JP2016053203A - 方向性電磁鋼板の製造方法および窒化処理設備 - Google Patents

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【課題】二次再結晶前の鋼板に、窒素を鋼中へ効率的に拡散させ、窒化珪素を粒界に析出させることで、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】所定の組成になる鋼スラブに、さらに鋼中のsol.Al量およびN量を所定の範囲に制御し、再加熱することなくあるいは再加熱後、熱間圧延を施して熱延板としたのち、焼鈍および圧延によって最終板厚の冷間圧延板とし、ついで一次再結晶焼鈍の前、あるいは中、あるいは後に窒素増量(ΔN)を所定の範囲に規定した窒化処理を施した後、焼鈍分離剤を塗布して、二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、窒化処理時に高温処理、低温処理の少なくとも2段階の処理温度で窒化を行い、高温処理での滞留時間を10秒以上とする。【選択図】図1

Description

本発明は、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を安価に得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法およびそれに用いる窒化処理設備に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主にトランスの鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される[110]<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
従来、このような方向性電磁鋼板は、4.5mass%以下程度のSiと、MnS,MnSeおよびAlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを、1300℃以上に加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中で一次再結晶焼純を施して、一次再結晶および脱炭を行い、ついでマグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3)。
上述したとおり、従来の方向性電磁鋼板の製造に際しては、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビター成分)をスラブ段階で含有させて、1300℃を超える高温のスラブ加熱をすることにより、これらのインヒビター成分を一旦固溶させ、後工程で微細析出させることによって二次再結晶を発現させるという工程が採用されてきた。
このように、従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が必要であったため、その製造コストは極めて高いものとならざるを得ず、近年の製造コスト低減の要求に応えることができないというところに問題を残していた。
こうした問題を解決するために、例えば、特許文献4には、酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060%含有させ、スラブ加熱を低温に抑え脱炭焼鈍工程で適正な窒化雰囲気下で窒化を行なうことによって、二次再結晶時に(Al, Si)Nをインヒビターとして用いる方法が提案されている。
この(Al, Si)Nは、鋼中に微細分散し有効なインヒビターとして機能するが、非特許文献1によれば、上記製造方法において、窒化処理後の鋼板には、窒化珪素を主体とした析出物(Si3N4もしくは(Si,Mn)N)が、その表面近傍に形成している。そして、引き続いて行われる二次再結晶焼鈍において、窒化珪素を主体とした析出物が、より熱力学的に安定したAl含有窒化物((Al,Si)N、あるいはAlN)に変化する。この際、表面近傍に存在したSi3N4は二次再結晶焼鈍の昇温中に固溶し、窒素は鋼中へ拡散する。そして、900℃を超える温度になると、板厚方向にほぼ均一なAl含有窒化物として析出し、板全厚で粒成長抑制力(インヒビション効果)を得ることができるとされている。なお、この手法は、スラブ高温加熱を用いた析出物の分散制御に比べて、比較的容易に板厚方向に同じ析出物量と析出物粒径を得ることができるという利点を有している。
さらに、窒化処理の温度を特殊に変更することで、二次再結晶に適した組織との両立を実現しようという技術も提案されている。例えば特許文献5では、窒化雰囲気にてやや低めの温度で再結晶をさせた後、それよりも高い温度で窒化処理を行う手法が提案されている。この手法は、窒化前の素材の一次粒成長の抑制を狙ったものであり、これによって一次粒径を適正に制御することができる。
他方、特許文献6では、やや高温で一次再結晶のみを行った後、それよりも低温で窒化処理を行う方法が提案されている。この方法に従うことで、板厚方向に均一に窒素を分配することができる。なお、特許文献5および6は、いずれもTiやCuを必須元素とするが、窒化後、窒化物を均一に析出させることで良好な特性を得ようとする目的で添加されている。
一方、そもそもスラブにインヒビター成分を含有させずに二次再結晶を発現させる技術については、特許文献7に、インヒビター成分を含有させなくとも二次再結晶ができる技術(インヒビターレス法)が開示されている。
ここに、インヒビターレス法は、より高純度化した鋼を利用し、テクスチャー(集合組織の制御)によって二次再結晶を発現させる技術である。しかしながら、インヒビターレス法では、高温のスラブ加熱が不要であって、低コストでの方向性電磁鋼板の製造が可能であるものの、インヒビターを有しないが故に、製造工程中での温度ばらつきなどの影響を受けて、製品での磁気特性にバラつきが生じやすいといった不利があった。
また、集合組織の制御は、磁気特性の向上に対して重要な要素であるため、集合組織制御を行う温間圧延などには、多くの条件が提案されている。こうした集合組織制御が十分に行なえない場合は、インヒビターを用いる技術に比べると、二次再結晶後のゴス方位([110]<001>)への集積度が低く、磁束密度も低くなってしまう。
さらに、このようなインヒビター成分を含有しないスラブを用い、途中工程で窒化処理を行うことで純粋なSi3N4を一次再結晶の粒界に選択的に析出させ、インヒビターとして用いることで、特性を安定的に向上させる技術(特許文献8)が提案されている。
一方、方向性電磁鋼板の特性を改善する上で、インヒビターの分散状態と同じく重要な要素としては、一次再結晶時の集合組織の制御が挙げられる。
方向性電磁鋼板の製造工程において、集合組織は、前工程からの組織の特徴を継承しており、スラブ時の結晶形態である柱状晶や、等軸晶に始まり、熱延時では、ロール摩擦によるせん断変形を受ける表面近傍と、単純圧縮変形を受ける中心部などでは、板厚方向に対して同じ集合組織を得ることは困難である。
特に鋼板表面は、熱延、冷延工程でロールと摩擦して、強いせん断応力を受けるために、ランダム化した組織が形成されることがあり、二次再結晶が鋼板表面から生じた場合には、良好な磁気特性が得られない場合があった。
米国特許第1965559号明細書 特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特許第2782086号公報 WO2011/102455号 WO2011/102456号 特開2000−129356号公報 特願2012−288881号明細書
Y. Ushigami et.al: Mat. Sci. Forum, Vols. 204-206, (1996), pp.593-598
上述したとおり、これまで提案されてきた方向性電磁鋼板の製造方法では、板厚方向に均一な集合組織を形成することは困難である。特に、鋼板の鋼板表面の組織から二次粒が発現した場合には、理想的な[110]<001>方位からずれた方位となりやすく、良好な磁気特性が得られない場合があった。
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、窒化珪素を形成する目的で、二次再結晶前の鋼板に、ガスを主体とする雰囲気での増窒処理により窒素を加えた方向性電磁鋼板に対し、窒素を鋼中へ効率的に拡散させ、窒化珪素を粒界に析出させることで、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を安価に得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法およびそれに用いる窒化処理設備を提供することを目的とする。
発明者らは、この問題を解決するために、板厚方向に均一に析出物を形成しインヒビション効果を発揮させるのではなく、鋼板表面の析出物量を多くし、中心部に比べて強い粒成長抑制力を付与し、二次再結晶を鋼板表面の組織から発生させないことで、特性安定化の可能性があるのではないかと推定し検討を行った。
さらに、発明者らは、窒化処理温度にも着目した。そもそも窒化物には析出に適した温度があり、例えば、900℃付近ではAlNが、700℃付近ではSi3N4が、さらに500℃付近では窒化鉄が析出するのに適している。
一般的に、方向性電磁鋼板の窒化は750℃近傍で窒化を行うことが多い。これはSi3N4の析出に適した温度であり、実際に窒化処理後の鋼板ではSi3N4が析出していることが、非特許文献1に記されている。このときのSi3N4の析出は板厚均一ではなく、鋼板表面近傍に最も多く、表面から1/4厚みまでの間にほとんどが存在している。つまり、Si3N4析出に適した温度で窒化処理を行うと、窒化により窒素が浸入すると同時にSi3N4の析出が生じるため、板厚の中心部にまでは窒素が拡散できない。こうした不均一はAlを含有する成分系では、非特許文献1に示されているように二次再結晶焼鈍の昇温過程で、より熱力学的に安定なAlNに置換する際に解消される。
しかし、Alを含有しないスラブを利用するインヒビターレス法に窒化処理を用いる場合は、Si3N4が最終的に利用する析出物であり、以降の工程でAlNへの置換は行われない。したがって、特許文献6に記載された手法を用いる場合にもSi3N4析出温度域での窒化処理を長時間行うと、鋼板表面近傍のみにSi3N4が析出した状態が形成されることになるので、板全体の粒成長を強化するためには好ましくない。
発明者らはこれらの知見を勘案し、Si3N4の析出温度で比較的短時間の窒化処理を行い、あえてSi3N4を表面近傍に析出させ、その後、鉄窒化物が形成されるような低温での窒化処理を行えば、続く二次再結晶焼鈍中に鉄窒化物から鋼中に窒素を拡散させ、Si3N4を析出させることができるのではないかと考え、種々の検討の結果、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼スラブ成分として、C:0.10mass%以下、Si:1.0〜5.0mass%およびMn:0.01〜0.5mass%含有すると共に、S、SeおよびOをそれぞれ50massppm未満、sol.Alを100massppm未満、Nを80massppm以下に抑制し、さらに鋼中のsol.Al量(massppm)(〔sol.Al〕)およびN量(massppm)(〔N〕)を〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30massppmの範囲に制御し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱後、熱間圧延を施して熱延板としたのち、焼鈍および圧延によって最終板厚の冷間圧延板とし、ついで一次再結晶焼鈍前、あるいは一次再結晶焼鈍中、あるいは一次再結晶焼鈍後に窒素増量(ΔN)が以下の式1)および2)で規定される窒化処理を施した後、焼鈍分離剤を塗布して、二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、
窒化処理時に高温処理、低温処理の少なくとも2段階の処理温度で窒化を行い、高温処理での滞留時間を10秒以上とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
式1)〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦0massppmの条件下
1000massppm≧ΔN≧50massppm
式2)0massppm<〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30massppmの条件下
(〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+100)≦ΔN≦(〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+1000)
2.さらに鋼スラブ成分として、mass%で、
Ni:0.005〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、
Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、
Cr:0.01〜1.50%、P:0.0050〜0.50%
Nb:0.0005〜0.0100%、Mo:0.01〜0.50%
Ti:0.0005〜0.0100%、B:0.0001〜0.0100%およびBi:0.0005〜0.0100%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記高温処理を600℃以上で、また前記低温処理を600℃未満で行うことを特徴とする前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記1〜3のいずれかに記載の冷間圧延板の一次再結晶焼鈍において、500〜700℃間の昇温速度を50℃/s以上とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記1〜4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる窒化処理設備であって、
アンモニアまたは窒素を少なくとも含むガスを導入するガス導入部と、窒化処理時の高温処理と低温処理を連続で行う窒化処理部とを備え、該窒化処理部は、該窒化処理部において高温処理を行う高温処理部と該窒化処理部において低温処理を行う低温処理部とを有し、該高温処理部への窒化ガス供給配管に冷却用機器を備えることを特徴とする窒化処理設備。
6.前記高温処理部と前記低温処理部との間にガス冷却ゾーンを備えることを特徴とする前記5に記載の窒化処理設備。
7.前記高温処理部の温度を600℃以上に調整し、さらに前記低温処理部の温度を600℃未満に調整する機能を有することを特徴とする前記5または6に記載の窒化処理設備。
本発明によれば、集合組織的に劣る表面からの二次再結晶を抑制するために、鋼板表面近傍に析出物を多く析出させ、表面近傍組織からの二次再結晶に起因した特性の劣化を抑制し、工業的に安定して良好な特性を有する方向性電磁鋼板の製造を可能とし、併せて、その製造中の窒化工程に供して好適な窒化処理設備が提供される。
実施例1の条件5で形成した窒化後鋼板の圧延直角方向断面のSEM観察像を示す写真である。 実施例1の条件5で形成した試料の鋼板表面をX線により結晶解析した結果を示すグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼スラブの成分組成の限定理由について説明する。なお、以下に記載する「%」および「ppm」表示は特に断らない限り、それぞれ「mass%」および「massppm」を意味するものとする。
C:0.10%以下
Cは、一次再結晶集合組織を改善する上で有用な元素であるが、0.10%を超えるとかえって一次再結晶集合組織の劣化を招くので、本発明では0.10%以下に限定した。磁気特性の観点から、Cの望ましい添加量は、0.01〜0.08%の範囲である。なお、要求される磁気特性のレベルがさほど高くない場合には、一次再結晶焼鈍における脱炭を省略あるいは簡略化するために、あえてCを0.01%以下としてもよい。
Si:1.0〜5.0%
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であるが、含有量が5.0%を超えると冷間圧延性が著しく劣化するので、Siは5.0%以下に限定した。またSiは窒化物形成元素として機能させる必要があるため、1.0%以上含有させることが必要である。また、鉄損と冷間圧延性両立の観点からの望ましい添加量は、1.5〜4.5%の範囲である。
Mn:0.01〜0.5%
Mnは、製造時における熱間加工性を向上させる効果があるが、0.01%以下では効果に乏しい。また含有量が0.5%を超えた場合には、一次再結晶集合組織が悪化して磁気特性の劣化を招くので0.5%以下に限定した。
S、SeおよびO:それぞれ50ppm未満
S、SeおよびO量がそれぞれ50ppm以上になると、二次再結晶が困難となる。この理由は、粗大な酸化物や、スラブ加熱によって粗大化したMnS、MnSeが一次再結晶組織を不均一にするためである。従って、S、SeおよびOはいずれも、50ppm 未満に抑制するものとする。
sol.Al:100ppm未満
Alは、鋼板表面に緻密な酸化膜を形成し、窒化の際にその窒化量の制御を困難にし、脱炭を阻害する。そのためAlはsol.Al量(以下、式中では〔sol.Al〕と記す。但し、単位:massppmを含む。)で100ppm未満に抑制する。但し、酸素親和力の高いAlは、製鋼で微量添加することによって鋼中の溶存酸素量を低減し、鋼板の特性劣化につながる酸化物系介在物の低減などを見込めるため、100ppm未満の範囲で意識的に添加することにより磁性劣化を抑制することができる。
N:80ppm以下
本発明は、インヒビターレスの製造方法を適用し集合組織の作り込みまでを行なうため、N(以下、式中では〔N〕と記す。但し、単位:massppmを含む。)は80ppm以下に抑制する必要がある。80ppmを超えると粒界偏析の影響や微量窒化物の形成により、集合組織が劣化するといった弊害が生じる。またスラブ加熱時フクレなどの欠陥の原因となることもあるため、80ppm以下に抑制する必要がある。また望ましくは60ppm以下が好適である。
〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30ppm
本発明は、窒化後、インヒビターとして純粋な窒化珪素を析出させることが特徴であるため、鋼板の窒化処理後、固溶のままのAlが残存した状況では、Siは、(Al,Si)Nの形で析出してしまい、純粋な窒化珪素の析出をさせることができない。
そこで、〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)の値を0ppm以下に制御しておけば、含有するAl量に対し、AlNとして析出するN以上のNを事前に含有させておくことになるため、窒化処理以前にAlをAlNとして析出させておくことが可能となり、窒化処理によって追加した鋼中N(ΔN)は、窒化珪素形成に利用される。一方、〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)の値が0ppm超、30ppm以下の範囲では、純粋な窒化珪素を形成するために、より過剰の窒素(ΔN)が必要となる。なお、ΔN量の規定については後述する。
さらに、〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)の値が30ppmを超える条件では、追加で微細析出するAlNあるいは(Al,Si)Nの影響が大きくなり、二次再結晶温度が過剰に高くなって二次再結晶不良となるため、本発明では、上記値を30ppm以下に抑制する必要がある。
以上、スラブ中の必須成分について説明したが、本発明では、工業的により安定して磁気特性を改善する成分として、以下の元素を適宜含有させることができる。なお、本発明において、鋼スラブ成分の残部はFeおよび不可避的不純物である。
Ni:0.005〜1.50%
Niは、熱延板組織の均一性を高めることにより、磁気特性を改善する働きがある。そのためには0.005%以上含有させることが好ましいが、含有量が1.50%を超えると二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するので、Niは0.005〜1.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Sn:0.01〜0.50%
Snは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる有用元素であり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると冷間圧延性が劣化するので、Snは0.01〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Sb:0.005〜0.50%
Sbは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる有用元素であり、その目的のためには0.005%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると冷間圧延性が劣化するので、Sbは0.005〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがあり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると熱間圧延性の劣化を招くので、Cuは0.01〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Cr:0.01〜1.50%
Crは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがあり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、一方で含有量が1.50%を超えると二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するので、Crは0.01〜1.50%の範囲で含有させることが望ましい。
P:0.0050〜0.50%
Pは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがあり、そのためには0.0050%以上含有させることが好ましいが、含有量が 0.50%を超えると冷間圧延性が劣化するので、Pは0.0050〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Nb:0.0005〜0.0100%、Mo:0.01〜0.50%
Nb、Moは、スラブ加熱時の温度変化による割れの抑制等を介して、熱延後のヘゲを抑制する効果を有している。ここで、Nb、Moを、上記下限以上に含有させなければ、ヘゲ抑制の効果は小さく、上記上限超では炭化物、窒化物を形成するなどして最終製品まで残留した際に、鉄損劣化を引き起こすおそれが招来する。
Ti:0.0005〜0.0100%、B:0.0001〜0.0100%、Bi:0.0005〜0.0100%
これらの成分は、窒化した際に析出物を形成したり、自身が偏析するなどしたりして、補助的なインヒビターとして機能し、二次再結晶を安定化させる効果を有する場合がある。ここで、これらの成分が、上記下限未満では、補助インヒビターとしての添加効果を得るに乏しく、上記上限超では、形成した析出物が純化後にも残留して磁気特性劣化の原因となったり、粒界を脆化させベンド特性を劣化させたりする場合がある。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記の好適成分組成範囲に調整した鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱したのち、熱間圧延に供する。なお、スラブを再加熱する場合には、再加熱温度は、1000℃以上1300℃以下程度とすることが望ましい。というのは、1300℃を超えるスラブ加熱は、スラブの段階で鋼中にインヒビターをほとんど含まない本発明では無意味で、コストアップとなるだけであり、一方1000℃未満では、圧延荷重が高くなり、圧延が困難となるからである。
ついで、熱間圧延後の熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回の冷間圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終冷延板とする。この冷間圧延は、常温で行ってもよいし、常温より高い温度、例えば、250℃程度に鋼板温度を上げて圧延する温間圧延としてもよい。
ついで、最終冷間圧延板に一次再結晶焼鈍を施す。
この一次再結晶焼鈍の目的は、圧延組織を有する冷間圧延板を一次再結晶させて、二次再結晶に最適な一次再結晶粒径に調整することである。そのためには、一次再結晶焼鈍の焼鈍温度を800℃以上950℃未満程度とすることが望ましい。この時の焼鈍雰囲気は、湿水素窒素あるいは湿水素アルゴン雰囲気とすることで脱炭焼鈍を兼ねても良い。
一次再結晶焼鈍にあたっては集合組織改善の観点から、500〜700℃間の昇温速度を50℃/s以上とする一次再結晶焼鈍を適用することができる。このような焼鈍を実施することによって、Goss方位の存在量を高め、二次再結晶後の結晶粒径を低減し、鉄損特性を改善させることが可能となる。
対象となる温度域については、冷間圧延後の組織の回復に相当する温度域を急熱し、再結晶させることが目的であるため、組織の回復に相当する500〜700℃の昇温速度が重要であり、当該範囲を50℃/s以上に規定した。また、昇温速度が50℃/s未満では、当該温度での組織の回復を十分に抑制することができない。これらの技術思想は、特開平7-62436号等と同じものである。
また、一次再結晶焼鈍の前、一次再結晶焼鈍中、あるいは一次再結晶焼鈍に続けて、あるいは一次再結晶焼鈍後に窒化処理を施す。この際、Si3N4の析出に適した温度、具体的には600℃以上で窒化処理を行った後、鉄窒化物の析出に適した600℃未満の温度まで降温して窒化処理を行うことが肝要である。Si3N4の析出に最も適した温度は700℃近傍であるため、高温部は700℃に近い温度であることが好ましい。窒化の手法は窒化量を制御できれば、特に限定しない。但し、表面処理として利用される窒化技術、例えば、窒化手法として知られているシアン酸塩を用いた塩浴窒化では、650℃程度までは対応できるものの、700℃のような高温では塩を安定させることができないため、実施温度が650℃を超える温度では利用することはできない。
従って、現時点は、電磁鋼板製造で一般的なNH3を用いたガス窒化が好適である。窒化処理の分野では、プラズマ窒化等多くの技術開発がなされており、今後、安定的に、かつ効率よく窒化できる新たな手法が開発されれば、その手法を適用することができる。
Si3N4の析出に適した温度である600℃以上で鋼板を窒化することにより、窒化によって供給された窒素は、鋼中に浸入すると同時にSi3N4として析出される。この際、鋼中に浸入した後、直ちにSi3N4の析出が生じるため板厚の表面近傍にのみ析出が生じる。Alを含有しないインヒビターレス成分系ではSi3N4は、比較的、熱力学的に安定な窒化物であるため、続く二次再結晶焼鈍中も析出状態は維持されて、表面近傍の粒成長を抑制する。ついで600℃未満の窒化鉄の析出に適した温度で窒化処理を行う。窒化により供給された窒素は、特にサブスケール中の純鉄と反応し窒化鉄の形態で析出する。これらの窒化物は、Si3N4に比べて熱力学的に安定ではないために、二次再結晶焼鈍の昇温中にSi3N4に置換する結果、板厚の中心まで均一にSi3N4が分散した状態が得られる。
発明者らは、このような高温、低温の2段階以上の温度履歴で窒化処理を行うことによって、鋼板の表面近傍に意図的にSi3N4の析出量を高めた状態を作り出し、磁気特性を安定的に改善することができると考えている。
それぞれの温度での窒化処理は2回以上に分割して別工程で実施しても同じ効果が得られる。それぞれの温度域では均熱処理を行ったほうが、より析出状態を制御しやすいが、必ずしも均熱していなくとも、対象温度域での滞留時間があれば効果は得られる。但し、600℃以上の温度域については10秒以上滞留させることが必須であり、好ましくは30秒以上滞留させる。これは、Siが置換型元素であり、拡散が比較的遅いこと、またSi3N4の結晶構造は、鋼の結晶構造であるBCCと大きく異なること、また析出の際、堆積膨張を伴うことなどが原因であり、最もSi3N4析出に適した700℃近傍であっても、あまり短時間の処理では析出が生じにくいためである。一方、Siは、他の窒化物形成元素とは異なり、鋼中に数%というオーダーで含有されているため、600℃以上の温度域で長時間の窒化処理を行うと、窒化量に応じたSi3N4が析出することとなり、析出量が増加する結果、鋼板が硬化して割れやすくなってしまう。そのため、滞留時間は1800秒以下とすることが望ましい。さらに、600℃未満の温度域での窒化は、板厚全体の粒成長抑制力を得るために行うものであり、必要窒化量が得られるまで滞留時間をとる必要がある。窒化処理は低温化するに従って反応効率が低下するため、温度によって必要滞留時間は大きく変動する。例えば鉄窒化物が析出する450℃といった低温で処理を行うと、反応速度は著しく低いため、必要窒化量を得るために数時間以上の時間が必要になる場合がある。なお、実用上は、600℃未満でも、550℃程度の温度で窒化ポテンシャル(pNH3/pH2)を高め、200秒以下で窒化を行うことが好ましい。
窒化処理は、一次再結晶焼鈍に引き続いて実施することで、鋼板の昇温に必要なエネルギーが不要になるため効率がよい。また高温側から複数の焼鈍で実施することでも、同等の効果を得ることができるが、一度に実施することで、さらにエネルギー効率を高めることができる。
本発明における窒化処理設備は、設備の構造自体は複雑なものは必要なく、通板速度に応じた設備長と前後で別々に温度制御が可能なヒーターを有する設備であって、アンモニアまたは窒素を少なくとも含むガスを導入するガス導入部と、窒化処理時の高温処理と低温処理を連続で行う窒化処理部とを備え、該窒化処理部は、該窒化処理部において高温処理を行う高温処理部と該窒化処理部において低温処理を行う低温処理部とを有していればよい。
本発明では、まず高温窒化を行うが、一般に窒化能を有するガスとして知られるアンモニア等のガスは、高温分解しやすく、分解した後は窒化能を失ってしまうので、窒化炉へのガス供給配管内でのガスの変質があった場合、その窒化効率は大きく劣化する。そのため、特に窒化設備の前半部(高温処理部)へのガス配管に冷却機能を持った冷却用機器を備えることが必要である。なお、当該冷却機能は、400℃以下の不活性ガス、あるいは窒化ガスを鋼板に対し吹き付けるノズルを有するなど、ガス冷却に一般的に用いられるものであれば良い。
そして、それ以外の設備については、以下の構成を取ることで、より効果的に本発明に従う窒化処理を行うことができる。
例えば、設備後半(低温処理部)については、断熱を十分に行っていれば自然冷却を利用しても実施することができるが、等温で均熱保持できないため、制御レベルは大幅に低下する。そこで、設備長を短くするために、単一設備としては、窒化雰囲気を実現できる配管を有し、高温での熱処理が可能な高温処理部と、やや低温で鋼板温度を均熱ないしは温度低下を抑える程度の能力を有するヒーターを有する低温処理部の間に、ガスによる冷却ゾーンを設ける構成とすることによって、炉の前後で別々の温度調整を行いつつ、適正な温度へ短時間で降温できる設備とすることができる。
なお、本発明で前記ガス導入部から導入されるガスとしては、電磁鋼板製造で一般的なNH3を用いたガス窒化に用いられるものであれば制限はないが、他にもNH3に若干O2を加えた酸窒化雰囲気や、微量Cを含んだ軟窒化雰囲気等も利用できる。また、前記冷却ゾーンで用いられるガスとしては、N2、Arといった不活性ガスや前述の窒化ガスの利用が挙げられる。
本発明の窒化による窒素増量(ΔN)は、以下のように規定される。
スラブ組成で〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦0ppmを満たす場合、事前に鋼中NをAlNとして析出させておくことができるため、窒化により増加した窒素は、Alを含有しない窒化珪素の形成に利用される。この場合、窒化による窒素増量(ΔN)は50ppm≦ΔN≦1000ppmとなる範囲に調整すれば良い。
一方、0ppm<〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30ppmの範囲では、窒化処理により増加したNは、窒化珪素に比べて熱力学的に安定なAlN、あるいはSiを固溶した(Al,Si)Nとして析出する。このため、窒化珪素の析出のためには、より過剰の窒素が必要となる。具体的には(〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+100)ppm≦ΔN≦(〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+1000)ppmの範囲とすることが必要である。これらの範囲において、下限値未満の範囲では、その窒化効果は十分に得られずに、上限値を超えた範囲では、窒化珪素の析出量が過多となって二次再結晶が生じない。
図1に、後述する実施例1の条件5で形成された、窒化後鋼板の圧延直角方向の断面をSEM観察して得られたSEM像を示す。同図からも明らかなように、窒化処理後、表面近傍にSi3N4が粒界あるいは粒内に析出している様子が確認できる。この場合の析出物は、特許文献8に記載されたように、粒界のみに選択的に析出しないことが特記される。また同試料の鋼板表面をX線により結晶解析した結果を図2に示す。同図からX線が浸入する深さ程度の極表層の領域に鉄窒化物が形成されていることが分かる。
このように、窒化処理の窒化雰囲気中に、高温処理後、低温処理を実施することによって、板厚方向にあえて不均一な析出状態を作り出すことができ、鋼板表面近傍の粒成長抑制力を高めることができる。
上記の一次再結晶焼鈍、窒化処理後の鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布する。二次再結晶焼鈍後の鋼板表面にフォルステライト被膜を形成するためには、焼鈍分離剤の主剤をマグネシア(MgO)とする必要があるが、フォルステライト被膜の形成が必要ない場合には、焼鈍分離剤主剤として、アルミナ(Al2O3)やカルシア(CaO)など、二次再結晶焼鈍温度より高い融点を有する適当な酸化物を用いることができる。
同時に、焼鈍分離剤中に硫酸塩や硫化物としては、Ag,Al,Ba,Ca,Co,Cr,Cu,Fe,In,K,Li,Mg,Mn,Na,Ni,Sn,Sb,Sr,ZnおよびZrの硫酸塩または硫化物のうちから選ばれる一種または二種以上を添加してもよい。焼鈍分離剤への硫酸塩や硫化物の添加量としては、0.2%以上15%以下程度とするのが好適である。この範囲で添加することにより、二次再結晶中に分離剤より鋼中に硫黄が浸入し、特に鋼板表面近傍の粒成長抑制を補強することができる。硫酸塩や硫化物の添加量が0.2%未満では、地鉄における硫黄増加量が少ない一方で15%超では地鉄の硫黄増加量が多くなりすぎ、いずれの場合でも磁気特性改善効果が小さくなる。
これに引き続き二次再結晶焼鈍を行なう。二次再結晶焼鈍の昇温過程において鉄窒化物は分解し、Nが鋼中へ拡散する。また焼鈍雰囲気は、N2,Ar,H2あるいはこれらの混合ガスのいずれもが適合する。
こうした方向性電磁鋼板用スラブに対し、上述の工程を経て製造された方向性電磁鋼板では、二次再結晶焼鈍の昇温過程であって、かつ二次再結晶開始までの段階で、窒化物を板厚方向のなかでも表面近傍に窒化物の存在量を高めつつ、板厚中心にまで窒化物を析出させることが可能となる。その結果、集合組織には劣るものの、表面からの二次再結晶を効果的に抑制して、良好な磁気特性を得ることが可能となる。
上記の二次再結晶焼鈍後、鋼板表面に、さらに絶縁被膜を塗布、焼き付けることもできる。かかる絶縁被膜の種類については、特に限定されず、従来公知のあらゆる絶縁被膜が適合する。たとえば、特開昭50−79442号や特開昭48−39338号に記載されているリン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
また、平坦化焼鈍により、鋼板の形状整えることも可能であり、さらにこの平坦化焼鈍を絶縁被膜の焼き付け処理と兼備させることもできる。
〔実施例1〕
Si:3.3%、C:0.05%、Mn:0.06%、S:0.001%、Al:0.002%、N:0.002%、Cu:0.05%、Sb:0.01%を含有する方向性電磁鋼板用スラブ1と、Si:3.3%、C:0.05%、Mn:0.06%、S:0.001%、Al:0.008%、N:0.003%、Cu:0.05%、Sb:0.01%を含有する方向性電磁鋼板用スラブ2と、Si:3.3%、C:0.05%、Mn:0.06%、S:0.001%、Al:0.008%、N:0.002%、Cu:0.05%、Sb:0.01%を含有する方向性電磁鋼板用スラブ3を1130℃で、30分加熱後、熱間圧延して2.0mmの板厚の熱延板とし、1000℃×1分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により0.27mmの最終板厚とし、得られた冷間圧延コイルの中央部から、ラボにて一次再結晶と脱炭を兼ねた焼鈍を行ない、続けて、アンモニア、水素、窒素の混合ガス雰囲気中で、表1に示す窒化条件で窒化処理をおこなった。なお、方向性電磁鋼板用スラブ3は〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)の値が30ppmを超えている。
また一次再結晶焼鈍の昇温速度は500〜700℃間の昇温速度を20℃/sと150℃/sの2水準とした。同一条件の鋼板は一条件につき21枚作製した。その内の1枚を使って、窒化後試料の分析を行った。残りの20枚に対してMgOを主成分とし、表1に示す焼鈍分離助剤を水スラリ状にしてから塗布乾燥し鋼板上に焼き付けた。その後、最高温度が1200℃となる最終仕上げ焼鈍をおこない二次再結晶させた。続いてリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布焼付け、磁化力800A/mでの磁束密度(B8,T)と50Hz、励磁磁束密度1.7Tでの鉄損(W17/50,W/kg)を評価した。磁気特性は、磁束密度については各条件20枚の平均値と最低値で評価し、鉄損はその平均値で評価した。
表1に見られるように、発明例では比較例に比べてB8の最低値が改善している様子が明らかである。また、平均B8を見ても若干の改善が認められる。また、焼鈍分離剤にSを含有するものでは、やや磁束密度が高く、一次再結晶の昇温速度を高めた素材では鉄損特性に優れることが分かる。
〔実施例2〕
表2に示す成分を含有する方向性電磁鋼板用スラブを、1200℃で、50分加熱後、熱間圧延して2.2mmの板厚の熱延板とし、1000℃×1分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により板厚1.5mmまでの冷間圧延後、1100℃×2分間の中間焼鈍を施し、以下に示す冷間圧延により0.23mmの最終板厚としてから、PH2O/PH2=0.3の雰囲気下で焼鈍温度820℃となる条件で2分間保持し脱炭焼鈍を行なった。その後、NH3、H2、N2の混合ガス雰囲気下で窒化処理を行ない、鋼中N量を250±30ppmまで増量させた後、MgOを主成分として、TiO2を10%添加した焼鈍分離剤を水と混ぜてスラリ状としたものを塗布し、コイルに巻き取った後、最高温度1150℃で最終仕上げ焼鈍を行い、続いてリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品とした。
このようにして得られた製品コイルからエプスタイン試験片を採取し、磁束密度(B8)を測定した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、発明例では所期した性能の高磁束密度(B8)が得られていることが分かる。

Claims (7)

  1. 鋼スラブ成分として、C:0.10mass%以下、Si:1.0〜5.0mass%およびMn:0.01〜0.5mass%含有すると共に、S、SeおよびOをそれぞれ50massppm未満、sol.Alを100massppm未満、Nを80massppm以下に抑制し、さらに鋼中のsol.Al量(massppm)(〔sol.Al〕)およびN量(massppm)(〔N〕)を〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30massppmの範囲に制御し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱後、熱間圧延を施して熱延板としたのち、焼鈍および圧延によって最終板厚の冷間圧延板とし、ついで一次再結晶焼鈍前、あるいは一次再結晶焼鈍中、あるいは一次再結晶焼鈍後に窒素増量(ΔN)が以下の式1)および2)で規定される窒化処理を施した後、焼鈍分離剤を塗布して、二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、
    窒化処理時に高温処理、低温処理の少なくとも2段階の処理温度で窒化を行い、高温処理での滞留時間を10秒以上とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
    式1)〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦0massppmの条件下
    1000massppm≧ΔN≧50massppm
    式2)0massppm<〔sol.Al〕−〔N〕×(26.98/14.00)≦30massppmの条件下
    (〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+100)≦ΔN≦(〔N〕−〔sol.Al〕×14.00/26.98+1000)
  2. さらに鋼スラブ成分として、mass%で、
    Ni:0.005〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、
    Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、
    Cr:0.01〜1.50%、P:0.0050〜0.50%
    Nb:0.0005〜0.0100%、Mo:0.01〜0.50%
    Ti:0.0005〜0.0100%、B:0.0001〜0.0100%およびBi:0.0005〜0.0100%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記高温処理を600℃以上で、また前記低温処理を600℃未満で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷間圧延板の一次再結晶焼鈍において、500〜700℃間の昇温速度を50℃/s以上とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる窒化処理設備であって、
    アンモニアまたは窒素を少なくとも含むガスを導入するガス導入部と、窒化処理時の高温処理と低温処理を連続で行う窒化処理部とを備え、該窒化処理部は、該窒化処理部において高温処理を行う高温処理部と該窒化処理部において低温処理を行う低温処理部とを有し、該高温処理部への窒化ガス供給配管に冷却用機器を備えることを特徴とする窒化処理設備。
  6. 前記高温処理部と前記低温処理部との間にガス冷却ゾーンを備えることを特徴とする請求項5に記載の窒化処理設備。
  7. 前記高温処理部の温度を600℃以上に調整し、さらに前記低温処理部の温度を600℃未満に調整する機能を有することを特徴とする請求項5または6に記載の窒化処理設備。
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