に対してTiOを5.0 重量部の割合で添加した焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施し製品板とした。
最終仕上焼鈍に際しては、900 ℃まで25℃/h の昇温速度で加熱し、それ以降は、表6に示す条件で焼鈍を行った。その後、1180℃で5時間の純化焼鈍を行った。なお、焼鈍雰囲気は、1050℃まではAr雰囲気とし、その後は、H 100 %とした。
【0078】
かくして得られた製品板の繰り返し曲げ特性、地鉄窒素量および被膜特性について調査した結果を、表6に併記する。
【0079】
【表6】
Figure 2004190053
【0080】
【発明の効果】
この発明によれば、インヒビターを用いることなく製造した方向性電磁鋼板における、被膜の均一性並びに密着性を改善するとともに、製品板における繰り返し曲げ特性をも併せて改善することができるから、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終仕上焼鈍前における方位差角が20〜45°である粒界の各方位粒に対する存在頻度(%)を示す図である。

Claims (3)

  1. C:0.08mass%以下、Si:2.0 〜8.0 mass%およびMn:0.005 〜3.0 mass%を含み、かつAlを100ppm未満、SおよびSeをそれぞれ50ppm 以下に低減した成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍を行い、その後MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤として、MgO :100 重量部に対してTi酸化物を0.1 〜9.0 重量部含有するものを用いて、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1050℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50 vol%以上の雰囲気中にて行う、工程を含み、かつこの工程における950 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させることを特徴とする繰り返し曲げ特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 請求項1において、最終仕上焼鈍は、900 ℃以上1025℃以下の温度域における5時間以上15時間以下の保持を不活性ガスの含有率が50 vol%以上の雰囲気中にて行う、工程を含み、かつこの工程における975 ℃以上の温度域に2時間以上10時間以下で滞留させることを特徴とする繰り返し曲げ特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2において、鋼スラブが、さらに、Ni:0.005 〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005 〜0.50mass%、Cu:0.01〜1.50mass%、P:0.0050〜0.50mass%およびCr:0.01〜1.50mass%のうちから選んだ少なくとも1種を含有する成分組成を有することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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