JP2004175716A - メチオニンの晶析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器が閉塞されることを防止して、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定して取得できる、メチオニンの晶析方法を提供する。
【解決手段】メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して中和晶析するメチオニンの晶析方法であって、前記種晶の量が、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニン結晶全体の0.5〜2.5重量%であることを特徴とするメチオニンの晶析方法。
【選択図】 なし。
【解決手段】メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して中和晶析するメチオニンの晶析方法であって、前記種晶の量が、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニン結晶全体の0.5〜2.5重量%であることを特徴とするメチオニンの晶析方法。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、メチオニンの金属塩を含む水溶液から、所望の物性を有するメチオニンの結晶を、安定して取得することができるメチオニンの晶析方法に関する。本発明において、「物性」は、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率、比容積、体積平均粒径等のメチオニン結晶の粉体物性の意で用いる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、メチオニンの製造方法として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するメチオニンの製造方法が知られている。
【0003】
この製造方法においては、晶析して得られるメチオニン結晶の物性は、晶析したメチオニンを固液分離する工程や乾燥工程等の操業効率、及びメチオニン結晶の品質を管理する上で重要である。例えば、メチオニン結晶の含水率は乾燥プロセスへのエネルギー負荷を、比容積や体積平均粒径は、ハンドリング性及び固液分離性を左右する因子である。また、嵩密度が低く、含水率が高いメチオニンの結晶は、固液分離し、洗浄した後においても、結晶内部に母液を含んでいる。そのため、メチオニンの結晶中に含まれる母液由来の無機塩及び不純物であるメチオニン多量体が製品であるメチオニンに混入し、品質上問題となる。
【0004】
従来、晶析するメチオニンの結晶の物性を制御する方法の1つとして、メチオニンのカリウム塩を含む水溶液にメチオニンの種晶を添加して、メチオニンを晶析する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、メチオニン含有水溶液からメチオニンを晶析させ、固液分離する連続又は半連続工程において、グルテン等の媒晶剤共存下、種晶を連続/半連続的に添加して結晶を析出させた後、連続/半連続的に結晶を抜き出し、固液分離するメチオニンの結晶粉体物性の制御方法が開示されている。この方法は、連続的又は半連続的にメチオニンを晶析する方法であり、メチオニンの結晶粉体物性、結晶粒径を安定化・制御することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−072656号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したメチオニンの晶析方法は連続的又は半連続的にメチオニンの晶析を行なうものであり、その方法として、(a)晶析槽とは別に撹拌槽を用意し、この撹拌槽で種晶の調製を行い、得られた種晶を晶析槽ヘ供給してメチオニンを晶析させ、連続的又は半連続的にメチオニンの結晶を含むスラリーを抜き取る方法や、(b)プレート式熱交換器のような冷却装置を用いて種晶を結晶化させ、得られた種晶を晶析槽へ連続供給しながら、連続的又は半連続的にスラリーを抜き取る方法が採用されている。
【0007】
しかしながら、上述した方法のうち、(a)の方法では、長時間の撹拌槽の使用により、スラリーの循環ライン、槽内の撹拌翼、撹拌軸、バッフル等にメチオニンの結晶が付着し、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となる。このような場合には、晶析して得られるメチオニン結晶の物性が変化し、安定して所望の物性を有するメチオニン結晶が得られないおそれがある。
【0008】
また、(b)の方法では、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞する場合があり、この場合も、安定した物性を有するメチオニン結晶を得る上で問題となる場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器が閉塞されることを防止して、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定して取得できる、メチオニンの晶析方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液から、所望の物性を有するメチオニン結晶を安定して取得する方法について鋭意検討した。
【0011】
その結果、前記反応液からメチオニンを中和晶析するに際し、晶析して得られるメチオニンの結晶に対して所定割合となる量の種晶の存在下にメチオニンの晶析を行なうと、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができることを見出した。また、晶析するに際し、存在させる種晶の量を調節することで、得られるメチオニン結晶の物性を制御することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして本発明によれば、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して中和晶析するメチオニンの晶析方法であって、前記種晶の量が、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニン結晶全体の0.5〜2.5重量%であることを特徴とするメチオニンの晶析方法が提供される。
【0013】
本発明の晶析方法は、前記種晶として、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に炭酸ガスを供給し、晶析して得られるメチオニン結晶を用いるのが好ましく、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に、炭酸ガスを供給してメチオニンを晶析してメチオニンのスラリー状物を得る工程と、このスラリー状物に、前記水溶液(1)を添加し、炭酸ガスを供給してメチオニンを晶析する工程とを有するのがより好ましい。
【0014】
本発明の晶析方法は、前記種晶の量又は前記スラリー状物に含まれるメチオニン結晶の量を調節することにより、晶析により得られるメチオニン結晶の物性を制御するものであるのがさらに好ましい。
【0015】
本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)及び/又は水溶液(2)に媒晶剤を添加して、メチオニンを晶析するのが好ましい。
また、本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であるのがより好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して、前記水溶液(1)からメチオニンを中和晶析するメチオニンの晶析方法である。
【0017】
(1)水溶液(1)
本発明に用いる水溶液(1)は、少なくともメチオニンの金属塩を含むものであれば特に限定されない。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
【0018】
また、水溶液(1)は、水のほかに有機溶媒を含むものであっても、無機塩、有機塩、メチオニンの2量体以上の他の化合物をさらに含むものであっても、一般的な製造方法で得られるメチオニンを含む半製品又は固液分離したメチオニンの結晶を再溶解し、調製した溶液であってもよい。
【0019】
本発明に用いる水溶液(1)としては、メチオニンの濃度(水溶液(1)中のメチオニンの量及びメチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンの量の合計量に基づく濃度。以下にて同じ。)は、通常2〜40重量%、好ましくは3〜14重量%、より好ましくは7〜12重量%である。メチオニンの濃度があまりに低いとメチオニンの回収量が低下するため、製造効率の面から好ましくない。その一方、メチオニンの濃度があまりに高いと、所望の物性を有するメチオニンを得ることができないおそれがある。
【0020】
また、前記水溶液(1)のpH値は特に制限されないが、通常、pH5〜12、好ましくはpH6〜11である。
【0021】
本発明においては、前記水溶液(1)として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用い、公知の方法で加水分解して得られる水溶液であるのがより好ましい。
【0022】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインは、公知の方法で製造することができる。例えば、3−メチルチオプロピオンアルデヒド、青酸、アンモニア及び炭酸ガスを反応させて製造することができる。この反応は、通常、約0〜0.3MPaの加圧条件下、反応温度約70〜110℃で行なうことができる。また、アンモニア及び炭酸ガスの代わりに炭酸水素アンモニウムを用いることもできる。
【0023】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解反応に用いる金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられる。また、金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
加水分解は、通常、約0.4〜1.0MPaの加圧条件下、反応温度約140〜200℃、反応時間約10〜120分で行なうことができる。加水分解反応は、連続式、セミバッチ式、バッチ式のいずれでも行なうことができる。また、加水分解時に発生するアンモニア及び炭酸ガスを回収して、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの製造に再利用することができる。
【0025】
(2)種晶
本発明の晶析方法は、所定量の種晶の存在下、前記水溶液(1)に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するものである。
用いる種晶としては、水溶液(1)からメチオニンを中和晶析するに際し、メチオニン結晶の析出を促進し、析出するメチオニン結晶の物性を安定化するものであれば、特に制限されない。
【0026】
種晶としてのメチオニンの結晶は、例えば、溶解度差によりメチオニンを結晶化する濃縮晶析、溶媒添加晶析、反応晶析等通常知られている方法で確保することができる。
【0027】
メチオニン結晶の種晶の具体例としては、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析してスラリーとしたもの、固液分離操作で取得されるメチオニンの微結晶、メチオニンの粉砕物等が挙げられる。これらの中でも、メチオニンの金属塩を含む水溶液を用いることができること等の理由から、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)からメチオニンを晶析して、メチオニンのスラリー状物として調製したものが好ましい。
【0028】
メチオニン結晶(種晶)を含むスラリーを得る方法としては、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)を冷却しながら、炭酸ガスを供給して中和し、温度、pH等を制御しながら種晶を晶析させ、スラリー状物として取得する方法や、晶析系を多段化し、予備的な中和によって準安定領域にあるメチオニンの過飽和溶液を調製し、冷却により熱交換器等を備えた晶析管中で溶解度差を推進力に核化を促進し、スラリーを得る方法等を例示することができる。これらの中では、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞するという問題がない前者の方法が好ましい。
【0029】
水溶液(1)からメチオニンを晶析するに際し、存在させる種晶の量は、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%、好ましくは0.6〜2重量%である。種晶の量をこの範囲に設定することにより、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができる。
【0030】
種晶の量を、得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%とするには、固液分離操作で取得されるメチオニンの微結晶やメチオニンの粉砕物を用いる場合には、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となる量のメチオニンの微結晶又は粉砕物を前記水溶液(1)に添加すればよい。
【0031】
また、種晶としてメチオニン金属塩を含む水溶液(2)から得られるメチオニン結晶を含むスラリーを用いる場合には、水溶液(2)からメチオニンを晶析するときの晶析条件における単位体積(又は重量)あたりのメチオニン結晶の析出量を予め求めておき、これに基づき、前記水溶液(2)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となるメチオニン結晶を含むスラリーを調製すればよい。
【0032】
種晶の調製に使用するメチオニンの金属塩を含む水溶液(2)のメチオニン濃度(水溶液(2)中のメチオニンの量及びメチオニンの金属塩を中和してメチオニンに換算した量の合計量に基づく。以下にて同じ。)は、通常1〜10重量%、好ましくは4〜7重量%である。
【0033】
なかでも、前記水溶液(2)としては、前記水溶液(1)の一部を抜き取ったもの、又は前記水溶液(1)の一部を水で希釈してメチオニンの濃度調整を行なって得られる水溶液のいずれかが好ましい。
【0034】
また、前記水溶液(2)を用いて種晶を調製する場合には、後述するような媒晶剤を水溶液(2)に添加し、炭酸ガスを水溶液(2)に供給して、メチオニンを晶析するのが好ましい。媒晶剤を添加することにより、良好な粉体物性を有するメチオニンの種晶を安定して得ることができ、ひいては、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定して得ることができる。
【0035】
水溶液(2)へ供給する炭酸ガス量は、中和に要する水溶液(2)中の塩濃度等にも依存するが、単位液量(1m3あたり)0.5〜5kg/分、好ましくは2〜4kg/分である。炭酸ガスを供給する時間は、通常1〜15分、好ましくは2〜8分である。また、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスの分圧で0.1〜0.5MPaの加圧下で行なうのが好ましい。種晶を得るために用いる水溶液(2)のpH値は、通常7〜8、好ましくは7.3〜7.8である。
【0036】
また、本発明においては、前記種晶の量を調節することにより、晶析により析出するメチオニンの結晶の物性を制御することができる。一般的に、種晶の量を多くするほど、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率及び比容積は高くなる傾向にある。例えば、種晶の最終的に得られるメチオニンの結晶に対する割合が1.0重量%であれば、含水率は6重量%程度、比容積は1.6dm3/g程度である。また、種晶の最終的に得られるメチオニンの結晶に対する割合が2.5重量%であれば、含水率は13重量%程度、比容積は1.7dm3/g程度である。
【0037】
メチオニンは一般に主用途として大豆かす、トウモロコシ等で構成される家禽用、家畜用等の飼料添加物として使用されるが、その用途に応じてメチオニン結晶の粉体物性を制御しなければならない。本発明によれば、種晶の量を調節するという簡便な方法により、その用途に応じて、所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
【0038】
(3)メチオニンの晶析方法
メチオニンの晶析は、メチオニンの晶析を行なう撹拌槽に、水溶液(1)及び種晶を仕込み、炭酸ガスを供給することにより行なうことができる。
【0039】
メチオニンの晶析に用いる撹拌槽としては、目的に応じオンライン又はオフラインの温度計、pH計、濁度測定器、レベル計等の各種計測機器を装備させたものを用いることができる。また、撹拌槽は、循環ライン等の水溶液又はスラリーの輸送ラインと組み合わせて用いられる。
【0040】
撹拌槽内には、撹拌のための撹拌装置、炭酸ガスを供給するためのノズル、バッフル等が取り付けられる。
撹拌装置は、撹拌翼、撹拌軸及び撹拌のための動力源等からなる。撹拌翼としては、一般的なディスクタービン翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼及びこれらの組み合わせが挙げられる。用いる撹拌翼の種類、配置及び段数等は、炭酸ガスの供給ノズル先端との位置関係で、良好な炭酸ガスの分散性及びメチオニンの結晶の流動性を有する下降流又は上昇流を得ることができるように、適宜選択することができる。
【0041】
また、撹拌動力は、スラリーの量及び撹拌翼の段数等に依存し、通常0.1〜8.0kW/m3の範囲である。
【0042】
炭酸ガス供給用のノズルとしては、撹拌翼の近傍に配置され、炭酸ガスの気泡を撹拌翼で微細化し、炭酸を効率よく均一に分散し、水溶液の中和反応を促進するタイプや、ノズル先端部に分散板を設置して微細な炭酸ガスを水溶液内に供給するタイプが挙げられる。
また、晶析槽のバッフルの大きさは、バッフル近傍のスラリーの流速の遅い部分で結晶の付着等の問題が生じるため、スラリーの流動状態で定まるが、撹拌槽径に対し、1/15〜1/8の幅を有するものが好ましい。
【0043】
供給する炭酸ガスの流量は、単位液量あたり(1m3あたり)、通常0.2〜3kg/分、好ましくは0.5〜1kg/分である。炭酸ガスを供給するときの圧力は、炭酸ガスの分圧で、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜1MPaである。また、炭酸ガスを供給する時間は、通常30〜120分、好ましくは45〜90分である。
【0044】
晶析時の水溶液の液温は、通常0〜30℃、好ましくは5〜30℃である。温度が低いほどメチオニンの溶解度が低下するので好ましいが、液温は冷却に要するエネルギーコストとメチオニンの回収率とのバランスを考量して適宜定めることができる。
【0045】
また、中和晶析終了時の水溶液のpH値は、通常7〜9、好ましくは7.5〜8.5である。低い方がメチオニンの溶解度が低下するが、pH値を7未満とするには、高圧の炭酸ガス雰囲気とする必要があるので、pH値は、高圧設備に要するコストとメチオニンの回収率とを考量して定めることができる。
【0046】
本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、前記水溶液に媒晶剤を添加するのが好ましい。媒晶剤を添加することにより、粒状又は厚板状のメチオニンの結晶を得ることができる。
【0047】
用いる媒晶剤としては、結晶の凝集作用を有するものであれば特に制限されない。媒晶剤としては、例えば、グルテン、ポリビニルアルコール、カゼイン、半合成セルロース系水溶性高分子、アニオン性もしくはノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。粒度分布範囲の狭いメチオニンの結晶を得るためには、グルテンが特に好ましい。媒晶剤は、メチオニンの溶液にそのまま添加することができるが、適当な溶媒に溶解又は分散させた状態で添加することもできる。
【0048】
媒晶剤の添加量は、前記水溶液(1)に含まれる合計のメチオニンの重量(メチオニン及びメチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンの合計量)に対して、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。媒晶剤は基本的に不純物であることから、添加量は少ない方が好ましいが、0.05重量%より少ないと析出するメチオニン結晶の晶癖を変える効果が不十分となり板状又はうろこ状の結晶となり、0.5重量%以上では、不純物除去の問題があり、また、粒径が大きくなりすぎる問題を生じる。
【0049】
媒晶剤を添加する時期については特に制限がないが、炭酸ガスを用いて中和(中和工程)する前、中和工程時あるいは中和工程後のいずれであってもよい。本発明においては炭酸ガスを用いて中和(中和工程)する前、又は炭酸ガスにより中和すると同時に添加するのが好ましい。中和工程後に加える場合には、一度に結晶化が促進する可能性があるので、温度及びpH値を制御しながら、少量ずつ添加するのが好ましい。また。メチオニンを晶析する撹拌槽を複数設ける場合において、種晶を含むスラリーを順次各槽に送る場合、少なくとも最初の晶析槽に含まれていればよいが、各晶析槽に加える方が、メチオニンの粒径及び粒度分布を制御する上でも好ましい。
【0050】
本発明のメチオニンの晶析方法においては、メチオニンの晶析を次の2段階で行なうのが特に好ましい。この方法によれば、効率よく、安定して所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
【0051】
(第1段目)
メチオニンを晶析する撹拌槽に、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)の所定量及び所望により媒晶剤を仕込み、撹拌下、冷却しながら炭酸ガスを吸収させ、少量のメチオニンの結晶(種晶)を析出させて、メチオニン結晶のスラリーを得る。
【0052】
水溶液(1)の仕込み量は、水溶液(1)からメチオニンを晶析するときの晶析条件における単位体積(又は重量)あたりのメチオニン結晶の析出量を予め求めておき、これに基づき、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となるメチオニン結晶を含むスラリーを調製する。
【0053】
(第2段目)
得られたスラリーを撹拌下、冷却しながらメチオニンの金属塩を含む水溶液(1)及び所望により媒晶剤を炭酸ガスとともに供給して、メチオニンの結晶を成長させる。
第2段目におけるメチオニンの晶析は、上述と同様の方法により行なうことができる。
なお、撹拌槽の撹拌動力としては、前記第1段階目では、通常1〜6kW/m3、好ましくは1.5〜3kW/m3とし、第2段階目では、通常0.1〜3kW/m3、好ましくは0.5〜1kW/m3に設定する。
【0054】
この方法は、1つの撹拌槽で種晶の調製及びメチオニンの晶析を行なうものである。従って、スラリーの循環ライン、槽内の撹拌翼、撹拌軸、バッフル等にメチオニンの結晶が付着し、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞することがない。
【0055】
メチオニンの晶析が終了した後は、固液分離装置を使用してメチオニン及びアルカリ金属炭酸水素塩の混合結晶と水分とを分離することにより、メチオニン及びアルカリ金属炭酸水素塩の混合結晶を回収する。用いる固液分離装置は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離機、ヌッチェ式濾過器、回転ドラム式連続濾過器等、一般的な濾過装置を用いることができる。
【0056】
本発明の晶析方法を用いて得られてくるメチオニンの結晶は、粒状でその体積平均粒径は100〜600μm、好ましくは300〜600μm、ウェット基準での含水率は5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、比容積は1.4〜1.6dm3/g、好ましくは1.5〜1.7dm3/gである。
【0057】
また、メチオニンの晶析時において、撹拌槽には微小結晶による泡立ちも観測されない。さらに、固液分離における濾過性も良好であり、一度の振り切りで含水率を30%前後まで低下させることができる。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
(1)メチオニンの結晶の含水率(重量%)
メチオニンの結晶の含水率は、赤外線水分計により測定した。なお、含水率はウェット基準の含水率である(メチオニンを晶析して得られたメチオニンのスラリーを、ヌッチェにて濾取したものの含水率を測定した。)。
【0059】
(2)メチオニン結晶の比容積(dm3/g)
メチオニンの結晶の比容積は、定容シリンダーに入れてダッピング後、重量測定して求めた。
【0060】
(実施例1)
(A)種晶の調製(第1段目)
実施例1においては、調圧弁、バッフル2枚、撹拌軸の下段及び中段に翼径350mmの6枚傾斜ディスクタービン翼を2段、上段に翼径500mmの2枚のパドル翼、及び循環ラインを備えた1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0061】
この撹拌槽内を、炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)の炭酸ガス雰囲気とし、水100リットルを加えて循環・撹拌した後、メチオニンのカリウム塩及びグルテンを含む水溶液(メチオニン換算したメチオニン濃度9.5重量%、グルテンの濃度0.02重量%)を仕込み、下段の撹拌翼で撹拌動力が1.6kW/m3で撹拌しながら、水温を15℃に維持した(ジャケット冷却)。次いで、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に0.5kg/分で3分間供給して、メチオニンの種晶を析出させた。pH値が7.6のスラリーが得られた。
【0062】
(B)メチオニンの晶析(第2段目)
上記で得られたスラリーを15℃に維持し、撹拌下、メチオニンのカリウム塩及びグルテンを含む水溶液(メチオニン換算したメチオニン濃度9.5重量%、グルテンの濃度0.02重量%)を19.2kg/分、炭酸ガスを0.5kg/分で90分間供給してメチオニンを晶析させ、析出したメチオニンの結晶を濾取した。得られたメチオニンの体積平均粒径は500μm、含水率は6重量%、比容積は1.60dm3/gであった。また、種晶の量は析出したメチオニンの結晶全体の0.9重量%であった。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、(A)の種晶の調製により得られる種晶のスラリーのスラリー率を変化させることにより、種晶の量を析出したメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%の間で変化させて、(B)のメチオニンの晶析を実施例1と同様に行ない、得られたメチオニン結晶の含水率及び比容積を測定した。測定結果を図1及び図2にまとめた。図1及び図2から、種晶の量が0.5〜2.5重量%であれば、良好な物性(含水率及び比容積)を有するメチオニン結晶を得ることができることが分かった。また、種晶の量が増加すれば、得られるメチオニン結晶の含水率及び比容積が増加する傾向にあることも分かった。
【0064】
(比較例1)
実施例1において、(A)の種晶の調製を行なうことなく、実施例1の(B)で用いたメチオニンの金属塩及びグルテンを含む水溶液を用い、実施例1と同様の撹拌槽を使用し、同様の晶析条件でメチオニンの晶析を行なった。得られたメチオニンの結晶の体積平均粒径は410μm、含水率15重量%、比容積1.75dm3/gであり、結晶としての物性が悪化していた。
【0065】
(比較例2)
実施例1において、(A)種晶の調製を実施例1と同様に行なって得られる種晶のスラリーを使用し、(B)のメチオニンの晶析に用いる水溶液の量を少なくして、実施例1と同様の撹拌槽を使用し、同様の晶析条件でメチオニンの晶析を行なった。得られたメチオニンの結晶の体積平均粒径は680μm、含水率28重量%、比容積1.85dm3/gであり、結晶としての物性が悪化していた。また、種晶の量は、析出したメチオニンの結晶全体の約3.0重量%であった。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、メチオニンの金属塩を含む水溶液を炭酸ガスで中和晶析するに際し、所定量の種晶を炭酸ガスとともに供給するという簡便な方法により、所望の物性(含水率及び比容積等)を有するメチオニンの結晶を安定して得ることができる。また、種晶の供給量を所定範囲内において変化させることにより、用途に応じた所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
さらに、本発明の晶析方法は、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器が閉塞する問題がないので、工業的生産規模でメチオニンを製造する場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2で得られたメチオニンの結晶全体に対する種晶の割合(横軸;重量%)と、得られるメチオニン結晶の含水率(縦軸;重量%)との関係を表す図である。
【図2】図2は、実施例2で得られたメチオニンの結晶全体に対する種晶の割合(横軸;重量%)と、得られるメチオニン結晶の比容積(縦軸;重量%)との関係を表す図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、メチオニンの金属塩を含む水溶液から、所望の物性を有するメチオニンの結晶を、安定して取得することができるメチオニンの晶析方法に関する。本発明において、「物性」は、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率、比容積、体積平均粒径等のメチオニン結晶の粉体物性の意で用いる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、メチオニンの製造方法として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するメチオニンの製造方法が知られている。
【0003】
この製造方法においては、晶析して得られるメチオニン結晶の物性は、晶析したメチオニンを固液分離する工程や乾燥工程等の操業効率、及びメチオニン結晶の品質を管理する上で重要である。例えば、メチオニン結晶の含水率は乾燥プロセスへのエネルギー負荷を、比容積や体積平均粒径は、ハンドリング性及び固液分離性を左右する因子である。また、嵩密度が低く、含水率が高いメチオニンの結晶は、固液分離し、洗浄した後においても、結晶内部に母液を含んでいる。そのため、メチオニンの結晶中に含まれる母液由来の無機塩及び不純物であるメチオニン多量体が製品であるメチオニンに混入し、品質上問題となる。
【0004】
従来、晶析するメチオニンの結晶の物性を制御する方法の1つとして、メチオニンのカリウム塩を含む水溶液にメチオニンの種晶を添加して、メチオニンを晶析する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、メチオニン含有水溶液からメチオニンを晶析させ、固液分離する連続又は半連続工程において、グルテン等の媒晶剤共存下、種晶を連続/半連続的に添加して結晶を析出させた後、連続/半連続的に結晶を抜き出し、固液分離するメチオニンの結晶粉体物性の制御方法が開示されている。この方法は、連続的又は半連続的にメチオニンを晶析する方法であり、メチオニンの結晶粉体物性、結晶粒径を安定化・制御することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−072656号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したメチオニンの晶析方法は連続的又は半連続的にメチオニンの晶析を行なうものであり、その方法として、(a)晶析槽とは別に撹拌槽を用意し、この撹拌槽で種晶の調製を行い、得られた種晶を晶析槽ヘ供給してメチオニンを晶析させ、連続的又は半連続的にメチオニンの結晶を含むスラリーを抜き取る方法や、(b)プレート式熱交換器のような冷却装置を用いて種晶を結晶化させ、得られた種晶を晶析槽へ連続供給しながら、連続的又は半連続的にスラリーを抜き取る方法が採用されている。
【0007】
しかしながら、上述した方法のうち、(a)の方法では、長時間の撹拌槽の使用により、スラリーの循環ライン、槽内の撹拌翼、撹拌軸、バッフル等にメチオニンの結晶が付着し、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となる。このような場合には、晶析して得られるメチオニン結晶の物性が変化し、安定して所望の物性を有するメチオニン結晶が得られないおそれがある。
【0008】
また、(b)の方法では、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞する場合があり、この場合も、安定した物性を有するメチオニン結晶を得る上で問題となる場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器が閉塞されることを防止して、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定して取得できる、メチオニンの晶析方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を図るべく、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる反応液から、所望の物性を有するメチオニン結晶を安定して取得する方法について鋭意検討した。
【0011】
その結果、前記反応液からメチオニンを中和晶析するに際し、晶析して得られるメチオニンの結晶に対して所定割合となる量の種晶の存在下にメチオニンの晶析を行なうと、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができることを見出した。また、晶析するに際し、存在させる種晶の量を調節することで、得られるメチオニン結晶の物性を制御することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして本発明によれば、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して中和晶析するメチオニンの晶析方法であって、前記種晶の量が、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニン結晶全体の0.5〜2.5重量%であることを特徴とするメチオニンの晶析方法が提供される。
【0013】
本発明の晶析方法は、前記種晶として、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に炭酸ガスを供給し、晶析して得られるメチオニン結晶を用いるのが好ましく、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に、炭酸ガスを供給してメチオニンを晶析してメチオニンのスラリー状物を得る工程と、このスラリー状物に、前記水溶液(1)を添加し、炭酸ガスを供給してメチオニンを晶析する工程とを有するのがより好ましい。
【0014】
本発明の晶析方法は、前記種晶の量又は前記スラリー状物に含まれるメチオニン結晶の量を調節することにより、晶析により得られるメチオニン結晶の物性を制御するものであるのがさらに好ましい。
【0015】
本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)及び/又は水溶液(2)に媒晶剤を添加して、メチオニンを晶析するのが好ましい。
また、本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であるのがより好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して、前記水溶液(1)からメチオニンを中和晶析するメチオニンの晶析方法である。
【0017】
(1)水溶液(1)
本発明に用いる水溶液(1)は、少なくともメチオニンの金属塩を含むものであれば特に限定されない。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩が好ましく、カリウム塩が特に好ましい。
【0018】
また、水溶液(1)は、水のほかに有機溶媒を含むものであっても、無機塩、有機塩、メチオニンの2量体以上の他の化合物をさらに含むものであっても、一般的な製造方法で得られるメチオニンを含む半製品又は固液分離したメチオニンの結晶を再溶解し、調製した溶液であってもよい。
【0019】
本発明に用いる水溶液(1)としては、メチオニンの濃度(水溶液(1)中のメチオニンの量及びメチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンの量の合計量に基づく濃度。以下にて同じ。)は、通常2〜40重量%、好ましくは3〜14重量%、より好ましくは7〜12重量%である。メチオニンの濃度があまりに低いとメチオニンの回収量が低下するため、製造効率の面から好ましくない。その一方、メチオニンの濃度があまりに高いと、所望の物性を有するメチオニンを得ることができないおそれがある。
【0020】
また、前記水溶液(1)のpH値は特に制限されないが、通常、pH5〜12、好ましくはpH6〜11である。
【0021】
本発明においては、前記水溶液(1)として、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用い、公知の方法で加水分解して得られる水溶液であるのがより好ましい。
【0022】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインは、公知の方法で製造することができる。例えば、3−メチルチオプロピオンアルデヒド、青酸、アンモニア及び炭酸ガスを反応させて製造することができる。この反応は、通常、約0〜0.3MPaの加圧条件下、反応温度約70〜110℃で行なうことができる。また、アンモニア及び炭酸ガスの代わりに炭酸水素アンモニウムを用いることもできる。
【0023】
5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの加水分解反応に用いる金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられる。また、金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
加水分解は、通常、約0.4〜1.0MPaの加圧条件下、反応温度約140〜200℃、反応時間約10〜120分で行なうことができる。加水分解反応は、連続式、セミバッチ式、バッチ式のいずれでも行なうことができる。また、加水分解時に発生するアンモニア及び炭酸ガスを回収して、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインの製造に再利用することができる。
【0025】
(2)種晶
本発明の晶析方法は、所定量の種晶の存在下、前記水溶液(1)に炭酸ガスを供給して、メチオニンを中和晶析するものである。
用いる種晶としては、水溶液(1)からメチオニンを中和晶析するに際し、メチオニン結晶の析出を促進し、析出するメチオニン結晶の物性を安定化するものであれば、特に制限されない。
【0026】
種晶としてのメチオニンの結晶は、例えば、溶解度差によりメチオニンを結晶化する濃縮晶析、溶媒添加晶析、反応晶析等通常知られている方法で確保することができる。
【0027】
メチオニン結晶の種晶の具体例としては、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析してスラリーとしたもの、固液分離操作で取得されるメチオニンの微結晶、メチオニンの粉砕物等が挙げられる。これらの中でも、メチオニンの金属塩を含む水溶液を用いることができること等の理由から、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)からメチオニンを晶析して、メチオニンのスラリー状物として調製したものが好ましい。
【0028】
メチオニン結晶(種晶)を含むスラリーを得る方法としては、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)を冷却しながら、炭酸ガスを供給して中和し、温度、pH等を制御しながら種晶を晶析させ、スラリー状物として取得する方法や、晶析系を多段化し、予備的な中和によって準安定領域にあるメチオニンの過飽和溶液を調製し、冷却により熱交換器等を備えた晶析管中で溶解度差を推進力に核化を促進し、スラリーを得る方法等を例示することができる。これらの中では、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞するという問題がない前者の方法が好ましい。
【0029】
水溶液(1)からメチオニンを晶析するに際し、存在させる種晶の量は、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%、好ましくは0.6〜2重量%である。種晶の量をこの範囲に設定することにより、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定的に得ることができる。
【0030】
種晶の量を、得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%とするには、固液分離操作で取得されるメチオニンの微結晶やメチオニンの粉砕物を用いる場合には、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となる量のメチオニンの微結晶又は粉砕物を前記水溶液(1)に添加すればよい。
【0031】
また、種晶としてメチオニン金属塩を含む水溶液(2)から得られるメチオニン結晶を含むスラリーを用いる場合には、水溶液(2)からメチオニンを晶析するときの晶析条件における単位体積(又は重量)あたりのメチオニン結晶の析出量を予め求めておき、これに基づき、前記水溶液(2)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となるメチオニン結晶を含むスラリーを調製すればよい。
【0032】
種晶の調製に使用するメチオニンの金属塩を含む水溶液(2)のメチオニン濃度(水溶液(2)中のメチオニンの量及びメチオニンの金属塩を中和してメチオニンに換算した量の合計量に基づく。以下にて同じ。)は、通常1〜10重量%、好ましくは4〜7重量%である。
【0033】
なかでも、前記水溶液(2)としては、前記水溶液(1)の一部を抜き取ったもの、又は前記水溶液(1)の一部を水で希釈してメチオニンの濃度調整を行なって得られる水溶液のいずれかが好ましい。
【0034】
また、前記水溶液(2)を用いて種晶を調製する場合には、後述するような媒晶剤を水溶液(2)に添加し、炭酸ガスを水溶液(2)に供給して、メチオニンを晶析するのが好ましい。媒晶剤を添加することにより、良好な粉体物性を有するメチオニンの種晶を安定して得ることができ、ひいては、所望の物性を有するメチオニンの結晶を安定して得ることができる。
【0035】
水溶液(2)へ供給する炭酸ガス量は、中和に要する水溶液(2)中の塩濃度等にも依存するが、単位液量(1m3あたり)0.5〜5kg/分、好ましくは2〜4kg/分である。炭酸ガスを供給する時間は、通常1〜15分、好ましくは2〜8分である。また、炭酸ガスの供給は、炭酸ガスの分圧で0.1〜0.5MPaの加圧下で行なうのが好ましい。種晶を得るために用いる水溶液(2)のpH値は、通常7〜8、好ましくは7.3〜7.8である。
【0036】
また、本発明においては、前記種晶の量を調節することにより、晶析により析出するメチオニンの結晶の物性を制御することができる。一般的に、種晶の量を多くするほど、晶析して得られるメチオニン結晶の含水率及び比容積は高くなる傾向にある。例えば、種晶の最終的に得られるメチオニンの結晶に対する割合が1.0重量%であれば、含水率は6重量%程度、比容積は1.6dm3/g程度である。また、種晶の最終的に得られるメチオニンの結晶に対する割合が2.5重量%であれば、含水率は13重量%程度、比容積は1.7dm3/g程度である。
【0037】
メチオニンは一般に主用途として大豆かす、トウモロコシ等で構成される家禽用、家畜用等の飼料添加物として使用されるが、その用途に応じてメチオニン結晶の粉体物性を制御しなければならない。本発明によれば、種晶の量を調節するという簡便な方法により、その用途に応じて、所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
【0038】
(3)メチオニンの晶析方法
メチオニンの晶析は、メチオニンの晶析を行なう撹拌槽に、水溶液(1)及び種晶を仕込み、炭酸ガスを供給することにより行なうことができる。
【0039】
メチオニンの晶析に用いる撹拌槽としては、目的に応じオンライン又はオフラインの温度計、pH計、濁度測定器、レベル計等の各種計測機器を装備させたものを用いることができる。また、撹拌槽は、循環ライン等の水溶液又はスラリーの輸送ラインと組み合わせて用いられる。
【0040】
撹拌槽内には、撹拌のための撹拌装置、炭酸ガスを供給するためのノズル、バッフル等が取り付けられる。
撹拌装置は、撹拌翼、撹拌軸及び撹拌のための動力源等からなる。撹拌翼としては、一般的なディスクタービン翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼及びこれらの組み合わせが挙げられる。用いる撹拌翼の種類、配置及び段数等は、炭酸ガスの供給ノズル先端との位置関係で、良好な炭酸ガスの分散性及びメチオニンの結晶の流動性を有する下降流又は上昇流を得ることができるように、適宜選択することができる。
【0041】
また、撹拌動力は、スラリーの量及び撹拌翼の段数等に依存し、通常0.1〜8.0kW/m3の範囲である。
【0042】
炭酸ガス供給用のノズルとしては、撹拌翼の近傍に配置され、炭酸ガスの気泡を撹拌翼で微細化し、炭酸を効率よく均一に分散し、水溶液の中和反応を促進するタイプや、ノズル先端部に分散板を設置して微細な炭酸ガスを水溶液内に供給するタイプが挙げられる。
また、晶析槽のバッフルの大きさは、バッフル近傍のスラリーの流速の遅い部分で結晶の付着等の問題が生じるため、スラリーの流動状態で定まるが、撹拌槽径に対し、1/15〜1/8の幅を有するものが好ましい。
【0043】
供給する炭酸ガスの流量は、単位液量あたり(1m3あたり)、通常0.2〜3kg/分、好ましくは0.5〜1kg/分である。炭酸ガスを供給するときの圧力は、炭酸ガスの分圧で、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜1MPaである。また、炭酸ガスを供給する時間は、通常30〜120分、好ましくは45〜90分である。
【0044】
晶析時の水溶液の液温は、通常0〜30℃、好ましくは5〜30℃である。温度が低いほどメチオニンの溶解度が低下するので好ましいが、液温は冷却に要するエネルギーコストとメチオニンの回収率とのバランスを考量して適宜定めることができる。
【0045】
また、中和晶析終了時の水溶液のpH値は、通常7〜9、好ましくは7.5〜8.5である。低い方がメチオニンの溶解度が低下するが、pH値を7未満とするには、高圧の炭酸ガス雰囲気とする必要があるので、pH値は、高圧設備に要するコストとメチオニンの回収率とを考量して定めることができる。
【0046】
本発明の晶析方法においては、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、前記水溶液に媒晶剤を添加するのが好ましい。媒晶剤を添加することにより、粒状又は厚板状のメチオニンの結晶を得ることができる。
【0047】
用いる媒晶剤としては、結晶の凝集作用を有するものであれば特に制限されない。媒晶剤としては、例えば、グルテン、ポリビニルアルコール、カゼイン、半合成セルロース系水溶性高分子、アニオン性もしくはノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。粒度分布範囲の狭いメチオニンの結晶を得るためには、グルテンが特に好ましい。媒晶剤は、メチオニンの溶液にそのまま添加することができるが、適当な溶媒に溶解又は分散させた状態で添加することもできる。
【0048】
媒晶剤の添加量は、前記水溶液(1)に含まれる合計のメチオニンの重量(メチオニン及びメチオニンの金属塩を中和して得られるメチオニンの合計量)に対して、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。媒晶剤は基本的に不純物であることから、添加量は少ない方が好ましいが、0.05重量%より少ないと析出するメチオニン結晶の晶癖を変える効果が不十分となり板状又はうろこ状の結晶となり、0.5重量%以上では、不純物除去の問題があり、また、粒径が大きくなりすぎる問題を生じる。
【0049】
媒晶剤を添加する時期については特に制限がないが、炭酸ガスを用いて中和(中和工程)する前、中和工程時あるいは中和工程後のいずれであってもよい。本発明においては炭酸ガスを用いて中和(中和工程)する前、又は炭酸ガスにより中和すると同時に添加するのが好ましい。中和工程後に加える場合には、一度に結晶化が促進する可能性があるので、温度及びpH値を制御しながら、少量ずつ添加するのが好ましい。また。メチオニンを晶析する撹拌槽を複数設ける場合において、種晶を含むスラリーを順次各槽に送る場合、少なくとも最初の晶析槽に含まれていればよいが、各晶析槽に加える方が、メチオニンの粒径及び粒度分布を制御する上でも好ましい。
【0050】
本発明のメチオニンの晶析方法においては、メチオニンの晶析を次の2段階で行なうのが特に好ましい。この方法によれば、効率よく、安定して所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
【0051】
(第1段目)
メチオニンを晶析する撹拌槽に、メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)の所定量及び所望により媒晶剤を仕込み、撹拌下、冷却しながら炭酸ガスを吸収させ、少量のメチオニンの結晶(種晶)を析出させて、メチオニン結晶のスラリーを得る。
【0052】
水溶液(1)の仕込み量は、水溶液(1)からメチオニンを晶析するときの晶析条件における単位体積(又は重量)あたりのメチオニン結晶の析出量を予め求めておき、これに基づき、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析するときに、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%となるメチオニン結晶を含むスラリーを調製する。
【0053】
(第2段目)
得られたスラリーを撹拌下、冷却しながらメチオニンの金属塩を含む水溶液(1)及び所望により媒晶剤を炭酸ガスとともに供給して、メチオニンの結晶を成長させる。
第2段目におけるメチオニンの晶析は、上述と同様の方法により行なうことができる。
なお、撹拌槽の撹拌動力としては、前記第1段階目では、通常1〜6kW/m3、好ましくは1.5〜3kW/m3とし、第2段階目では、通常0.1〜3kW/m3、好ましくは0.5〜1kW/m3に設定する。
【0054】
この方法は、1つの撹拌槽で種晶の調製及びメチオニンの晶析を行なうものである。従って、スラリーの循環ライン、槽内の撹拌翼、撹拌軸、バッフル等にメチオニンの結晶が付着し、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器のプレート表面にメチオニンの結晶が付着して、熱交換器が閉塞することがない。
【0055】
メチオニンの晶析が終了した後は、固液分離装置を使用してメチオニン及びアルカリ金属炭酸水素塩の混合結晶と水分とを分離することにより、メチオニン及びアルカリ金属炭酸水素塩の混合結晶を回収する。用いる固液分離装置は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離機、ヌッチェ式濾過器、回転ドラム式連続濾過器等、一般的な濾過装置を用いることができる。
【0056】
本発明の晶析方法を用いて得られてくるメチオニンの結晶は、粒状でその体積平均粒径は100〜600μm、好ましくは300〜600μm、ウェット基準での含水率は5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、比容積は1.4〜1.6dm3/g、好ましくは1.5〜1.7dm3/gである。
【0057】
また、メチオニンの晶析時において、撹拌槽には微小結晶による泡立ちも観測されない。さらに、固液分離における濾過性も良好であり、一度の振り切りで含水率を30%前後まで低下させることができる。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
(1)メチオニンの結晶の含水率(重量%)
メチオニンの結晶の含水率は、赤外線水分計により測定した。なお、含水率はウェット基準の含水率である(メチオニンを晶析して得られたメチオニンのスラリーを、ヌッチェにて濾取したものの含水率を測定した。)。
【0059】
(2)メチオニン結晶の比容積(dm3/g)
メチオニンの結晶の比容積は、定容シリンダーに入れてダッピング後、重量測定して求めた。
【0060】
(実施例1)
(A)種晶の調製(第1段目)
実施例1においては、調圧弁、バッフル2枚、撹拌軸の下段及び中段に翼径350mmの6枚傾斜ディスクタービン翼を2段、上段に翼径500mmの2枚のパドル翼、及び循環ラインを備えた1.8m3のSUS304製ジャケット付き撹拌槽を使用した。
【0061】
この撹拌槽内を、炭酸ガス分圧で0.3MPa(ゲージ圧)の炭酸ガス雰囲気とし、水100リットルを加えて循環・撹拌した後、メチオニンのカリウム塩及びグルテンを含む水溶液(メチオニン換算したメチオニン濃度9.5重量%、グルテンの濃度0.02重量%)を仕込み、下段の撹拌翼で撹拌動力が1.6kW/m3で撹拌しながら、水温を15℃に維持した(ジャケット冷却)。次いで、炭酸ガスを下段の撹拌翼付近に0.5kg/分で3分間供給して、メチオニンの種晶を析出させた。pH値が7.6のスラリーが得られた。
【0062】
(B)メチオニンの晶析(第2段目)
上記で得られたスラリーを15℃に維持し、撹拌下、メチオニンのカリウム塩及びグルテンを含む水溶液(メチオニン換算したメチオニン濃度9.5重量%、グルテンの濃度0.02重量%)を19.2kg/分、炭酸ガスを0.5kg/分で90分間供給してメチオニンを晶析させ、析出したメチオニンの結晶を濾取した。得られたメチオニンの体積平均粒径は500μm、含水率は6重量%、比容積は1.60dm3/gであった。また、種晶の量は析出したメチオニンの結晶全体の0.9重量%であった。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、(A)の種晶の調製により得られる種晶のスラリーのスラリー率を変化させることにより、種晶の量を析出したメチオニンの結晶全体の0.5〜2.5重量%の間で変化させて、(B)のメチオニンの晶析を実施例1と同様に行ない、得られたメチオニン結晶の含水率及び比容積を測定した。測定結果を図1及び図2にまとめた。図1及び図2から、種晶の量が0.5〜2.5重量%であれば、良好な物性(含水率及び比容積)を有するメチオニン結晶を得ることができることが分かった。また、種晶の量が増加すれば、得られるメチオニン結晶の含水率及び比容積が増加する傾向にあることも分かった。
【0064】
(比較例1)
実施例1において、(A)の種晶の調製を行なうことなく、実施例1の(B)で用いたメチオニンの金属塩及びグルテンを含む水溶液を用い、実施例1と同様の撹拌槽を使用し、同様の晶析条件でメチオニンの晶析を行なった。得られたメチオニンの結晶の体積平均粒径は410μm、含水率15重量%、比容積1.75dm3/gであり、結晶としての物性が悪化していた。
【0065】
(比較例2)
実施例1において、(A)種晶の調製を実施例1と同様に行なって得られる種晶のスラリーを使用し、(B)のメチオニンの晶析に用いる水溶液の量を少なくして、実施例1と同様の撹拌槽を使用し、同様の晶析条件でメチオニンの晶析を行なった。得られたメチオニンの結晶の体積平均粒径は680μm、含水率28重量%、比容積1.85dm3/gであり、結晶としての物性が悪化していた。また、種晶の量は、析出したメチオニンの結晶全体の約3.0重量%であった。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、メチオニンの金属塩を含む水溶液を炭酸ガスで中和晶析するに際し、所定量の種晶を炭酸ガスとともに供給するという簡便な方法により、所望の物性(含水率及び比容積等)を有するメチオニンの結晶を安定して得ることができる。また、種晶の供給量を所定範囲内において変化させることにより、用途に応じた所望の物性を有するメチオニンの結晶を得ることができる。
さらに、本発明の晶析方法は、循環ラインに詰まりを生じたり、撹拌槽内での撹拌が不十分となったり、熱交換器が閉塞する問題がないので、工業的生産規模でメチオニンを製造する場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2で得られたメチオニンの結晶全体に対する種晶の割合(横軸;重量%)と、得られるメチオニン結晶の含水率(縦軸;重量%)との関係を表す図である。
【図2】図2は、実施例2で得られたメチオニンの結晶全体に対する種晶の割合(横軸;重量%)と、得られるメチオニン結晶の比容積(縦軸;重量%)との関係を表す図である。
Claims (8)
- メチオニンの金属塩を含む水溶液(1)に、種晶の存在下、炭酸ガスを供給して中和晶析するメチオニンの晶析方法であって、前記種晶の量が、晶析により析出し、固液分離して得られるメチオニン結晶全体の0.5〜2.5重量%であることを特徴とするメチオニンの晶析方法。
- 前記種晶として、メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に炭酸ガスを供給し、晶析して得られるメチオニンの結晶を用いることを特徴とする請求項1に記載のメチオニンの晶析方法。
- メチオニンの金属塩を含む水溶液(2)に、炭酸ガスを供給してメチオニンを晶析することにより、メチオニンのスラリー状物を得る工程と、このスラリー状物に前記水溶液(1)を添加し、炭酸ガスを供給して、前記水溶液(1)からメチオニンを晶析する工程とを有する請求項2に記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記種晶の量を調節することにより、晶析により得られるメチオニン結晶の物性を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記スラリー状物に含まれるメチオニン結晶の量を調節することにより、晶析により得られるメチオニン結晶の物性を制御することを特徴とする請求項3に記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液(1)に媒晶剤を添加して、メチオニンを晶析することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液(2)に媒晶剤を添加して、メチオニンを晶析することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のメチオニンの晶析方法。
- 前記水溶液(1)が、5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインを含む水溶液を、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いて加水分解して得られる水溶液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のメチオニンの晶析方法。
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