JP2004179675A - 電子機器筐体及びそれに用いる熱伝導パス部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電子機器筐体及びそれに用いる熱伝導パス部材に関し、発熱量の大きな第1の筐体の内部の熱を発熱量の小さな第2の筐体の放熱部へ第2の筐体の開閉に支障なく移動し、自然対流により外部に熱放散することを目的とする。
【解決手段】 電子機器筐体は、発熱体を有する第1の筐体24に対しヒンジ部37により開閉する第2の筐体20の一部として一体構成されて外部に熱放散する放熱部21と、該放熱部の一端に接続され、第2の筐体と第1の筐体とに跨がって配置される熱伝導パス部22と、該熱伝導パス部に接続されて第1の筐体の内部で発生する熱を第1の筐体内で受熱する受熱部23とを一体形成し、熱伝導パス部材は、グラファイトシートの複数の端部を発熱、熱伝導または放熱を行う部材との接続部とし、グラファイトシートの片面または両面に絶縁シートを介在させて巻回した巻回部を有して構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子機器筐体及びそれに用いる熱伝導パス部材に係り、とくにその放熱構造に関する。近年、ノート型パソコン(以下、パソコンと略記する)に代表される携帯型電子機器は、小型化、軽量化、高性能化の要求が高まるに伴って、筐体容積が小さくなってきている。また、プリント配線板上の単位面積当たりに搭載される電子部品の数が増加し、その電子部品の発熱量も増大している。例えば高速のMPU(Microprocesser Unit)やCPU(Central Processing Unit)は省電力型でさえ6.5Wを超えるものが使用されるようになって筐体内部の発熱量はさらに増大傾向にある。このためパソコンなどにおいて、筐体内部で発生する熱を効率的に筐体外へ放熱し、電子機器の信頼性や安定した動作を確保することが強く要望されている。
パソコン筐体は、図19及び図20に示すように本体部筐体1と表示部筐体2とに分かれ、本体部筐体1及び表示部筐体2は回動可能なヒンジ部3で接続されている。
表示部筐体2は、ヒンジ部3を中心に回動して本体部筐体1に対し開閉する構造で、非使用時には閉じられ、使用時には任意の角度に開かれ保持される。
本体部筐体1は、高発熱体である高速のMPUなどの電子部品を搭載したメイン配線板4、サブ配線板5、HDD(Hard Disk Drive)6、PCMCIAカード(Personal Computer Memory Card Interface Association)7、電池8及びこれらの上を覆うキーボード9(図19は図示略、図20参照)などを配設し、他方の表示部筐体2は主に表示パネル〔液晶ディスプレイ,Liquid Crystal Display(LCD)〕11を搭載して構成されている。
このような構成のパソコンで発熱が課題とされているのは、発熱量の大きな本体部筐体である。本体部筐体の内部で発生する熱の放熱手段としては、図19に示したMPUなどの高発熱体の上に設けたヒートスプレッダ(熱拡散板)10がある。またこの他、空冷ファン、放熱フィン、ヒートシンク、ヒートパイプ、ソフトによるクロックパルス数の減少などがある。
なお、ヒートパイプは、パイプの一端(高温部)が加熱されると、内部に減圧封入された熱媒体が気化されてガス通路を他端(低温部)へ移動し、他端を冷却して液化され、還流通路を毛細管現象により高温部へ還流循環して高温部の熱を低温部へ移動(輸送)するものである。
これらの中、強制対流を発生させて冷却する空冷ファンは、最も有効な冷却手段の一つで多用されている。また、放熱フィンは、この強制対流下や自然対流下で最も放熱効果が大きいため、筐体外部に露出させたものもある。
あるいは、特開平8−162576号公報、特開平9−6481号公報、特開平10−39955号公報などは、ヒートパイプとヒートシンクを組み合わせて使用し、本体部筐体の内部全体に熱を拡散させて放熱する構造や、本体部筐体の内部で発生する熱を受熱板やヒートパイプを連結したヒンジ部に導き、さらにこのヒンジ部に連結した表示部筐体の放熱板に移動し、表示部筐体から熱放散する構造などが開示されている。
特開平8−162576号公報 特開平9−6481号公報 特開平10−39955号公報
しかしながら、このような上記放熱構造によれば、空冷ファンによる場合、電子機器筐体の小型、薄型化あるいは電子部品の高密度実装化により筐体内部の空気の対流が悪くなり、空気の流出入路や空冷ファンの実装スペースの確保が難しい。
また、外部に露出した放熱フィンは、意匠上の外観を悪くするとか、あまり高温のそれに手が触れたりすると、低温やけどの恐れがあるという問題がある。
また、筐体内部で熱拡散して放熱する場合は、逆にHDDやPCMCIAカードなどの低発熱の部品の温度を上昇させてしまうという問題がある。
また、パソコン筐体の表面から放熱する場合に、その表面温度は或る程度高い方が放熱効果の点で好ましいが、筐体表面温度が45゜Cを超えると、低温やけどの恐れがあるという問題がある。
我々は、既に特開平7−124995号公報の「電子機器筐体の製造方法」において、アルミニウムなどの金属基板をベースに樹脂を溶融接着して、軽量かつ高強度で放熱性のよい電子機器筐体を製造するインモールド法を開示している。
そこで、このインモールド法を応用することにより、パソコン筐体を例にして、本体部筐体内の高発熱体と表示部筐体の放熱部とを直接接続した熱伝導経路を備える電子機器筐体及びヒートパイプを結合した高熱伝導性のヒンジ部を備える電子機器筐体を提案する。
更にまた、別体で製作する高熱伝導を行う熱伝導パス部材及びそれを用いて本体部筐体内の高発熱体と表示部筐体の放熱部とを接続した電子機器筐体を提案する。
上記問題点に鑑み、発熱量の大きな本体部筐体の内部の熱を発熱量の小さな表示部筐体の放熱部へ表示部筐体の開閉に支障なく移動し、自然対流により外部に熱放散する電子機器筐体及びそれに用いる熱伝導パス部材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の電子機器筐体の請求項1においては、発熱体を有する第1の筐体(前記本体部筐体に対応)と、該第1の筐体に対しヒンジ部により開閉する第2の筐体(前記表示部筐体に対応)とで構成される電子機器筐体において、前記第2の筐体の一部として一体構成され、外部に熱放散する放熱部と、該放熱部の一端に接続され、前記第1の筐体と第2の筐体とに跨がって配置される熱伝導パス部と、該熱伝導パス部に接続されて前記第1の筐体の内部で発生する熱を前記第1の筐体内で受熱する受熱部とを一体で備えて構成する。
これにより、第1の筐体で発生する熱を第2の筐体の放熱部へ直接移動する熱伝導経路である受熱部及び熱伝導パス部をインモールド法により一体で製作しているため、熱伝導経路の熱抵抗を継ぎ目のある熱伝導経路より小さくできる。したがって、受熱部は、第1の筐体の内部の主にMPUなどの高発熱体が発生する熱を受熱(集熱)し、熱伝導パス部を経由させて放熱部に効率よく直接、熱伝導し放熱できる。
しかも、熱伝導パス部を湾曲可能にすることにより、第2の筐体の開閉に差支えることはない。また、放熱部は第2の筐体の大部分を占める面積にすることにより、熱を広く拡散できて外部に効率よく熱放散できる。
ここで、放熱部、熱伝導パス部及び受熱部は、面方向に異方性を有するグラファイトシートを基材にし、かつ異方性方向を熱伝導方向に略一致させて形成されることにより、受熱部は第1の筐体の内部の高発熱体が発生する熱を受熱(集熱)し、熱伝導パス部から放熱部への熱伝導方向に効率よく熱伝導できる。
また、請求項2,3においては、発熱体を有する第1の筐体と該第1の筐体に対し回動手段により開閉する第2の筐体とで構成され、前記第1の筐体内に固設されて該第1の筐体の内部で発生する熱を前記回動手段へ移動する第1のヒートパイプと、該回動手段からの熱を前記第2の筐体内に固設された放熱部へ移動する第2のヒートパイプとを備えた電子機器筐体において、前記回動手段は、内部に熱伝導流体(例えば、液体金属)を封入するとともに第2のヒートパイプと結合する回動体と、低温部が熱伝導流体中に挿入される第1のヒートパイプを回動可能に軸支するように回動体に取付けられる軸受とで構成する。
これにより、第2の筐体は、第1のヒートパイプを軸心にして回動体が回動できるため、第1の筐体に対して自在に開閉できる。また、回動体に封入された熱伝導流体は、熱伝導面積を拡大できるとともに一箇所に止まらず回動体の回動及び対流によって熱が移動し易くなるため、その分だけ回動手段を小形化できるとともに一般構造のヒンジや別体のものを単純に連結したものより、熱抵抗が少なくなり効率よく熱伝導できる。また、熱伝導流体を熱伝導率の大きなインジウム−ガリウムなどの液体金属に代えると、さらに効果的に熱伝導する。
また、請求項4においては、第1のヒートパイプの低温部は、放熱フィンを取り付けることにより、熱伝導流体に対して放熱面積を一層拡大できるため、回動体に効率よく熱伝導でき、その分だけ回動手段を小形化できる。
また、請求項5における熱伝導パス部材は、面方向に異方性を有するグラファイトシートの複数の端部を発熱、熱伝導または放熱を行う部材との接続部とし、前記グラファイトシートの片面または両面に絶縁シートを介在させて巻回した巻回部を有して構成する。
これにより、熱伝導パス部材は、グラファイトシートを巻いて積層し、その厚さが実質的に大きくなっているため、熱抵抗が小さくなり効果的に熱伝導できるため、請求項1記載の熱伝導パス部及び受熱部にとって替えることができる。
また、巻回部を中心に繰り返し湾曲させるため、湾曲によって生じる曲げ応力は巻回部全体に分散されて繰り返し湾曲による疲労を軽減して長寿命化できる。
また、請求項6記載の熱伝導パス部材においては、さらに前記熱伝導パス部材の巻回部は円柱形または円筒形の巻心に巻くことにより、とくに複数枚のグラファイトシートを巻く場合に、巻径寸法が精度よく抑られて、巻いた後の形状くずれを防止できる。
更に、円筒形の巻心(パイプ)を用いる場合は、その中空孔に配線を通すなどして空間を有効に利用できる。
また、請求項7記載の電子機器筐体においては、発熱体を有する第1の筐体と、該第1の筐体の発熱体の熱を外部に熱放散する放熱部を有する第2の筐体とで構成され、前記第2の筐体が第1の筐体に対しヒンジ部により開閉される電子機器筐体において、前記第1の筐体の発熱体と前記第2の筐体の放熱部とが請求項5または請求項6記載の熱伝導パス部材の接続部で接続されるとともに、前記巻回部はその巻回軸心が前記ヒンジ部の回動中心に略一致するように配設されて構成する。
これにより、熱伝導パス部材は、グラファイトシートを巻いて積層し、その厚さを実質的に大きくして熱抵抗を小さくしているため、従来の、第2の筐体の放熱部と一体成形した熱伝導パス部及び受熱部と同程度に効果的に熱伝導できる。
また、熱伝導パス部材は、巻回部の軸心をヒンジ部の回動中心に略一致させているため、巻回部は第2の筐体の開閉に伴って巻径が繰り返し拡縮変位して曲げ応力が巻回部全体に分散される。そのため、第2の筐体の開閉に伴う熱伝導パス部材の疲労が軽減されて長寿命化できる。
以上、詳述したように本発明によれば、本体部筐体(第1の筐体)に内設された主に高発熱体と表示部筐体(第2の筐体)の放熱部とを結ぶ熱伝導経路(熱伝導パス部と受熱部)を表示部筐体の一部として一体構成する放熱部に一体形成することにより、熱伝導経路の熱抵抗をより小さくでき、本体部筐体の内部で発生した熱を放熱部に効果的に伝導できるため、MPUなどの高発熱体に対して大きな冷却効果が得られ、その温度上昇を少なくすることができる。
また、熱伝導パス部の金属基板の表面を樹脂で覆った場合は、表面の温度上昇が抑えられてその下側に配設されたプリント配線板や電子部品に対する熱影響を軽減でき、使用者に感覚的の不快感を与えないという効果がある。
また、基材(心材)が面方向に異方性を有するグラファイトシートの場合は、熱伝導方向に異方方向を合わせることにより効率よく熱伝導できる他、電子機器筐体の機械的強度をも改善できる。
高熱伝導性の金属基板やグラファイトシートを基材にして、電子機器筐体をインモールド法により成形することで、強靱な筐体が製作できるとともに、第2の筐体は放熱部、受熱部及び熱伝導パス部の他、必要な側枠やねじ止め用ボス、補強用リブなどを一体で成形することができる。また、筐体表面に出ない受熱部や熱伝導パス部の部分に、樹脂を射出するランナや金属基板の位置決め用固定ピンを設けることにより、成形用金型の構造を複雑にせず簡単化できる。
さらに、第2の筐体は、外気と接する面をアルミニウム板にすることで銅板より軽量化されて機械的に補強でき、放熱効果を向上できる。
また、基材となる2枚重の金属基板間の空間に空気層を設ける、あるいはその空間に更に高熱伝導性の金属網と冷却液を封入することにより、熱拡散を一段と促進させて筐体表面の温度上昇を抑え、筐体表面温度を基準温度以下にできて低温やけどを防止できる。
また、回動手段は、第1のヒートパイプを軸心にして回動する回動体の中空孔内に熱伝導流体を封入し、ヒートパイプの低温部に複数の放熱フィンを取り付けることにより、回動体内部での熱伝導面積を拡大し、熱の対流及び熱伝導流体の移動により熱抵抗を少なくできるため、本体部筐体の内部の熱を表示部筐体の放熱部へ効果的に伝導できる。
また、回動手段は、一般構造のヒンジと同様に表示部筐体を本体部筐体に対し開閉可能とし、回動手段自体を小形にコンパクト化できる。
また、熱伝導パス部材は、グラファイトシートを巻いた巻回部を備えて熱伝導断面積を増しているため、この熱伝導パス部材を使用して本体部筐体の発熱体と表示部筐体の放熱部とを別体で接続しても従来の放熱部と一体成形した熱伝導パス部と同程度に効果的に熱伝導でき、本体部筐体内部のMPUなどの高発熱体に対して大きな冷却効果が得られ、その温度上昇を少なくすることができる。
また、熱伝導パス部材の巻回部は、表示部筐体の開閉に伴う繰り返し湾曲による曲げ応力を分散して疲労が軽減されるため、熱伝導パス部材が長寿命化されて表示部筐体の開閉回数を大幅に改善できるといった産業上極めて有用な効果を発揮する。
以下、図面に示した各実施例に基づいて本発明の要旨を詳細に説明する。なお、従来の図19及び図20と同じ構成部品には同一符号を付し、その説明を省略する。
先ず、第1の実施例のパソコン筐体の放熱構造について説明する。
パソコン筐体は、先の図19に示したと同様に、MPUなどを搭載したプリント配線板、HDD、PCMCIAカード、電池、キーボードなどを組み込んだ本体部筐体と、主にLCDを搭載した表示部筐体とで構成され、本体部筐体と表示部筐体とをヒンジ部で開閉可能に結合する。なお、この場合のヒンジ部は、ピンとピン孔が係合して回動する周知の一般のヒンジ構造である。
パソコン筐体の放熱構造は、発熱量の大きな本体部筐体の内部の熱を発熱量の小さな表示部筐体へ移動し効率的に放熱するため、本体部筐体に内設された高発熱体と表示部筐体の放熱部とを結ぶ熱伝導経路を一体化する。
それにより、熱伝導経路の熱抵抗は小さくなって、本体部筐体の内部で発生する熱は、熱伝導経路を通って表示部筐体の放熱部に直接、効率よく伝導されて拡散し、放熱部全体から自然対流により外部に熱放散される。
図1に示すように、底の浅い箱型の表示部筐体20は、表示部筐体20の底部の大部分を構成する放熱部21と、この放熱部21の一端から舌片状に延在させた熱伝導パス部22と、熱伝導パス部22から更に延在させて本体部筐体24内で発生する熱を受熱(集熱)して熱伝導パス部22に熱伝導する受熱部23とで一体で備える。
放熱部21は、熱伝導パス部22を通って移動した熱を受熱して広く拡散し、外部に自然対流により熱放散する。そのため、放熱部21は、できるだけ広い面積にして放熱効果を大きくする。
熱伝導パス部22は、表示部筐体20と本体部筐体24とに跨がって表示部筐体20の開閉にしたがって2つ折り状に湾曲し易くし(図6の符号22参照)、受熱部23からの熱を表示部筐体20の放熱部21へ直接伝導する。
受熱部23は、本体部筐体24に内設された発熱体に密着して取り付けられた高熱伝導性の金属、例えばアルミニウムで製作されたヒートスプレッダ(図19の符号10参照)上にねじ止めなどにより固定し、本体部筐体の内部で発生する熱、主としてMPUなどの高発熱体の発生する熱を受熱する。なお、ヒートスプレッダとの接触面は、熱伝導をよくするためにサーマルコンパウンドを塗布する。
つぎに、表示部筐体の製造方法について説明する。
図2に示すように、表示部筐体20の放熱部21は、高熱伝導性の金属基板25を基材(心材)とし、その裏面の周縁部Xの範囲を樹脂26で被覆し、更にその外周を四角枠形に立ち上げた側枠27と図示しないヒンジ取付部及び必要に応じて備えるねじ孔用ボスや補強リブなどとを同じ樹脂26で一体射出成形して形成する。この金属基板25面は、樹脂26で被覆した周縁部Xを除いて外部に露出する。
さらに、この放熱部21は、本体部筐体との熱伝導経路を一体で形成するために、基材である金属基板25の一部を図1に示した本体部筐体24の高発熱体の方に延在して熱伝導パス部22及び受熱部23を形成する。
図3及び図4のそれぞれの(a),(b) 図は、表示部筐体の射出成形工程を示す。
熱伝導及び放熱は、主として基材である金属基板により行われるので、金属基板の材料としては、銅(熱伝導率400W/mK)を用いると効果的である。また、銅より熱伝導率は劣るがアルミニウム(熱伝導率230W/mK)を用いると、表示部筐体を強化できる。
銅の場合には厚さを0.1〜0.3mmにし、アルミニウムの場合には厚さを0.1〜0.6mm程度にする。本実施例では、厚さ0.2mmの銅を用いる。なお、銅は銅合金、アルミニウムはアルミニウム合金でもよく、以下の銅、アルミニウムはそれらの合金も含むものとする。
図3の(a)図において、基材となる金属基板25は、脱脂、洗浄した後、成形時の溶融樹脂を接着するため、裏面(紙面側)の周縁部にニトリルゴム系の接着剤28をスクリーン印刷またはスプレーにて20μmの厚さで均一に塗布し、つぎに図1に示した放熱部21、熱伝導パス部22及び受熱部23を形成する形状にプレス加工などにより姿抜きする。
また、金属基板25は、つぎの射出成形工程において成形用金型に位置決めするための位置決め用孔29を穿設する。なお、金属基板は先に姿抜きした後、接着剤を塗布する逆順でもよい。
図3の(b)図において、金属基板25を成形用金型30に位置決めセットする。
ここで使用する成形用金型30は、下金型30aと上金型30bとで構成する。下金型30aは、金属基板25の位置決め用孔29と対応する位置に穿設したガイド孔31にスライド可能な段付きの固定ピン32を備え、固定ピン32の小径部に挿入されたコイルばね33により樹脂26の進入方向とは反対方向に付勢される。その付勢力は、樹脂26の注入圧力により押し戻される程度に設計される。
下金型30aと対になる上金型30bは、固定ピン32の同心上に樹脂26を注入するランナ34を備える。また、樹脂26の注入圧力によって押し戻される固定ピン32を受け止めるストッパ35を備え、下金型30aと上金型30bとを型締めすることによってキャビティ36が形成される。
なお、放熱部から延出された図示しない熱伝導パス部及び受熱部は、樹脂を同時に被覆成形しない構成の場合、当然に成形用金型から外部に出される。
樹脂26は、熱可塑性で、例えばABS−PC(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂〔CF(Carbon Fiber)を20重量%充填〕を使用する。射出成形条件は、樹脂溶融温度240°C、射出圧力600kgf/cm2 、射出時間1.5秒間である。
図4の(a)図において、樹脂26がランナ34から注入されると、固定ピン32は樹脂26の注入圧力により押し戻されてストッパ35に衝接する。このとき、固定ピン32の上端面は、金属基板25の表面に一致するように予め、設計される。
樹脂26がキャビティ36内に充満すると、位置決め用孔29はその樹脂26によって塞がれることとなる。そのため、固定ピン用孔29を塞ぐ手段及び工程は必要がなく成形が容易となり、成形用金型の構造を簡素化できる。
図4の(b)図において、表示部筐体20は、樹脂26を冷却硬化させた後、成形用金型を開いて図示しないノックアウトピンにより離型して取り出す。これらの工程により完成された表示部筐体20は、放熱部21から延出した図示されない金属基板でなる熱伝導パス部及び受熱部を一体で備えている。
このようにして製作された表示部筐体の放熱効果を評価するため、図5及び図6に示すように、表示部筐体20を本体部筐体24にヒンジ部37で結合してパソコンに組み上げ、パソコンを動作させて温度測定を行った。
なお、パソコンの動作中の消費電力は、プリント配線板8.9W(MPUの5W分を含む)、電源2.8W、HDD2.5W、PCMCIA1.5Wで、それぞれが相当する熱を発生する。
そして、放熱効果を比較するため、比較例1を試作する。
図7に示すように、この比較例1の表示部筐体40は、放熱部41を受熱部及び熱伝導パス部とは一体で製作せずに、別体で製作したものを接続した構造とする。即ち、放熱部41は、熱伝導パス部42及び受熱部43を切り離した形状で、第1の実施例と同じインモールド法により製作する。
熱伝導パス部42及び受熱部43の方は、別体の金属基板、厚さ0.2mmの銅で製作し、端部を放熱部41の縁端の金属面に重ねてスチレンゴム系の接着剤で接着する。
この表示部筐体40を、第1の実施例と同じ本体部筐体24にヒンジ部37で結合してパソコンに組み上げ、受熱部43を第1の実施例と同じようにヒートスプレッダに固着する。そうして、パソコンの動作中の温度を測定した。
その結果、第1の実施例は、比較例1と比べてMPUの温度が5°C低下し、表示部筐体の放熱部の表面温度は最も高い熱流入部の近辺で35°Cを下回り、パソコン筐体表面の温度基準である45°C以下を達成できた。
比較例1は、熱伝導パス部が放熱部と接着剤で接着・接続されているために熱抵抗が第1の実施例より大きくなったもので、熱伝導経路を継ぎ目なく一体化した第1の実施例の放熱構造の方が、比較例1より熱伝導効率が優れていることが確認された。もちろん、比較例1でも放熱部の表面温度は熱流入部の近辺で40°Cを下回り、温度基準45°C以下を満足しているため、十分に実用できることは言うまでもない。
また、この第1の実施例での金属基板は、厚さ0.2mmの銅でなく、厚さ0.4mmのアルミニウムに代えてもほぼ同等の放熱効果が得られ、しかも表示部筐体として十分な機械的強度を確保できることも追認された。
また、放熱部、熱伝導パス部及び受熱部の金属基板は、放熱部の外気側表面及び受熱部のヒートスプレッダとの接続面を除く表裏面、あるいは受熱部のヒートスプレッダとの接続面だけを除く表裏面に0.2mmの樹脂を被覆し、受熱部の金属面を直接、ヒートスプレッダに接続する場合でも第1の実施例とほぼ同等の作用、効果があることが確認された。
つぎに、第2の実施例を説明する。
図示を省略するが、この第2の実施例の表示部筐体は、第1の実施例の金属基板の代わりに基材として厚さ0.1mmのグラファイトシートを使用し、第1の実施例と同様にインモールド法により表示部筐体を製作する。
なお、グラファイトシートは、放熱部、熱伝導パス部及び受熱部の内面全面と熱伝導パス部の反対面とを厚さ0.2mmの樹脂で被覆し、とくに縁端部が裂けるのを防止する。また、受熱部は、グラファイトシートのヒートスプレッダと接触する面に樹脂を被覆せず、グラファイトシート面をヒートスプレッダに直接固着する。
この表示部筐体を使用したパソコンの動作中の温度を測定した。その結果、比較例1と比べて、MPUの温度は7°C低下し、表示部筐体の放熱部の表面温度は35°Cを下回った。
これは、グラファイトシートの面方向の熱伝導率が600W/mK、厚さ方向の熱伝導率が5W/mKで、熱伝導率において異方性があって銅やアルミニウムよりも優れているためである。
このような面方向の異方性を利用して、異方性方向を熱伝導方向に略一致させることにより、熱伝導方向の熱抵抗を小さくできるため、本体部筐体の内部のMPUなどの高発熱体が発生する熱を熱伝導経路に沿って受熱部から熱伝導パス部を通って放熱部へと効果的に熱伝導できる。
なお、ヒートスプレッダから受熱部への熱伝導は、グラファイトシートの厚さが0.1mmと薄いため、グラファイトシートの厚さ方向の熱伝導よりヒートスプレッダ面に直接接触したグラファイトシートの面方向を主にして行われる。
また、熱伝導パス部のグラファイトシートは両面を樹脂で被覆し、グラファイトシート自体の厚さ方向の熱伝導率が小さいため、熱伝導パス部の近辺にある他の部品に対する熱影響が少なくなり、熱伝導パス部の下方に配設されたプリント配線板の温度は第1の実施例と比べ、約3°Cほど低下した。
つぎに、第3の実施例を説明する。
図8の(a),(b)図に示すように、表示部筐体50は、第1の実施例とは熱伝導パス部52のみが異なる。即ち、放熱部51から延出した金属基板で構成する受熱部53は、第1の実施例と同じように金属基板(銅)のままとし、熱伝導パス部52だけが、同図の(b)図に示すように、金属基板である厚さ0.2mmの銅(または厚さ0.4mmのアルミニウム)の両面に、インモールド時とは別工程で厚さ50μmのPETシート56(Polyethylene Terephthalete Sheet)を接着する。
この表示部筐体50を同図の(a)図に示すように、パソコンに組み込み、動作中の温度を測定した。
その結果、比較例1と比べて、MPUの温度が7°C低下し、表示部筐体の放熱部の表面温度が35°Cを下回り、第2の実施例の基材がグラファイトシートの場合と同程度の放熱効果が得られた。
また、この第3の実施例では、熱伝導パス部である金属基板の両面がPETシートが接着されているため、第2の実施例と同じように熱伝導パス部の下方のプリント配線板や電子部品に対する熱影響が軽減され、プリント配線板の温度が第1の実施例と比べ、約3°Cほど低下した。
つぎに、第4の実施例を説明する。
図6に示したように熱伝導パス部22は、表示部筐体20と本体部筐体24とに跨がって配設されているため、表示部筐体20の開閉にしたがって繰り返し湾曲される。
そのため、つぎのように表示部筐体の繰り返し開閉評価を行った。
図示を省略するが、熱伝導パス部が厚さ0.2mmの銅板を基材にした場合と、厚さ0.1mmのグラファイトシートの両面に絶縁シート、例えば厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを接着した場合とで繰り返し湾曲試験を行った。
その結果、PETシートを両面に接着したグラファイトシートの場合は、表示部筐体の繰り返し開閉回数が銅基材の場合と比べて、2割ほど改善され、1万回以上の開閉に耐えることが確認できた。
つぎに、表示部筐体の静荷重強度と放熱性を評価するための第5の実施例を説明する。
図9に示すように、表示部筐体60は、第1の金属基板65である厚さ0.4mmのアルミニウム(板)を基材にして放熱部61をインモールド法により射出成形し、第1の金属基板65は延出して図示しない熱伝導パス部と受熱部とを一体形成する点では第1の実施例と同様である。
但し、この第5の実施例ではとくに、放熱部61の基材である第1の金属基板65の内面に被覆された厚さ0.2mmの樹脂66の上に第2の金属基板67の厚さ0.1mmの銅をエポキシ樹脂系の接着剤で接着した構造とし、第1の金属基板65の表面を外気面とする点が異なる。
比較例2として、図示を省略するが、内面に銅を接着しない表示部筐体を製作し、静荷重強度を比較した。測定は、表示部筐体の長辺両端部を支持し、中央部に上から折り曲げ荷重を加えていき、そのときの中央部の撓み寸法で比較する。
その結果、内面に厚さ0.2mmの銅を接着した表示部筐体は、比較例2の銅を接着していない表示部筐体と比べて、撓み量が1/3以下になり、銅によって十分な補強効果が得られることが判明した。
また、温度測定では、比較例2と比べて、MPUの温度が10°C低下し、表示部筐体の表面温度は35°Cを下回った。
つぎに、第6の実施例を説明する。
図10に示すように、表示部筐体70は、第1,第2の金属基板75,76である厚さ0.4mmのアルミニウムを、平均直径0.2mmのスペーサを兼ねる球状の金属粒子77aを混ぜたエポキシ系の接着剤77で接着してほぼ0.2mmの空気層78を有する空間を形成したものを基材とし、第1の金属基板75を外気面側にして第1の実施例と同様にインモールド法により製作する。この場合、熱伝導パス部及び受熱部は、図示を省略するが内側の第2の金属基板76だけが放熱部71から延出されて一体形成される。
なお、空気層78は、第1の金属基板75の接着面に接着剤を予め、所定寸法の間隔と帯幅とで一方向に塗布した後、第2の金属基板76を圧着して形成される。また、射出成形時の空気抜き孔79が、内側となる第2の金属基板76の適切な位置に設けられている。
この表示部筐体をパソコンに組み込んで、動作中の温度を測定した。放熱部に空気層を設けたことにより、熱伝導パス部から伝導された熱は、放熱部の全面に一層拡散されることとなり、表示部筐体の表面温度は32°Cを下回った。
つぎに、第7の実施例を説明する。
図11に示すように、表示部筐体80は、それぞれが厚さ0.4mmと0.2mmの第1,第2の金属基板85,86であるアルミニウムと銅を約0.5mmの空間を有して重ね、この空間に厚さ0.2mmのアルミニウム製の金属網87を入れて形成したものを基材とし、第1の金属基板85を外気面側にして第1の実施例と同様にインモールド法により製作する。なお、金属網87は銅でもよい。
この場合、図示を省略するが、熱伝導パス部及び受熱部は、内側の第2の金属基板86だけが放熱部81から延出されて一体形成される。また、図11のように、射出成形時の空気抜き孔89が、内側の第2の金属基板86の適切な位置に設けられている。
そして更に、成形後、金属網87の隙間空間に、空気抜き孔89から冷却液88として純水あるいはフロン134aまたは142bを内部容積の10%を封入する。
この表示部筐体をパソコンに組み込んで、動作中の温度を測定した。空間に入れた冷却液が温度上昇によって空間内を対流し冷却されることによって熱の対流が発生することにより、MPUの温度が12°C低下し、表示部筐体の表面温度は35°Cを下回り、さらに放熱部表面の温度分布が均一化した。
ところで、上記説明の各実施例は、本体部筐体の内部で発生する熱を直接、熱伝導経路を通して表示部筐体の放熱部に伝導し外部に熱放散したが、以下に本体部筐体から表示部筐体の放熱部への熱伝導経路を、熱を移動中継可能な回動手段に代えたパソコンの放熱構造について説明する。
先ず、第8の実施例について説明する。
図12は、一実施例の回動手段を含む放熱構造を示す平面図、図13は、図12における回動手段の組立側断面図である。
図示するように、本体部筐体24と表示部筐体40は、回動可能な左右2個のヒンジ部37と回動手段90とで結合する。本発明の回動手段90は右側で、左側のヒンジ部37は周知の一般のヒンジ構造でその説明を省略する。
本発明の回動手段90は、その両側に外径約4mmの第1,第2のヒートパイプ91,92を接続する。ここで用いるヒートパイプは、例えば古河電気工業株式会社製の市販品で、前述のように一端の高温部から他端の低温部へ熱を移動(輸送)することができる。
第1のヒートパイプ91は、高温部を本体部筐体24に内設されたMPUなどの高発熱体に固着されたヒートスプレッダ10(図19参照)に密着させて固定するとともに、中間部をヒートスプレッダ10を介して高発熱体に無理な力が加わらないように、また軸心を兼ねるため図示しない締付け具を用いて本体部筐体の適切な位置に堅固に固定する。その反対側の低温部は、回動手段90の回動側を構成する回動体93の軸心に挿入して中心軸を兼ねる。
第2のヒートパイプ92は、第1のヒートパイプ91を軸心にして回動する回動体93にその高温部を挿入する。その反対側の低温部は、表示部筐体40の放熱部41(図7に示した別体で形成の熱伝導パス部42及び受熱部43が付属されていないもの)に密着させて図示しない締付け具を用いて堅固に固定する。
つぎに、回動手段の構造を詳細に説明する。
図13に示すように、回動手段90は、高熱伝導性の回動体93と軸受94とで構成する。
回動体93は、外径約20mm、長さ約40mmの円柱状で、内径10mmの中空孔93aを軸心に開け、中空孔93aの底面の中心に第1のヒートパイプ91の低温部に形成された円錐体状の尖端部91aを支持するための錐揉み孔93bと、後端部に第2のヒートパイプ92の高温部を固着する挿入孔93dを備える。
軸受94は、対角寸法が20mmの六角形の頭部を有する六角ボルトの形状をしており、第1のヒートパイプ91の低温部を挿通して回動可能に軸支する軸孔94aを軸心に備え、おねじ部94bを中空孔93aに設けためねじ部93cにねじ込んで固定する。
回動体93の錐揉み孔93bは、軸孔94aに軸支された第1のヒートパイプ91の低温部の尖端部91aをセンタリングして支持するとともに回動摩擦抵抗を小さくする。
回動体93及び軸受94は、高熱伝導性金属、例えば銅やアルミニウムなどを用いた場合、回動手段90の熱抵抗は何れも8°C/W以下で、MPUの温度を4°Cほど低下できた。
また更に、回動手段90の熱抵抗を下げるため、回動体93の中空孔93aに挿入される第1のヒートパイプ91の低温部に高熱伝導性金属、例えば銅やアルミニウム製の複数(図は4枚を例示)の円板状のフィン95を嵌着する。このフィン95は、例えば外径9mm、厚さ1mmとする。
このように、フィン95を追加することにより、回動手段90の熱抵抗は5°C/W以下になり、MPUの温度を6°Cほど低下できた。
また更に、回動体93の中空孔93a内の熱伝導を促進するため、中空孔93a内に熱伝導性流体96として流動性のよいシリコングリースを封入する。なお、熱伝導性流体96の漏れを防止するため、軸受94の軸孔94aの内面に環溝を設け、Oリング97を挿着する。
このように、中空孔93a内に熱伝導性流体(シリコングリース)96を追加封入することにより、回動手段90の熱抵抗は1°C/W以下になり、MPUの温度を10°Cほど低下できた。
あるいは、シリコングリースを液体金属98のインジウム−ガリウムに代えることにより、回動手段90の熱抵抗は1°C/W以下になり、MPUの温度を13°Cほど低下できた。
このように構成された回動手段は、表示部筐体に固設した第2のヒートパイプの高温部を回動体に結合・固定しているため、表示部筐体は第1のヒートパイプの低温部を中心軸として回動開閉できる。
また、本体部筐体に内設された高発熱体の熱を第1のヒートパイプによって回動手段へ移動し、第1のヒートパイプの低温部から放熱フィン及び熱伝導性流体を介して高熱伝導性の回動体へ効率よく熱伝導する。
さらに、回動体に移動した熱は、第2のヒートパイプを移動して表示部筐体の放熱部へ伝導されて拡散し、放熱部の広い放熱面から外部に自然対流により熱放散するため、高発熱体及び本体部筐体の内部の温度上昇を抑えることができる。
つぎに、前述したように熱伝導パス部は、表示部筐体と本体部筐体とに跨がって配設されているため、表示部筐体の開閉にしたがって繰り返し湾曲されるため、熱伝導パス部が繰り返し湾曲により疲労するため表示部筐体の開閉回数にある程度限度がある。これを改善するため、熱伝導パス部と受熱部とを一緒にした別体の熱伝導パス部材を製作した。
図14は、熱伝導パス部材の第1の実施例の斜視図で、図15は、図14の展開図で、図15の(a)図は平面図、(b)図はそのD−D断面図である。
図14及び図15に示す第1の実施例の熱伝導パス部材12、即ち12−1は、1枚の長方形のグラファイトシート12aの一端部を中心から切り割いてそれぞれを外部に接続するための接続部12a−1〔図15の(a)図の斜線部分参照〕とし、この接続部12a−1の外部(相手側)との接続面を除く片面に絶縁シート12bを接着剤12cで接着して貼り合わせ、この貼り合わせ部分を渦巻き筒状に複数回巻いた巻回部13を備えて構成する。
なお、図14及び図15に示す絶縁シート12bをグラファイトシート12aの片面に貼り合わせているが、両面がよい。また、必ずしも絶縁シート12bを貼り合わせずに重ねて巻いてもよいが、巻くときの作業性やグラファイトシートを補強する上で貼り合わせが望ましい。
このグラファイトシート12aは、例えば厚さが10μmで熱伝導に対し面方向の異方性を有し、その異方性方向を熱伝導する方向、即ち巻き方向に一致させる。
絶縁シート12bは、例えば厚さが10μm(この程度の厚さは巻き易い)のポリエチレンテレフタレートシートまたはポリイミドシートを用い、かつその幅はグラファイトシートの幅より大きくして耳端部から例えば、0.5mm程度はみ出させ、耳端部を保護する。接着剤12cは、ホットメルト接着剤またはスチレン系接着剤を用いる。
このように、熱伝導パス部材は、グラファイトシート(絶縁シートを含む)を渦巻き筒状に複数回巻いて積層することにより、その厚さを実質的に厚くしているため、熱伝導断面積を拡大できて熱抵抗を小さくできる。
さらに、従来同様にグラファイトシートの異方性方向を熱伝導する方向(巻き方向)に一致させているため、熱伝導方向の熱抵抗はより小さくなって熱伝導パス部材は一方の接続部から他方の接続部へ効果的に熱伝導できる。
また、熱伝導パス部材を、巻回部を中心に繰り返し湾曲させる場合、湾曲によって生じる曲げ応力を巻回部全体に分散して熱伝導パス部材を長寿命化できる。
また、グラファイトシートは絶縁シートを貼り合わせることにより補強されてさらに湾曲による疲労を軽減できる。
さらに、貼り合わせる絶縁シートの幅をグラファイトシートの幅より大きくしてグラファイトシートの耳端部を保護しているため、耳端部から発生する亀裂による破損も防止できる。
つぎの図16は、熱伝導パス部材の第2の実施例の斜視図である。
この第2の実施例の熱伝導パス部材12、即ち12−2は、複数枚(図は3枚を示す)のグラファイトシート12aを用いることと、巻回部13が円柱形の巻心14または円筒形の巻心15〔図は円筒形の巻心(パイプ)を示す〕に巻かれている点が第1の実施例の熱伝導パス部材12−1と異なり、外部との接続部12a−1及び絶縁シート12bの貼り合わせは第1の実施例の熱伝導パス部材12−1と同様である。
なお、複数枚のグラファイトシート12aは、互いに接着により貼り合わせてもよく(ホットメルト接着剤またはスチレン系接着剤による)、貼り合わせずに重ね合わせてもよい。
円柱形または円筒形の巻心14,15の材料は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの樹脂材を用い、電気的絶縁と断熱を確保する。なお、巻心14,15の外径寸法は約5mm、円筒形の巻心(パイプ)15の場合の中空孔径寸法は配線が挿通可能な約4mm程度にする。
グラファイトシートは巻心の利用で円筒形に巻き易くなり、とくに複数枚のグラファイトシートは巻き易くなって巻径寸法が精度よく抑られて、巻いた後の形状くずれを防止できる。勿論、第1の実施例の熱伝導パス部材においても巻心を利用してもよい。
また、円筒形の巻心(パイプ)を用いた場合は、巻心の中空孔に配線などを通して省スペース化できる。
つぎに、上記熱伝導パス部材の一使用例を、図17に示す図16を組み込んだパソコン筐体の平面図及び図18に示す図17のE−E側断面図を用いて説明する。なお、図19及び図20の従来のパソコン筐体と同じ構成部品には同一符号を付し、その説明を省略する。
熱伝導パス部材12の巻回部13から延出した一方の接続部12a−1は、本体部筐体24内で最も大きな発熱量をもつ発熱体24a(図18参照)、即ちMPUの上面に接触させて、発生する熱を受熱(集熱)する高熱伝導性金属板(例えば、アルミニウム板またはその合金板など)でなるヒートスプレッダ10に例えば、押さえ板16aで押さえてねじ止めする。
他方の接続部12a−1は、表示部筐体100と共に高熱伝導性金属板(例えばアルミニウム板またはその合金板など)を基材にしてインモールド法により一体成形された放熱部101(図1の熱伝導パス部22及び受熱部23のない形状のもの)の一端に押さえ板16bでねじ止め(またはねじ止めできない基材の場合、銅箔接着テープで接着)により接続する。なお、接続面にはサーマルコンパウンドを塗布しておくとよい。
そのとき、熱伝導パス部材12の巻回部13の巻回軸心は、ヒンジ部37の回動中心に略一致するように配置する。
これにより、表示部筐体の開閉に伴う巻回部の渦巻き状の巻径が拡縮変位して曲げ応力を巻回部全体に分散されるため、表示部筐体の開閉に伴う熱伝導パス部材の疲労を軽減する。
つぎに、このパソコンの筐体の放熱効果を評価するため、パソコンを実際に動作させて温度測定を行った。なお、パソコンの動作中の消費電力は、プリント配線板8.9W(MPUの5W分を含む)、電源2.8W、HDD2.5W、PCMCIA1.5Wで、それぞれの電力に相当する熱を発生する。
そして、放熱効果を比較するため、前述した従来の放熱部と一体成形の熱伝導パス部を備えたパソコンを比較例として同様に動作させ温度測定を行った。
その結果、本発明の熱伝導パス部材で接続した場合は、比較例に比べてMPUの温度が10°C低下し、表示部筐体の表面温度は40°Cを下回り、パソコン筐体表面の温度基準である45°C以下を達成でき、比較例に劣らない十分な放熱効果が確認できた。
また、熱伝導パス部材の絶縁シートであるポリエチレンシートの幅をグラファイトシートの幅より大きくして、グラファイトシートの耳端部を絶縁シートで保護しているため、耳端部に亀裂が生じにくくなる。
表示部筐体の繰り返し開閉評価によれば、熱伝導パス部材は表示部筐体の少なくとも2万回の開閉に耐えられることが確認できた。
つぎに、図示はしないが、巻回部を円柱状の巻心(素材はポリイミド樹脂)に巻いた熱伝導パス部材を同様にパソコンに組み込み、動作試験を行った。
その結果、前記比較例に比べてMPUの温度が15°C低下し、表示部筐体の表面温度は40°Cを下回り、パソコン筐体表面の温度基準である45°C以下を達成でき、巻心を用いても放熱効果が低下しないことが確認された。
また、巻回部を巻心に巻いたことにより、グラファイトシートの巻き形状のくずれを防止でき、巻回部の内径寸法を精度よく確保できた。
また、巻回部を円筒状の巻心(パイプ)に巻いた熱伝導パス部材でも同程度の放熱効果が得られた。
さらに、円筒形の巻心の中空孔に配線を通すことができるため、パソコン筐体の内部空間が有効利用されて省スペース化できる。
なお、表示部筐体の放熱部と共にインモールド法により一体製作する熱伝導パス部及び受熱部に比べて、図14及び図16の熱伝導パス部材は別体(単体)で製作するので巻回部を設けることは容易となる。
発熱量の大きな本体部筐体の内部の熱を発熱量の小さな表示部筐体の放熱部へ表示部筐体の開閉に支障なく移動し、自然対流により外部に熱放散する電子機器筐体及びそれに用いる熱伝導パス部材を提供できる。
本発明による第1の実施例の平面図 図1に示す放熱部のB−B断面図 図1の第2の筐体の製造工程を示す図 図3に続く製造工程を示す図 図1をパソコンに組み込んだ平面図 図5のC−C側断面図 図1との比較例1を示す平面図 本発明による第3の実施例の平面図及び熱伝導パス部の断面図 本発明による第5の実施例の放熱部の部分断面図 本発明による第6の実施例の放熱部の部分断面図 本発明による第7の実施例の放熱部の部分断面図 本発明による一実施例の回動手段を含む放熱構造を示す平面図 図12における回動手段の組立側断面図 本発明による熱伝導パス部材の第1の実施例の斜視図 図14の展開図 本発明による熱伝導パス部材の第2の実施例の斜視図 図16を組み込んだパソコン筐体の平面図 図17のE−E側断面図 従来技術によるノート型パソコンを示す平面図 図19のA−A側断面図
符号の説明
10:ヒートスプレッダ
11:表示パネル
12,12−1,12−2:熱伝導パス部材
12a:グラファイトシート
12a−1:接続部
12b:絶縁シート
12c:接着剤
13:巻回部
14:円柱形の巻心
15:円筒形の巻心(パイプ)
16a,16b:押さえ板
20,40,50,60,70,80,100:第2の筐体(表示部筐体)
21,41,51,61,71,81,101:放熱部
22,42,52:熱伝導パス部
23,43,53:受熱部
24:第1の筐体(本体部筐体)
24a:発熱体
25:金属基板
26:樹脂
27:側枠
28:接着剤
29:位置決め用孔
30:成形用金型
30a:下金型
30b:上金型
31:ガイド孔
32:固定ピン
33:コイルばね
34:ランナ
35:ストッパ
36:キャビティ
37:ヒンジ部
56:PETシート
65,75,85:第1の金属基板
66:樹脂
67,76,86:第2の金属基板
77:接着剤
77a:金属粒子
78:空気層
79:空気抜き孔
87:金属網
88:冷却液
89:空気抜き孔
90:回動手段
91:第1のヒートパイプ
91a:尖端部
92:第2のヒートパイプ
93:回動体
93a:中空孔
93b:錐揉み孔
93c:めねじ部
93d:挿入孔
94:軸受
94a:軸孔
94b:おねじ部
95:フィン
96:熱伝導性流体
97:Oリング
98:液体金属

Claims (7)

  1. 発熱体を有する第1の筐体と、該第1の筐体に対しヒンジ部により開閉する第2の筐体とで構成される電子機器筐体において、
    前記第2の筐体の一部として一体構成され、外部に熱放散する放熱部と、
    該放熱部の一端に接続され、前記第1の筐体と第2の筐体とに跨がって配置される熱伝導パス部と、
    該熱伝導パス部に接続されて前記第1の筐体の内部で発生する熱を前記第1の筐体内で受熱する受熱部と、
    が一体で形成され
    前記放熱部、熱伝導パス部及び受熱部は、面方向に異方性を有するグラファイトシートを基材にし、かつ異方性方向を熱伝導方向に略一致させて形成されることを特徴とする電子機器筐体。
  2. 発熱体を有する第1の筐体と該第1の筐体に対し回動手段により開閉する第2の筐体とで構成され、前記第1の筐体内に固設されて該第1の筐体の内部で発生する熱を前記回動手段へ移動する第1のヒートパイプと、該回動手段からの熱を前記第2の筐体内に固設された放熱部へ移動する第2のヒートパイプとを備えた電子機器筐体において、
    前記回動手段は、内部に熱伝導流体を封入するとともに前記第2のヒートパイプと結合する回動体と、低温部が前記熱伝導流体中に挿入される前記第1のヒートパイプを回動可能に軸支するように前記回動体に取付けられる軸受とからなり、
    前記第2の筐体は、前記第1のヒートパイプを軸心にして開閉することを特徴とする電子機器筐体。
  3. 前記熱伝導流体は、液体金属であることを特徴とする請求項2記載の電子機器筐体。
  4. 前記第1のヒートパイプの低温部は、放熱フィンを備えることを特徴とする請求項2記載の電子機器筐体。
  5. 面方向に異方性を有するグラファイトシートの複数の端部を発熱、熱伝導または放熱を行う部材との接続部とし、前記グラファイトシートの片面または両面に絶縁シートを介在させて巻回した巻回部を有してなることを特徴とする熱伝導パス部材。
  6. 前記巻回部は、円柱形または円筒形の巻心に巻くことを特徴とする請求項5記載の熱伝導パス部材。
  7. 発熱体を有する第1の筐体と、該第1の筐体の発熱体の熱を外部に熱放散する放熱部を有する第2の筐体とで構成され、前記第2の筐体が第1の筐体に対しヒンジ部により開閉される電子機器筐体において、
    前記第1の筐体の発熱体と前記第2の筐体の放熱部とが請求項5または請求項6記載の熱伝導パス部材の接続部で接続されるとともに、前記巻回部はその巻回軸心が前記ヒンジ部の回動中心に略一致するように配設されてなることを特徴とする電子機器筐体。
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