JP2004182238A - 酸素吸収性樹脂組成物及び成形品の保存方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる各種成形品を製造直後から後加工するまでの期間、もしくは食品等の収納物品を充填するまでの期間に酸素吸収能力や機械物性を低下させることなく、長期間にわたり保存する方法を提供する。
【解決手段】元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物あるいは成形品の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする。
【選択図】 無
【解決手段】元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物あるいは成形品の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする。
【選択図】 無
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素吸収性組成物及び成形品の保存方法に関する。詳しくは、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を特定の環境下において保存することにより、長期間にわたり酸素吸収機能や機械物性を低下させることなく、製造直後の品質を保持することが可能な酸素吸収性組成物及び成形品の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
外部からの酸素の侵入を遮断し、内容物の保存性に優れる包装容器として従来使用されていた金属缶やガラス瓶は、加工性やコストの面から酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用したプラスチック製の包装容器への代替がすすめられている。酸素バリア性熱可塑性樹脂としては、酸素や炭酸ガス等のガス状物質に対して低い透過性を有し、かつ加工が容易であり、更に透明で機械的な強度が十分であることから、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体やメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミド(以下ナイロンMXD6と略する)が広く利用されている。しかしながら金属やガラスで構成された包装容器が容器外部から容器内部へのガス透過が実質的にゼロであるのに対して、酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用して構成された包装容器の場合は容器外部から容器内部へのガス透過が無視できないレベルで生じ、かつ包装容器が保存される環境によってはガス透過量が増大する傾向があるため、従来の金属缶やガラス瓶と比較して内容物の長期保存性については問題があった。
【0003】
近年、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合してナイロンMXD6に酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することで、容器外部から透過してくる酸素をナイロンMXD6が吸収すると共に容器内部に残存する酸素をもナイロンMXD6が吸収することにより、従来の酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用した容器以上に内容物の保存性を高める方法が実用化されつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
酸素吸収機能を有するナイロンMXD6を利用した成形品は、酸素が存在する雰囲気下、例えば空気中に放置しておくと酸素を吸収し始めるため、その酸素吸収能力は徐々に低下し、各種包装材料に加工して使用する際には十分な酸素吸収能力を発現できない場合があったが、これまでその酸素吸収能力の低下を防ぐことに関する方法については知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特表平2−500846号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題を解消し、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる各種成形品を製造直後から後加工するまでの期間、もしくは食品等の収納物品を充填するまでの期間に酸素吸収能力や機械物性を低下させることなく、長期間にわたり保存する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題の解決方法について鋭意検討した結果、酸素吸収性樹脂組成物及び該樹脂組成物を利用してなる成形品を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となる環境下において保存することにより、酸素存在下においても、長期間にわたりその酸素吸収機能を低下させることなく保存することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物の保存方法、
(2)元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂成形品の保存方法
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳しく説明する。本発明で保存される成形品を構成する材料である酸素吸収性樹脂組成物は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0010】
酸素吸収性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む化合物を添加することによって酸素を吸収する機能を発現するもの、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系化合物、ナイロンMXD6等のポリアミド、さらに炭素−炭素二重結合を共重合等により導入したポリオレフィンやポリアミド、ポリエステル等が挙げられ、限定することなく適用することができる。本発明の保存方法は、その酸素吸収機能が温度や湿度に対して特に依存性の高いポリアミドに対しても好適に適用できる。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロンMXD6等が挙げられるが、これらの中でもナイロンMXD6を主成分とするポリアミドが酸素吸収能力に優れたものであり、本発明の保存方法の効果が顕著に表れるものである。ナイロンMXD6はメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、アジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分を重縮合させて得られたものであり、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分と重縮合して得られるものが好ましい。その他の成分として、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ε−カプロラクタム等が共重合されているものでも良い。
【0011】
また、酸素吸収性樹脂組成物には、2種類以上の熱可塑性樹脂がブレンドされたものでも良く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロンMXD6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等のポリマーを例示することができる。さらに、本発明の酸素吸収性ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で顔料、染料、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤、クレイ、マイカ、ガラス繊維、ゼオライト等の充填剤を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、本発明で保存される酸素吸収性樹脂組成物は種々の材料を混合することができる。
【0012】
酸素吸収性樹脂組成物に含まれる金属原子は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子であり、熱可塑性樹脂の酸化反応を促進し、酸素吸収機能を発現させる。
【0013】
金属原子を上述の熱可塑性樹脂に添加、混合するには金属原子を含有する化合物(以下、金属触媒化合物と称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は上述の金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。特に本発明では酸素吸収機能が良好であることから、上記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体を使用することが好ましく、さらに好ましくはステアリン酸塩、酢酸塩又はアセチルアセトネート錯体である。本発明においては、酸素吸収性樹脂組成物に上記金属触媒化合物のうち一種以上を添加することができるが、コバルト金属原子を含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。
【0014】
酸素吸収性樹脂組成物に含まれる前記金属原子の濃度は特に制限はないが、100乃至10000ppmの範囲が好ましい。上記金属原子が100ppmより少ない場合、酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品は酸素吸収能力が不足する場合が多く、また本発明を適用してもその保存効果が小さい。また10000ppmより多い場合、熱可塑性樹脂の酸化劣化が酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品の製造工程で起こる場合があるため好ましくない。
【0015】
酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、上述の熱可塑性樹脂と金属触媒化合物を押出機等を用いて溶融混合する方法、金属触媒化合物を溶媒と混合して溶解又はスラリー状にした後、熱可塑性樹脂と混合してから溶媒を除去して熱可塑性樹脂に付着させる方法等、公知の方法を用いることができるが、これらの中でも均一に金属触媒化合物を熱可塑性樹脂中に混合することが可能であることから熱可塑性樹脂と金属触媒化合物を押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混合する方法が好ましく行われる。
【0016】
酸素吸収性樹脂組成物の形状は特に限定されないが、ペレット状、粉状、フレーク状のいずれかであると取扱いが容易で好ましい。
【0017】
酸素吸収性樹脂組成物は、一般に金属触媒化合物を含まないものと成形加工性に差はなく、各種包装材料や包装容器に代表される成形品に加工することができる。包装材料としては、フィルム状、またはシート状の成形体に加工することができ、さらに包装容器としてはボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の少なくとも一部を構成する材料として使用することができる。さらに上記成形品の構成は酸素吸収性樹脂組成物からなる単層であっても良く、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた多層構造であっても良い。また酸素吸収性樹脂組成物は、その性質を改善するためにナイロン6やナイロン66等に代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール共重合体等、各種熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。なお、酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品において、該樹脂組成物を利用してなる層の厚みは、特に制限はないが、1μm以上の厚みを有するように層を形成することが好ましい。
【0018】
酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品の製造方法については、公知の方法を利用することができる。例えば、フィルムやシート、またはチューブ状の包装材料の成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた酸素吸収性樹脂組成物を付属した押出機から押し出して製造することができる。なお、上述の方法で得たフィルム状の成形品はこれを延伸することにより延伸フィルムに加工することもできる。ボトル形状の成形品については、射出成形機から金型中に溶融した酸素吸収性樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、延伸温度まで加熱してブロー延伸することにより得ることができる。また、トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融した酸素吸収性樹脂組成物を射出して製造する方法や、シート状の包装材料を真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品は上述の製造方法によらず、様々な方法を経て製造することが可能である。
【0019】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を保存する際は、温度を30℃以下とし、かつ相対湿度を60%以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは30℃以下かつ50%RH以下であり、さらに好ましくは30℃以下かつ40%RH以下である。温度が30℃より高いと空気中に含まれる水分量が多くなるため、酸素吸収反応が生じやすくなり、さらに温度が高いことにより反応速度が大きくなるため、保存中に性能の低下が起こりやすくなる。また湿度が60%RHより高いと、空気中に含まれる水分量が多くなるため、酸素吸収反応が生じやすくなるため、保存中に性能の低下が起こる。
【0020】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を保存する際は、上記環境下に保存することで性能の低下を防止できるが、防湿性を有する包装材料及び包装容器内で保存することにより、さらにその保存期間を延長することができる。防湿性の高い材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂等に代表される防湿性熱可塑性樹脂や、アルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等に代表される表面に防湿性を有する材料がコーティング、又は蒸着された熱可塑性樹脂フィルム、アルミ箔等の金属が防湿性を高める材料として挙げられる。この中でもアルミ箔等の金属を利用したものが、透湿度がほぼゼロであり、かつ酸素バリア性にも優れることから長期間にわたって酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品の酸素吸収能力を保持することが可能であるため好ましく用いられる。
【0021】
包装材料及び包装容器の形状としては、袋形状のものや、箱形状のもの、缶形状のものが利用できる。袋形状のものとしては上述の防湿性材料に他の熱可塑性樹脂を積層した多層構造を有するフィルムを利用したもの、箱形状のものとしては防湿性材料を紙基材に積層した構造物からなるもの、缶形状のものとしては内面を亜鉛メッキ又は樹脂コーティングした金属缶、好ましくは脱気又はガス置換が可能な装置を備えたものが例示される。
【0022】
また、防湿性を有する包装材料及び包装容器の利用に加えて、透湿性を有する又は水蒸気が通過でき、かつ内部に封入する吸水性物質がこぼれない大きさの微細な通気孔を有する包材に吸水性物質を封入したものを併用するとより優れた保存効果を発揮することができる。本発明で言う吸水性物質とは、保管容器内に残存する湿度を吸湿すると共に保管容器外部から進入する湿度も吸湿する能力を有するものであり、塩化カルシウム、生石灰、シリカゲル等が好ましく用いられる。
【0023】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品を入れ、密封した際の包装容器内の空間率(包装容器内容積に対する空間部分の割合)は80%以下とすることが好ましく、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であるが、包装容器内にできるだけ多くの成形品を入れて、包装容器内の酸素量を低減することが酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品保存性を高める上で好適に行われる。例えば、包装材料又は包装容器が袋等のフレキシブルな容器の場合は、空気をできるだけ抜いた後ヒートシールして密封したり、脱気装置等を用いて空気を抜いた後にヒートシールして密封したり、或いは窒素等の不活性ガスを袋内に流通させた後、ヒートシールして密封するとよい。また、成形品を入れた包装容器内の空間率が高くなるリジッドな容器の場合は、脱気装置等を用いて空気を抜いた後に密封したり、或いは窒素等の不活性ガスを袋内に流通させた後密封するとよく、さらに成形品と共に吸水性物質を入れ、包装容器内の相対湿度をできるだけ低くすることが好ましい。
【0024】
【実施例】
以下に本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例で採用した評価法は以下の通りである。
(1)成形品の酸素吸収能力測定
成形品1個を、アルミ箔を積層した四方シール袋に入れ、袋内の空気が1000mlとなるようにしてヒートシールにより密封し、40℃の恒温槽内に袋内の酸素濃度が変化しなくなるまで保管した。その後、シリンジを用いて保管容器内のガスをサンプリングし、東レ社製、ジルコニア式酸素濃度計にて袋内の残存酸素濃度を測定し、成形品1個当たりの酸素吸収能力を算出した。
【0025】
実施例1
アジピン酸とメタキシリレンジアミンを溶融重縮合して得たポリアミドと、コバルト金属濃度が4000ppmとなるように秤量した酢酸コバルトをタンブラーで混合した後、この混合物を30mmφの単軸押出機で溶融混練し、ストランドダイからストランドを押し出し、冷却水槽で冷却後、ペレタイザーでペレット化して、2.5mmL×2.5mmφのペレットを作製した。
次に、多層プリフォーム製造装置を用いて、PET/酸素吸収性樹脂層/PETの層構成を有し、酸素吸収性樹脂の含量が5wt%の2種3層プリフォームを製造した。プリフォームの重量は30g/個であった。このプリフォームを、ブロー成形機を用いて500mlの多層ボトルを製造し、これをアルミ箔積層袋に入れ、袋内の相対湿度を80%、空気量を1000mlとしてヒートシールにより密封し、40℃で保存して酸素吸収能力を調査した結果、150ml/個の酸素吸収能力を有することを確認した。
次に、上述のプリフォームを、温度を25℃、相対湿度を55%に調整した室内で3ヶ月間保存した後に多層ボトルを製造し、上述の方法と同様にして多層ボトルの酸素吸収能力を測定した。その結果、酸素吸収能力は134mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は89%であった。結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
保存時の温度を35℃とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は103mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は69%であった。結果を表1に示す。
【0027】
比較例2
保存時の相対湿度を85%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は82mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は55%であった。結果を表1に示す。
【0028】
比較例3
保存時の温度を35℃、相対湿度を85%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は63mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は42%であった。結果を表1に示す。
【0029】
表1に3ヶ月保存後における多層ボトルの酸素吸収能力および保持率を示す。ここで、酸素吸収能力保持率(%)=保存後の酸素吸収能力測定値(ml)/製造直後の酸素吸収能力測定値(ml)×100 である。
【表1】
【0030】
表1のように、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品を、温度を30℃以下、相対湿度を60%以下となるような環境下に保存することにより、大気中で3ヶ月保存後においても製造直後の酸素吸収能力の80%以上を保持することができる。
【0031】
実施例2
保存時の相対湿度を35%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は129mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は86%であった。
【0032】
実施例3
保存時の温度を20℃、相対湿度を30%として、保存期間を6ヶ月とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は120mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は80%であった。
【0033】
比較例4
保存時の相対湿度を85%とした以外は実施例3と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は48mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は32%であった。
【0034】
実施例4
実施例1で得たプリフォーム100個を、塩化カルシウムを紙包材に封入した吸水剤とともにポリエチレン容器へ入れた。なお、容器内の空間率は50%であり、梱包体内部の相対湿度は10%未満に保たれていた。この梱包体を25℃で6ヶ月間保存した後、梱包体を開封し、実施例1と同様にして多層ボトルの酸素吸収能力を測定した結果、酸素吸収能力は137mlであり、製造直後の酸素吸収能力の91%保持していた。
【0035】
実施例5
実施例1で得た酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットと多層フィルムシート製造装置を用いて、ポリプロピレン(300μm)/接着性樹脂(20μm)/酸素吸収性ポリアミド樹脂層(30μm)/接着性樹脂(20μm)/ポリプロピレン(300μm)の層構成を有する3種5層シートを作成した。次いで、圧空真空成形機を用いて浅絞りカップ(絞り比2.7、容器容量62mm)を作製した。カップ重量は3.9g/個であった。なお、カップ1個の酸素吸収能力を調査した結果、17.4mlの酸素吸収能力を有することを確認した。
次に、上述のカップ500個を重ねてポリエチレン袋へ入れ、乾燥空気で置換したのち密封した。袋内の空間率は32%であった。これを、温度を25℃、相対湿度を50%の環境下で3ヶ月間保存した後、上述の方法と同様にしてカップの酸素吸収能力を測定した結果、15.3mlの酸素吸収能力であり、製造直後の酸素吸収能力の88%保持していた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物及び成形品の保存方法は、製造直後の酸素吸収能力を長期間にわたって保持することができ、その商品価値は高く、工業的に優れたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素吸収性組成物及び成形品の保存方法に関する。詳しくは、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を特定の環境下において保存することにより、長期間にわたり酸素吸収機能や機械物性を低下させることなく、製造直後の品質を保持することが可能な酸素吸収性組成物及び成形品の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
外部からの酸素の侵入を遮断し、内容物の保存性に優れる包装容器として従来使用されていた金属缶やガラス瓶は、加工性やコストの面から酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用したプラスチック製の包装容器への代替がすすめられている。酸素バリア性熱可塑性樹脂としては、酸素や炭酸ガス等のガス状物質に対して低い透過性を有し、かつ加工が容易であり、更に透明で機械的な強度が十分であることから、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体やメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分との重縮合反応から得られるポリアミド(以下ナイロンMXD6と略する)が広く利用されている。しかしながら金属やガラスで構成された包装容器が容器外部から容器内部へのガス透過が実質的にゼロであるのに対して、酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用して構成された包装容器の場合は容器外部から容器内部へのガス透過が無視できないレベルで生じ、かつ包装容器が保存される環境によってはガス透過量が増大する傾向があるため、従来の金属缶やガラス瓶と比較して内容物の長期保存性については問題があった。
【0003】
近年、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合してナイロンMXD6に酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することで、容器外部から透過してくる酸素をナイロンMXD6が吸収すると共に容器内部に残存する酸素をもナイロンMXD6が吸収することにより、従来の酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用した容器以上に内容物の保存性を高める方法が実用化されつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
酸素吸収機能を有するナイロンMXD6を利用した成形品は、酸素が存在する雰囲気下、例えば空気中に放置しておくと酸素を吸収し始めるため、その酸素吸収能力は徐々に低下し、各種包装材料に加工して使用する際には十分な酸素吸収能力を発現できない場合があったが、これまでその酸素吸収能力の低下を防ぐことに関する方法については知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特表平2−500846号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題を解消し、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる各種成形品を製造直後から後加工するまでの期間、もしくは食品等の収納物品を充填するまでの期間に酸素吸収能力や機械物性を低下させることなく、長期間にわたり保存する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題の解決方法について鋭意検討した結果、酸素吸収性樹脂組成物及び該樹脂組成物を利用してなる成形品を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となる環境下において保存することにより、酸素存在下においても、長期間にわたりその酸素吸収機能を低下させることなく保存することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物の保存方法、
(2)元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品の保存方法であって、保存環境を温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となるように保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂成形品の保存方法
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳しく説明する。本発明で保存される成形品を構成する材料である酸素吸収性樹脂組成物は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0010】
酸素吸収性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む化合物を添加することによって酸素を吸収する機能を発現するもの、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系化合物、ナイロンMXD6等のポリアミド、さらに炭素−炭素二重結合を共重合等により導入したポリオレフィンやポリアミド、ポリエステル等が挙げられ、限定することなく適用することができる。本発明の保存方法は、その酸素吸収機能が温度や湿度に対して特に依存性の高いポリアミドに対しても好適に適用できる。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロンMXD6等が挙げられるが、これらの中でもナイロンMXD6を主成分とするポリアミドが酸素吸収能力に優れたものであり、本発明の保存方法の効果が顕著に表れるものである。ナイロンMXD6はメタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、アジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分を重縮合させて得られたものであり、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分と重縮合して得られるものが好ましい。その他の成分として、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ε−カプロラクタム等が共重合されているものでも良い。
【0011】
また、酸素吸収性樹脂組成物には、2種類以上の熱可塑性樹脂がブレンドされたものでも良く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロンMXD6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等のポリマーを例示することができる。さらに、本発明の酸素吸収性ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で顔料、染料、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤、クレイ、マイカ、ガラス繊維、ゼオライト等の充填剤を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、本発明で保存される酸素吸収性樹脂組成物は種々の材料を混合することができる。
【0012】
酸素吸収性樹脂組成物に含まれる金属原子は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子であり、熱可塑性樹脂の酸化反応を促進し、酸素吸収機能を発現させる。
【0013】
金属原子を上述の熱可塑性樹脂に添加、混合するには金属原子を含有する化合物(以下、金属触媒化合物と称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は上述の金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。特に本発明では酸素吸収機能が良好であることから、上記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体を使用することが好ましく、さらに好ましくはステアリン酸塩、酢酸塩又はアセチルアセトネート錯体である。本発明においては、酸素吸収性樹脂組成物に上記金属触媒化合物のうち一種以上を添加することができるが、コバルト金属原子を含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。
【0014】
酸素吸収性樹脂組成物に含まれる前記金属原子の濃度は特に制限はないが、100乃至10000ppmの範囲が好ましい。上記金属原子が100ppmより少ない場合、酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品は酸素吸収能力が不足する場合が多く、また本発明を適用してもその保存効果が小さい。また10000ppmより多い場合、熱可塑性樹脂の酸化劣化が酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品の製造工程で起こる場合があるため好ましくない。
【0015】
酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、上述の熱可塑性樹脂と金属触媒化合物を押出機等を用いて溶融混合する方法、金属触媒化合物を溶媒と混合して溶解又はスラリー状にした後、熱可塑性樹脂と混合してから溶媒を除去して熱可塑性樹脂に付着させる方法等、公知の方法を用いることができるが、これらの中でも均一に金属触媒化合物を熱可塑性樹脂中に混合することが可能であることから熱可塑性樹脂と金属触媒化合物を押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混合する方法が好ましく行われる。
【0016】
酸素吸収性樹脂組成物の形状は特に限定されないが、ペレット状、粉状、フレーク状のいずれかであると取扱いが容易で好ましい。
【0017】
酸素吸収性樹脂組成物は、一般に金属触媒化合物を含まないものと成形加工性に差はなく、各種包装材料や包装容器に代表される成形品に加工することができる。包装材料としては、フィルム状、またはシート状の成形体に加工することができ、さらに包装容器としてはボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の少なくとも一部を構成する材料として使用することができる。さらに上記成形品の構成は酸素吸収性樹脂組成物からなる単層であっても良く、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた多層構造であっても良い。また酸素吸収性樹脂組成物は、その性質を改善するためにナイロン6やナイロン66等に代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール共重合体等、各種熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。なお、酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品において、該樹脂組成物を利用してなる層の厚みは、特に制限はないが、1μm以上の厚みを有するように層を形成することが好ましい。
【0018】
酸素吸収性樹脂組成物を利用した成形品の製造方法については、公知の方法を利用することができる。例えば、フィルムやシート、またはチューブ状の包装材料の成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた酸素吸収性樹脂組成物を付属した押出機から押し出して製造することができる。なお、上述の方法で得たフィルム状の成形品はこれを延伸することにより延伸フィルムに加工することもできる。ボトル形状の成形品については、射出成形機から金型中に溶融した酸素吸収性樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、延伸温度まで加熱してブロー延伸することにより得ることができる。また、トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融した酸素吸収性樹脂組成物を射出して製造する方法や、シート状の包装材料を真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品は上述の製造方法によらず、様々な方法を経て製造することが可能である。
【0019】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を保存する際は、温度を30℃以下とし、かつ相対湿度を60%以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは30℃以下かつ50%RH以下であり、さらに好ましくは30℃以下かつ40%RH以下である。温度が30℃より高いと空気中に含まれる水分量が多くなるため、酸素吸収反応が生じやすくなり、さらに温度が高いことにより反応速度が大きくなるため、保存中に性能の低下が起こりやすくなる。また湿度が60%RHより高いと、空気中に含まれる水分量が多くなるため、酸素吸収反応が生じやすくなるため、保存中に性能の低下が起こる。
【0020】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品を保存する際は、上記環境下に保存することで性能の低下を防止できるが、防湿性を有する包装材料及び包装容器内で保存することにより、さらにその保存期間を延長することができる。防湿性の高い材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂等に代表される防湿性熱可塑性樹脂や、アルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等に代表される表面に防湿性を有する材料がコーティング、又は蒸着された熱可塑性樹脂フィルム、アルミ箔等の金属が防湿性を高める材料として挙げられる。この中でもアルミ箔等の金属を利用したものが、透湿度がほぼゼロであり、かつ酸素バリア性にも優れることから長期間にわたって酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用してなる成形品の酸素吸収能力を保持することが可能であるため好ましく用いられる。
【0021】
包装材料及び包装容器の形状としては、袋形状のものや、箱形状のもの、缶形状のものが利用できる。袋形状のものとしては上述の防湿性材料に他の熱可塑性樹脂を積層した多層構造を有するフィルムを利用したもの、箱形状のものとしては防湿性材料を紙基材に積層した構造物からなるもの、缶形状のものとしては内面を亜鉛メッキ又は樹脂コーティングした金属缶、好ましくは脱気又はガス置換が可能な装置を備えたものが例示される。
【0022】
また、防湿性を有する包装材料及び包装容器の利用に加えて、透湿性を有する又は水蒸気が通過でき、かつ内部に封入する吸水性物質がこぼれない大きさの微細な通気孔を有する包材に吸水性物質を封入したものを併用するとより優れた保存効果を発揮することができる。本発明で言う吸水性物質とは、保管容器内に残存する湿度を吸湿すると共に保管容器外部から進入する湿度も吸湿する能力を有するものであり、塩化カルシウム、生石灰、シリカゲル等が好ましく用いられる。
【0023】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品を入れ、密封した際の包装容器内の空間率(包装容器内容積に対する空間部分の割合)は80%以下とすることが好ましく、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であるが、包装容器内にできるだけ多くの成形品を入れて、包装容器内の酸素量を低減することが酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品保存性を高める上で好適に行われる。例えば、包装材料又は包装容器が袋等のフレキシブルな容器の場合は、空気をできるだけ抜いた後ヒートシールして密封したり、脱気装置等を用いて空気を抜いた後にヒートシールして密封したり、或いは窒素等の不活性ガスを袋内に流通させた後、ヒートシールして密封するとよい。また、成形品を入れた包装容器内の空間率が高くなるリジッドな容器の場合は、脱気装置等を用いて空気を抜いた後に密封したり、或いは窒素等の不活性ガスを袋内に流通させた後密封するとよく、さらに成形品と共に吸水性物質を入れ、包装容器内の相対湿度をできるだけ低くすることが好ましい。
【0024】
【実施例】
以下に本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例で採用した評価法は以下の通りである。
(1)成形品の酸素吸収能力測定
成形品1個を、アルミ箔を積層した四方シール袋に入れ、袋内の空気が1000mlとなるようにしてヒートシールにより密封し、40℃の恒温槽内に袋内の酸素濃度が変化しなくなるまで保管した。その後、シリンジを用いて保管容器内のガスをサンプリングし、東レ社製、ジルコニア式酸素濃度計にて袋内の残存酸素濃度を測定し、成形品1個当たりの酸素吸収能力を算出した。
【0025】
実施例1
アジピン酸とメタキシリレンジアミンを溶融重縮合して得たポリアミドと、コバルト金属濃度が4000ppmとなるように秤量した酢酸コバルトをタンブラーで混合した後、この混合物を30mmφの単軸押出機で溶融混練し、ストランドダイからストランドを押し出し、冷却水槽で冷却後、ペレタイザーでペレット化して、2.5mmL×2.5mmφのペレットを作製した。
次に、多層プリフォーム製造装置を用いて、PET/酸素吸収性樹脂層/PETの層構成を有し、酸素吸収性樹脂の含量が5wt%の2種3層プリフォームを製造した。プリフォームの重量は30g/個であった。このプリフォームを、ブロー成形機を用いて500mlの多層ボトルを製造し、これをアルミ箔積層袋に入れ、袋内の相対湿度を80%、空気量を1000mlとしてヒートシールにより密封し、40℃で保存して酸素吸収能力を調査した結果、150ml/個の酸素吸収能力を有することを確認した。
次に、上述のプリフォームを、温度を25℃、相対湿度を55%に調整した室内で3ヶ月間保存した後に多層ボトルを製造し、上述の方法と同様にして多層ボトルの酸素吸収能力を測定した。その結果、酸素吸収能力は134mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は89%であった。結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
保存時の温度を35℃とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は103mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は69%であった。結果を表1に示す。
【0027】
比較例2
保存時の相対湿度を85%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は82mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は55%であった。結果を表1に示す。
【0028】
比較例3
保存時の温度を35℃、相対湿度を85%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は63mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は42%であった。結果を表1に示す。
【0029】
表1に3ヶ月保存後における多層ボトルの酸素吸収能力および保持率を示す。ここで、酸素吸収能力保持率(%)=保存後の酸素吸収能力測定値(ml)/製造直後の酸素吸収能力測定値(ml)×100 である。
【表1】
【0030】
表1のように、酸素吸収性樹脂組成物及びそれを利用した成形品を、温度を30℃以下、相対湿度を60%以下となるような環境下に保存することにより、大気中で3ヶ月保存後においても製造直後の酸素吸収能力の80%以上を保持することができる。
【0031】
実施例2
保存時の相対湿度を35%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は129mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は86%であった。
【0032】
実施例3
保存時の温度を20℃、相対湿度を30%として、保存期間を6ヶ月とした以外は実施例1と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は120mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は80%であった。
【0033】
比較例4
保存時の相対湿度を85%とした以外は実施例3と同様の処理を行った。その結果、酸素吸収能力は48mlであり、製造直後の酸素吸収能力に対する保持率は32%であった。
【0034】
実施例4
実施例1で得たプリフォーム100個を、塩化カルシウムを紙包材に封入した吸水剤とともにポリエチレン容器へ入れた。なお、容器内の空間率は50%であり、梱包体内部の相対湿度は10%未満に保たれていた。この梱包体を25℃で6ヶ月間保存した後、梱包体を開封し、実施例1と同様にして多層ボトルの酸素吸収能力を測定した結果、酸素吸収能力は137mlであり、製造直後の酸素吸収能力の91%保持していた。
【0035】
実施例5
実施例1で得た酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットと多層フィルムシート製造装置を用いて、ポリプロピレン(300μm)/接着性樹脂(20μm)/酸素吸収性ポリアミド樹脂層(30μm)/接着性樹脂(20μm)/ポリプロピレン(300μm)の層構成を有する3種5層シートを作成した。次いで、圧空真空成形機を用いて浅絞りカップ(絞り比2.7、容器容量62mm)を作製した。カップ重量は3.9g/個であった。なお、カップ1個の酸素吸収能力を調査した結果、17.4mlの酸素吸収能力を有することを確認した。
次に、上述のカップ500個を重ねてポリエチレン袋へ入れ、乾燥空気で置換したのち密封した。袋内の空間率は32%であった。これを、温度を25℃、相対湿度を50%の環境下で3ヶ月間保存した後、上述の方法と同様にしてカップの酸素吸収能力を測定した結果、15.3mlの酸素吸収能力であり、製造直後の酸素吸収能力の88%保持していた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物及び成形品の保存方法は、製造直後の酸素吸収能力を長期間にわたって保持することができ、その商品価値は高く、工業的に優れたものである。
Claims (12)
- 元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物の保存方法であって、酸素吸収性樹脂組成物を、温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となる環境下において保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 包装容器内に酸素吸収性樹脂組成物と共に、吸水性物質を透湿性を有する包材に封入したものを入れて保存することを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂組成物を保存するための包装材料の材質が防湿性樹脂、金属箔、および蒸着フィルムから選ばれてなる請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂組成物を入れ、密封した後の包装容器内の空間率が10乃至80vol%であることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂組成物の形状が、ペレット状、粉状、フレーク状のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂組成物がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分と重縮合して得られるポリアミドを含むものであることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の保存方法。
- 元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含む酸素吸収性樹脂組成物を利用してなる成形品の保存方法であって、該成形品を、温度が30℃以下、相対湿度が60%以下となる環境下において保存することを特徴とする酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
- 包装容器内に前記成形品と共に、吸水性物質を透湿性を有する包材に封入したものを入れて保存することを特徴とする請求項7記載の酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
- 成形品を保存するための包装材料の材質が防湿性樹脂、金属箔、および蒸着フィルムから選ばれてなる請求項7記載の酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂成形品を入れ、密封した後の包装容器内の空間率が10乃至80vol%であることを特徴とする請求項7記載の酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂成形品の形状が、フィルム状、シート状、フィルム状及びシート状の成形品を加工して得た容器、射出成形品、射出成形品を加工して得た容器のいずれかであることを特徴とする請求項7記載の酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
- 酸素吸収性樹脂組成物がメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分と重縮合して得られるポリアミドを含むものであることを特徴とする請求項7記載の酸素吸収性樹脂成形品の保存方法。
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JP2015007148A (ja) * | 2013-06-24 | 2015-01-15 | 三菱瓦斯化学株式会社 | 酸素吸収性樹脂組成物 |
Citations (2)
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JPH02500846A (ja) * | 1987-07-27 | 1990-03-22 | カヌードメタルボックス パブリック リミテド カンパニー | 包装に関する改良 |
JP2000085851A (ja) * | 1998-09-04 | 2000-03-28 | Ajinomoto Co Inc | 脱酸素樹脂組成物、脱酸素包装材料及びこれらを用いる脱酸素容器の乾燥保存方法 |
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2002
- 2002-11-29 JP JP2002347470A patent/JP2004182238A/ja active Pending
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