JP2004254966A - 遠赤外線式無煙ロースター - Google Patents

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Koichi Takada
紘一 高田
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Abstract

【課題】畜肉、魚介、野菜などのさまざまな食材をきわめて短時間に焼き上げることができ、従来技術では得られなかった柔らかでジューシーな食感と風味を実現することができる。
【解決手段】セラミックス単体または金属にセラミックスが積層被覆されてなる遠赤外線ヒーター1を有し、遠赤外線ヒーターからの遠赤外線を食材に照射して所望の加熱調理を行う遠赤外線式ロースターにおいて、上記遠赤外線ヒーターを平板もしくは彎曲状のパネル形状として食材の上方に設置し、該遠赤外線ヒータの背面および/もしくは側面に下方の食材に遠赤外線が有効に照射されるように設計された導光反射板4を設けると共に食材の下方にも遠赤外線ヒーターと対面させ、遠赤外線ヒーターから放射される遠赤外線を上方に反射して再び食材および遠赤外線ヒーター方向に向かわせ、食材への遠赤外線照射効率を向上させると共に煙の発生をなくすための反射機構3を設けてなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食材に遠赤外線ヒーターから放射される遠赤外線を照射して所望の加熱調理を行う遠赤外線式無煙ロースターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食材に熱を加えて所望の加熱調理を行う方法には用いる熱源として天日、温熱水、蒸気、加熱油、焚き火、炭火、ガス燃焼、油燃焼、電熱、電磁誘導熱、遠赤外線、マイクロ波など、さまざまなものがあり、それぞれの特徴に応じた利用がなされている。これらのうち、遠赤外線は高温に加熱されたセラミックス、もしくは金属基材に遠赤外線を放射しやすい材料を積層被覆したものなどが使用され、その形状も平板、彎曲板、管棒など、さまざまな形状が用いられている。遠赤外線は水や油脂分、有機成分を多く含む食材に効率よく吸収され、食材を過熱することなく有効に所望の温度まで加熱できるので、例えば焚き火の周囲での串焼きや炭火焼き、陶板焼きなど、古くから利用されているものもある。
【0003】
近年になって高温に耐え、遠赤外線放射率が高くかつ任意の形状に成形できるセラミックスが相次いで開発され、遠赤外線による食品加熱は民生用途から業務用、産業用に大きく変化を遂げている。
【0004】
これらの遠赤外線放射材料を所望の温度に加熱するための熱源としては、空気、温熱水、蒸気、ガスや石油の燃焼熱、電熱などが用いられている。
【0005】
食材を短時間で風味豊かに焼き上げ、かつ環境にやさしく省エネルギーを実現できる技術は永遠のテーマとして日進月歩の努力が続けられているが、未だ理想の姿からは程遠いのが現状である。焼き上げ調理の熱源として最も普及しているガス燃焼法は一次燃焼ガスの温度が1000℃近い高温のため、食材を100℃前後に加熱するための熱源として用いるには大過剰の空気で希釈する必要があり、その容積が食材のそれを遙かにしのぐために食材との直接接触による熱交換効率が極端に低く、理論所要熱量の5〜10倍の熱が損失となって大気中に放出されている。また、高温空気は直接接触した食材の表面だけを加熱し、かつその熱量が小さいために食材内部への熱伝達速度が遅く、結果として表面は焦げているのに内部は低温で焼け不足という問題が常につきまとうため、望ましい焼き上げ状態を得るにはかなりの熟練と時間が必要とされている。
【0006】
ガス燃焼や電熱を熱源とする熱板(グリドル)調理は熱板と食材との直接接触による熱伝導を利用しており、熱板の熱容量が大きいために熱移動量は大きいが、接触伝導のみによる熱移動であるためにステーキやハンバーグなどの平面的な食材に限られ、かつ頻繁な手返し操作など、焼き状態のコントロールには高い熟練度が要求される。
【0007】
炭火焼きは歴史の長い焼き調理技術であり、炭火独特の風味や遠赤外線焼きに近いマイルドな熱源であるため、おいしい焼き物の代表格とされている。しかし、炭火の火力が常に変化するため、その変化に応じて焼き時間や手返しの間隔を調整せねばならず、高品位の焼き上げをするには高度の熟練技術が必要とされている。また、炭火は一酸化炭素中毒の危険性が伴うこともあり、野外はともかく屋内や大型店舗での利用には大きな困難が伴う。
【0008】
遠赤外線や近赤外線、赤熱光などによる焼き調理は、食材とは離れた位置にある熱源からの熱輻射を空間を介して食材に照射し、食材に吸収された輻射エネルギーを熱に変換させることで食材温度を上昇させる方法である。しかしながら、従来から赤外線の放射熱源として用いられてきたものには管棒状のヒーターを赤熱状態で使用するものが多く、照射距離が増すと放射エネルギーが急激に低下したり、食材への吸収効率が低い近赤外線や可視光成分を多く含むために加熱効率が低く、焼き上げには多くの時間とエネルギー消費を要するものが多かった。このように従来法では食材全体、特に中心部の加熱に長時間を要するために食材の水分損失や収縮固化が進み過ぎて風味を損ない、理想的な焼き上げ状態を実現することが困難であったり、多大のエネルギー消費を必要としたり、食材と多量の高温空気とを有効に接触させるために加熱スペースが大型化するなどの問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の焼き上げ調理における上記の諸問題を根本的に解決する手段としてまず畜肉、魚介類、野菜などの食材に対して短時間に大量の熱を与え得る遠赤外線に注目し、近赤外線や可視光、空気対流などの阻害要因を極力排除するために遠赤外線の放射体であるセラミックスの最適化と高性能化をはかり、かつ該セラミックスから放射される遠赤外線エネルギーが食材以外へ向かう損失分を最小にするための方法について鋭意研究を進めた結果、エネルギー効率がきわめて高く、食材を短時間に内部まで均一に加熱でき、適度の焦げ目と柔らかさに加えて内部の液分と食材本来の風味が十分に保持された理想的な焼き上げ状態が得られる装置構造を実現するに至ったものである。また、本発明では原則として食材下方に熱源を配置しないために食材から高温熱源への液分の落下による発煙がいっさいないので環境上の課題も解決している。さらに食材を焼き上げるための最適温度に保持された遠赤外線ヒーター下方の至近距離を食材が連続的に通過するために焼き室の容積が非常に小さく、小型で大きな焼き上げ能力を実現している。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらの課題を解決することを目的としたもので、本発明のうち、請求項1記載の発明は、セラミックス単体または金属にセラミックスが積層被覆されてなる遠赤外線ヒーターを有し、遠赤外線ヒーターからの遠赤外線を食材に照射して所望の加熱調理を行う遠赤外線式ロースターにおいて、上記遠赤外線ヒーターを平板もしくは彎曲状のパネル形状として食材の上方に設置し、該遠赤外線ヒータの背面および/もしくは側面に下方の食材に遠赤外線が有効に照射されるように設計された導光反射板を設けると共に食材の下方にも該遠赤外線ヒーターと対面させ、該遠赤外線ヒーターから放射される遠赤外線を上方に反射して再び食材および遠赤外線ヒーター方向に向かわせ、食材への遠赤外線照射効率を向上させると共に煙の発生をなくすための反射機構を設けたことを特徴とする遠赤外線式無煙ロースターにある。
【0011】
又、請求項2記載の発明は、上記食材下方の反射機構は、加熱調理中に食材から落下する水滴および/もしくは油滴(ドリップ)の排出孔もしくは排出溝を有し、かつ背面から空冷または水冷される冷却機構を有することを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記遠赤外線ヒーターの下方に食材を静止、反転もしくは回転させながら該遠赤外線ヒーターの下を予め設定された通過時間で移動させる食材自動送り機構を備えてなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記串材の移動位置の下方で任意形状の食材を載荷保持し、任意時間で焼き上げることができる焼き網台を付設してなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記セラミックスは、熱伝導度が0.02cal/cm・sec・℃以上で、かつ、熱膨張率が4×10−6/℃以下、体積気孔率が20%以上および/または曲げ強度1000kg/cm以上であり、かつ、3μm以上、20μm以下の遠赤外線波長範囲の全域で少なくとも85%以上の放射率を有するものであることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記セラミックスは、Si・SiC系複合セラミックスであって、Si:50〜58重量%、SiC:35〜40重量%を有するものであることを特徴とするものである。
【0012】
すなわち、食材を長時間かけて焼き上げることで液分が抜け去り、かつ食材が収縮硬化することによって風味が損なわれていた従来法の問題を解決するため、食材を短時間に加熱する手段として最も有効な遠赤外線に着目し、実用上可能な最大の遠赤外線エネルギーを得るために放射体であるセラミックスの材質と形状の最適化を図ったものである。
【0013】
しかして、遠赤外線放射エネルギーの強度は絶対温度の4乗に比例して増大することから、遠赤外線放射率が高く、かつ500℃以上の高温で安定性の高いセラミックスとして、熱伝導度が0.02cal/cm・sec・℃以上で、かつ、熱膨張率が4×10−6/℃以下、体積気孔率が20%以上および/または曲げ強度1000kg/cm以上であり、かつ、3μm以上、20μm以下の遠赤外線波長範囲の全域で少なくとも85%以上の放射率を有するものを選択したのである。かかる特性を有するセラミックスの代表例としてSi・SiC系複合セラミックスがあり、その組成と物性値との関係を検討した結果、Siが50〜58重量%、SiCが35〜40重量%の範囲のものが上記物性値を満足することが明らかとなった。このセラミックスの平板状に成形、焼結されたものは遠赤外線放射率が3μmから20μmまで波長範囲で少なくとも85%以上あり、かつ平板の背面に抵抗発熱体を配置してこれを加熱し、500℃以上で使用中に急激な冷却が起こっても何ら損傷を生じないという安定性が得られている。
【0014】
又、食材を従来法よりも短時間に焼き上げるために、前記セラミックス板の背面に抵抗発熱体を配置し、その背面に断熱層を配置して一体化することで、遠赤外線がセラミックス板の前方にのみ放射される面状ヒーターとしたのである。このヒーターを下向きに配置して通電することにより、セラミックス板が600℃以上の高温にまで昇温され、放射面1cm あたり40cal/min以上の強大な遠赤外線放射エネルギーが得られる。さらに該ヒーターの背面および/もしくは周囲側面に遠赤外線反射率の高い金属材料、すなわち光沢面を有するアルミニウム、銅、ステンレス鋼などより成る導光反射板を配置することにより、放射エネルギーの拡散を防止し、ヒーター下方に向かう遠赤外線の放射密度を上げることができる。このヒーターの下方に食材を配置することにより、遠赤外線を食材に有効に入射させることによって食材の表面から中心部まで短時間に加熱することができる。このとき食材を静置すると上面の昇温が下面より先行し、上下面で焼けムラが発生するので、これを避けるために食材を反転もしくは回転させる機構を付設するのである。
【0015】
さらに、本発明では食材の焼き上げ時間を可及的に短縮するため、食材の下方に上部ヒーターと対面して配置される遠赤外線の反射機構を用いている。この反射機構は遠赤外線反射率の高い金属材料すなわち光沢面を有するアルミニウム、銅、ステンレス鋼などを加工して成り、上部ヒーターから下方の食材方向に向けて放射される遠赤外線を表面で反射し、再び食材方向へ向かわせる機能を有するものである。これにより食材の下方からも遠赤外線が入射するので焼き上げ時間をさらに短縮することができる。この反射機構は上部ヒーターと対面しており、食材の液分が落下して表面に水や油が付着すると遠赤外線の反射率が低下し、反射機構自体が遠赤外線を吸収して加熱され、やがて食材の液分が焦げ付いたり、いぶりや煙が発生するおそれがあるため、この反射機構には水や油分の排出溝を設けるとともに空冷式もしくは水冷式の冷却機構を付設して汚れと温度の上昇を防止するようにしている。
【0016】
又、焼き調理におけるいぶりや発煙など環境上の問題は、炭火やガス炎、熱板などの高温に加熱された熱源が食材の下にあり、そこへ食材の液分すなわちドリップが落下していぶったり燃えたりすることによる。そこで、本発明では原則として熱源である遠赤外線ヒーターが食材の上に配置され、食材の下方には熱源や高温となるものがないので、いぶりや煙はいっさい発生せず、炭火による一酸化炭素中毒や煙による空気汚染など、環境上の問題も解決している。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1乃至図3は本発明の実施の形態例を示し、図1は第一形態例、図2は第二形態例、図3は第三形態例、図4は第四形態例である。
【0018】
図1の第一形態例において、平板状の遠赤外線ヒーター1はロースター上部に下方に向けて配置され、コンベア2の下方には遠赤外線の反射機構3が上向きに配置されている。これによりコンベア2上を搬送される食材は上部の遠赤外線ヒーター1および下方の反射機構3から入射する遠赤外線によって両面から加熱され、短時間に焼き上げを完了することができる。また、焼き上げの進行に伴ってコンベア2上の食材から下方の反射機構3上に落下する液状物(ドリップ)は該反射機構3のドリップの排出溝5を通って速やかに排出されるので表面への付着は殆どなく、しかも付設された図示省略の冷却機構により焦げ付きや煙の発生は起こらないので環境を汚染するおそれもない。
【0019】
この遠赤外線ヒーター1を構成するセラミックスにあっては、Si・SiC系複合セラミックスの板状物であって、Siが50〜58wt%、SiCが35〜40wt%の組成範囲を有する。該セラミックスの特性としては、熱伝導度が0.02cal/cm・sec以上でかつ、熱膨張率が4×10−6/℃以下である。
【0020】
また、該セラミックスは体積気孔率が20%以上、曲げ強度が1000kg/cm以上の少なくとも一方の特性を有し、かつ、3〜20μmの波長範囲の全域で少なくとも85%以上の放射率を有している。
【0021】
本発明における遠赤外線ヒーター1のセラミックスが上記の特性を有していることにより、ヒーターの表面温度が600℃以上の高温でも安定的に使用することができ、40cal/cm以上の強大な遠赤外線放射エネルギーが得られるので、さまざまな食材を短時間に焼き上げることができる。
【0022】
図2の第二形態例においては、コンベアを用いず、串に刺した食材を専用の回転支持具6に保持し、食材を回転させながらあらかじめ設定された速度で搬送する食材自動送り機構を備えた自動串焼き装置を示したものである。この面状の遠赤外線ヒーター1は装置上部に下向きに配置され、遠赤外線ヒーター1の上面および外周側面にはヒーター面から放射される遠赤外線の拡散を防止し、下方の食材に向けて効率よく照射が行われるように角度設定された導光反射板4が配置されている。また、遠赤外線ヒーター1の下方に遠赤外線ヒーター1と対面して遠赤外線の反射機構3が付設されている。この反射機構3はアルミニウム合金で構成され、反射面はヒーターから入射する遠赤外線を再び上方の食材に向けて有効に反射するように角度設定され、かつ食材の焼き上げ中に反射面上に落下するドリップの排出溝5が付設されている。串に刺さない食材を焼き上げようとする場合には、焼き網台7に任意の形状の食材を載せ、遠赤外線ヒーター1と下部の反射機構3の間に挿入して焼き上げることができる。さらにヒーターからの遠赤外線によって反射面の温度が上昇するのを防止する必要があれば、図示省略の冷却機構が付設される。
【0023】
図3の第三形態例及び図4の第四形態例は上部の遠赤外線ヒーター1に付設される導光反射板4および遠赤外線ヒーター1の下方に配置される反射機構3の実施の形態例を示し、この場合、遠赤外線ヒーター1は上記のSi・SiC系複合セラミックスの平板状成形物と背面に配置された抵抗発熱体とを一体化させてなり、第三及び第四形態例のいずれにおいても焼き上げ装置(ロースター)の上部に下向きに設置されている。また、遠赤外線ヒーター1から放射される遠赤外線の拡散を防止し、下方の食材に向けての放射密度を向上させるため、ヒーターの背面および周囲側面にはアルミニウムもしくはステンレス鋼板から成る導光反射板4が配置されている。また、遠赤外線ヒーター1の下方には遠赤外線ヒーター1の放射面と対向させて反射機構3が配置されている。この反射機構3の反射面は遠赤外線ヒーター1から入射した遠赤外線が再び上方の食材に向けて効率良く反射されるよう、適切な角度調整がなされ、かつ食材の焼き上げ中に反射面上に落下するドリップの排出溝5が付設されている。さらに、ヒーターからの遠赤外線入射によって反射機構3の反射面の温度が上昇するのを防止する必要があれば、冷却機構を付設する。
【0024】
【実施例】
次に本発明をより具体化した実施例を説明する。
A.遠赤外線ヒーター
[実施例1]
Si:57wt%、SiC:38wt%、その他:5%から成るセラミックスの140mm×300mm×3mmの平板の背面に200V−1000Wの抵抗発熱線とセラミックファイバー製断熱ブロックを配置してステンレス鋼(SUS304)製ケース内に収納して一体化し、面状遠赤外線ヒーターとした。
【0025】
上記セラミックスの熱伝導率は0.025cal・cm/sec、熱膨張率は2×10−6/℃、体積気孔率は30%、曲げ強度は800kg/cm2、3〜20μmの波長範囲における分光放射率は87〜98%であった。
このセラミックスを遠赤外線放射体とするヒーターに200Vの定格電圧をかけたところ、通電15分後に600℃に昇温した。表面温度と放射率から、この状態における放射エネルギー密度は2.9w/cm、40cal/cm・minであることがわかった。
【0026】
このヒーター2枚を下向きに並べて140mm×600mmの放射面を形成し、放射面の周囲側面に下方に向けて垂直方向から20度外側に傾斜する幅30mmのステンレス鋼板製の導光反射板を付設した。さらにヒーター放射面の下方30cmの位置にヒーターとほぼ同一面積(150mm×300mm)の図3に示すアルミニウム製M字形の反射機構3を配置した。
【0027】
この面状ヒーターと下部の反射機構の中間位置にコンベアを設置し、若鶏の手羽先を搬送したところ、通過時間5分で中心温度が80℃を超え、焼き上げが完了した。面は適度の焦げ目がつき、焼き上げ前後の重量変化率が87%と少ないこともあって表面はパリパリ感があって内部は柔らかくジューシーな食感が得られた。
【0028】
[比較例1]
Si:80wt%、SiC:18wt%、その他:2%から成るセラミックスの140mm×300mm×3mmの平板の背面に200V−1000W
の抵抗発熱線とセラミックファイバー製断熱ブロックを配置してステンレス鋼(SUS304)製ケース内に収納して一体化し、面状遠赤外線ヒーターとした。上記セラミックスの熱伝導率は0.01cal・cm/sec、熱膨張率は2×10−6/℃、体積気孔率は15%、曲げ強度は1500kg/cm2、3〜20μmの波長範囲における分光放射率は70〜90%であった。
【0029】
このセラミックスを遠赤外線放射体とするヒーターに200Vの定格電圧をかけたところ、通電15分後に600℃に昇温した。表面温度と放射率から、この状態における放射エネルギー密度は2.2w/cm、30cal/cm・minであることがわかった。
【0030】
このヒーター2枚を下向きに並べて140mm×600mmの放射面を形成し、その下方30cmの位置にヒーターとほぼ同一面積(150mm×300mm)の図3に示すアルミニウム製M字形の反射機構を配置した。
【0031】
この面状ヒーターと下部反射機構の中間位置にコンベアを設置し、若鶏の手羽先を搬送したところ、通過時間6.5分で中心温度が80℃を超え、焼き上げが完了した。表面の焦げ目はやや弱く、焼き上げ前後の重量変化率が83%とやや増大した。表面はパリパリ感があって内部はやや硬く、ジューシー感がやや減少した。
【0032】
[比較例2]
表面にセラミックス被覆加工を施した市販の管棒状近赤外線ヒーター(12mmdia.×600mmL、200V−600W)4本を並べ、背面および側面にステンレス鋼板製の反射材を付設して下向きに配置した。定格電圧200Vをかけたところ、10分後に表面温度が800℃となり、赤熱状態を呈した。ヒーターと下部反射機構との中間にコンベアを設置し、若鶏の手羽先を搬送したところ、通過時間8分で表面の焦げ目が過剰気味となったが、中心温度が72℃とやや焼け不足であった。重量変化率は78%と大きく、収縮硬化が著しく風味は内部がぱさぱさで硬く、許容下限に近い状態であった。
【0033】
B.導光反射板および下部反射機構の効果
[実施例3]
実施例1で用いた面状ヒーター2枚を下向きに並べて140mm×600mmの放射面を形成し、放射面の周囲側面に下方に向けて垂直方向から20度外側に傾斜する幅30mmのステンレス鋼板製の導光反射板を付設した。ヒーター放射面の下方30cmの位置に、ヒーターとほぼ同一面積(150mm×300mm)の図3に示すアルミニウム製M字形の反射機構を配置した。
【0034】
次にコンベア上に竹串に刺した若鶏のもも肉を串の手元がコンベア手前側にはみ出す状態で連続的に載荷して通過させたところ、わずか4分で中心温度が80℃を超え、上面と下面の焼き色も適正であった。焼き上げ前後の重量変化は89%と少なく、食感はジューシーで柔らかく甘みがあり、他の方法では得られない格別の風味が得られた。また、ヒーター周囲側面に付設した導光反射板によって遠赤外線がコンベア上に集中的に照射されたため、串の手元は全く焦げていなかった。
【0035】
[比較例3]
実施例1で用いた面状ヒーター2枚を下向きに並べて140mm×600mmの放射面を形成し、放射面の周囲側面に付設したステンレス鋼板製の導光反射板を取り外した。ヒーター放射面の下方30cmの位置に、ヒーターとほぼ同一面積(150mm×300mm)の図3に示すアルミニウム製M字形の反射機構を配置した。
【0036】
次にコンベア上に竹串に刺した若鶏のもも肉を串の手元がコンベア手前側にはみ出す状態で連続的に載荷して通過させたところ、中心温度が80℃を超えるまでに5分30秒を要し、上面と下面の焼き色がやや不足であった。焼き上げ前後の重量変化は85%となり、食感はジューシーで柔らかく甘みがあり、風味は適正であった。しかし、ヒーター外周側面に導光反射板がなく、ヒーターから放射された遠赤外線がコンベアの外側まで拡散したため、串の手元部分の焦げが著しく、一部には焼け折れているものも認められた。
【0037】
[比較例4]
実施例1で用いた面状ヒーター2枚を下向きに並べて140mm×600mmの放射面を形成し、放射面の周囲側面に下方に向けて垂直方向から20度外側に傾斜する幅30mmのステンレス鋼板製の導光反射板を付設した。ヒーター放射面とコンベアの下方には反射機構を配置せず、食材から落下するドリップを受けるためのステンレス鋼板製の受け皿(トレー)のみを使用した。
【0038】
次にコンベア上に竹串に刺した若鶏のもも肉を串の手元がコンベア手前側にはみ出す状態で連続的に載荷して通過させたところ、中心温度が80℃を超えるまでに7分を要し、上面の焼き色は適正である一方、下面は全く焦げ目がつかず、反転して再度焼き上げる必要があった。焼き上げ前後の重量変化は82%まで増大し、ジューシーで柔らかな食感は得られなかった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、セラミックス単体または金属にセラミックスが積層被覆されてなる遠赤外線ヒーターを有し、遠赤外線ヒーターからの遠赤外線を食材に照射して所望の加熱調理を行う遠赤外線式ロースターにおいて、上記遠赤外線ヒーターを平板もしくは彎曲状のパネル形状として食材の上方に設置し、該遠赤外線ヒータの背面および/もしくは側面に下方の食材に遠赤外線が有効に照射されるように設計された導光反射板を設けると共に食材の下方にも該遠赤外線ヒーターと対面させ、該遠赤外線ヒーターから放射される遠赤外線を上方に反射して再び食材および遠赤外線ヒーター方向に向かわせ、食材への遠赤外線照射効率を向上させると共に煙の発生をなくすための反射機構を設けて構成しているから、食材の焼き上げ調理を行うための加熱手段として特定された遠赤外線ヒーターを用い、ヒーターを構成する放射体セラミックスの特性と形状を既定し、かつヒーターからの放射エネルギーを効果的に食材に入射させるための上部および下部導光反射機構を併設して成る遠赤外線式ロースターにより、畜肉、魚介、野菜などのさまざまな食材をきわめて短時間に焼き上げることができ、従来技術では得られなかった柔らかでジューシーな食感と風味を実現することができる。これによって従来は経験と熟練を要するとされた上質の焼き調理を、自動化された装置によってきわめて簡便に実現でき、しかも食材の下方に高温部分がないために、ドリップの落下によるいぶりや発煙、器具への焦げ付きがなく、しかも従来法に比べてエネルギー消費を半分以下にすることができるので、環境破壊の防止や省エネルギーの推進上もきわめて効果が大きい。
【0040】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記食材下方の反射機構は、加熱調理中に食材から落下する水滴および/もしくは油滴(ドリップ)の排出孔もしくは排出溝を有し、かつ背面から空冷または水冷される冷却機構を有するので、ドリップの焦げ付きや煙の発生を防いで環境汚染を未然に防止することができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記遠赤外線ヒーターの下方に食材を静止、反転もしくは回転させながら該遠赤外線ヒーターの下を予め設定された通過時間で移動させる食材自動送り機構を備えてなるから、食材を自動的に焼き上げることができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記串材の移動位置の下方で任意形状の食材を載荷保持し、任意時間で焼き上げることができる焼き網台を付設してなるから、串に刺さない食材を焼き網台の上で良好に焼き上げることができる。
【0041】
又、請求項5記載の発明にあっては、上記セラミックスは、熱伝導度が0.02cal/cm・sec・℃以上で、かつ、熱膨張率が4×10−6/℃以下、体積気孔率が20%以上および/または曲げ強度1000kg/cm以上であり、かつ、3μm以上、20μm以下の遠赤外線波長範囲の全域で少なくとも85%以上の放射率を有するものであるから、ヒーターの表面温度が600℃以上の高温でも安定的に使用することができ、40cal/cm以上の強大な遠赤外線放射エネルギーが得られるので、さまざまな食材を短時間に焼き上げることができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記セラミックスは、Si・SiC系複合セラミックスであって、Si:50〜58重量%、SiC:35〜40重量%を有するものであるから、上記物性値を満足するセラミックを得ることができる。
【0042】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一形態例の遠赤外線式ロースターの外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の第二形態例の遠赤外線式ロースターの外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の第三形態例の斜視図である。
【図4】本発明の実施の第四形態例の斜視図である。
【符号の説明】
1 遠赤外線ヒーター
2 コンベア
3 反射機構
4 導光反射板
5 排出溝
6 回転支持具
7 焼き網台

Claims (6)

  1. セラミックス単体または金属にセラミックスが積層被覆されてなる遠赤外線ヒーターを有し、遠赤外線ヒーターからの遠赤外線を食材に照射して所望の加熱調理を行う遠赤外線式ロースターにおいて、上記遠赤外線ヒーターを平板もしくは彎曲状のパネル形状として食材の上方に設置し、該遠赤外線ヒータの背面および/もしくは側面に下方の食材に遠赤外線が有効に照射されるように設計された導光反射板を設けると共に食材の下方にも該遠赤外線ヒーターと対面させ、該遠赤外線ヒーターから放射される遠赤外線を上方に反射して再び食材および遠赤外線ヒーター方向に向かわせ、食材への遠赤外線照射効率を向上させると共に煙の発生をなくすための反射機構を設けたことを特徴とする遠赤外線式無煙ロースター。
  2. 上記食材下方の反射機構は、加熱調理中に食材から落下する水滴および/もしくは油滴(ドリップ)の排出孔もしくは排出溝を有し、かつ背面から空冷または水冷される冷却機構を有することを特徴とする請求項1記載の遠赤外線式無煙ロースター。
  3. 上記遠赤外線ヒーターの下方に食材を静止、反転もしくは回転させながら該遠赤外線ヒーターの下を予め設定された通過時間で移動させる食材自動送り機構を備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の遠赤外線式無煙ロースター。
  4. 上記串材の移動位置の下方で任意形状の食材を載荷保持し、任意時間で焼き上げることができる焼き網台を付設してなることを特徴とする請求項3に記載の遠赤外線式無煙ロースター。
  5. 上記セラミックスは、熱伝導度が0.02cal/cm・sec・℃以上で、かつ、熱膨張率が4×10−6/℃以下、体積気孔率が20%以上および/または曲げ強度1000kg/cm以上であり、かつ、3μm以上、20μm以下の遠赤外線波長範囲の全域で少なくとも85%以上の放射率を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠赤外線式無煙ロースター。
  6. 上記セラミックスは、Si・SiC系複合セラミックスであって、Si:50〜58重量%、SiC:35〜40重量%を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠赤外線式無煙ロースター。
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