JP2004182893A - セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法、表面鹸化セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学フイルム - Google Patents

セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法、表面鹸化セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学フイルム Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースエステルフイルムを安定して全面均一に鹸化するアルカリ鹸化処理方法を提供すること。表示欠陥のない大きい面積の液晶表示装置用光学補償シートに容易に組み込める表面鹸化セルロースエステルフイルムを提供すること。また、光学補償シートの透明支持体と配向膜との密着性が適切な透明支持体用セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化処理方法を提供すること。
【解決手段】少なくともアルカリ剤及び界面活性剤を含有するpH10以上のアルカリ水溶液を用いて、セルロースアシレートフィルムをアルカリ鹸化することを特徴とするセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法、特にアルカリ水溶液を塗布することによって該フィルムの片側表面を選択的に鹸化するアルカリ鹸化方法、及び該アルカリ鹸化方法によるセルロースアシレートフィルム。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法、鹸化セルロースアシレートフィルム及びそれを用いた光学フイルムに関する。特に、画像表示装置用の偏光、光拡散、光学補償等に有用な光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ワープロ、パソコン、テレビ、各種計器類等に装着されている各種ディスプレイは、その表面のガラスやプラスチック板等の透明保護基板を通して文字や図形等の視覚情報が観察されるようになっている。又、最近では機器類のディスプレイの多くは液晶表示装置になってきている。液晶表示装置は、液晶セル、偏光板、および光学補償シート(位相差板)からなる。透明型液晶表示装置では、2枚の偏光板を液晶セルの両側に取り付け、1枚または2枚の光学補償シートを液晶セルと偏光板との間に配置する。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、1枚の光学補償シート、そして1枚の偏光板からなる。
【0003】
液晶表示装置には、液晶画像を信号通りに表示するために2枚の偏光板が用いられている。偏光板は、通常ヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させ染着させたポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)系フィルムを一定方向に延伸配向させた偏光素子フィルムと該偏光素子フィルムを保護する偏光板用透明保護フィルム等からなっている。
又、保護膜にセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、優れた光学特性を有し、広い波長範囲で高い偏光率を示すと共に、明るさ、コントラストにも優れていることから各種画像表示用の偏光板としても多用されている。
【0004】
光学補償シートは、画像着色を解消したり視野角を拡大するための延伸複屈折フイルムが従来より使用されていた。
又、延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定化することにより形成する。
一般に、光学補償シートに液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることの出来なかった光学特性を実現することが可能となった。
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、液晶セルの表示モードの違いに応じて設計する。光学補償シートには液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの種々の表示モードに対応する様々な光学特性を有する光学補償シートを作りだすことができる。
【0005】
液晶性分子を用いた光学補償シートと偏光膜とを積層して楕円偏光板を形成すれば、光学補償シートを偏光板の一方の透明保護膜としても機能させることができる。その様な楕円偏光板は、透明保護膜、偏向膜、透明支持体、そして液晶性分子から形成された光学異方性層が、この順で積層された層構成を有する。液晶表示装置には薄型で軽量である特性を求められるため、構成要素の1つを兼用(偏光板の透明保護膜と光学補償シート)することによって削減できれば、装置をさらに薄く軽量にすることが可能となる。液晶性分子を用いた光学補償シートの透明支持体と偏光板の一方の保護膜を共通化した一体型楕円偏光板については、例えば、特許文献1〜3に記載がある。
【0006】
前記のような偏光板、光学補償シート等の光学的機能性を有するシート状材料は光学フィルムと呼ばれているが、光学フィルムの透明支持体として、優れた光透過性、光学的な無配向性で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく等の特性を有するセルロースアセテートフイルムに代表されるセルロースエステルフイルムが用いられる。
【0007】
透明支持体のセルロースエステルフイルムに偏光素子や光学補償層が偏光膜や配向膜(通常はポリビニールアルコール)を介して設けられるが、これら偏光膜や配向膜との密着性を持たせるための1つとして、セルロースエステルフイルムをアルカリ水溶液に浸漬処理してその表面を鹸化し親水化する方法(例えば、特許文献4〜8)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの処理液はアルカリ剤のみの水溶液で処理するため疎水的な表面のフィルム表面を均一に鹸化することが困難であった。又、浸漬による鹸化浴処理においては、セルロースエステルフイルムの両面が同時に親水化してしまうため、片面にポリビニールアルコールなどの親水性層を塗設した後にロール状に巻き取ると、表裏が接着してしまう問題が発生する。鹸化浴処理にて、片面のみを親水化する手段としては、目的としない面をラミネートなどの防水加工を施して鹸化処理する方法が挙げられるが、煩雑な工程が増えるばかりでなく、不要な廃棄物が発生するなど、生産性、環境保全の観点で好ましくなかった。
【0009】
一方、アルカリ水溶液に、ポリマーフィルムを溶解したり膨潤させたりしない有機溶媒を含有させたアルカリ溶液を用いてその液に浸漬処理する方法(特許文献8)、或いはその液をフィルム面上に塗布して少なくとも片面を鹸化処理する方法(特許文献9)が提案されている。アルカリ溶液中に有機溶媒を含むことによって純粋な水溶媒よりも鹸化反応活性を高められるが、有機溶媒の種類或いは含有量によっては処理するフィルム中に含有される添加物質が溶出されて、ヘイズ発生等の光学フィルムとしての品質を劣化させる場合がある。又、用いる有機溶媒が蒸発して処理液の組成が変化しやすく、大面積量のフィルムを均一に鹸化処理することが容易でなく、更には、有機溶媒の蒸発を防止して安定した鹸化状態を保つための装置が必要になるなどの問題があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平7−191217号公報
【特許文献2】
特開平8−21996号公報
【特許文献3】
特開平8−94838号公報
【特許文献4】
特開平7−151914公報の段落番号[0008]
【特許文献5】
特開平8−94838号公報の段落番号[0033]
【特許文献6】
特開2001−166146号公報の段落番号[0083]
【特許文献7】
特開2001−188130号公報の段落番号[0042]
【特許文献8】
特開2002−82226公報の段落番号[0034])
【特許文献9】
WO02/46809号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、セルロースエステルフイルムをアルカリ鹸化処理して、安定して全面均一に鹸化するアルカリ鹸化処理方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、液晶表示装置において表示欠陥のない大きい面積の光学補償シートを容易に製造するための、表面鹸化セルロースエステルフイルムを提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、光学補償シートの透明支持体と配向膜との密着性を高い精度で制御できるように、透明支持体として用いるセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化処理方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(6)のアルカリ鹸化方法を提供する。
(1)少なくともアルカリ剤及び界面活性剤を含有するpH10以上のアルカリ水溶液を用いて、セルロースアシレートフィルムをアルカリ鹸化することを特徴とするセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
【0013】
(2)上記界面活性剤が、ノニオン界面活性剤と、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤から選ばれる一種とから成ることを特徴とする上記(1)記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
【0014】
(3)上記アルカリ水溶液が、消泡剤を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
(4)室温以上で上記アルカリ水溶液をセルロースアシレートフィルムに塗布する工程と、該アルカリ水溶液を該フィルムから洗い落とす工程とを少なくとも含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
(5)室温以上で上記アルカリ水溶液をセルロースアシレートフィルムに塗布する工程と、塗布された該フイルムの温度を室温以上に維持する工程と、該アルカリ水溶液を該フィルムから洗い落とす工程とを少なくとも含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
【0015】
(6)セルロースアシレートフイルムの温度を室温以上に維持する工程と、アルカリ溶液を該フイルムから洗い落とす工程との間に、塗布したアルカリ溶液の規定度が1以下になるまで水で希釈する工程を施すことを特徴とする上記(5)に記載アルカリ鹸化方法。
(7)セルロースアシレートフイルムを搬送させて、搬送される該フィルムの一方の面にアルカリ鹸化の上記各工程を順次施すことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のアルカリ鹸化方法。
【0016】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法によって得られたことを特徴とする表面鹸化セルロースアシレートフィルム。
【0017】
(9)上記(8)に記載の表面鹸化セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
【0018】
上記(1)〜(9)のいずれかの方法でアルカリ鹸化した表面鹸化セルロースアシレートフィルムは、その上に配向膜を形成し、次いで配向膜の上に液晶性分子を塗布し、液晶性分子の配向を固定化して光学異方性層を形成することにより光学補償シートを製造できる。
また、偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が、セルロースアシレートフイルム上に、配向膜、および液晶性分子の配向を固定した光学異方性層がこの順に設けられている光学補償シートからなる場合、セルロースアシレートフイルムとして、その配向膜を塗布する側の表面を上記(1)〜(6)のいずれかの方法でアルカリ鹸化したセルロースアシレートフイルムを有利に用いることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
[ポリマーフイルム]
ポリマーフイルムは、光透過率が80%以上であることが好ましい。ポリマーフイルムは、外力により複屈折が発現しにくいことが好ましい。
ポリマーは、エステル結合あるいはアミド結合のような加水分解できる結合(鹸化処理の対象となる結合)を含む。とりわけエステル結合を含むのが好ましく、エステル結合がポリマーの側鎖に存在していることがさらに好ましい。エステル結合が側鎖に存在しているポリマーとしては、セルロースエステルが最も好ましく、これが本発明の対象としている支持体である。
【0020】
以下セルロースアシレートについて詳しく説明する。原料のセルロースとしては、綿花リンターや木材パルプなどがあるが、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用できるし、混合して使用してもよい。これらのセルロースから得られる本発明に用いるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。
【0021】
式(I):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(II):2.0≦SA’≦3.0
式(III): 0≦SB’≦0.8
【0022】
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB’)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0023】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。セルロースアシレートは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル基、ブタノイル基、ケプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいSBは、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などである。
【0024】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法等がある。具体的には、例えば、特開平6−32801号、同7−70202号、同10−45804号、同10−511728号、特開2001−200901号等に記載の方法が挙げられる。
【0025】
本発明に使用するセルロースアシレートの重合度(粘度平均)は200〜700が好ましく、特に250〜550のものが好ましい。
【0026】
本発明に使用するセルロースアシレートフィルムは、使用する目的や用途によって、上記のセルロースアシレートとともに、他の化合物を含有しても良い。
【0027】
ポリマーフイルムを光学補償シートに用いる場合、ポリマーフイルムは、高いレターデーション値を有することが好ましい。フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=|nx−ny|×d
(II) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率、dは、単位をnmとするフイルムの厚みである。
ポリマーフイルムのReレターデーション値は1〜200nmであり、Rthレターデーション値は70〜400nmであることが好ましい。具体的な値は、測定光の入射方向をフイルム膜面の鉛直方向に対して傾斜させた測定結果より外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150、日本分光(株)製)を用いて実施できる。測定波長としては、632.8nm(He−Neレーザー)を採用する。
【0028】
ポリマーフイルムのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であるが、また光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許0911656A2号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物が挙げられる。
【0029】
本発明のセルロースアシレートには、更に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤、帯電防止剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0030】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法で製膜することが好ましい。
用いる溶媒としては、従来公知の溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。具体的には、例えば発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の12頁〜16頁に詳細の化合物が挙げられる。
【0031】
酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0032】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮とろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号 2001−1745、にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0033】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類)については、前記公技番号 2001−1745にて25頁〜30頁に詳細に記載された内容が挙げられる。流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延しても良い。
【0034】
ポリマーフイルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%であることが好ましい。
ポリマーフイルムの厚さは、15〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがさらに好ましい。
【0035】
[アルカリ水溶液]
本発明の表面鹸化セルロースアシレートフィルムは、アルカリ剤及び界面活性剤を少なくとも含有するpH10以上のアルカリ水溶液を用いて鹸化処理されることを特徴とする。
そのアルカリ化合物又はアルカリ剤の例として、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ剤を挙げることができる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、これらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるためである。
【0036】
アルカリ水溶液の濃度は、使用するアルカリの種類、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もある。アルカリ剤の含有量は、アルカリ水溶液中の0.5〜25質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0037】
本発明のアルカリ水溶液は、界面活性剤を含有する。表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の安定性を上げてハジキ故障を防止する。用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
【0038】
以下、本発明に使用しうる界面活性剤について順次説明する。
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
【0039】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0040】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
【0041】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0042】
これらの具体例を示すと、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の重量平均分子量は、300〜50,000が好ましく、500〜5,000が特に好ましい。
【0043】
本発明において、前記ノニオン性界面活性剤の中でも、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1): R−O(CHCHRO)−(CHCHRO)−(CHCHRO)−R
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基を表す。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基等が挙げられ、前記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基等が挙げられ、前記アルキニル基の具体例としては、アセチル基、プロピニル基等が挙げられ、前記アリール基の具体例としては、フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
l,m,nは0以上の整数を表す。但し、l,m,nの総てが0であることはない。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のホモポリマー、エチレングリコール、プロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。前記共重合体の比率は、10/90〜90/10がアルカリ水溶液への溶解性の点から好ましい。また、共重合体の中でもグラフトポリマー、ブロックポリマーが、アルカリ水溶液に対する溶解性とアルカリ鹸化処理の容易性の点から好ましい。
【0044】
(フッ素系界面活性剤)
フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有する界面活性剤を指す。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、併用により効果を損なわない限りにおいては、2種以上を併用してもよい。
【0045】
以上の界面活性剤の中で、本発明においては、カチオン性界面活性剤としての前記第4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての前記各種のポリエチレングリコール誘導体類、前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ水溶液には、ノニオン活性剤とアニオン活性剤又はノニオン活性剤とカチオン活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
【0046】
これらの界面活性剤のアルカリ処理液に対する添加量は、好ましくは、0.001〜20質量%であり、より好ましくは、0.01〜10質量%であり、特に好ましくは、0.03〜3質量%である。添加量が、0.001質量%より少ない場合には、界面活性剤の添加効果が得難く、20質量%よりも多い場合には、鹸化性が低下する傾向がある
【0047】
更に、本発明におけるアルカリ水溶液には、前記アルカリ剤、前記界面活性剤とともに、消泡剤を含有させることが好ましい。この添加剤は、アルカリ水溶液中に、好ましくは0.001〜5質量%、特に好ましくは0.005〜3重量%の濃度で含有させることができる。
この範囲において、フィルム表面への微小な気泡の付着も無くなり、アルカリ処理による鹸化がムラ無く均一に進行する。
【0048】
消泡剤としては、ヒマシ油、亜麻仁油等の油脂系、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系、天然ワックス等の脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール等のアルコール系、ジ−t−アミルフェノキシエタノール、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系、トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等の燐酸エステル系、ジアミルアミン等のアミン系、ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミド等のアミド系、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、羊毛オレイン酸のカルシウム塩等の金属石鹸系、ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、フロロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドとの共重合体等のシリコーンオイル、及びその溶液型、エマルジョン型、ペースト型シリコーンオイル等のシリコーン系の消泡剤が挙げられる。
【0049】
本発明に用いるアルカリ水溶液には場合により有機溶剤を添加することができる。水への溶解度を持つ溶媒であれば特に制限はないが、水に対する溶解度が約50%以下のものが適しており、好ましくは20%以下のものから選ばれる。アルカリ水溶液への界面活性剤の溶解性向上、セルロースアシレートフィルム表面への速やかな濡れ性を向上させ、均一な鹸化処理を促進する。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミン、フッ化アルコール(例えば1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。
有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜20%が好ましい。さらには0.1〜10%が好ましい。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少ないときに、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な鹸化処理の確保が期待できなくなるからである。
【0050】
本発明に用いるアルカリ水溶液は、アルカリ剤との組み合わせにおいてpH緩衝作用があることから、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することが好ましい。かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明に好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。これらの中で本発明に好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30重量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20重量%である。
【0051】
尚、本発明に用いるアルカリ水溶液には、他の添加剤を併用しても良い。例えば、従来公知のpH緩衝剤、保湿剤(ポリアルキレングリコール類、グリセリン、アラビアガム等)、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)、防腐・防菌剤キレート剤等が挙げられる。尚、本発明においてアルカリ水溶液の添加剤は、これらに限定されるものではない。
【0052】
又、アルカリ水溶液に用いる水としては、日本国水道法(昭和32年法律第177号)及びそれに基づく水質基準に関する省令(昭和53年8月31日厚生省令第56号)、同国温泉法(昭和23年7月10日法律第125号及びその別表)、及び、WHO規定水道水基準によって規定される水中の混入の状態に於ける各元素やミネラル等への影響、等に基づくものが好ましい。更に、本発明の効果の達成をより確実にするために、カルシウム濃度が、炭酸カルシウムとしての濃度として、0.001〜200mg/Lであるのが好ましく、0.01〜150mg/Lであるのが更に好ましく、0.05〜10mg/Lであるのが特に好ましい。この範囲で、水溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
【0053】
[アルカリ鹸化方法]
本発明のアルカリ水溶液を用いたポリマーフィルムの表面処理方法は従来公知のいずれの方法でもよく、浸漬方法、噴射方法、塗布方法等が挙げられる。
特に、フィルムの片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。塗布の方法としては、後に述べるように従来公知の塗布方法を用いることができる。
更に、ポリマーフイルムをその表面が室温以上の温度でアルカリ水溶液で鹸化処理する工程、ポリマーフイルムの温度を室温以上に維持する工程、そして、アルカリ水溶液をポリマーフイルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
ポリマーフイルムをその表面が室温以上の温度でアルカリ水溶液で鹸化処理には、塗布する前に予め室温以上に加熱する工程、アルカリ液を予め加温しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め室温以上に加熱する工程と組み合わせることが好ましい。
【0054】
セルロースアシレートフイルムを予め室温以上に加熱する工程では、熱風の衝突、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、あるいは赤外線ヒーターによる輻射熱加熱が好ましく利用できる。特に加熱ロールによる接触伝熱は、熱伝達効率が高く小さな設置面積で行える点、搬送開始時のフイルム温度の立上りが速い点で好ましい。一般の2重ジャケットロールや電磁誘導ロール(トクデン社製)が利用できる。加熱後のフイルム温度は、20〜120℃(20℃よりも高く、120℃よりも低い温度)であることが好ましく、25〜100℃がさらに好ましく、35〜80℃が最も好ましい。
【0055】
セルロースアシレートフイルムをアルカリ水溶液で鹸化処理する工程は、塗布量の変動をフイルムの幅方向および長さ方向に対して30%未満に抑制することが好ましい。
塗布方式としては、例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)やロッド(細い金属線を巻いたロッド)コーターが好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology, Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992 )に記載されている。アルカリ水溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましい。少ない塗布量でも安定に操作できるロッドコーター、ダイコーター、グラビアコーターおよびブレードコーターが特に好ましい。
また、連続塗布方式を採用することも好ましい。
【0056】
鹸化反応に必要なアルカリ塗布量は、セルロースアシレートフイルムの単位面積当りの鹸化反応サイト数に配向膜との密着を発現させるために必要な鹸化深さを乗じた総鹸化サイト数(=理論アルカリ塗布量)が目安となる。鹸化反応の進行にともなってアルカリ剤が消費され反応速度が低下するため、実際には上述の理論アルカリ塗布量の数倍を塗布することが好ましい。具体的には、理論アルカリ塗布量の2〜20倍であることが好ましく、2〜5倍であることがさらに好ましい。
アルカリ水溶液の温度は、反応温度(=フイルムの温度)に等しいことが望ましい。
【0057】
アルカリ溶液を塗布した後、鹸化反応が終了するまで、セルロースアシレートフイルムの温度を室温以上に保つ。
本明細書において、室温は20℃を意味する。
加熱手段は、セルロースアシレートフイルムの片面がアルカリ溶液により濡れている状態であることを考慮して選択する。例えば塗布面の反対側の面への熱風の吹き付け、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、あるいは、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、非接触、かつ空気の流れを伴わずに加熱できるため、アルカリ溶液塗布面への影響を最小にできるため好ましい。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。熱媒体が、オイルまたはスチームを用いるオイル式またはスチーム式の赤外線ヒーターは、有機溶剤が共存する雰囲気における防爆の観点で好ましい。セルロースアシレートフイルムの温度は、アルカリ水溶液処理前に加熱した温度と同じでも異なっていてもよい。また、鹸化反応中に温度を連続的、または段階的に変更してもよい。フイルム温度の検出には、一般に市販されている非接触の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段に対してフィードバック制御を行ってもよい。
【0058】
本発明に置いては、とくにセルロースアシレートフイルムを搬送しながら鹸化処理を実施することが好ましい。フイルムの搬送速度は、上記アルカリ溶液の組成と塗布方式の組み合わせによって決定する。一般に、10乃至500m/分が好ましく、20乃至300m/分がさらに好ましい。搬送速度に応じて、安定な塗布操作が行えるように、アルカリ溶液の物性(比重、粘度、表面張力)、塗布方式および塗布操作条件を決定する。
【0059】
アルカリ溶液とセルロースアシレートフイルムとの鹸化反応を停止するには、3つの方法がある。一つは、塗布されたアルカリ溶液を希釈してアルカリ濃度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、二つ目は、アルカリ溶液が塗布されたセルロースアシレートフイルムの温度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、三つ目は、酸性の液によって中和する方法である。
【0060】
塗布されたアルカリ溶液を希釈するためには、希釈液を塗布する方法、希釈液を吹き付ける方法、あるいは、希釈液の入った容器にセルロースアシレートフイルムごと浸漬する方法が採用できる。中でも希釈液を塗布する方法と吹き付ける方法がポリマーフイルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい方法である。希釈液を塗布する方法は、必要最小限の希釈液量を用いて実施できるために最も好ましい。
【0061】
希釈液の塗布は、既にアルカリ溶液が塗布されたセルロースアシレートフイルム上に希釈液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布方法は、前記した鹸化処理工程で記載した内容と同様のものが挙げられる。アルカリ水溶液と希釈液とを速やかに混合してアルカリ濃度を低下させるためには、希釈液が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0062】
希釈液は、セルロースアシレートフイルムを溶解したり膨潤したりすることなく、アルカリ濃度を低下させることが目的であるため、アルカリ水溶液中のアルカリ剤を溶解する液でなければならない。水または有機溶剤と水との混合液を用いる。また、表面張力が適度に低い有機溶剤を選択することも望ましい。有機溶剤については、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載ものが挙げられる。例えば、一価アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フッ素化アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等)、多価アルコール(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)およびエーテル(例、メチルセルソルブ)等が挙げられる。これら有機溶媒は単独でも2種以上を併用してもよく、希釈液としてポリマーを溶解若しくは膨潤しない割合で任意に用いることができる。
【0063】
希釈液の塗布量は、アルカリ溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5乃至10倍に希釈することが好ましく、2乃至5倍に希釈することがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ溶液と希釈溶媒との混合が発生し、この混合した液が再塗布される。したがって、この場合は希釈溶媒の塗布量によって希釈率を特定することができないため、希釈溶媒塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいても、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。
【0064】
アルカリによる鹸化反応を迅速に停止するため、酸を用いることもできる。少ない量で中和するため、強酸を用いることが好ましい。さらに、水洗の容易さを考慮すると、アルカリと中和反応後に生成する塩が水に対する溶解度が高い酸を選択することが好ましい。塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、クロム酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
【0065】
塗布されたアルカリ溶液を酸で中和するためには、酸溶液を塗布する方法、酸溶液を吹き付ける方法、あるいは酸溶液の入った容器にフイルムごと浸漬する方法が採用できる。酸溶液を塗布する方法と吹き付ける方法がフイルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい。酸溶液を塗布する方法は、必要最小限の酸溶液を用いて実施できるために最も好ましい。
【0066】
酸溶液の塗布は、既にアルカリ溶液が塗布されたセルロースアシレートフイルム上に酸溶液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布方式に関しては前記した鹸化処理で記載の内容と同様である。アルカリ溶液と酸溶液とを速やかに混合してアルカリを中和させるためには、ロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0067】
酸溶液の塗布量は、アルカリの種類とアルカリ溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、酸の塗布量は、元のアルカリ塗布量の0.1〜5倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ溶液と酸溶液との混合が発生し、混合した液が再塗布される。したがって、この場合は酸溶液の塗布量によって中和率を特定することができないため、酸溶液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいては、酸溶液塗布後のpHが4〜9になるように酸溶液の塗布量を決定することが好ましく、6〜8になるように決定することがさらに好ましい。
【0068】
セルロースアシレートフイルムの温度を降下させて、鹸化反応を停止することもできる。反応を促進させるために室温以上に保たれた状態から、充分に温度低下させることによって実質的に鹸化反応を停止させる。フイルムの温度を低下させる手段は、セルロースアシレートフイルムの片面が濡れていることを考慮して決定する。塗布の反対面への冷風の吹き付け、あるいは、冷却ロールによる接触伝熱が好ましく採用できる。冷却後のフイルム温度は、5〜60℃であることが好ましく、10〜50℃であることがさらに好ましく、15〜30℃であることが最も好ましい。フイルム温度は、非接触式の赤外線温度計で測定することが好ましい。測定した温度から、冷却手段に対してフィーッドバック制御を行い、冷却温度を調節することもできる。温度低下手段は,上記の希釈液で希釈する方法、或いは中和する方法と併用してもよい。
【0069】
水洗工程は、アルカリ水溶液を完全に除去するために実施する。又、中和の手段を用いた場合は、中和された塩化合物等の組成物を完全に除去するために実施する。アルカリ水溶液の組成物或いは中和塩化合物等が残っていると、鹸化反応が進行するばかりでなく、後に塗布する配向膜ならびに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼす。
水洗は、水を塗布する方法、水を吹き付ける方法、あるいは、水の入った容器にポリマーフイルムごと浸漬する方法で実施できる。
【0070】
水吹きつけ方法は、塗布ヘッド(例、ファウンテンコーター、フロッグマウスコーター)を用いる方法、あるいは、空気の加湿や塗装、タンクの自動洗浄に利用されるスプレーノズルを用いる方法で実施できる。塗布方式に関しては、「コーティングのすべて」荒木正義編集、(株)加工技術研究会(1999年)に記載がある。円錐状あるいは扇状のスプレーノズルをフイルムの幅方向に配列して、全幅に水流が衝突するように配置することができる。市販のスプレーノズル(例えば、(株)いけうち製、スプレーイングシステムズ社製)を用いてもよい。
【0071】
水の吹き付け速度は、大きい方が高い乱流混合が得られる。ただし、速度が大きいと、連続搬送するセルロースアシレートフイルムの搬送安定性を損なう場合もある。吹き付けの衝突速度は、50乃至1000cm/秒が好ましく、100乃至700cm/秒がさらに好ましい。
用いたアルカリ性塗布液のアルカリ濃度や副次添加物、溶媒の種類にもよるが、少なくとも100〜1000倍、好ましくは500〜1万倍、さらに好ましくは1000〜十万倍の希釈が得られる水洗水を使用する。
【0072】
水洗で一定量の水を用いる場合、一度に全量適用するよりも数回に分割して適用する回分式洗浄方法が好ましい。すなわち、水の量を幾つかに分けて、フイルムの搬送方向にタンデムに設置した複数の水洗手段に供給する。一つの水洗手段と次の水洗手段との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散によるアルカリ性塗布液の希釈を進行させる。さらに好ましくは、搬送されるポリマーフイルムに傾斜を設けるなどして、フイルム上の水がフイルム面に沿って流れる様にすれば、拡散に加えて、流動による混合希釈が得られる。最も好ましい方法としては、水洗手段と水洗手段の間にフイルム上の水膜を除去する水切り手段を設けることで、更に水洗希釈効率を高められる。具体的な水切り手段としては、ブレードコーターに用いられるブレード、エアナイフコーターに用いられるエアナイフ、ロッドコーターに用いられるロッド、ロールコーターに用いられるロールが挙げられる。
タンデムに配置された水洗手段の数は、多い方が有利である。ただし、設置スペースならびに設備コストの観点から、通常は2〜10段、好ましくは2〜5段が使用される。
【0073】
水切り手段後の水膜厚みは、薄い方が好ましいが、用いる水切り手段の種類によって最低水膜厚みが制限される。ブレード、ロッド、ロールなど、物理的に固体をフイルムに接触させる方法においては、例え固体がゴムなどの硬度の低い弾性体であったとしても、フイルム表面にキズを付けたり、弾性体が磨り減ったりするので有限の水膜を潤滑流体として残す必要がある。通常は、数μm以上、好ましくは10μm以上の水膜を潤滑流体として残存させる。
【0074】
極限まで水膜厚みを減少させられる水切り手段としては、エアナイフが好ましい。充分な風量と風圧を設定することにより、水膜厚みをゼロに近づけることが出来る。ただし、エアの吹出し量が大きすぎると、ばたつきや寄りなど、セルロースアシレートフイルムの搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。その範囲は、セルロースアシレートフイルム上の元の水膜厚み、フイルムの搬送速度にもよるが、通常は10〜500m/秒、好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に水膜除去を行うためには、セルロースアシレートフイルムの幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になる様、エアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送するセルロースアシレートフイルム表面とエアナイフ吹出し口の間隙は、狭い方が水切り能が増すが、セルロースアシレートフイルムと接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。そのため、通常は、10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって、エアナイフを設置する。さらに、エアナイフと対向する様に、フイルムの水洗面と反対側にバックアップロールを設置することで、間隙の設定が安定するとともに、フイルムのバタツキやシワ、変形などの影響を緩和することができるために好ましい。
【0075】
水洗水には、純水を用いることが好ましい。本発明に用いられる純水とは、比電気抵抗が少なくとも1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1mg/L未満、塩素、硝酸などのアニオンは0.1mg/L未満を指す。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、あるいは組み合わせによって、容易に得ることができる。
【0076】
洗浄水の温度は、高い方が洗浄能力が上がる。しかし、搬送されるセルロースアシレートフイルム上に水を吹き付ける方法においては、空気と接触する水の面積が大きく、高温ほど蒸発が著しくなるため、周囲の湿度が増し、結露する危険性が高くなる。このため、洗浄水の温度は、通常は5〜90℃、好ましくは25℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜80℃の範囲で設定する。
【0077】
アルカリ性塗布液の成分、または鹸化反応の生成物が水に容易に溶けない場合、水洗工程の前または後に水に不溶な成分を除去するための溶剤洗浄工程を付加しても良い。溶剤洗浄工程は上に述べた水洗方法、水切り手段,又用いる溶剤は上記希釈液に記載と同様のものを利用することができる。
【0078】
水洗工程の次に乾燥工程を実施することもできる。通常は、エアナイフなどの水切り手段で十分に水膜を除去できるため、乾燥工程は必要ないが、セルロースアシレートフイルムをロール状に巻き取る前に、好ましい含水率に調整するために加熱乾燥してもよい。逆に、設定された湿度を有する風で調湿することもできる。
【0079】
[鹸化セルロースアシレートの用途]
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途について簡単に述べる。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0080】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0081】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。
【0082】
セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0083】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は前記の公技番号 2001−1745中の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0084】
【実施例】
[実施例1]
(セルロースエステルフイルムTF−1の作製)
下記表1の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0085】
【表1】
Figure 2004182893
【0086】
下記表2の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0087】
【表2】
Figure 2004182893
【0088】
下記表3の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0089】
【表3】
Figure 2004182893
【0090】
【化1】
Figure 2004182893
【0091】
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、レターデーション上昇剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は4.6%であった。残留溶剤量30%でフイルムをバンドから剥離し、130℃の条件で、残留溶剤量が13質量%のフイルムをテンターを用いて28%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま140℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフイルムを作製した。出来あがったセルロースアセテートフイルムの膜厚は80μmであった。
【0092】
(鹸化処理フイルムSFの作製)
ロール幅1000mmの上記セルロースアセテートフイルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、アルカリ処理液(S−1)として、KOH8.5質量%、下記表4記載の各界面活性剤(K)、及び消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製)0.01質量%から成る水溶液(pH14、水溶媒は蒸留水を使用)をロッドコーターを用いて塗布量10cc/mを塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に10秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を3cc/m塗布した。この時のフイルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フイルムSF−1〜SF−4を作製した。
【0093】
【表4】
Figure 2004182893
【0094】
(比較用鹸化処理フイルムSFR−1の作製)
上記鹸化処理フイルムSF−1において、アルカリ処理液としてKOH8.5質量%のみからなる水溶液(pH14)を用いた他は、同様にして比較用鹸化フィルムSFR−1を作製した。
各フィルム(SF)の鹸化処理表面の水との接触角を測定した。接触角計(協和界面科学(株)製、CA−X型接触角計)を用いて、乾燥状態(20℃/65%RH)で液体に純水を使用して直径1.0mmの液滴を針先に作り、これをフィルムの表面に接触させて液滴を作った。固体液体が接する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度を接触角とした。
本発明の各鹸化処理フィルムは、水との接触角35〜38度の範囲にあった。又、各フィルムについて、1平方メートルの面内において両端及び中央の9箇所の接触角を測定した所、±1度の範囲で測定におけるばらつきの範囲内であった。
一方、比較用の試料は、接触角41度であったが、面内のバラツキは±5度と広かった。
【0095】
(配向膜の形成)
上記、フイルムSF〜1〜SF−4及びSFR−1の鹸化処理面に下記構造の変性ポリビニルアルコール20質量部、水360質量部、メタノール120質量部、ならびにグルタルアルデヒド0.5質量部からなる配向膜塗布液をロッドコーターで30cc/m塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の熱風で150秒間、乾燥した後に搬送方向に鉛直に配置したベルベット布ラビングロールを用いて、ラビング処理を行って配向膜を形成した。
【0096】
変性ホ゜リビニルアルコール
【化2】
Figure 2004182893
【0097】
(光学異方性層の形成)
上記、SF−1〜SF−4及びSFR−1に形成した配向膜の上に、下記のディスコティック化合物41.01質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)1.22質量部、多官能アクリレートモノマー(NKエステル A−TMMT 新中村化学工業製)2.84質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45質量部を、102質量部のメチルエチルケトンに溶解した後に#4のワイヤーバーで塗布した。続き、連結する130℃の熱風ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。最後に80℃の雰囲気下のもと、膜面温度が約100℃の状態で120W/cm高圧水銀灯を用いて、0.4秒間UV照射しディスコティック化合物を重合させ、光学異方性層を形成した。波長633nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は45nmであった。また、円盤面と第1透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で39度であった。
【0098】
【化3】
Figure 2004182893
【0099】
(光学補償シートの評価方法)
ヘイズ
得られたフイルムSF−1〜SF−4及びSFR−1について、日本電色(株)社製NDH300A型光学試験機を用いてヘイズの測定を行った。
透過光ムラ
各光学補償シートを、クロスニコルス配置した2枚の偏光板の間に挟み、透過光のムラを目視で観察し官能評価を行った。
○:全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
密着性
各光学補償シートを30cm×25cmに裁断し、25℃相対湿度60%の条件下で1日放置した後、光学異方性層側に幅1.2cm、長さ10cmのセロテープ(ニチバン社製No.405)を5枚貼り付け、1枚ずつ1秒間ではがし取り、フイルムと配向膜の間で剥離する状態を検査した。10枚のセロテープの内、何枚に塗布層間の破壊が発生するかによって、相対的な密着性の優劣を評価した。
【0100】
表5にこれらの評価結果を示す。
【0101】
【表5】
Figure 2004182893
【0102】
表5に示されるように、本発明に従う鹸化処理を実施したSF−1〜SF−4おいては、界面活性剤を添加しないSFR−1に比べてヘイズが低く且つ透過光のムラは見られなく良好であった。又密着性も充分で良好であった。一方比較例SFR−1は、ヘイズが上昇し、透過光ムラが発生した。密着性は、密着不良となる場合が発生し充分なものではなかった。
以上のように、本発明の方法で作製した鹸化セルロースアシレートは、均一性に優れ、かつ密着性も良好な性能を示している。
【0103】
[実施例2]
実施例1のアルカリ処理液S−1において、界面活性剤K−1の代わりに下記表6に記載の各化合物1.5質量%を用いた他は、実施例1と同様に試料SF−5〜SF−10を作製し、性能を評価した。その結果、各試料ともに実施例1と同等の性能を示した。
【0104】
【表6】
Figure 2004182893
【0105】
[実施例3]
(鹸化セルローストリアセテートフイルム)
セルローストリアセテートフイルム:フジタックTD80UF(富士写真フイルム(株)製)に100℃の熱風を衝突させ、55℃まで加熱した後に、25℃に保温した下記内容のアルカリ処理液(S−11)をロッドコーターを用いて8cc/m塗布し10秒間経過後、再びロッドコーターを用いて純水を5cc/m塗布した。この時のフイルム温度は45℃であった。次いで、エクストルージョン型コーターを用いて1000cc/mの純水を塗布し、水洗を行い、5秒間経過後に100m/秒の風をエアナイフより水塗布面に衝突させた。このエクストルージョンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを2回繰り返した後に80℃の乾燥ゾーンに10秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フイルムSF−11を作製した。
【0106】
アルカリ処理液(S−11)
NaOH 6質量%
ノニオン型界面活性剤:バイオニンD440(竹本油脂(株)製) 1.2質量%
消泡剤:プルトニックTR701(旭電化工業(株)製) 0.5質量%
フッ化アルコール:2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロヘ゜ンタン−1,5−シ゛オール 1質量%
から成る水溶液。
【0107】
得られたフィルム表面の表面エネルギーを下記の方法で求めた結果、65mN/mであった。
表面エネルギーは「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載の接触角法により求めた。表面エネルギーが既知の水及びヨウ化メチレンの2種類の溶液をセルロースアセテートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出した。
<比較用鹸化処理フィルムSFR−2>
上記アルカリ処理液(S−11)において、界面活性剤、フッ化アルコールを除いてNaOH6質量%のみからなる水溶液を用いて、上記SF11の鹸化処理と同様にして鹸化処理して比較用鹸化処理フィルムSFR−2を作製した。SFR−2フィルムの表面の表面エネルギーは、71mN/mであった。
【0108】
(偏光板)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1で作成した光学補償シートを偏光膜の片側に、もう一方には上記鹸化処理フィルムSF−11をホ゜リビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた後、80℃で10分間乾燥させた。偏光膜の透過軸と実施例1で作製した光学補償シートの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸とセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板を作製した。
又、鹸化処理フィルムSF−11の代わりに、比較用鹸化処理フィルムSFR−2を用いて、上記と同様にして比較用偏光板を作製した。
【0109】
(液晶表示装置)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記に作製した偏光板を、実施例1で作製した光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
【0110】
このようにして作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
その結果、本発明の保護フィルム(試料No.12)を設置したものは、画面全面が曇りの無い鮮明で高い輝度の画像が得られた。一方、界面活性剤を使用しなかった比較例(試料No13)は、液晶画面全面が曇って輝度が低下し、画面に描画ムラが発生した。
以上の目視観察結果より、本発明の鹸化セルロースアシレートフィルムを用いたものは、良好な光学特性を有することが示された。
【0111】
実施例4
特開2002−182033号公報の実施例1の記載に従って、反射防止膜を設けたセルロースアシレートフイルムを作製した。次に、このセルロースアシレートフイルムの防汚層の表面にポリエチレンテレフタレートフイルム(SAT−106TS、(株)サンエイ化研製)を貼り合わせた。このフイルムを、浸漬処理装置として電子製版システム用のマスターエッチングプロセッサー:E−380IIを用いて、この装置に下記組成のアルカリ処理液(S−13)を入れて液温45℃に設定した。フィルムの浸漬時間が30秒間になるように浸漬した後、水に浸漬してアルカリ水溶液を充分に洗い流した。次いで、0.5%希硫酸水溶液に10秒間浸漬した後、水に浸漬して充分に洗浄した。さらにこのフイルムを100℃で乾燥させて鹸化セルロースアシレートフィルム(SF−13)を作製した。ポリエチレンテレフタレートフイルムを、セルローストリアセテートフイルムから取り除き、第1偏光板保護膜を作製した。
【0112】
アルカリ処理液(S−13)
KOH 10質量%
ベタイン型界面活性剤アモーゲンK(第一工業製薬社製) 1質量%
D−ソルビトール 5質量%
消泡剤:サーフィノール104(日信化学工業(株)製) 0.05質量%
から成る水溶液。
【0113】
(第2偏光板保護膜の作製)
上記方法で作製した別のセルローストリアセテートフイルムの一方の面にポリエチレンテレフタレートフイルム(SAT−106TS、(株)サンエイ化研製)を貼り合わせた。第1偏光板保護膜の作製と同様に、鹸化処理を実施した後、ポリエチレンテレフタレートフイルムを取り除き、第2偏光板保護膜を作製した。
【0114】
(偏光板の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフイルム(クラレ(株)製)を、ヨウ素7質量部およびヨウ化カリウム105質量部を水1000質量部に溶解した水溶液に5分間浸漬し、フイルムにヨウ素を吸着させた。次いで、フイルムを40℃の4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用い、偏光膜の一方の面に第1偏光板保護膜のケン化処理されたセルローストリアセテートフイルムの表面を貼り合わせ、偏光膜のもう一方の面には、第2偏光板保護膜のケン化処理されたセルローストリアセテートフイルムの表面を貼り合わせた。このようにして偏光板を作製した。
【0115】
(偏光板の評価)
上記の方法で偏光板100枚を作製し、それぞれ、アクリル系接着剤を用いてガラス板に貼り合わせ、それらを恒温恒湿槽に入れ、恒温恒湿槽内を70℃、93%RHの雰囲気と25℃、93%RHの雰囲気とに12時間ずつ交互に設定変更しながら、のべ1000時間の耐久性試験を行った。恒温恒湿槽〜取り出した100枚の試料について偏光板とガラス板の間の剥がれと泡の発生状況を調べところ、100枚全てにおいて剥がれ及び泡の発生が認められなかった。
又、市販の薄膜トランジスタ(TFT:thin−film−transistor)型の液晶モニターの両面の偏光板を剥がし、上記の偏光板を両面に貼り合せ、黒表示と白表示のムラの有無を目視判定した。全画面にムラ等の視覚上の欠陥は全く見られなかった。
【0116】
実施例5
(鹸化セルローストリアセテートフイルム)
実施例4記載の反射防止膜をセルロースアシレートフィルムの片面に付設し、反射防止膜が塗布されていない側の面上に、80℃の熱風を衝突させ、45℃まで加熱した後に、35℃に保温した下記表6記載の組成の各アルカリ処理液(S)をロッドコーターを用いて塗布量5cc/m 塗布し、10秒間経過後、再びロッドコーターを用いて純水を5cc/m塗布した。この時のフイルム温度は45℃であった。次いで、エクストルージョン型コーターを用いて1000cc/mの純水を塗布することによって水洗を行い、5秒間経過後に100m/秒の風をエアナイフより吹き付けた。このエクストルージョンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを2回繰り返した後に80℃の乾燥ゾーンに10秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フイルムSF−14〜SF−17を作製した。
【0117】
【表7】
Figure 2004182893
【0118】
各フィルム(SF)の水との接触角は、33〜36度の範囲であった。
次に、実施例4に用いた鹸化フィルムの代わりに、鹸化フィルムSF−14〜SF−17に用いて偏光板を作製した。実施例4と同様にして偏光板の性能を評価した結果、実施例4の試料と同等の性能を示した。
【0119】
【発明の効果】
アルカリ剤及び界面活性剤を含有するpH10以上のアルカリ水溶液を用いる本発明のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法によれば、フイルム表面を均一かつ精度よく、しかも片面を選択的にアルカリ鹸化することができる。このアルカリ鹸化フィルムは、表示欠陥のない大きい面積の液晶表示装置用光学補償シートに容易に組み込むことができる。また、光学補償シートの透明支持体と配向膜との密着性に優れた透明支持体用セルロースエステルフイルムが得られる。

Claims (6)

  1. 少なくともアルカリ剤及び界面活性剤を含有するpH10以上のアルカリ水溶液を用いて、セルロースアシレートフィルムをアルカリ鹸化することを特徴とするセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
  2. 上記界面活性剤が、ノニオン界面活性剤と、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤から選ばれる一種とから成ることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
  3. 上記アルカリ水溶液が、消泡剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
  4. 室温以上で上記アルカリ水溶液をセルロースアシレートフィルムに塗布する工程と、該アルカリ水溶液を該フィルムから洗い落とす工程とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法によって得られたことを特徴とする表面鹸化セルロースアシレートフィルム。
  6. 請求項5に記載の表面鹸化セルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学フィルム。
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