JP2004182797A - 両面粘着テープ及びicチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷させることなく容易に剥離させることができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法を提供する。
【解決手段】基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aが形成され、前記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成された両面粘着テープであって、前記粘着剤層A及び/又は前記粘着剤層Bは、厚さが被着体表面の最大段差より厚く、かつ、200μm以下である両面粘着テープ。
【選択図】 なし
【解決手段】基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aが形成され、前記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成された両面粘着テープであって、前記粘着剤層A及び/又は前記粘着剤層Bは、厚さが被着体表面の最大段差より厚く、かつ、200μm以下である両面粘着テープ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路(ICチップ)は、通常純度の高い棒状の半導体単結晶等をスライスしてウエハとしたのち、フォトレジストを利用してウエハ表面に所定の回路パターンを形成して、次いでウエハ裏面を研磨機により研磨して、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより、製造されている。
【0003】
ここで、上記研磨時には、ウエハ表面に粘着シート類(研磨用テープ)を貼り付けて、ウエハの破損を防止したり、研磨加工を容易にしたりしており、上記ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類(ダイシングテープ)を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されたチップをダイシングテープのフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
【0004】
近年、ICチップの用途が広がるにつれて、ICカード類に用いたり、積層して使用したりすることができる厚さ50μm程度の極めて薄いウエハも要求されるようになってきた。しかしながら、厚さが50μm程度のウエハは、従来の厚さが100〜600μm程度のウエハに比べて反りが大きく衝撃により割れやすくなるので取扱性に劣り、従来のウエハと同様に加工しようとすると、破損する場合がある。
【0005】
厚さが50μm程度のウエハは、衝撃を受けやすい研磨工程又はダイシング工程で破損する危険性が高く、また、ICチップの電極上にバンプを作製する際にも破損しやすいため歩留まりが悪い。このため、厚さ50μm程度の薄いウエハからICチップを製造する過程におけるウエハの取扱性の向上が重要な課題となっていた。
【0006】
これに対して、研磨用テープとして両面粘着テープを用い、厚膜ウエハを支持板に接着して補強した状態で研磨する方法が提案されている。このとき両面粘着テープは、研磨工程中には強固に接着する一方で、研磨工程終了後には得られた薄膜ウエハを損傷することなく支持板から剥がせることが求められる。
【0007】
両面粘着テープを剥がす方法としては、例えば、物理的な力を加えて引き剥がすことが考えられる。しかしながら、この方法では薄膜ウエハに重大な損傷を与えてしまうことがある。
また、両面粘着テープの粘着剤層を溶解できる溶剤を用いて両面粘着テープを剥がす方法も考えられる。しかしながら、この方法も薄膜ウエハが溶剤によって侵されるために用いることができない。
このように、いったん被着体に接着した両面粘着テープは、接着力が強固であるほど、薄膜ウエハを損傷させることなく剥がすことは、困難であるという問題があった。
【0008】
また、厚さ50μm程度の薄膜ウエハを研磨により得る際には、わずかな研磨ムラによっても得られる薄膜ウエハの平滑性が大きく損なわれるため、平滑な表面を有する両面粘着テープにより厚膜ウエハを固定して研磨を行う必要がある。しかし、平滑な表面を有する両面粘着テープを用いても、厚膜ウエハの補強に用いる支持板の表面にわずかな凹凸があることにより、支持板の表面の凹凸形状に対応した研磨ムラが生じてしまうことがあるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷させることなく容易に剥離させることができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、前記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成された両面粘着テープであって、前記粘着剤層A及び前記粘着剤層Bは、厚さが被着体表面の最大段差より厚く、かつ、200μm以下である両面粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の両面粘着テープは、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、上記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成されたものである。
上記気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成されていることにより、本発明の両面粘着テープは、刺激が与えられると、粘着剤層A中の気体発生剤から発生した気体が接着面の少なくとも一部を剥がすので、接着力が低下して粘着剤層A側の被着体を容易に剥離させることができる。
【0012】
上記基材としては特に限定されないが、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させる刺激が光による刺激である場合には、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。また、上記粘着剤層Aが加熱により流動性を示すものである場合には、高温に加熱されても軟化しないものであることが好ましく、例えば、芳香族ポリエステル、ポリエーテルニトリル等の耐熱性樹脂からなるシート、網状の金属シートを埋め込み補強したシート等が好適に用いられる。
【0013】
上記基材は、想定される被着体の表面の凹凸よりも大きく、ほぼ基材の厚さと同じ大きさのビーズを含有していてもよい。このようなビーズを含有する基材は、加圧されてもビーズがスペーサとして働くので一定の厚さを維持して平滑性を保つことができるので、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができる。
【0014】
上記基材の厚さの好ましい下限は10μm、好ましい上限は200μmである。10μm未満であると、一方の被着体の表面の凹凸形状により、他の一方の被着体との接着面に凹凸を生じてしまうことがある。200μmを超えると、テープとしての柔軟性が不足しがちになることがある。
【0015】
上記基材には、プライマー処理が施されていてもよい。プライマー処理が施されていることにより、粘着剤層Aや粘着剤層Bとの接着力を向上し、剥離の際の被着体への糊残りをより効果的に防止することができる。
上記プライマー処理としては特に限定されず、例えば、基材の表面にプライマー樹脂を塗布する処理、基材の表面にコロナ処理を施す処理等が挙げられる。
【0016】
上記粘着剤層Aは、刺激により気体を発生する気体発生剤を少なくとも表層部に含有するものである。
上記気体発生剤から気体を発生させる刺激としては特に限定されず、例えば、光、熱、超音波、衝撃等が挙げられる。なかでも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線、可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、粘着剤層Aは、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。また、粘着剤層Aが熱可塑性樹脂からなる場合には、光を照射する際に、フィルタ等により熱線を除去した光を照射することが好ましい。熱線を除去した光であれば照射強度が高くとも、粘着剤層Aが加熱されて柔らかくなりすぎることがなく、気体発生剤から発生した気体は、粘着剤層Aを発泡させることなく、外へ放出される。
【0017】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等が好適に用いられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0018】
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等の下記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物が好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ低級アルキル基を表し、R3は、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、R1とR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0021】
上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、熱分解温度が高いことから、後述する被着体との接着の際に粘着剤層Aの流動化のために加熱が必要な場合にも気体が発生してしまうことがなく、また、粘着剤への溶解性にも優れている。これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0022】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、特定の波長の光、熱、超音波及び衝撃等による刺激を与えることにより分解して、窒素ガスを発生する。
【0023】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取り扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによって被着体が損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
【0024】
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取り扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないため被着体を損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。従って、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0025】
上記気体発生剤は粘着剤層Aの全体に含有されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤層Aの全体に含有させておくと、粘着剤層Aの全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、本発明の両面粘着テープを被着体からうまく剥がせなかったり、糊残りしたりするおそれがある。従って、上記気体発生剤は、粘着剤層Aの表層部にのみ含有されていることが好ましい。表層部にのみ含有させておけば、粘着剤層Aの全体が発泡体とならずに、被着体との接着面で気体発生剤から気体が発生することにより接着面積を減少させ、なおかつ発生した気体が被着体と粘着剤層Aとの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
なお、上記表層部とは、粘着剤層Aの厚さにもよるが、表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表層部にのみ含有されるとは、例えば、粘着剤層Aの表面に付着した気体発生剤が粘着剤層Aと相溶して吸収された態様、粘着剤層Aの表面に気体発生剤が均一に付着している態様等が含まれる。
【0026】
上記粘着剤層Aの表層部にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、粘着剤層Aの最外層に1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する樹脂を塗工する方法や、予め作製した粘着剤層Aの表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。
【0027】
上記気体発生剤は、粒子として存在しないことが好ましい。なお、本明細書において、気体発生剤が粒子として存在しないとは、電子顕微鏡により粘着剤層を観察したときに気体発生剤を確認することができないことを意味する。粘着剤層A中に気体発生剤が粒子として存在すると、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、粘着剤層Aの表面平滑性が悪くなったりすることがある。
【0028】
上記気体発生剤を粒子として存在しないようにするには、通常、粘着剤層A中に溶解する気体発生剤を選択するが、粘着剤層A中に溶解しない気体発生剤を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤層A中に気体発生剤を微分散させる。上記粘着剤層A中にアゾ化合物を微分散させるためには、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましく、更に、必要に応じてこれらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いてより細かい微粒子とされることがより好ましい。すなわち、電子顕微鏡により粘着剤層Aを観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0029】
上記気体発生剤から発生した気体は粘着剤層Aの外へ放出されることが好ましい。これにより、本発明の両面粘着テープに刺激を与えると気体発生剤から発生した気体が被着体から粘着剤層Aの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させるため、容易に被着体を剥離することができる。この際、気体発生剤から発生した気体の大部分は粘着剤層Aの外へ放出されることが好ましい。上記気体発生剤から発生した気体の大部分が粘着剤層Aの外へ放出されないと、粘着剤層Aが気体発生剤から発生した気体により全体的に発泡してしまい、接着力を低下させる効果を充分に得ることができず、被着体に糊残りを生じさせてしまうことがある。なお、被着体に糊残りを生じさせない程度であれば、気体発生剤から発生した気体の一部が粘着剤層A中に溶け込んでいたり、気泡として粘着剤層A中に存在していたりしてもかまわない。
【0030】
上記粘着剤層Aの主成分となる接着樹脂としては特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が好適である。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、上記光硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、感光性オニウム塩等の光カチオン触媒を含有するエポキシ樹脂や感光性ビニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0032】
なかでも、上記接着樹脂は、加熱又は加圧により流動性を示すものであることが好ましい。加熱又は加圧により流動性を示す接着樹脂を用いることにより、粘着剤層Aが流動性を示す条件下で被着体との貼り合わせを行えば、被着体表面に凹凸がある場合でも、凹凸に良好に追随して被着体に密着することができる。
なお、本明細書において加熱により流動性を示すとは、加熱しない状態においては固体状であるが、加熱することにより凹凸に追随できる程度の硬さになることを意味する。すなわち、ホットメルト型接着樹脂であることを意味する。また、本明細書において加圧により流動性を示すとは、加圧することにより凹凸に追随できる程度の硬さを有する接着性樹脂であることを意味する。
【0033】
上記ホットメルト型接着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル酸メチル又はアクリル酸ブチル等を主なモノマー単位とするポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
【0034】
また、架橋度の高い樹脂は、流動性が乏しくなることから、上記接着樹脂は、刺激により架橋する未架橋又は低架橋の樹脂であることが好ましい。なお、接着樹脂が流動性を示す条件下で被着体との接着を行った後、刺激を与えて一部を架橋させれば、接着樹脂がある程度硬化収縮することで被着体との接着力をより強固にできる。更に、気体発生剤から気体を発生させて被着体を剥離する前に、刺激を与えることにより接着樹脂を完全に架橋させれば、気体発生剤から気体を発生させた際に接着樹脂が発泡することを効果的に防止できるので、被着体を容易に剥離させることができる。具体的には、ゲル分率が30重量%以下であることが好ましい。ゲル分率が30重量%を超えると、加熱した際の流動性が乏しく大きな凹凸のある被着体では、充分に凹凸に追随して密着できないことがある。より好ましくは10重量%であり、更に好ましくは5重量%であり、特に好ましくは0重量%である。
なお、本明細書において、接着樹脂のゲル分率とは、酢酸エチルに対して溶解しない樹脂の重量割合を意味する。
【0035】
上記接着樹脂を架橋させる刺激としては特に限定されず、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、特定波長範囲の光による刺激により気体を発生する気体発生剤に対して、上記特定波長範囲以外の波長の光による刺激により架橋する接着樹脂が好適である。
なお、上記接着樹脂は、粘着剤層Aを形成するためにある程度の凝集力を要する場合には、必要とされる程度の架橋が施されていてもよい。
【0036】
上記接着樹脂のなかでも、刺激により架橋する未架橋の樹脂としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとの混合物を主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとの混合物を主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等が挙げられる。
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、ホットメルト型ポリマーを主成分として含有する場合には、加熱により流動性を示し、オリゴマー成分を高い割合で含有する場合には、加圧により流動性を示す。
【0037】
上記光硬化型接着性樹脂又は熱硬化型接着性樹脂等の後硬化型接着性樹脂は、光の照射又は加熱により接着樹脂の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤層Aの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0038】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)を予め合成し、分子内に上記官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0039】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0040】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0041】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0042】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合にはエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基がヒドロキシル基の場合にはイソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基がエポキシ基の場合にはカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、上記官能基がアミノ基の場合にはエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0043】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、重量平均分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは光照射による粘着剤層Aの三次元網状化が効率よくなされるように、重量平均分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、市販のオリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解して重合硬化を開始させる活性ラジカルを発生するものが挙げられ、具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上、日本油脂社製)等が好適に用いられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記後硬化型粘着剤は、以上の成分のほか、本発明の目的を損なわない限りにおいて、必要に応じて粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等を含有していてもよい。
【0047】
上記粘着剤層Aは、上記気体発生剤としてアジド化合物又はアゾ化合物等の光による刺激により気体を発生する気体発生剤を用いる場合には、更に光増感剤を含有することが好ましい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、被着体がポリイミド等のアジド化合物又はアゾ化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、被着体越しに光を照射して気体を発生させることができ被着体の選択の幅が広がる。
上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。なお、チオキサントン増感剤は、光重合開始剤としても用いることができる。
【0048】
上記粘着剤層Aは、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。上記粘着剤層Aが複数層からなる場合には、表層部以外の層は、気体発生剤を含有しないことが好ましい。なかでも、気体発生剤を含有する層と気体発生剤を含有しない層とが接する場合には、これらの層は異なる組成の樹脂成分からなることがより好ましく、異なる極性を有する樹脂成分からなることが特に好ましい。これにより、気体発生剤が層間で移行することを防止するか、移行しにくくすることができる。
【0049】
上記粘着剤層Bとしては粘着性を示すものであれば特に限定されず、上記粘着剤層Aと同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0050】
上記粘着剤層A及び上記粘着剤層Bの厚さの下限は被着体表面の最大段差以上であり、上限は200μmである。上記粘着剤層Aの厚さと上記粘着剤層Bの厚さがともに、被着体表面の最大段差未満であると、一方の被着体の表面の凹凸形状により、他の一方の被着体との接着面に凹凸を生じてしまう。上記粘着剤層Aの厚さと上記粘着剤層Bの厚さがともに、200μmを超えると、テープの柔軟性が不足しがちになる。
【0051】
本発明の両面粘着テープを製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記接着樹脂と上記気体発生剤とを混練した粘着剤組成物を上記基材上に流延して固化させる方法等が挙げられる。
しかしながら、接着樹脂と気体発生剤とを混練する際に生じる熱により気体発生剤の分解が起こることがあり、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を製造することが困難な場合がある。このような場合には、気体発生剤、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーを主成分とする重合性原料、及び、気体発生剤の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光を照射されることで活性化する光重合開始剤等を含有する原料に、気体発生剤の感光波長の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光波長の光を照射して光重合開始剤を活性化して重合性原料を重合させて粘着剤組成物を得る方法が好適に用いられる。この方法によれば、接着樹脂と気体発生剤とを混練する必要がなく、熱により気体発生剤の分解が始まるおそれがない。また、粘着剤組成物の製造を1回の反応で完了することができ、溶剤を使用する必要もないので、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を安全かつ容易に製造できる。
【0052】
本発明の両面粘着テープの用途としては特に限定されず、例えば、ICチップの製造の際にウエハを支持板に接着して補強するために用いる研磨用テープ等が挙げられる。
【0053】
少なくとも、本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程4を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記ウエハとを貼り合わせるICチップの製造方法によれば、粘着剤層Bからなる面に表面に凹凸を有する支持板を貼り付けても、粘着剤層Aからなる面が凹凸を生じることなく平滑な面でウエハと接着することができ、かつ、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させることによりウエハを損傷することなく容易に剥がすことができるので、厚さが50μm程度のウエハを製造する場合であっても、平滑性に優れたものを歩留まりよく製造することができる。
このような少なくとも、本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程4を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記ウエハとを貼り合わせるICチップの製造方法もまた本発明の1つである。
【0054】
また、少なくとも、本発明の両面粘着テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、上記ウエハが貼りつけられた本発明の両面粘着テープから上記支持板を剥離する工程4、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程5を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記支持板とを貼り合わせるICチップの製造方法によれば、粘着剤層Aからなる面に表面に凹凸を有する支持板を貼り付けても、粘着剤層Bからなる面が凹凸を生じることなく平滑な面でウエハと接着することができ、かつ、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させることにより支持板を損傷することなく容易に剥がした後に、ウエハから本発明の両面粘着テープをめくるようにして容易に剥離することができるので、厚さが50μm程度のウエハを製造する場合であっても、平滑性に優れたものを歩留まりよく製造することができる。
このような少なくとも、本発明の両面粘着テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、上記ウエハが貼りつけられた本発明の両面粘着テープから上記支持板を剥離する工程4、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程5を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記支持板とを貼り合わせるICチップの製造方法もまた本発明の1つである。
【0055】
本発明の両面粘着テープは、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、上記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成されたものであって、上記粘着剤層A及び上記粘着剤層Bの厚さ、並びに、上記基材の厚さが好適化されていることにより、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができるものである。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート40重量部、光重合開始剤(イルガキュア651)5重量部、ポリイソシアネート0.5重量部を混合し粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.01重量部
【0058】
得られた粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)30重量部、及び、2,4−ジエチルチオキサントン3.6重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤組成物(2)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0059】
<両面粘着テープの作製>
粘着剤組成物(2)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理が施された厚さ30μmのPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(2)層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。
【0060】
粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(1)層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、粘着剤(2)層を設けたPETフィルムの粘着剤(2)層のない側の面と、粘着剤(1)層を設けたPETフィルムの粘着剤(1)層の面とを貼り合わせた。その後40℃、3日間静置養生を行った。
これにより、両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0061】
<ICチップの製造>
(シリコンウエハとガラス板との貼り合わせ工程)
両面粘着テープの粘着剤(2)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚さ約750μmで、表面に形成された回路の凹凸が5μm、周辺部が15μmであるシリコンウエハの回路が形成された面にラミネーターを用いて両面粘着テープを貼り付けた後、シリコンウエハの大きさに合わせて両面粘着テープを切断した。
次に、粘着剤(1)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cm、表面粗さ3μmのガラス板を粘着剤(1)層に真空プレス装置を用いて貼り付けた。
次いで、60℃で2分間予熱した後、加熱プレス装置を用いて60℃、98N/cm2で1分間加熱プレスを行った。両面粘着テープはガラス板とシリコンウエハのいずれにも密着していた。
【0062】
(紫外線照射工程1)
ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が10mW/cm2となるよう照度を調節して2秒間照射した。これにより、両面粘着テープはより一層強固に接着した。
【0063】
(研磨工程)
ガラス板で補強されたシリコンウエハを研磨装置に取り付け、シリコンウエハの厚さが約50μmになるまで研磨した。このとき研磨面に散布した冷却水がシリコンウエハと粘着剤層との間に侵入することはなかった。
研磨装置からシリコンウエハを取り外し、ダイシングテープをシリコンウエハの上に貼り付けた。
シリコンウエハの研磨面は、充分に平滑であり、研磨ムラは確認できなかった。
【0064】
(紫外線照射工程2)
ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節して2分間照射した。
【0065】
(ウエハの剥離工程)
シリコンウエハを固定し、ガラス板を真上に引っ張った。両面粘着テープとともにガラス板をシリコンウエハから容易に剥離することができた。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路(ICチップ)は、通常純度の高い棒状の半導体単結晶等をスライスしてウエハとしたのち、フォトレジストを利用してウエハ表面に所定の回路パターンを形成して、次いでウエハ裏面を研磨機により研磨して、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより、製造されている。
【0003】
ここで、上記研磨時には、ウエハ表面に粘着シート類(研磨用テープ)を貼り付けて、ウエハの破損を防止したり、研磨加工を容易にしたりしており、上記ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類(ダイシングテープ)を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されたチップをダイシングテープのフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
【0004】
近年、ICチップの用途が広がるにつれて、ICカード類に用いたり、積層して使用したりすることができる厚さ50μm程度の極めて薄いウエハも要求されるようになってきた。しかしながら、厚さが50μm程度のウエハは、従来の厚さが100〜600μm程度のウエハに比べて反りが大きく衝撃により割れやすくなるので取扱性に劣り、従来のウエハと同様に加工しようとすると、破損する場合がある。
【0005】
厚さが50μm程度のウエハは、衝撃を受けやすい研磨工程又はダイシング工程で破損する危険性が高く、また、ICチップの電極上にバンプを作製する際にも破損しやすいため歩留まりが悪い。このため、厚さ50μm程度の薄いウエハからICチップを製造する過程におけるウエハの取扱性の向上が重要な課題となっていた。
【0006】
これに対して、研磨用テープとして両面粘着テープを用い、厚膜ウエハを支持板に接着して補強した状態で研磨する方法が提案されている。このとき両面粘着テープは、研磨工程中には強固に接着する一方で、研磨工程終了後には得られた薄膜ウエハを損傷することなく支持板から剥がせることが求められる。
【0007】
両面粘着テープを剥がす方法としては、例えば、物理的な力を加えて引き剥がすことが考えられる。しかしながら、この方法では薄膜ウエハに重大な損傷を与えてしまうことがある。
また、両面粘着テープの粘着剤層を溶解できる溶剤を用いて両面粘着テープを剥がす方法も考えられる。しかしながら、この方法も薄膜ウエハが溶剤によって侵されるために用いることができない。
このように、いったん被着体に接着した両面粘着テープは、接着力が強固であるほど、薄膜ウエハを損傷させることなく剥がすことは、困難であるという問題があった。
【0008】
また、厚さ50μm程度の薄膜ウエハを研磨により得る際には、わずかな研磨ムラによっても得られる薄膜ウエハの平滑性が大きく損なわれるため、平滑な表面を有する両面粘着テープにより厚膜ウエハを固定して研磨を行う必要がある。しかし、平滑な表面を有する両面粘着テープを用いても、厚膜ウエハの補強に用いる支持板の表面にわずかな凹凸があることにより、支持板の表面の凹凸形状に対応した研磨ムラが生じてしまうことがあるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷させることなく容易に剥離させることができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、前記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成された両面粘着テープであって、前記粘着剤層A及び前記粘着剤層Bは、厚さが被着体表面の最大段差より厚く、かつ、200μm以下である両面粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の両面粘着テープは、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、上記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成されたものである。
上記気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成されていることにより、本発明の両面粘着テープは、刺激が与えられると、粘着剤層A中の気体発生剤から発生した気体が接着面の少なくとも一部を剥がすので、接着力が低下して粘着剤層A側の被着体を容易に剥離させることができる。
【0012】
上記基材としては特に限定されないが、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させる刺激が光による刺激である場合には、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。また、上記粘着剤層Aが加熱により流動性を示すものである場合には、高温に加熱されても軟化しないものであることが好ましく、例えば、芳香族ポリエステル、ポリエーテルニトリル等の耐熱性樹脂からなるシート、網状の金属シートを埋め込み補強したシート等が好適に用いられる。
【0013】
上記基材は、想定される被着体の表面の凹凸よりも大きく、ほぼ基材の厚さと同じ大きさのビーズを含有していてもよい。このようなビーズを含有する基材は、加圧されてもビーズがスペーサとして働くので一定の厚さを維持して平滑性を保つことができるので、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができる。
【0014】
上記基材の厚さの好ましい下限は10μm、好ましい上限は200μmである。10μm未満であると、一方の被着体の表面の凹凸形状により、他の一方の被着体との接着面に凹凸を生じてしまうことがある。200μmを超えると、テープとしての柔軟性が不足しがちになることがある。
【0015】
上記基材には、プライマー処理が施されていてもよい。プライマー処理が施されていることにより、粘着剤層Aや粘着剤層Bとの接着力を向上し、剥離の際の被着体への糊残りをより効果的に防止することができる。
上記プライマー処理としては特に限定されず、例えば、基材の表面にプライマー樹脂を塗布する処理、基材の表面にコロナ処理を施す処理等が挙げられる。
【0016】
上記粘着剤層Aは、刺激により気体を発生する気体発生剤を少なくとも表層部に含有するものである。
上記気体発生剤から気体を発生させる刺激としては特に限定されず、例えば、光、熱、超音波、衝撃等が挙げられる。なかでも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線、可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、粘着剤層Aは、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。また、粘着剤層Aが熱可塑性樹脂からなる場合には、光を照射する際に、フィルタ等により熱線を除去した光を照射することが好ましい。熱線を除去した光であれば照射強度が高くとも、粘着剤層Aが加熱されて柔らかくなりすぎることがなく、気体発生剤から発生した気体は、粘着剤層Aを発泡させることなく、外へ放出される。
【0017】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等が好適に用いられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0018】
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等の下記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物が好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ低級アルキル基を表し、R3は、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、R1とR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0021】
上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、熱分解温度が高いことから、後述する被着体との接着の際に粘着剤層Aの流動化のために加熱が必要な場合にも気体が発生してしまうことがなく、また、粘着剤への溶解性にも優れている。これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0022】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、特定の波長の光、熱、超音波及び衝撃等による刺激を与えることにより分解して、窒素ガスを発生する。
【0023】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取り扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによって被着体が損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
【0024】
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取り扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないため被着体を損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。従って、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0025】
上記気体発生剤は粘着剤層Aの全体に含有されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤層Aの全体に含有させておくと、粘着剤層Aの全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、本発明の両面粘着テープを被着体からうまく剥がせなかったり、糊残りしたりするおそれがある。従って、上記気体発生剤は、粘着剤層Aの表層部にのみ含有されていることが好ましい。表層部にのみ含有させておけば、粘着剤層Aの全体が発泡体とならずに、被着体との接着面で気体発生剤から気体が発生することにより接着面積を減少させ、なおかつ発生した気体が被着体と粘着剤層Aとの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
なお、上記表層部とは、粘着剤層Aの厚さにもよるが、表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表層部にのみ含有されるとは、例えば、粘着剤層Aの表面に付着した気体発生剤が粘着剤層Aと相溶して吸収された態様、粘着剤層Aの表面に気体発生剤が均一に付着している態様等が含まれる。
【0026】
上記粘着剤層Aの表層部にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、粘着剤層Aの最外層に1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する樹脂を塗工する方法や、予め作製した粘着剤層Aの表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。
【0027】
上記気体発生剤は、粒子として存在しないことが好ましい。なお、本明細書において、気体発生剤が粒子として存在しないとは、電子顕微鏡により粘着剤層を観察したときに気体発生剤を確認することができないことを意味する。粘着剤層A中に気体発生剤が粒子として存在すると、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、粘着剤層Aの表面平滑性が悪くなったりすることがある。
【0028】
上記気体発生剤を粒子として存在しないようにするには、通常、粘着剤層A中に溶解する気体発生剤を選択するが、粘着剤層A中に溶解しない気体発生剤を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤層A中に気体発生剤を微分散させる。上記粘着剤層A中にアゾ化合物を微分散させるためには、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましく、更に、必要に応じてこれらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いてより細かい微粒子とされることがより好ましい。すなわち、電子顕微鏡により粘着剤層Aを観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0029】
上記気体発生剤から発生した気体は粘着剤層Aの外へ放出されることが好ましい。これにより、本発明の両面粘着テープに刺激を与えると気体発生剤から発生した気体が被着体から粘着剤層Aの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させるため、容易に被着体を剥離することができる。この際、気体発生剤から発生した気体の大部分は粘着剤層Aの外へ放出されることが好ましい。上記気体発生剤から発生した気体の大部分が粘着剤層Aの外へ放出されないと、粘着剤層Aが気体発生剤から発生した気体により全体的に発泡してしまい、接着力を低下させる効果を充分に得ることができず、被着体に糊残りを生じさせてしまうことがある。なお、被着体に糊残りを生じさせない程度であれば、気体発生剤から発生した気体の一部が粘着剤層A中に溶け込んでいたり、気泡として粘着剤層A中に存在していたりしてもかまわない。
【0030】
上記粘着剤層Aの主成分となる接着樹脂としては特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が好適である。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、上記光硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、感光性オニウム塩等の光カチオン触媒を含有するエポキシ樹脂や感光性ビニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0032】
なかでも、上記接着樹脂は、加熱又は加圧により流動性を示すものであることが好ましい。加熱又は加圧により流動性を示す接着樹脂を用いることにより、粘着剤層Aが流動性を示す条件下で被着体との貼り合わせを行えば、被着体表面に凹凸がある場合でも、凹凸に良好に追随して被着体に密着することができる。
なお、本明細書において加熱により流動性を示すとは、加熱しない状態においては固体状であるが、加熱することにより凹凸に追随できる程度の硬さになることを意味する。すなわち、ホットメルト型接着樹脂であることを意味する。また、本明細書において加圧により流動性を示すとは、加圧することにより凹凸に追随できる程度の硬さを有する接着性樹脂であることを意味する。
【0033】
上記ホットメルト型接着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル酸メチル又はアクリル酸ブチル等を主なモノマー単位とするポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
【0034】
また、架橋度の高い樹脂は、流動性が乏しくなることから、上記接着樹脂は、刺激により架橋する未架橋又は低架橋の樹脂であることが好ましい。なお、接着樹脂が流動性を示す条件下で被着体との接着を行った後、刺激を与えて一部を架橋させれば、接着樹脂がある程度硬化収縮することで被着体との接着力をより強固にできる。更に、気体発生剤から気体を発生させて被着体を剥離する前に、刺激を与えることにより接着樹脂を完全に架橋させれば、気体発生剤から気体を発生させた際に接着樹脂が発泡することを効果的に防止できるので、被着体を容易に剥離させることができる。具体的には、ゲル分率が30重量%以下であることが好ましい。ゲル分率が30重量%を超えると、加熱した際の流動性が乏しく大きな凹凸のある被着体では、充分に凹凸に追随して密着できないことがある。より好ましくは10重量%であり、更に好ましくは5重量%であり、特に好ましくは0重量%である。
なお、本明細書において、接着樹脂のゲル分率とは、酢酸エチルに対して溶解しない樹脂の重量割合を意味する。
【0035】
上記接着樹脂を架橋させる刺激としては特に限定されず、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、特定波長範囲の光による刺激により気体を発生する気体発生剤に対して、上記特定波長範囲以外の波長の光による刺激により架橋する接着樹脂が好適である。
なお、上記接着樹脂は、粘着剤層Aを形成するためにある程度の凝集力を要する場合には、必要とされる程度の架橋が施されていてもよい。
【0036】
上記接着樹脂のなかでも、刺激により架橋する未架橋の樹脂としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとの混合物を主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとの混合物を主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等が挙げられる。
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、ホットメルト型ポリマーを主成分として含有する場合には、加熱により流動性を示し、オリゴマー成分を高い割合で含有する場合には、加圧により流動性を示す。
【0037】
上記光硬化型接着性樹脂又は熱硬化型接着性樹脂等の後硬化型接着性樹脂は、光の照射又は加熱により接着樹脂の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤層Aの接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0038】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)を予め合成し、分子内に上記官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0039】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0040】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0041】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0042】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合にはエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基がヒドロキシル基の場合にはイソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基がエポキシ基の場合にはカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、上記官能基がアミノ基の場合にはエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0043】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、重量平均分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは光照射による粘着剤層Aの三次元網状化が効率よくなされるように、重量平均分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、市販のオリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解して重合硬化を開始させる活性ラジカルを発生するものが挙げられ、具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上、日本油脂社製)等が好適に用いられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記後硬化型粘着剤は、以上の成分のほか、本発明の目的を損なわない限りにおいて、必要に応じて粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等を含有していてもよい。
【0047】
上記粘着剤層Aは、上記気体発生剤としてアジド化合物又はアゾ化合物等の光による刺激により気体を発生する気体発生剤を用いる場合には、更に光増感剤を含有することが好ましい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、被着体がポリイミド等のアジド化合物又はアゾ化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、被着体越しに光を照射して気体を発生させることができ被着体の選択の幅が広がる。
上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。なお、チオキサントン増感剤は、光重合開始剤としても用いることができる。
【0048】
上記粘着剤層Aは、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。上記粘着剤層Aが複数層からなる場合には、表層部以外の層は、気体発生剤を含有しないことが好ましい。なかでも、気体発生剤を含有する層と気体発生剤を含有しない層とが接する場合には、これらの層は異なる組成の樹脂成分からなることがより好ましく、異なる極性を有する樹脂成分からなることが特に好ましい。これにより、気体発生剤が層間で移行することを防止するか、移行しにくくすることができる。
【0049】
上記粘着剤層Bとしては粘着性を示すものであれば特に限定されず、上記粘着剤層Aと同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0050】
上記粘着剤層A及び上記粘着剤層Bの厚さの下限は被着体表面の最大段差以上であり、上限は200μmである。上記粘着剤層Aの厚さと上記粘着剤層Bの厚さがともに、被着体表面の最大段差未満であると、一方の被着体の表面の凹凸形状により、他の一方の被着体との接着面に凹凸を生じてしまう。上記粘着剤層Aの厚さと上記粘着剤層Bの厚さがともに、200μmを超えると、テープの柔軟性が不足しがちになる。
【0051】
本発明の両面粘着テープを製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記接着樹脂と上記気体発生剤とを混練した粘着剤組成物を上記基材上に流延して固化させる方法等が挙げられる。
しかしながら、接着樹脂と気体発生剤とを混練する際に生じる熱により気体発生剤の分解が起こることがあり、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を製造することが困難な場合がある。このような場合には、気体発生剤、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーを主成分とする重合性原料、及び、気体発生剤の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光を照射されることで活性化する光重合開始剤等を含有する原料に、気体発生剤の感光波長の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光波長の光を照射して光重合開始剤を活性化して重合性原料を重合させて粘着剤組成物を得る方法が好適に用いられる。この方法によれば、接着樹脂と気体発生剤とを混練する必要がなく、熱により気体発生剤の分解が始まるおそれがない。また、粘着剤組成物の製造を1回の反応で完了することができ、溶剤を使用する必要もないので、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を安全かつ容易に製造できる。
【0052】
本発明の両面粘着テープの用途としては特に限定されず、例えば、ICチップの製造の際にウエハを支持板に接着して補強するために用いる研磨用テープ等が挙げられる。
【0053】
少なくとも、本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程4を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記ウエハとを貼り合わせるICチップの製造方法によれば、粘着剤層Bからなる面に表面に凹凸を有する支持板を貼り付けても、粘着剤層Aからなる面が凹凸を生じることなく平滑な面でウエハと接着することができ、かつ、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させることによりウエハを損傷することなく容易に剥がすことができるので、厚さが50μm程度のウエハを製造する場合であっても、平滑性に優れたものを歩留まりよく製造することができる。
このような少なくとも、本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程4を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記ウエハとを貼り合わせるICチップの製造方法もまた本発明の1つである。
【0054】
また、少なくとも、本発明の両面粘着テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、上記ウエハが貼りつけられた本発明の両面粘着テープから上記支持板を剥離する工程4、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程5を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記支持板とを貼り合わせるICチップの製造方法によれば、粘着剤層Aからなる面に表面に凹凸を有する支持板を貼り付けても、粘着剤層Bからなる面が凹凸を生じることなく平滑な面でウエハと接着することができ、かつ、粘着剤層A中の気体発生剤から気体を発生させることにより支持板を損傷することなく容易に剥がした後に、ウエハから本発明の両面粘着テープをめくるようにして容易に剥離することができるので、厚さが50μm程度のウエハを製造する場合であっても、平滑性に優れたものを歩留まりよく製造することができる。
このような少なくとも、本発明の両面粘着テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程1、上記ウエハを、本発明の両面粘着テープを介して上記支持板に固定した状態で研磨する工程2、本発明の両面粘着テープに刺激を与える工程3、上記ウエハが貼りつけられた本発明の両面粘着テープから上記支持板を剥離する工程4、及び、上記ウエハから本発明の両面粘着テープを剥離する工程5を有するICチップの製造方法であって、上記本発明の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、本発明の両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と上記支持板とを貼り合わせるICチップの製造方法もまた本発明の1つである。
【0055】
本発明の両面粘着テープは、基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、上記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成されたものであって、上記粘着剤層A及び上記粘着剤層Bの厚さ、並びに、上記基材の厚さが好適化されていることにより、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができるものである。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート40重量部、光重合開始剤(イルガキュア651)5重量部、ポリイソシアネート0.5重量部を混合し粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.01重量部
【0058】
得られた粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)30重量部、及び、2,4−ジエチルチオキサントン3.6重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤組成物(2)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0059】
<両面粘着テープの作製>
粘着剤組成物(2)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理が施された厚さ30μmのPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(2)層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。
【0060】
粘着剤組成物(1)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(1)層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、粘着剤(2)層を設けたPETフィルムの粘着剤(2)層のない側の面と、粘着剤(1)層を設けたPETフィルムの粘着剤(1)層の面とを貼り合わせた。その後40℃、3日間静置養生を行った。
これにより、両面に粘着剤層が設けられ、その表面が離型処理が施されたPETフィルムで保護された両面粘着テープを得た。
【0061】
<ICチップの製造>
(シリコンウエハとガラス板との貼り合わせ工程)
両面粘着テープの粘着剤(2)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚さ約750μmで、表面に形成された回路の凹凸が5μm、周辺部が15μmであるシリコンウエハの回路が形成された面にラミネーターを用いて両面粘着テープを貼り付けた後、シリコンウエハの大きさに合わせて両面粘着テープを切断した。
次に、粘着剤(1)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cm、表面粗さ3μmのガラス板を粘着剤(1)層に真空プレス装置を用いて貼り付けた。
次いで、60℃で2分間予熱した後、加熱プレス装置を用いて60℃、98N/cm2で1分間加熱プレスを行った。両面粘着テープはガラス板とシリコンウエハのいずれにも密着していた。
【0062】
(紫外線照射工程1)
ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が10mW/cm2となるよう照度を調節して2秒間照射した。これにより、両面粘着テープはより一層強固に接着した。
【0063】
(研磨工程)
ガラス板で補強されたシリコンウエハを研磨装置に取り付け、シリコンウエハの厚さが約50μmになるまで研磨した。このとき研磨面に散布した冷却水がシリコンウエハと粘着剤層との間に侵入することはなかった。
研磨装置からシリコンウエハを取り外し、ダイシングテープをシリコンウエハの上に貼り付けた。
シリコンウエハの研磨面は、充分に平滑であり、研磨ムラは確認できなかった。
【0064】
(紫外線照射工程2)
ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節して2分間照射した。
【0065】
(ウエハの剥離工程)
シリコンウエハを固定し、ガラス板を真上に引っ張った。両面粘着テープとともにガラス板をシリコンウエハから容易に剥離することができた。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、一方の面に表面に凹凸を有する被着体を貼り付けても、他の一方の面に凹凸を生じることなく平滑な面で他の一方の被着体と接着することができ、かつ、被着体を損傷することなく容易に剥がすことができる両面粘着テープ、及び、この両面粘着テープを用いたICチップの製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 基材の一方の面に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層Aが形成され、前記基材の他の一方の面に、粘着剤層Bが形成された両面粘着テープであって、
前記粘着剤層A及び前記粘着剤層Bは、厚さが被着体表面の最大段差より厚く、かつ、200μm以下である
ことを特徴とする両面粘着テープ。 - 基材は、厚さが10〜200μmであることを特徴とする請求項1記載の両面粘着テープ。
- 少なくとも、
請求項1又は2記載の両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1、
前記ウエハを、前記両面粘着テープを介して前記支持板に固定した状態で研磨する工程2、
前記両面粘着テープに刺激を与える工程3、及び、
前記ウエハから前記両面粘着テープを剥離する工程4を有するICチップの製造方法であって、
前記両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、前記両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と前記ウエハとを貼り合わせる
ことを特徴とするICチップの製造方法。 - 少なくとも、
請求項1又は2記載の両面粘着テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程1、
前記ウエハを、前記両面粘着テープを介して前記支持板に固定した状態で研磨する工程2、
前記両面粘着テープに刺激を与える工程3、
前記ウエハが貼りつけられた前記両面粘着テープから前記支持板を剥離する工程4、及び、
前記ウエハから前記両面粘着テープを剥離する工程5を有するICチップの製造方法であって、
前記両面粘着テープを介してウエハを支持板に固定する工程1において、前記両面粘着テープの気体発生剤を少なくとも表層部に含有する粘着剤層Aからなる面と前記支持板とを貼り合わせる
ことを特徴とするICチップの製造方法。
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