JP4453097B2 - リン高含有低発熱型セメントの製造方法 - Google Patents

リン高含有低発熱型セメントの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低発熱型セメントの製造方法に関するもので、さらに詳しくは、下水汚泥または、その焼却灰等のリン高含有産業廃棄物の有効利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
低発熱型セメントは、普通ポルトランドセメントと比較して、水和反応に伴う発熱量が低く、マスコンクリートの施工の際に、セメントの水和熱に起因する温度ひび割れを防止する有効な対策のひとつとして、利用されているものであり、セメントクリンカ中のエーライト:3CaO・SiO(CS)およびアルミネート:3CaO・Al(CA)含有量を低減することにより所用の性能となる。
【0003】
現在国内で製造販売されている低発熱型セメントは、普通ポルトランドセメントへの高炉スラグやフライアッシュ等の混和材配合量を多くしたものと、セメントクリンカ中のビーライト含有量を増加させたものとに大別でき、前者は混和材を混合することにより、後者はセメントクリンカ中のビーライト:2CaO・SiO(CS)含有量を増加させることにより、エーライトおよびアルミネートの含有量を低減し、低発熱型セメントを得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
セメントクリンカ中のビーライト含有量を増加させることにより、低発熱型セメントを得る方法は、普通ポルトランドセメント製造時と比較して、ロータリーキルンでの焼成が困難であり、普通ポルトランドセメントと低発熱型セメントとの運転切替時に、中間的な化学組成のセメント原料およびセメントクリンカが大量に発生するため、その処理が必要となる。
したがって、本発明の目的は、リン高含有セメントクリンカを用いて、上記の課題を解決しつつ、低発熱型セメントを製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した本発明の目的は、石灰石,粘土,硅石,酸化鉄原料およびリン高含有原料を用いて、(CaO)/(SiO+Al+Fe)が1.8〜2.3、(SiO)/(Al+Fe)が2.3〜2.7、(Al)/(Fe)が1.4〜1.8、リン含有量がPとして2〜5重量%(焼成ベース)となるように調整した調合原料を粉砕,焼成して得たクリンカに、SO量が1〜4重量%となるように石膏を混合して粉砕するか、互いに分離粉砕した後混合して、得ることによって達成される。
【0006】
本発明は、この製造方法により得られたセメントが、普通ポルトランドセメントとしては、凝結時間が長く、初期材齢における強度発現性が小さくなるため、使用出来ないものの、主にマスコンクリートに使用される低発熱型セメントとしては、十分な性能を有しており、さらに水和反応に伴う発熱量が低いという事実を見出して完成したものである。
【0007】
また、本発明の製造方法により得られるセメントが、リン含有量が高いことを除けば、普通ポルトランドセメントとして遜色のない化学組成であるために、リン高含有原料の使用を中止することにより、通常の普通ポルトランドセメントの製造ができ、普通ポルトランドセメントと低発熱型セメントとの運転切替時に、中間的な化学組成のセメント原料およびセメントクリンカが発生しないという特徴を持つ。
なお、以後の記述では、(CaO)/(SiO+Al+Fe)をHM、(SiO)/(Al+Fe)をSM、(Al)/(Fe)をIMと記す。
【0008】
【発明実施の形態】
従来の低発熱型セメントが、普通ポルトランドセメントへの高炉スラグやフライアッシュ等の混和材の配合量を多くするか、もしくは、セメントクリンカ中のビーライト含有量を増加させることにより、所用の性能を得ていたのに対し、本発明におけるセメントは、リンがセメントクリンカ中でエーライトのSiのサイトに置き換わって固溶し、エーライトの初期段階における活性を抑制し、ビーライトに近い性質を示すこと、およびリンのSiのサイトへの置換固溶によりSiが余剰となり、セメントクリンカ中のビーライト含有量が増加することを見出し、さらにリン含有量が一定の範囲内にある時、低発熱型セメントとして所用の性能が得られる事実を見出して完成したものである。
【0009】
本発明における、低発熱型セメント用原料のHMは1.8〜2.3、好ましくは2.1〜2.2である。1.8未満では、セメントクリンカ中のエーライト含有量が十分でないために、著しい凝結遅延となり、2.4を越えると、キルンでの焼成が困難となる。
【0010】
原料のSMは2.3〜2.7、好ましくは2.4〜2.6である。2.3未満では、セメントクリンカ中のアルミネート含有量が多くなるために、水和発熱量が上昇し、2.7を越えると、エーライトおよびアルミネートの含有量が十分でないために、凝結遅延となる。
【0011】
原料のIMは1.4〜1.8、好ましくは1.5〜1.7である。1.4未満では、セメントクリンカ中のアルミネートの含有量が十分でないために、凝結遅延となり、1.8を越えると、セメントクリンカ中のアルミネート含有量が多くなるために、水和発熱量が上昇する。
【0012】
セメントクリンカ中のリン含有量は、Pとして2〜5重量%、好ましくは2〜4重量%である。セメントクリンカ中のP含有量が2重量%未満では、リンのエーライトへの固溶量が不足し、5重量%を越えると、凝結遅延となるためである。
【0013】
本発明における低発熱型セメントは、前記セメントクリンカを石膏と共に同時粉砕、または、互いに分離粉砕した後混合することによって得られる。なお、セメントの生産性を考慮した場合、前者の同時粉砕することが好ましい。石膏としては、無水・半水および二水石膏を使用することができる。石膏の添加量は、SO量で1〜4重量%、好ましくは1〜3重量%である。
【0014】
上記の粉砕方法は、慣用の装置を用いて行うことができる。セメントの粒度は、ブレーン比表面積で2000〜5000cm/g、好ましくは3000〜4000cm/gである。2000cm/g未満では凝結遅延および強度発現性の低下がみられ、5000cm/gを越えるように粉砕することは、コスト高になるので好ましくない。
【0015】
本発明において、リン高含有原料を特定しない。
しかしながら、下水汚泥および、その焼却灰等のリン高含有産業廃棄物の普通ポルトランドセメント原料としての利用が、セメント中のリンがある一定量以上になると、セメントの凝結時間が長く、初期材齢における強度発現性が小さくなるため、量的に制限されていることおよび産業廃棄物の発生抑制と再資源化を考慮した場合、リン高含有産業廃棄物を有効利用することが好ましい。
【0016】
また、本発明の製造方法により得られるセメントが、リン含有量が高いことを除けば、普通ポルトランドセメントとして遜色のない化学組成であるために、ロータリーキルンでの焼成に際して、特に考慮すべき点はなく、リン高含有原料の使用を中止することにより、通常の普通ポルトランドセメントの製造ができ、普通ポルトランドセメントと低発熱型セメントとの運転切替時に、中間的な化学組成のセメント原料およびセメントクリンカが発生しないために、工業化するにあたり特別の手段を講じる必要がない。
【0017】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
石灰石,粘土,硅石,酸化鉄原料および下水汚泥焼却灰を用いて、HM,SM,IMおよびP含有量(焼成ベース)を変化させた、セメント用原料を多数調整し、焼成して得たセメントクリンカより製造された、セメントの物理性状の比較を行った。
使用した石灰石,粘土,硅石,酸化鉄原料および下水汚泥焼却灰の化学組成を表1に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0004453097
【0019】
これらの原料を用いて、表2に示すセメントクリンカの組成比率およびP含有量となるように調整した調合原料を粉砕後、各調合原料をSPロータリーキルンを用いて約1450℃で焼成し、セメントクリンカを得た。
【0020】
なお、比較例1は、一般的な組成に近い調合原料(HM=2.17,SM=2.46,IM=1.60,P含有量=0.50重量%)から製造された、普通ポルトランドセメントクリンカであり、比較例2は、普通ポルトランドセメントに高炉スラグやフライアッシュ等を混合した市販の低発熱型セメント(第一セメント社製)である。
【0021】
各セメントクリンカに二水石膏をSO換算で2.0重量%添加し、混合粉砕してブレーン比表面積約3400cm/gのセメントを製造した。
上記のセメントについて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」の規定にしたがって、凝結試験および強さ試験を行い、「JIS R 5203(セメントの水和熱試験方法)」の規定にしたがって、水和熱の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004453097
【0023】
本発明におけるクリンカの組成比率およびP含有量のセメント(実施例1,2)は、一般的な組成に近い普通ポルトランドセメントクリンカより製造したセメント(比較例1)と比較して、P含有量の増加に伴い、凝結時間が長く、初期材齢における強度発現性が小さい。
【0024】
しかしながら、実施例1,2のセメントは、普通ポルトランドセメントに高炉スラグやフライアッシュ等を混合した、市販の低発熱型セメント(比較例2)と比較して、同程度の性能を有していることが判る。
さらに、本発明の範囲内でP含有量を調整することにより、水和発熱量を任意に調整することが可能である。
【0025】
一方、本発明の範囲以上のP含有量(比較例3)およびSM(比較例4)とした場合、凝結の遅延および初期強度の低下が著しく、低発熱型セメントとしては、所用の性能から外れるセメントとなる。
【0026】
上記表2から、本発明の方法により製造されたセメントは、普通ポルトランドセメントとしては、凝結時間が長く、初期材齢における強度発現性が小さいものの、低発熱型セメントとしては十分な性能を有しており、さらに水和反応に伴う発熱量が低いことは明らかである。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以上詳記したように、リン高含有セメントが低発熱型セメントとして十分な性能を有している事実を見出したことにより、工業化するにあたり特別の手段を講じる必要がないので、実施化が容易なうえ経済的負担が軽微である点および下水汚泥、またはその焼却灰等のリン含有量の高い産業廃棄物のセメント用原料としての配合量の増加が可能となり、廃棄物処理に量的質的に多大に貢献する点など、メリットは大きい。

Claims (1)

  1. 石灰石,粘土,硅石,酸化鉄原料およびリン高含有原料を用いて、(CaO)/(SiO+Al+Fe)が1.8〜2.3、(SiO)/(Al+Fe)が2.3〜2.7、(Al)/(Fe)が1.4〜1.8、リン含有量がPとして2〜5重量%(焼成ベース)となるように調整した調合原料を粉砕,焼成して得たクリンカに、SO量が1〜4重量%となるように石膏を混合して粉砕するか、互いに分離粉砕した後混合して、得ることを特徴とする低発熱型セメントの製造方法。
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