JP2004183097A - マルエージング鋼の製造方法及びマルエージング鋼 - Google Patents

マルエージング鋼の製造方法及びマルエージング鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】 真空再溶解を行って得られるマルエージング鋼中に残留する、Al2O3介在物の大きさを少量にできるマルエージング鋼の製造方法と、Al2O3介在物を低減したマルエージング鋼を提供する。
【解決手段】 真空再溶解用の消耗電極を製造し、該消耗電極を用いて、真空再溶解を行うマルエージング鋼の製造方法において、前記消耗電極はMgを5ppm以上含有するマルエージング鋼の製造方法であり、少なくともMg:10ppm未満(0は含まず)、酸素:10ppm未満、窒素:15ppm未満を含有したマルエージング鋼であって、該マルエージング鋼は、10μm以上のスピネル型介在物と10μm以上のAl2O3介在物の総量に対して、10μm以上のスピネル型介在物が33%を超えるマルエージング鋼である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マルエージング鋼の製造方法及びマルエージング鋼に関するものである。
マルエージング鋼は、2000MPa前後の非常に高い引張強さをもつため、高強度が要求される部材、例えば、ロケット用部品、遠心分離機部品、航空機部品、自動車エンジンの無段変速機用部品、金型、等種々の用途に使用されている。
このマルエージング鋼は、通常、強化元素として、Mo、Ti、を適量含んでおり、時効処理を行うことによって、NiMo、NiTi、FeMo等の金属間化合物を析出させて高強度を得ることのできる鋼である。このMoやTiを含んだマルエージング鋼の代表的な組成としては、質量%で18%Ni−8%Co−5%Mo−0.45%Ti−0.1%Al−bal.Feが挙げられる。
しかし、マルエージング鋼は、非常に高い引張強度が得られる一方、疲労強度に関しては必ずしも高くない。この疲労強度を劣化させる最大の要因に、TiNやTiCN等といった窒化物や炭窒化物の非金属介在物があり、この非金属介在物が鋼中で大きく成長してしまうと、介在物を起点として疲労破壊を生じることになる。
そのため、一般的に鋼中に存在する非金属介在物を少なくするために、真空アーク再溶解(以下、VARと記す)法が用いられている。
このVAR法で製造されるマルエージング鋼は、均質(成分偏析が少ない)でしかも、非金属介在物の量が少なくなると言った利点を有するものである。
しかしながら、VAR法で製造するマルエージング鋼にも、比較的大きなTiNやTiCN等の窒化物や炭窒化物の非金属介在物が残留し、残留した大きな非金属介在物は、VAR後に行う熱間鍛造、熱処理、熱間圧延、冷間圧延を行った後の素材中にもそのまま残留し、残留する大きな非金属介在物を起点とした疲労破壊を生じる原因となっていた。
この問題に対しては種々の提案がなされており、例えば特開2001−214212号(特許文献1参照)に、TiN系介在物を含まない含Ti鋼用原材料を真空誘導炉で溶解し、鋳造して製造した含Ti鋼材を電極として真空アーク溶解法で再溶解するTiN系介在物を微細にする含Ti鋼の製造方法がある。
特開2001−214212号公報
本発者等は、マルエージング鋼の清浄度を更に向上させる検討を行った。上記の特開2001−214212号では、TiNやTiCNと言った窒化物系非金属介在物に着目したものであるが、実際にはマルエージング鋼中には窒化物系非金属介在物の他にも、Al介在物も確認された。
ところで、マルエージング鋼は、2000MPa前後の非常に高い引張強さを有する反面、残留する非金属介在物を起点として10回を超える高疲労領域において非金属介在物を起点とした疲労破壊が問題となる。特に、マルエージング鋼を薄帯とした場合は、非金属介在物の破壊による伝播によって薄帯の破断の危険性が大きくなる。
この非金属介在物による疲労破壊は、非金属介在物の大きさにより決定付けられるものであり、マルエージング鋼の用途が薄い帯材の場合であれば、非金属介在物の種類に左右されることなく、その存在自身が10回を超える高疲労領域での使用には大きな問題となる。
そして、TiNやTiCNの窒化物系非金属介在物と比べると、低減される試みが殆どなされていないAl介在物の残留は、高疲労強度が求められるマルエージング鋼にとって、疲労強度向上を実現するために残された大きな課題となる。
本発明の目的は、真空再溶解を行って得られるマルエージング鋼中に残留する、Al介在物の大きさを小さくできるマルエージング鋼の製造方法と、Al介在物を低減したマルエージング鋼を提供することである。
真空再溶解法のうち、例えばVARを行うことによって、均質で非金属介在物の量を低減できるという利点があり、この利点を損なうことなく、窒化物や炭窒化物の非金属介在物の大きさを小さくすることが可能であることから、真空再溶解法を適用することを必須として、更にAl介在物を少なくする方法について鋭意検討を行った。
その結果、マルエージング鋼中に残留するAl介在物には、造塊中に生成した20μmを超えるような大きさのもが多数残留していることを知見した。
そして、本発明者等は、このAl介在物を少なくする方法を鋭意検討した結果、消耗電極中に特定量のMgを含有させ、真空再溶解とを組合せることでAl介在物の大きさを小さくできることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、真空再溶解用の消耗電極を製造し、該消耗電極を用いて、真空再溶解を行うマルエージング鋼の製造方法において、前記消耗電極はMgを5ppm以上含有するマルエージング鋼の製造方法である。
好ましくは、真空再溶解用の消耗電極は、真空誘導溶解法で製造するマルエージング鋼の製造方法である。
更に好ましくは、上述の真空再溶解法は真空アーク再溶解法であるマルエージング鋼の製造方法である。
また本発明は、上述した真空再溶解後に、塑性加工により厚さ0.5mm以下の薄帯とするマルエージング鋼の製造方法である。
また本発明は、少なくともMg:10ppm未満(0は含まず)、酸素:10ppm未満、窒素:15ppm未満を含有したマルエージング鋼であって、該マルエージング鋼は、10μm以上のスピネル型介在物と10μm以上のAl介在物の総量に対して、10μm以上のスピネル型介在物が33%を超えるマルエージング鋼である。
好ましくは、上述したマルエージング鋼は、酸化物系非金属介在物の最大長さが20μm以下であるマルエージング鋼である。
また上述した本発明のマルエージング鋼の好ましい化学組成は、マルエージング鋼は、Mg:10ppm未満(0は含まず)、酸素:10ppm未満、窒素:15ppm未満の化学組成に加えて、質量%で、C:0.01%以下、Ni:8.0〜22.0%、Co:5.0〜20.0%、Mo:2.0〜9.0%、Ti:2.0%以下、Al:1.7%以下、残部は実質的にFeからなるマルエージング鋼である。
また上述した本発明のマルエージング鋼は、厚さが0.5mm以下の薄帯であるマルエージング鋼である。
マルエージング鋼の酸化物系非金属介在物を小さくすることが可能であるという効果を得ることができ、優れた疲労強度を有するものとするマルエージング鋼を得ることができる。
本発明の最大の特徴は、VARや真空ESR等の真空再溶解に用いる電極中に特定量のMgを添加したことにある。なお、本発明で真空再溶解とは真空排気を行いながら、再溶解を行うものである。以下に本発明を詳しく説明する。
先ず、例えば真空誘導溶解(以下、VIMと記す)で真空再溶解用の電極を作成する場合、消耗電極中の酸化物系非金属介在物として、Al介在物が生成される。これを、そのまま例えばVARを行うと、その鋼塊中にはAl介在物が凝集した形態の20μmを超える大きなAl介在物が残留することになる。
これを防ぐためには、例えばVIMで製造する消耗電極中に大きなAl介在物の生成を防止することが必要となる。
上述の20μmを超えるような大きなAl介在物の生成を防止するには、VIMによって酸素含有量を低減させる効果を有する元素の添加が効果的である。本発明では、酸素含有量を低減させる効果を有する元素としてMgを選択した。このMg添加による効果は以下の通りである。
Mgを適量添加すると例えばVIMで製造する消耗電極中の酸化物系非金属介在物はAlよりも親和力の高いMgと結びついてMgOを主体とするMgO系非金属介在物が生成する。MgOの凝集性はAlより弱いため、大きなAl介在物の生成を防止することができる。これがMgを添加した時の効果の第一である。
更に、Mgを添加しない場合、溶湯中のOはAlと結びついてAl介在物となるが、Mgを添加すると、本来、Alと結びついていたOがMg及びAlと結びついて、MgOとなったり、Al−Mg−O系(MgO・Al)のスピネル型介在物となる。この時点で、Al非金属介在物の量自体が少なくなる。これがMgを添加した時の効果の第二である。
なお、本発明で言うAl介在物とは、組織中の非金属介在物を例えばEDX(エネルギー分散型エックス線分析装置)で定性/定量分析を行った時、非金属介在物を構成するガス成分のうち、O(酸素)ピークが主体となって検出され、O以外の検出された元素のうち、Alが85mass%以上となる非金属介在物を言う。
また、スピネル系の介在物とは、非金属介在物を構成するガス成分のうち、O(酸素)ピークが主体となって検出され、O以外の検出された元素のうち、Alが85mass%未満であり、Mgが検出される非金属介在物を言う。
次に、上述のMgを含有させた消耗電極を用いて再溶解を行う。
真空再溶解法では、消耗電極中に存在するMgOは蒸発するか、蒸発しない一部のMgOは、MgとOとに分解してスピネル型の酸化物系非金属介在物となるか、僅かにMgOとして残存することもある。
この真空再溶解時に新たに生成されるMgO・Alのスピネル型介在物は、Mg添加による電極酸素濃度の低減効果、真空溶解時のMg蒸発に伴うMgOの分解よって、20μm以下の微細な介在物となるし、新たにAl介在物として生成されるものでも、O量の低減により20μm以下の微細なものとなるのである。
また、僅かに残存するMgOは、その硬さが軟らかく、真空再溶解後に行う塑性加工によって、伸展され、引き千切られた状態となって数μm程度の微細なものとすることが可能となる。
そして、本発明において、上述のAl介在物やスピネル型介在物を小さく、しかも大きな非金属介在物自体を少なくする効果を得るためには、消耗電極にMgを5ppm以上含有させる必要がある。消耗電極中のMgが5ppm未満である場合、上記の効果は得られないため、本発明では消耗電極中のMgを5ppm以上と規定した。
望ましい消耗電極でのMg濃度の上限は靭性を考慮すると50ppm以下であり、5〜50ppmであれば上記の効果が得られるので上限は50ppmとすると良い。
但し、揮発性の強いMgのVIMでの添加は歩留が低く経済的でなく、またMgは真空再溶解で激しく蒸発し、操業を害するだけでなく鋼塊肌を悪くする場合があることからMg濃度の好ましい上限は35ppmとすると良い。より好ましい範囲は15〜35ppmの範囲である。
なお、付け加えとくと、上述の消耗電極の窒化物、炭窒化物を微細にする方法として、
(1)電極鋼塊製造時の凝固速度を高めること、
(2)電極鋼塊の窒素濃度を下げること、
(3)電極中に存在する窒化物や炭窒化物の非金属介在物の大きさを、最長で10μm以下に調整すること、
以上のような製造方法を単独若しくは幾つかを組合せて適用すれば、TiNやTiCN等の窒化物や炭窒化物の大きさも低減させることができ、特に望ましい。
なお、この消耗電極を製造する方法としてVIMを例として前述したが、マルエージング鋼のような極低C鋼の消耗電極の製造にはVIMが好適であり、VIMを適用すれば大気中の酸素、窒素と溶鋼との反応による鋼中の酸化物、窒炭化物の増加を避ける点、酸素と活性なMgを安定して溶鋼中に添加するのに有利である点、原料から不可避的に混入する酸素、窒素を除去できる機能を有している点から消耗電極の製造に最適であるためである。なお、同様の機能すなわち大気による溶鋼の汚染を防止でき、Mgを添加できる機能を有している溶解設備であればVIMの代わりとすることもできる。
以上、説明する製造方法を適用して得られるマルエージング鋼は、ロケット用部品、遠心分離機部品、航空機部品、自動車エンジンの無段変速機用部品、金型、等種々の用途の使用に耐え得るスピネル介在物やAl属介在物の最大長さを20μm以下にすることができ、高疲労強度を有するマルエージング鋼となる。
このうち、自動車エンジンの無段変速機用部品に適用する場合、熱間圧延や冷間圧延等の塑性加工により、0.5mm以下の薄帯とすると、高疲労強度を有する無段変速機用部品用マルエージング鋼薄帯として特に好適である。
なお、更に本発明の製造方法に、上述の窒化物、炭窒化物を微細にする方法や、例えば特開2001−214212号に開示される方法等を組合せると、窒化物及び炭特化物の大きさも小さくすることができ、特に望ましい。
上述した本発明の製造方法を適用したマルエージング鋼では、Mgの積極添加により、従来のマルエージング鋼では見られない特徴的な酸化物系非金属介在物の形態となる。
具体的には、非常に僅かではあり例えば電子顕微鏡観察でも容易に発見することはできないが、MgO単独の非金属介在物が存在したり、10μm以上のスピネル型介在物と10μm以上のAl介在物の総量(個数)に対して、10μm以上のスピネル型介在物が33%を超える。
これは、消耗電極製造時にMgを積極添加しないものでは、Al介在物が約80%(残部はスピネル型介在物)確認できるが、本発明の製造方法を適用すると10μm以上のスピネル型介在物と10μm以上のAl介在物の総量に対して、10μm以上のスピネル型介在物が33%を超える点で、非常に特徴的である。より好ましい範囲は10μm以上のスピネル型介在物が50%以上の範囲であり、更に好ましくは70%以上の範囲である。
なお、10μm以上の介在物としているのは、この範囲が疲労強度に特に影響を及ぼす可能性のある大きさの介在物であることと、余りにも小さな介在物は正確に個数の確認のするのが困難であるためである。
また、上述のスピネル型介在物とAl介在物の比に加えて、本発明の製造方法を適用したものでは、Mg添加量の調整やVIM、VAR等を組合せることで酸化物系非金属介在物の最大長さを20μm以下とすることができる。
酸化物系非金属介在物の最長長さが20μm以下とすると、疲労破壊の起点となる危険性も低減でき、高疲労強度を有する無段変速機用部品用マルエージング鋼薄帯として特に好適となる。
なお、本発明で言う最大長さとは、非金属介在物に外接する円の直径で評価し、この外接する円の直径を非金属介在物の最長の長さと定義する。
本発明で言うマルエージング鋼とは、Niを質量%で8〜25%含有する超強力鋼を言う。以下に、本発明のマルエージング鋼の好ましい組成範囲の限定理由について述べる。特に指定がない限り、質量%として示す。
先ずは、必須で規定するMg、O(酸素)、N(窒素)の限定理由から述べる。
Mgは、本発明で電極製造時に必須で添加されるもので、真空再溶解後のマルエージング鋼とした時にも必須成分として残留する。しかしながら、Mgが10ppm以上残留すると、製品としてのマルエージング鋼や塑性加工を行う素材としてのマルエージング鋼として、Mgの過度の残留は靭性の点から好ましくなく、本発明の真空再溶解を適用してMgを10ppm未満まで低減させるのが良い。そのためには、上述のように消耗電極中のMgの上限を50ppm以下に制御するのが良く、真空再溶解後のマルエージング鋼とした時に10ppm未満とすることが必要である。
O(酸素)は、酸化物系非金属介在物を形成するため、10ppm未満に制限する。Oが10ppm以上含有すると疲労強度が著しく低下するため、その含有量を10ppm未満にした。
N(窒素)は、窒化物や炭窒化物系非金属介在物を形成するため、15ppm未満に制限する。Nが15ppm以上含有すると疲労強度が著しく低下するため、その含有量を15ppm未満にした。
次に、上記の化学組成に加えて、好ましい範囲として規定した成分限定理由について述べる。
Cは炭化物を形成し、金属間化合物の析出量を減少させて疲労強度を低下させるため本発明ではCの上限を0.01%以下とした。
Niは靱性の高い母相組織を形成させるためには不可欠の元素であるが、8.0%未満では靱性が劣化する。一方、22%を越えるとオーステナイトが安定化し、マルテンサイト組織を形成し難くなることから、Niは8.0〜22.0%とした。
Coは、マトリックスであるマルテンサイト組織を安定性に大きく影響することなく、Moの固溶度を低下させることによってMoが微細な金属間化合物を形成して析出するのを促進することによって析出強化に寄与するが、その含有量が5.0%未満では必ずしも十分効果が得られず、また20.0%を越えると脆化する傾向がみられることから、Coの含有量は5.0〜20.0%にした。
Moは時効処理により、微細な金属間化合物を形成し、マトリックスに析出することによって強化に寄与する元素であるが、その含有量が2.0%未満の場合その効果が少なく、また9.0%を越えて含有すると延性、靱性を劣化させるFe、Moを主要元素とする粗大析出物を形成しやすくなるため、Moの含有量を2.0〜9.0%とした。
Tiは、Moと同様に時効処理により微細な金属間化合物を形成し、析出することによって強化に寄与する元素であるが、その含有量が2.0%を越えて含有させると延性、靱性が劣化するため、Tiの含有量を2.0%以下とした。
Alは、時効析出した強化に寄与するだけでなく、脱酸作用を持っているが、1.7%を越えて含有させると靱性が劣化することから、その含有量を1.7%以下とした。
なお、本発明ではこれら規定する元素以外は実質的にFeとしているが、例えばBは、結晶粒を微細化するのに有効な元素でるため、靱性が劣化させない程度の0.01%以下の範囲で含有させても良い。
また、不可避的に含有する不純物元素のSi、Mnは脆化をもたらす粗大な金属間化合物の析出を促進して延性、靭性を低下させたり、非金属介在物を形成して疲労強度を低下させるので、Si、Mn共に0.1%以下に、望ましくは0.05%以下とすれば良く、また、P、Sも粒界脆化させたり、非金属介在物を形成して疲労強度を低下させるので、0.01%以下とすると良い。
以下、実施例として更に詳しく本発明を説明する。
マルエージング鋼の代表成分に、Mg含有量を6通りに変化させたVAR溶解用の消耗電極をVIMで製造した。また比較材としてVIMでMg無添加の条件で製造した消耗電極も製造した。消耗電極にはそれぞれ鋳型寸法鋳型比は同一のものを使用した。
VIMでは原料を精選し真空精錬を行ない、酸化物系非金属介在物と同様マルエージング鋼の疲労特性に有害な影響を及ぼすTiCN,TiNといったチタンの炭窒化物の大きさを10μm以下に制御した。
制御の方法は、電極製造時の鋳型比は2.5とし、鋳造後鋳型の衝風冷却によって凝固速度を高めた。なお、原料は窒素含有量が15ppmといった窒素含有量の低い原料を用いた。
これら炭窒化物のための処置に加え、NiMg合金によるMgの添加を行ないVAR造塊に供する電極を製造した。
Mgの添加については、Ni−Mg,Fe−MgをはじめとするMg合金や金属Mgを溶鋼へ直接添加する方法があるが、今回は取り扱いが容易で、Mgの成分調整が容易なことからNi−Mg合金による添加を行った。
これらVIMで製造した電極を同一条件の下でVARを用いて再溶解し、鋼塊を製造した。VARの鋳型はそれぞれ同一のものを用い、真空度は1.3Pa、投入電流は鋼塊の定常部で6.5KAで溶解した。
VIMで製造した消耗電極及びその電極をVARにて真空再溶解して得られた鋼塊の化学組成を表1に示す。なお、消耗電極は「電極」として、VAR後のものは「鋼塊」として示した。
Figure 2004183097
得られたVAR後の鋼塊を1250℃×20時間のソーキングを行なった後、熱間鍛造を行なって熱間鍛造品とした。
次に、これら材料に熱間圧延、820℃×1時間の溶体化処理、冷間圧延、820℃×1時間の溶体化処理と480℃×5時間の時効処理を行ない、厚み0.5mmのマルエージング鋼帯を製造した。
これらマルエージング鋼帯の両端部から横断試料を100g採取し、硝酸溶液または臭素メタノール溶液等で溶解後、フィルターでろ過し、フィルター上の窒化物や酸化物物からなる残渣をSEMで観察を行ない、酸化物系非金属介在物の組成及びサイズを測定した。
これらの非金属介在物のサイズ測定にあたっては非金属介在物に外接する円の直径を非金属介在物のサイズとした。この結果を表2に示す。
Figure 2004183097
表2から、消耗電極Mgの値が5ppmを越えるたものではマルエージング鋼中には20μmを越える酸化物系非金属介在物がなくなり、電極Mg含有量が多くなるに従いその大きさが小さくなることが分かる。
また、酸化物系非金属介在物の組成は本発明によるものでは消耗電極ではスピネル型介在物が主体となっていたが、比較例のものではAl介在物を主体とするものであった。
なお、0.5mmの薄帯の化学組成は表1に「鋼塊」として示したものと同じであり、TiCやTiCNの介在物の最大長さは、何れのものも15μm以下となっていたことを走査型電子顕微鏡観察により確認した。
以上の結果から、本発明のマルエージング鋼は酸化物系非金属介在物を小さくすることができ、更に、TiCやTiCNの介在物の大きさも小さくすることが可能であることも分かり、優れた疲労強度を有するものとなっていることが分かる。
本発明のマルエージング鋼は酸化物系非金属介在物を小さくすることができ、更に、TiCやTiCNの介在物の大きさも小さくすることが可能であることから、非金属介在物の微細化が求められる用途に好適である。
中でも特に疲労強度が重要となる用途に最適であり、本発明のマルエージング鋼整の薄帯は、自動車エンジンの無段変速機用部品として最適である。

Claims (8)

  1. 真空再溶解用の消耗電極を製造し、該消耗電極を用いて、真空再溶解を行うマルエージング鋼の製造方法において、前記消耗電極はMgを5ppm以上含有することを特徴とするマルエージング鋼の製造方法。
  2. 真空再溶解用の消耗電極は、真空誘導溶解法で製造することを特徴とする請求項1に記載のマルエージング鋼の製造方法。
  3. 真空再溶解法は真空アーク再溶解法であることを特徴とする請求項1または2に記載のマルエージング鋼の製造方法。
  4. 真空再溶解した後、塑性加工により厚さ0.5mm以下の薄帯とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマルエージング鋼の製造方法。
  5. 少なくともMg:10ppm未満(0は含まず)、酸素:10ppm未満、窒素:15ppm未満を含有したマルエージング鋼であって、該マルエージング鋼は、10μm以上のスピネル型介在物と10μm以上のAl介在物の総量に対して、10μm以上のスピネル型介在物が33%を超えることを特徴とするマルエージング鋼。
  6. 請求項5に記載のマルエージング鋼は、酸化物系非金属介在物の最大長さが20μm以下であることを特徴とするマルエージング鋼。
  7. 請求項5または6の何れかに記載のマルエージング鋼は、Mg:10ppm未満(0は含まず)、酸素:10ppm未満、窒素:15ppm未満の化学組成に加えて、質量%で、C:0.01%以下、Ni:8.0〜22.0%、Co:5.0〜20.0%、Mo:2.0〜9.0%、Ti:2.0%以下、Al:1.7%以下、残部は実質的にFeからなることを特徴とするマルエージング鋼。
  8. 請求項5乃至7の何れかに記載のマルエージング鋼は、厚さが0.5mm以下の薄帯であることを特徴とするマルエージング鋼。
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