JP2004184122A - X線ct装置における中心軸較正治具およびこの治具を用いた較正方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X線吸収率の低い材質からなる柱状体2の長手方向に沿って、互いに交差する2面2a,2bを有してなる切り欠き部2cを形成し、その二面の交線2dに沿ってX線吸収率の高い金属製のワイヤ3を固着することにより、両端部のみを孔に通してワイヤを支持している従来の治具に比して、ワイヤ3の真直度および基準面に対する直角度を容易に高精度化することを可能とする。較正に際しては、柱状体2を支持する微動機構1によりワイヤ3のセンタリングを行ってからデータを採取することで、回転中心軸投影位置座標の推定精度を高精度化する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用のX線CT装置にけおけるターンテーブルの回転中心軸の座標情報を得るための較正治具と、その較正治具を用いてX線CT装置のターンテーブルの回転中心軸の座標情報を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用のX線CT装置においては、一般に、図6にその構成例を模式的に示すように、X線管61とX線検出器62の間に、測定対象物Wを搭載して、X線光軸L(x軸方向)に直交する方向(z軸方向)に沿った回転中心軸Rの回りに回転させるためのターンテーブル63が配置され、ターンテーブル63を360°にわたって回転させながら収集したX線投影データをもとに、測定対象物Wの断層像を再構成する。
【0003】
このようなX線CT装置においては、ターンテーブル63の回転中心軸RのX線検出器62上への投影位置の座標情報を得ることが必須となる。この回転中心軸投影位置情報を得るために、従来、図7に模式的な外観図を示すように、アクリル樹脂などのX線を透過させやすい材料からなる支持部材71の内部に、タングステンなどのX線吸収率の高い材料からなるワイヤ(インサート)72を配置した構造の中心軸較正治具(ファントム)が多用されている。この中心軸較正治具をターンテーブル63上に載せて回転させながら、そのX線透過データを採取することによって、ターンテーブル63の回転中心軸RのX線検出器62の受光面上への投影座標を算出することができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
従来の中心軸較正治具の構造をより具体的に述べると、図7において、支持部材71はパイプ71aの両端に蓋体71b,71cを装着するとともに、これらの蓋体71b,71cの中心にそれぞれ孔Hを開け、その孔Hにタングステン等からなるワイヤ72を通す構造となっている。
【0005】
また、較正方法については、通常、ターンテーブル63を回転させつつ、各回転位置において図8(A)に例示するように刻々とX線透過像を撮像し、その各回転位置におけるX線透過像の所定高さの位置において、同図(B)に示すようなラインプロファイルを形成して、1回転中におけるラインプロファイルの振れの中心を回転中心軸の投影位置座標として求める方法が一般的である。
【0006】
ここで、中心軸較正治具に要求される機能は、以下に示す通りである。
(1)中心軸較正治具をターンテーブル63の定位置に位置決めしたとき、真の回転軸にできるだけ近い場所にワイヤ72が位置すること、つまりターンテーブル63を回転させたときのインサート72の像の振れが小さいこと。
(2)ワイヤ72は真直かつ鉛直に立っていること。
(3)ワイヤ72の外側には何もないかX線吸収率の非常に低い材料のみが存在していること。
(4)収集したX線透過像のプロファイルにおいてワイヤ72の影が十分に細く、中心を特定しやすいこと。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−201918号公報(第6−第7頁、図2))
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年における産業用X線CT装置の技術的進歩により、拡大率が大きくできるようになってきている。これにより、従来から用いられていた中心軸較正治具の構造では、その要求される精度を実現することが難しくなってきている。
【0009】
すなわち、拡大率が高くなると、ワイヤ72の径も細くする必要があり、なおかつ、ワイヤ72の真の回転軸に対するずれ量(回転時における振れ量)もより小さくする必要が生じる。これは、拡大率が高くなることにより、X線投影像の1画素の大きさが相対的に小さくなることに起因する。つまり、同じ太さのワイヤ72を用い、同じ振れ量であっても、拡大率が大きくなると投影像状では拡大率に比例してワイヤ径並びに振れ量が大きくなるためでる。
【0010】
現時点において要求されるワイヤ72の直径は100μm程度程度になってきており、前記した図7に示した従来の構造の中心軸較正軸では、要求される機能を満たすことが困難となってきている。
【0011】
すなわち、図9に誇張して示すように、蓋体71b,71cの中心部に直径100μmの孔Hを開けることが困難であり、このため、各孔Hの径はそれよりも大きくなってしまう。このため、ワイヤ72の両端部をこれらの孔Hに取り付ける際に孔Hの中心とワイヤ72の中心とが一致せず、このことが中心軸較正治具をターンテーブル63上の定位置に位置決めしても、ワイヤ72が心振れする原因となる。また、上下の孔Hの中心に対するワイヤ72の中心のずれる方向が相違することにより、ワイヤ72の鉛直度が悪化する。加えて、ワイヤ72として多用されているタングステンワイヤ等は硬く、しかも巻きぐせなどがついているため、その長手方向に引っ張って曲がりを直すことが困難である。
【0012】
このようなことから、ワイヤ72は図10に座標で示すように、中心軸較正治具をターンテーブル63上の定位置に位置決めしても、X線光軸方向であるx軸並びに水平面上でそのx軸に直交するy軸の座標はいずれも0ではなく、かつ、回転中心軸方向であるz軸に対して角度αを以て傾いた状態となり、正確に中心軸投影位置を求めることができなくなってきている。
【0013】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、直径100μm以下の細いタングステン等の金属製ワイヤを曲がりなく真直に、しかも基準面に対して正しく直交して装着することが容易な構造をもつ中心軸較正治具と、その治具を用いてX線CT装置のターンテーブルの回転中心軸の投影位置を正確に推定することのできる較正方法の提供を目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のX線CT装置における中心軸較正治具は、X線の吸収率の低い樹脂製の柱状体の長手方向に沿って、互いに交差する2面を有してなる切り欠き部が形成され、その2面の交線に沿ってX線吸収率の高い金属製のワイヤが固着されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0015】
ここで、本発明の中心軸較正治具においては、上記柱状体が、当該柱状体を上記ターンテーブルの表面に沿って微動させる金属製の微動機構の上に配置された構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0016】
一方、本発明の中心軸較正方法は、請求項2に記載の中心軸較正治具をX線CT装置のターンテーブル上に載せた状態で、そのワイヤのX線透過像のターンテーブルの回転による振れ量が小さくなるように上記微動機構を調整した後、回転中心軸投影位置の座標を求めるためのX線透過情報を収集することによって特徴づけられる(請求項3)。
【0017】
本発明の中心軸較正治具は、タングステンなどの金属製のワイヤを交差する2面の交線に沿って配置することにより、ワイヤの真直度並びにターンテーブル表面(換言すれば治具のターンテーブルへの搭載面)に対する直角度を容易に高精度化することを可能とするものである。
【0018】
すなわち、互いに交差する2面の交線に沿ってワイヤを固着することにより、ワイヤはその全長にわたってガイドされた状態となり、この交線の真直度およびターンテーブル表面に対する直角度さえ良好であれば、細いワイヤを用いてターンテーブルに対して直角に、かつ、ワイヤ自体の曲がりを容易に矯正して真直に位置させることができる。ここで、柱状体は、従来の較正治具と同様にX線透過率の低いアクリル樹脂などが用いられ、金属に比して加工精度を向上させることが容易ではないのであるが、本発明の構成によれば、切り欠き部を形成する互いに交差する2つの面それぞれの底面に対する直角度さえでていれば、ワイヤを底面に対して直角に、かつ、真直に支持することが可能となり、比較的容易に高精度化することができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明のように、柱状体を微動機構の上に配置してターンテーブルの表面に沿って微動させ得るように構成すれば、較正治具をターンテーブルに位置決めした状態で、更にワイヤの水平方向への位置を微調整することによって、ターンテーブルの回転中心軸により接近させることが可能となる。この微動機構を金属製とすることにより、比較的容易に高精度の加工を行うことができ、高い精度でワイヤの位置決めを行うことができる。
【0020】
本発明の回転中心軸の較正方法によると、請求項2に係る発明の較正治具を用いることにより、細いワイヤをターンテーブルに対して直角に、かつ、真直に位置させることができることに加えて、ターンテーブルを回転させながらその回転中心軸にワイヤの位置を接近させるべく微動機構を調整した後、回転中心軸の投影位置を求めるためのX線透過情報を得るため、ワイヤをターンテーブルの回転中心軸に対して可及的に接近させた状態で較正のためのデータを得ることが可能となり、較正精度を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の中心軸較正治具の実施の形態の外観斜視図である。
【0022】
金属製のxyステージ1のステージ板1aの上面に、アクリル等のX線吸収率の低い樹脂からなる柱状体2が固定されている。xyステージ1は、ステージ板1aをx方向ガイド板1bによって支持し、そのx方向ガイド板1bをy方向ガイド板1cによって支持した公知のものであって、x方向つまみ1xおよびy方向つまみ1yを回動させることによって、ステージ板1aを水平面上で互いに直交するx方向およびy方向に独立的に微動させることができる。
【0023】
この例における柱状体2は、角柱の一角部に互いに交差する2つの面2つの平面2a,2bからなる切り欠き部2cを形成したものであって、その2つの面2a,2bの交線2dに沿って、タングステン等のX線吸収率の高い金属からなるワイヤ3が固着されている。このワイヤ3の線径としては、100μm程度のものが用いられる。
【0024】
柱状体2の切り欠き部2cを形成する2つの平面2a,2bは、xyステージ1のステージ板1aに対していずれも直交しており、従って、これらの平面2a,2bの交線2dもステージ板面1aに直交し、また、この交線2dは一直線状に伸びている。これにより、交線2dに沿って固着されたワイヤ3は、xyステージ1のステージ板1aに対して直交し、かつ、真直に伸びている。
【0025】
以上の実施の形態を実際に製造し、そのワイヤ3の位置決め精度を検証すべく、X線CT装置のターンテーブル上に載せてX線を照射することによってその透過像を得ながら、ターンテーブルを回転させてワイヤ3の像の左右への振れを計測したところ、片側の振れ量が線径以下、つまり両側で±100μm以下に抑え得ることが確認された。また、ワイヤ3の姿勢精度を検証すべく、同じくX線CT装置のターンテーブル上に載せ、ターンテーブルを上下方向に移動させ、X線透過像の一定の位置におけるワイヤ3の像の移動量を計測したところ、左右方向への移動量が片側で線径以下、つまり両側で±100μm以下であることが確認された。
【0026】
次に、以上の本発明の実施の形態の較正治具を用いたX線CT装置のターンテーブルの回転中心軸の投影位置を求めるための較正方法について述べる。
【0027】
図2に示すように、X線管11とX線検出器12の間に配置されてz軸に沿った回転中心軸Rを有するターンテーブル13の上に、上記した実施の形態の較正治具Jを搭載する。その状態でターンテーブル13を回転させながらX線を照射して、X線透過情報を採取し、ワイヤ3の振れの量と、回転中心軸Rに対するワイヤ3の位置ずれの方向を計測する。その計測結果に基づき、ターンテーブル13を停止し、かつ、X線の照射を停止して、xyステージ1のx方向つまみ1xないしはy方向つまみ1yを操作して、ワイヤ3のセンタリングを行う。1回もしくは数回にわたってこの作業を行うことにより、ワイヤ3は回転中心軸Rに対して極めて接近した状態となる。そのセンタリングの後、ターンテーブル13を回転させながらX線を照射し、回転中心軸Rの投影位置を推定するための情報としてワイヤ3のX線透過情報を刻々と採取する。このX線透過情報を用いて、前記した従来の手法、つまり各回転位置におけるワイヤ3のX線透過像のラインプロファイルを求め、その振れの中央位置を算出し、回転中心軸Rの投影位置座標を求める。
【0028】
以上の較正方法によると、ワイヤ3の線径が100μm程度と細く、しかもそのワイヤ3がxyステージ1のステージ板1aに対する直角度、従ってターンテーブル13の回転中心軸Rに対する平行度が±100μm以下と高く、更にワイヤ3の真直度が高く、加えて回転中心軸Rに対する位置ずれを極めて少なくすることができるため、回転中心治具Rの投影位置座標を高い精度のもとに推定することができる。
【0029】
ここで、上記した実施の形態では、柱状体2として角柱を用い、これを一般的なxyステージ1の上に載せた例を示したが、柱状体2は円柱であってもよく、また、その柱状体2をxy方向に微動させる機構は他の公知の構造を採用することもできる。
【0030】
図3は本発明の較正治具の他の実施の形態の外観図であり、図4はその拡大平面図である。この例は、円柱からなる柱状体20を用い、その柱状体20に先の例と同様の互いに交差する2つの平面20a,20bからなる切り欠き部20cを形成し、平面20a,20dの交線20dに沿ってワイヤ30を固着している。
【0031】
そして、以上の柱状体20を、金属製のパイプからなる基台10内に挿入し、そのパイプ状の基台10には、互いに90°の間隔を開けて4つの調整ネジ(押しネジ)10a〜10dをねじ込み、これらによって柱状体20をx,y方向に微動させることができるようになっている。なお、柱状体20の基台10内への挿入部位は円筒形となっている。そして,この柱状体20の底面がターンテーブル13に密着した状態を保つことによって、調整ネジ10a〜10dを適宜に回動させても柱状体20の姿勢、従ってワイヤ30の姿勢を維持することができるようになっている。このような構成によっても、先の実施の形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0032】
また、以上の各実施の形態は、X線CT装置のターンテーブルに設けた突起などにいずれかの面を当接させることによって位置決めしてもよいし、あるいは図5に正面図を示すように、基台10の底面に位置決め用の円柱部10eを突出させる一方、ターンテーブル13に嵌合孔13aを形成してもよい。このような構成により、較正治具自体とターンテーブル13との位置決め精度が向上し、微動機構ないしはxyステージによるワイヤの位置の微調整作業を軽減させることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明の較正治具によれば、X線吸収率の低いアクリル等の樹脂からなる柱状体に、互いに交差する2つの面からなる切り欠きを形成し、その2つの面の交線に沿って、X線吸収率の高いタングステンなどの金属製のワイヤを固着した構造を有しているため、従来の較正治具に比して、ワイヤの線径を従来よりも細くしても、ワイヤ自体の曲がりを矯正して容易に真直とすることができるとともに、柱状体の底面に対してワイヤを容易に直角にすることができる。その結果、X線CT装置のターンテーブルの回転中心軸の投影位置を推定するためのX線透過データを高い精度で採取することができ、ひいては回転中心軸の投影位置の推定結果を高精度化することができる。
【0034】
また、本発明の回転中心軸の較正方法によると、上記した柱状体をターンテーブル上で水平面に沿って位置調整を行うことにより、ワイヤの位置を可及的に回転中心軸に接近させた後、回転中心軸の投影位置を推定するためのX線透過データを採取するので、拡大率を大きくしても推定演算に含まれる誤差を可及的に少なくして高精度の推定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の外観斜視図である。
【図2】図1の実施の形態を用いてX線CT装置のターンテーブルの回転中心軸の投影位置を推定すべく較正する方法の説明図である。
【図3】本発明の較正治具の他の実施の形態の外観図である。
【図4】図3の実施の形態の拡大平面図である。
【図5】本発明の較正治具の更に他の実施の形態の正面図である。
【図6】X線CT装置の一般的な構成例の模式的説明図である。
【図7】X線CT装置の中心回転軸の従来の較正治具の例を示す模式図である。
【図8】X線CT装置の中心回転軸の従来の較正方法の説明図で(A)は較正治具のX線透過像を示す図であり、(B)はそのラインプロファイルの例を示す図である。
【図9】従来の較正治具のワイヤが傾斜や位置ずれを生じる原因の説明図である。
【図10】従来の較正治具のワイヤの位置並びに姿勢を誇張して示すグラフである。
【符号の説明】
1 xyステージ
1a ステージ板
1x x方向つまみ
1y y方向つまみ
10 基台
2,20 柱状体
2a,2b,20a,20b 平面
2c,20c 切り欠き部
2d,20d 交線
3,30 ワイヤ
11 X線管
12 X線検出器
13 ターンテーブル
J 較正治具
R 回転中心軸
Claims (3)
- X線CT装置のターンテーブル上に搭載して回転させつつX線透過情報を収集することによって、当該ターンテーブルの回転中心軸投影位置の座標を求めるための治具であって、
X線の吸収率の低い樹脂製の柱状体の長手方向に沿って、互いに交差する2面を有してなる切り欠き部が形成され、その2面の交線に沿ってX線吸収率の高い金属製のワイヤが固着されていることを特徴とするX線CT装置における中心軸較正治具。 - 上記柱状体が、当該柱状体を上記ターンテーブルの表面に沿って微動させる金属製の微動機構の上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線CTにおける中心軸較正治具。
- 請求項2に記載の中心軸較正治具をX線CT装置のターンテーブル上に載せた状態で、そのターンテーブルを回転させながら刻々の金属製のワイヤのX線透過像を得て、そのワイヤのX線透過像のターンテーブルの回転による振れ量が小さくなるように上記微動機構を調整した後、回転中心軸投影位置の座標を求めるためのX線透過情報を収集することを特徴とするX線CT装置における中心軸較正方法。
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