JP2004189839A - 塗料用水性樹脂組成物 - Google Patents

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JP2004189839A
JP2004189839A JP2002358218A JP2002358218A JP2004189839A JP 2004189839 A JP2004189839 A JP 2004189839A JP 2002358218 A JP2002358218 A JP 2002358218A JP 2002358218 A JP2002358218 A JP 2002358218A JP 2004189839 A JP2004189839 A JP 2004189839A
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Hitoshi Ikeda
仁志 池田
Yasuo Tokimori
康夫 時森
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Abstract

【課題】地球環境保護に優れ、耐エフロ性、防水性、防湿性、基材密着性及び耐ブリスター性から選択される少なくとも一種が向上された塗膜を形成する水性塗料を得るための水性樹脂組成物、及びその水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質成形部材を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99.5〜50重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜50重量部含んで成る塗料用水性樹脂組成物である。更に、その塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質形成部材である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性塗料用の水性樹脂組成物(以下「塗料用水性樹脂組成物」ともいう)に関する。好ましくは、例えば、珪酸カルシウム、石膏、ロックウール、コンクリート、セメント、モルタル及びスレート等の材料が、種々の形態(板、ブロック等)に、例えば、押出し成型等によって成型された無機質形成部材の表面に、特に、例えば、珪カル板、セメント系押出し成形板、ALC板(軽量気泡コンクリート板)、硬質木片セメント板及び炭酸マグネシウム板等の無機質成形板の表面に、塗工(又は塗布)される水性塗料用の水性樹脂組成物に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、無機質成形部材に発生するエフロ(白華)現象を効果的に抑制し、防水性、防湿性(もしくは非透湿性)、無機質成形部材との密着性、耐ブリスター性等に優れる塗膜を形成できる、水性塗料用の水性樹脂組成物に関し、更にそのような水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質成形部材、特に無機質形成板に関する。
【0003】
【従来の技術】
建築外装材及び屋根材等に、例えば、珪カル板、セメント系押出し成形板、ALC板及び硬質木片セメント板等の無機質成形部材が用いられることが多い。無機質成形部材は、吸水性が高いにも拘わらず、雨水や外気に曝されることが多いので、種々の塗料を無機質形成部材の表面に塗工し、塗膜を形成して、その表面を保護するのが一般的である。
【0004】
無機質成形部材を構成する材料は、一般にアルカリ性物質を含む。各種塗料を無機質成形部材の表面に塗布すると、アルカリ性物質が塗料に溶解し、そのアルカリ性物質が形成された塗膜を通り抜け、塗膜の表面上に析出するという現象がしばしば認められる。これは、塗膜が白化する現象、即ち、いわゆるエフロ現象として知られており、このエフロ現象は、塗膜の外観を著しく損なうだけでなく、塗膜の種々の物性を低下させる要因にもなっているという問題がある。また、塗膜を通り無機質成形部材内に浸透した水分が、無機質成形部材の中のアルカリ性物質を溶解し、アルカリ性物質を含むこの水が塗膜の上に滲み出し、塗膜の表面上で乾燥することで、塗膜の種々の物性が更に低下するという問題もある。これは、そのアルカリ性物質を含む水の乾燥によって塗膜が軟化するので、塗膜の種々の物性が低下するからであると考えられている。
【0005】
更に、例えば、珪酸カルシウム、石膏、ロックウール、コンクリート、セメント、モルタル及びスレート等から形成される無機質成形部材は、非常に多孔質である。従って、塗工された塗料が無機質成形部材に吸い込まれ、塗膜のムラ、ヒケ、クラック等の欠陥が生じ、良好な塗装外観を得ることが困難であるという問題もある。
【0006】
このような問題を解消するために、具体的には耐エフロ性(即ち、エフロ現象の低下、好ましくはエフロ現象の防止)、防水性、防湿性、無機質形成板の補強性及び耐凍害性を無機質成形板に付与するために無機質成形板用の種々の塗料が検討されてきた。無機質成形板の美粧性の観点から、耐エフロ性に優れた塗料の開発、無機質成形板のそり防止等の諸物性を向上するために防水性及び防湿性に優れた塗料の開発が重要な課題となっている。
【0007】
従来の無機質成形板用の塗料には、トリポリリン酸二水素アルミニウムが含有されている(例えば、特許文献1参照)。トリポリリン酸二水素アルミニウムは、例えばアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン等のアルカリ性物質を吸着して固定化することができるので、エフロ現象の発生を低下させることができるとされている。しかし、このトリポリリン酸二水素アルミニウムを含有する塗料は、アルカリ性物質の吸着が不十分なので、エフロ現象の防止が、不十分であるという問題がある。更に、この塗料から形成される塗膜の防水性、防湿性、無機質成形板に対する密着性は不十分であるという問題がある。
【0008】
更に、従来の無機質成形板用の塗料(シーラー組成物)は、溶剤型アクリル樹脂(スチレン変性アクリル系樹脂)と塩素化パラフィンから成る(例えば、特許文献2参照)。この溶剤型アクリル樹脂は、カルボキシル基を有し、このカルボキシル基は、無機質成形板から水と共に溶出し、エフロ現象の原因となるアルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)を補足することができる。更に、この塗料に含まれる塩素化パラフィンは、塗膜に柔軟性を付与し、塗膜の亀裂に関与する内部応力を緩和して、塗膜の緻密性および塗膜と無機質成形板との密着性を向上させることができる。
【0009】
しかし、この無機質成形板用の塗料は、溶剤型であり、しかも塩素化パラフィンを含むので、地球環境保護の観点から好ましくない。
尚、地球環境保護の観点から、アクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料も開発されているが、水性塗料は、一般的に無機質成形板の表面を補強する効果が小さい、緻密な塗膜の形成が困難である、更に形成された塗膜の防水性に劣る等の問題があり、未だに十分な性能の水性塗料が提供されていない。
【0010】
【特許文献1】
特開昭59−159859号公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開平9−157631号公報(第2−5頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来の水性塗料用の水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料と比較して、地球環境保護に優れ、耐エフロ性、防水性、防湿性(もしくは非透湿性)、基材密着性、耐ブリスター性から選択される少なくとも一種が向上された塗膜を形成する水性塗料を得るための水性樹脂組成物、及びその水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質成形部材を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、従来の水性塗料用の水性樹脂組成物と比較して、水性塗料が形成する塗膜の防水性、防湿性、基材密着性及び耐ブリスター性等の種々の物性を維持しつつ、耐エフロ性が向上した水性塗料が得られる水性塗料用の水性樹脂組成物(以下「塗料用水性樹脂組成物」ともいう)の開発に鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者等は、特定のベース樹脂を主成分とする樹脂エマルジョンと特定のワックスエマルジョンを含む水性樹脂組成物は、これを含んで成る水性塗料が地球環境保護に優れ、更に、耐エフロ性、防水性、防湿性(もしくは非透湿性)、基材密着性及び耐ブリスター性から選択される少なくとも一種が向上される塗膜を形成することができ、好ましくはエフロ現象を効果的に防止することができることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
本発明は、一の要旨において、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)「以下「樹脂エマルジョン(A)ともいう」を乾燥重量で99.5〜50重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜50重量部含んで成る塗料用水性樹脂組成物を提供する。この塗料用水性樹脂組成物は、無機質形成部材用の水性塗料に、好適に使用することができる。
【0014】
ここで、乾燥重量とは、実質的に水性媒体(又は媒体)を含まない部分の重量をいい、より具体的には各々のエマルジョンを105℃で3時間加熱した後で得られる物質の重量をいう。以下本明細書において、特に、記載しない限り、「重量」とは、乾燥重量をいう。
【0015】
塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99.5〜50重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜50重量部含んで成り、本発明に係る水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料は、耐エフロ性、防水性、防湿性(もしくは非透湿性)、基材密着性、耐ブリスター性から選択される少なくとも一種が向上される塗膜を形成することができ、好ましくはエフロ現象を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明の一の態様において、ワックス系エマルジョン(B)は、石油系ワックスエマルジョン、ポリエチレン系ワックスエマルジョン及びポリプロピレン系ワックスエマルジョンから選択される少なくとも一種である塗料用水性樹脂組成物を提供する。
更に、本発明は、上述の塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質成形部材を提供する。
【0017】
尚、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいい、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルを総称して「(メタ)アクリル酸エステル」又は「(メタ)アクリレート」ともいう。
【0018】
更に、本明細書において「水性」とは、樹脂及びワックス等が水性媒体中に存在している状態を意味し、これは樹脂及びワックス等が水性媒体に溶解している状態、及び/又は溶解していない状態(例えば、分散及び懸濁等)をいう。
また、「水性媒体」とは、一般的な水、例えば蒸留水、イオン交換水および純水をいうが、「水」と「水可溶性溶媒」との混合溶媒とすることができる。さらに、水性媒体は、目的とする水性塗料の性質に悪影響を与えない範囲でオリゴマー樹脂等の不純物を含むこともできる。
尚、「水可溶性溶媒」とは、水に可溶な溶媒であれば特に制限されることはなく、具体的にはメタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類、並びにホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド等の低級アルデヒド類を例示できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において、「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン」とは、通常(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンと呼ばれるものであって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも一種を含む単量体が重合した樹脂を含むエマルジョンをいい、本発明の目的とする塗料用水性樹脂組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0020】
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類[アルキル基は炭素原子数が1〜8で置換基を有してよい。アルキル基は鎖式でも環式でもよい]を例示できる。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも一種を含む単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他のエチレン性二重結合を有する単量体(以下、「他のエチレン性二重結合を有する単量体」ともいう)を含むことができる。そのような単量体として、例えば、ビニル基(CH=CH−)、(メタ)アリル基(CH=CH−CH−及び(CH=C(CH)−CH−)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CH−COO−及び(CH=C(CH)−COO−)、及び−COO−CH=CH−COO−から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物を例示できる。
【0022】
本発明において、「スチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン」とは、スチレン及び/又はその誘導体によって変性された上述の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンをいう。ここでスチレンの誘導体として、ビニルトルエン及びメチルスチレンを例示できる。変性は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンにスチレン及び/又はその誘導体をグラフト重合してもよいし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも一種を含む単量体にスチレン及び/又はその誘導体を加えて共重合してもよい。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)は、必要に応じて、カルボキシル基を有することができる。そのため、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及び/又はスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンは、不飽和カルボン酸を用いて変性された後、樹脂エマルジョン(A)に、必要に応じて含まれ得る。
【0024】
そのような不飽和カルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルを例示できる。変性は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及び/又はスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンに不飽和カルボン酸をグラフト重合してもよいし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも一種を含む単量体に不飽和カルボン酸を加えて共重合してもよい。不飽和カルボン酸は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明に係る樹脂エマルジョン(A)に用いられる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンは、通常のラジカル重合(又は付加重合)で得ることができる。そのような重合として、例えば水性媒体を用いる水溶液重合を例示できる。水溶液重合では、乳化剤を用いる乳化重合を用いてもよい。水溶液重合及び乳化重合を用いると、重合した後のエマルジョンを、そのまま樹脂エマルジョン(A)として用いることができる。樹脂の分子量を調節するために必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。
【0026】
本発明における重合反応条件、例えば触媒や乳化剤の種類、並びにそれらの濃度、さらに反応温度、反応時間、攪拌速度は、目的とする塗料用水性樹脂組成物の物性によって適宜選択され得るものである。
【0027】
ここで「触媒」とは、少量の添加によって単量体(又は単量体混合物)の重合反応を起こすことができる化合物であり、水性媒体及び有機化合物中で使用できるものである。例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル等を例示することができるが、特に過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが好ましい。
【0028】
また「乳化剤」とは、エマルジョンを形成させるために使用する界面活性剤であって、好ましくは重合反応に悪影響を与えない界面活性剤である。例えばスルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基からなる群から選ばれる少なくと一種の基を有する界面活性剤、並びにそれら界面活性剤の混合物を「乳化剤」として使用することができる。
【0029】
このような「乳化剤」として、例えば以下の乳化剤を例示できる:石鹸、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤類;並びにポリオキシアルキルエーテル及びオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤類。
なお、乳化剤として重合性乳化剤を使用するのが好ましい。重合性乳化剤の使用は、耐水性、耐アルカリ性、及び防水性の向上に好ましい。
【0030】
ここで「重合性乳化剤」とは、重合性の官能基を有し、エマルジョンを形成することができる乳化剤として機能し得る化合物をいう。例えばスルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基、及び/又はエチレンオキシ基を含んだエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びにそれら化合物の混合物をいう。更に、上記重合性乳化剤のスルホン酸基、スルホネート基は塩の形態であってもよく、この場合、スルホン酸基またはスルホネート基の対カチオンとして、アンモニウムイオンおよびアルカリ金属イオンが好ましく、特にアンモニウムイオン、カリウムイオンおよびナトリウムイオンが好ましい。
【0031】
「連鎖移動剤」とは、少量の添加によって重合体の分子量を調節することができる化合物であって、水に可溶性の溶媒および水中で使用できるものが好ましい。このような「連鎖移動剤」として、例えばメルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メチル、及びn−ドデシルメルカプタン等を例示できる。特に、メルカプトエタノール、チオグリセロール、およびチオグリコール酸が好ましい。
【0032】
本発明において、「ワックス系エマルジョン(B)」とは、通常、ワックス系エマルジョンと呼ばれるものであって、塗料用水性樹脂組成物を含んでなる水性塗料から形成される塗膜の防水性、防湿性及び耐エフロ性から選択される少なくとも一種を向上することを目的として塗料用水性樹脂組成物に含まれるものであり、本発明の目的とする塗料用水性樹脂組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0033】
ワックス系エマルジョンのワックスの融点は、30〜150℃であることが好ましく、40〜120℃であることがより好ましく、50〜110℃であることが特に好ましい。尚、ワックスの融点とは、JIS K2207に規定される軟化点試験方法(環球法)によって測定された値であるとする。
【0034】
また、ワックス系エマルジョンのエマルジョン粒子の粒子径は、0.05〜10.0μmであることが好ましく、0.05〜3.0μmであることがより好ましく、0.08〜2.0μmであることが特に好ましい。ここで、エマルジョン粒子の粒子径とは、光散乱法(水等の溶媒中でブラウン運動をしている粒子に、レーザー光を照射した際の、レーリー散乱による散乱光から粒子径を求める方法)によって測定された値をいう。
【0035】
ワックス系エマルジョンとして、例えば石油系ワックスエマルジョン、ポリエチレン系ワックスエマルジョン及びポリプロピレン系ワックスエマルジョンを例示でき、石油系ワックスエマルジョン及びポリエチレン系ワックスエマルジョンが好ましい。ワックス系エマルジョンは、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0036】
「石油系ワックスエマルジョン」として、例えば、パラフィンワックスエマルジョン、マイクロクリスタリンワックスエマルジョン及びペトロラタムワックスエマルジョンを例示できるが、特にパラフィンワックスエマルジョンが好ましい。「パラフィンワックスエマルジョン」として、例えば、クラリアント(株)製のE701K(商品名)、ビックケミー、ジャパン(株)製のAQUACER498(商品名)等を例示することができる。「マイクロクリスタリンワックスエマルジョン」として、例えば、サンノプコ(株)製のノプコ1245−M−SN(商品名)を例示することができる。
【0037】
石油系ワックスエマルジョンとして、融点が30℃〜120℃の範囲にある石油系ワックスを変性(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、もしくはアミノ基等の親水基で変性)することによって水性媒体中に存在可能になった樹脂、乳化剤もしくは水溶性の高分子を用いることによって水性媒体中に存在可能になった樹脂、並びに水性媒体中に分散している樹脂であることが好ましい。
【0038】
石油系ワックスエマルジョンは、融点が30〜120℃の石油系ワックスを変性したものが好ましく、融点が40〜80℃の石油系ワックスを変性したものがより好ましい。融点が120℃より高い場合、塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料から形成される塗膜を乾燥する時に、石油系ワックスが充分に溶融しないこともあり、均一な塗膜を得ることが困難と成り得、防水性、防湿性に悪影響を及ぼすこともあり得る。融点が30℃より低い場合、充分な防水性、防湿性を得られなくなり得る。
尚、石油系ワックスの融点とは、JIS K2207に規定される軟化点試験方法(環球法)によって測定された値をいう。
【0039】
本発明において、石油系ワックスエマルジョンの乾燥重量は、塗料用水性樹脂組成物の乾燥重量100重量部当たり、0.5〜50重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0040】
「ポリエチレン系ワックスエマルジョン」および「ポリプロピレン系ワックスエマルジョン」とは、通常ポリエチレン系ワックスエマルジョンおよびポリプロピレン系ワックスエマルジョンと呼ばれ、本発明の塗料用水性樹脂組成物を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「ポリエチレン系ワックスエマルジョン」として、例えば、ジョンソンポリマー(株)製のJW−150(商品名)、クラリアント(株)製のワックス・ディスパージョン(WaxDispersion)W867(商品名)、サンノプコ(株)製のノプコートPEM−17(商品名)等を例示することができる。「ポリエチレン系ワックスエマルジョン」および「ポリプロピレン系ワックスエマルジョン」として、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンを変性することによって水性媒体中に存在可能にした樹脂、並びに水性媒体中に分散している樹脂を例示できる。
【0041】
ポリエチレン系ワックスエマルジョン及びポリプロピレン系ワックスエマルジョンは、好ましくは融点が90〜150℃、重量平均分子量が1000〜10000の範囲にあるポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックスを変性(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、もしくはアミノ基等の親水基で変性)することによって水性媒体中に存在可能にした樹脂、乳化剤もしくは水溶性の高分子を用いることによって水性媒体中に存在可能にした樹脂、並びに水性媒体中に分散した樹脂である。
【0042】
尚、ポリエチレン系ワックスの融点とは、JIS K2207に規定される軟化点試験方法(環球法)によって測定された値をいう。
【0043】
本発明に係る塗料用水性樹脂組成物は、樹脂エマルジョン(A)とワックス系エマルジョン(B)を別々に準備した後、両者を混合して得ることができる。また、樹脂エマルジョン(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種を重合によって得る際に、ワックス系エマルジョン(B)を存在させることで、ワックス系エマルジョン(B)が存在する樹脂エマルジョン(A)を得ることができ、これを用いて本発明に係る塗料用水性樹脂組成物を得ることもできる。即ち、樹脂エマルジョン(A)は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種が、ワックス系エマルジョン(B)の存在下にラジカル重合により得られた樹脂エマルジョンであってもよい。従って、結果的に本発明に係る塗料用水性樹脂組成物を得ることができれば、それも本発明に係る塗料用水性樹脂組成物に含まれる。
【0044】
本発明に係る塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99.5〜50重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜50重量部含んでなるが、樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99.5〜70重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜30重量部含んでなるのが好ましく、樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99〜80重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で1〜20重量部含んでなるのがより好ましく、樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99〜90重量、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で1〜10重量部含んでなるのが特に好ましい。
【0045】
ワックス系エマルジョン(B)が乾燥重量で0.5重量部より少ない場合、得られる水性樹脂組成物は、防湿性、防水性及び耐エフロ性が不十分となる。ワックス系エマルジョン(B)が乾燥重量で50重量部より多い場合、塗料用水性樹脂組成物から形成される塗膜と無機質形成部材との密着性が低下し、ブリスター等が生ずる原因となり得る。
【0046】
本発明に係る塗料用水性樹脂組成物は、必要に応じて、例えば顔料、充填剤、防錆剤、殺菌剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤及びpH調整剤等の添加剤を含むことができる。
【0047】
「顔料」とは、通常、顔料とされるものであれば特に限定されることはない。顔料は、通常、有機顔料と無機顔料に分類される。
「有機顔料」として、例えばファストエロー、ジアゾエロー、ジアゾオレンジおよびナフトールレッド等の不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;ファナールレーキ、タンニンレーキ、およびカタノール等の染色レーキ;イソインドリノエローグリーニッシュやイソインドリノエローレディシュ等のイソインドリノ系顔料;キナクリドン系顔料;ペリレンスーカットやペリレンマルーン等のペリレン系顔料等を例示できる。
【0048】
「無機顔料」として、カーボンブラック、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウムイエロー、ストロンチウムクロメート、モリブテン赤、モリブテンホワイト、鉄黒、リトボン、エメラルドグリーン、ギネー緑およびコバルト青等を例示できる。
【0049】
「充填剤」とは、性能向上、コスト低減等の目的で添加される物質をいい、通常充填剤とされるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレーおよびアルミナ等を例示できる。充填剤は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0050】
「防錆剤」とは、素材の腐食を抑制するために加えられる物質をいい、通常、防錆剤とされるものであれば特に制限されるものではない。具体的には、例えば鉛丹、白鉛、亜鉛化鉛、塩基性硫酸白鉛、塩基性クロム酸鉛、鉛酸カルシウム、クロム酸亜鉛、鉛酸シアナミド、亜粉末、ジクロロメート、バリウムクロメート、亜硝酸ソーダ、ジシクロヘキシルアンモニウムニトリル、シクロヘキシルアミンカーボネート及び防錆油等を例示できる。防錆剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0051】
更に本発明は、上述の塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料を提供する。上述の「塗料用水性樹脂組成物」は、そのまま「水性塗料」として使用することができるが、「水性塗料」は必要に応じて、上述の「添加剤」以外の「その他の添加剤」、例えば助剤及び着色剤等を含むことができる。また、本発明に係る「水性塗料」は、適宜希釈して用いてもよい。本発明に係る「水性塗料」は、「その他の添加剤」を、「塗料用水性樹脂組成物」に混合し、分散することによって得てもよい。
【0052】
「混合」及び「分散」する方法として、通常使用されている方法、例えばボールミキサー、ホモジナイザー又は羽付き攪拌機等の混合機を用いる方法を使用することができる。「混合」及び「分散」することができる限り、これら混合機の使用について特に制限されることはない。
【0053】
より具体的には、例えば上述の「塗料用水性樹脂組成物」に、必要であれば更に適当な水性媒体を加えた後、「その他の添加剤」を添加して水性塗料を得ることができる。更に適当な水性媒体に「その他の添加剤」を加えた後、上述の「塗料用水性樹脂組成物」を加えてもよく、「塗料用水性樹脂組成物」と、「その他添加剤」との混合順序は、適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0054】
更に、塗料用水性樹脂組成物を一旦製造することなく、例えば上述の樹脂エマルジョン(A)、ワックス系エマルジョン(B)、添加剤及びその他の添加剤を混合することで、塗料用水性樹脂組成物を製造しつつ水性塗料を得ることもできる。従って、結果的に本発明に係る塗料用水性樹脂組成物を含むことと成る水性塗料であれば、本発明に係る水性塗料に含まれる。
【0055】
このような本発明に係る水性塗料は、それが形成する塗膜の防水性、防湿性、耐エフロ性及び耐ブリスター性を後述する実施例において説明する方法を用いて評価すると、好ましくは下記のような性能を示す。
【0056】
防水性については、透水量が、0.5ml以下であることが好ましく、0.3ml以下であることがより好ましく、0.1mlであることが特に好ましい。防湿性については、透湿量が、60g/m以下であることが好ましく、40g/m以下であることがより好ましく、30g/m以下であることが特に好ましい。
【0057】
更に、耐エフロ性については、色が黄色のまま変化しないことが好ましい。耐ブリスター性については、膨れ度合いが全くないことが好ましい。
【0058】
上記方法で得られた本発明に係る「水性塗料」は、無機質形成部材に好適に使用することができ、特に、例えばセメント板及び瓦等の無機質成形板に塗工(又は塗布)して使用される。ここで「塗工」とは、水性塗料を塗工する方法として通常用いられる方法であれば、限定されることなく使用できる。例えば、ロールコーター、カーテンフローコーターおよびスプレー塗装等の塗料を塗工する方法及び塗料を塗布する方法を例示できる。
【0059】
尚、上述の水性塗料は、上塗り剤としても下塗り剤(中塗り剤及びいわゆるシーラーを含む)としても使用できるが、下塗り剤として使用することが好ましい。ここで「上塗り剤」とは、トップコートとも呼ばれ、最も外側に塗工される塗料をいい、外観の向上、つやだし、耐水性の向上、耐候性の向上等を目的として塗工される塗料をいう。一方、「下塗り剤」とは、上塗り剤以外の塗料をいい、主に防水性、防湿性、基材密着性の向上等を目的として塗工されるシーラー、並びに主に上塗り剤とシーラーとの間をつなぎ、防水性、防湿性、耐ブリスター性の向上等を目的として塗工される中塗り剤を含む。
【0060】
本発明は、更に本発明に係る上述の水性塗料が塗工された「無機質成形部材」を提供する。「無機質成形部材」とは、例えば、珪酸カルシウム、石膏、ロックウール、コンクリート、セメント、モルタル及びスレート等の材料が、種々の形態(板、ブロック等)に、例えば、押出し成型等によって成型された無機質形成部材をいう。
【0061】
更に、本発明は、好ましい態様の一つとして無機質成形部材用水性塗料が塗工された「無機質成形板」を提供する。「無機質成形板」とは、例えば、珪カル板、セメント系押出し成形板、ALC板(軽量気泡コンクリート板)、硬質木片セメント板及び炭酸マグネシウム板等の無機質成形板をいう。
【0062】
本発明に係る無機質形成部材(無機質形成板を含む)は、上述したように本発明に係る水性塗料を無機質形成部材に塗工することによって得ることができるが、以下に記載するように無機質形成部材の素材である未硬化の生の部材(生原板を含む)に水性塗料を塗工した後、両者を同時に硬化して得ることもできる。即ち、結果的に本発明に係る水性塗料に由来する塗膜を有することと成る無機質形成部材は、本発明に係る無機質形成部材に含まれる。本発明に係る無機質形成部材の製造方法の一例として、無機質形成板の未硬化の生原板を使用する製造方法を、以下に具体的に説明する。
【0063】
本発明に係る無機質成形板の素材である未硬化の「生原板」として、例えば未硬化の石綿セメント板、珪酸カルシウム板、パルプセメント板、炭酸マグネシウム板を例示できる。これらは、例えば乾式法、湿式法、押出し成形法等の通常使用されているいずれの方法を用いて製造してもよい。
【0064】
乾式法を用いる場合、セメント質原料、骨材(例えば珪石粉及びクレー等)、繊維補強材(例えばアスベスト及びパルプ等)並びにセメント質原料を完全に硬化させるために必要な水を加えて原料スラリーを作成した後、100〜300kg/cmの圧力で加圧することで、初期接着強度が発揮した段階の未硬化の生原板が製造される。湿式法を用いる場合、上述の原料スラリーを敷いた後、プレスロールを通して過剰の水を除去しながら成形後の初期接着強度が発揮した段階の未硬化の生原板が製造される。押出し成形法を用いる場合、押出し機により成形した後、数時間放置して、初期強度が発揮した段階の未硬化の生原板が得られる。
【0065】
上述のようにして得た初期強度が発揮した段階の未硬化の生原板の表面に、本発明に係る上述の水性塗料を、上述した通常の塗工方法、例えばロールコーター、カーテンフローコーター及びスプレー塗装等を用いて塗工して、本発明に係る水性塗料を塗工した生原板を得ることができる。この塗工した生原板を加圧釜内で、150℃以上の温度、好ましくは160〜180℃の温度にて、5kg/cm以上の圧力、好ましくは6〜10kg/cmの圧力で、過熱蒸気を用いて5〜20時間熱処理を行うことによって、未硬化の生原板と水性塗料を同時に硬化させる。このようにして、本発明に係る「無機質成形板」を得ることができる。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。また、実施例及び比較例において、重量部及び重量%は、特に記載しない限り、媒体(溶媒)を含まない部分を基準とする。
【0067】
アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンの製造
攪拌翼、温度計及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、60重量部の蒸留水及び1重量部の反応性界面活性剤(三洋化成(株)製のエレミノールJS−2(商品名))を加えた。窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌し、液温を75℃に保った。一方、30重量部の蒸留水、2重量部の反応性界面活性剤(三洋化成(株)製のエレミノールJS−2(商品名))、2重量部のメタクリル酸、54重量部のメタクリル酸メチル及び42重量部のアクリル酸ブチルから成る混合物、並びに0.3重量部の過硫酸ナトリウム及び10重量部の蒸留水から成る水溶液を用意した。上述の混合物の約5体積%と上述の水溶液の約10体積%の各々を、上述の四つ口フラスコに加えて攪拌し、乳化重合を開始させた後、混合物の残部と水溶液の残部を同時に約3時間かけて四つ口フラスコに滴下して加えた。滴下終了後、更に液温を75℃に保ちつつ約1時間攪拌を続けた後、得られた反応混合物を室温に冷却した。アンモニア水を加えてpHを9に調節して、乳濁液、即ち、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(a1)を得た。これを樹脂エマルジョン(A)として以下使用した。
【0068】
ワックス系エマルジョン(B)として、下記のワックスエマルジョンを使用した:
(b1)ワックスの融点が82〜89℃、エマルジョン粒子の粒子径が2μmのパラフィンワックスエマルジョン(クラリアント(株)製のE701K(商品名));
(b2)ワックスの融点が103℃、エマルジョン粒子の粒子径が0.5μmのポリエチレン系ワックスエマルジョン(サンノプコ(株)製のノプコートPEM−17(商品名));並びに
(b3)ワックスの融点が77℃、エマルジョン粒子の粒子径が2μmのマイクロクリスタリンワックスエマルジョン(サンノプコ(株)製のノプコ1245−M−SN(商品名))。
【0069】
ワックス系エマルジョン(B)のワックスの融点は、JIS K2207に規定される軟化点試験方法(環球法)を用いて測定して求めた。
また、ワックス系エマルジョン(B)のエマルジョン粒子の粒子径は、光散乱法によって測定した。
【0070】
後述する表1又は2に記載した量の上述の(a1)及び(b1)〜(b3)を用いて、実施例1〜7及び比較例1〜3の塗料用水性樹脂組成物を作製し、必要であれば希釈し、また、適宜上述した添加剤等を加えて水性塗料とした。尚、表1及び2に記載した(a1)及び(b1)〜(b3)の量は、重量部であり、媒体を含まない部分を基準とする(乾燥重量である)。
【0071】
得られた塗料用水性樹脂組成物の評価は、以下の様に行った。
1.防水性
防水性の評価は、JIS A6909(透水試験B法)に準拠して、透水量を測定することによって行った。即ち、各水性樹脂組成物を15重量%の水溶液となるように希釈し、また必要であれば適宜テキサノール(ブチルセロソルブ(可塑剤))を加えて最低造膜温度を0℃に低下させ、各々の水性塗料を得た。その後、ケイカル板(比重0.8)に100g/m(媒体も含む)の量となるようにはけ塗りし、100℃で10分間乾燥して、ケイカル板に塗膜を形成した。面積が44cmの塗膜を有する上述のケイカル板を1日で透過する水量(ml)を測定することで透水量を求めて、防水性を評価した。透水量が大きいほど防水性は小さく、透水量が小さいほど防水性は大きい。
【0072】
2.防湿性
防湿性の評価は、下記のように透湿量を測定することによって行った。各水性樹脂組成物を35重量%の水溶液と成るように希釈し、また必要であれば適宜テキサノールで最低造膜温度を0℃に低下させ、各々の水性塗料を得た。その後、5mil又は10milのアプリケーターを用いて、濾紙(東洋濾紙製の濾紙で#131である)に塗工し、この塗工した濾紙を100℃で10分間乾燥した。上述の水性樹脂組成物を塗工し乾燥した濾紙を、直径が3.4cmである円形に切断した後、瞬間接着剤を用いて、予め10gの塩化カルシウムを入れたシャーレ(直径は3cm)の上部に、隙間が生じないように接着し、濾紙を接着したシャーレの重量を測定した。硝酸バリウム飽和水溶液を入れたデシケーターの中に、上述の濾紙を接着したシャーレを並べた後、デシケータを20℃、湿度が65%の恒温室内に保管した。定常状態と成った後、濾紙を接着したシャーレの重量を求め、試験前の重量との差から、透湿量(g/m)を求めて、防湿性を評価した。透湿量が大きいほど防湿性は小さく、透湿量が小さいほど防湿性は大きい。
【0073】
3.耐エフロ性
各水性樹脂組成物を15重量%の水溶液に希釈し、また必要であれば適宜テキサノールで最低造膜温度を0℃に低下させ、各々の水性塗料を得た。その後、無機質形成板に100g/m(媒体も含む)の量となるようにはけ塗りし、100℃で10分間乾燥して、塗膜を有する無機質形成板を得た。この無機質形成板を、水道水に半没し、7日間放置した。無機質形成板の塗膜の表面にチモールブルー指示薬を塗り、色の変色によって耐エフロ性を評価した。指示薬の色が黄色の場合は、○とし、指示薬の色が青色の場合は×とした。
【0074】
4.耐ブリスター性
耐ブリスター性の評価は、下記のように行った。
各水性樹脂組成物を15重量%の水溶液に希釈し、また必要であれば適宜テキサノールで最低造膜温度を0℃に低下させ、各々の水性塗料を得た。その後、無機質形成板に100g/m(媒体も含む)の量となるようにはけ塗りし、100℃で10分間乾燥して、塗膜を有する無機質形成板を得た。更に、上塗り用樹脂組成物(日本エヌエスシー(株)製のヨドゾールAD99(商品名))を上述の塗膜の上に、100g/m(媒体も含む)の量となるようにはけ塗りし、100℃で10分間乾燥して、上塗りされた塗膜を有する無機質形成板を得た。この無機質形成板を50℃の温水に浸漬し、7日間放置した。上塗りされた塗膜を有する無機質形成板の表面の脹れ度合いから耐ブリスター性を評価した。耐ブリスター性は、脹れ度合いが、全くない場合は○とし、少しある場合は△とし、前面に膨れがある場合は×とした。
上述の評価結果は、まとめて下記の表1及び2に示した。
【0075】
【表1】
Figure 2004189839
a)透水量の単位は、mlである。
b)透湿量の単位は、g/mである。
【0076】
【表2】
Figure 2004189839
a)透水量の単位は、mlである。
b)透湿量の単位は、g/mである。
【0077】
表1及び2から、実施例1〜7は、防水性、防湿性、耐エフロ性及び耐ブリスター性に優れ、総合的な性能が改善されていることが確認された。比較例1〜3は、その性能が不十分であり、総合的な性質に劣ることが認められた。
【0078】
【発明の効果】
本発明の塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料を使用すると、無機質成形部材にエフロ現象を生じにくくなる。更に形成された塗膜の耐水性、防湿性、基材密着性、耐ブリスター性から選択される少なくとも一種も向上するので、無機質成形部材をより長期にわたって、外気から保護することが可能となる。さらに、本発明の塗料用水性樹脂組成物及び水性塗料は、溶剤型ではなく、更に塩素化パラフィンを含有することもないので、地球環境保護に優れ、更に臭気が弱く、作業面でも好ましい。

Claims (6)

  1. (メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン及びスチレン変性(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンから選択される少なくとも一種の樹脂エマルジョン(A)を乾燥重量で99.5〜50重量部、並びにワックス系エマルジョン(B)を乾燥重量で0.5〜50重量部含んで成ることを特徴とする塗料用水性樹脂組成物。
  2. ワックス系エマルジョン(B)は、石油系ワックスエマルジョン、ポリエチレン系ワックスエマルジョン及びポリプロピレン系ワックスエマルジョンから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の塗料用水性樹脂組成物。
  3. ワックス系エマルジョン(B)は、ワックスの融点が、30〜150℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗料用水性樹脂組成物。
  4. ワックス系エマルジョン(B)は、エマルジョン粒子の粒子径が、0.05〜10.0μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  5. 無機質成形部材用の水性塗料に用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  6. 請求項5記載の塗料用水性樹脂組成物を含んで成る水性塗料が塗工された無機質成形部材。
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