JP2004189546A - 水硬性組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造した焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末および石灰石粉末を含む水硬性組成物。
前記焼成物としては、廃棄物起源材料の有効利用の促進や、コンクリートの作業性、強度発現性等の向上の観点から、3CaO・Al2O3を10〜25質量%、4CaO・Al2O3・Fe2O3を10〜20質量%かつ3CaO・Al2O3と4CaO・Al2O3・Fe2O3の合計量が20〜35質量%、塩素量が0.1質量%以下で、さらに、2CaO・SiO2及び/又は3CaO・SiO2を含むものであることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰等の生活・産業廃棄物を原料として製造した焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末および石灰石粉末を含む水硬性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
わが国では、経済成長、人口の都市部への集中化に伴い、産業・生活廃棄物が急増している。従来から、かかる廃棄物の大半は、焼却によって十分の一程度に減容後、埋め立て処分されている。しかし、最近では埋め立て処分場の残余容量が逼迫していることから、新しい廃棄物処理方法の確立が緊急課題になっている。
その方法の一つに、都市ゴミ焼却灰等を原料としてセメントを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−281395号公報(第2−5頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載されたセメントでは、水和反応性が高い3CaO・Al2O3を10質量%以上含むため、モルタルやコンクリートに使用すると、普通ポルトランドセメントと比べて流動性が低下することに加え、流動性の経時変化も大きくなり、強度発現性もやや劣るという課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造した焼成物の粉砕物と特定の材料を組み合わせることによって、流動性に優れ、所望の流動性を一定時間維持しうる他、硬化後の強度発現性も良好な水硬性組成物とすることができることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0006】
即ち、本発明は、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造した焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末および石灰石粉末を含むことを特徴とする水硬性組成物である(請求項1)。前記焼成物としては、3CaO・Al2O3を10〜25質量%、4CaO・Al2O3・Fe2O3を10〜20質量%かつ3CaO・Al2O3と4CaO・Al2O3・Fe2O3の合計量が20〜35質量%、塩素量が0.1質量%以下で、さらに、2CaO・SiO2及び/又は3CaO・SiO2を含むものであることが好ましい(請求項2)。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造した焼成物の粉砕物について説明する。
前記焼成物の原料としては、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上と、必要に応じて、貝殻や下水汚泥に生石灰を混合した下水汚泥乾粉、その他の一般廃棄物や産業廃棄物などが用いられ、さらには、普通のセメント原料である石灰石、粘土、珪石、アルミ灰、ボーキサイト、鉄等を混合して成分調整した原料を用いても良い。
【0008】
本発明においては、廃棄物から主に由来する塩素およびナトリウム、カリウム等のアルカリを、焼成工程で蒸気圧の低いアルカリ塩化物に変換して揮発させて除去するため、上記焼成物の原料調整において、アルカリ塩化物を生成するのに十分な量のアルカリ源または塩素源を添加する、即ち、アルカリ量に比べ塩素量が過剰な原料に対してはアルカリ源を添加し、一方、塩素量に比べアルカリ量が過剰な場合は塩素源を添加することが好ましい。
なお、アルカリ源としては、炭酸ナトリウムまたはアルカリ含有廃棄物を使用することができる。塩素源としては、塩化カルシウムまたは塩化ビニル樹脂等の塩素含有廃棄物を使用することができる。
【0009】
上記成分調整した原料を1200〜1450℃で焼成した後、粉砕して、焼成物の粉砕物を調製する。
本発明において、焼成物の粉砕物のブレーン比表面積は3000〜5500cm2/gであることが好ましい。なお、本発明においては、前記焼成物を粉砕する際に石膏を添加し同時に粉砕しても良い。この場合、焼成物と石膏の混合粉砕物(混合粉砕物)のブレーン比表面積は、3000〜5500cm2/gであることが好ましい。
焼成物の粉砕物または混合粉砕物のブレーン比表面積が3000cm2/g未満では、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。ブレーン比表面積が5500cm2/gを越えると、モルタルやコンクリートの流動性が低下するうえ、流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。
【0010】
本発明において上記焼成物は、3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)を10〜25質量%、4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)を10〜20質量%かつC3AとC4AFの合計量が20〜35質量%、塩素量が0.1質量%以下で、さらに、2CaO・SiO2(以降、C2Sと略す)及び/又は3CaO・SiO2(以降、C3Sと略す)を含むものであることが好ましい。焼成物が前記鉱物組成を有するものであれば、該焼成物の調製において廃棄物起源材料の有効利用を促進することができるうえ、モルタルやコンクリートの流動性、強度発現性等を良好なものとすることができる。
【0011】
本発明の水硬性組成物は、上記焼成物の粉砕物と、石膏、高炉スラグ粉末および石灰石粉末を含むものである。
石膏としては、無水石膏、ニ水石膏、または半水石膏が挙げられる。
石膏の量は、焼成物の粉砕物100質量部に対してSO3換算で1.0〜6.5質量部が好ましく、1.5〜6.0質量部がより好ましい。石膏の量が、焼成物の粉砕物100質量部に対してSO3換算で1.0質量部未満では、モルタルやコンクリートの流動性が低下するうえ、流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。6.5質量部を越えると、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。
石膏のブレーン比表面積は3000cm2/g以上が好ましい。なお、本発明においては、
前記のように焼成物を粉砕する際に石膏を添加し同時に粉砕しても良いし、焼成物の粉砕物に石膏を添加し混合しても良い。後者の場合、焼成物の粉砕物と石膏との混合物(混合物)のブレーン比表面積は、3000〜5500cm2/gであることが好ましい。混合物のブレーン比表面積が3000cm2/g未満では、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。ブレーン比表面積が5500cm2/gを越えると、モルタルやコンクリートの流動性が低下するうえ、流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。
【0012】
高炉スラグ粉末の量は、焼成物の粉砕物100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、15〜100質量部がより好ましい。高炉スラグ粉末の量が、焼成物の粉砕物100質量部に対して5質量部未満では、モルタルやコンクリートの流動性が低下するうえ、流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。150質量部を越えると、モルタルやコンクリートの初期強度発現性が低下するので好ましくない。
高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、3000〜10000cm2/gであることが好ましく、4000〜8000cm2/gであることがより好ましい。高炉スラグ粉末のブレーン比表面積が3000cm2/g未満では、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。10000cm2/gを越えると、コストが高くなるうえ、モルタルやコンクリートの流動性が低下し、さらに流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。
【0013】
石灰石粉末の量は、焼成物の粉砕物100質量部に対して2〜60質量部が好ましく、5〜55質量部がより好ましい。石灰石粉末の量が、焼成物の粉砕物100質量部に対して2質量部未満では、モルタルやコンクリートの流動性が低下するうえ、流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。60質量部を越えると、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。
石灰石粉末のブレーン比表面積は、1500〜10000cm2/gであることが好ましく、2000〜8000cm2/gであることがより好ましい。石灰石粉末のブレーン比表面積が1500cm2/g未満では、モルタルやコンクリートの強度発現性が低下するので好ましくない。10000cm2/gを越えると、コストが高くなるうえ、モルタルやコンクリートの流動性が低下し、さらに流動性の経時変化も大きくなるので好ましくない。
【0014】
本発明の水硬性組成物の製造方法としては、例えば、
▲1▼焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末、石灰石粉末を混合する方法、
▲2▼焼成物と石膏を同時粉砕しておき、該混合粉砕物、高炉スラグ粉末、石灰石粉末を混合する方法、
などの方法が挙げられる。
なお、本発明においては、モルタルやコンクリートの製造の際に、水硬性組成物を調製しても差し支えない。具体的には、骨材、減水剤、水等とともに、
▲3▼焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末、石灰石粉末をミキサに投入する、
▲4▼混合粉砕物、高炉スラグ粉末、石灰石粉末をミキサに投入する、
などの方法が挙げられる。
【0015】
本発明の水硬性組成物は、普通ポルトランドセメント、早強セメント等の公知のセメントや、石炭灰、シリカフューム等の混和材、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、収縮低減剤等の混和剤を混合して使用することも可能である。
【0016】
【試験例】
以下、試験例により本発明を説明する。
1.都市ゴミ焼却灰を原料とした焼成物の調製
表1に示す乾燥した都市ゴミ焼却灰32.6質量%、石灰石粉64.2質量%、鉄原料2.7質量%、ソーダ灰(炭酸ナトリウム99.6質量%含有:セントラル硝子社製)1.45質量%を配合して成分調整した原料をロータリーキルンを用いて、1300〜1450℃で焼成して、焼成物を調製した。表2に焼成物の鉱物組成を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
2.水硬性組成物の調製
上記得られた焼成物を縦型ミルで粉砕した後、半水石膏を焼成物の粉砕物100質量部に対してSO3換算で2.1質量部添加・混合して焼成物の粉砕物と半水石膏の混合物(混合物)を製造した。該混合物のブレーン比表面積は3900cm2/gであった。該混合物、高炉スラグ粉末(ブレーン比表面積4550cm2/g)および石灰石粉末(ブレーン比表面積4100cm2/g)を用いて、表3に示す割合の水硬性組成物を調製した。
なお、比較用として、普通ポルトランドセメントも使用した。
【0020】
【表3】
【0021】
3.モルタルの調製および評価
モルタルの調製は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じた。
該モルタルの混練直後および混練から1時間経過後のフロー値を「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に準じて測定した。
また、各モルタルを用いて4×4×16cmの供試体を作製し、1日、3日、7日および28日間水中養生後、圧縮強度を測定した。
結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
【0023】
表4より、本発明の水硬性組成物を用いたモルタル(試験例1〜2)では、普通ポルトランドセメントを用いたモルタルとほぼ同等の流動性であることに加え、流動性の経時変化も小さく、強度発現性も良好であることが分かる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の水硬性組成物では、流動性に優れるうえ、流動性の経時変化も小さく、強度発現性も良好であるモルタルやコンクリートを製造することができる。
また、本発明の水硬性組成物は、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造するものであるので、資源の有効利用に大いに貢献することができる。
Claims (2)
- 都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造した焼成物の粉砕物、石膏、高炉スラグ粉末および石灰石粉末を含むことを特徴とする水硬性組成物。
- 焼成物が、3CaO・Al2O3を10〜25質量%、4CaO・Al2O3・Fe2O3を10〜20質量%かつ3CaO・Al2O3と4CaO・Al2O3・Fe2O3の合計量が20〜35質量%、塩素量が0.1質量%以下で、さらに、2CaO・SiO2及び/又は3CaO・SiO2を含むものである請求項1に記載の水硬性組成物。
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