JP2004177794A - 位置測定用ミラーおよびミラー用部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】低熱膨張係数および高ヤング率を有し、測定精度の高い位置測定用ミラーおよびミラー用部材を提供すること。
【解決手段】試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラー4,5であって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料からなるミラー本体11と、その表面に設けられた反射膜12とを有し、ミラー本体11の反射膜12が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下である。
【選択図】 図2
【解決手段】試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラー4,5であって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料からなるミラー本体11と、その表面に設けられた反射膜12とを有し、ミラー本体11の反射膜12が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光装置のステージ等の試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得て精密位置合わせを行う位置測定用ミラーおよびミラー用部材に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体回路は益々精細化、高集積化する傾向にあり、それにともなって、露光装置に対してはより高い精度が要求され、露光の際の位置合わせ誤差が製品の品質向上や歩留まり向上を左右しており、露光の際にいかに高精度で位置合わせを行うかが課題となっている。
【0003】
この露光の際の位置合わせのための位置測定は、レーザー光をミラーで反射させて位置測定用の反射光を得ることによって行っているため、その際の測定精度は、このような位置測定用のミラーに負うところが大きく、このミラーの材料として金属よりも熱膨張係数が小さいアルミナや窒化珪素などが用いられてきた。
【0004】
しかしながら、近時における半導体回路の飛躍的な微細化にともない、ミラー用材料としてアルミナや窒化珪素では、熱膨張係数が十分とはいえず所要の精度を得難くなってきつつある。低熱膨張材料としては石英ガラス等のガラス材も用いられているが、剛性が低く、高速移動時の歪みが生産性低下をもたらしている。
【0005】
これに対して、特許文献1には、ステージ位置測定ミラーとして適用可能な材料としてコージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスが開示されている。コージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスは熱膨張係数を安定して1×10−6/℃以下とすることができ、ガラスよりも高い剛性を示すので、より優れたミラー特性を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−209171号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されたコージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスは、極めて低い熱膨張係数を示すものの剛性が未だ十分とはいえず、高速移動時の歪みの問題が完全には解消されない。また、用途によっては、さらに低熱膨張のものが求められることがあるが、そのような要求には対応することができない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、低熱膨張係数および高ヤング率を有し、測定精度の高い位置測定用ミラーおよびミラー用部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとを複合化した複合材料をミラー本体またはミラー用部材として用いることにより、所望の低熱膨張かつ高ヤング率を実現することができ、位置合わせ精度の高い位置測定用ミラーおよびミラー用部材が実現可能なことを見出した。また、材料の種類および組成を調整することにより、具体的には、低熱膨張材料としてマイナス膨張を示すユークリプタイト等のリチウムアルミニウムシリケートを用い、これと高ヤング率セラミックスとを複合することにより、熱膨張係数が極めて0に近く、かつヤング率の高い理想的な材料が得られることも見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーであって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料からなるミラー本体と、その表面に設けられた反射膜とを有し、前記ミラー本体の前記反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とする位置測定用ミラー。
(2)上記(1)において、前記ミラー本体の20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とする位置測定用ミラー。
(3)上記(1)、(2)において、前記ミラー本体を構成する複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする位置測定用ミラー。
(4)試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーに用いる部材であって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料からなり、反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とするミラー用部材。
(5)上記(4)において、20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とするミラー用部材。
(6)上記(4)、(5)において、前記複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とするミラー用部材。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーが搭載された露光装置用ステージ機構を示す平面図であり、図2はその位置測定用ミラーを示す側面図である。この露光装置用ステージ機構は半導体ウエハ10を載置するステージ本体1と、ステージ本体1をX方向に移動させるX方向モータ2と、ステージ本体1をY方向に移動させるY方向モータ3と、ステージ本体1の端部に固定されY方向に延材する角柱状をなすX方向位置測定用のミラー4と、このX方向位置測定用のミラー4と直交するようにステージ本体1の端部に設けられた角柱状をなすY方向位置測定用のミラー5と、X方向位置測定用のミラー4にレーザー光を照射するX方向位置測定用レーザー干渉計6と、Y方向位置測定用のミラー5にレーザー光を照射してするY方向位置測定用レーザー干渉計7とを有している。
【0012】
本実施形態のX方向位置測定用およびY方向位置測定用のミラー4、5は、図2に示すように、ミラー本体11と、ミラー本体11のレーザー光が照射される表面に形成された反射膜12とを有している。
【0013】
ミラー本体11は、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料から構成されている。このように低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとを複合化することにより、所望の低熱膨張および高剛性を兼備した材料とすることができる。
【0014】
ミラー本体11は、20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることが好ましい。熱膨張係数が1×10−6/℃よりも大きい、あるいは−1×10−6/℃よりも小さいと、僅かな雰囲気温度の変化で100nm以上の変形が生じる結果、位置測定精度が低下してしまう。また、ヤング率が120GPaよりも低いと、ステージ本体1の高速移動時の歪みが大きくなり、やはり位置測定精度が低下してしまう。
【0015】
ミラー本体11を構成する複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらの組み合わせは相互反応が少なく、各材料の独立性を保っているから熱膨張係数およびヤング率に混合則が成り立つ。
【0016】
上記低熱膨張セラミックスとしては、リチウムアルミノシリケートであるβ−ユークリプタイトやスポジューメンが好ましい。また、その中でもβ−ユークリプタイトはマイナスの熱膨張を示すので、プラスの熱膨張を示す高ヤング率セラミックスと組み合わせることにより、0に近い極めて低い熱膨張係数を得ることが可能である。また、配合を調節することにより熱膨張係数をマイナスからプラスの広い範囲で調節することが可能となる。なお、β−ユークリプタイトやスポジューメンに代表されるリチウムアルミノシリケートは、Ca、Mg、Fe、K、Ti、Zn等の他の成分と固溶体を形成するが、本発明ではこのような固溶体も適用可能である。
【0017】
ミラー本体11を構成する複合材料としては、具体的には、βーユークリプタイトと炭化珪素または窒化珪素とからなるものが好ましい。上述したようにβ−ユークリプタイトは負の熱膨張係数を有しており、炭化珪素および窒化珪素は正の熱膨張係数を有することから、極めて低熱膨張を実現することができる。また、炭化珪素および窒化珪素は高い剛性を示す。したがって、これらの複合材料は所望の低熱膨張と高ヤング率とを兼備したものとなる。また、これらの配合比を変えることで、マイナス膨張からプラス膨張まで、任意に熱膨張係数を変化させることが可能である。
【0018】
なお、ミラー本体11を構成する複合材料において、実質的な化学的反応が生じなければ、低熱膨張セラミックスとして複数の材料を組み合わせて用いることも可能である。また、高ヤング率セラミックスも同様に、実質的な化学的反応が生じなければ、複数の材料を組み合わせて用いることも可能である。
【0019】
ミラー本体11の反射膜12が形成される表面の表面粗さはRaで10nm以下とする。これにより反射膜12形成した後に高い反射率が得られる。好ましくは6nm以下である。例えば、入射光が波長633nmのレーザーの場合の反射率は、表面粗さRaが10nmのとき反射率80%以上、さらに表面粗さ6nmのとき反射率85%以上の高反射率が得られる。
【0020】
このような複合材料からなるミラー本体11は、例えば、低熱膨張セラミックス粉末と高ヤング率セラミックス粉末とを所定の割合で混合し、混合粉末をプレス成形等で成形体とし、所定の温度で焼成して焼結体とし、加工することにより製造することができる。焼成条件は、酸化物系材料またはそれに準ずる材料の場合には酸化性雰囲気で焼成すればよいが、非酸化物セラミックスが含まれている場合には、非酸化性雰囲気で焼成することが好ましい。焼結後、反射膜12が形成される反射面の表面粗さが上述のようにRaで10nm以下になるように鏡面加工され、ミラー面とされる。
【0021】
反射膜12は、ミラー本体11の表面粗さがRaで10nm以下に鏡面加工されたミラー面に厚さ0.1〜1nm程度に形成される。具体的には、Al、Ag、Pt等の金属膜を下地として蒸着した後、SiO2、TiO2等の誘電体薄膜と金属膜とを交互に蒸着し、多層構造の反射膜12を形成する。例えば、Al−SiO2積層膜の場合には、ミラー本体11の表面粗さRaが10nm以下でレーザー周波数633nmにおいて80%以上の反射率が得られる。また、Al−Ti−TiO2積層膜で構成される増反射膜を反射膜12として形成することにより、特定周波数範囲でAl−SiO2積層膜等の通常の反射膜と比較して、約5%の反射率の向上が見込まれ、約85%以上の極めて高い反射率が得られる。
【0022】
また、上記複合材料からなるミラー本体11の上に形成された反射膜の面精度としては、平面度でλ/20を得ることが可能である。ここで、平面度は、一般的に可視光線の波長である360〜700nmの光による干渉縞から算出され、このような平面度評価に使用されるレーザー干渉計は、レーザー源にHe−Neレーザー(λ=633nm)が用いられ、この波長λ=633nmを基準として平面度が示される。通常、反射鏡として要求される平面度はλ/4〜λ/10程度であるから、λ/20は極めて高い平面度である。
【0023】
以上のように、ミラー本体11に反射膜12を蒸着等により成膜して位置測定用のミラーが完成されるが、焼成後に焼結体を加工して反射面を10nm以下に仕上げたものをミラー用部材として作成し、ユーザー側で反射膜を蒸着するようにしてもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
β−ユークリプタイト粉末と炭化珪素粉末とを表1のNo.1〜4に示す割合でポットミル混合して乾燥させ、原料混合粉末を作製した。この混合粉末を120MPaの圧力でCIP成形して40mm×40mm×620mmの成形体を作製した。各成形体を500℃で脱脂した後、窒素雰囲気において1300〜1400℃で焼成し、β−ユークリプタイトと炭化珪素とが複合されたセラミックス焼結体を得た。得られた焼結体は、32mm×32mm×500mmに機械仕上げ加工を施した。このようにして加工した加工体の一つの長面を鏡面加工して表面粗さRaを10nm以下とし、ミラー本体とした。
【0025】
このミラー本体の鏡面加工した面に、金属膜および誘電体薄膜を交互に蒸着して反射膜を形成した。反射膜としてはAl−SiO2積層膜を用いた。
【0026】
これとは別に、焼結体から4mm×4mm×12mmの試験片を切り出し、レーザー干渉式熱膨張測定装置(アルバック理工社製 LIX−1)を用いて20〜30℃において試験片の変位量を測定し、熱膨張係数を求めた。また、共振法(日本テクノプラス社製JE−RT3)にてこれら焼結体のヤング率を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0027】
また、上記鏡面加工した面の表面粗さを触針式表面粗さ測定機TALYSURF(Taylor−Hobson社製)により測定した。さらに、反射膜を形成後の反射率は、波長633nmのHe−Neレーザー光をミラー面に対して垂直に照射し、反射光強度および面精度を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0028】
表1および表2に示すように、いずれも熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下と小さく、ヤング率が120GPa以上と高い値を示し、表面粗さRaが10nm以下であるから反射膜の反射率が80%以上と十分な値を示し、面精度λ/20が実現された。
【0029】
(実施例2)
コーディエライトと窒化珪素とを表1のNo.5〜7の割合で上記実施例1と同様に混合し、CIP成形して同様の成形体を形成し、窒素雰囲気において1300〜1400℃で焼成し、コーディエライトと窒化珪素とが複合されたセラミックス焼結体を得た。この焼結体につき実施例1と同様に熱膨張係数およびヤング率を求めた。また、鏡面加工により表面粗さRaを10nm以下とし、実施例1と同様に反射膜を蒸着してミラー本体を得た。反射膜について実施例1と同様に反射率を求め、面精度を求めた。これらの結果を同じく表1および表2に示す。これらに示すように、いずれも熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下と小さく、ヤング率が120GPa以上と高い値を示し、表面粗さRaが10nm以下であるから反射膜の反射率が80%以上と十分な値を示し、面精度λ/20が実現された。
【0030】
(比較例)
表1に示すように、比較例として、複合材料ではあるが、表面粗さが大きいもの(No.8)、 低熱膨張であるコーディエライト単味の焼結体(No.9)、窒化珪素焼結体(No.10)でミラー本体を製造したものについて同様に評価した。その結果も表1および表2に示す。これらに示すように、複合材料ではあるが、表面粗さが大きいNo.8では、反射率が70%と低く、コーディエライト単味の焼結体であるNo.9では、熱膨張係数は十分であるがヤング率が低く、窒化珪素焼結体であるNo.10では、十分なヤング率を示したものの熱膨張係数が高すぎる結果となった。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料でミラー本体を構成し、ミラー本体の反射膜が形成される面の表面粗さをRaで10nm以下としたので、十分なミラー特性を確保しつつ、低熱膨張係数および高ヤング率を有し、測定精度の高い位置測定用ミラーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーが搭載された露光装置用ステージ機構を示す平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーを示す側面図。
【符号の説明】
1;ステージ
2;X方向モータ
3;Y方向モータ
4,5;ミラー
6;X方向位置測定用レーザー干渉計
7;Y方向位置測定用レーザー干渉計
10;半導体ウエハ
11;ミラー本体
12;反射膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光装置のステージ等の試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得て精密位置合わせを行う位置測定用ミラーおよびミラー用部材に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体回路は益々精細化、高集積化する傾向にあり、それにともなって、露光装置に対してはより高い精度が要求され、露光の際の位置合わせ誤差が製品の品質向上や歩留まり向上を左右しており、露光の際にいかに高精度で位置合わせを行うかが課題となっている。
【0003】
この露光の際の位置合わせのための位置測定は、レーザー光をミラーで反射させて位置測定用の反射光を得ることによって行っているため、その際の測定精度は、このような位置測定用のミラーに負うところが大きく、このミラーの材料として金属よりも熱膨張係数が小さいアルミナや窒化珪素などが用いられてきた。
【0004】
しかしながら、近時における半導体回路の飛躍的な微細化にともない、ミラー用材料としてアルミナや窒化珪素では、熱膨張係数が十分とはいえず所要の精度を得難くなってきつつある。低熱膨張材料としては石英ガラス等のガラス材も用いられているが、剛性が低く、高速移動時の歪みが生産性低下をもたらしている。
【0005】
これに対して、特許文献1には、ステージ位置測定ミラーとして適用可能な材料としてコージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスが開示されている。コージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスは熱膨張係数を安定して1×10−6/℃以下とすることができ、ガラスよりも高い剛性を示すので、より優れたミラー特性を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−209171号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されたコージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスは、極めて低い熱膨張係数を示すものの剛性が未だ十分とはいえず、高速移動時の歪みの問題が完全には解消されない。また、用途によっては、さらに低熱膨張のものが求められることがあるが、そのような要求には対応することができない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、低熱膨張係数および高ヤング率を有し、測定精度の高い位置測定用ミラーおよびミラー用部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとを複合化した複合材料をミラー本体またはミラー用部材として用いることにより、所望の低熱膨張かつ高ヤング率を実現することができ、位置合わせ精度の高い位置測定用ミラーおよびミラー用部材が実現可能なことを見出した。また、材料の種類および組成を調整することにより、具体的には、低熱膨張材料としてマイナス膨張を示すユークリプタイト等のリチウムアルミニウムシリケートを用い、これと高ヤング率セラミックスとを複合することにより、熱膨張係数が極めて0に近く、かつヤング率の高い理想的な材料が得られることも見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーであって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料からなるミラー本体と、その表面に設けられた反射膜とを有し、前記ミラー本体の前記反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とする位置測定用ミラー。
(2)上記(1)において、前記ミラー本体の20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とする位置測定用ミラー。
(3)上記(1)、(2)において、前記ミラー本体を構成する複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする位置測定用ミラー。
(4)試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーに用いる部材であって、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料からなり、反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とするミラー用部材。
(5)上記(4)において、20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とするミラー用部材。
(6)上記(4)、(5)において、前記複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とするミラー用部材。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーが搭載された露光装置用ステージ機構を示す平面図であり、図2はその位置測定用ミラーを示す側面図である。この露光装置用ステージ機構は半導体ウエハ10を載置するステージ本体1と、ステージ本体1をX方向に移動させるX方向モータ2と、ステージ本体1をY方向に移動させるY方向モータ3と、ステージ本体1の端部に固定されY方向に延材する角柱状をなすX方向位置測定用のミラー4と、このX方向位置測定用のミラー4と直交するようにステージ本体1の端部に設けられた角柱状をなすY方向位置測定用のミラー5と、X方向位置測定用のミラー4にレーザー光を照射するX方向位置測定用レーザー干渉計6と、Y方向位置測定用のミラー5にレーザー光を照射してするY方向位置測定用レーザー干渉計7とを有している。
【0012】
本実施形態のX方向位置測定用およびY方向位置測定用のミラー4、5は、図2に示すように、ミラー本体11と、ミラー本体11のレーザー光が照射される表面に形成された反射膜12とを有している。
【0013】
ミラー本体11は、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスの複合材料から構成されている。このように低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとを複合化することにより、所望の低熱膨張および高剛性を兼備した材料とすることができる。
【0014】
ミラー本体11は、20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることが好ましい。熱膨張係数が1×10−6/℃よりも大きい、あるいは−1×10−6/℃よりも小さいと、僅かな雰囲気温度の変化で100nm以上の変形が生じる結果、位置測定精度が低下してしまう。また、ヤング率が120GPaよりも低いと、ステージ本体1の高速移動時の歪みが大きくなり、やはり位置測定精度が低下してしまう。
【0015】
ミラー本体11を構成する複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらの組み合わせは相互反応が少なく、各材料の独立性を保っているから熱膨張係数およびヤング率に混合則が成り立つ。
【0016】
上記低熱膨張セラミックスとしては、リチウムアルミノシリケートであるβ−ユークリプタイトやスポジューメンが好ましい。また、その中でもβ−ユークリプタイトはマイナスの熱膨張を示すので、プラスの熱膨張を示す高ヤング率セラミックスと組み合わせることにより、0に近い極めて低い熱膨張係数を得ることが可能である。また、配合を調節することにより熱膨張係数をマイナスからプラスの広い範囲で調節することが可能となる。なお、β−ユークリプタイトやスポジューメンに代表されるリチウムアルミノシリケートは、Ca、Mg、Fe、K、Ti、Zn等の他の成分と固溶体を形成するが、本発明ではこのような固溶体も適用可能である。
【0017】
ミラー本体11を構成する複合材料としては、具体的には、βーユークリプタイトと炭化珪素または窒化珪素とからなるものが好ましい。上述したようにβ−ユークリプタイトは負の熱膨張係数を有しており、炭化珪素および窒化珪素は正の熱膨張係数を有することから、極めて低熱膨張を実現することができる。また、炭化珪素および窒化珪素は高い剛性を示す。したがって、これらの複合材料は所望の低熱膨張と高ヤング率とを兼備したものとなる。また、これらの配合比を変えることで、マイナス膨張からプラス膨張まで、任意に熱膨張係数を変化させることが可能である。
【0018】
なお、ミラー本体11を構成する複合材料において、実質的な化学的反応が生じなければ、低熱膨張セラミックスとして複数の材料を組み合わせて用いることも可能である。また、高ヤング率セラミックスも同様に、実質的な化学的反応が生じなければ、複数の材料を組み合わせて用いることも可能である。
【0019】
ミラー本体11の反射膜12が形成される表面の表面粗さはRaで10nm以下とする。これにより反射膜12形成した後に高い反射率が得られる。好ましくは6nm以下である。例えば、入射光が波長633nmのレーザーの場合の反射率は、表面粗さRaが10nmのとき反射率80%以上、さらに表面粗さ6nmのとき反射率85%以上の高反射率が得られる。
【0020】
このような複合材料からなるミラー本体11は、例えば、低熱膨張セラミックス粉末と高ヤング率セラミックス粉末とを所定の割合で混合し、混合粉末をプレス成形等で成形体とし、所定の温度で焼成して焼結体とし、加工することにより製造することができる。焼成条件は、酸化物系材料またはそれに準ずる材料の場合には酸化性雰囲気で焼成すればよいが、非酸化物セラミックスが含まれている場合には、非酸化性雰囲気で焼成することが好ましい。焼結後、反射膜12が形成される反射面の表面粗さが上述のようにRaで10nm以下になるように鏡面加工され、ミラー面とされる。
【0021】
反射膜12は、ミラー本体11の表面粗さがRaで10nm以下に鏡面加工されたミラー面に厚さ0.1〜1nm程度に形成される。具体的には、Al、Ag、Pt等の金属膜を下地として蒸着した後、SiO2、TiO2等の誘電体薄膜と金属膜とを交互に蒸着し、多層構造の反射膜12を形成する。例えば、Al−SiO2積層膜の場合には、ミラー本体11の表面粗さRaが10nm以下でレーザー周波数633nmにおいて80%以上の反射率が得られる。また、Al−Ti−TiO2積層膜で構成される増反射膜を反射膜12として形成することにより、特定周波数範囲でAl−SiO2積層膜等の通常の反射膜と比較して、約5%の反射率の向上が見込まれ、約85%以上の極めて高い反射率が得られる。
【0022】
また、上記複合材料からなるミラー本体11の上に形成された反射膜の面精度としては、平面度でλ/20を得ることが可能である。ここで、平面度は、一般的に可視光線の波長である360〜700nmの光による干渉縞から算出され、このような平面度評価に使用されるレーザー干渉計は、レーザー源にHe−Neレーザー(λ=633nm)が用いられ、この波長λ=633nmを基準として平面度が示される。通常、反射鏡として要求される平面度はλ/4〜λ/10程度であるから、λ/20は極めて高い平面度である。
【0023】
以上のように、ミラー本体11に反射膜12を蒸着等により成膜して位置測定用のミラーが完成されるが、焼成後に焼結体を加工して反射面を10nm以下に仕上げたものをミラー用部材として作成し、ユーザー側で反射膜を蒸着するようにしてもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
β−ユークリプタイト粉末と炭化珪素粉末とを表1のNo.1〜4に示す割合でポットミル混合して乾燥させ、原料混合粉末を作製した。この混合粉末を120MPaの圧力でCIP成形して40mm×40mm×620mmの成形体を作製した。各成形体を500℃で脱脂した後、窒素雰囲気において1300〜1400℃で焼成し、β−ユークリプタイトと炭化珪素とが複合されたセラミックス焼結体を得た。得られた焼結体は、32mm×32mm×500mmに機械仕上げ加工を施した。このようにして加工した加工体の一つの長面を鏡面加工して表面粗さRaを10nm以下とし、ミラー本体とした。
【0025】
このミラー本体の鏡面加工した面に、金属膜および誘電体薄膜を交互に蒸着して反射膜を形成した。反射膜としてはAl−SiO2積層膜を用いた。
【0026】
これとは別に、焼結体から4mm×4mm×12mmの試験片を切り出し、レーザー干渉式熱膨張測定装置(アルバック理工社製 LIX−1)を用いて20〜30℃において試験片の変位量を測定し、熱膨張係数を求めた。また、共振法(日本テクノプラス社製JE−RT3)にてこれら焼結体のヤング率を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0027】
また、上記鏡面加工した面の表面粗さを触針式表面粗さ測定機TALYSURF(Taylor−Hobson社製)により測定した。さらに、反射膜を形成後の反射率は、波長633nmのHe−Neレーザー光をミラー面に対して垂直に照射し、反射光強度および面精度を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0028】
表1および表2に示すように、いずれも熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下と小さく、ヤング率が120GPa以上と高い値を示し、表面粗さRaが10nm以下であるから反射膜の反射率が80%以上と十分な値を示し、面精度λ/20が実現された。
【0029】
(実施例2)
コーディエライトと窒化珪素とを表1のNo.5〜7の割合で上記実施例1と同様に混合し、CIP成形して同様の成形体を形成し、窒素雰囲気において1300〜1400℃で焼成し、コーディエライトと窒化珪素とが複合されたセラミックス焼結体を得た。この焼結体につき実施例1と同様に熱膨張係数およびヤング率を求めた。また、鏡面加工により表面粗さRaを10nm以下とし、実施例1と同様に反射膜を蒸着してミラー本体を得た。反射膜について実施例1と同様に反射率を求め、面精度を求めた。これらの結果を同じく表1および表2に示す。これらに示すように、いずれも熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下と小さく、ヤング率が120GPa以上と高い値を示し、表面粗さRaが10nm以下であるから反射膜の反射率が80%以上と十分な値を示し、面精度λ/20が実現された。
【0030】
(比較例)
表1に示すように、比較例として、複合材料ではあるが、表面粗さが大きいもの(No.8)、 低熱膨張であるコーディエライト単味の焼結体(No.9)、窒化珪素焼結体(No.10)でミラー本体を製造したものについて同様に評価した。その結果も表1および表2に示す。これらに示すように、複合材料ではあるが、表面粗さが大きいNo.8では、反射率が70%と低く、コーディエライト単味の焼結体であるNo.9では、熱膨張係数は十分であるがヤング率が低く、窒化珪素焼結体であるNo.10では、十分なヤング率を示したものの熱膨張係数が高すぎる結果となった。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料でミラー本体を構成し、ミラー本体の反射膜が形成される面の表面粗さをRaで10nm以下としたので、十分なミラー特性を確保しつつ、低熱膨張係数および高ヤング率を有し、測定精度の高い位置測定用ミラーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーが搭載された露光装置用ステージ機構を示す平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る位置測定用ミラーを示す側面図。
【符号の説明】
1;ステージ
2;X方向モータ
3;Y方向モータ
4,5;ミラー
6;X方向位置測定用レーザー干渉計
7;Y方向位置測定用レーザー干渉計
10;半導体ウエハ
11;ミラー本体
12;反射膜
Claims (6)
- 試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーであって、
低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料からなるミラー本体と、その表面に設けられた反射膜とを有し、
前記ミラー本体の前記反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とする位置測定用ミラー。 - 前記ミラー本体の20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の位置測定用ミラー。
- 前記ミラー本体を構成する複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置測定用ミラー。
- 試料を水平に保持する試料ステージに設けられ、照射光を反射させて位置測定用の反射光を得る位置測定用ミラーに用いる部材であって、
低熱膨張セラミックスと高ヤング率セラミックスとの複合材料からなり、反射膜が形成される面の表面粗さがRaで10nm以下であることを特徴とするミラー用部材。 - 20〜30℃における平均の熱膨張係数が−1×10−6〜1×10−6/℃であり、ヤング率が120GPa以上であることを特徴とする請求項4に記載のミラー用部材。
- 前記複合材料は、低熱膨張セラミックスとして、リチウムアルミノシリケート、リン酸ジルコニウムカリウム、コーディエライトから選ばれる1種以上を用い、高ヤング率セラミックスとして、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、B4Cから選ばれる1種以上を用いることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のミラー用部材。
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JP2013514960A (ja) * | 2009-12-21 | 2013-05-02 | コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(セエセイセ) | 酸化物セラミックを含む、制御された熱膨張率を有する複合材料および当該複合材料を得るためのプロセス |
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2002
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