JP2004182576A - 高周波用低温焼成誘電体材料および高周波用積層電子部品 - Google Patents

高周波用低温焼成誘電体材料および高周波用積層電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】fQが高く、かつ機械的強度が高い高周波用低温焼成誘電体材料および高周波用積層電子部品を提供する。
【解決手段】主成分をAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成し、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%とするとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0%を含む)のAl、Si、Sr、Tiを含有し、合計100質量%に対し副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、ZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に携帯電話用電子部品に使用される高周波用低温焼成誘電体材料に関し、また、本材料を用いた高周波用積層電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機の小型化、高機能化、軽量化のニーズが高まりとともに、携帯電話に用いられる電子部品は、従来の一つの機能を有する単機能部品から複数の機能を一つの部品として複合化し、小型に構成したものに変化している。
電子部品の小型・複合化の手段として、LTCC材料を用いてインダクタやコンデンサなどの多数の回路素子を積層基板に内蔵させて、整合回路、フィルタ、方向性結合器、位相線路などの高周波回路を構成し、さらに半導体素子などを実装することで増幅器やスイッチ等を複合することが行われている。このような電子部品用の誘電体材料としては、高周波での損失が少ない材料、即ちfQが高い材料で、かつ、部品内部の配線材料用として電気伝導度が高いAgやCuと同時焼成できるような材料が望まれ、これまで多くの材料が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−272960
【0004】
ところで、携帯電話機の信頼性試験の一つとして落下試験がある。この試験は、携帯電話機を1.5〜2mの高さからコンクリート面に落下させて、電気的な機能劣化が無いかどうかを確認する試験である。携帯電話の軽量化により、前記電子部品が実装されるプリント基板や筐体の薄肉化が進んでいるため、前記電子部品は機能のみならず、部品自体の機械強度や耐衝撃性が大きいこと、および部品をプリント基板に半田付け後、端子の密着強度がより大きいことへの要求が強くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の高周波用低温焼成誘電体材料用いて積層電子部品を作製し、前述の携帯電話の信頼性試験である落下テストを模擬して機械強度や耐衝撃性を評価したところ、落下後クラックや割れが発生し、電気的な機能を維持できないもの、場合によっては破壊してしまうものがあった。
強度向上を図るには、電子部品内部の配線構造の変更による方法があるが、自ずと限界がある。このため並行して、誘電体材料自体の組成検討などにより強度向上が必要であるが、これまでの低温焼成誘電体材料においては、材料のfQを高く維持しながら、かつ強度を向上することは困難であるという課題があった。
そこで本発明の目的は、高周波用低温焼成誘電体材料において、fQが高く、かつ機械的強度が高い高周波用低温焼成誘電体材料を提供し、もって機械的強度が高い積層電子部品を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、高周波用低温焼成誘電体材料であって、主成分がAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成され、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%としたとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0%を含む)のAl、Si、Sr、Tiを含有し、
前記合計100質量%に対し副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、ZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有している高周波用低温焼成誘電体材料である。
第2の発明は、高周波用低温焼成誘電体材料であって、主成分がAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成され、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%としたとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0%を含む)のAl、Si、Sr、Tiを含有し、
前記合計100質量%に対し副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、Cu、Mn、Agの群のうちの少なくとも1種をCuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%、Agを0.01〜5質量%の含有し、更にZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有している高周波用低温焼成誘電体材料である。
第1又は第2の発明において、ZrOが、0.01重量%未満ではその機械的強度の向上効果が不十分であり、他方、2重量%を超える場合は、fQの低下が認められ好ましくない。ZrO添加による機械的強度の向上効果をより期待するためには、0.3重量%〜1.5重量%がより好ましい。
第1又は第2の発明においては、組織中にSrAlSiを主成分とする長石族結晶とともにZrOの結晶を含むものである。前記組織中には、六方晶系のSrAlSiを主成分とする長石族結晶と単斜晶系のSrAlSiを主成分とする長石族結晶とが混在し、相対的に単斜晶系のSrAlSiを主成分とする長石族結晶が六方晶系のSrAlSiを主成分とする長石族結晶よりも多く含む様にするのが好ましく、SrAlSiを主成分とする長石族結晶を実質的に単斜晶系の長石族結晶とするのがより好ましい。
第3の発明は、第1又は第2の発明の高周波用低温焼成誘電体材料を用いて構成する高周波用積層電子部品である。
【0007】
(作用)
本発明者等は、この高周波用低温焼成誘電体材料の基礎となる誘電体材料を前記特許文献1にて開示している。この誘電体材料を用いて種々の酸化物セラミックスを中心として、添加物による強度改善の検討を行った。その結果、ZrOを所定量添加すると、機械的強度向上に有効であることを見出すことができた。
その機械的強度向上のメカニズムについて、組織中の結晶系に着目しX線回折法により詳細に調査した。本発明の基礎となる誘電体材料は800℃前後からガラスの流動性を利用して収縮し、緻密化したのち、900℃以上の保持温度にて、SrAlSiを主成分とする長石族の結晶が成長し、ガラス状態から結晶化する組織を有する。このように構成することでfQ特性や、機械的強度を向上させることが出来る。前記SrAlSiの結晶系は、850℃前後でも一部結晶化が開始しており、その温度領域では六方晶であるのに対して、900℃以上で保持した後は、単斜晶系(b軸)に変化する。
SrAlSiの六方晶の格子定数は、abc軸それぞれ、a:0.520nm、b:0.520nm、c:0.760nmである(JCPDSファイル、カードNo.35−0073参照)。他方、単斜晶の格子定数は、同様にそれぞれ、a:0.839nm、b:1.297nm、c:0.713nmである(JCPDSファイル、カードNo.38−1454参照)。
また、ZrOは斜方晶系で、格子定数は、同様にそれぞれ、a:0.504nm、b:0.509nm、c:0.526nmである(JCPDSファイル、カードNo.37−1413参照)。
結晶化の初期段階で現れる六方晶のSrAlSiとZrOは、結晶構造が六方晶と斜方晶と異なり、また格子定数の値の内c軸が異なっているが、a軸及びb軸の値は非常に近い。このため、斜方晶のZrOの存在により、六方晶のSrAlSiの結晶化が促進され、更には単斜晶系(b軸)への変化も早くなり、十分な結晶化が進むと考えた。結晶化レベルの検証であるが、ZrOを添加した誘電体材料を900℃で焼成した焼成体をTEM(透過型顕微鏡)にて観察し、電子線回折像を解析して組織中のガラス相の有無を調べたところ、その存在を確認出来ず、確認できた相は実施的に全て結晶相であった。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、実施例について詳細に説明する。
高周波用低温焼成誘電体材料の出発原料として、Al、SiO、SrCO、TiO、Bi、NaCO、KCO、CoO、CuO、MnO、Ag、ZrOの原料粉を、仮焼後に表1に示すの組成になるように秤量し、純水と一緒に、ボールミルで混合し、混合スラリーを得た。前記スラリーにPVAをスラリー重量に対して1wt%添加した後、スプレードライヤーにて乾燥し、平均粒径が約0.1mmの顆粒状の乾燥粉を得た。
前記顆粒粉を、連続炉にて最高温度800℃にて仮焼し、目的とする組成である仮焼粉を得た。なお、表1には本発明の範囲外である比較例も併記している。この比較例には実施例と区別するため試料番号に括弧を付している。
この仮焼粉を用いて先ず、fQの測定のため以下の手順で測定試料を作製した。
前記仮焼粉を、内容量4Lのボールミルに、純水と共に投入し、平均粒径1.2μmまで粉砕した。粉砕したスラリーを、乾燥機で水分を蒸発させて、ライカイ機で解砕し、この粉体にPVA(ポリビニルアルコール)の10%水溶液を、粉体重量に対して10〜
20重量%添加して、混錬後、32メッシュのふるいを通して造粒粉とした。この造粒粉を円柱状の成形体が得られるような金型に投入し、200MPaの圧力で加圧成形し、円柱状の成形体を得た。前記成形体を、大気中900℃、2時間の焼成し、焼成体を得た。この焼成体を用いて、誘電体共振器法で、共振周波数fとQ値により、fQを求めた。結果を表1に示す。全ての実施例No.4〜10、No.14〜27において、fQは8THz以上の高い値を示した。
【0009】
次に、機械的強度を評価するため、前記と同様のプロセスで38mm×12mm×1mmの試験片を作成し、JIS C2141として規定される曲げ強さ試験方法により、支点間距離を30mmとし、荷重速度を0.5mm/minとして3点曲げ試験を行い、試験片が破壊したときの最大荷重から曲げ強さ(抗折強度)を求めた。この結果を表1に示す。全ての実施例No.4〜10、No.14〜27において、抗折強度は250MPa以上の高い値を示した。
【0010】
【表1】
Figure 2004182576
【0011】
また比較例として、ZrO量が0.01重量%満たない試料、および2重量%超える試料について、前記実施例と同様に作製し、評価を行った結果を表1に示す。
ZrOが0.01重量%に満たないものは、fQは大きな値を示すが、抗折強度が220MPa以下と低下した。また、ZrOが2重量%を超えるものでは、高い抗折強度を示すがfQが5THz以下と低い値しか得られなかった。
【0012】
このような誘電体材料を用いて、以下の様にグリーンシートを成形し、積層体内部に伝送線路を形成した積層部品として、4532サイズ(長手4.5mm×短手3.2mm×高さ1.0mm)の積層電子部品(アンテナスイッチ)を作製した。図1はその外観であり、図2はその等価回路である。
前記、仮焼粉を、エタノール中に分散させてボールミルで平均粒径1.2μmまで粉砕し、更に、シート成形用のバインダーであるPVB(ポリビニルブチラール)を仮焼粉重量に対して12wt%、および可塑剤であるBPBG(ブチルフタリルブチルグリコレート)7.5wt%を添加し、同一のボールミルにて、溶解・分散を行い、シート成形用のスラリーを得た。前期スラリーを減圧下で、脱泡および一部の溶剤の蒸発を行い、約10000mPa・sの粘度になるように調整した。粘度調整後、ドクターブレードにて、シート成形を行い、乾燥後約100μmの厚さのセラミックグリーンシートを得た。後工程のハンドリングのため、約150mm角の大きさに裁断した。
積層電子部品とするため、複数枚のセラミックグリーンシート表面にAgペーストにて伝送線路を構成する配線パターンL1−1,L1−2,L2−1,L2−2を形成した(図3参照)。前記セラミックグリーンシートは各層間の配線パターンを接続するため、スルーホールもレーザー穴あけ装置により、必要に応じて形成した。前記印刷後のセラミックグリーンシートを、所定のパターンの画像処理による位置合わせを行って積層圧着した。圧着条件は、圧力14MPa、温度85℃、10分保持で行った。
前記セラミック積層体を焼成後4532サイズになるようにチップサイズに切断した後、焼成セッターに配置し、連続炉で脱バインダー及び焼成を行った。焼成は大気雰囲気中900℃で2時間保持した。
焼成後、内部配線が露出している部分に、Agを主成分とし、ガラス成分を含む外部電極ペーストを塗布し、800℃で焼き付け後、電解めっきにて、焼き付け後の銀表面に、ニッケルめっきおよびスズめっきを行い端子電極GND,TX,RX,VC1,VC2として積層基板2とした。これにダイオードD1,D2を実装して積層電子部品1を作製した。この積層電子部品は、図2に示した等価回路の破線部を構成するものであり、ANT−RX間、TX−VC1間が直流的に接続している。
【0013】
このようにして得られた積層電子部品をプリント基板に半田つけし、このプリント基板を、携帯電話と同等の重量にした枠状のアルミニウム製の治具にねじ止めして、固定した後、2mのコンクリート面に落下させて、電気的な断線をテスターで調べ、また外観のクラック、割れを20倍の実体顕微鏡で調べた。
本発明に係る実施例の積層電子部品の端子間の導通は、全て断線無く、また抵抗値の変化も試験前後でレンジ5%以下であった。更に、クラック、割れなどは観察されなかった。一方、比較例No.1〜3のものでは、伝送線路が断線したり、割れやクラックが発生した。
【0014】
【発明の効果】
前記実施例に示したように、本発明によれば、fQが高く、機械的強度が大きい高周波用低温焼成材料を提供することができる。また、機械的強度が大きいことから、携帯電話機の信頼性試験の一つである、落下試験への耐久性が高く、信頼性の高い高周波用積層電子部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る積層電子部品の斜視図。
【図2】本発明の一実施例に係る積層電子部品の等価回路。
【図3】本発明の一実施例に係る積層基板の分解斜視図。
【符号の説明】
1 積層電子部品
2 積層基板
L1、L2 伝送線路
L1−1、L1−2、L2−1、L2−2 配線パターン
GND、TX,RX,VC1,VC2 端子電極

Claims (4)

  1. 高周波用低温焼成誘電体材料であって、主成分がAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成され、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%としたとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0%を含む)のAl、Si、Sr、Tiを含有し、
    前記合計100質量%に対し副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、ZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有していることを特徴とする高周波用低温焼成誘電体材料。
  2. 高周波用低温焼成誘電体材料であって、主成分がAl、Si、Sr、Tiの酸化物で構成され、Al、Si、Sr、TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算し合計100質量%としたとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0%を含む)のAl、Si、Sr、Tiを含有し、
    前記合計100質量%に対し副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、Cu、Mn、Agの群のうちの少なくとも1種をCuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%、Agを0.01〜5質量%の含有し、更にZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有していることを特徴とする高周波用低温焼成誘電体材料。
  3. 組織中にSrAlSiを主成分とする長石族結晶とともにZrOの結晶を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波用低温焼成誘電体材料。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波用低温焼成誘電体材料を用いることを特徴とする高周波用積層電子部品。
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