JP2004188035A - 焼き調理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】発煙と発火がなく、効率よく愛量にジューシーな焼鳥を焼き調理で
きる装置を提供する。
【解決手段】水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材1を中心とし
て、上方に第1加熱部2を、下方に第2加熱部3をそれぞれ配置し、この第2
加熱部3は前記支持部材1上に支持された食材4から染みだす肉汁などの液体
が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されて
おり、前記支持部材1上に支持された食材4を、上下両面より全体加熱して焼
き調理することを特徴とする焼き調理装置。
【選択図】 図1
きる装置を提供する。
【解決手段】水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材1を中心とし
て、上方に第1加熱部2を、下方に第2加熱部3をそれぞれ配置し、この第2
加熱部3は前記支持部材1上に支持された食材4から染みだす肉汁などの液体
が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されて
おり、前記支持部材1上に支持された食材4を、上下両面より全体加熱して焼
き調理することを特徴とする焼き調理装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は串に刺した肉や魚や野菜等の食材を焼き調理する装置、特に連続的に焼き鳥などを焼き調理する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、焼き鳥あるいは鰻のカバヤキなどを焼き調理する場合は、燃焼炉に備長炭などの炭を燃焼させ、その燃焼炉の上部に金属製の支持棒を渡し、この支持棒上に串刺した鳥肉やネギ、鰻を開いて串刺しにした食材を炉の縁に載せて炙っている。
【0003】
そして、この炭火を使用した焼き調理の場合は、炭の燃焼状態を所定に維持する必要があるが、この火加減の調節作業には、かなりの熟練を必要としており、従って、調理人はこの火加減を見ながら食材を炉の縁に供給し、ある程度、この食材が焼けるとこれを反転して裏側を炙り、タレを付けたり塩や調味料を振りかけたりする作業を繰り返す必要がある。
【0004】
炭火の燃焼温度はかなり高温であり、その高温の燃焼ガスと放射熱からなる熱エネルギーを食材に直接与えると焼け焦げが局部的に発生する。この焼け焦げが発生すると肉質が固くなるために、柔らかな焼け具合のものを得ることは困難である。
【0005】
そこで調理人はしばしば炭火の燃焼状態を調節しながら、高温の燃焼ガスが食材に直接に当たることがないように、団扇をパタパタと操作して逃がしながら、新しい食材を炉の縁に供給したり、半焼けのものを反転したり、七味唐がらしや塩などを振りかけたり、更に焼き調理が終わったものを取り出すなど、かなり複雑な一連の動作を流れるように行う必要がある。
【0006】
このように炭火で鳥肉等の食材を加熱する際の重要な点は、いわゆる「強火の遠火」であり、これを実現できるか否かによって食材の焼け具合と味にに大きな差を生ずるのであり、そこに熟練した職人の腕があるのである。
【0007】
従って、このような炭火を使用した焼き調理の職人芸に熟達するには、かなりの年月と訓練を必要とする欠点がある。そこで、この問題を解消するために電熱加熱やガス加熱が使用されるようになってきた。
【0008】
電熱ヒーターの場合は、電圧の調整により温度調節が容易にできる点が優れているものの、炭火のような焼き調理に適した波長の遠赤外線(温度)が得られなく、熱量も比較的少ないので、焼き上がりが悪く、あたかも煮物に似た食感で、不味い焼き物が得られないという問題がある。
【0009】
一方、ガス加熱は、食材に対して大量の熱量を与えて加熱できる点が電熱加熱に比較して優れている。しかし、高温の燃焼ガスを肉等の食材に直接接触させて高温に加熱することになるので、食材の表面の細胞が熱破壊されて美味しさの素である肉汁が大量に放出されることになる。
【0010】
この食材からの肉汁の大量の放出により、肉質が固くなると共に、その外形が細くなり、材料によっては元の大きさの半分以下の大きさになり、料理の見栄えが貧弱なものになる。
【0011】
しかも、本来の炭火を使用したものに比較して歯触りが悪く、パサついた、不味いものとなる。特に、細胞が熱破壊された焼き鳥は、肉が細く貧弱なものになる上に、冷えると一段と味が悪くなる。
【0012】
また、備長炭を使用した焼き調理は、鶏肉などの肉類を炙る場合に、大量の肉汁や油を染みださせ、これが炭火の上に落下し、燃焼して大量の煙を発生するので室内の空気を汚染する。更に煙とともに脂肪分が細かい粒子となって空気中に浮遊するので、着衣を汚染したり、焼き肉屋独特の臭いを付着させるので、その煙を排気するために大量の排気が必要で、それに大きな動力を必要とする欠点があった。この現象は、ガスによる焼き調理の場合も同様である。
【0013】
本発明は、前記従来の焼き調理の問題点を解決するために得られたものであって、その目的を列挙すると、次の通りである。
【0014】
1.生産量を従来の装置に比較して2倍あるいは3倍以上に増加できる焼き調理装置を提供する。
2.発煙が殆んどなく、店内で調理しても室内の空気を汚染しない焼き調理装置を提供する。
3.発煙と共に発火性が実質的になく、安全な焼き調理装置を提供する。
4.焼き調理中の食材の中心温度が75℃、つまり大腸菌死滅温度に到達する時間が、従来の装置に比較して著しく短い焼き調理装置を提供する。
5.調理後、時間が経過して冷たくなった料理でも、美味しさを維持できる焼き調理装置を提供する。
6.焼き調理しても、食材の原型と大差のない大きさの料理を焼くことができる装置を提供する。
7.調理中に、食材を実質的に反転操作をすることがく、素人でも操作できる、操作性に優れた焼き調理装置を提供する。更に、炭火焼きのようにウチワで扇ぐ必要が全くない焼き調理装置を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明は、次の通りである。
【0016】
1)水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、前記支持部材上に支持された食材を、上下両面より全体加熱して焼き調理することを特徴としている。
【0017】
2)水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、前記第1加熱部は電熱ヒーターと、その下部に配置されて前記電熱ヒーターからの熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で、また、前記第2加熱部はガスバーナーと熱変換体でそれぞれ構成され、前記食材を、第1加熱部と第2加熱部からの放射熱により、上下面から加熱して焼き調理することを特徴としている。
【0018】
3)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を受けて遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、更に前記熱変換体は耐熱ガラス製であることを特徴としている。
【0019】
4)前記第1加熱体と第2加熱体は、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体と第2加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側にセラミック層が溶着形成されていることを特徴としている。
【0020】
5)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、前記第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側に熱特性の異なる複数のセラミック層が溶射積層されており、このセラミックス層の放射スペクトルのピークの波長を比較すると、熱源に近い集熱面側が短波長で、前記耐熱ガラス面側が前記集熱面側より長波長であることを特徴としている。
【0021】
6)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱を受けて加熱される熱変換体で形成され、この熱変換体は耐熱ガラスの局面体で、その集熱面側に複数層のセラミック層が溶射積層されており、
集熱面側のセラミックス層の主成分は酸化チタンであり、この酸化チタン層の熱を耐熱ガラス面側のセラミック層の主成分は酸化アルミであることを特徴としている。
【0022】
7)前記支持部材は網状あるいは簾状の連続体からなるコンベアであることを特徴としている。
【0023】
8)前記支持部材の下方に配置された二つの第2加熱体は、上部より下部に縮小するように傾斜した壁面を持つ本体の、前記壁面に固定され、この第2加熱体より下方に液溜部が形成されていることを特徴としている。
【0024】
9)水平状に配置された金網状のコンベアを中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれて配置され、前記第1加熱体と第2加熱体とで加熱単位体を形成しており、前記コンベアの進行方向に、前記加熱単位体を複数組配置したことを特徴としている。
【0025】
本発明の第1の特徴は、食材を中心として下方の2箇所と上方の1箇所の3箇所のデルタ形、三角形に加熱部を配置した構造、あるいは円周を3つに分割して下方に2箇所、上方の1箇所の円月形に加熱部を配置した構造を加熱部の基本構造とするものである。
【0026】
この基本構造により、食材を表裏の全周から加熱できる上に、食材より発生した油脂や汁などが落ちる場所に加熱部を配置しないことから、発煙も発火も防止するようにしている。このような加熱方法によって焼鳥を調理することは従来の炭火焼きや電熱加熱ではできないことである。
【0027】
本発明の第2の特徴は、電熱ヒーターやガスバーナーなどの熱源から発生した熱エネルギーをそのまま食材に与えるのではなく、熱エネルギーを焼き調理に適した波長の遠赤外線に変換してから与えることに特徴がある。
【0028】
例えば、炭火焼きの場合は、熟練した職人が焼いたものと、素人が焼いたものとでは味や見かけに大差があり、また、焼き調理した直後の焼鳥と、これが冷えたものとでは、味に大きな違いがあり、冷えたものは小型で硬くなっており、不味いものになっている。これは、再び加熱しても到底元の形や味に戻ることはない。
【0029】
これに対して、本発明による焼鳥は、ふっくらとしてボリュームがあり、ジューシイで、全くぱさつきがない。見栄えがよく、冷えても美味しく、そして再び加熱すると元の味に復元するという特徴がある。そして、本発明にかかる装置を使用することによって、調理中に食材を反転する操作を省くことができるので、調理の経験の長短に関係なく、同じ味のものを、従来の方法に比較して2〜3倍も大量に得ることができるのである。
【0030】
本発明において「熱変換」は重要な要素であるが、これの意味は、食材の表面だけ高温に加熱するのではなく、肉の表面の温度よりも中心部の温度のほうが高くなるような質の熱エネルギーに変換して、これで食材をまんべんなく加熱することに特徴がある。
【0031】
具体的には、熱源の熱が直接に食材に到達しないように、耐熱ガラスでその熱を遮断し、この耐熱ガラスが加熱されて放射される放射熱エネルギーによって食材を加熱するものである。しかし、単に、熱源と食材との間に耐熱ガラスを配置しただけでは、目的とする熱エネルギーの利用は困難である。
【0032】
特に、本発明においては、耐熱ガラスの熱源に対面する、集熱面側にセラミック層を形成する。しかも、このセラミック層は少なくとも二重構造(複合構造)のものとすることが必要である。
【0033】
熱源に近い集熱層は、高温の放射スペクトルのピークを持つものを選定し、そしてガラス面側、つまり放熱面ないし送熱面側は、前記高温におけるピーク値より低い値を持つセラミック層を選定するのである。
【0034】
この複合構造のセラミック層は、本発明者などの実験によると、約30〜40%の熱効率の改善となっている。
【0035】
具体的に説明すると、厚さ5mm、直径が15cmの円弧状の断面を持つ、耐熱ガラスの凹面側に、酸化アルミを主成分とするセラミックスの微粉末をプラズマ溶射付着して第1層を形成する。更に、その上(集熱面)に酸化チタンを主成分とするセラミックスの微粉末を同様にして付着させて二重のセラミック層とした。
【0036】
このように二重構造のセラミック処理をした耐熱ガラス、つまり、熱変換体と、何も表面処理しない耐熱ガラス(非熱変換体)を使用する。そして、アルミ製の容器に同量の水(約200cc)を入れたものを沸騰させて蒸発時間を測定した。その結果、セラミック処理をした熱変換体を熱源の上部に配置した組合わせのものは、セラミック処理しないものに比較して前記のように約25〜30%、あるいはそれ以上の早い蒸発速度であった。
【0037】
本発明は、前記した「熱変換効果」によって熱源からの熱が変換された遠赤外線を、加熱源として焼き調理することによって、前記のように色々な効果を得ることができるのである。
【0038】
【発明の実施の形態】
(発明の基本構成)
先ず、本発明の基本構成について説明する。
【0039】
本発明の焼き調理装置の基本的な思想は下記の通りである。
【0040】
第1点は、食材に対して表裏より全体的に加熱して、比較的低温において大量の熱エネルギーを付与することにある。このことは、調理品の生産効率の向上に関係している。
【0041】
食材に対して表裏面より加熱するための熱源は、食材を焼く部分の上方に1台と、下方に2台で、断面的に三角形あるいはデルタ形に配置されているのが効率的に焼き調理する基本形であると共に、設計上も有利である(デルタ配置)。この配置の変形としては、熱源を構成している熱変換体の表面形状を凹形とすることで、円周形で、その円周面に三角形、別名、円月形配置とすることができるのである。
【0042】
第2点は、熱エネルギーは、電熱ヒーターあるいはガスバーナーの熱源から与えられた熱エネルギーを直接に食材に与えるのではなく、一旦、焼き調理に適した波長の遠赤外線に変換して食材を加熱することにある。
【0043】
熱エネルギーを高温の燃焼ガスや高温の輻射熱(つまり近赤外線)を遠赤外線に変換することにより、この熱エネルギーを食材に効率的に打ち込む(食材の中心部を効率的に加熱)ことができる。
【0044】
その結果、驚くべきことには、食材を焼き調理した直後に、その表面と内部の温度を測定すると、表面の温度より内部の温度が高い(鶏肉を焼いた場合には約5℃〜8℃)のである。このことは、他の焼き調理方法では絶対に起こり得ないことである。
【0045】
第3点は、食材から肉汁などのジュースをなるべく放出させないようにして焼き調理することにある。
【0046】
熱エネルギーを食材である肉類の内部まで到達させることは、従来のように電熱ヒーターやガスを使用して食材の表面を高温に保持することによって内部を加熱する方法を適用するのではなく、表面を焦がすような高温に長時間保持しないで、肉の内部を速やかに加熱することを意味する。
【0047】
焼き調理する間に肉汁を放出しないということは、元の食材の大きさと、焼き調理した後の焼き肉との大きさに大きな変化がないことを意味しており、調理上で極めて重要である。
【0048】
図1の概念図及び図2の斜視図は、本発明のデルタ形配置の基本構造を示している。
【0049】
この焼き調理装置Mは、網状あるいは簾状のコンベアなどの移動支持部材1を中心に、これの上方に第1加熱部2を、また、下方に2台の第2加熱部3,3aを略三角形あるいはデルタ形に配置している。
【0050】
コンベア1の上には竹串に刺した鶏肉や野菜などの食材4を載せて移動しながら、三角形ないしデルタ形で遠赤外線が照射されている「加熱空間」を通過させて表裏ないし周面より全体的に熱を与えて焼き調理するのである。
【0051】
第1加熱部2と第2加熱部3,3aは、この実施の形態においては断面を楕円形とし、その半分に形成した耐熱ガラス製の熱変換体Hと熱源Sで構成されている。
【0052】
また、熱源としては、2本の電熱ヒーターS(焼き調理する有効長さが、約0.9m〜1,0m程度ある場合は、1.5kwの電熱ヒーターを使用)を前記熱変換体Hの焦点に配置している。この熱変換体Hは、凸形に形成した耐熱ガラス製の曲面板の凸面を食材4に向け、更にこの材4の長さに相当する距離kだけ離間し、図4に示した調理装置の本体6の傾斜した前後の壁面6a,6bに固定している。
【0053】
そして、好ましくは第2加熱部3,3aを図1に矢印A,Bに示すように、また、第1加熱部2は矢印Cに示すように、食材4に対して(あるいは支持部材1に対して)その固定位置を調節できるように構成しておくことによって最適な加熱条件を得ることができる。
【0054】
前記第1加熱部2と第2加熱部3,3aの電熱ヒーターSに通電してこの電熱ヒーターSを灼熱(550℃〜650℃)に発熱させると、各電熱ヒーターSより放射熱R1,R2,R3を放射して支持部材1上の食材4を表裏ないし周囲全面から加熱する。
【0055】
図3は図1の装置の変形を示すもので、第2加熱部3の熱交換体Hが半円筒状であること、電熱ヒーターSが各1本であることを除けば、図1の装置と同様である。
【0056】
図5は図4の装置においては、第1加熱部2の耐熱ガラスからなる熱変換体Hに平板状のものを使用したものを示している。この装置においては第2加熱部3、3aのものも平板状に形成しても良い。
【0057】
なお、熱源として電熱ヒーターを使用した例を説明したが、第1加熱部、第2加熱部共に、これに限定されるものではなく、ガスバーナーを使用することも可能であり、特に第2加熱部3には対流ガスの熱量が多いことから、これを一旦、熱変換することによって食材を高温に晒す仕上げ焼きが出来る。
【0058】
このガスバーナーを使用する際の注意点は、熱変換体Hで燃焼ガスを受け止めて、この熱変換体Hをまず加熱することである。この熱変換体Hが加熱される状態では、対流熱(燃焼ガスの熱)が減少し、熱変換体Hより発生する遠赤外線が熱変換作用により、著しく増加する。
【0059】
このように本発明は、電熱ヒーターやガスバーナーからなる熱源Sから発生した熱をそのまま食材4に与えることをせず、一旦、この熱を熱変換体Hで受けてこれを加熱し、その熱を遠赤外線に変換して放射することに特徴があるのである。
【0060】
熱変換体Hを構成する素材としては、耐熱ガラス(商品名:パイロセラム)や同様な熱的な特性を持つ磁器類、セラミックなど、灼熱の高温に耐え、そして希望する遠赤外線を放射する耐熱材料が適している。
【0061】
しかしながら、この耐熱ガラスのみでは、必要とする波長の遠赤外線が得られない場合が多い。そこで本発明においては図6(A)に示すように断面が曲面の耐熱ガラス8の凹面にセラミック層9をプラズマ溶着している。このセラミック層9は図6(B)に示すように受熱面側を酸化チタン(TiO2 )を主体とする層Tで形成し、放熱面側(耐熱ガラス8の表面に溶着されている側)を酸化アルミ(Al2 O3 )を主体とする層Aで2層に形成している。
【0062】
熱源Sより発生した熱エネルギーhは受熱面の酸化チタンからなる層Tで吸収され、熱変換されながら放熱面側の層Aへ伝達され、そして耐熱ガラス8(これもセラミックの一種)で更に熱変換されて遠赤外線Rとして食材4に放射されてこれを温める。結局、耐熱ガラス8に2層のセラミック層を形成した場合は、3層のセラミック層を形成していることになる。
【0063】
セラミック層の熱変換効果について本発明者等が実験したところによると、耐熱ガラスの表面(集熱面)にセラミックス層を設けた場合の特徴は、放射線の波長と熱エネルギー(射出量:W/m2 )との関係を示す、「黒体を基準としたセラミックス、特にアルミナと酸化チタンの放射スペクトル」のグラフより、酸化チタン層と酸化アルミの放射スペクトルのピークの波長は、酸化アルミ、即ち、酸化アルミが10.0μmであり、また、酸化チタンが8.0μmであることが確認されている。
【0064】
このような放射スペクトルのピークの波長の異なる二種類のセラミックス層は、放熱板等の表面へのプラズマ溶射加工が容易で、比較的安価にでき、更に、熱変換の作用効果が顕著である点において優れている。また、必要に応じて三層あるいはそれ以上の層に積層されてものを使用することは可能であるが、
セラミックスの種類と温度による波長との関係、他のセラミックス層との熱的な関係を知るために、多数の実験を必要とするので、既に熱的性質の分かっている酸化チタンと酸化アルミをベースとして、他のセラミックス微粉末を混合して使用すると良い。
【0065】
本発明における熱変換の意味は、前記のようにガスを燃焼させて発生した燃焼ガスを一旦、熱変換体に与えて一定量の水を蒸発させた場合の蒸発時間と、燃焼ガスで同様に一定量の水を蒸発させた場合の蒸発時間を比較して、蒸発速度が早くなった時に「熱変換効果あり」と、判断するのである。
【0066】
この実験によると、耐熱ガラスのみの場合(G)は、単に燃焼ガスで加熱した場合(g)よりも蒸発速度が遅い。そして、受熱面側に酸化チタンからなるセラミック層を設けた場合は(G)と(g)とは、ほぼ同じ程度である。
【0067】
しかし、耐熱ガラス面側に酸化アルミ層を形成し、その上に酸化チタン層を二重に形成したものは、(g)の場合よりも約25%から30%もの蒸発時間が短縮されており、明確に「熱変換効果」を確認することができる。
【0068】
図4は、本体6の内部に加熱部をデルタ形に配置した焼き調理装置の断面図を示すもので、上部構造は、矢印Uの部分より上方に回動して後退する構造になっており、必要に応じて上部構造を移動させて、支持部材1の上方を開いて内部を清掃したり、調整したりできるようにしている(図10参照)。
【0069】
そして、必要に応じて上部構造に排気ダクト7を、下部構造に液溜め部11を設けて、これの中に水を溜めておいて食材から発生した液体を本体6の外部に簡単に排出できるようにする。また、上部構造に覗き窓12を設けて食材 4の焼け具合を観察できるようにしておくのが良い。
【0070】
図7は、第2加熱部3の熱変換体Hの断面を半円形にしたもので、本質的な構造は図4の場合と同様である。
【0071】
図8は、円月形の調理装置の断面図を示すもので、熱変換体Hを凹形に形成して、3台のものを一つの円周状に配置したものである。この構造の装置の場合、熱源Sよりの熱により熱変換体Hを加熱して発生した放射熱R1,R2,R3を食材4に集中できるので、熱効率の良い装置とすることができる。なお、この装置においてもなるべく食材4から発生した液体が第2加熱部3,3aの熱変換体Hにかからないように設計することは言うまでもない。
【0072】
(実 施 例)
次に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0073】
図9は焼き調理装置の正面図、図10は同側面図である。
この焼き調理装置20は、三層構造で、下部構造の熱源Sとしてガス燃焼器21と熱変換体Hを有する第2加熱部22、その上方の食材支持部材としてコンベア23、更にその上方の第1加熱部24として電熱ヒーター25が配置されており、図10に示すように、この電熱ヒーター25と熱変換体Hからなる第1加熱部24は、一端が仰伏自在にヒンジ25aで支持されて、この第1加熱部24の所を掃除したり調整したりできるようになっている。そしてこの第1加熱部24の上方を覆ってフード26が設けられている。
【0074】
本体27は,ステンレス製で上部が開放され、前後に傾斜した壁板28,29と、中央に油や汚水等の液体やカスを集める傾斜面からなる底板30で漏斗形で横長に形成され、前後の壁面28,29に第2加熱部22を構成するガス燃焼器21が互いに上方を向いて設けられている。また、底板30の中央部の最も下がった場所に油や汚水等の液体とカス等を収容する引出し31が設けられている。
【0075】
ガス燃焼器21は、図1などに図示されている第2加熱部3、3aに示した構造の電熱ヒーターSをガスバーナーに変更した構造のような装置が設けられている。
【0076】
また、ガスバーナー21を覆うように配置されている熱変換体Hはこの実施例においては半円筒状の耐熱ガラス( 石英ガラス、パイレックス(登録商標))で構成されており、図6に示すように耐熱ガラス8の凹面(燃焼ガスを受ける面)側に酸化チタン層Tと酸化アルミ層Aからなる二重構造のセラミックス層9が、プラズマ溶射により形成されている。
【0077】
この実施の形態においては、熱源よりの熱エネルギーを受ける受熱面側のセラミックス層Tとして高温で放射スペクトルのピークを持つものを選定している。具体的には、安価で溶射処理が容易な酸化チタン(TiO2 )を主成分として使用している。また、放熱面側(耐熱ガラス8側)のセラミックス層Aは前記セラミックス層Tより低温で放射スペクトルのピークを持つものを使用しており、これには前記と同様な理由から、酸化アルミ(Al2 O3 )を主成分として使用している。主成分の意味は、例えば酸化チタンの微粉末に、酸化アルミの微粉末を混合して放射スペクトルの波長を調整するもので、これによって遠赤外線の波長を食材の焼き調理に適した温度に調整することができる。
【0078】
なお、この放射スペクトナルのピークの異なるセラミックス層を使用した場合の熱変換の作用効果については、特願2001─352007(平成13年11月16日出願)に詳述している。
(熱エネルギーの移送実験)
本発明者は下記の実験を行なってセラミックス層を積層することによる熱エネルギーを伝達する量が増加する作用と、食材等の被加熱体の内部まで打ち込む効果を発見した。
【0079】
本発明者等の実験によると、放熱板等の熱源の表面にセラミックス層を設けた場合の特徴は、放射線の波長と熱エネルギー(射出量:W/m2 )との関係を示す、「黒体を基準としたセラミックス、特にアルミナと酸化チタンの放射スペクトル」のグラフより、酸化チタン層と酸化アルミの放射スペクトルのピークの波長は、酸化アルミ、即ち、アルミナが10.0μm、酸化チタンが8.0μmであることが確認されている。
【0080】
このような性質を持つ二種類のセラミックス層は、耐熱ガラスなどの耐熱性セラミックや磁器などの表面へのプラズマ溶射加工が容易で、比較的安価にでき、更に、熱変換の作用効果が顕著である点において優れている。また、必要に応じて三層あるいはそれ以上の層に積層されてものを使用することは可能であるが、セラミックスの種類と温度による波長との関係、他のセラミックス層との熱的な関係を知るために、多数の実験を必要とする。
【0081】
(実験と発明の効果の説明)
図1、2及び図4に示した加熱部の構造を有する長さ約1mの本体を持ち、第1加熱部2と第2加熱部3の熱源である電熱ヒーターSとして1.5kwのものをそれぞれ使用した本発明にかかる焼き調理装置(酸化チタンと酸化アルミからなる二重にセラミック層を耐熱ガラスの凹面側に二重のセラミック層を形成した熱変換体を設けた装置、以下装置1という)と、同装置において熱変換体Hを外した装置(従来の調理装置、以下装置2という)を素人が操作した場合と、更に、備長炭を熱源として使用する炭火焼き(古来備長炭、以下装置3という)を10年以上も経験した焼き調理人によって3種類の焼き鳥の焼き調理実験を行った結果、次のような結果を得た。
・食材として、1串が50〜57gの大型の鶏肉の肉片を焼いた。
・実験1の焼台コンベアの有効長さは幅900mmである。
・熱源として電熱ヒーターを使用しているが、その容量は900wのものである。
【0082】
1.実験1(推定生産量)
装置1:480本/時 装置2:360 装置3:150本
装置1は、食材を反転する操作が不要であり、その操作を4回以上も行う必要がある装置3と比較すると3.2倍もの生産量がある。また、熱変換体のない装置2は、この熱変換体の加熱作用のない分、焼け速度が遅くなってい
る。
2.実験2(発煙量)
装置1:なし 装置2:大量あり 装置3:大量あり
装置1は、第2加熱部に食材からでた油脂や肉汁がかかるないため、発煙は全くない。これに対して、装置2と装置3とは油脂などを燃やすようになっているので、発煙を防ぐことは本質的に困難である。
3.実験3(発火性)
装置1:殆どなし 装置2:大いに有 装置3:大いに有
4.実験4(食材の中心温度)
装置1:2分40秒 装置2:3分 装置3:7分
大腸菌が死滅する温度が60℃であると言われている。そこで、それ以上の75℃に到達する時間で熱量の伝達速度の大小を検討した。
装置1においては中心温度の上昇速度が極めて早く、しかも、調理中 の最終の温度は、驚くべきことに、表面温度より高くなっているので、加熱効率が極めて良いことがわかる。
5.実験5(冷めるまでの速度)
装置1:遅い 装置2:早い 装置3:早い
焼き調理したものを30分間、室温に放置して中心部の温度変化を測定した。
6.実験6(冷めた時の味)
装置1:良好 装置2:不良 装置3:不良
焼き調理したものを1時間、室温に放置して食した。
7.実験7(焼いた後の大きさ)
装置1:殆ど変化なし 装置2:縮小大 装置3:縮小大
装置1のものは、表面が熱破壊されないので、焼き調理中に肉汁が大量に染みださず、調理したものはジユーシーさがあり、美味しく、また、大きさも殆ど変化していない。従って、同じ大きさの食材を使用した場合、装置2と3で得られたものに比較して、大型のものを提供できる。
8.実験8(調理の手間)
装置1:回転不要 装置2:回転不要 装置3:回転多い
装置1は、上下よりまんべんなく加熱するので、調理中に食材を回転する必要は全くない。これに対して、特に、装置3はしばしば支持台の上で回転が必要である上に、燃焼ガスをウチワで 吹き飛ばす操作を絶えず必要としており、素人には到底操作できない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるデルタ型に配置された加熱装置の主要部の断面図である。
【図2】図1に示す装置の斜視図である。
【図3】図1に示す装置の変形を示す横断面図である。
【図4】図1に示す加熱装置を使用した調理装置の横断面図である。
【図5】図4の装置の変形を示す横断面図である。
【図6】(A)は、耐熱ガラスを使用した熱変換体の断面図、(B)は、その拡大断面図である。
【図7】図4と同様な焼き調理装置の横断面図である。
【図8】加熱部を円月型に配置した焼き調理装置の主要部の断面図である。
【図9】
焼き調理装置の具体的な構造を示す正断面図である。
【図10】図9に示す装置の横断面図である。
【符号の説明】
1 移動支持部材 2 第1加熱部 3,3a 第2加熱部
4 食材 S 熱源、電熱ヒーター、ガスバーナー
6 本体 6a,6b 壁面 7 排気ダクト
8 耐熱ガラス 9 セラミック層 T 酸化チタン
A 酸化アルミ
11 液溜め部 12 覗き窓
20 焼き調理装置 21 ガス燃焼器 22 第2加熱部
23 コンベア 24 第1加熱部 25 電熱ヒーター
26 フード 27 本体 28、29 壁板 30 底板
【発明の属する分野】
本発明は串に刺した肉や魚や野菜等の食材を焼き調理する装置、特に連続的に焼き鳥などを焼き調理する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、焼き鳥あるいは鰻のカバヤキなどを焼き調理する場合は、燃焼炉に備長炭などの炭を燃焼させ、その燃焼炉の上部に金属製の支持棒を渡し、この支持棒上に串刺した鳥肉やネギ、鰻を開いて串刺しにした食材を炉の縁に載せて炙っている。
【0003】
そして、この炭火を使用した焼き調理の場合は、炭の燃焼状態を所定に維持する必要があるが、この火加減の調節作業には、かなりの熟練を必要としており、従って、調理人はこの火加減を見ながら食材を炉の縁に供給し、ある程度、この食材が焼けるとこれを反転して裏側を炙り、タレを付けたり塩や調味料を振りかけたりする作業を繰り返す必要がある。
【0004】
炭火の燃焼温度はかなり高温であり、その高温の燃焼ガスと放射熱からなる熱エネルギーを食材に直接与えると焼け焦げが局部的に発生する。この焼け焦げが発生すると肉質が固くなるために、柔らかな焼け具合のものを得ることは困難である。
【0005】
そこで調理人はしばしば炭火の燃焼状態を調節しながら、高温の燃焼ガスが食材に直接に当たることがないように、団扇をパタパタと操作して逃がしながら、新しい食材を炉の縁に供給したり、半焼けのものを反転したり、七味唐がらしや塩などを振りかけたり、更に焼き調理が終わったものを取り出すなど、かなり複雑な一連の動作を流れるように行う必要がある。
【0006】
このように炭火で鳥肉等の食材を加熱する際の重要な点は、いわゆる「強火の遠火」であり、これを実現できるか否かによって食材の焼け具合と味にに大きな差を生ずるのであり、そこに熟練した職人の腕があるのである。
【0007】
従って、このような炭火を使用した焼き調理の職人芸に熟達するには、かなりの年月と訓練を必要とする欠点がある。そこで、この問題を解消するために電熱加熱やガス加熱が使用されるようになってきた。
【0008】
電熱ヒーターの場合は、電圧の調整により温度調節が容易にできる点が優れているものの、炭火のような焼き調理に適した波長の遠赤外線(温度)が得られなく、熱量も比較的少ないので、焼き上がりが悪く、あたかも煮物に似た食感で、不味い焼き物が得られないという問題がある。
【0009】
一方、ガス加熱は、食材に対して大量の熱量を与えて加熱できる点が電熱加熱に比較して優れている。しかし、高温の燃焼ガスを肉等の食材に直接接触させて高温に加熱することになるので、食材の表面の細胞が熱破壊されて美味しさの素である肉汁が大量に放出されることになる。
【0010】
この食材からの肉汁の大量の放出により、肉質が固くなると共に、その外形が細くなり、材料によっては元の大きさの半分以下の大きさになり、料理の見栄えが貧弱なものになる。
【0011】
しかも、本来の炭火を使用したものに比較して歯触りが悪く、パサついた、不味いものとなる。特に、細胞が熱破壊された焼き鳥は、肉が細く貧弱なものになる上に、冷えると一段と味が悪くなる。
【0012】
また、備長炭を使用した焼き調理は、鶏肉などの肉類を炙る場合に、大量の肉汁や油を染みださせ、これが炭火の上に落下し、燃焼して大量の煙を発生するので室内の空気を汚染する。更に煙とともに脂肪分が細かい粒子となって空気中に浮遊するので、着衣を汚染したり、焼き肉屋独特の臭いを付着させるので、その煙を排気するために大量の排気が必要で、それに大きな動力を必要とする欠点があった。この現象は、ガスによる焼き調理の場合も同様である。
【0013】
本発明は、前記従来の焼き調理の問題点を解決するために得られたものであって、その目的を列挙すると、次の通りである。
【0014】
1.生産量を従来の装置に比較して2倍あるいは3倍以上に増加できる焼き調理装置を提供する。
2.発煙が殆んどなく、店内で調理しても室内の空気を汚染しない焼き調理装置を提供する。
3.発煙と共に発火性が実質的になく、安全な焼き調理装置を提供する。
4.焼き調理中の食材の中心温度が75℃、つまり大腸菌死滅温度に到達する時間が、従来の装置に比較して著しく短い焼き調理装置を提供する。
5.調理後、時間が経過して冷たくなった料理でも、美味しさを維持できる焼き調理装置を提供する。
6.焼き調理しても、食材の原型と大差のない大きさの料理を焼くことができる装置を提供する。
7.調理中に、食材を実質的に反転操作をすることがく、素人でも操作できる、操作性に優れた焼き調理装置を提供する。更に、炭火焼きのようにウチワで扇ぐ必要が全くない焼き調理装置を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明は、次の通りである。
【0016】
1)水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、前記支持部材上に支持された食材を、上下両面より全体加熱して焼き調理することを特徴としている。
【0017】
2)水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、前記第1加熱部は電熱ヒーターと、その下部に配置されて前記電熱ヒーターからの熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で、また、前記第2加熱部はガスバーナーと熱変換体でそれぞれ構成され、前記食材を、第1加熱部と第2加熱部からの放射熱により、上下面から加熱して焼き調理することを特徴としている。
【0018】
3)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を受けて遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、更に前記熱変換体は耐熱ガラス製であることを特徴としている。
【0019】
4)前記第1加熱体と第2加熱体は、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体と第2加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側にセラミック層が溶着形成されていることを特徴としている。
【0020】
5)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、前記第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側に熱特性の異なる複数のセラミック層が溶射積層されており、このセラミックス層の放射スペクトルのピークの波長を比較すると、熱源に近い集熱面側が短波長で、前記耐熱ガラス面側が前記集熱面側より長波長であることを特徴としている。
【0021】
6)前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱を受けて加熱される熱変換体で形成され、この熱変換体は耐熱ガラスの局面体で、その集熱面側に複数層のセラミック層が溶射積層されており、
集熱面側のセラミックス層の主成分は酸化チタンであり、この酸化チタン層の熱を耐熱ガラス面側のセラミック層の主成分は酸化アルミであることを特徴としている。
【0022】
7)前記支持部材は網状あるいは簾状の連続体からなるコンベアであることを特徴としている。
【0023】
8)前記支持部材の下方に配置された二つの第2加熱体は、上部より下部に縮小するように傾斜した壁面を持つ本体の、前記壁面に固定され、この第2加熱体より下方に液溜部が形成されていることを特徴としている。
【0024】
9)水平状に配置された金網状のコンベアを中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれて配置され、前記第1加熱体と第2加熱体とで加熱単位体を形成しており、前記コンベアの進行方向に、前記加熱単位体を複数組配置したことを特徴としている。
【0025】
本発明の第1の特徴は、食材を中心として下方の2箇所と上方の1箇所の3箇所のデルタ形、三角形に加熱部を配置した構造、あるいは円周を3つに分割して下方に2箇所、上方の1箇所の円月形に加熱部を配置した構造を加熱部の基本構造とするものである。
【0026】
この基本構造により、食材を表裏の全周から加熱できる上に、食材より発生した油脂や汁などが落ちる場所に加熱部を配置しないことから、発煙も発火も防止するようにしている。このような加熱方法によって焼鳥を調理することは従来の炭火焼きや電熱加熱ではできないことである。
【0027】
本発明の第2の特徴は、電熱ヒーターやガスバーナーなどの熱源から発生した熱エネルギーをそのまま食材に与えるのではなく、熱エネルギーを焼き調理に適した波長の遠赤外線に変換してから与えることに特徴がある。
【0028】
例えば、炭火焼きの場合は、熟練した職人が焼いたものと、素人が焼いたものとでは味や見かけに大差があり、また、焼き調理した直後の焼鳥と、これが冷えたものとでは、味に大きな違いがあり、冷えたものは小型で硬くなっており、不味いものになっている。これは、再び加熱しても到底元の形や味に戻ることはない。
【0029】
これに対して、本発明による焼鳥は、ふっくらとしてボリュームがあり、ジューシイで、全くぱさつきがない。見栄えがよく、冷えても美味しく、そして再び加熱すると元の味に復元するという特徴がある。そして、本発明にかかる装置を使用することによって、調理中に食材を反転する操作を省くことができるので、調理の経験の長短に関係なく、同じ味のものを、従来の方法に比較して2〜3倍も大量に得ることができるのである。
【0030】
本発明において「熱変換」は重要な要素であるが、これの意味は、食材の表面だけ高温に加熱するのではなく、肉の表面の温度よりも中心部の温度のほうが高くなるような質の熱エネルギーに変換して、これで食材をまんべんなく加熱することに特徴がある。
【0031】
具体的には、熱源の熱が直接に食材に到達しないように、耐熱ガラスでその熱を遮断し、この耐熱ガラスが加熱されて放射される放射熱エネルギーによって食材を加熱するものである。しかし、単に、熱源と食材との間に耐熱ガラスを配置しただけでは、目的とする熱エネルギーの利用は困難である。
【0032】
特に、本発明においては、耐熱ガラスの熱源に対面する、集熱面側にセラミック層を形成する。しかも、このセラミック層は少なくとも二重構造(複合構造)のものとすることが必要である。
【0033】
熱源に近い集熱層は、高温の放射スペクトルのピークを持つものを選定し、そしてガラス面側、つまり放熱面ないし送熱面側は、前記高温におけるピーク値より低い値を持つセラミック層を選定するのである。
【0034】
この複合構造のセラミック層は、本発明者などの実験によると、約30〜40%の熱効率の改善となっている。
【0035】
具体的に説明すると、厚さ5mm、直径が15cmの円弧状の断面を持つ、耐熱ガラスの凹面側に、酸化アルミを主成分とするセラミックスの微粉末をプラズマ溶射付着して第1層を形成する。更に、その上(集熱面)に酸化チタンを主成分とするセラミックスの微粉末を同様にして付着させて二重のセラミック層とした。
【0036】
このように二重構造のセラミック処理をした耐熱ガラス、つまり、熱変換体と、何も表面処理しない耐熱ガラス(非熱変換体)を使用する。そして、アルミ製の容器に同量の水(約200cc)を入れたものを沸騰させて蒸発時間を測定した。その結果、セラミック処理をした熱変換体を熱源の上部に配置した組合わせのものは、セラミック処理しないものに比較して前記のように約25〜30%、あるいはそれ以上の早い蒸発速度であった。
【0037】
本発明は、前記した「熱変換効果」によって熱源からの熱が変換された遠赤外線を、加熱源として焼き調理することによって、前記のように色々な効果を得ることができるのである。
【0038】
【発明の実施の形態】
(発明の基本構成)
先ず、本発明の基本構成について説明する。
【0039】
本発明の焼き調理装置の基本的な思想は下記の通りである。
【0040】
第1点は、食材に対して表裏より全体的に加熱して、比較的低温において大量の熱エネルギーを付与することにある。このことは、調理品の生産効率の向上に関係している。
【0041】
食材に対して表裏面より加熱するための熱源は、食材を焼く部分の上方に1台と、下方に2台で、断面的に三角形あるいはデルタ形に配置されているのが効率的に焼き調理する基本形であると共に、設計上も有利である(デルタ配置)。この配置の変形としては、熱源を構成している熱変換体の表面形状を凹形とすることで、円周形で、その円周面に三角形、別名、円月形配置とすることができるのである。
【0042】
第2点は、熱エネルギーは、電熱ヒーターあるいはガスバーナーの熱源から与えられた熱エネルギーを直接に食材に与えるのではなく、一旦、焼き調理に適した波長の遠赤外線に変換して食材を加熱することにある。
【0043】
熱エネルギーを高温の燃焼ガスや高温の輻射熱(つまり近赤外線)を遠赤外線に変換することにより、この熱エネルギーを食材に効率的に打ち込む(食材の中心部を効率的に加熱)ことができる。
【0044】
その結果、驚くべきことには、食材を焼き調理した直後に、その表面と内部の温度を測定すると、表面の温度より内部の温度が高い(鶏肉を焼いた場合には約5℃〜8℃)のである。このことは、他の焼き調理方法では絶対に起こり得ないことである。
【0045】
第3点は、食材から肉汁などのジュースをなるべく放出させないようにして焼き調理することにある。
【0046】
熱エネルギーを食材である肉類の内部まで到達させることは、従来のように電熱ヒーターやガスを使用して食材の表面を高温に保持することによって内部を加熱する方法を適用するのではなく、表面を焦がすような高温に長時間保持しないで、肉の内部を速やかに加熱することを意味する。
【0047】
焼き調理する間に肉汁を放出しないということは、元の食材の大きさと、焼き調理した後の焼き肉との大きさに大きな変化がないことを意味しており、調理上で極めて重要である。
【0048】
図1の概念図及び図2の斜視図は、本発明のデルタ形配置の基本構造を示している。
【0049】
この焼き調理装置Mは、網状あるいは簾状のコンベアなどの移動支持部材1を中心に、これの上方に第1加熱部2を、また、下方に2台の第2加熱部3,3aを略三角形あるいはデルタ形に配置している。
【0050】
コンベア1の上には竹串に刺した鶏肉や野菜などの食材4を載せて移動しながら、三角形ないしデルタ形で遠赤外線が照射されている「加熱空間」を通過させて表裏ないし周面より全体的に熱を与えて焼き調理するのである。
【0051】
第1加熱部2と第2加熱部3,3aは、この実施の形態においては断面を楕円形とし、その半分に形成した耐熱ガラス製の熱変換体Hと熱源Sで構成されている。
【0052】
また、熱源としては、2本の電熱ヒーターS(焼き調理する有効長さが、約0.9m〜1,0m程度ある場合は、1.5kwの電熱ヒーターを使用)を前記熱変換体Hの焦点に配置している。この熱変換体Hは、凸形に形成した耐熱ガラス製の曲面板の凸面を食材4に向け、更にこの材4の長さに相当する距離kだけ離間し、図4に示した調理装置の本体6の傾斜した前後の壁面6a,6bに固定している。
【0053】
そして、好ましくは第2加熱部3,3aを図1に矢印A,Bに示すように、また、第1加熱部2は矢印Cに示すように、食材4に対して(あるいは支持部材1に対して)その固定位置を調節できるように構成しておくことによって最適な加熱条件を得ることができる。
【0054】
前記第1加熱部2と第2加熱部3,3aの電熱ヒーターSに通電してこの電熱ヒーターSを灼熱(550℃〜650℃)に発熱させると、各電熱ヒーターSより放射熱R1,R2,R3を放射して支持部材1上の食材4を表裏ないし周囲全面から加熱する。
【0055】
図3は図1の装置の変形を示すもので、第2加熱部3の熱交換体Hが半円筒状であること、電熱ヒーターSが各1本であることを除けば、図1の装置と同様である。
【0056】
図5は図4の装置においては、第1加熱部2の耐熱ガラスからなる熱変換体Hに平板状のものを使用したものを示している。この装置においては第2加熱部3、3aのものも平板状に形成しても良い。
【0057】
なお、熱源として電熱ヒーターを使用した例を説明したが、第1加熱部、第2加熱部共に、これに限定されるものではなく、ガスバーナーを使用することも可能であり、特に第2加熱部3には対流ガスの熱量が多いことから、これを一旦、熱変換することによって食材を高温に晒す仕上げ焼きが出来る。
【0058】
このガスバーナーを使用する際の注意点は、熱変換体Hで燃焼ガスを受け止めて、この熱変換体Hをまず加熱することである。この熱変換体Hが加熱される状態では、対流熱(燃焼ガスの熱)が減少し、熱変換体Hより発生する遠赤外線が熱変換作用により、著しく増加する。
【0059】
このように本発明は、電熱ヒーターやガスバーナーからなる熱源Sから発生した熱をそのまま食材4に与えることをせず、一旦、この熱を熱変換体Hで受けてこれを加熱し、その熱を遠赤外線に変換して放射することに特徴があるのである。
【0060】
熱変換体Hを構成する素材としては、耐熱ガラス(商品名:パイロセラム)や同様な熱的な特性を持つ磁器類、セラミックなど、灼熱の高温に耐え、そして希望する遠赤外線を放射する耐熱材料が適している。
【0061】
しかしながら、この耐熱ガラスのみでは、必要とする波長の遠赤外線が得られない場合が多い。そこで本発明においては図6(A)に示すように断面が曲面の耐熱ガラス8の凹面にセラミック層9をプラズマ溶着している。このセラミック層9は図6(B)に示すように受熱面側を酸化チタン(TiO2 )を主体とする層Tで形成し、放熱面側(耐熱ガラス8の表面に溶着されている側)を酸化アルミ(Al2 O3 )を主体とする層Aで2層に形成している。
【0062】
熱源Sより発生した熱エネルギーhは受熱面の酸化チタンからなる層Tで吸収され、熱変換されながら放熱面側の層Aへ伝達され、そして耐熱ガラス8(これもセラミックの一種)で更に熱変換されて遠赤外線Rとして食材4に放射されてこれを温める。結局、耐熱ガラス8に2層のセラミック層を形成した場合は、3層のセラミック層を形成していることになる。
【0063】
セラミック層の熱変換効果について本発明者等が実験したところによると、耐熱ガラスの表面(集熱面)にセラミックス層を設けた場合の特徴は、放射線の波長と熱エネルギー(射出量:W/m2 )との関係を示す、「黒体を基準としたセラミックス、特にアルミナと酸化チタンの放射スペクトル」のグラフより、酸化チタン層と酸化アルミの放射スペクトルのピークの波長は、酸化アルミ、即ち、酸化アルミが10.0μmであり、また、酸化チタンが8.0μmであることが確認されている。
【0064】
このような放射スペクトルのピークの波長の異なる二種類のセラミックス層は、放熱板等の表面へのプラズマ溶射加工が容易で、比較的安価にでき、更に、熱変換の作用効果が顕著である点において優れている。また、必要に応じて三層あるいはそれ以上の層に積層されてものを使用することは可能であるが、
セラミックスの種類と温度による波長との関係、他のセラミックス層との熱的な関係を知るために、多数の実験を必要とするので、既に熱的性質の分かっている酸化チタンと酸化アルミをベースとして、他のセラミックス微粉末を混合して使用すると良い。
【0065】
本発明における熱変換の意味は、前記のようにガスを燃焼させて発生した燃焼ガスを一旦、熱変換体に与えて一定量の水を蒸発させた場合の蒸発時間と、燃焼ガスで同様に一定量の水を蒸発させた場合の蒸発時間を比較して、蒸発速度が早くなった時に「熱変換効果あり」と、判断するのである。
【0066】
この実験によると、耐熱ガラスのみの場合(G)は、単に燃焼ガスで加熱した場合(g)よりも蒸発速度が遅い。そして、受熱面側に酸化チタンからなるセラミック層を設けた場合は(G)と(g)とは、ほぼ同じ程度である。
【0067】
しかし、耐熱ガラス面側に酸化アルミ層を形成し、その上に酸化チタン層を二重に形成したものは、(g)の場合よりも約25%から30%もの蒸発時間が短縮されており、明確に「熱変換効果」を確認することができる。
【0068】
図4は、本体6の内部に加熱部をデルタ形に配置した焼き調理装置の断面図を示すもので、上部構造は、矢印Uの部分より上方に回動して後退する構造になっており、必要に応じて上部構造を移動させて、支持部材1の上方を開いて内部を清掃したり、調整したりできるようにしている(図10参照)。
【0069】
そして、必要に応じて上部構造に排気ダクト7を、下部構造に液溜め部11を設けて、これの中に水を溜めておいて食材から発生した液体を本体6の外部に簡単に排出できるようにする。また、上部構造に覗き窓12を設けて食材 4の焼け具合を観察できるようにしておくのが良い。
【0070】
図7は、第2加熱部3の熱変換体Hの断面を半円形にしたもので、本質的な構造は図4の場合と同様である。
【0071】
図8は、円月形の調理装置の断面図を示すもので、熱変換体Hを凹形に形成して、3台のものを一つの円周状に配置したものである。この構造の装置の場合、熱源Sよりの熱により熱変換体Hを加熱して発生した放射熱R1,R2,R3を食材4に集中できるので、熱効率の良い装置とすることができる。なお、この装置においてもなるべく食材4から発生した液体が第2加熱部3,3aの熱変換体Hにかからないように設計することは言うまでもない。
【0072】
(実 施 例)
次に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0073】
図9は焼き調理装置の正面図、図10は同側面図である。
この焼き調理装置20は、三層構造で、下部構造の熱源Sとしてガス燃焼器21と熱変換体Hを有する第2加熱部22、その上方の食材支持部材としてコンベア23、更にその上方の第1加熱部24として電熱ヒーター25が配置されており、図10に示すように、この電熱ヒーター25と熱変換体Hからなる第1加熱部24は、一端が仰伏自在にヒンジ25aで支持されて、この第1加熱部24の所を掃除したり調整したりできるようになっている。そしてこの第1加熱部24の上方を覆ってフード26が設けられている。
【0074】
本体27は,ステンレス製で上部が開放され、前後に傾斜した壁板28,29と、中央に油や汚水等の液体やカスを集める傾斜面からなる底板30で漏斗形で横長に形成され、前後の壁面28,29に第2加熱部22を構成するガス燃焼器21が互いに上方を向いて設けられている。また、底板30の中央部の最も下がった場所に油や汚水等の液体とカス等を収容する引出し31が設けられている。
【0075】
ガス燃焼器21は、図1などに図示されている第2加熱部3、3aに示した構造の電熱ヒーターSをガスバーナーに変更した構造のような装置が設けられている。
【0076】
また、ガスバーナー21を覆うように配置されている熱変換体Hはこの実施例においては半円筒状の耐熱ガラス( 石英ガラス、パイレックス(登録商標))で構成されており、図6に示すように耐熱ガラス8の凹面(燃焼ガスを受ける面)側に酸化チタン層Tと酸化アルミ層Aからなる二重構造のセラミックス層9が、プラズマ溶射により形成されている。
【0077】
この実施の形態においては、熱源よりの熱エネルギーを受ける受熱面側のセラミックス層Tとして高温で放射スペクトルのピークを持つものを選定している。具体的には、安価で溶射処理が容易な酸化チタン(TiO2 )を主成分として使用している。また、放熱面側(耐熱ガラス8側)のセラミックス層Aは前記セラミックス層Tより低温で放射スペクトルのピークを持つものを使用しており、これには前記と同様な理由から、酸化アルミ(Al2 O3 )を主成分として使用している。主成分の意味は、例えば酸化チタンの微粉末に、酸化アルミの微粉末を混合して放射スペクトルの波長を調整するもので、これによって遠赤外線の波長を食材の焼き調理に適した温度に調整することができる。
【0078】
なお、この放射スペクトナルのピークの異なるセラミックス層を使用した場合の熱変換の作用効果については、特願2001─352007(平成13年11月16日出願)に詳述している。
(熱エネルギーの移送実験)
本発明者は下記の実験を行なってセラミックス層を積層することによる熱エネルギーを伝達する量が増加する作用と、食材等の被加熱体の内部まで打ち込む効果を発見した。
【0079】
本発明者等の実験によると、放熱板等の熱源の表面にセラミックス層を設けた場合の特徴は、放射線の波長と熱エネルギー(射出量:W/m2 )との関係を示す、「黒体を基準としたセラミックス、特にアルミナと酸化チタンの放射スペクトル」のグラフより、酸化チタン層と酸化アルミの放射スペクトルのピークの波長は、酸化アルミ、即ち、アルミナが10.0μm、酸化チタンが8.0μmであることが確認されている。
【0080】
このような性質を持つ二種類のセラミックス層は、耐熱ガラスなどの耐熱性セラミックや磁器などの表面へのプラズマ溶射加工が容易で、比較的安価にでき、更に、熱変換の作用効果が顕著である点において優れている。また、必要に応じて三層あるいはそれ以上の層に積層されてものを使用することは可能であるが、セラミックスの種類と温度による波長との関係、他のセラミックス層との熱的な関係を知るために、多数の実験を必要とする。
【0081】
(実験と発明の効果の説明)
図1、2及び図4に示した加熱部の構造を有する長さ約1mの本体を持ち、第1加熱部2と第2加熱部3の熱源である電熱ヒーターSとして1.5kwのものをそれぞれ使用した本発明にかかる焼き調理装置(酸化チタンと酸化アルミからなる二重にセラミック層を耐熱ガラスの凹面側に二重のセラミック層を形成した熱変換体を設けた装置、以下装置1という)と、同装置において熱変換体Hを外した装置(従来の調理装置、以下装置2という)を素人が操作した場合と、更に、備長炭を熱源として使用する炭火焼き(古来備長炭、以下装置3という)を10年以上も経験した焼き調理人によって3種類の焼き鳥の焼き調理実験を行った結果、次のような結果を得た。
・食材として、1串が50〜57gの大型の鶏肉の肉片を焼いた。
・実験1の焼台コンベアの有効長さは幅900mmである。
・熱源として電熱ヒーターを使用しているが、その容量は900wのものである。
【0082】
1.実験1(推定生産量)
装置1:480本/時 装置2:360 装置3:150本
装置1は、食材を反転する操作が不要であり、その操作を4回以上も行う必要がある装置3と比較すると3.2倍もの生産量がある。また、熱変換体のない装置2は、この熱変換体の加熱作用のない分、焼け速度が遅くなってい
る。
2.実験2(発煙量)
装置1:なし 装置2:大量あり 装置3:大量あり
装置1は、第2加熱部に食材からでた油脂や肉汁がかかるないため、発煙は全くない。これに対して、装置2と装置3とは油脂などを燃やすようになっているので、発煙を防ぐことは本質的に困難である。
3.実験3(発火性)
装置1:殆どなし 装置2:大いに有 装置3:大いに有
4.実験4(食材の中心温度)
装置1:2分40秒 装置2:3分 装置3:7分
大腸菌が死滅する温度が60℃であると言われている。そこで、それ以上の75℃に到達する時間で熱量の伝達速度の大小を検討した。
装置1においては中心温度の上昇速度が極めて早く、しかも、調理中 の最終の温度は、驚くべきことに、表面温度より高くなっているので、加熱効率が極めて良いことがわかる。
5.実験5(冷めるまでの速度)
装置1:遅い 装置2:早い 装置3:早い
焼き調理したものを30分間、室温に放置して中心部の温度変化を測定した。
6.実験6(冷めた時の味)
装置1:良好 装置2:不良 装置3:不良
焼き調理したものを1時間、室温に放置して食した。
7.実験7(焼いた後の大きさ)
装置1:殆ど変化なし 装置2:縮小大 装置3:縮小大
装置1のものは、表面が熱破壊されないので、焼き調理中に肉汁が大量に染みださず、調理したものはジユーシーさがあり、美味しく、また、大きさも殆ど変化していない。従って、同じ大きさの食材を使用した場合、装置2と3で得られたものに比較して、大型のものを提供できる。
8.実験8(調理の手間)
装置1:回転不要 装置2:回転不要 装置3:回転多い
装置1は、上下よりまんべんなく加熱するので、調理中に食材を回転する必要は全くない。これに対して、特に、装置3はしばしば支持台の上で回転が必要である上に、燃焼ガスをウチワで 吹き飛ばす操作を絶えず必要としており、素人には到底操作できない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるデルタ型に配置された加熱装置の主要部の断面図である。
【図2】図1に示す装置の斜視図である。
【図3】図1に示す装置の変形を示す横断面図である。
【図4】図1に示す加熱装置を使用した調理装置の横断面図である。
【図5】図4の装置の変形を示す横断面図である。
【図6】(A)は、耐熱ガラスを使用した熱変換体の断面図、(B)は、その拡大断面図である。
【図7】図4と同様な焼き調理装置の横断面図である。
【図8】加熱部を円月型に配置した焼き調理装置の主要部の断面図である。
【図9】
焼き調理装置の具体的な構造を示す正断面図である。
【図10】図9に示す装置の横断面図である。
【符号の説明】
1 移動支持部材 2 第1加熱部 3,3a 第2加熱部
4 食材 S 熱源、電熱ヒーター、ガスバーナー
6 本体 6a,6b 壁面 7 排気ダクト
8 耐熱ガラス 9 セラミック層 T 酸化チタン
A 酸化アルミ
11 液溜め部 12 覗き窓
20 焼き調理装置 21 ガス燃焼器 22 第2加熱部
23 コンベア 24 第1加熱部 25 電熱ヒーター
26 フード 27 本体 28、29 壁板 30 底板
Claims (9)
- 水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、前記支持部材上に支持された食材を、上下両面より全体加熱して焼き調理することを特徴とする焼き調理装置。
- 水平状に配置された熱エネルギー透過性の支持部材を中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれ、加熱部は断面的に三角状に配置されており、
前記第1加熱部は電熱ヒーターと、その下部に配置されて前記電熱ヒーターからの熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で、また、前記第2加熱部はガスバーナーと熱変換体でそれぞれ構成され、前記食材を、第1加熱部と第2加熱部からの放射熱により、上下面から加熱して焼き調理することを特徴とする請求項1記載の焼き調理装置。 - 前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を受けて遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、更に前記熱変換体は耐熱ガラス製であることを特徴とする請求項1記載の焼き調理装置。
- 前記第1加熱体と第2加熱体は、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、第1加熱体と第2加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側にセラミック層が溶着形成されていることを特徴とする請求項1記載の焼き調理装置。
- 前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱源の熱を集熱して遠赤外線に熱変換する熱変換体で形成され、前記第1加熱体の熱源は電熱ヒーターであり、第2加熱体の熱源は電熱ヒーターあるいはガスバーナーであり、前記熱変換体は耐熱ガラス製で、その集熱面側に熱特性の異なる複数のセラミック層が溶射積層されており、
このセラミックス層の放射スペクトルのピークの波長を比較すると、熱源に近い集熱面側が短波長で、前記耐熱ガラス面側が前記集熱面側より長波長であることを特徴とする請求項4記載の焼き調理装置。 - 前記第1加熱体と第2加熱体とは、熱源と、この熱を受けて加熱される熱変換体で形成され、この熱変換体は耐熱ガラスの局面体で、その集熱面側に複数層のセラミック層が溶射積層されており、
集熱面側のセラミックス層の主成分は酸化チタンであり、この酸化チタン層の熱を耐熱ガラス面側のセラミック層の主成分は酸化アルミであることを特徴とする請求項1記載の焼き調理装置。 - 前記支持部材は網状あるいは簾状の連続体からなるコンベアであることを特徴とする請求項1記載の焼き調理装置。
- 前記支持部材の下方に配置された二つの第2加熱体は、上部より下部に縮小するように傾斜した壁面を持つ本体の、前記壁面に固定され、この第2加熱体より下方に液溜部が形成されていることを特徴とする焼き調
理装置。 - 水平状に配置された金網状のコンベアを中心として、上方に第1加熱部を、下方に第2加熱部をそれぞれ配置し、この第2加熱部は前記支持部材上に支持された食材から染みだす肉汁などの液体が落下する範囲を避けて二つに分かれて配置され、前記第1加熱体と第2加熱体とで加熱単位体を形成しており、前記コンベアの進行方向に、前記加熱単位体を複数組配置したことを特徴とする焼き調理装置。
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JP2010531172A (ja) * | 2007-06-27 | 2010-09-24 | イノビック ホールディング アンパルツセルスカブ | 電磁放射に基づく熱伝達システムと熱伝達システム用の箔 |
US7885344B2 (en) | 2006-03-22 | 2011-02-08 | Sony Corporation | Wireless communication apparatus |
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- 2002-12-12 JP JP2002361403A patent/JP2004188035A/ja active Pending
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