JP2004186662A - マスク、マスクブランクスおよびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反りが低減されたパターン位置精度の高いマスクおよびその製造方法と、反りが低減されたマスクブランクスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板1の一部に形成された少なくとも1つの基板開口部と、シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜5と、第1のシリコン酸化膜上および基板開口部上に形成された単結晶シリコン層4と、基板開口部上の単結晶シリコン層の一部に形成され、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部27と、シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するシリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層3とを有するマスク、そのマスクの製造に用いるマスクブランクス、およびそれらの製造方法。
【選択図】 図4
【解決手段】シリコン基板1の一部に形成された少なくとも1つの基板開口部と、シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜5と、第1のシリコン酸化膜上および基板開口部上に形成された単結晶シリコン層4と、基板開口部上の単結晶シリコン層の一部に形成され、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部27と、シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するシリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層3とを有するマスク、そのマスクの製造に用いるマスクブランクス、およびそれらの製造方法。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リソグラフィ用のマスクおよびその製造方法と、マスクの製造に用いられるマスクブランクスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
低速電子線近接転写リソグラフィ(LEEPL)、電子線投影転写リソグラフィ(EPL)、およびイオンビーム投影転写リソグラフィ(IPL)にもちいられるステンシルマスクは、SOI基板(silicon−on−insulator waferまたはsemiconductor−on−insulator wafer)から製造されることが多い。
【0003】
図13は電子線転写リソグラフィに用いられるステンシルマスクの一例を示す平面図である。図13に示すように、通常、ステンシルマスクは直径4から8インチ(100mmから200mm)のシリコン基板101を用いて形成される。
シリコン基板101に基板開口部102が形成され、基板開口部102上には厚さ100nmから10μm程度の薄膜(メンブレン)が形成されている。図13中、黒く示す正方形または矩形部分は基板開口部102に対応する。メンブレンにはデバイス回路パターンに相当する開口部が形成されている。
【0004】
図14は、図13の一部(A部分の近傍)を拡大した斜視図である。梁103はストラットとも呼ばれ、図13のシリコン基板101をエッチングした残りの部分である。マスクの厚さTはシリコン基板の厚さTWとメンブレン104の厚さTMの合計となる。メンブレン104には梁103が形成されている側から電子線が照射される。
【0005】
露光されるウェハはメンブレン104の梁103と反対側の面に、メンブレン104とほぼ平行に配置される。メンブレン104に形成された開口部を透過する電子線により、ウェハ上のレジストが露光され、レジストに開口部のパターンが転写される。メンブレン104のうち、梁103の近傍の部分では、入射する電子線が梁103によって遮られる。したがって、パターンに相当する開口部は梁103の近傍を除く部分(図14の点線で囲まれた部分P)に形成される。
【0006】
上記のような構造は、メンブレンとなる層(通常、単結晶シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、窒化シリコン(SiN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの層)をシリコン基板上に成長させた後、裏面からメンブレンに相当する領域(基板開口部を形成する領域)のシリコン基板を深くエッチングすることにより得られる。ステンシルマスクのメンブレンとして用いるためには、平坦度や欠陥数などの観点から、メンブレンとなる層に対して非常に厳しい品質が求められる。
【0007】
一方、本来、SOI基板は、高速で電力消費が少ないデバイスを作製するための技術として開発されたもので、ステンシルマスク製造を意図したものではない。
しかしながら、SOI基板は薄膜SOI層/埋め込み酸化膜(BOX; buried oxide)層/シリコン基板という3層構造をもち、メンブレン領域に対応するSOI層の膜厚均一性や膜質が極めて高度に制御されているため、マスク材料(マスクブランクス)としての利用に適している。
【0008】
さらに、一般に、酸化シリコンとシリコンのドライエッチングにおける選択比は1000以上にもなるため、中間のBOX層がシリコン基板の裏面エッチングの際のエッチング阻止層として機能する。これらのことから、SOI基板は、高度な成膜技術を必要とせずに高品質のステンシルマスクを製造することができる可能性のある材料であることが分かる。
【0009】
通常のSOI基板の製造方法を説明する。SOI基板の製造方法には(1)貼り合わせ法、(2)水素打ち込み剥離法、(3)エピタキシャル法、(4)酸素イオン打ち込み法の4種類がある。(1)が最も基本的な製造方法であるが、SOI層の薄膜化が困難で、かつ膜厚均一性が良くないという問題点があり、一般にはステンシルマスクの製造に用いられない。(2)から(4)の方法は、より高品質なSOI層を得るために開発された製造方法である。以下、(1)から(4)までの製造方法を順次説明する。
【0010】
(1)貼り合わせ法
図15に貼り合わせ法によるSOI基板の製造方法を示す。図15(a)はベース基板(ベースウェハー)111と接合基板(ボンドウェハー)112を示す。
これらはいずれもシリコン基板とする。ベース基板111は最終的にSOI基板を構成するシリコン基板であり、これは(2)および(3)の製造方法でも共通する。
【0011】
まず、図15(a)に示すように、接合基板112を全面酸化して酸化膜113を形成する。次に、図15(b)に示すように、ベース基板111と接合基板112を加熱接合する。具体的には、基板111、112をそれぞれ洗浄した後、室温でこれらの基板を接触させ、例えば1100℃、酸素(O2)ガス存在下で2時間のアニールを行うことにより、基板間が接合する。
【0012】
次に、図15(c)に示すように、接合基板112をベース基板111の反対側から研削する。研削は、酸化膜113上のシリコンの厚さが例えば20μm程度となるまで行う。さらに、図15(d)に示すように、接合基板112のシリコンを研磨することで、SOI層114が形成される。接合基板112の表面に形成されていた酸化膜113がBOX層115となる。
【0013】
この方法では、SOI層の厚さを1μm以下にすることは困難である。加熱接合の過程で、2つの基板もその間にある酸化膜も熱膨張するが、酸化膜は粘性流状態になるため、シリコン/酸化膜界面は無応力状態になる。温度が下がるに従い、シリコン基板も酸化膜も収縮する。しかしながら、シリコンの熱膨張係数(2.6×10−6/K)は酸化シリコン(SiO2)の熱膨張係数(0.5×10−6/K)よりも大きいため、この過程で酸化膜は基板によって圧縮される。これが、BOX層の圧縮応力の起源である(例えば、非特許文献1参照)。
【0014】
(2)水素打ち込み剥離法
この方法も貼り合わせ工程を基本とするが、より薄いSOI層を得るために、接合基板に水素イオンを打ち込み、形成された界面で接合基板を剥離する。この方法は、金属に多量の水素を含浸させると脆くなり破断に至るという現象をシリコンに応用したものである。この方法によれば、水素イオンの打ち込み深さに相当する厚みをもつSOI層が形成され、厚さ100nm以下のSOI層を得ることもできる。
【0015】
図16に水素打ち込み剥離法によるSOI基板の製造方法を示す。まず、図16(a)に示すように、接合基板112を酸化して表面に酸化膜113を形成してから、図16(b)に示すように、接合基板112に水素イオンを所定の打ち込み深さで打ち込む。接合基板112とベース基板111を洗浄後、図16(c)に示すように、室温で接合させる。
【0016】
次に、図16(d)に示すように、400〜600℃に加熱すると、水素の含有量が最も多い部分で接合基板112が破断する。破断した接合基板112aは、図16(b)に示すように、ベース基板111として再利用することも可能である。接合基板112を破断した後、図16(e)に示すように、アニールとタッチポリッシュを行ってSOI層114を形成する。接合基板112の表面に形成されていた酸化膜113がBOX層115となる。
【0017】
この方法では、(1)の貼り合わせ法と同じ機構によりBOX層115に圧縮応力が発生する。この方法はフランスのSOITEC社により発明され、Smart Cut(登録商標)と名付けられている。日本においては、信越半導体社がSOITEC社と長期技術提携を結び、UNIBOND(登録商標)ウェハーとして生産・販売している。
【0018】
(3)エピタキシャル法
この方法では、接合基板に多孔質シリコン、エピタキシャルシリコン(単結晶シリコン)を順次成長させ、その表面を酸化して、ベース基板と貼り合わせる。
ジェット水流により、結合力の弱い多孔質シリコン界面から接合基板を剥離し、表面処理を施すことにより、質の高いSOI層が形成される。
【0019】
図17および図18にエピタキシャル法によるSOI基板の製造方法を示す。まず、図17(a)に示すように、接合基板112であるp型シリコン基板をフッ酸系溶液中で陽極化成(anodizing)して、表面に多孔質シリコン層121を形成する。多孔質シリコン層121は空孔密度の異なる2層の多孔質シリコン層の積層膜とする。次に、図17(b)に示すように、多孔質シリコン層121上に単結晶シリコン層122をエピタキシャル成長させる。
【0020】
次に、図17(c)に示すように、単結晶シリコン層122の表面を熱酸化して、酸化膜123を形成する。また、ベース基板111の表面も熱酸化し、酸化膜124を形成する。次に、図17(d)に示すように、通常の貼り合わせ法の場合と同様に、これらの基板111、112を洗浄してから加熱接合する。
【0021】
次に、図18(e)に示すように、接合した基板111、112の端面にジェット水流を噴射すると、多孔質シリコン層121の内部で接合基板112が分離する。分離した接合基板112は図17(c)に示す工程で、ベース基板111として再利用することも可能である。
【0022】
次に、図18(f)に示すように、多孔質シリコン層121をエッチングにより除去する。これにより、単結晶シリコン層122はSOI層114となり、酸化膜123と酸化膜124からBOX層115が形成され、SOI基板が得られる。多孔質シリコン層121のエッチング選択比はSOI層114の10万倍程度であり、多孔質シリコン層121が選択的に除去される。この方法も、加熱による貼り合わせ工程において、BOX層に圧縮応力が発生する。この方法はCANONにより開発され、ELTRAN(登録商標)ウェハーとして生産・販売されている。
【0023】
(4)酸素イオン打ち込み法
この方法は、(1)から(3)の方法と異なり、貼り合わせを行わない。この方法によれば、図19に示すように、シリコン基板126に酸素イオンを打ち込み、酸素濃度の高い層を形成し、加熱処理により酸化物層(B0X層115)を形成する。このB0X層115上のシリコン部分がSOI層114となる。
【0024】
この方法によれば、貼り合わせ工程はないが、イオン注入後に酸化物を形成するために行われる加熱と、その後の冷却の過程で、やはりBOX層に圧縮応力が生じる。但し、他の3つの方法よりも基板の反りは小さいものと考えられる。このタイプのSOI基板としては、三菱住友シリコン社が生産・販売しているSIMOXウェハーがある。
【0025】
【特許文献1】
特開平10−78650号公報
【特許文献2】
特開平9−45882号公報
【特許文献3】
特開平11−97320号公報
【特許文献4】
特開平6−13593号公報
【特許文献5】
特開平7−74328号公報
【特許文献6】
特開平11−163309号公報
【特許文献7】
特開平9−246556号公報
【特許文献8】
特開平9−64318号公報
【特許文献9】
特開平5−275301号公報
【非特許文献1】
T.Iida et al., J. Appl. Phys. 87, 675 (2000)
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、BOX層は300 MPa以上の大きな圧縮内部応力をもつこともあるため、SOI基板には基板全体が上に(薄膜SOI層側に)凸な形状に反ってしまうという問題点がある。図20に、8インチSOI基板(BOX層の内部応力400 MPa、厚さ500 nm)を平坦面に静置した場合の形状を示す。基板中心部で約40μmもの反りが生じていることが分かる。
【0027】
このSOI基板の反りは、マスクパターンの位置精度および寸法精度を低下させる可能性がある。このSOI基板上にマスクパターンを描画する場合、SOI基板は電子線(EB)描画機上のステージもしくはパレットに固定されて、ある平坦度を有する状態になっている。仮に、この状態で正確なマスクパターンを描画できたとしても、実際に作製されたマスクを用いて露光装置でウェハに露光を行う時には、露光装置でのマスクの保持方法がEB描画機のそれとは異なるため、SOI基板の平坦度もEB描画時とは異なる。
【0028】
具体的には、マスクがEB描画機に保持された状態では、SOI基板には例えば図20に示すように、上に凸となる反りが生じる。一方、露光装置ではEB描画時とマスクの上下を反転させるため、マスクには少なくとも内部応力の影響により下に凸となる反りが生じる。SOI基板の平坦度には重力も影響するため、SOI基板が上に凸となる場合の反り量と、下に凸となる場合の反り量は、必ずしも一致しない。
【0029】
したがって、露光装置でウェハに転写されるマスクパターンの位置は理想的な位置から変位してしまう。また、マスクの反りによりマスクパターンが変形すると、パターンの寸法精度が悪化する。さらに、LEEPLのように、マスクと基板とを50μm程度に近接させる露光方法の場合、このようなマスクの反りは、マスクと基板との接触事故などの原因となる可能性がある。
【0030】
BOX層の内部応力と基板の最大反り量wmaxとの関係は次式(1)で表される(ここでは簡単のため、重力の影響を無視した。)。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、νは基板のポアッソン比、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、aは基板半径、Eは基板のヤング率、hは基板の厚さである。図21は、BOX層の厚さを変化させて、SOI基板の反りを測定し、反り形状を簡単な曲面でフィッティングしたときの基板の高さを表すグラフである。Aはフィッティングの直線(y=0.110x+6.375,R2=0.797)を示す。このグラフに上式(1)をフィッティングすることにより、σ0=390 MPaという値を得た。最大反り量はBOX層の内部応力に比例するが、BOX層の内部応力はSOI基板の製造工程で決定されてしまう物性値である。したがって、これを制御することは容易ではない。
【0033】
SOI基板を材料としてステンシルマスクを作製したときに反りが生じる問題を解決するため、特許文献1記載のマスク(アパチャ)が提案されている。このマスクは厚さ方向の中心面に対して両側が対称な構造となっており、両面側にそれぞれBOX層とSOI層が形成されている。しかしながら、このような構造とした場合、シリコン基板をエッチングしてメンブレンの支持枠や梁を形成する工程で、多層積層膜にエッチングを行うことになり、プロセスが複雑となる。
【0034】
また、SOI基板で反りが生じる問題は、デバイスの製造においても広く認識されている。SOI基板を用いたマスクの製造は想定せずに、デバイス製造用のSOI基板で反りを抑制する方法は、特許文献2から9に開示されている。特許文献2によれば、接合基板とベース基板に異なる厚さの酸化膜を形成し、これらの酸化膜を介して接合基板とベース基板を接合する。
【0035】
その後、接合基板を研磨してSOI層を形成する。この方法によれば、接合基板側の酸化膜とベース基板側の酸化膜を合わせてBOX層が形成され、ベース基板の接合基板と反対側の面に残る酸化膜は、必然的にBOX層より薄くなる。したがって、実際にはプロセスを最適化して応力のバランスをとるのは困難である。
【0036】
特許文献3記載のSOI基板の製造方法は、SOI基板の裏面(SOI層の反対側の面)に酸化膜を形成し、応力のバランスをとる点で特許文献2と共通するが、裏面酸化膜上に保護膜として多結晶シリコン層を形成してから、表面酸化膜(SOI層側の酸化膜)が除去される。多結晶シリコン層も強い圧縮応力をもつため、表裏両面側でのバランスがとれず、現実的ではない。
【0037】
特許文献4には、BOX層とシリコン基板の間にBOX層の圧縮応力を相殺するような引っ張り応力をもつシリコン窒化膜(SiN層)を形成し、SOI層/BOX層/SiN層/Si基板という構造にすることが記載されている。しかしながら、SOI基板をマスク製造に用いる場合には、メンブレン領域のSi基板などにエッチングを行って基板開口部を形成する工程で、シリコン窒化膜のエッチングプロセスが増加する。また、Si基板のエッチングの際のエッチング阻止層がBOX層からSiN層に変更されるため、新たにプロセスを最適化する必要が生じる。
【0038】
特許文献5には、BOX層に溝を形成してSOI基板の反りを低減する方法が記載されている。しかしながら、SOI基板をマスク製造に用いる場合には、BOX層をエッチング阻止層としてSi基板にエッチングを行うため、BOX層に溝を形成すると、溝部分でメンブレンがエッチングされることになる。したがって、特許文献5の方法はマスク製造用のSOI基板に適用できない。
【0039】
特許文献6には、SOI基板に集積回路を形成したときの反りを抑制する方法が開示されている。この方法によれば、集積回路を構成する絶縁膜の応力に起因した反りを低減するため、シリコン基板を除去してBOX層を露出させ、BOX層を裏面酸化膜とする。この方法は、BOX層の圧縮応力に起因する反りを抑制するものではなく、また、シリコン基板を支持枠および梁として利用するマスクには明らかに適用できない。
【0040】
特許文献7記載の方法によれば、BOX層を積層膜の絶縁膜とし、シリコン酸化膜の圧縮応力と逆方向の引っ張り応力をもつ層をシリコン酸化膜に積層させる。
この方法によれば、特許文献4記載の方法と同様に、シリコン基板などをエッチングしてメンブレンを形成する工程で、メンブレン領域のBOX層のエッチングプロセスが増加する。
【0041】
特許文献8には、SOI基板を用いて形成されたデバイスで、基板の反りを低減するための補償膜として、SOI基板の裏面にシリコン酸化膜などを形成することが記載されている。しかしながら、特許文献8はマスクの製造を目的としていないため、効率よくマスクを製造できるプロセスは示されていない。
【0042】
また、特許文献9には、基板に混在する凸状および凹状の反りに対して、熱膨張率の異なる膜を局所的に形成する方法が開示されているが、プロセスが煩雑であり実用的ではない。以上のように、デバイス製造用のSOI基板で反りを低減するための様々な方法が提案されているが、デバイスとマスクの構造の違いから、これらの方法をそのままマスク製造に適用することはできない。
【0043】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、反りが低減されたマスクパターン位置精度の高いマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、反りが低減されたマスクを作製できるマスクブランクスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0044】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクは、シリコン基板と、該シリコン基板の一部に形成された少なくとも1つの基板開口部と、前記シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、前記第1のシリコン酸化膜上および前記基板開口部上に形成された単結晶シリコン層と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に形成され、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部と、前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力、好適にはこの圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有することを特徴とする。
【0045】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するマスクの反りが低減される。マスクの反りによって、単結晶シリコン層に形成されたマスクパターンには位置ずれが生じるが、本発明のマスクによれば、マスクの反りが防止されるため、マスクパターンの位置精度および寸法精度が向上する。
【0046】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0047】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力によるシリコン基板の反りが防止され、反りによるマスクパターンの位置ずれが低減されたマスクを製造することが可能となる。
【0048】
あるいは、上記の目的を達成するため、本発明のマスクの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成し、かつ前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程と、基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、前記第3のシリコン酸化膜と、前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0049】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力によるシリコン基板の反りが防止され、反りによるマスクパターンの位置ずれが低減されたマスクを製造することが可能となる。また、本発明のマスクの製造方法によれば、シリコン基板の反りを防止するための第2のシリコン酸化膜を有するマスクを、少ない工程数で製造できる。
【0050】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクブランクスは、シリコン基板と、該シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、前記第1のシリコン酸化膜上に形成された単結晶シリコン層と、前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有することを特徴とする。
【0051】
また、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、他のシリコン基板である接合基板の一方の面に多孔質層を形成する工程と、前記多孔質層上に前記シリコン基板より薄い前記単結晶シリコン層を形成する工程と、前記第1のシリコン酸化膜と、前記接合基板上に前記多孔質層を介して形成された前記単結晶シリコン層とを接合する工程と、前記多孔質層で前記シリコン基板側と前記接合基板側を分離する工程と、前記シリコン基板側の前記多孔質層を除去する工程とを有することを特徴とする。
【0052】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、他のシリコン基板である接合基板に前記シリコン基板の厚さより薄い所定の深さで水素イオンを打ち込む工程と、前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して前記接合基板を接合する工程と、加熱により前記接合基板を水素濃度が最も高い位置で破断して、前記接合基板からなる前記単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0053】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して、他のシリコン基板である接合基板を接合する工程と、前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くして、前記接合基板からなる単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0054】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板の一方の面に、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面の近傍に所定の深さで酸素イオンを打ち込む工程と、加熱により前記シリコン基板の酸素濃度が最も高い位置に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、前記シリコン基板の前記他方の面側に単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0055】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0056】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するシリコン基板の反りが低減され、マスクパターン位置精度および寸法精度が高いマスクを製造することが可能となる。また、本発明のマスクブランクスおよびその製造方法によれば、マスク製造プロセスの工程数が増加するのを避けることができる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のマスク、マスクブランクスおよびそれらの製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明では、BOX層の圧縮内部応力および重力によるSOI基板の反りを抑制して、平坦度の高いマスクを製造する方法を提案する。
【0058】
本発明によれば、SOI基板の裏面側にBOX層の内部応力と平衡するような応力を及ぼす薄膜(応力調整層)を成膜することにより、既に良く確立しているSOI基板の製造プロセスをほとんど変更せずに、平坦度の高いSOI基板を製造できる。
このSOI基板を用いることにより、パターンの位置精度が高いステンシルマスクを得ることができる。以下、本発明で得られる平坦度の高いSOI基板をSF−SOI基板(super flat SOI基板)とする。
【0059】
本発明のマスクは、例えばLEEPL等のリソグラフィに用いられる。LEEPLでは露光用ビームとして加速電圧が例えば2kVの低速電子線が用いられるが、本発明のマスクにおいて、露光用ビームは低速電子線に限定されない。露光用ビームは加速電圧が数10〜100kV程度の高速電子線や、イオンビームあるいはX線などの電磁波であってもよい。
【0060】
以下の実施形態1から4では、前述した従来のSOI基板の製造工程をマスク製造用に改良したマスクブランクスの製造方法と、それを含むマスクの製造方法を説明する。実施形態5から7では、既存のSOI基板に後から処理を加えることで基板を平坦化するマスクブランクスの製造方法と、それを含むマスクの製造方法を説明する。
【0061】
(実施形態1)
以下の実施形態1から3では、前述した従来のSOI基板の製造方法のうち、基板の貼り合わせを含む方法、すなわち(1)貼り合わせ法、(2)水素打ち込み剥離法、および(3)エピタキシャル法において、接合基板を全面酸化するかわりに、ベース基板を全面酸化する。ベース基板は、最終的に得られるSF−SOI基板を構成するシリコン基板とする。
【0062】
実施形態1では、上記の(1)から(3)のうち、SOI層を薄くした場合にもSOI層の膜厚均一性および膜質均一性を高くするのに特に有利である(3)エピタキシャル法を、マスク製造用に改良した方法を説明する。図1および図2に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。
【0063】
まず、図1(a)に示すように、接合基板(ボンドウェハー)2であるp型シリコン基板をフッ酸系溶液中で陽極化成して、表面に多孔質シリコン層11を形成する。陽極化成では、フッ酸とエタノールを含む溶液中で、接合基板2を陽極として電流を流すことにより、接合基板2の表面に数nm径の微細孔が形成される。多孔質の構造は溶液の濃度、電流密度やシリコンの比抵抗によって制御される。また、電流を流す時間に応じて、多孔質シリコン層11の厚さが決定される。多孔質シリコン層11は空孔密度の異なる2層の多孔質シリコン層の積層膜とする。
【0064】
次に、図1(b)に示すように、多孔質シリコン層11上に単結晶シリコン層12をエピタキシャル成長させる。
次に、図1(c)に示すように、単結晶シリコン層12を酸化して酸化膜13を形成する。但し、酸化膜13を形成しなくても、接合基板2とベース基板(ベースウェハー)1を接合できるため、酸化膜13は必ずしも形成しなくてもよい。
【0065】
一方、通常の熱酸化炉でベース基板1を全面酸化して、酸化膜3を形成する。ベース基板1の接合基板2と接合する面に形成される酸化膜3を、第1のシリコン酸化膜とする。また、ベース基板1の他方の面(SF−SOI基板の裏面となる面)に形成される酸化膜3は、応力調整層としての第2のシリコン酸化膜となる。
【0066】
次に、図1(d)に示すように、通常の貼り合わせ法の場合と同様に、ベース基板1と接合基板2を洗浄してから加熱接合する。具体的には、基板1、2をそれぞれ洗浄した後、室温でこれらの基板を接触させ、例えば1100℃、酸素(O2)ガス存在下で2時間のアニールを行うことにより、基板間が接合する。
【0067】
次に、図2(e)に示すように、接合した基板1、2の端面にジェット水流を噴射すると、多孔質シリコン層11の内部で接合基板2が分離する。分離した接合基板2は、図1(c)に示すように、ベース基板1として再利用することも可能である。
【0068】
次に、図2(f)に示すように、酸化膜3上の多孔質シリコン層11をエッチングにより除去する。これにより、単結晶シリコン層12はSOI層4となり、SOI層4と接する酸化膜3がBOX層5となって、SOI基板が得られる。多孔質シリコン層11のエッチング選択比はSOI層4の10万倍程度であり、多孔質シリコン層11が選択的に除去される。
【0069】
また、接合後に分離させた接合基板2を再利用しないのであれば、上記のようにジェット水流を噴射して接合基板2をベース基板1から分離させるかわりに、研削によって接合基板2を除去してもよい。この場合も、研削後に単結晶シリコン層12(SOI層4)上に残る多孔質シリコン層11はエッチングにより除去する。
【0070】
加熱接合の過程でシリコン/酸化膜界面は無応力状態になり、温度が下がるに従い、シリコン基板と酸化膜は収縮する。シリコンの熱膨張係数(2.6×10−6/K)はSiO2のそれ(0.5×10−6/K)よりも大きいため、この過程で酸化膜は基板によって圧縮される。
【0071】
しかしながら、本実施形態により形成されるSF−SOI基板では、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が残る。これにより、ベース基板の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0072】
また、本実施形態のマスクブランクスの製造方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来のエピタキシャル法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
【0073】
次に、上記の工程で作製されたSF−SOI基板をマスクブランクスとして用い、ステンシルマスクを製造する方法について説明する。ステンシルマスクの製造方法には様々なバリエーションがあり、一例を図3および図4に示すが、この例に限定されない。
【0074】
まず、図3(a)に示すように、SF−SOI基板21の表面側(SOI層4側)に、イオン打ち込みによりホウ素をドーピングし、SOI層4の内部応力を調整する。SF−SOI基板21は、シリコン基板1上にBOX層5を介してSOI層4を有し、裏面に酸化膜3が形成された構造を有する。SF−SOI基板21は、BOX層5と裏面の酸化膜3の内部応力が平衡している平坦度の高い基板である。
【0075】
次に、図3(b)に示すように、SOI層4上に保護膜22を形成する。保護膜22としては、レジスト、樹脂膜や多結晶シリコン膜等を用いることができ、酸化膜3のエッチング工程でエッチングされない膜であれば材質は限定されない。
【0076】
次に、図3(c)に示すように、メンブレンを形成する領域にある酸化膜3を除去する。酸化膜3のエッチングはレジスト(不図示)をマスクとして行う。
次に、図3(d)に示すように、酸化膜33をマスクとして、シリコン基板1を裏面から深くエッチングする。このエッチングはBOX層5に達するまで行う。
【0077】
シリコンと酸化シリコンのエッチング速度は数桁以上異なるため、エッチングをBOX層5で止めることは容易である。エッチングされない部分のシリコン基板1のうち、シリコン基板1の縁(ほぼ円形のシリコン基板1の円周)に近い部分はマスクの支持枠23となり、メンブレンを隔てる部分は梁24となる。
その後、図4(e)に示すように、露出したBOX層5をフッ酸系溶液で除去する。これにより、シリコンからなるメンブレン25が形成される。
【0078】
次に、図4(f)に示すように、保護膜22を除去してから、SOI層4上にレジスト26を塗布する。レジスト26が塗布された基板を電子線描画機に固定し、マスクパターンを描画してからレジスト26を現像することにより、図4(g)に示すように、レジスト26がパターニングされる。
【0079】
次に、図4(h)に示すように、レジスト26をマスクとしてメンブレン25にエッチングを行い、露光用ビーム(LEEPLでは電子線)が透過する開口部27を形成してから、レジスト26を除去する。これにより、ステンシルマスクが完成する。上記の本実施形態のマスクの製造方法によれば、SOI基板の裏面側の酸化膜3を除去せずに残しておくことにより、BOX層5の内部応力とのバランスがとれ、マスクの反りが防止される。
【0080】
したがって、マスクパターンを描画する工程(図4(g)参照)でメンブレン25が平坦となり、マスクの反りによるパターン位置精度の低下が防止される。
また、完成したステンシルマスクを露光に用いる際には、梁24が上側となり、メンブレン25が下側となるように、マスクが露光装置に固定される。この場合にもマスクパターン描画時と同様に、メンブレン25が平坦となることから、露光されるパターン位置精度の低下が防止される。
【0081】
(実施形態2)
図5に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の水素打ち込み剥離法をマスク製造用に改良したものである。まず、図5(a)に示すように、接合基板2に水素イオンを所定の打ち込み深さで打ち込む。
【0082】
イオン注入による基板の損傷を防止するため、イオン注入前に接合基板2の表面に緩衝用の酸化膜6を形成してもよいが、この酸化膜6は従来の水素打ち込み剥離法において、接合基板2の表面に形成される酸化膜よりも明らかに薄い。具体的には、酸化膜6の厚さはBOX層5および応力調整層となる酸化膜3の厚さの数%以下である。一方、通常の熱酸化炉でベース基板1を全面酸化して、酸化膜3を形成する。
【0083】
次に、図5(b)に示すように、接合基板2とベース基板1を洗浄後、室温で接合させる。次に、図5(c)に示すように、400〜600℃に加熱すると、水素の含有量が最も多い部分で接合基板2が破断する。破断した接合基板2は、図5(a)に示すように、ベース基板1として再利用することも可能である。
接合基板2を破断した後、図5(d)に示すように、アニールとタッチポリッシュを行ってSOI層4を形成する。ベース基板1の表面に形成されていた酸化膜3のうち、SOI層4に接する部分がBOX層5となる。
【0084】
本実施形態により形成されるSF−SOI基板においても、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が応力調整層として残る。これにより、ベース基板の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0085】
また、本実施形態の方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来の水素打ち込み剥離法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0086】
(実施形態3)
図6に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の貼り合わせ法をマスク製造用に改良したものである。まず、図6(a)に示すように、ベース基板1を全面酸化して酸化膜3を形成する。通常の熱酸化炉を用いると、基板の表裏両面が均等に酸化される。ベース基板1と接合基板2はシリコン基板とする。
【0087】
次に、図6(b)に示すように、通常の貼り合わせ法と同様に、ベース基板1と接合基板2を加熱接合する。次に、図6(c)に示すように、接合基板2を上側(ベース基板1の反対側)から研削する。研削は、酸化膜3上のシリコンの厚さが例えば20μm程度となるまで行う。さらに、図6(d)に示すように、接合基板2のシリコンを研磨することで、SOI層4が形成される。ベース基板1の表面に形成されていた酸化膜3のうち、SOI層4に接する部分がBOX層5となる。
【0088】
本実施形態により形成されるSF−SOI基板においても、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が応力調整層として残る。これにより、ベース基板1の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0089】
また、本実施形態の方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来の貼り合わせ法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0090】
(実施形態4)
図7に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の酸素イオン打ち込み法をマスク製造用に改良したものである。本実施形態では実施形態1から3と異なり、基板の貼り合わせを行わないため、ベース基板の全面酸化により両面に同じ厚さの酸化膜を形成する方法は適用できない。
【0091】
そこで、まず、図7(a)に示すように、シリコン基板16の裏面のみに応力調整層として酸化膜17を形成する。これにより、シリコン基板16には裏面に凸となる反りが生じる。シリコン基板16の裏面のみに酸化膜17を形成するには、例えば、表面に保護膜として、容易に除去できる多結晶シリコン層等を形成し、熱酸化炉で加熱する。
【0092】
加熱により酸化膜17を形成した後、表面に形成した保護膜を除去する。酸化膜17がエッチングされない条件でドライエッチングまたはウェットエッチングによって除去される層であれば、シリコン基板16の表面の保護膜として用いることができる。
【0093】
次に、図7(b)に示すように、シリコン基板16に酸素イオンを打ち込み、酸素濃度の高い層を形成し、加熱処理により酸化物層(B0X層5)を形成する。
このB0X層5上のシリコン部分がSOI層4となる。
本実施形態により形成されるSF−SOI基板によれば、B0X層5(第1のシリコン酸化膜)と裏面の酸化膜17(応力調整層)によって圧縮内部応力のバランスがとれる。したがって、極めて平坦な基板が得られる。
【0094】
実施形態1から3では、ベース基板の両面の酸化膜が同一の工程で形成されるのに対し、本実施形態ではB0X層5と裏面の酸化膜17が異なる工程で形成される。したがって、通常、これらの内部応力は異なり、これらの層の厚さを等しくしても応力のバランスがとれるとは限らない。そこで、シミュレーションあるいは実験によってB0X層5と酸化膜17の形成条件を最適化する。この際、重力による基板の撓みを考慮して、基板が平坦化されるようにB0X層5と酸化膜17の膜厚や内部応力を制御することが望ましい。
【0095】
本実施形態の方法は、シリコン基板16の裏面に予め酸化膜17を形成することを除けば、従来の酸素イオン打ち込み法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0096】
(実施形態5)
本実施形態では、従来の作製方法で作製されたSOI基板の裏面に、圧縮応力を有する薄膜を応力調整層として形成することにより、B0X層の応力とのバランスをとる。一般に、シリコン基板の熱酸化では、基板の両面が同じ量だけ酸化される。そこで、SOI基板の表面を例えば多結晶シリコン層等の簡単に除去できる保護膜で保護し、その後、基板を熱酸化炉にて酸化する。
【0097】
図8に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。まず、図8(a)に示すように、SOI基板の表面(SOI層4側の面)に多結晶シリコン層等の保護膜31を形成する。SOI基板は貼り合わせ法、水素打ち込み剥離法、エピタキシャル法、酸素イオン打ち込み法のいずれの方法によって作製されたものでもよい。
【0098】
次に、図8(b)に示すように、熱酸化によりSOI基板の裏面に酸化膜32を形成する。その後、図8(c)に示すように、保護膜31を除去する。これにより、SF−SOI基板が形成される。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0099】
SOI基板の裏面の酸化量としては、BOX層の厚みを目安にすることができるが、より平坦度を高めるためにはプロセスの最適化が必要である。この際、重力によるSOI基板の撓みも考慮して裏面の酸化量を制御する。例えば、LEEPL等の露光装置でマスクを保持する場合と同様に、シリコン基板に対してBOX層およびSOI層が下にある状態で、レーザー測長機などを用いて基板の反りを測定し、平坦度が最も高くなるように裏面酸化プロセスを最適化することもできる。
【0100】
レーザー測長機としては例えば、レーザー・オートフォーカス機能を用いた非接触形状測定器(例えばソニー・プレシジション・テクノロジー製のYP20/21等)が挙げられる。基板の反りが酸化炉中で測定可能、またはガラス窓などを通じて外部から測定可能であれば、反りのその場(in−situ)測定による、さらに高度なプロセス制御が可能である。
【0101】
(実施形態6)
本実施形態では、図9に示すように、従来の作製方法で作製されたSOI基板33の裏面のみに、圧縮応力を有する薄膜を応力調整層34として形成する。SOI基板の裏面のみに薄膜が形成される成膜方法を用いるため、レジスト等によりSOI基板33の表面を保護する必要はない。例えば、低圧化学気相成長法(LPCVD)により形成される多結晶シリコン層、PECVD(plasma enhanced CVD)法により形成されるシリコン酸化膜、あるいはスパッタリングにより形成される金等の金属層は圧縮応力をもつ。
【0102】
これらの薄膜を、次式(2)の条件を満たすことを目安に蒸着する。
【0103】
【数2】
σ0t=σctc ・・・(2)
ここで、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、σcは応力調整層の内部応力、tcは応力調整層の厚さである。
【0104】
あるいは、重力による基板の撓みを考慮して、次式(3)の条件を満たすことを目安に応力調整層を蒸着する。
【0105】
【数3】
【0106】
ここで、左辺の第1項は式(1)のwmaxであり、νは基板のポアッソン比、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、aは基板半径、Eは基板のヤング率、hは基板の厚さである。また、wgは重力による基板の反り量であり、σcは応力調整層の内部応力、tcは応力調整層の厚さである。基板の反り量は、実施形態5と同様に、レーザー測長機などを用いて求めることができる。
【0107】
本実施形態によっても、BOX層5と裏面の応力調整層34(例えば酸化膜)の間で応力のバランスがとれる。本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0108】
(実施形態7)
本実施形態では、従来の作製方法で作製されたSOI基板を全面酸化してから、裏面の酸化膜が残るように、表側の酸化膜を除去することにより、裏面のみに応力調整層としての酸化膜を形成する。
【0109】
図10に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。まず、図10(a)に示すように、全面酸化によりSOI基板33の表裏に均等に酸化膜35を形成する。
このとき、BOX層が存在することから、表面の圧縮応力が勝り、実際には基板は上に凸となるように反る。
【0110】
次に、図10(b)に示すように、SOI基板の裏面側の酸化膜35をレジスト36により保護する。レジスト36のかわりに樹脂膜等、剥離液やアッシングで容易に除去できる膜を形成してもよい。その後、図10(c)に示すように、フッ酸系溶液に浸漬して表面の酸化膜35を除去してから、図10(d)に示すように、レジスト36を除去する。
【0111】
これにより、SOI基板の裏面のみに酸化膜35が残る。あるいは、フッ酸系溶液に浸漬するかわりに、ドライエッチングによって表面側の酸化膜35を除去することもできる。本実施形態によっても、BOX層5および裏面の酸化膜の応力と重力との間でバランスがとれて、マスクが平坦化される。
【0112】
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。あるいは、本実施形態のSF−SOI基板の製造方法は、次に示すように、ステンシルマスクの製造工程の一部として実施することも可能である。この場合、従来のマスク製造プロセスに対して工程数を増加させずに、応力調整層を有するマスクを製造することが可能となる。
【0113】
以下に、本実施形態のマスクの製造方法を説明する。実施形態1のマスクの製造方法では、平坦度の高いSF−SOI基板を作製してから、図3および図4に示すようなプロセスでマスクを製造する。それに対し、本実施形態では、平坦度が低く上に凸となるように反った通常のSOI基板から出発して、プロセスの途中でBOX層の圧縮応力と重力の影響を相殺する応力調整層を形成し、結果的に平坦度の高いマスクを完成させる。
【0114】
本実施形態のマスクの製造方法によれば、まず、図11(a)に示すように、通常のSOI基板33の表面側(SOI層4側)に、イオン打ち込みによりホウ素をドーピングし、SOI層4の内部応力を調整する。SOI基板33は、シリコン基板1上にBOX層5を介してSOI層4を有する。
【0115】
次に、図11(b)に示すように、SOI基板33を全面酸化して、両面に均等な厚さの酸化膜35a、35bを形成する。ここで、SOI基板33の表面に形成される酸化膜35aは、シリコン基板1に裏面からエッチングを行って支持枠および梁を形成する工程で、SOI層4の保護膜として機能する。一方、SOI基板33の裏面に形成される酸化膜35bは、シリコン基板1にエッチングを行う工程でエッチングマスクとして機能する。したがって、本実施形態によれば、表面の保護膜と裏面のエッチングマスクを同一の工程で形成できる。
【0116】
次に、図11(c)に示すように、裏面の酸化膜35b上にレジスト36を塗布し、メンブレンを形成する領域のレジスト36を除去する。レジスト36をマスクとして裏面の酸化膜35bにエッチングを行い、シリコン基板1を露出させる。
【0117】
次に、図12(d)に示すように、レジスト36を残したまま、レジスト36をマスクとしてシリコン基板1を裏面から深くエッチングする。このエッチングはBOX層5に達するまで行う。エッチングされない部分のシリコン基板1のうち、シリコン基板1の縁に近い部分は支持枠23となり、メンブレンを隔てる部分は梁24となる。
【0118】
本実施形態では、続く工程でSOI基板の表側の酸化膜35aを除去する工程で、裏側の酸化膜35bをレジスト36によってエッチングから保護する。したがって、シリコン基板1を深くエッチングする過程で消失しないように十分な厚さでレジスト36を形成する。
【0119】
シリコン基板1のエッチング後、図12(e)に示すように、基板をフッ酸系溶液に浸漬することにより、メンブレン部分のBOX層5と表面側の酸化膜35aを除去する。これにより、メンブレン25が形成される。このとき、裏面側の酸化膜35bも除去されると、BOX層5の圧縮応力によって基板にSOI層4側に凸となるような反りが生じるが、レジスト36が残っているため酸化膜35bが保護される。したがって、応力のバランスが崩れず、基板に反りが生じない。また、酸化膜35bの厚さを適切に制御することにより、重力による基板の撓みも解消される。メンブレン部分のBOX層5と表面側の酸化膜35aを除去した後、レジスト36を除去する。
【0120】
以降の工程では実施形態1と同様に、図12(f)に示すように、SOI層4上にマスクパターンでレジスト26を形成する。レジスト26をマスクとしてメンブレン25にエッチングを行ってから、レジスト26を除去することにより、図12(g)に示すように、ステンシルマスクが完成する。
【0121】
上記の本実施形態のマスクの製造方法によれば、SOI基板の裏面側の酸化膜35bを除去せずに残しておくことにより、BOX層5および裏面側の酸化膜35bの内部応力と重力のバランスがとれ、マスクの反りが防止される。
【0122】
本発明のマスク、マスクブランクスおよびそれらの製造方法の実施形態は、上記の説明に限定されない。例えば、上記の本発明の実施形態に示すSF−SOI基板の作製方法を、実施形態1または7に示す以外のマスク製造プロセスと組み合わせてマスクを製造することもできる。
【0123】
例えば、シリコン基板にエッチングを行って梁を形成する前に、マスクパターンの描画やメンブレンのエッチングを行うこともできる。また、本実施形態のマスクブランクスの製造方法によって作製されるSF−SOI基板を、デバイスの製造などマスク製造以外に用いることもできる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0124】
【発明の効果】
本発明のマスクによれば、マスクの反りが低減され、マスクパターンの位置精度および寸法精度が向上する。本発明のマスクの製造方法によれば、反りが低減されたマスクを製造することが可能となる。
本発明のマスクブランクスによれば、マスクパターン描画時などに基板の反りが低減され、マスクパターン位置精度の高いマスクを製造できる。本発明のマスクブランクスの製造方法によれば、反りが抑制されたマスクブランクスを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)〜(d)は本発明の実施形態1に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図2】図2(e)および(f)は本発明の実施形態1に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図1(d)に続く工程を示す。
【図3】図3(a)〜(d)は本発明の実施形態1に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図4】図4(e)〜(h)は本発明の実施形態1に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図3(d)に続く工程を示す。
【図5】図5(a)〜(d)は本発明の実施形態2に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は本発明の実施形態3に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は本発明の実施形態4に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は本発明の実施形態5に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態6に係るマスクブランクスの断面図である。
【図10】図10(a)〜(d)は本発明の実施形態7に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は本発明の実施形態7に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図12】図12(d)〜(g)は本発明の実施形態7に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図11(c)に続く工程を示す。
【図13】図13はステンシルマスクの一例を示す平面図である。
【図14】図14は図13の一部を拡大した斜視図である。
【図15】図15(a)〜(d)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図16】図16(a)〜(e)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図17】図17(a)〜(d)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図18】図18(e)および(f)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図17(d)に続く工程を示す。
【図19】図19は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図20】図20は従来のSOI基板の反り量を示す図である。
【図21】図21は従来のSOI基板におけるBOX層の厚さと基板の最大反り量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ベース基板、2…接合基板、3…酸化膜、4…SOI層、5…BOX層、6…酸化膜、11…多孔質シリコン層、12…単結晶シリコン層、13…酸化膜、16…シリコン基板、17…酸化膜、21…SF−SOI基板、22…保護膜、23…支持枠、24…梁、25…メンブレン、26…レジスト、27…開口部、31…保護膜、32…酸化膜、33…SOI基板、34…応力調整層、35、35a、35b…酸化膜、36…レジスト、101…シリコン基板、102…基板開口部、103…梁、104…メンブレン、111…ベース基板、112、112a…接合基板、113…酸化膜、114…SOI層、115…BOX層、121…多孔質シリコン層、122…単結晶シリコン層、123、124…酸化膜、126…シリコン基板。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リソグラフィ用のマスクおよびその製造方法と、マスクの製造に用いられるマスクブランクスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
低速電子線近接転写リソグラフィ(LEEPL)、電子線投影転写リソグラフィ(EPL)、およびイオンビーム投影転写リソグラフィ(IPL)にもちいられるステンシルマスクは、SOI基板(silicon−on−insulator waferまたはsemiconductor−on−insulator wafer)から製造されることが多い。
【0003】
図13は電子線転写リソグラフィに用いられるステンシルマスクの一例を示す平面図である。図13に示すように、通常、ステンシルマスクは直径4から8インチ(100mmから200mm)のシリコン基板101を用いて形成される。
シリコン基板101に基板開口部102が形成され、基板開口部102上には厚さ100nmから10μm程度の薄膜(メンブレン)が形成されている。図13中、黒く示す正方形または矩形部分は基板開口部102に対応する。メンブレンにはデバイス回路パターンに相当する開口部が形成されている。
【0004】
図14は、図13の一部(A部分の近傍)を拡大した斜視図である。梁103はストラットとも呼ばれ、図13のシリコン基板101をエッチングした残りの部分である。マスクの厚さTはシリコン基板の厚さTWとメンブレン104の厚さTMの合計となる。メンブレン104には梁103が形成されている側から電子線が照射される。
【0005】
露光されるウェハはメンブレン104の梁103と反対側の面に、メンブレン104とほぼ平行に配置される。メンブレン104に形成された開口部を透過する電子線により、ウェハ上のレジストが露光され、レジストに開口部のパターンが転写される。メンブレン104のうち、梁103の近傍の部分では、入射する電子線が梁103によって遮られる。したがって、パターンに相当する開口部は梁103の近傍を除く部分(図14の点線で囲まれた部分P)に形成される。
【0006】
上記のような構造は、メンブレンとなる層(通常、単結晶シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、窒化シリコン(SiN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンドなどの層)をシリコン基板上に成長させた後、裏面からメンブレンに相当する領域(基板開口部を形成する領域)のシリコン基板を深くエッチングすることにより得られる。ステンシルマスクのメンブレンとして用いるためには、平坦度や欠陥数などの観点から、メンブレンとなる層に対して非常に厳しい品質が求められる。
【0007】
一方、本来、SOI基板は、高速で電力消費が少ないデバイスを作製するための技術として開発されたもので、ステンシルマスク製造を意図したものではない。
しかしながら、SOI基板は薄膜SOI層/埋め込み酸化膜(BOX; buried oxide)層/シリコン基板という3層構造をもち、メンブレン領域に対応するSOI層の膜厚均一性や膜質が極めて高度に制御されているため、マスク材料(マスクブランクス)としての利用に適している。
【0008】
さらに、一般に、酸化シリコンとシリコンのドライエッチングにおける選択比は1000以上にもなるため、中間のBOX層がシリコン基板の裏面エッチングの際のエッチング阻止層として機能する。これらのことから、SOI基板は、高度な成膜技術を必要とせずに高品質のステンシルマスクを製造することができる可能性のある材料であることが分かる。
【0009】
通常のSOI基板の製造方法を説明する。SOI基板の製造方法には(1)貼り合わせ法、(2)水素打ち込み剥離法、(3)エピタキシャル法、(4)酸素イオン打ち込み法の4種類がある。(1)が最も基本的な製造方法であるが、SOI層の薄膜化が困難で、かつ膜厚均一性が良くないという問題点があり、一般にはステンシルマスクの製造に用いられない。(2)から(4)の方法は、より高品質なSOI層を得るために開発された製造方法である。以下、(1)から(4)までの製造方法を順次説明する。
【0010】
(1)貼り合わせ法
図15に貼り合わせ法によるSOI基板の製造方法を示す。図15(a)はベース基板(ベースウェハー)111と接合基板(ボンドウェハー)112を示す。
これらはいずれもシリコン基板とする。ベース基板111は最終的にSOI基板を構成するシリコン基板であり、これは(2)および(3)の製造方法でも共通する。
【0011】
まず、図15(a)に示すように、接合基板112を全面酸化して酸化膜113を形成する。次に、図15(b)に示すように、ベース基板111と接合基板112を加熱接合する。具体的には、基板111、112をそれぞれ洗浄した後、室温でこれらの基板を接触させ、例えば1100℃、酸素(O2)ガス存在下で2時間のアニールを行うことにより、基板間が接合する。
【0012】
次に、図15(c)に示すように、接合基板112をベース基板111の反対側から研削する。研削は、酸化膜113上のシリコンの厚さが例えば20μm程度となるまで行う。さらに、図15(d)に示すように、接合基板112のシリコンを研磨することで、SOI層114が形成される。接合基板112の表面に形成されていた酸化膜113がBOX層115となる。
【0013】
この方法では、SOI層の厚さを1μm以下にすることは困難である。加熱接合の過程で、2つの基板もその間にある酸化膜も熱膨張するが、酸化膜は粘性流状態になるため、シリコン/酸化膜界面は無応力状態になる。温度が下がるに従い、シリコン基板も酸化膜も収縮する。しかしながら、シリコンの熱膨張係数(2.6×10−6/K)は酸化シリコン(SiO2)の熱膨張係数(0.5×10−6/K)よりも大きいため、この過程で酸化膜は基板によって圧縮される。これが、BOX層の圧縮応力の起源である(例えば、非特許文献1参照)。
【0014】
(2)水素打ち込み剥離法
この方法も貼り合わせ工程を基本とするが、より薄いSOI層を得るために、接合基板に水素イオンを打ち込み、形成された界面で接合基板を剥離する。この方法は、金属に多量の水素を含浸させると脆くなり破断に至るという現象をシリコンに応用したものである。この方法によれば、水素イオンの打ち込み深さに相当する厚みをもつSOI層が形成され、厚さ100nm以下のSOI層を得ることもできる。
【0015】
図16に水素打ち込み剥離法によるSOI基板の製造方法を示す。まず、図16(a)に示すように、接合基板112を酸化して表面に酸化膜113を形成してから、図16(b)に示すように、接合基板112に水素イオンを所定の打ち込み深さで打ち込む。接合基板112とベース基板111を洗浄後、図16(c)に示すように、室温で接合させる。
【0016】
次に、図16(d)に示すように、400〜600℃に加熱すると、水素の含有量が最も多い部分で接合基板112が破断する。破断した接合基板112aは、図16(b)に示すように、ベース基板111として再利用することも可能である。接合基板112を破断した後、図16(e)に示すように、アニールとタッチポリッシュを行ってSOI層114を形成する。接合基板112の表面に形成されていた酸化膜113がBOX層115となる。
【0017】
この方法では、(1)の貼り合わせ法と同じ機構によりBOX層115に圧縮応力が発生する。この方法はフランスのSOITEC社により発明され、Smart Cut(登録商標)と名付けられている。日本においては、信越半導体社がSOITEC社と長期技術提携を結び、UNIBOND(登録商標)ウェハーとして生産・販売している。
【0018】
(3)エピタキシャル法
この方法では、接合基板に多孔質シリコン、エピタキシャルシリコン(単結晶シリコン)を順次成長させ、その表面を酸化して、ベース基板と貼り合わせる。
ジェット水流により、結合力の弱い多孔質シリコン界面から接合基板を剥離し、表面処理を施すことにより、質の高いSOI層が形成される。
【0019】
図17および図18にエピタキシャル法によるSOI基板の製造方法を示す。まず、図17(a)に示すように、接合基板112であるp型シリコン基板をフッ酸系溶液中で陽極化成(anodizing)して、表面に多孔質シリコン層121を形成する。多孔質シリコン層121は空孔密度の異なる2層の多孔質シリコン層の積層膜とする。次に、図17(b)に示すように、多孔質シリコン層121上に単結晶シリコン層122をエピタキシャル成長させる。
【0020】
次に、図17(c)に示すように、単結晶シリコン層122の表面を熱酸化して、酸化膜123を形成する。また、ベース基板111の表面も熱酸化し、酸化膜124を形成する。次に、図17(d)に示すように、通常の貼り合わせ法の場合と同様に、これらの基板111、112を洗浄してから加熱接合する。
【0021】
次に、図18(e)に示すように、接合した基板111、112の端面にジェット水流を噴射すると、多孔質シリコン層121の内部で接合基板112が分離する。分離した接合基板112は図17(c)に示す工程で、ベース基板111として再利用することも可能である。
【0022】
次に、図18(f)に示すように、多孔質シリコン層121をエッチングにより除去する。これにより、単結晶シリコン層122はSOI層114となり、酸化膜123と酸化膜124からBOX層115が形成され、SOI基板が得られる。多孔質シリコン層121のエッチング選択比はSOI層114の10万倍程度であり、多孔質シリコン層121が選択的に除去される。この方法も、加熱による貼り合わせ工程において、BOX層に圧縮応力が発生する。この方法はCANONにより開発され、ELTRAN(登録商標)ウェハーとして生産・販売されている。
【0023】
(4)酸素イオン打ち込み法
この方法は、(1)から(3)の方法と異なり、貼り合わせを行わない。この方法によれば、図19に示すように、シリコン基板126に酸素イオンを打ち込み、酸素濃度の高い層を形成し、加熱処理により酸化物層(B0X層115)を形成する。このB0X層115上のシリコン部分がSOI層114となる。
【0024】
この方法によれば、貼り合わせ工程はないが、イオン注入後に酸化物を形成するために行われる加熱と、その後の冷却の過程で、やはりBOX層に圧縮応力が生じる。但し、他の3つの方法よりも基板の反りは小さいものと考えられる。このタイプのSOI基板としては、三菱住友シリコン社が生産・販売しているSIMOXウェハーがある。
【0025】
【特許文献1】
特開平10−78650号公報
【特許文献2】
特開平9−45882号公報
【特許文献3】
特開平11−97320号公報
【特許文献4】
特開平6−13593号公報
【特許文献5】
特開平7−74328号公報
【特許文献6】
特開平11−163309号公報
【特許文献7】
特開平9−246556号公報
【特許文献8】
特開平9−64318号公報
【特許文献9】
特開平5−275301号公報
【非特許文献1】
T.Iida et al., J. Appl. Phys. 87, 675 (2000)
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、BOX層は300 MPa以上の大きな圧縮内部応力をもつこともあるため、SOI基板には基板全体が上に(薄膜SOI層側に)凸な形状に反ってしまうという問題点がある。図20に、8インチSOI基板(BOX層の内部応力400 MPa、厚さ500 nm)を平坦面に静置した場合の形状を示す。基板中心部で約40μmもの反りが生じていることが分かる。
【0027】
このSOI基板の反りは、マスクパターンの位置精度および寸法精度を低下させる可能性がある。このSOI基板上にマスクパターンを描画する場合、SOI基板は電子線(EB)描画機上のステージもしくはパレットに固定されて、ある平坦度を有する状態になっている。仮に、この状態で正確なマスクパターンを描画できたとしても、実際に作製されたマスクを用いて露光装置でウェハに露光を行う時には、露光装置でのマスクの保持方法がEB描画機のそれとは異なるため、SOI基板の平坦度もEB描画時とは異なる。
【0028】
具体的には、マスクがEB描画機に保持された状態では、SOI基板には例えば図20に示すように、上に凸となる反りが生じる。一方、露光装置ではEB描画時とマスクの上下を反転させるため、マスクには少なくとも内部応力の影響により下に凸となる反りが生じる。SOI基板の平坦度には重力も影響するため、SOI基板が上に凸となる場合の反り量と、下に凸となる場合の反り量は、必ずしも一致しない。
【0029】
したがって、露光装置でウェハに転写されるマスクパターンの位置は理想的な位置から変位してしまう。また、マスクの反りによりマスクパターンが変形すると、パターンの寸法精度が悪化する。さらに、LEEPLのように、マスクと基板とを50μm程度に近接させる露光方法の場合、このようなマスクの反りは、マスクと基板との接触事故などの原因となる可能性がある。
【0030】
BOX層の内部応力と基板の最大反り量wmaxとの関係は次式(1)で表される(ここでは簡単のため、重力の影響を無視した。)。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、νは基板のポアッソン比、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、aは基板半径、Eは基板のヤング率、hは基板の厚さである。図21は、BOX層の厚さを変化させて、SOI基板の反りを測定し、反り形状を簡単な曲面でフィッティングしたときの基板の高さを表すグラフである。Aはフィッティングの直線(y=0.110x+6.375,R2=0.797)を示す。このグラフに上式(1)をフィッティングすることにより、σ0=390 MPaという値を得た。最大反り量はBOX層の内部応力に比例するが、BOX層の内部応力はSOI基板の製造工程で決定されてしまう物性値である。したがって、これを制御することは容易ではない。
【0033】
SOI基板を材料としてステンシルマスクを作製したときに反りが生じる問題を解決するため、特許文献1記載のマスク(アパチャ)が提案されている。このマスクは厚さ方向の中心面に対して両側が対称な構造となっており、両面側にそれぞれBOX層とSOI層が形成されている。しかしながら、このような構造とした場合、シリコン基板をエッチングしてメンブレンの支持枠や梁を形成する工程で、多層積層膜にエッチングを行うことになり、プロセスが複雑となる。
【0034】
また、SOI基板で反りが生じる問題は、デバイスの製造においても広く認識されている。SOI基板を用いたマスクの製造は想定せずに、デバイス製造用のSOI基板で反りを抑制する方法は、特許文献2から9に開示されている。特許文献2によれば、接合基板とベース基板に異なる厚さの酸化膜を形成し、これらの酸化膜を介して接合基板とベース基板を接合する。
【0035】
その後、接合基板を研磨してSOI層を形成する。この方法によれば、接合基板側の酸化膜とベース基板側の酸化膜を合わせてBOX層が形成され、ベース基板の接合基板と反対側の面に残る酸化膜は、必然的にBOX層より薄くなる。したがって、実際にはプロセスを最適化して応力のバランスをとるのは困難である。
【0036】
特許文献3記載のSOI基板の製造方法は、SOI基板の裏面(SOI層の反対側の面)に酸化膜を形成し、応力のバランスをとる点で特許文献2と共通するが、裏面酸化膜上に保護膜として多結晶シリコン層を形成してから、表面酸化膜(SOI層側の酸化膜)が除去される。多結晶シリコン層も強い圧縮応力をもつため、表裏両面側でのバランスがとれず、現実的ではない。
【0037】
特許文献4には、BOX層とシリコン基板の間にBOX層の圧縮応力を相殺するような引っ張り応力をもつシリコン窒化膜(SiN層)を形成し、SOI層/BOX層/SiN層/Si基板という構造にすることが記載されている。しかしながら、SOI基板をマスク製造に用いる場合には、メンブレン領域のSi基板などにエッチングを行って基板開口部を形成する工程で、シリコン窒化膜のエッチングプロセスが増加する。また、Si基板のエッチングの際のエッチング阻止層がBOX層からSiN層に変更されるため、新たにプロセスを最適化する必要が生じる。
【0038】
特許文献5には、BOX層に溝を形成してSOI基板の反りを低減する方法が記載されている。しかしながら、SOI基板をマスク製造に用いる場合には、BOX層をエッチング阻止層としてSi基板にエッチングを行うため、BOX層に溝を形成すると、溝部分でメンブレンがエッチングされることになる。したがって、特許文献5の方法はマスク製造用のSOI基板に適用できない。
【0039】
特許文献6には、SOI基板に集積回路を形成したときの反りを抑制する方法が開示されている。この方法によれば、集積回路を構成する絶縁膜の応力に起因した反りを低減するため、シリコン基板を除去してBOX層を露出させ、BOX層を裏面酸化膜とする。この方法は、BOX層の圧縮応力に起因する反りを抑制するものではなく、また、シリコン基板を支持枠および梁として利用するマスクには明らかに適用できない。
【0040】
特許文献7記載の方法によれば、BOX層を積層膜の絶縁膜とし、シリコン酸化膜の圧縮応力と逆方向の引っ張り応力をもつ層をシリコン酸化膜に積層させる。
この方法によれば、特許文献4記載の方法と同様に、シリコン基板などをエッチングしてメンブレンを形成する工程で、メンブレン領域のBOX層のエッチングプロセスが増加する。
【0041】
特許文献8には、SOI基板を用いて形成されたデバイスで、基板の反りを低減するための補償膜として、SOI基板の裏面にシリコン酸化膜などを形成することが記載されている。しかしながら、特許文献8はマスクの製造を目的としていないため、効率よくマスクを製造できるプロセスは示されていない。
【0042】
また、特許文献9には、基板に混在する凸状および凹状の反りに対して、熱膨張率の異なる膜を局所的に形成する方法が開示されているが、プロセスが煩雑であり実用的ではない。以上のように、デバイス製造用のSOI基板で反りを低減するための様々な方法が提案されているが、デバイスとマスクの構造の違いから、これらの方法をそのままマスク製造に適用することはできない。
【0043】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、反りが低減されたマスクパターン位置精度の高いマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、反りが低減されたマスクを作製できるマスクブランクスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0044】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクは、シリコン基板と、該シリコン基板の一部に形成された少なくとも1つの基板開口部と、前記シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、前記第1のシリコン酸化膜上および前記基板開口部上に形成された単結晶シリコン層と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に形成され、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部と、前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力、好適にはこの圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有することを特徴とする。
【0045】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するマスクの反りが低減される。マスクの反りによって、単結晶シリコン層に形成されたマスクパターンには位置ずれが生じるが、本発明のマスクによれば、マスクの反りが防止されるため、マスクパターンの位置精度および寸法精度が向上する。
【0046】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0047】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力によるシリコン基板の反りが防止され、反りによるマスクパターンの位置ずれが低減されたマスクを製造することが可能となる。
【0048】
あるいは、上記の目的を達成するため、本発明のマスクの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成し、かつ前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程と、基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、前記第3のシリコン酸化膜と、前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0049】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力によるシリコン基板の反りが防止され、反りによるマスクパターンの位置ずれが低減されたマスクを製造することが可能となる。また、本発明のマスクの製造方法によれば、シリコン基板の反りを防止するための第2のシリコン酸化膜を有するマスクを、少ない工程数で製造できる。
【0050】
上記の目的を達成するため、本発明のマスクブランクスは、シリコン基板と、該シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、前記第1のシリコン酸化膜上に形成された単結晶シリコン層と、前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有することを特徴とする。
【0051】
また、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、他のシリコン基板である接合基板の一方の面に多孔質層を形成する工程と、前記多孔質層上に前記シリコン基板より薄い前記単結晶シリコン層を形成する工程と、前記第1のシリコン酸化膜と、前記接合基板上に前記多孔質層を介して形成された前記単結晶シリコン層とを接合する工程と、前記多孔質層で前記シリコン基板側と前記接合基板側を分離する工程と、前記シリコン基板側の前記多孔質層を除去する工程とを有することを特徴とする。
【0052】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、他のシリコン基板である接合基板に前記シリコン基板の厚さより薄い所定の深さで水素イオンを打ち込む工程と、前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して前記接合基板を接合する工程と、加熱により前記接合基板を水素濃度が最も高い位置で破断して、前記接合基板からなる前記単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0053】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して、他のシリコン基板である接合基板を接合する工程と、前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くして、前記接合基板からなる単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0054】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板の一方の面に、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面の近傍に所定の深さで酸素イオンを打ち込む工程と、加熱により前記シリコン基板の酸素濃度が最も高い位置に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、前記シリコン基板の前記他方の面側に単結晶シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0055】
あるいは、本発明のマスクブランクスの製造方法は、シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0056】
これにより、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因するシリコン基板の反りが低減され、マスクパターン位置精度および寸法精度が高いマスクを製造することが可能となる。また、本発明のマスクブランクスおよびその製造方法によれば、マスク製造プロセスの工程数が増加するのを避けることができる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のマスク、マスクブランクスおよびそれらの製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明では、BOX層の圧縮内部応力および重力によるSOI基板の反りを抑制して、平坦度の高いマスクを製造する方法を提案する。
【0058】
本発明によれば、SOI基板の裏面側にBOX層の内部応力と平衡するような応力を及ぼす薄膜(応力調整層)を成膜することにより、既に良く確立しているSOI基板の製造プロセスをほとんど変更せずに、平坦度の高いSOI基板を製造できる。
このSOI基板を用いることにより、パターンの位置精度が高いステンシルマスクを得ることができる。以下、本発明で得られる平坦度の高いSOI基板をSF−SOI基板(super flat SOI基板)とする。
【0059】
本発明のマスクは、例えばLEEPL等のリソグラフィに用いられる。LEEPLでは露光用ビームとして加速電圧が例えば2kVの低速電子線が用いられるが、本発明のマスクにおいて、露光用ビームは低速電子線に限定されない。露光用ビームは加速電圧が数10〜100kV程度の高速電子線や、イオンビームあるいはX線などの電磁波であってもよい。
【0060】
以下の実施形態1から4では、前述した従来のSOI基板の製造工程をマスク製造用に改良したマスクブランクスの製造方法と、それを含むマスクの製造方法を説明する。実施形態5から7では、既存のSOI基板に後から処理を加えることで基板を平坦化するマスクブランクスの製造方法と、それを含むマスクの製造方法を説明する。
【0061】
(実施形態1)
以下の実施形態1から3では、前述した従来のSOI基板の製造方法のうち、基板の貼り合わせを含む方法、すなわち(1)貼り合わせ法、(2)水素打ち込み剥離法、および(3)エピタキシャル法において、接合基板を全面酸化するかわりに、ベース基板を全面酸化する。ベース基板は、最終的に得られるSF−SOI基板を構成するシリコン基板とする。
【0062】
実施形態1では、上記の(1)から(3)のうち、SOI層を薄くした場合にもSOI層の膜厚均一性および膜質均一性を高くするのに特に有利である(3)エピタキシャル法を、マスク製造用に改良した方法を説明する。図1および図2に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。
【0063】
まず、図1(a)に示すように、接合基板(ボンドウェハー)2であるp型シリコン基板をフッ酸系溶液中で陽極化成して、表面に多孔質シリコン層11を形成する。陽極化成では、フッ酸とエタノールを含む溶液中で、接合基板2を陽極として電流を流すことにより、接合基板2の表面に数nm径の微細孔が形成される。多孔質の構造は溶液の濃度、電流密度やシリコンの比抵抗によって制御される。また、電流を流す時間に応じて、多孔質シリコン層11の厚さが決定される。多孔質シリコン層11は空孔密度の異なる2層の多孔質シリコン層の積層膜とする。
【0064】
次に、図1(b)に示すように、多孔質シリコン層11上に単結晶シリコン層12をエピタキシャル成長させる。
次に、図1(c)に示すように、単結晶シリコン層12を酸化して酸化膜13を形成する。但し、酸化膜13を形成しなくても、接合基板2とベース基板(ベースウェハー)1を接合できるため、酸化膜13は必ずしも形成しなくてもよい。
【0065】
一方、通常の熱酸化炉でベース基板1を全面酸化して、酸化膜3を形成する。ベース基板1の接合基板2と接合する面に形成される酸化膜3を、第1のシリコン酸化膜とする。また、ベース基板1の他方の面(SF−SOI基板の裏面となる面)に形成される酸化膜3は、応力調整層としての第2のシリコン酸化膜となる。
【0066】
次に、図1(d)に示すように、通常の貼り合わせ法の場合と同様に、ベース基板1と接合基板2を洗浄してから加熱接合する。具体的には、基板1、2をそれぞれ洗浄した後、室温でこれらの基板を接触させ、例えば1100℃、酸素(O2)ガス存在下で2時間のアニールを行うことにより、基板間が接合する。
【0067】
次に、図2(e)に示すように、接合した基板1、2の端面にジェット水流を噴射すると、多孔質シリコン層11の内部で接合基板2が分離する。分離した接合基板2は、図1(c)に示すように、ベース基板1として再利用することも可能である。
【0068】
次に、図2(f)に示すように、酸化膜3上の多孔質シリコン層11をエッチングにより除去する。これにより、単結晶シリコン層12はSOI層4となり、SOI層4と接する酸化膜3がBOX層5となって、SOI基板が得られる。多孔質シリコン層11のエッチング選択比はSOI層4の10万倍程度であり、多孔質シリコン層11が選択的に除去される。
【0069】
また、接合後に分離させた接合基板2を再利用しないのであれば、上記のようにジェット水流を噴射して接合基板2をベース基板1から分離させるかわりに、研削によって接合基板2を除去してもよい。この場合も、研削後に単結晶シリコン層12(SOI層4)上に残る多孔質シリコン層11はエッチングにより除去する。
【0070】
加熱接合の過程でシリコン/酸化膜界面は無応力状態になり、温度が下がるに従い、シリコン基板と酸化膜は収縮する。シリコンの熱膨張係数(2.6×10−6/K)はSiO2のそれ(0.5×10−6/K)よりも大きいため、この過程で酸化膜は基板によって圧縮される。
【0071】
しかしながら、本実施形態により形成されるSF−SOI基板では、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が残る。これにより、ベース基板の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0072】
また、本実施形態のマスクブランクスの製造方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来のエピタキシャル法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
【0073】
次に、上記の工程で作製されたSF−SOI基板をマスクブランクスとして用い、ステンシルマスクを製造する方法について説明する。ステンシルマスクの製造方法には様々なバリエーションがあり、一例を図3および図4に示すが、この例に限定されない。
【0074】
まず、図3(a)に示すように、SF−SOI基板21の表面側(SOI層4側)に、イオン打ち込みによりホウ素をドーピングし、SOI層4の内部応力を調整する。SF−SOI基板21は、シリコン基板1上にBOX層5を介してSOI層4を有し、裏面に酸化膜3が形成された構造を有する。SF−SOI基板21は、BOX層5と裏面の酸化膜3の内部応力が平衡している平坦度の高い基板である。
【0075】
次に、図3(b)に示すように、SOI層4上に保護膜22を形成する。保護膜22としては、レジスト、樹脂膜や多結晶シリコン膜等を用いることができ、酸化膜3のエッチング工程でエッチングされない膜であれば材質は限定されない。
【0076】
次に、図3(c)に示すように、メンブレンを形成する領域にある酸化膜3を除去する。酸化膜3のエッチングはレジスト(不図示)をマスクとして行う。
次に、図3(d)に示すように、酸化膜33をマスクとして、シリコン基板1を裏面から深くエッチングする。このエッチングはBOX層5に達するまで行う。
【0077】
シリコンと酸化シリコンのエッチング速度は数桁以上異なるため、エッチングをBOX層5で止めることは容易である。エッチングされない部分のシリコン基板1のうち、シリコン基板1の縁(ほぼ円形のシリコン基板1の円周)に近い部分はマスクの支持枠23となり、メンブレンを隔てる部分は梁24となる。
その後、図4(e)に示すように、露出したBOX層5をフッ酸系溶液で除去する。これにより、シリコンからなるメンブレン25が形成される。
【0078】
次に、図4(f)に示すように、保護膜22を除去してから、SOI層4上にレジスト26を塗布する。レジスト26が塗布された基板を電子線描画機に固定し、マスクパターンを描画してからレジスト26を現像することにより、図4(g)に示すように、レジスト26がパターニングされる。
【0079】
次に、図4(h)に示すように、レジスト26をマスクとしてメンブレン25にエッチングを行い、露光用ビーム(LEEPLでは電子線)が透過する開口部27を形成してから、レジスト26を除去する。これにより、ステンシルマスクが完成する。上記の本実施形態のマスクの製造方法によれば、SOI基板の裏面側の酸化膜3を除去せずに残しておくことにより、BOX層5の内部応力とのバランスがとれ、マスクの反りが防止される。
【0080】
したがって、マスクパターンを描画する工程(図4(g)参照)でメンブレン25が平坦となり、マスクの反りによるパターン位置精度の低下が防止される。
また、完成したステンシルマスクを露光に用いる際には、梁24が上側となり、メンブレン25が下側となるように、マスクが露光装置に固定される。この場合にもマスクパターン描画時と同様に、メンブレン25が平坦となることから、露光されるパターン位置精度の低下が防止される。
【0081】
(実施形態2)
図5に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の水素打ち込み剥離法をマスク製造用に改良したものである。まず、図5(a)に示すように、接合基板2に水素イオンを所定の打ち込み深さで打ち込む。
【0082】
イオン注入による基板の損傷を防止するため、イオン注入前に接合基板2の表面に緩衝用の酸化膜6を形成してもよいが、この酸化膜6は従来の水素打ち込み剥離法において、接合基板2の表面に形成される酸化膜よりも明らかに薄い。具体的には、酸化膜6の厚さはBOX層5および応力調整層となる酸化膜3の厚さの数%以下である。一方、通常の熱酸化炉でベース基板1を全面酸化して、酸化膜3を形成する。
【0083】
次に、図5(b)に示すように、接合基板2とベース基板1を洗浄後、室温で接合させる。次に、図5(c)に示すように、400〜600℃に加熱すると、水素の含有量が最も多い部分で接合基板2が破断する。破断した接合基板2は、図5(a)に示すように、ベース基板1として再利用することも可能である。
接合基板2を破断した後、図5(d)に示すように、アニールとタッチポリッシュを行ってSOI層4を形成する。ベース基板1の表面に形成されていた酸化膜3のうち、SOI層4に接する部分がBOX層5となる。
【0084】
本実施形態により形成されるSF−SOI基板においても、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が応力調整層として残る。これにより、ベース基板の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0085】
また、本実施形態の方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来の水素打ち込み剥離法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0086】
(実施形態3)
図6に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の貼り合わせ法をマスク製造用に改良したものである。まず、図6(a)に示すように、ベース基板1を全面酸化して酸化膜3を形成する。通常の熱酸化炉を用いると、基板の表裏両面が均等に酸化される。ベース基板1と接合基板2はシリコン基板とする。
【0087】
次に、図6(b)に示すように、通常の貼り合わせ法と同様に、ベース基板1と接合基板2を加熱接合する。次に、図6(c)に示すように、接合基板2を上側(ベース基板1の反対側)から研削する。研削は、酸化膜3上のシリコンの厚さが例えば20μm程度となるまで行う。さらに、図6(d)に示すように、接合基板2のシリコンを研磨することで、SOI層4が形成される。ベース基板1の表面に形成されていた酸化膜3のうち、SOI層4に接する部分がBOX層5となる。
【0088】
本実施形態により形成されるSF−SOI基板においても、ベース基板1の裏面(接合基板2の反対側の面)にBOX層5(第1のシリコン酸化膜)と同じ厚さの酸化膜3(第2のシリコン酸化膜)が応力調整層として残る。これにより、ベース基板1の両面で酸化膜の圧縮内部応力のバランスがとれて、極めて平坦な基板が得られる。
【0089】
また、本実施形態の方法は、BOX層5となる酸化膜3を接合基板側でなく、ベース基板側に形成することを除けば、従来の貼り合わせ法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0090】
(実施形態4)
図7に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。このSF−SOI基板の製造方法は、従来の酸素イオン打ち込み法をマスク製造用に改良したものである。本実施形態では実施形態1から3と異なり、基板の貼り合わせを行わないため、ベース基板の全面酸化により両面に同じ厚さの酸化膜を形成する方法は適用できない。
【0091】
そこで、まず、図7(a)に示すように、シリコン基板16の裏面のみに応力調整層として酸化膜17を形成する。これにより、シリコン基板16には裏面に凸となる反りが生じる。シリコン基板16の裏面のみに酸化膜17を形成するには、例えば、表面に保護膜として、容易に除去できる多結晶シリコン層等を形成し、熱酸化炉で加熱する。
【0092】
加熱により酸化膜17を形成した後、表面に形成した保護膜を除去する。酸化膜17がエッチングされない条件でドライエッチングまたはウェットエッチングによって除去される層であれば、シリコン基板16の表面の保護膜として用いることができる。
【0093】
次に、図7(b)に示すように、シリコン基板16に酸素イオンを打ち込み、酸素濃度の高い層を形成し、加熱処理により酸化物層(B0X層5)を形成する。
このB0X層5上のシリコン部分がSOI層4となる。
本実施形態により形成されるSF−SOI基板によれば、B0X層5(第1のシリコン酸化膜)と裏面の酸化膜17(応力調整層)によって圧縮内部応力のバランスがとれる。したがって、極めて平坦な基板が得られる。
【0094】
実施形態1から3では、ベース基板の両面の酸化膜が同一の工程で形成されるのに対し、本実施形態ではB0X層5と裏面の酸化膜17が異なる工程で形成される。したがって、通常、これらの内部応力は異なり、これらの層の厚さを等しくしても応力のバランスがとれるとは限らない。そこで、シミュレーションあるいは実験によってB0X層5と酸化膜17の形成条件を最適化する。この際、重力による基板の撓みを考慮して、基板が平坦化されるようにB0X層5と酸化膜17の膜厚や内部応力を制御することが望ましい。
【0095】
本実施形態の方法は、シリコン基板16の裏面に予め酸化膜17を形成することを除けば、従来の酸素イオン打ち込み法と同様であり、プロセスの大幅な変更が不要であるという利点も有する。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0096】
(実施形態5)
本実施形態では、従来の作製方法で作製されたSOI基板の裏面に、圧縮応力を有する薄膜を応力調整層として形成することにより、B0X層の応力とのバランスをとる。一般に、シリコン基板の熱酸化では、基板の両面が同じ量だけ酸化される。そこで、SOI基板の表面を例えば多結晶シリコン層等の簡単に除去できる保護膜で保護し、その後、基板を熱酸化炉にて酸化する。
【0097】
図8に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。まず、図8(a)に示すように、SOI基板の表面(SOI層4側の面)に多結晶シリコン層等の保護膜31を形成する。SOI基板は貼り合わせ法、水素打ち込み剥離法、エピタキシャル法、酸素イオン打ち込み法のいずれの方法によって作製されたものでもよい。
【0098】
次に、図8(b)に示すように、熱酸化によりSOI基板の裏面に酸化膜32を形成する。その後、図8(c)に示すように、保護膜31を除去する。これにより、SF−SOI基板が形成される。
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0099】
SOI基板の裏面の酸化量としては、BOX層の厚みを目安にすることができるが、より平坦度を高めるためにはプロセスの最適化が必要である。この際、重力によるSOI基板の撓みも考慮して裏面の酸化量を制御する。例えば、LEEPL等の露光装置でマスクを保持する場合と同様に、シリコン基板に対してBOX層およびSOI層が下にある状態で、レーザー測長機などを用いて基板の反りを測定し、平坦度が最も高くなるように裏面酸化プロセスを最適化することもできる。
【0100】
レーザー測長機としては例えば、レーザー・オートフォーカス機能を用いた非接触形状測定器(例えばソニー・プレシジション・テクノロジー製のYP20/21等)が挙げられる。基板の反りが酸化炉中で測定可能、またはガラス窓などを通じて外部から測定可能であれば、反りのその場(in−situ)測定による、さらに高度なプロセス制御が可能である。
【0101】
(実施形態6)
本実施形態では、図9に示すように、従来の作製方法で作製されたSOI基板33の裏面のみに、圧縮応力を有する薄膜を応力調整層34として形成する。SOI基板の裏面のみに薄膜が形成される成膜方法を用いるため、レジスト等によりSOI基板33の表面を保護する必要はない。例えば、低圧化学気相成長法(LPCVD)により形成される多結晶シリコン層、PECVD(plasma enhanced CVD)法により形成されるシリコン酸化膜、あるいはスパッタリングにより形成される金等の金属層は圧縮応力をもつ。
【0102】
これらの薄膜を、次式(2)の条件を満たすことを目安に蒸着する。
【0103】
【数2】
σ0t=σctc ・・・(2)
ここで、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、σcは応力調整層の内部応力、tcは応力調整層の厚さである。
【0104】
あるいは、重力による基板の撓みを考慮して、次式(3)の条件を満たすことを目安に応力調整層を蒸着する。
【0105】
【数3】
【0106】
ここで、左辺の第1項は式(1)のwmaxであり、νは基板のポアッソン比、σ0はBOX層の内部応力、tはBOX層の厚さ、aは基板半径、Eは基板のヤング率、hは基板の厚さである。また、wgは重力による基板の反り量であり、σcは応力調整層の内部応力、tcは応力調整層の厚さである。基板の反り量は、実施形態5と同様に、レーザー測長機などを用いて求めることができる。
【0107】
本実施形態によっても、BOX層5と裏面の応力調整層34(例えば酸化膜)の間で応力のバランスがとれる。本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。
【0108】
(実施形態7)
本実施形態では、従来の作製方法で作製されたSOI基板を全面酸化してから、裏面の酸化膜が残るように、表側の酸化膜を除去することにより、裏面のみに応力調整層としての酸化膜を形成する。
【0109】
図10に本実施形態のSF−SOI基板の製造方法を示す。まず、図10(a)に示すように、全面酸化によりSOI基板33の表裏に均等に酸化膜35を形成する。
このとき、BOX層が存在することから、表面の圧縮応力が勝り、実際には基板は上に凸となるように反る。
【0110】
次に、図10(b)に示すように、SOI基板の裏面側の酸化膜35をレジスト36により保護する。レジスト36のかわりに樹脂膜等、剥離液やアッシングで容易に除去できる膜を形成してもよい。その後、図10(c)に示すように、フッ酸系溶液に浸漬して表面の酸化膜35を除去してから、図10(d)に示すように、レジスト36を除去する。
【0111】
これにより、SOI基板の裏面のみに酸化膜35が残る。あるいは、フッ酸系溶液に浸漬するかわりに、ドライエッチングによって表面側の酸化膜35を除去することもできる。本実施形態によっても、BOX層5および裏面の酸化膜の応力と重力との間でバランスがとれて、マスクが平坦化される。
【0112】
本実施形態で製造されるSF−SOI基板をマスクブランクスとして用いる場合も、実施形態1のマスクの製造方法と同様に、マスクを製造することができる。あるいは、本実施形態のSF−SOI基板の製造方法は、次に示すように、ステンシルマスクの製造工程の一部として実施することも可能である。この場合、従来のマスク製造プロセスに対して工程数を増加させずに、応力調整層を有するマスクを製造することが可能となる。
【0113】
以下に、本実施形態のマスクの製造方法を説明する。実施形態1のマスクの製造方法では、平坦度の高いSF−SOI基板を作製してから、図3および図4に示すようなプロセスでマスクを製造する。それに対し、本実施形態では、平坦度が低く上に凸となるように反った通常のSOI基板から出発して、プロセスの途中でBOX層の圧縮応力と重力の影響を相殺する応力調整層を形成し、結果的に平坦度の高いマスクを完成させる。
【0114】
本実施形態のマスクの製造方法によれば、まず、図11(a)に示すように、通常のSOI基板33の表面側(SOI層4側)に、イオン打ち込みによりホウ素をドーピングし、SOI層4の内部応力を調整する。SOI基板33は、シリコン基板1上にBOX層5を介してSOI層4を有する。
【0115】
次に、図11(b)に示すように、SOI基板33を全面酸化して、両面に均等な厚さの酸化膜35a、35bを形成する。ここで、SOI基板33の表面に形成される酸化膜35aは、シリコン基板1に裏面からエッチングを行って支持枠および梁を形成する工程で、SOI層4の保護膜として機能する。一方、SOI基板33の裏面に形成される酸化膜35bは、シリコン基板1にエッチングを行う工程でエッチングマスクとして機能する。したがって、本実施形態によれば、表面の保護膜と裏面のエッチングマスクを同一の工程で形成できる。
【0116】
次に、図11(c)に示すように、裏面の酸化膜35b上にレジスト36を塗布し、メンブレンを形成する領域のレジスト36を除去する。レジスト36をマスクとして裏面の酸化膜35bにエッチングを行い、シリコン基板1を露出させる。
【0117】
次に、図12(d)に示すように、レジスト36を残したまま、レジスト36をマスクとしてシリコン基板1を裏面から深くエッチングする。このエッチングはBOX層5に達するまで行う。エッチングされない部分のシリコン基板1のうち、シリコン基板1の縁に近い部分は支持枠23となり、メンブレンを隔てる部分は梁24となる。
【0118】
本実施形態では、続く工程でSOI基板の表側の酸化膜35aを除去する工程で、裏側の酸化膜35bをレジスト36によってエッチングから保護する。したがって、シリコン基板1を深くエッチングする過程で消失しないように十分な厚さでレジスト36を形成する。
【0119】
シリコン基板1のエッチング後、図12(e)に示すように、基板をフッ酸系溶液に浸漬することにより、メンブレン部分のBOX層5と表面側の酸化膜35aを除去する。これにより、メンブレン25が形成される。このとき、裏面側の酸化膜35bも除去されると、BOX層5の圧縮応力によって基板にSOI層4側に凸となるような反りが生じるが、レジスト36が残っているため酸化膜35bが保護される。したがって、応力のバランスが崩れず、基板に反りが生じない。また、酸化膜35bの厚さを適切に制御することにより、重力による基板の撓みも解消される。メンブレン部分のBOX層5と表面側の酸化膜35aを除去した後、レジスト36を除去する。
【0120】
以降の工程では実施形態1と同様に、図12(f)に示すように、SOI層4上にマスクパターンでレジスト26を形成する。レジスト26をマスクとしてメンブレン25にエッチングを行ってから、レジスト26を除去することにより、図12(g)に示すように、ステンシルマスクが完成する。
【0121】
上記の本実施形態のマスクの製造方法によれば、SOI基板の裏面側の酸化膜35bを除去せずに残しておくことにより、BOX層5および裏面側の酸化膜35bの内部応力と重力のバランスがとれ、マスクの反りが防止される。
【0122】
本発明のマスク、マスクブランクスおよびそれらの製造方法の実施形態は、上記の説明に限定されない。例えば、上記の本発明の実施形態に示すSF−SOI基板の作製方法を、実施形態1または7に示す以外のマスク製造プロセスと組み合わせてマスクを製造することもできる。
【0123】
例えば、シリコン基板にエッチングを行って梁を形成する前に、マスクパターンの描画やメンブレンのエッチングを行うこともできる。また、本実施形態のマスクブランクスの製造方法によって作製されるSF−SOI基板を、デバイスの製造などマスク製造以外に用いることもできる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0124】
【発明の効果】
本発明のマスクによれば、マスクの反りが低減され、マスクパターンの位置精度および寸法精度が向上する。本発明のマスクの製造方法によれば、反りが低減されたマスクを製造することが可能となる。
本発明のマスクブランクスによれば、マスクパターン描画時などに基板の反りが低減され、マスクパターン位置精度の高いマスクを製造できる。本発明のマスクブランクスの製造方法によれば、反りが抑制されたマスクブランクスを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)〜(d)は本発明の実施形態1に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図2】図2(e)および(f)は本発明の実施形態1に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図1(d)に続く工程を示す。
【図3】図3(a)〜(d)は本発明の実施形態1に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図4】図4(e)〜(h)は本発明の実施形態1に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図3(d)に続く工程を示す。
【図5】図5(a)〜(d)は本発明の実施形態2に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は本発明の実施形態3に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は本発明の実施形態4に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は本発明の実施形態5に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態6に係るマスクブランクスの断面図である。
【図10】図10(a)〜(d)は本発明の実施形態7に係るマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は本発明の実施形態7に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図12】図12(d)〜(g)は本発明の実施形態7に係るマスクの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図11(c)に続く工程を示す。
【図13】図13はステンシルマスクの一例を示す平面図である。
【図14】図14は図13の一部を拡大した斜視図である。
【図15】図15(a)〜(d)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図16】図16(a)〜(e)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図17】図17(a)〜(d)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図18】図18(e)および(f)は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図であり、図17(d)に続く工程を示す。
【図19】図19は従来のマスクブランクスの製造方法の製造工程を示す断面図である。
【図20】図20は従来のSOI基板の反り量を示す図である。
【図21】図21は従来のSOI基板におけるBOX層の厚さと基板の最大反り量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ベース基板、2…接合基板、3…酸化膜、4…SOI層、5…BOX層、6…酸化膜、11…多孔質シリコン層、12…単結晶シリコン層、13…酸化膜、16…シリコン基板、17…酸化膜、21…SF−SOI基板、22…保護膜、23…支持枠、24…梁、25…メンブレン、26…レジスト、27…開口部、31…保護膜、32…酸化膜、33…SOI基板、34…応力調整層、35、35a、35b…酸化膜、36…レジスト、101…シリコン基板、102…基板開口部、103…梁、104…メンブレン、111…ベース基板、112、112a…接合基板、113…酸化膜、114…SOI層、115…BOX層、121…多孔質シリコン層、122…単結晶シリコン層、123、124…酸化膜、126…シリコン基板。
Claims (33)
- シリコン基板と、
該シリコン基板の一部に形成された少なくとも1つの基板開口部と、
前記シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、
前記第1のシリコン酸化膜上および前記基板開口部上に形成された単結晶シリコン層と、
前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に形成され、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部と、
前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有するマスク。 - 前記応力調整層は、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する請求項1記載のマスク。
- 前記応力調整層は第2のシリコン酸化膜を含む請求項1記載のマスク。
- 前記応力調整層は前記第1のシリコン酸化膜と同一の工程で形成され、実質的に同一の厚さを有する第2のシリコン酸化膜である請求項3記載のマスク。
- シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、
前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、
基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、
前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、
前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、
前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有するマスクの製造方法。 - 前記単結晶シリコン層を形成する工程と、前記応力調整層を形成する工程は、他のシリコン基板である接合基板の一方の面に多孔質層を形成する工程と、
前記多孔質層上に前記シリコン基板より薄い前記単結晶シリコン層を形成する工程と、
前記シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記応力調整層として前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さを有する第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、前記シリコン基板上の前記第1のシリコン酸化膜と、前記接合基板上に前記多孔質層を介して形成された前記単結晶シリコン層とを接合する工程と、
前記多孔質層で前記シリコン基板側と前記接合基板側を分離する工程と、
前記シリコン基板側の前記多孔質層を除去する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記第1のシリコン酸化膜と前記単結晶シリコン層とを接合する前に、前記単結晶シリコン層を酸化して、前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程をさらに有し、
前記第1のシリコン酸化膜と前記単結晶シリコン層とを接合する工程において、前記第1のシリコン酸化膜と前記第3のシリコン酸化膜とを接合する請求項6記載のマスクの製造方法。 - 前記単結晶シリコン層を形成する工程と、前記応力調整層を形成する工程は、前記シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記応力調整層として前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さを有する第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、
他のシリコン基板である接合基板に前記シリコン基板の厚さより薄い所定の深さで水素イオンを打ち込む工程と、
前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して前記接合基板を接合する工程と、
加熱により前記接合基板を水素濃度が最も高い位置で破断して、前記接合基板からなる前記単結晶シリコン層を形成する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記単結晶シリコン層を形成する工程と、前記応力調整層を形成する工程は、前記シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記応力調整層として前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さを有する第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して、他のシリコン基板である接合基板を接合する工程と、
前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くして、前記接合基板からなる前記単結晶シリコン層を形成する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くする工程は、前記接合基板の前記第1の酸化膜と接しない側の面を研削する工程を含む請求項9記載のマスクの製造方法。
- 前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くする工程は、前記接合基板の前記第1の酸化膜と接しない側の面を研磨する工程を含む請求項9記載のマスクの製造方法。
- 前記単結晶シリコン層を形成する工程は、前記シリコン基板の前記一方の面に所定の深さで酸素イオンを打ち込む工程と、
加熱により前記シリコン基板の酸素濃度が最も高い位置に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、前記シリコン基板の前記一方の面側に前記単結晶シリコン層を形成する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項12記載のマスクの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程は、前記単結晶シリコン層を形成した後、前記単結晶シリコン層上に保護膜を形成する工程と、
全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に前記応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記保護膜を除去する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項14記載のマスクの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程は、前記応力調整層を堆積させる工程を含む請求項5記載のマスクの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項16記載のマスクの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程は、前記単結晶シリコン層を形成した後、全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に前記応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成し、かつ前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記第2のシリコン酸化膜上に保護膜を形成する工程と、
前記第3のシリコン酸化膜をエッチングにより除去する工程と、
前記保護膜を除去する工程とを含む請求項5記載のマスクの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項18記載のマスクの製造方法。
- シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、
全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成し、かつ前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程と、
基板開口部を形成する領域の前記応力調整層を除去する工程と、
前記基板開口部以外に前記応力調整層を残し、前記シリコン基板の一部に少なくとも1つの前記基板開口部を形成する工程と、
前記第3のシリコン酸化膜と、前記基板開口部上の前記第1のシリコン酸化膜を除去する工程と、
前記基板開口部上の前記単結晶シリコン層の一部に、露光用ビームが透過する少なくとも1つの開口部を形成する工程とを有するマスクの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項20記載のマスクの製造方法。
- シリコン基板と、
該シリコン基板の一方の面に形成された第1のシリコン酸化膜と、
前記第1のシリコン酸化膜上に形成された単結晶シリコン層と、
前記シリコン基板の他方の面に形成され、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層とを有するマスクブランクス。 - 前記応力調整層は、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する請求項22記載のマスクブランクス。
- シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、
他のシリコン基板である接合基板の一方の面に多孔質層を形成する工程と、
前記多孔質層上に前記シリコン基板より薄い前記単結晶シリコン層を形成する工程と、
前記第1のシリコン酸化膜と、前記接合基板上に前記多孔質層を介して形成された前記単結晶シリコン層とを接合する工程と、
前記多孔質層で前記シリコン基板側と前記接合基板側を分離する工程と、
前記シリコン基板側の前記多孔質層を除去する工程とを有するマスクブランクスの製造方法。 - シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、
他のシリコン基板である接合基板に前記シリコン基板の厚さより薄い所定の深さで水素イオンを打ち込む工程と、
前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して前記接合基板を接合する工程と、
加熱により前記接合基板を水素濃度が最も高い位置で破断して、前記接合基板からなる前記単結晶シリコン層を形成する工程とを有するマスクブランクスの製造方法。 - シリコン基板を全面酸化して、前記シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を形成し、他方の面に前記第1のシリコン酸化膜と実質的に同一の厚さで、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を、応力調整層として形成する工程と、
前記シリコン基板上に前記第1のシリコン酸化膜を介して、他のシリコン基板である接合基板を接合する工程と、
前記接合基板を前記シリコン基板よりも薄くして、前記接合基板からなる単結晶シリコン層を形成する工程とを有するマスクブランクスの製造方法。 - シリコン基板の一方の面に、少なくとも第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程と、
前記シリコン基板の他方の面の近傍に所定の深さで酸素イオンを打ち込む工程と、
加熱により前記シリコン基板の酸素濃度が最も高い位置に前記第1のシリコン酸化膜を形成し、前記シリコン基板の前記他方の面側に単結晶シリコン層を形成する工程とを有するマスクブランクスの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する前記応力調整層を形成する請求項27記載のマスクブランクスの製造方法。
- シリコン基板の一方の面に第1のシリコン酸化膜を介して単結晶シリコン層を形成する工程と、
前記シリコン基板の他方の面に、少なくとも前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する応力調整層を形成する工程とを有するマスクブランクスの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程において、前記第1のシリコン酸化膜の圧縮応力および重力に起因する前記シリコン基板の反りを平坦化するような内部応力を有する第2のシリコン酸化膜を形成する請求項29記載のマスクブランクスの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程は、前記第1のシリコン酸化膜および単結晶シリコン層の形成後、前記単結晶シリコン層上に保護膜を形成する工程と、
全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に、前記応力調整層として第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記保護膜を除去する工程とを含む請求項29記載のマスクブランクスの製造方法。 - 前記応力調整層を形成する工程は、前記第1のシリコン酸化膜および単結晶シリコン層の形成後、前記他方の面に前記応力調整層を堆積させる工程を含む請求項29記載のマスクブランクスの製造方法。
- 前記応力調整層を形成する工程は、前記第1のシリコン酸化膜および単結晶シリコン層の形成後、全面酸化により前記シリコン基板の露出部分の表面に、前記応力調整層として前記第2のシリコン酸化膜を形成し、かつ前記単結晶シリコン層の表面に第3のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記第2のシリコン酸化膜上に保護膜を形成する工程と、
前記第3のシリコン酸化膜をエッチングにより除去する工程と、
前記保護膜を除去する工程とを含む請求項29記載のマスクブランクスの製造方法。
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