JP4044372B2 - 液体燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料として液体を用いた液体燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化が図れる二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源として需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウム二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証する程度までには至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、空気電池、燃料電池などが考えられる。空気電池は、空気中の酸素を正極の活物質として利用する電池であり、電池内容積の大半を負極の充填に費やすことが可能であることから、エネルギー密度を増加させるためには好適な電池であると考えられる。しかし、この空気電池には、電解液として使用するアルカリ溶液が空気中の二酸化炭素と反応して劣化してしまうために自己放電が大きいという問題がある。
【0004】
また、燃料電池については、用いる燃料に関していくつかの候補が挙げられているが、それぞれ種々の問題点を有しており、最終的な決定がいまだなされていない。例えば、燃料として純水素を用いる場合には、水素スタンド等の燃料供給設備の整備に時間と膨大な資金が必要である。また、水素は非常に軽い可燃性ガスであるためその取り扱いが難しく、安全性の面でも問題がある。さらに、燃料としてガソリンを用い、ガソリンを改質して水素を取り出す場合には改質装置が必要となり、また改質の効率があまり高くない等の問題もある。
また、液体燃料であるメタノールを改質せずにそのまま燃料として使用する液体燃料電池や、NaBH 4 、KBH 4 、LiAlH 4 、KH、NaHなどの金属水素化物を溶解させた液体燃料を、水素吸蔵合金を用いた負極に供給する液体燃料電池(アルカリ燃料電池)も検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記液体燃料電池では、負極に燃料が供給されて反応し、正極では酸素が反応する。したがって、燃料および酸素の供給さえ行えば連続的に使用することができる。しかし、従来の燃料電池は、複数の単電池を積層して構成されているため、電池全体が嵩高くなってしまう。また、酸素および燃料をそれぞれの正極および負極へ流通させて供給しなければならず、そのための補器を必要とする。このため、従来の燃料電池はリチウムイオン電池などの小型二次電池に比べてはるかに大きくなってしまい、小型ポータブル電源として用いるには問題があった。
【0006】
ここで、酸素および燃料を強制的に流通させる補器を除去することで出力は低下するものの、燃料電池の小型化を図ることができる。しかし、この場合、酸素は外気を利用するとしても、燃料が自動的に流通しないために、単電池のそれぞれの負極へ燃料が供給できる構造が必要である。また、各セル(単電池)間で短絡が発生しないような構造も必要とされる。
【0007】
本発明は前記従来の問題を解決するためになされたものであり、小型で且つ安定的に発電することのできる液体燃料電池を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の液体燃料電池は、酸素を還元する正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた電解質層とを備えると共に、金属水素化物を溶解させたアルカリ水溶液を液体燃料とし、前記液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、前記正極と、前記負極と、前記電解質層とが電極・電解質一体化物からなる単電池を構成し、前記単電池が同一平面上に複数個平面的に配置され、各単電池が電気的に直列に接続され、前記液体燃料貯蔵部が、前記各単電池の負極に隣接して設けられ、かつ前記単電池毎に隔壁により電気的に絶縁され、前記液体燃料が相互に流通しないよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明の液体燃料電池は、酸素を還元する正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた電解質層とを備えると共に、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、前記正極と、前記負極と、前記電解質層とが電極・電解質一体化物からなる単電池を構成し、前記単電池が同一平面上に複数個配置され、各単電池が電気的に直列に接続され、前記液体燃料貯蔵部が前記単電池毎に隔壁により分離されている。
【0011】
本発明の液体燃料電池では、正極と、負極と、電解質層とが電極・電解質一体化物からなる単電池を構成し、この単電池が同一平面上に複数個配置されているため、電池の厚みを薄くすることが可能である。また、各単電池が電気的に直列に接続されているため、小型でも高出力を発揮できる。さらに、液体燃料貯蔵部が単電池毎に隔壁により分離されているため、各セル間の短絡を防ぐことができる。
【0012】
また、前記液体燃料貯蔵部の隔壁には、分離された液体燃料貯蔵部をそれぞれ連通させることができる開閉弁を設けることが好ましい。燃料を補充する際に一つの燃料充填口から各液体燃料貯蔵部へ連続的に燃料を供給できるからである。
【0013】
また、前記液体燃料貯蔵部は、気液分離膜を配置した気液分離孔を備えていることが好ましい。液体燃料を漏液させることなく、燃料電池の使用時に発生する不要なガスを排出するためである。
【0014】
また、前記液体燃料を含浸して保持し且つ前記負極に前記液体燃料を供給する液体燃料含浸部を備え、前記液体燃料含浸部が前記負極と接する部分に配置されていることが好ましい。燃料が消費されても、燃料と負極との接触が維持されるため、燃料を最後まで使い切ることができるからである。
【0015】
また、水素吸蔵材料を負極に用いたアルカリ燃料電池においては、前記水素吸蔵材料は、水素吸蔵合金およびカーボンナノチューブよりなる群から選択された1つであることが好ましい。これらは、水素の吸蔵能力に優れているからである。
【0016】
また、前記アルカリ燃料電池において、燃料である金属水素化物は、NaBH4、KBH4、LiAlH4、KHおよびNaHよりなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらは、水に容易に溶解でき、また単位質量当たりの水素供給量が多いからである。
【0017】
また、アルカリ燃料電池の電解質層は、KOH、NaOHおよびLiOHよりなる群から選択された少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液を含んでいることが好ましい。高いイオン伝導性を付与できるからである。
【0018】
次に、本発明の実施形態を、アルカリ燃料電池を例に挙げ、図面に基づき説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1の液体燃料電池の断面図を示す。正極8は、例えば、多孔質性炭素粉末および触媒を担持した炭素粉末からなるカーボン層8bと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる気液分離シート8aとを積層して構成される。正極8は酸素を還元する機能を有しており、カーボンに触媒を担持することによりその性能を向上させることができる。その触媒には、銀、白金、ルテニウム、酸化イリジウム、希土類酸化物、酸化マンガン、もしくは銀、白金、ルテニウムを少なくとも含む合金などが用いられる。また、正極8には、PTFE樹脂粒子を含む。
【0020】
アルカリ燃料電池の電解質としては、液状のものであればいずれも用い得るが、特にアルカリ水溶液が好適に用いられる。電解質としてのアルカリ水溶液としては、例えば、KOH、NaOHおよびLiOHなどのアルカリ金属の水酸化物を濃度20〜40質量%程度水に溶解したものが好ましく、複数のアルカリ金属の水酸化物を含んでいる混合電解質も用いることができる。
【0021】
上記電解質を保持して電解質層を構成するため、正極8と負極10との間にセパレータ9を配置する。セパレータ9の材質は電解質に対して安定であれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の不織布などが用いられる。さらに、電解質溶媒に水を用いる場合、セパレータ9の表面を親水化処理することが好ましい。
【0022】
アルカリ燃料電池の水素供給源としては金属水素化物が用いられるが、その金属水素化物としては、例えば、NaBH4、KBH4、LiAlH4、KH、NaHなどが好適に用いられ、特にNaBH4が好適に用いられる。NaBH4は、水あるいはアルカリ水溶液中で他の金属水素化物より安定であり、また、水素吸蔵合金との反応も穏やかだからである。水素供給源である金属水素化物は、液体電解質に溶解もしくは混合された状態で用いることができる。
【0023】
負極10は、水素吸蔵材料を導電性基体に固着して形成され、燃料を酸化する機能を有している。水素吸蔵材料としては、水素吸蔵合金やカーボンナノチューブなどの炭素材料を用いることができ、特に水素吸蔵合金が適している。その水素吸蔵合金としては特に限定されることはないが、例えば、LaNi5で代表されるAB5型水素吸蔵合金、ZnMn2もしくはその置換体で代表されるAB2型水素吸蔵合金、Mg2Niもしくはその置換体で代表されるマグネシウム系のA2B型水素吸蔵合金、固溶体型バナジウム系水素吸蔵合金などを用い得る。それらの中でも、希土類元素の混合物であるミッシュメタル(Mm)を用い、且つNiの一部をCoなどで置換したMmNi5系のAB5型水素吸蔵合金が特に好適に用いられる。水素の吸蔵・放出能力に優れているからである。
【0024】
負極10の導電性基体としては、電解質に対して耐食性を持つ材料からなり、水素吸蔵材料から電気的な接触が得られる基体であればよく、例えば、ニッケル製もしくはニッケルメッキした鉄製のパンチングメタル、発泡金属体などが用いられる。
【0025】
負極10の水素吸蔵材料を導電性基体に固着させるための結着剤としては、電解質中で化学的に安定で粘着性を有する材料であればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ラテックスなどを用いることができる。
【0026】
上記正極8、上記電解質層を構成するセパレータ9および上記負極10は、空気孔1側から正極8、セパレータ9、負極10の順に積層されて、電極・電解質一体化物を構成している。また、この電極・電解質一体化物は、同一平面上に複数個配置されている。
【0027】
負極10のセパレータ9と反対側には液体燃料4を貯蔵する燃料タンク3が隣接して設けられている。燃料タンク3は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチックや、ステンレス鋼などの耐食性金属から構成されている。ただし、燃料タンク3を金属で構成する場合には、同一平面上に配置されているそれぞれの負極同士が電気的に短絡しないように絶縁体を導入する必要がある。燃料タンク3の負極10と接する部分には燃料供給孔3aが設けられており、この部分から液体燃料4が負極10へと供給される。また、液体燃料4を含浸して保持し且つ負極10に液体燃料4を供給する燃料吸い上げ材5が、負極10と接する部分を含む燃料タンク3の内部に配置されている。これにより、液体燃料4が消費されても、液体燃料4と負極10との接触が維持されるため、液体燃料4を最後まで使い切ることができる。燃料吸い上げ材5としては、ガラス繊維、液体燃料に対して安定なプラスチックなどからなる不織布を用いることができるが、液体燃料の含浸によって寸法が余り変化せず、化学的にも安定なものであれば他の材料を用いてもよい。
【0028】
燃料タンク3は、各電極・電解質一体化物毎に隔壁12により分離されているため、液体燃料4による各セル同士の短絡を防ぐことができる。そのため、電気伝導性を有するアルカリ水溶液に金属水素化物を溶解した液体燃料を用いる場合にも、本発明を適用することができる。
また、各燃料タンク3の間には開閉弁11を設けてあるため、開閉弁11を開くことにより液体燃料4の流通が可能になり、燃料供給時は一つの燃料充填口6bより各燃料タンク3へ燃料を供給することができる。
【0029】
正極8のセパレータ9と反対側にはカバー板2が設けられており、カバー板2の正極8と接する部分には空気孔1が設けられている。これにより、空気孔1を通して大気中の酸素が正極8と接することになる。カバー板2の端部には、カバー板2と燃料タンク3を貫通する構造を持つ気液分離孔兼燃料充填口6bが設けられている。この気液分離孔兼燃料充填口6bの燃料タンク3と反対側には脱着可能な気液分離膜6aが設けられている。この気液分離膜6aは細孔を持つPTFE製シートからなり、負極と金属水素化物が反応して放電した後に使用されなかった水素などを、燃料を漏液させることなく燃料タンク3から放出させることができる。また、気液分離膜6aを脱着可能とすることで、気液分離孔兼燃料充填孔口6bから燃料を補充することができる。気液分離孔兼燃料充填口6b、カバー板2、および空気孔1は、例えば、燃料タンク3と同様の材料から構成されている。
【0030】
正極8から、隣接する電極・電解質一体化物の負極10までの間には集電体7が設置されており、正極8と隣接する電極・電解質一体化物の負極10とは電気的に接続されている。集電体7は隣接する電極・電解質一体化物を電気的に直列に接続する役割を持ち、同一平面上に並べられた全ての電極・電解質一体化物は集電体7によって電気的に直列に接続される。集電体7は、例えば、白金、金などの貴金属や、ニッケルまたはニッケルメッキをした耐食性金属、またはカーボンなどから構成されている。
【0031】
(実施形態2)
図2に本発明の実施形態2の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態は、燃料タンク3の上部および下部を対称に形成したこと以外は、実施形態1と同様の構造である。
【0032】
(実施形態3)
図3に本発明の実施形態3の液体燃料電池の断面図を示す。本実施形態は、実施形態1の液体燃料電池を空気孔1およびカバー板2が向かい合うように2つ重ねた構造である。向かい合う空気孔1およびカバー板2の間には空気が拡散するための隙間を設けてある。集電体7はすべての電極・電解質一体化物が電気的に直列になるように接続されている。また、すべての燃料タンク3の間も開閉弁11を備えたバイパスにより接続され、開閉弁11を開くことにより液体燃料4の流通が可能になっている。本実施形態の他の構成は実施形態1とほぼ同様である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、酸素を還元する正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた電解質層とを備えると共に、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、前記正極と、前記負極と、前記電解質層とが電極・電解質一体化物からなる単電池を構成し、前記単電池を同一平面上に複数個配置し、各単電池を電気的に直列に接続し、前記液体燃料貯蔵部を前記単電池毎に隔壁により分離することによって、小型で且つ安定的に発電することのできる液体燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の液体燃料電池の断面図である。
【図2】本発明の実施形態2の液体燃料電池の断面図である。
【図3】本発明の実施形態3の液体燃料電池の断面図である。
【符号の説明】
1 空気孔
2 カバー板
3 燃料タンク
3a 燃料供給孔
4 液体燃料
5 燃料吸い上げ材
6a 気液分離膜
6b 気液分離孔兼燃料充填口
7 集電体
8 正極
8a 気液分離シート
8b カーボン層
9 セパレータ
10 負極
11 開閉弁
12 隔壁
Claims (4)
- 酸素を還元する正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた電解質層とを備えると共に、金属水素化物を溶解させたアルカリ水溶液を液体燃料とし、前記液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を備えた液体燃料電池であって、
前記正極と、前記負極と、前記電解質層とが電極・電解質一体化物からなる単電池を構成し、
前記単電池が同一平面上に複数個平面的に配置され、各単電池が電気的に直列に接続され、
前記液体燃料貯蔵部が、前記各単電池の負極に隣接して設けられ、かつ前記単電池毎に隔壁により電気的に絶縁され、前記液体燃料が相互に流通しないよう構成されていることを特徴とする液体燃料電池。 - 前記液体燃料貯蔵部の隔壁には、分離された液体燃料貯蔵部をそれぞれ連通させ、液体燃料を相互に流通させることができる開閉弁が設けられている請求項1に記載の液体燃料電池。
- 前記液体燃料貯蔵部が、気液分離膜を配置した気液分離孔を備えている請求項1に記載の液体燃料電池。
- 前記液体燃料を含浸して保持し且つ前記負極に前記液体燃料を供給する液体燃料含浸部を備え、前記液体燃料含浸部が前記負極と接する部分に配置されている請求項1に記載の液体燃料電池。
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