JP2004177345A - マイクロアレイ用プラスチック基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】DNAマイクロアレイでのハイブリダイゼーションにおける検体となるDNA溶液の厚みを均一化し、ハイブリダイゼーションでの反応の均一化を図れるマイクロアレイ用プラスチック基板を提供する。
【解決手段】生物由来物を捕獲する物質を基板表面の所定範囲に点着固定した検体捕獲部を形成し、検体捕獲部に検体となる溶液を接触させ、検出目的とする生物由来物を捕獲してその有無を判定するマイクロアレイの作製に用いるプラスチック製の基板であって、基板本体とカバーから成り、基板本体は基板表面から突出した凸部から形成される枠を有し、カバーは表面辺縁部に凸部を有し、基板本体の枠を形成する凸部とカバーの凸部が基板本体の検体捕獲部表面とカバーとの間に一定の大きさの間隙を形成して嵌合するマイクロアレイ用プラスチック基板。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にDNAや蛋白など生体由来物を表面に固定し、これら生体由来物質の測定に用いるマイクロアレイ特にDNAマイクロアレイに用いるマイクロアレイ用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲノムの解析が進み、遺伝子の発現状況を一度に観る方法として、スライドガラス状基板に高密度にDNA断片を配列点着し、このDNA断片と検体からのDNA断片とをハイブリダイズさせて遺伝子の発現をみるDNAマイクロアレイが用いられるようになった。
【0003】
DNAマイクロアレイによる遺伝子の発現をみる操作として、検体となるDNAに蛍光標識を施し、このDNA溶液をDNAマイクロアレイに接触させ、DNAマイクロアレイ上に固定されているDNA鎖とハイブリダイズさせ、蛍光標識されたDNAのハイブリダイズの状況を見ることによって、それぞれの遺伝子の発現状況をみるという操作が行なわれる。この蛍光における測定にて必要なことは、操作における測定誤差を小さくすることである。現在DNAマイクロアレイでの遺伝子の発現状状況の測定での測定結果のばらつきの要因の一つは、ハイブリダイズにおけるばらつきに起因している。ハイブリダイズにおけるばらつきは操作上の不適格によるものが多い。ハイブリダイズ操作において重要なことは、DNAが固定されているエリアに均一に検体となるDNA溶液を接触させることである。そのためには、DNAが固定されているエリアが明確に判る必要がある。そのため、従来からDNAマイクロアレイには、基板上のDNA固定エリアの判別がし易いように、基板上に枠が印刷されているものが多数市販されている。
【0004】
ハイブリダイズにおけばらつきの大きな要因は、検体となるDNA溶液の、不均一さに起因する。不均一さとは、検体となるDNA溶液の厚みの不均一性であり、濃度の不均一性である。DNAマイクロアレイでのハイブリダイズ操作は、DNAが固定されているエリア内に検体となるDNA溶液を滴下しその上にカバーガラスを覆うことにより、DNAが固定されているエリア全体に検体となるDNA溶液を行き渡らせる。この際DNA溶液の厚みに偏りが生じ、DNAのハイブリダイズ反応量がDNAエリア内で偏ることとなる。このようなDNA溶液の厚みを均一化するために、カバーガラスに下駄の歯のように突起部を設け、DNAマイクロアレイのDNA固定化表面との間隙を一定にする、ハイブリダイゼーション用カバーガラスが市販されている。しかし、このようなカバーガラスを用いた場合でも、操作中にカバーガラスがずれてしまうという不都合が生じる。
また、このようなカバーガラスはカバーガラスに下駄の歯状にガラスを貼りあわせて作製される。ガラスは割れ易く薄いカバーガラスにガラスを貼りあわせる作業は大変な手間である。
【0005】
そこで、プラスチックの成形によりこのようなカバーを作製するということが考えられるが、プラスチックは軽く、DNA溶液上にカバーが浮いてしまうためカバーがずれやすく、DNAマイクロアレイに用いるハイブリダイゼーション用プラスチック製のカバーの実現は困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来のガラス製マイクロアレイ用基板でみられる、ハイブリダイゼーションにおけるDNA溶液の厚みの不均一を解消し、ハイブリダイゼーションにおける信頼性と再現性を確保するとともに、プラスチック化によりこのような課題を安価に実現することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討の結果、ハイブリダイゼーション用カバーとマイクロアレイ本体とを勘合させることで、プラスチック製であっても、ハイブリダイゼーション用カバーのずれを防止し、溶液の厚みの不均衡を無くし、かつ溶液の蒸発を防止できることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)生物由来物を捕獲する物質を基板表面の所定範囲に点着固定した検体捕獲部を形成し、検体捕獲部に検体となる溶液を接触させ、検出目的とする生物由来物を捕獲してその有無を判定するマイクロアレイの作製に用いるプラスチック製の基板であって、基板本体とカバーから成り、基板本体は基板表面から突出した凸部から形成される枠を有し、カバーは表面辺縁部に凸部を有し、基板本体の枠を形成する凸部とカバーの凸部が基板本体の検体捕獲部表面とカバーとの間に一定の大きさの間隙を形成して嵌合マイクロアレイ用プラスチック基板、
(2)基板本体の枠の凸部の一部及びカバーの凸部の一部に欠損部を有し、溶液の注入口及び/又は脱気口を形成する(1)記載のマイクロアレイ用プラスチック基板、
(3)注入口及び脱気口を形成させ、注入口と脱気口が対面した配置をとる(2)記載のマイクロアレイ用プラスチック基板、
(4)カバー表面に、すりガラス状の微細な凹凸を有する(1)〜(3)いずれか記載のマイクロアレイ用プラスチック基板、
(5)カバー表面に、微細な複数の溝状の凹凸を有する(1)〜(3)いずれか記載のマイクロアレイ用プラスチック基板、
(6)カバー表面の凹凸の高低差が1〜10μmである(4)又は(5)記載のマイクロアレイ用プラスチック基板、
(7)カバーの材質が、透明性を有する樹脂である(1)〜(6)いずれかのマイクロアレイ用プラスチック基板、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明のマイクロアレイ用基板本体に使用するプラスチックの材質であるが、DNAマイクロアレイを初めとして、検体の検出方法には蛍光を用いることが主流となっており、基板自身が蛍光を発すると検出ができなくなるため、自己蛍光を発しないものが好ましい。さらにDNAマイクロアレイでの操作においては沸騰水中に浸漬するなどの加熱操作があることから耐熱性を有する樹脂であることが好ましい。このような樹脂として、環状ポリオレフィン樹脂やETFEなどのフッ素樹脂等が挙げられる。
【0009】
一方本発明のカバーに用いるプラスチックの材質であるが、検出時はこのカバーを外すことから検出時の自己蛍光性については考慮する必要はない。しかし中の溶液状態を確認する必要があることから、透明であることが好ましい。このような要求特性を満たすプラスチックとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネイトなどが挙げられる。DNAマイクロアレイでのハイブリダイゼーションでは、60℃程度の加熱をする必要があるが、このような場合にはポリプロピレンやポリカーボネイト、環状ポリオレフィンなどを用いるのが好ましい。
【0010】
次に、本発明のマイクロアレイ用プラスチック基板本体およびカバーの全体の形状について記載する。マイクロアレイ本体であるが、現在DNAマイクロアレイの読み取りに広く用いられているスキャナーに適合する形としてスライドガラスと同じ形状が好適である。
カバーについては、特に規定はないが、勘合の対象となるマイクロアレイ本体がスライドグラス状であることから、この形状に合った形が好適であり、形状としては四角形であることが好ましい。
【0011】
次に、図によりさらに詳細に説明を行なう。
図1は本発明の一1実施例となるプラスチック製マイクロアレイ用プラスチック基板の本体とカバーがセットされた状態を表す模式図、図2は本発明の一実施例となるマイクロアレイ用基板本体を表す模式図、図3は本発明の一実施例となるカバーを表す模式図、図4は本発明の一実施例となるマイクロアレイ用基板本体とカバーの勘合の状態を表す断面図である。
マイクロアレイ用プラスチック基板本体(1)には、DNAなどを基板に固定する部位(11)を有する。DNAの固定は、直径50〜500μmという細いピンの先端にDNA溶液を付着させ、点着することによって行なわれる。この点着する範囲を枠(7)によって表示する。枠の形成は基板表面から凸部とすることにより形成させる。従来のマイクロアレイ用基板は、ガラス製であり、枠の表示は印刷によるか、シボ状に荒らすことによって行なわれていた。しかし、プラスチックでは射出成形により突起部を形成させることが可能である。
【0012】
この枠(7)の形態は四角状であることが好ましく、閉じた状態としても良いが、後に記載する、検体溶液を注入するための注入口(3)および溶液注入の際の脱気口(4)を形成するため一部欠損部(5)及び(6)を設けた方が良い。
【0013】
カバー(2)には、辺縁部に凸部(8)を設ける。この凸部(8)はカバーの辺縁部に閉じた状態で形成しても良いが、上記本体と同様に注入口(3)および脱気口(4)形成のために欠損部(9)および(10)を設けた方が良い。
【0014】
マイクロアレイ本体(1)のスポットエリア表面とカバー(2)のとの間隙(12)の大きさは、マイクロアレイ用基板本体(1)の枠(7)およびカバー(2)の凸部(8)の高さにより調整される。この間隙の大きさは15〜200μmであることが好ましく、15μm未満であると検体の溶液量が少なく十分なハイブリダイズができず、200μmを超えると検体の溶液量が多くなりより多くのサンプルの準備が必要となる。
【0015】
カバーの溶液と接触する側に、シボ状に凹凸部を設けることにより、溶液の充填の様子を容易に認識することが可能となる。溶液が充填されていない状態では、シボ部分がのこり、溶液が充填されるとシボ部分が無くなり、カバー全体が透明になるため、認識が容易にできるようになる。
また、溶液の注入口から脱気口への方向に微細な溝を設けることにより、溶液の流れを良くし溶液の充填がスムーズに行なうことが可能となる。
【0016】
本発明のマイクロアレイ用プラスチック基板の検体溶液との接触方法についてDNAマイクロアレイでのハイブリダイゼーションを例に記載する。
まず、基板本体の枠と、カバーの凸部とを勘合させる。次に、基板本体の枠の欠損部およびカバーの凸部の欠損部より形成される溶液の注入口(3)から、溶液を注入する。溶液は注入口から脱気口(4)へと充填される、脱気口まで溶液が満たされたところで溶液の注入をやめ、ハイブリダイゼーション用のケース中に基板を納め、放置しハイブリダイゼーションをおこなう。本発明においては、溶液の充填が確実に行なえ、カバーがずれたりすることがないため、確実にハイブリダイゼーションを行なうことができる。
ハイブリダイゼーションが終了した後、カバーを外し、洗浄等を行いスキャナーなどの読み取り装置で、DNAの捕獲状況を確認する。
【0017】
【発明の効果】
本発明に従うと、マイクロアレイでの検体溶液との接触作業、特にDNAマイクロアレイでのハイブリダイゼーションにおける検体となるDNA溶液の基板との接触が、均一にかつ確実に行なえることにより、ハイブリダイゼーションでのDNAの反応が均一に行なえることとなり再現性の高い検出結果を得ることができる。また、プラスチック化が可能となり、従来のガラス製の基板およびカバーに較べて、安いコストでの供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となるプラスチック製マイクロアレイ用プラスチック基板の本体とカバーがセットされた状態を表す模式図。
【図2】本発明の一実施例となるマイクロアレイ用基板本体を表す模式図。
【図3】本発明の一実施例となるカバーを表す模式図。
【図4】図4は本発明の一実施例となるマイクロアレイ用基板本体とカバーの勘合の状態を表す断面図。
【符号の説明】
1 基板本体
2 カバー
3 注入口
4 脱気口
5 基板本体の第1の欠損部
6 基板本体の第2の欠損部
7 枠
8 凸部
9 カバーの第1の欠損部
10 カバーの第2の欠損部
11 検体捕獲部
12 間隙

Claims (7)

  1. 生物由来物を捕獲する物質を基板表面の所定範囲に点着固定した検体捕獲部を形成し、検体捕獲部に検体となる溶液を接触させ、検出目的とする生物由来物を捕獲してその有無を判定するマイクロアレイの作製に用いるプラスチック製の基板であって、基板本体とカバーから成り、基板本体は基板表面から突出した凸部から形成される枠を有し、カバーは表面辺縁部に凸部を有し、基板本体の枠を形成する凸部とカバーの凸部が基板本体の検体捕獲部表面とカバーとの間に一定の大きさの間隙を形成して嵌合することを特徴とするマイクロアレイ用プラスチック基板。
  2. 基板本体の枠の凸部の一部及びカバーの凸部の一部に欠損部を有し、溶液の注入口及び/又は脱気口を形成する請求項1記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
  3. 注入口及び脱気口を形成させ、注入口と脱気口が対面した配置をとる請求項2記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
  4. カバー表面に、すりガラス状の微細な凹凸を有する請求項1〜3いずれか記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
  5. カバー表面に、微細な複数の溝状の凹凸を有する請求項1〜3いずれか記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
  6. カバー表面の凹凸の高低差が1〜10μmである請求項4又は5記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
  7. カバーの材質が、透明性を有する樹脂である請求項1〜6いずれか記載のマイクロアレイ用プラスチック基板。
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