JP2004182165A - 車両用空調装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エコラン停止時に、冷房能力確保のための車両エンジン稼働要求の時期を遅らせることが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】圧縮機の作動指令が出ている状態において車両エンジンがエコラン停止状態になったときに、蒸発器の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジンを再起動して圧縮機を再起動する車両用空調装置において、圧縮機の作動指令が出ている状態にて車両エンジンがエコラン停止状態になったときに、蒸発器の冷房熱負荷に関連する情報値として車室内吹出空気の目標吹出温度TAOの高低を判定し(S3)、冷房熱負荷の高い状態を判定すると、内外気吸込モードを強制的に内気モードとする(S4)。
【選択図】 図2
【解決手段】圧縮機の作動指令が出ている状態において車両エンジンがエコラン停止状態になったときに、蒸発器の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジンを再起動して圧縮機を再起動する車両用空調装置において、圧縮機の作動指令が出ている状態にて車両エンジンがエコラン停止状態になったときに、蒸発器の冷房熱負荷に関連する情報値として車室内吹出空気の目標吹出温度TAOの高低を判定し(S3)、冷房熱負荷の高い状態を判定すると、内外気吸込モードを強制的に内気モードとする(S4)。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、停車時に車両エンジンを自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される空調装置おいて、内外気吸込制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護、燃費低減等を目的にして、信号待ち等の停車時に車両エンジンを自動的に停止する車両(ハイブリッド車等のエコラン車)が実用化されており、今後、停車時に車両エンジンを停止する車両が増加する傾向にある。
【0003】
このように停車時に車両エンジンを自動的に停止する車両に搭載される空調装置は従来種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、車両用空調装置においては、冷凍サイクルの圧縮機を車両エンジンにより駆動しているので、上記エコラン車においては信号待ち等で停車して、車両エンジンが停止される毎に、圧縮機も停止して冷房用蒸発器の温度が上昇し、車室内への吹出空気温度が上昇するので、乗員の冷房フィーリングを損なう。
【0005】
そこで、停車時に冷房用蒸発器の温度が所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)まで上昇すると、車両エンジンに対して稼働要求の信号を出して、停車中であっても車両エンジンを再起動する。これにより、冷凍サイクルの圧縮機を再起動し、冷房用蒸発器の冷却機能を再開して、冷房フィーリングの悪化を抑制している。
【0006】
また、冷凍サイクルの圧縮機を車両エンジンと電動モータの両方で駆動可能とするハイブリッド駆動方式(2ウェイ駆動方式)も知られており、このハイブリッド駆動方式では停車時に電動モータにより圧縮機を駆動することができるが、電動モータの出力の制約から十分な冷房能力を確保できない。その結果、停車中であっても冷房能力の確保のために車両エンジンを再起動する必要が生じる。
【0007】
【特許文献1】
特許第3261099号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように停車中であっても冷房能力確保のために車両エンジンの再起動が必要となるので、環境保護、燃費低減等を目的とするエコラン車本来の特徴を大きく損なうことになる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、冷房能力確保のための車両エンジン稼働要求の時期を遅らせることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、蒸発器(9)の冷房熱負荷の高低を判定する判定手段(S3、S31)と、圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、判定手段(S3、S31)が冷房熱負荷の高い状態を判定すると、内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において冷房熱負荷が高いときは内外気吸込モードがたとえ外気モードであっても、内外気吸込モードを強制的に内気モード状態として、蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇を外気モード時に比較して遅延できる。その結果、車両エンジン(4)のエコラン停止後、蒸発器(9)の冷房能力低下に伴って車両エンジンの稼働要求を出す時期を遅延できる。従って、環境保護、燃費低減等といったエコラン車本来の特徴を効果的に発揮できる。
【0012】
なお、冷房熱負荷が低いときは、車両エンジン(4)のエコラン停止後における蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇度合いが小さいから、内外気吸込モードを強制的に内気モードとする必要性は小さくなる。従って、冷房熱負荷が低いときは内外気吸込モードを乗員の要求、車両環境条件等に応じて決定すればよい。
【0013】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、判定手段(S31)は車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度に基づいて冷房熱負荷の高低を判定することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1において、判定手段(S31)は外気温に基づいて冷房熱負荷の高低を判定するようにしてもよい。
【0015】
請求項4に記載の発明では、停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、車両窓ガラス内面付近の湿度の高低を判定する判定手段(S32)と、圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満である状態を判定手段(S32)により判定すると、内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満である状態を判定したときは、内外気吸込モードがたとえ外気モードであっても、内外気吸込モードを強制的に内気モード状態として、蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇を外気モード時に比較して遅延できる。その結果、車両エンジン(4)のエコラン停止後、冷房能力確保のための車両エンジン稼働要求の時期を遅延できるので、環境保護、燃費低減等といったエコラン車本来の特徴を効果的に発揮できる。
【0017】
しかも、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満であるときに内外気吸込モードを強制的に内気モードとするから、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度以上となるときは内外気吸込モードを強制的に内気モードとしない。そのため、内気モードへの切替に伴う車両窓ガラスの曇り発生を未然に防止できる。
【0018】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、圧縮機(1)を車両エンジン(4)のみにより駆動するようにしてよい。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、圧縮機(1)を、車両エンジン(4)と電動モータ(40)の両方により駆動可能になっており、エコラン停止状態において、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が冷房能力低下側の第1所定値に達すると、電動モータ(40)により圧縮機(1)を駆動し、エコラン停止状態において、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が第1所定値よりも一層冷房能力低下側に位置する第2所定値に達すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0020】
ここで、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値としては、具体的には蒸発器(9)の吹出空気温度、蒸発器(9)のフィン表面温度、設定温度と内気温との温度差等を用いることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明のように、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において、最初に、電動モータ(40)により圧縮機(1)を駆動し、その後に、蒸発器(9)の冷房能力低下の進行に伴って圧縮機(1)を車両エンジン駆動に切り替えるハイブリッド駆動方式においても、請求項1、4による作用効果は同様に発揮できる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の全体システム構成図であり、車両用空調装置の冷凍サイクルRは冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1を有し、この圧縮機1には動力断続用の電磁クラッチ2が備えられている。圧縮機1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達されるので、電磁クラッチ2への通電を空調用制御装置5により断続することにより圧縮機1の運転が断続される。
【0024】
圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、図示しない冷却ファンより送風される外気と熱交換して冷却され凝縮する。この凝縮器6で凝縮した冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクルR内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
【0025】
この受液器7からの液冷媒は減圧手段をなす膨張弁8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。膨張弁8は冷房用熱交換器をなす蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁である。この膨張弁8からの低圧冷媒は蒸発器9に流入する。この蒸発器9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって閉回路を構成している。
【0026】
空調ケース10において、蒸発器9の上流側には送風機11が配置され、送風機11には遠心式送風ファン12と駆動用モータ13が備えられている。送風ファン12の吸入側には内外気切替箱14が配置され、この内外気切替箱14内の内外気切替ドア14aにより外気導入口14bと内気導入口14cを開閉する。
これにより、内外気切替箱14内に外気(車室外空気)または内気(車室内空気)が切替導入される。内外気切替ドア14aは内外気切替手段を構成するものであり、サーボモータからなる電気駆動装置14eにより駆動される。
【0027】
空調装置通風系のうち、送風機11下流側に配置される空調ユニット15部は、通常、車室内前部の計器盤内側において車両幅方向の中央位置に配置され、送風機11部は空調ユニット15部に対して助手席側にオフセット配置される。空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19は回転可能な板ドアで構成され、エアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア20が暖房用熱交換器として設置されている。
【0028】
そして、この温水式ヒータコア20の側方(上方部)には、温水式ヒータコア20をバイパスして空気(冷風)が流れるバイパス通路21が形成されている。
エアミックスドア19は、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。
【0029】
従って、本例においてはエアミックスドア19により車室内への吹出空気の温度調節手段が構成される。なお、エアミックスドア19はサーボモータからなる電気駆動装置22により回転駆動される。
【0030】
温水式ヒータコア20の下流側には下側から上方へ延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風が空気混合部24で混合して、所望温度の空気を作り出すことができる。
【0031】
さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側に吹出モード切替部が構成されている。すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両前面窓ガラス内面に空気を吹き出すものである。デフロスタ開口部25は、回転可能な板状のデフロスタドア26により開閉される。
【0032】
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すものである。フェイス開口部27は回転可能な板状のフェイスドア28により開閉される。
【0033】
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にフット開口部29が形成され、このフット開口部29は車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すものである。フット開口部29は回転可能な板状のフットドア30により開閉される。上記した吹出モードドア26、28、30は共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置31により駆動される。
【0034】
空調ケース10内で蒸発器9の空気吹出直後の部位に蒸発器9の温度センサ32が配置され、この温度センサ32により蒸発器吹出温度Teを検出するようになっている。
【0035】
空調用制御装置5には、上記の温度センサ32の他に、空調制御のために、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する周知のセンサ群35から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル36には乗員により手動操作される操作部材群37が備えられ、この操作部材群37の操作信号も空調用制御装置5に入力される。
【0036】
この操作部材群37としては、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ37a、風量切替信号を発生する風量スイッチ37b、吹出モード切替信号を発生する吹出モードスイッチ37c、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37d、圧縮機1のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ37e等が設けられている。
【0037】
一方、空調用制御装置5はエンジン用制御装置38に接続されており、エンジン用制御装置38から空調用制御装置5には車両エンジン4の回転数信号、車速信号等が入力される。
【0038】
エンジン用制御装置38は周知のごとく車両エンジン4の運転状況等を検出するセンサ群(図示せず)からの信号に基づいて車両エンジン4への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。さらに、本実施形態の対象とするエコラン車においては、車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいて停車状態を判定すると、エンジン用制御装置38は、点火装置の電源遮断、燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させ、エコラン停止状態となる。
【0039】
また、エコラン停止後(エンジン停止後)、運転者がアクセルペダルを踏み込み、車両の発進操作を行うと、エンジン用制御装置38は車両の発進状態をアクセルペダル信号等に基づいて判定して、車両エンジン4を自動的に始動させる。
なお、空調用制御装置5は、エコラン停止後、蒸発器温度センサ32により検出される蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)に上昇すると、エンジン再稼働要求の信号をエンジン用制御装置38に出力する。
【0040】
また、蒸発器吹出温度Teは、通常の空調装置と同様に、圧縮機1の電磁クラッチ2の断続制御や、圧縮機1が可変容量型である場合はその吐出容量制御のために使用され、これらのクラッチ断続制御や吐出容量制御により蒸発器9の冷房能力を調整する。
【0041】
空調用制御装置5およびエンジン用制御装置38はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。空調用制御装置5は、エンジン稼働時における通常の空調制御機能、すなわち、圧縮機断続制御、風量制御、エアミックスドア制御、内外気吸込制御、吹出モード制御等の他に、車両エンジン4の停止許可、停止禁止の信号やエコラン停止後のエンジン再稼働要求の信号を出力するエンジン制御機能、エコラン停止時における放冷冷房モード制御機能等を果たすものである。なお、空調用制御装置5およびエンジン用制御装置38を1つの制御装置として統合してもよい。
【0042】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。車両走行時には、車両エンジン4が運転状態にあって、圧縮機1が車両エンジン4により駆動されるので、冷凍サイクルR内を冷媒が循環する。そのため、膨張弁8にて減圧された低温低圧の気液2相冷媒が蒸発器9にて送風機11の送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却され、冷風となる。蒸発器9の吹出温度Teは圧縮機1作動の断続制御により3°C〜5°C付近の温度に維持され、蒸発器9のフロストを防止する。
【0043】
一方、エコラン車では信号待ち等の停車状態をエンジン用制御装置38により判定すると、車両エンジン4を自動的に停止する。このため、停車時には冷凍サイクルRの圧縮機1が停止状態となる。従って、停車時には蒸発器9の熱容量に基づく蓄冷熱量の放冷作用によって送風空気の冷却を継続し、車室内の冷房作用を継続することになる。
【0044】
そして、エコラン停止後、時間の経過とともに蒸発器9の吹出温度Teが上昇していき、蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)まで上昇すると、空調用制御装置5がこれを判定してエンジン再稼働要求の信号をエンジン用制御装置38に出力する。これにより、エコラン停止中であっても、車両エンジン4を自動的に再起動し、圧縮機1を再起動する。従って、蒸発器9の冷却機能を再開して、必要冷房能力を確保できるので、冷房フィーリングの悪化を未然に回避できる。
【0045】
しかし、エコラン停止後、冷房能力確保のために短時間で車両エンジン4を再起動すると、停車中における車両エンジン4の停止時間が短時間となって、環境保護、燃費低減等を目的とするエコラン車本来の特徴が大きく損なわれる。
【0046】
そこで、第1実施形態では以下述べる内外気吸い込み制御を行うことにより、冷房熱負荷の低減を図って、停車中における車両エンジン4の停止時間の延長を図るものである。
【0047】
図2は空調用制御装置5により実行されるエコラン停止時の内外気吸込制御であり、エアコンスイッチ37eがON状態にあること、およびエコラン停止時(停車状態を判定して車両エンジン4を自動的に停止した状態)にあることを判定すると、図2の内外気吸込制御がスタートする。
【0048】
先ず、ステップS1にて内外気吸込モードが外気であるか判定する。ここで、内外気吸込モードは内外気切替スイッチ37dによりマニュアル設定される場合と、空調環境条件の変化に応じて空調用制御装置5により自動設定される場合の両方がある。内外気吸込モードが内気モードになっている場合はステップS2に進み内気モードを継続する。
【0049】
これに反し、内外気吸込モードが外気モードになっている場合はステップS3にて車室内吹出空気の目標吹出温度TAOの高低判定を行う。ここで、目標吹出温度TAOは、空調熱負荷条件の変化にかかわらず、車室内温度を乗員の設定した設定温度Tsetに維持するために必要な車室内吹出空気温度である。目標吹出温度TAOは具体的には以下の数式1により算出される。
【0050】
【数1】
TAO=Kset・Tset−Kr・Tr−Kam・Tam−Ks・Ts+C但し、Ksetは温度設定ゲイン、Tsetは設定温度信号、Krは内気温ゲイン、Trは内気温信号、Kamは外気温ゲイン、Tamは外気温信号、Ksは日射ゲイン、Tsは日射量信号、Cは補正定数である。
【0051】
上記の数式1から理解されるように、目標吹出温度TAOは、設定温度Tsetが低いほど、また、内気温Trおよび外気温Tamが高いほど、また、日射量Tsが大きいほど、つまり、冷房熱負荷が高くなるほど、低い温度となる。従って、目標吹出温度TAOの高低の判定により冷房熱負荷の高低を判定できる。
【0052】
そして、ステップS3におけるTAO判定は具体的には図3のように行う。すなわち、TAOが所定の第1判定温度T1(例えば、30℃)より低下すると、冷房熱負荷の高い条件にあると判定し、判定結果がYESとなり、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。この結果、蒸発器9の吸込空気温度が外気モード時に比して大幅に低温となり、蒸発器9の吸熱量が減少するので、エコラン停止時に蒸発器9の蓄冷熱量により送風空気を冷却する際に、蒸発器9の吹出温度Teの上昇度合いを低減できる。これにより、エコラン停止後に蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)に上昇するまでの時間(エンジン停止時間)を延ばすことができる。そのため、エコラン車本来の環境保護、燃費低減等といった特徴を効果的に発揮できる。
【0053】
一方、ステップS3においてTAOが第1判定温度T1(例えば、30℃)より高いときは冷房熱負荷の低い条件にあると判定して、判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0054】
なお、図3において、第2判定温度T2は第1判定温度T1より所定温度だけ高い温度(例えば、35℃)であり、第1判定温度T1と第2判定温度T2との温度差は内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅である。
【0055】
なお、冷房上限目標温度は、外気温Tamの上昇に応じて上昇するように決定することが、エコラン停止時におけるエンジン停止時間の延長のために好ましい。
【0056】
なお、第1実施形態では、ステップS3により本発明の判定手段が構成され、ステップS4により本発明の内外気吸込モード制御手段が構成される。
【0057】
(第2実施形態)
第1実施形態では車室内吹出空気の目標吹出温度TAOに基づいて冷房熱負荷の高低を判定しているが、第2実施形態では、図4のステップS31にて外気温Tamに基づいて冷房熱負荷の高低を判定している。
【0058】
具体的には、図5に示すように、外気温Tamが所定の第1判定温度T1(例えば、20℃)より上昇すると、冷房熱負荷の高い条件にあると判定し、判定結果がYESとなる。従って、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。
【0059】
外気温Tamが所定の第1判定温度T1(例えば、20℃)より低いときは冷房熱負荷の低い条件にあると判定して判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0060】
なお、図5においても、内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅を設定するために、第1判定温度T1より所定温度だけ低い第2判定温度T2(例えば、18℃)を設定している。
【0061】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、冷房熱負荷と相関関係のある情報値(TAO、Tam)を判定して、エコラン停止時の冷房熱負荷が高いときは内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替えるようにしているが、第3実施形態では車両前面窓ガラス内面付近に湿度センサ(図示せず)を配置し、車両窓ガラスの曇り発生と密接に関連している窓ガラス内面付近の湿度(相対湿度RH)を湿度センサにより検出し、その検出湿度に基づいてエコラン停止時の内外気吸込モードを自動制御する。
【0062】
図6は第3実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御であり、ステップS32において湿度センサにより検出される窓ガラス内面付近の湿度の高低を判定している。具体的には、図7に示すように、窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1(例えば、90%)未満であるか判定する。窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1未満であるときは、窓ガラスの曇りが発生しない状況にあると判定して判定結果がYESとなり、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。
【0063】
一方、ステップS32において窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1以上であるときは、窓ガラスの曇りが発生しやすい状況にあると判定して判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0064】
なお、図7においても、内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅を設定するために、第1曇り発生限界湿度RH1より所定値だけ低い第2曇り発生限界湿度RH2(例えば、60%)を設定している。
【0065】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、圧縮機1の駆動源が車両エンジン4のみである場合について説明したが、第4実施形態は圧縮機1の駆動源として車両エンジン4と電動モータ40(図8参照)の両方を用いるハイブリッド駆動方式(2ウエイ駆動方式)を採用するものである。
【0066】
図8は第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機1を示すものであり、圧縮機1は斜板(図示せず)の傾斜角度の変化により吐出容量を0%付近から100%まで連続的に変化させる可変容量型圧縮機として構成されている。周知のごとく、斜板の傾斜角度を変化させるための制御圧を電磁弁機構41の制御電流により制御して、圧縮機1の吐出容量を変化させるようになっている。
【0067】
圧縮機1の回転軸42の一端側に電動モータ40が同軸的に構成してある。電動モータ40はステータ部40aの外周側にロータ部40bを配置したアウターロータタイプであり、ロータ部40bは支持部40cを介して回転軸42の一端側に一体に連結されている。ステータ部40aは支持部40dを介して圧縮機1のハウジング43の円筒状突出部43aに固定支持される。
【0068】
車両エンジン4によりベルト駆動されるプーリ部44は軸受45により円筒状突出部43a上に回転自在に支持される。また、プーリ部44には回転伝達部材46が一体に連結され、この回転伝達部材46は一方向クラッチ47を介して電動モータ40のロータ支持部40cに連結される。ここで、一方向クラッチ47は回転伝達部材46からロータ支持部40cへの一方向のみに回転を伝達し、逆方向、すなわち、ロータ支持部40cから回転伝達部材46への方向には回転を伝達しない構成になっている。
【0069】
車両走行時には電動モータ40は停止状態に維持され、車両エンジン4の回転がベルト駆動によりプーリ部44に伝達され、このプーリ部44の回転が回転伝達部材46、一方向クラッチ47およびロータ支持部40cを介して圧縮機1の回転軸42に伝達される。従って、車両走行時にはエンジン駆動により圧縮機1が作動する。そして、圧縮機1の吐出容量制御により蒸発器吹出温度Teを所定の目標吹出温度に制御できる。
【0070】
これに対し、エコラン停止時には車両エンジン4の停止に伴って圧縮機1が停止すると、蒸発器吹出温度Teが次第に上昇していく。そして、蒸発器吹出温度Teが第1所定温度例えば、8℃まで上昇すると、圧縮機1の駆動源として先ず電動モータ40を選択し、電動モータ40を車載バッテリを電源として作動させる。これにより、電動モータ40のロータ部40bの回転が支持部40cを介して回転軸42に伝達され、圧縮機1が作動する。このとき、一方向クラッチ47の作用により電動モータ40の回転が車両エンジン4側へ伝達されることを防止できる。
【0071】
電動モータ40の回転出力は車両エンジン4に比して大幅に小さいため、電動モータ駆動時における圧縮機1の冷媒吐出能力はエンジン駆動時より大幅に小さい。そのため、冷房熱負荷の高い時には圧縮機1を電動モータ40により駆動しても蒸発器吹出温度Teが次第に上昇していく。そして、蒸発器吹出温度Teが第1所定温度より高い第2所定温度(例えば、12℃〜16℃程度の温度)まで上昇すると、車両エンジン4の稼働要求信号を空調用制御装置5からエンジン用制御装置38に出して、車両エンジン4を再起動し、車両エンジン4により圧縮機1を駆動する。従って、このときは空調用制御装置5の出力により電動モータ40を停止する。
【0072】
このように圧縮機1の駆動を電動モータ駆動からエンジン駆動に切り替えることにより、圧縮機1の冷媒吐出能力を向上して必要冷房能力を確保する。
【0073】
ところで、第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機1を備える車両用空調装置においても、エコラン停止時における内外気吸込制御を第1〜第3実施形態のように冷房熱負荷あるいは窓ガラス内面湿度に応じて、強制的に内気モードを設定することにより、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0074】
なお、第4実施形態では、圧縮機1の回転軸42に対して電動モータ40を同軸的に構成する例について説明したが、圧縮機1の外部に電動モータ40を独立に構成し、この外部の電動モータ40の回転をベルト等の回転伝達機構を介して圧縮機1の回転軸42に伝達するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の全体システム構成図である。
【図2】第1実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図3】図2における目標吹出温度TAO判定の具体例を示す説明図である。
【図4】第2実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図5】図4における外気温判定の具体例を示す説明図である。
【図6】第3実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図7】図6におけるガラス内面付近湿度判定の具体例を示す説明図である。
【図8】第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
R…冷凍サイクル、1…圧縮機、4…車両エンジン、5…空調用制御装置、
9…蒸発器、14a…内外気切替ドア。
【発明の属する技術分野】
本発明は、停車時に車両エンジンを自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される空調装置おいて、内外気吸込制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護、燃費低減等を目的にして、信号待ち等の停車時に車両エンジンを自動的に停止する車両(ハイブリッド車等のエコラン車)が実用化されており、今後、停車時に車両エンジンを停止する車両が増加する傾向にある。
【0003】
このように停車時に車両エンジンを自動的に停止する車両に搭載される空調装置は従来種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、車両用空調装置においては、冷凍サイクルの圧縮機を車両エンジンにより駆動しているので、上記エコラン車においては信号待ち等で停車して、車両エンジンが停止される毎に、圧縮機も停止して冷房用蒸発器の温度が上昇し、車室内への吹出空気温度が上昇するので、乗員の冷房フィーリングを損なう。
【0005】
そこで、停車時に冷房用蒸発器の温度が所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)まで上昇すると、車両エンジンに対して稼働要求の信号を出して、停車中であっても車両エンジンを再起動する。これにより、冷凍サイクルの圧縮機を再起動し、冷房用蒸発器の冷却機能を再開して、冷房フィーリングの悪化を抑制している。
【0006】
また、冷凍サイクルの圧縮機を車両エンジンと電動モータの両方で駆動可能とするハイブリッド駆動方式(2ウェイ駆動方式)も知られており、このハイブリッド駆動方式では停車時に電動モータにより圧縮機を駆動することができるが、電動モータの出力の制約から十分な冷房能力を確保できない。その結果、停車中であっても冷房能力の確保のために車両エンジンを再起動する必要が生じる。
【0007】
【特許文献1】
特許第3261099号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように停車中であっても冷房能力確保のために車両エンジンの再起動が必要となるので、環境保護、燃費低減等を目的とするエコラン車本来の特徴を大きく損なうことになる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、冷房能力確保のための車両エンジン稼働要求の時期を遅らせることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、蒸発器(9)の冷房熱負荷の高低を判定する判定手段(S3、S31)と、圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、判定手段(S3、S31)が冷房熱負荷の高い状態を判定すると、内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において冷房熱負荷が高いときは内外気吸込モードがたとえ外気モードであっても、内外気吸込モードを強制的に内気モード状態として、蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇を外気モード時に比較して遅延できる。その結果、車両エンジン(4)のエコラン停止後、蒸発器(9)の冷房能力低下に伴って車両エンジンの稼働要求を出す時期を遅延できる。従って、環境保護、燃費低減等といったエコラン車本来の特徴を効果的に発揮できる。
【0012】
なお、冷房熱負荷が低いときは、車両エンジン(4)のエコラン停止後における蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇度合いが小さいから、内外気吸込モードを強制的に内気モードとする必要性は小さくなる。従って、冷房熱負荷が低いときは内外気吸込モードを乗員の要求、車両環境条件等に応じて決定すればよい。
【0013】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、判定手段(S31)は車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度に基づいて冷房熱負荷の高低を判定することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1において、判定手段(S31)は外気温に基づいて冷房熱負荷の高低を判定するようにしてもよい。
【0015】
請求項4に記載の発明では、停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、車両窓ガラス内面付近の湿度の高低を判定する判定手段(S32)と、圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満である状態を判定手段(S32)により判定すると、内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満である状態を判定したときは、内外気吸込モードがたとえ外気モードであっても、内外気吸込モードを強制的に内気モード状態として、蒸発器(9)の吹出空気温度の上昇を外気モード時に比較して遅延できる。その結果、車両エンジン(4)のエコラン停止後、冷房能力確保のための車両エンジン稼働要求の時期を遅延できるので、環境保護、燃費低減等といったエコラン車本来の特徴を効果的に発揮できる。
【0017】
しかも、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満であるときに内外気吸込モードを強制的に内気モードとするから、車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度以上となるときは内外気吸込モードを強制的に内気モードとしない。そのため、内気モードへの切替に伴う車両窓ガラスの曇り発生を未然に防止できる。
【0018】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、圧縮機(1)を車両エンジン(4)のみにより駆動するようにしてよい。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、圧縮機(1)を、車両エンジン(4)と電動モータ(40)の両方により駆動可能になっており、エコラン停止状態において、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が冷房能力低下側の第1所定値に達すると、電動モータ(40)により圧縮機(1)を駆動し、エコラン停止状態において、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が第1所定値よりも一層冷房能力低下側に位置する第2所定値に達すると、車両エンジン(4)を再起動して圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0020】
ここで、蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値としては、具体的には蒸発器(9)の吹出空気温度、蒸発器(9)のフィン表面温度、設定温度と内気温との温度差等を用いることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明のように、車両エンジン(4)のエコラン停止状態において、最初に、電動モータ(40)により圧縮機(1)を駆動し、その後に、蒸発器(9)の冷房能力低下の進行に伴って圧縮機(1)を車両エンジン駆動に切り替えるハイブリッド駆動方式においても、請求項1、4による作用効果は同様に発揮できる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の全体システム構成図であり、車両用空調装置の冷凍サイクルRは冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1を有し、この圧縮機1には動力断続用の電磁クラッチ2が備えられている。圧縮機1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達されるので、電磁クラッチ2への通電を空調用制御装置5により断続することにより圧縮機1の運転が断続される。
【0024】
圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、図示しない冷却ファンより送風される外気と熱交換して冷却され凝縮する。この凝縮器6で凝縮した冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクルR内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
【0025】
この受液器7からの液冷媒は減圧手段をなす膨張弁8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。膨張弁8は冷房用熱交換器をなす蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁である。この膨張弁8からの低圧冷媒は蒸発器9に流入する。この蒸発器9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって閉回路を構成している。
【0026】
空調ケース10において、蒸発器9の上流側には送風機11が配置され、送風機11には遠心式送風ファン12と駆動用モータ13が備えられている。送風ファン12の吸入側には内外気切替箱14が配置され、この内外気切替箱14内の内外気切替ドア14aにより外気導入口14bと内気導入口14cを開閉する。
これにより、内外気切替箱14内に外気(車室外空気)または内気(車室内空気)が切替導入される。内外気切替ドア14aは内外気切替手段を構成するものであり、サーボモータからなる電気駆動装置14eにより駆動される。
【0027】
空調装置通風系のうち、送風機11下流側に配置される空調ユニット15部は、通常、車室内前部の計器盤内側において車両幅方向の中央位置に配置され、送風機11部は空調ユニット15部に対して助手席側にオフセット配置される。空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19は回転可能な板ドアで構成され、エアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア20が暖房用熱交換器として設置されている。
【0028】
そして、この温水式ヒータコア20の側方(上方部)には、温水式ヒータコア20をバイパスして空気(冷風)が流れるバイパス通路21が形成されている。
エアミックスドア19は、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。
【0029】
従って、本例においてはエアミックスドア19により車室内への吹出空気の温度調節手段が構成される。なお、エアミックスドア19はサーボモータからなる電気駆動装置22により回転駆動される。
【0030】
温水式ヒータコア20の下流側には下側から上方へ延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風が空気混合部24で混合して、所望温度の空気を作り出すことができる。
【0031】
さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側に吹出モード切替部が構成されている。すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両前面窓ガラス内面に空気を吹き出すものである。デフロスタ開口部25は、回転可能な板状のデフロスタドア26により開閉される。
【0032】
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すものである。フェイス開口部27は回転可能な板状のフェイスドア28により開閉される。
【0033】
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にフット開口部29が形成され、このフット開口部29は車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すものである。フット開口部29は回転可能な板状のフットドア30により開閉される。上記した吹出モードドア26、28、30は共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置31により駆動される。
【0034】
空調ケース10内で蒸発器9の空気吹出直後の部位に蒸発器9の温度センサ32が配置され、この温度センサ32により蒸発器吹出温度Teを検出するようになっている。
【0035】
空調用制御装置5には、上記の温度センサ32の他に、空調制御のために、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する周知のセンサ群35から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル36には乗員により手動操作される操作部材群37が備えられ、この操作部材群37の操作信号も空調用制御装置5に入力される。
【0036】
この操作部材群37としては、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ37a、風量切替信号を発生する風量スイッチ37b、吹出モード切替信号を発生する吹出モードスイッチ37c、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37d、圧縮機1のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ37e等が設けられている。
【0037】
一方、空調用制御装置5はエンジン用制御装置38に接続されており、エンジン用制御装置38から空調用制御装置5には車両エンジン4の回転数信号、車速信号等が入力される。
【0038】
エンジン用制御装置38は周知のごとく車両エンジン4の運転状況等を検出するセンサ群(図示せず)からの信号に基づいて車両エンジン4への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。さらに、本実施形態の対象とするエコラン車においては、車両エンジン4の回転数信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいて停車状態を判定すると、エンジン用制御装置38は、点火装置の電源遮断、燃料噴射の停止等により車両エンジン4を自動的に停止させ、エコラン停止状態となる。
【0039】
また、エコラン停止後(エンジン停止後)、運転者がアクセルペダルを踏み込み、車両の発進操作を行うと、エンジン用制御装置38は車両の発進状態をアクセルペダル信号等に基づいて判定して、車両エンジン4を自動的に始動させる。
なお、空調用制御装置5は、エコラン停止後、蒸発器温度センサ32により検出される蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)に上昇すると、エンジン再稼働要求の信号をエンジン用制御装置38に出力する。
【0040】
また、蒸発器吹出温度Teは、通常の空調装置と同様に、圧縮機1の電磁クラッチ2の断続制御や、圧縮機1が可変容量型である場合はその吐出容量制御のために使用され、これらのクラッチ断続制御や吐出容量制御により蒸発器9の冷房能力を調整する。
【0041】
空調用制御装置5およびエンジン用制御装置38はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。空調用制御装置5は、エンジン稼働時における通常の空調制御機能、すなわち、圧縮機断続制御、風量制御、エアミックスドア制御、内外気吸込制御、吹出モード制御等の他に、車両エンジン4の停止許可、停止禁止の信号やエコラン停止後のエンジン再稼働要求の信号を出力するエンジン制御機能、エコラン停止時における放冷冷房モード制御機能等を果たすものである。なお、空調用制御装置5およびエンジン用制御装置38を1つの制御装置として統合してもよい。
【0042】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。車両走行時には、車両エンジン4が運転状態にあって、圧縮機1が車両エンジン4により駆動されるので、冷凍サイクルR内を冷媒が循環する。そのため、膨張弁8にて減圧された低温低圧の気液2相冷媒が蒸発器9にて送風機11の送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却され、冷風となる。蒸発器9の吹出温度Teは圧縮機1作動の断続制御により3°C〜5°C付近の温度に維持され、蒸発器9のフロストを防止する。
【0043】
一方、エコラン車では信号待ち等の停車状態をエンジン用制御装置38により判定すると、車両エンジン4を自動的に停止する。このため、停車時には冷凍サイクルRの圧縮機1が停止状態となる。従って、停車時には蒸発器9の熱容量に基づく蓄冷熱量の放冷作用によって送風空気の冷却を継続し、車室内の冷房作用を継続することになる。
【0044】
そして、エコラン停止後、時間の経過とともに蒸発器9の吹出温度Teが上昇していき、蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)まで上昇すると、空調用制御装置5がこれを判定してエンジン再稼働要求の信号をエンジン用制御装置38に出力する。これにより、エコラン停止中であっても、車両エンジン4を自動的に再起動し、圧縮機1を再起動する。従って、蒸発器9の冷却機能を再開して、必要冷房能力を確保できるので、冷房フィーリングの悪化を未然に回避できる。
【0045】
しかし、エコラン停止後、冷房能力確保のために短時間で車両エンジン4を再起動すると、停車中における車両エンジン4の停止時間が短時間となって、環境保護、燃費低減等を目的とするエコラン車本来の特徴が大きく損なわれる。
【0046】
そこで、第1実施形態では以下述べる内外気吸い込み制御を行うことにより、冷房熱負荷の低減を図って、停車中における車両エンジン4の停止時間の延長を図るものである。
【0047】
図2は空調用制御装置5により実行されるエコラン停止時の内外気吸込制御であり、エアコンスイッチ37eがON状態にあること、およびエコラン停止時(停車状態を判定して車両エンジン4を自動的に停止した状態)にあることを判定すると、図2の内外気吸込制御がスタートする。
【0048】
先ず、ステップS1にて内外気吸込モードが外気であるか判定する。ここで、内外気吸込モードは内外気切替スイッチ37dによりマニュアル設定される場合と、空調環境条件の変化に応じて空調用制御装置5により自動設定される場合の両方がある。内外気吸込モードが内気モードになっている場合はステップS2に進み内気モードを継続する。
【0049】
これに反し、内外気吸込モードが外気モードになっている場合はステップS3にて車室内吹出空気の目標吹出温度TAOの高低判定を行う。ここで、目標吹出温度TAOは、空調熱負荷条件の変化にかかわらず、車室内温度を乗員の設定した設定温度Tsetに維持するために必要な車室内吹出空気温度である。目標吹出温度TAOは具体的には以下の数式1により算出される。
【0050】
【数1】
TAO=Kset・Tset−Kr・Tr−Kam・Tam−Ks・Ts+C但し、Ksetは温度設定ゲイン、Tsetは設定温度信号、Krは内気温ゲイン、Trは内気温信号、Kamは外気温ゲイン、Tamは外気温信号、Ksは日射ゲイン、Tsは日射量信号、Cは補正定数である。
【0051】
上記の数式1から理解されるように、目標吹出温度TAOは、設定温度Tsetが低いほど、また、内気温Trおよび外気温Tamが高いほど、また、日射量Tsが大きいほど、つまり、冷房熱負荷が高くなるほど、低い温度となる。従って、目標吹出温度TAOの高低の判定により冷房熱負荷の高低を判定できる。
【0052】
そして、ステップS3におけるTAO判定は具体的には図3のように行う。すなわち、TAOが所定の第1判定温度T1(例えば、30℃)より低下すると、冷房熱負荷の高い条件にあると判定し、判定結果がYESとなり、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。この結果、蒸発器9の吸込空気温度が外気モード時に比して大幅に低温となり、蒸発器9の吸熱量が減少するので、エコラン停止時に蒸発器9の蓄冷熱量により送風空気を冷却する際に、蒸発器9の吹出温度Teの上昇度合いを低減できる。これにより、エコラン停止後に蒸発器吹出温度Teが所定の冷房上限目標温度(例えば、12℃〜16℃程度)に上昇するまでの時間(エンジン停止時間)を延ばすことができる。そのため、エコラン車本来の環境保護、燃費低減等といった特徴を効果的に発揮できる。
【0053】
一方、ステップS3においてTAOが第1判定温度T1(例えば、30℃)より高いときは冷房熱負荷の低い条件にあると判定して、判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0054】
なお、図3において、第2判定温度T2は第1判定温度T1より所定温度だけ高い温度(例えば、35℃)であり、第1判定温度T1と第2判定温度T2との温度差は内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅である。
【0055】
なお、冷房上限目標温度は、外気温Tamの上昇に応じて上昇するように決定することが、エコラン停止時におけるエンジン停止時間の延長のために好ましい。
【0056】
なお、第1実施形態では、ステップS3により本発明の判定手段が構成され、ステップS4により本発明の内外気吸込モード制御手段が構成される。
【0057】
(第2実施形態)
第1実施形態では車室内吹出空気の目標吹出温度TAOに基づいて冷房熱負荷の高低を判定しているが、第2実施形態では、図4のステップS31にて外気温Tamに基づいて冷房熱負荷の高低を判定している。
【0058】
具体的には、図5に示すように、外気温Tamが所定の第1判定温度T1(例えば、20℃)より上昇すると、冷房熱負荷の高い条件にあると判定し、判定結果がYESとなる。従って、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。
【0059】
外気温Tamが所定の第1判定温度T1(例えば、20℃)より低いときは冷房熱負荷の低い条件にあると判定して判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0060】
なお、図5においても、内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅を設定するために、第1判定温度T1より所定温度だけ低い第2判定温度T2(例えば、18℃)を設定している。
【0061】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、冷房熱負荷と相関関係のある情報値(TAO、Tam)を判定して、エコラン停止時の冷房熱負荷が高いときは内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替えるようにしているが、第3実施形態では車両前面窓ガラス内面付近に湿度センサ(図示せず)を配置し、車両窓ガラスの曇り発生と密接に関連している窓ガラス内面付近の湿度(相対湿度RH)を湿度センサにより検出し、その検出湿度に基づいてエコラン停止時の内外気吸込モードを自動制御する。
【0062】
図6は第3実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御であり、ステップS32において湿度センサにより検出される窓ガラス内面付近の湿度の高低を判定している。具体的には、図7に示すように、窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1(例えば、90%)未満であるか判定する。窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1未満であるときは、窓ガラスの曇りが発生しない状況にあると判定して判定結果がYESとなり、ステップS4に進み、エコラン停止時の内外気吸込モードを強制的に内気モードに切り替える。
【0063】
一方、ステップS32において窓ガラス内面付近の湿度が第1曇り発生限界湿度RH1以上であるときは、窓ガラスの曇りが発生しやすい状況にあると判定して判定結果がNOとなり、ステップS5に進み外気モードを継続する。
【0064】
なお、図7においても、内外気吸込モード切替のハンチングを防止するヒステリシス幅を設定するために、第1曇り発生限界湿度RH1より所定値だけ低い第2曇り発生限界湿度RH2(例えば、60%)を設定している。
【0065】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、圧縮機1の駆動源が車両エンジン4のみである場合について説明したが、第4実施形態は圧縮機1の駆動源として車両エンジン4と電動モータ40(図8参照)の両方を用いるハイブリッド駆動方式(2ウエイ駆動方式)を採用するものである。
【0066】
図8は第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機1を示すものであり、圧縮機1は斜板(図示せず)の傾斜角度の変化により吐出容量を0%付近から100%まで連続的に変化させる可変容量型圧縮機として構成されている。周知のごとく、斜板の傾斜角度を変化させるための制御圧を電磁弁機構41の制御電流により制御して、圧縮機1の吐出容量を変化させるようになっている。
【0067】
圧縮機1の回転軸42の一端側に電動モータ40が同軸的に構成してある。電動モータ40はステータ部40aの外周側にロータ部40bを配置したアウターロータタイプであり、ロータ部40bは支持部40cを介して回転軸42の一端側に一体に連結されている。ステータ部40aは支持部40dを介して圧縮機1のハウジング43の円筒状突出部43aに固定支持される。
【0068】
車両エンジン4によりベルト駆動されるプーリ部44は軸受45により円筒状突出部43a上に回転自在に支持される。また、プーリ部44には回転伝達部材46が一体に連結され、この回転伝達部材46は一方向クラッチ47を介して電動モータ40のロータ支持部40cに連結される。ここで、一方向クラッチ47は回転伝達部材46からロータ支持部40cへの一方向のみに回転を伝達し、逆方向、すなわち、ロータ支持部40cから回転伝達部材46への方向には回転を伝達しない構成になっている。
【0069】
車両走行時には電動モータ40は停止状態に維持され、車両エンジン4の回転がベルト駆動によりプーリ部44に伝達され、このプーリ部44の回転が回転伝達部材46、一方向クラッチ47およびロータ支持部40cを介して圧縮機1の回転軸42に伝達される。従って、車両走行時にはエンジン駆動により圧縮機1が作動する。そして、圧縮機1の吐出容量制御により蒸発器吹出温度Teを所定の目標吹出温度に制御できる。
【0070】
これに対し、エコラン停止時には車両エンジン4の停止に伴って圧縮機1が停止すると、蒸発器吹出温度Teが次第に上昇していく。そして、蒸発器吹出温度Teが第1所定温度例えば、8℃まで上昇すると、圧縮機1の駆動源として先ず電動モータ40を選択し、電動モータ40を車載バッテリを電源として作動させる。これにより、電動モータ40のロータ部40bの回転が支持部40cを介して回転軸42に伝達され、圧縮機1が作動する。このとき、一方向クラッチ47の作用により電動モータ40の回転が車両エンジン4側へ伝達されることを防止できる。
【0071】
電動モータ40の回転出力は車両エンジン4に比して大幅に小さいため、電動モータ駆動時における圧縮機1の冷媒吐出能力はエンジン駆動時より大幅に小さい。そのため、冷房熱負荷の高い時には圧縮機1を電動モータ40により駆動しても蒸発器吹出温度Teが次第に上昇していく。そして、蒸発器吹出温度Teが第1所定温度より高い第2所定温度(例えば、12℃〜16℃程度の温度)まで上昇すると、車両エンジン4の稼働要求信号を空調用制御装置5からエンジン用制御装置38に出して、車両エンジン4を再起動し、車両エンジン4により圧縮機1を駆動する。従って、このときは空調用制御装置5の出力により電動モータ40を停止する。
【0072】
このように圧縮機1の駆動を電動モータ駆動からエンジン駆動に切り替えることにより、圧縮機1の冷媒吐出能力を向上して必要冷房能力を確保する。
【0073】
ところで、第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機1を備える車両用空調装置においても、エコラン停止時における内外気吸込制御を第1〜第3実施形態のように冷房熱負荷あるいは窓ガラス内面湿度に応じて、強制的に内気モードを設定することにより、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0074】
なお、第4実施形態では、圧縮機1の回転軸42に対して電動モータ40を同軸的に構成する例について説明したが、圧縮機1の外部に電動モータ40を独立に構成し、この外部の電動モータ40の回転をベルト等の回転伝達機構を介して圧縮機1の回転軸42に伝達するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の全体システム構成図である。
【図2】第1実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図3】図2における目標吹出温度TAO判定の具体例を示す説明図である。
【図4】第2実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図5】図4における外気温判定の具体例を示す説明図である。
【図6】第3実施形態によるエコラン停止時の内外気吸込制御を示すフローチャートである。
【図7】図6におけるガラス内面付近湿度判定の具体例を示す説明図である。
【図8】第4実施形態によるハイブリッド駆動方式の圧縮機を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
R…冷凍サイクル、1…圧縮機、4…車両エンジン、5…空調用制御装置、
9…蒸発器、14a…内外気切替ドア。
Claims (6)
- 停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、
前記車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、
前記圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
前記圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において前記車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、前記蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、前記車両エンジン(4)を再起動して前記圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
前記蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、
前記蒸発器(9)の冷房熱負荷の高低を判定する判定手段(S3、S31)と、
前記圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において前記車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、前記判定手段(S3、S31)が前記冷房熱負荷の高い状態を判定すると、前記内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記判定手段(S31)は車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度に基づいて前記冷房熱負荷の高低を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
- 前記判定手段(S31)は外気温に基づいて前記冷房熱負荷の高低を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
- 停車時に車両エンジン(4)を自動停止するエコラン停止制御を行う車両に搭載される車両用空調装置であって、
前記車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)と、
前記圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)に設けられ、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(9)とを備え、
前記圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において前記車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、前記蒸発器(9)の冷房能力が所定レベルまで低下したことを判定すると、前記車両エンジン(4)を再起動して前記圧縮機(1)を再起動する車両用空調装置において、
前記蒸発器(9)に吸い込まれる空気を内気と外気とに切り替える内外気切替手段(14a)と、
車両窓ガラス内面付近の湿度の高低を判定する判定手段(S32)と、
前記圧縮機(1)の作動指令が出ている状態において前記車両エンジン(4)がエコラン停止状態になったときに、前記車両窓ガラス内面付近の湿度が所定の曇り発生限界湿度未満である状態を前記判定手段(S32)により判定すると、前記内外気切替手段(14a)を内気モード状態とする内外気吸込制御手段(S4)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記圧縮機(1)を前記車両エンジン(4)のみにより駆動するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
- 前記圧縮機(1)を、前記車両エンジン(4)と電動モータ(40)の両方により駆動可能になっており、
前記エコラン停止状態において、前記蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が冷房能力低下側の第1所定値に達すると、前記電動モータ(40)により前記圧縮機(1)を駆動し、
前記エコラン停止状態において、前記蒸発器(9)の冷房能力に関連する情報値が前記第1所定値よりも一層冷房能力低下側に位置する第2所定値に達すると、前記車両エンジン(4)を再起動して前記圧縮機(1)を駆動することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
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- 2002-12-05 JP JP2002354028A patent/JP2004182165A/ja active Pending
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