JP2004186097A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電解質膜13を挟んで負極11と正極12が電池容器10に収納された燃料電池において、発電時に生ずる熱を可逆的に吸熱する潜熱蓄熱剤30を有する吸熱手段を備える。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜を介して正極と負極が対向して配置され、負極で燃料を酸化し、正極で酸素を還元した際に生じる電位差により発電する燃料電池に関する。
さらに詳しくは、発電時の発熱を抑制する小型携帯機器用の燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の分野においては、携帯用情報端末機器、携帯電話機、ビデオカメラなど携帯用電子機器が急速に普及しつつある。それに伴いそれらを利用する電源として、高エネルギー密度を有し小型で長時間使用可能な可搬型電源の開発が求められている。このような電源としては現在のところ2次電池が主流であり、その研究開発が活発に行われている。最近ではニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの高性能化が進み、携帯用電子機器の電源としての地位を築きつつある。しかし、携帯用電子機器の種類によっては十分な連続使用時間を保証するレベルには至っていない。また、環境問題から使用済み電池のリサイクルのための回収をしなければならない。
【0003】
そこで、2次電池に代わる高エネルギー密度を有する電池として、空気電池、燃料電池の開発が期待されているが、空気電池はアルカリ性の電解質が空気中の二酸化炭素と反応して経時劣化してしまうため自己放電率が大きいという問題がある。
一方、燃料電池は負極に供給された燃料が酸化されてプロトンと電子を分離し、そのプロトンが電解質膜を伝導して正極に供給された酸素と反応することにより発電するものであり、燃料の燃焼エネルギーを直接電気エネルギーに変換するためエネルギー変換効率が非常に高く、かつ発電の際に生成する物質は水のみであることから環境負荷が非常に低いという特徴を有している。また、燃料と酸素の供給を継続している限り連続して使用可能である。近年、電解質膜に高分子膜が利用され、室温から90℃までの比較的低温で使用可能になったことから小型電子機器への応用が可能となった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−268835号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、携帯用電子機器に用いられる従来の燃料電池(例えば、特許文献1)は、水の生成熱とジュール熱が発生すると、電池容器は表面温度が100℃近くにまで上昇し、実使用に問題が出るばかりでなく、電解質膜の含水分を蒸発させ、電池性能を低下させるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の主要な目的の一つは、発電時の発熱を抑制して電池性能を維持し、携帯用電子機器用の電源として最適な燃料電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、電解質膜を挟んで負極と正極が電池容器に収納された燃料電池であって、
発電時に生ずる熱を可逆的に吸熱する潜熱蓄熱剤を有する吸熱手段を備えた燃料電池が提供される。
【0008】
このように構成することによって、燃料電池発電時に発生する水の生成熱とジュール熱を吸熱手段の潜熱蓄熱剤にて積極的に吸熱することができるので、電池容器表面(特に発熱量の多い正極側)の温度上昇を抑制することができる。この結果、燃料電池の発熱による電解質膜の含水分の蒸発を防止して電池性能を維持することができ、携帯用電子機器用の電源として好適に使用することができる。
【0009】
本発明において、吸熱手段は、上記潜熱蓄熱剤と、電池容器に設けられ、潜熱蓄熱剤を密封状に収納する収納部とを備えてなるものとすることができる。具体的に収納部は、▲1▼電池容器の壁部内に設けられた構造、▲2▼電池容器の壁部外面に直接接触して設けられた構造、▲3▼電池容器の壁部外面に良伝熱材を介接して設けられた構造、▲4▼上記▲1▼▲2▼▲3▼を組み合わせた構造を採用することができる。上記▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼の構造は、少なくとも発熱量の多い正極側に取り入れることが好ましい。
【0010】
構造▲1▼の場合、電池容器の壁部を対向する一対のプレートから構成し、一方のプレートの内側に凹部を形成する。この場合、壁部の強度を確保するために、凹部は区画壁によって複数に分割してもよい。また、上記凹部が区画壁によって複数に分割されている場合は、各区画壁の上縁の一部に切欠部を形成して各凹部を連通させておけば、1箇所の凹部に潜熱蓄熱剤を充填すれば各凹部に広がって充填することができる。この構造▲1▼によれば、燃料電池の外形寸法を大きくすることなく吸熱手段を設けることができる。
構造▲2▼の場合、予め潜熱蓄熱剤を充填したケースを、例えば発熱量の多い電池容器の正極側壁面に貼り付ける。この構造▲2▼によれば、容易に吸熱手段を形成することができる。また、ケースに多量の潜熱蓄熱剤を封入することが可能であり、発熱量の多い電池容器の正極側壁面の温度上昇を効果的に抑制することができる。
構造▲3▼の場合、予め潜熱蓄熱剤を充填したケースを、例えば電池容器の正極側壁面に銅板やアルミ板等の良電熱材を介して接触させる。この構造▲3▼によれば、構造▲2▼と同様の効果が得られると共に、小型電子機器の燃料電池の設置スペースに余裕がない場合でもケースを電池容器と離して設置することができる。
【0011】
潜熱蓄熱剤としては、35〜60℃の範囲内に融点(転移点)を有する潜熱蓄熱剤であれば、室温で溶融し難く、かつ燃料電池の発熱を人体や周辺電子部品に影響を与えない程度に抑えることができるので好ましく、融点40〜50℃がより好ましい。
具体的に潜熱蓄熱剤としては、融点約41℃の酸化オスミウム、融点約43℃のL−メントール、融点約43℃の硝酸カルシウム、融点約44℃の白リン、融点約48℃のチオ硫酸ナトリウム五水和物、融点約49℃のセチルアルコールなどの無機及び有機化合物、あるいはパラフィンろう、はんだ、酢酸ナトリウムなど、融点35〜60℃の複数の共融物質が混合してなる混合物を好適に使用できる。また、潜熱蓄熱剤は1種類のみの使用に限らず、複数種類併用してもよい。さらに、軽量化のため、潜熱蓄熱剤の密度は2.0g/cm3以下が望ましい。
潜熱蓄熱剤を燃料電池に装備することにより、潜熱蓄熱剤が融解する際の融解熱として熱を奪うことを利用し、発電による発熱を抑制することができる。なお、潜熱蓄熱剤の融点が35℃よりも低いと、夏季など気温が高い場合には未使用時でも潜熱蓄熱剤が溶解し、燃料電池発電時に潜熱蓄熱剤の吸熱作用(潜熱蓄熱作用)を利用することができない場合があり、その場合には使用時の燃料電池の発熱を抑えることができない。また、潜熱蓄熱剤の融点が60℃よりも高いと、燃料電池の使用時間(例えば1時間)によっては容器表面温度が60℃以上に上昇し、使用者が火傷したり、燃料電池を設置した周辺の電子部品に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、電解質膜を挟んで負極と正極が電池容器に収納された基本構成を成し、水素などの気体燃料を燃料とする気体燃料型燃料電池や、光の存在下で水をプロトンと電子に分解する光触媒を有し、水やメタノール水溶液などの液体燃料を燃料とする光燃料電池等、電池容器を備える全ての燃料電池に適用することができ、特に、携帯電話、電子手帳、ノートパソコン等の小型電子機器の電源として組み込まれる燃料電池に好適に使用される。
【0013】
電池容器の材料としては、アクリル樹脂のほか、ガラス転移点が常温以上であるもの、具体的にはポリスチレン、ポリカーボネート、ないしは硬質ポリ塩化ビニル(可塑剤0〜5%添加)、ポリフェニレンオキサイドなどの硬質樹脂、あるいはアルマイト処理を施し他アルミニウムのほか、絶縁コートを施したステンレス、防食処理を施した鉄などを用いることができ、より好ましくは絶縁され、放熱がよく、剛性の高いステンレスなどの金属類である。
また、電池容器は、用いられる形態やその用途に応じて、どのような形態を有するものであってもよいが、電池容器における正極と対向する壁部に外気通気孔を設けることが好ましく、さらに正極側に外気保持材を充填した外気貯蔵空隙を有する構造としてもよい。一方、電池容器の内部の負極側は、燃料を負極に供給するための燃料保持空隙と、この燃料保持空隙に連通する燃料供給口及び余剰燃料排出口とを有する構造としてもよい。これについて詳しくは後述の実施の形態で説明する。
【0014】
本発明において、電解質膜としては、トリフルオロエチレン誘導体の共重合体、リン酸含浸ポリベンゾイミダゾール樹脂、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール系水酸基又はパーフルオロスルホン酸基を陽イオン交換基として有する樹脂、PSSA−PVA(ポリスチレンスルホン酸ポリビニルアルコール共重合体)や、PSSA−EVOH(ポリスチレンスルホン酸エチレンビニルアルコール共重合体)等からなるものが挙げられる。中でも、パーフルオロスルホン酸基を有するイオン交換樹脂からなるもが好ましく、具体的には、米国デュポン社製のナフィオン膜、旭硝子社製のフレミオン膜、旭化成社製のアシプレックス膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、樹脂の前駆体を熱プレス成型、ロール成形、押出し成形等の公知の方法で膜状に成形し、加水分解、酸型化処理することにより得られる。また、フッ素系陽イオン交換樹脂をアルコール等の溶媒に溶解させた溶液から、溶媒キャスト法により得ることもできる。
【0015】
本発明において、負極及び正極は、カーボン、カーボンペーパー、カーボンの成型体、カーボンの焼結体、焼結金属、発泡金属、金属繊維集合体などの多孔性基体を撥水処理したものを用いることができる。例えば、触媒担持のカーボンを結着剤等にて上記多孔質性基体上に付着させ、それをホットプレスなどによって電解質膜の一面に多孔質触媒層を一体状に接合する方法を挙げることができる。なお、これについてさらに詳しくは後述する。
【0016】
負極及び正極の多孔質触媒層に用いられる触媒としては、白金、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、レニウム、イリジウム、パラジウムなどの貴金属、あるいは遷移金属と白金の合金、あるいはそれらの酸化物の微粒子を触媒として含む炭素材料を用いることができる。
【0017】
本発明において、電解質膜の一面に負極の多孔質触媒層を積層し、電解質膜の他面に正極の多孔質触媒層を積層する方法として、例えば白金担持のカーボンを、結着剤及び撥水剤として働くポリテトラフルオロエチレンや固体高分子電解質を含むアルコール溶液と混合し、カーボンペーパーなどの多孔質性電極上に吹きつけ、ホットプレスなどによって電解質膜の一面に負極側多孔質触媒層を一体状に接合して形成し、一方例えば白金担持のカーボンを上述と同様にして電解質膜の他面に正極側多孔質触媒層を一体状に接合して形成することができる(米国特許第5,599,638号参照)。あるいは、別の方法として、負極側では、例えば白金担持のカーボンを固体高分子電解質を含むアルコール溶液と混合した触媒混合溶液を用意し、正極側では、例えば白金担持のカーボンを固体高分子電解質を含むアルコール溶液と混合した触媒混合溶液を用意し、各触媒混合溶液を個別にポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、乾燥後の各膜をポリテトラフルオロエチレン板上から引き剥がして、カーボンペーパーなどの多孔質性電極上にそれぞれ転写し、ホットプレスなどによって電解質膜の一面及び他面にそれぞれ一体状に接合して負極側の多孔質触媒層及び正極側の多孔質触媒層を形成することもできる(X.Renら、J.Electrochem.Soc.,143,L12(1996)参照)。
【0018】
本発明において、負極及び正極は、上記構成の多孔質触媒層をそれぞれ備えてなるものであるが、負極及び正極の各多孔質触媒層に集電体層及びガス拡散層をそれぞれ積層してもよい。
集電体層としては、例えばステンレス、ニッケル、ニッケルークロム合金等の金属性メッシュを用いることができる。集電体層を設けることにより、集電効果を向上させることができる。
ガス拡散層としては、カーボンペーパー、カーボンファイバー等の多孔質炭素材料から構成することができる。ガス拡散層は、負極及び正極のそれぞれに、燃料及び空気を供給する役割を果たす。ガス拡散層が電気導電性材料からなる場合には、集電体層としての役割も兼ねることができるので、より集電効果が向上し、さらに好ましい。
つまり、多孔質の炭素繊維で構成されたガス拡散層が供給された燃料を保持しかつ、自然拡散により燃料を負極に供給すると共に、負極で燃料が酸化される際生じる電荷を集電体層にて効率よく集電する機能を発揮することができる。一方、正極側においては、取り入れた外気をガス拡散層にて保持し、かつ酸素を正極に供給すると共に、正極で酸素が還元される際に必要な電荷を集電体層にて効率よく供給する機能を発揮することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態は一般的なものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の実施の形態にかかる燃料電池を示す斜視図であり、図2は図1の破線に沿った概略断面図であり、図3は同実施の形態における電池容器の壁部の断面図であり、図4は図2の破線枠内の拡大図である。なお、図1において、斜線部は電池容器に設けられた吸熱手段を表している。
【0020】
この実施の形態の燃料電池は、アクリル樹脂からなる箱型の電池容器10と、電池容器10の壁部内に設けられた吸熱手段Eと、この電池容器10の内部空間を上下に仕切るように設けられた電解質膜13と、電解質膜13を挟むようにその上面及び下面に積層一体化された負極11及び正極12と、負極11に電気的に接続されて電池容器10の一側壁から外部に露出した負極端子2と、正極12に電気的に接続されて電池容器10の一側壁から外部に露出した正極端子3とを備えている。
【0021】
電池容器10は、上壁部、下壁部及び周囲4面を構成する側壁部からなり、各壁部20はシリコン系接着剤にて固定されている。これらの各壁部20の内部には、吸熱手段Eが設けられている。この吸熱手段Eは、図3に示すように、潜熱蓄熱剤30と、電池容器10内の各壁部20内に設けられ、潜熱蓄熱剤30を密封状に収納する収納部21とからなる。
【0022】
さらに詳しく説明すると、電池容器10の各壁部20は、内面側プレート22と外面側プレート23から構成されており、内面側プレート22の外面側に凹部21aが形成されている。本実施の形態では、内面側プレート22の厚みT1は1.5mm、凹部21aの深さDは1mmに設定され、外面側プレート23の厚みT2は0.5mmに設定されている。また、壁部20の強度を確保するために、凹部21aは格子状に設けられた区画壁21bによって複数に分割されている。内面側プレート22の上面と外面側プレート23の下面とを接着剤によって密封状に貼り合わせて壁部20を形成することにより、その内部に複数に分割された空間が形成され、これらの空間全体が潜熱蓄熱剤30を収納する収納部21とされている。また、この収納部21に潜熱蓄熱剤30を収納する際は、潜熱蓄熱剤20を溶融して収納部21内に充填できるように、壁部20に収納部21と連通する図示省略の充填用孔及び空気抜き孔が形成されており、潜熱蓄熱剤30の充填後にこれらの孔は樹脂等にて塞がれる。また、収納部21内の各区画壁21bの上縁の一部には切欠部31cが形成されており、各凹部21aは連通している。これによって、上記充填用孔から1箇所の凹部21aに潜熱蓄熱剤30を充填すれば、切欠部31cを通して潜熱蓄熱剤30が各凹部21aに流入し、収納部21全体に潜熱蓄熱剤30が充填される。
【0023】
潜熱蓄熱剤30としては、本実施の形態では融点約48℃のチオ硫酸ナトリウム五水和物が使用される。このチオ硫酸ナトリウム五水和物の使用量は、例えば本燃料電池の電池容器表面温度を2時間程度、50℃程度に保持する重量として水の生成熱及びジュール熱から算出することができ、本実施の形態では約300g使用する。なお、電池容器10の熱容量は無視している。
【0024】
また、電池容器10の上壁部には、外気より酸素を導入する目的で、例えば2mm×5mmの外気通気孔1が複数個(この場合5個)設けられている。また、電池容器10における各端子2、3とは反対側の他側壁には、電池容器10内の負極11の下方空間と連通する燃料供給口11e(例えば口径1mm)が形成されると共に、各端子2、3側の一側壁には、電池容器10内の負極11の下方空間と連通する燃料供給口11eよりも小さい余剰燃料排出口11g(例えば口径0.5mm)が形成されている。そして、電池容器10内における負極11の下方空間が、燃料保持材11hが装填された燃料保持空隙11dとされ、かつ正極12の上方空間が、外気保持材12hが装填された外気貯蔵空隙12dとされている。また、燃料供給口11eの内側には、燃料保持空隙11d内の燃料が燃料供給口11eの方へ逆流しないようにする逆止弁11fが取付けられている。
【0025】
燃料保持空隙11dは、供給された燃料である水素を負極11に供給するための空間である。この燃料保持空隙11dの容積は、燃料電池全体の大きさにより適宜調整されるが、例えば、電池容器10の容積の10%程度とすることができる。
【0026】
燃料保持空隙11dに装填された燃料保持材11hとしては、燃料として水素を供給する場合には、多孔質の炭素材料ないしはLa−Ni、Ti−Fe、Mg−Niなどの合金を単独ないしは組み合わせた水素貯蔵合金よりなる燃料保持材料を用いることができる。また、燃料として液体を供給する場合には、耐食性の大きいステンレス、ニッケル等をウール状、メッシュ状にしたものを用いることができ、より大きな燃料保持効果が期待できる。燃料保持材が電気伝導性材料からなる場合には、集電体としての役割も兼ねることができ、従って集電効果が向上する。また、燃料保持材と負極の間に、燃料保持材とは別に、集電体として独立した層を形成してもよい。その際、集電体は、燃料保持材と同一または異なった材料から形成される。
【0027】
燃料供給口11e及び余剰燃料排出口11gの大きさは、電池容器10の大きさに応じて適宜調整される。この場合、燃料供給口11eの口径が小さすぎると燃料供給が困難となるため、燃料供給口11eはある程度以上の大きさが好ましい。一方、余剰燃料排出口11gは、燃料供給口11eよりも小さくすることにより、燃料供給圧力が一時的に保たれ、好ましい。そのため、燃料保持空隙11dが保持しうる以上の燃料が供給されたときも、余剰燃料排出口11Gより余分な燃料が排出されて燃料保持空隙11d内の圧力が一定に保たれ、したがって電解質膜に異常な圧力がかかって破損することを防止できる。
具体的には、燃料供給口11eと余剰燃料排出口11gが略円形であり、燃料が気体の場合には、燃料供給口11eは口径が約4〜1mm、余剰燃料排出口11gは口径が約2〜0.5mmとされる。燃料が液体の場合には、燃料供給口の口径は約8mm〜約2mm、余剰燃料排出口の口径は約4mm〜約1mmとされる。なお、燃料供給口11eと余剰燃料排出口11gが円形以外の場合は、その大きさは、それらが略円形の場合の断面積と略等しい断面積に換算して考えることができる。
【0028】
逆止弁11fは、燃料の逆流を防ぎ、その結果反応物質等による未使用燃料の汚染を防ぐことができる。逆止弁11fは、通常流体(この場合気体)の逆流を防止するために用いられるものであれば、特に限定されず、例えば燃料供給口11eに燃料を供給する際にのみ開放されるものが使用できる。供給された燃料に押出されるようにして、燃料保持空隙11dに滞留していた空気は余剰燃料排出口11gより排出される。したがって、燃料保持空隙11dで滞留していた空気は燃料供給口11eに逆流せず、かつ燃料保持空隙11dに燃料が一定に供給され、その結果安定した発電が行われる。
【0029】
外気貯蔵空隙12dは、正極12に酸素を供給するための空間である。この外気貯蔵空隙12dと連通する外気通気孔1を電池容器10の上面に形成したことにより、小型電子機器等の設置箇所に燃料電池を設置した状態において正極12への外気の接触が容易となる。この外気貯蔵空隙12dの容積は、燃料電池全体の大きさにより適宜調整されるが、例えば、電池容器10の容積の10%程度とすることができる。なお、外気通気孔1は、円形、長円形、長方形等どのような形状でもよいが、その面積としては1個当たり約0.1〜10mm2で、かつ1〜100個備えられるのが好ましい。
【0030】
外気貯蔵空隙12dに装填された外気保持材12hとしては、外気貯蔵空隙12dを完全に満たすものであっても、その一部を満たすものであってもよい。本実施の形態では、外気貯蔵空隙12dに外気保持材12hが燃料供給口11e側と余剰燃料排出口11g側に少し隙間を残す程度に装填されている。一部を満たすものである場合には、容器に備えられた外気通気孔1と正極12との間に、正極に対して全面的又は部分的に配置されてもよい。いずれの場合にも、電池容器10と正極12との間の幅に対して、任意の厚さを有するものであってもよい。
外気保持材12hの備えられる形態としては、シート状、綿材をメッシュ状又はウール状にしたもの、綿材を網状に織ったもの、細線を重ねて圧縮して板状にしたもの、粒状等どのような形態であってもよい。外気保持材12hの材料としては、ニッケル、ステンレス、アルミニウム、鉄等を用いることができる。さらに、外気保持材12hをポリテトラフルオロエチレンなどで被覆することによりる撥水処理により、正極12における反応により生成した水を効率よく除去することができる。本実施の形態では、例えばφ50μmニッケル線を網状に織って形成した外気保持材12hが用いられるが、ニッケル線のほか、耐水性及び導電性に富む金属種からなる発泡金属や金属繊維でもよい。この外気保持材12hは、外気通気孔1より供給された外気を保持し、かつ自然拡散により酸素を正極12に供給する役割を果たす。
【0031】
さらに、外気保持材12hは、電気導電性を有する、具体的には室温における電気伝導率が103S/cm以上であるような、ヨウ素付加ポリアセチレンに代表される有機導電性材料(導電性高分子)、高分子材料に金属導体を分散した電気導電性樹脂などから構成してもよく、このようにすれば集電体層の役割も兼ね、したがって集電効果が向上するため、より高い電流値を得ることができる。
【0032】
電解質膜13としては、パーフルオロスルホン酸系のデュポン社製のナフィオン膜が用いられる。この電解質膜13は、その一面である下面に負極11が、他面である上面に正極12がそれぞれ積層して一体状となっている。
【0033】
負極11は、電解質膜13側から、多孔質触媒層11aと、負極集電体層11bと、ガス拡散層11cとからなる3層構造である。多孔質触媒層11aは、10重量%白金担持のカーボン5gを、結着剤及び撥水剤として働くポリテトラフルオロエチレンや固体高分子電解質を含むアルコール溶液と混合し、カーボンペーパーなどの多孔質性電極上に吹きつけ、ホットプレスによって電解質膜13の一面(上面)に一体状に接合して形成される。
一方、正極12は、電解質膜13側から、多孔質触媒層12aと、正極集電体層12bと、ガス拡散層12cとからなる3層構造である。多孔質触媒層12aは、負極と同様に、10重量%白金担持のカーボン5gを、結着剤及び撥水剤として働くポリテトラフルオロエチレンや固体高分子電解質を含むアルコール溶液と混合し、カーボンペーパーなどの多孔質性電極上に吹きつけ、ホットプレスなどによって電解質膜13の他面(下面)に一体状に接合して形成される。
このように電解質膜13の両面に多孔質触媒層11a及び多孔質触媒層12aを積層した後、その両面にステンレス製メッシュからなる負極集電体層11b、正極集電体層12bを積層し、かつカーボンペーパー、カーボンファイバー等の多孔質炭素材料からなるガス拡散層11c、12cを積層して、電解質膜13の両面に負極11及び正極12が一体化してなる触媒・光触媒一体型電解質膜を作製することができる。なお、集電帯層11b、12bは必要であればカーボンブラック分散フッ素化合物のような導電性撥水剤を塗布するとよい。
【0034】
【実施例】
[実施例1]
本実施の形態で作製した燃料電池を実施例1とし、吸熱手段を有さない電池容器を用い、その他の燃料電池構成部材は実施例1と同じものを用いて作製した燃料電池を比較例とし、実施例1及び比較例とも、室温25℃において、水素ボンベより純水素を0.1MPaで供給し、200mA/cm2負荷時の電池容器の正極側表面の温度上昇を測定し、その結果を図5及び図6に示した。
【0035】
実施例1では、図5に示すように、発電開始から時間経過に伴って電池容器表面温度が上昇し、約1時間経過後に電池容器表面温度が45℃を超えると壁部内部に封入したチオ硫酸ナトリウム五水和物が溶解し始め、その後電池容器表面温度は45℃付近で1時間以上安定した。
これに対して、比較例では、図6に示すように、発電開始から時間経過に伴って電池容器表面温度が上昇し、約1時間経過後に70℃を越え、その後電池容器表面温度は73℃付近で1時間以上安定した。
この結果から、実施例1では発電時に生ずる熱をチオ硫酸ナトリウム五水和物が吸熱したことにより、正極側の電池容器表面温度の上昇が比較例よりも大幅に(25℃以上)低く抑えられていることが分かった。
【0036】
[実施例2]
上記実施例1の潜熱蓄熱剤をL−メントール200gに変更し、その他は同様として作製した燃料電池を実施例2とした。そして、実施例1と同様に、室温23℃において、純水素を0.1MPaで供給し、200mA/cm2負荷時の電池容器の正極側表面の温度上昇を測定し、その結果を図7に示した。
【0037】
図7に示すように、実施の形態2は、ほぼ実施の形態1と同様の結果となり、比較例に比して燃料電池の発熱を低く抑えていることが分かった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の燃料電池は、燃料電池発電時に発生する水の生成熱とジュール熱を吸熱手段の潜熱蓄熱剤にて積極的に吸熱することができるので、電池容器表面の温度上昇、特に発熱量の多い正極側の温度上昇を抑制することができる。この結果、燃料電池の発熱による電解質膜の含水分の蒸発を防止して電池性能を維持することができ、携帯用電子機器用の電源として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1の破線に沿った概略断面図である。
【図3】同実施の形態における電池容器の壁部の断面図である。
【図4】図2の破線枠内の拡大図である。
【図5】実施例1の表面温度経時変化を示すグラフである。
【図6】比較例の表面温度経時変化を示すグラフである。
【図7】実施例2の表面温度経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
13 電解質膜
11 負極
12 正極
10 電池容器
30 潜熱蓄熱剤
E 吸熱手段
21 収納部
20 壁部
22 内面側プレート
23 外面側プレート
Claims (5)
- 電解質膜を挟んで負極と正極が電池容器に収納された燃料電池であって、
発電時に生ずる熱を可逆的に吸熱する潜熱蓄熱剤を有する吸熱手段を備えたことを特徴とする燃料電池。 - 吸熱手段が、電池容器に設けられ、潜熱蓄熱剤を密封状に収納する収納部をさらに備えてなる請求項1に記載の燃料電池。
- 収納部が、電池容器の壁部内及び/又は電池容器の壁部外面に直接接触させるか、良伝熱材を介接して設けられてなる請求項2に記載の燃料電池。
- 潜熱蓄熱剤が、35〜60℃の範囲内に融点を有する物質の単体又は混合物からなる請求項1〜3の何れか1つに記載の燃料電池。
- 潜熱蓄熱剤が、酸化オスミニウム、L−メントール、硝酸カルシウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、白リン、セタノール、パラフィンろう、はんだ、酢酸ナトリウムのうち少なくとも一つを含む請求項1〜3の何れか1つに記載の燃料電池。
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