JP2004174869A - 難燃性積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】難燃成分含有繊維より形成された難燃性布帛の少なくとも一方の面に、オレフィン系樹脂100質量部に対して、NOR型光安定剤とメラミンシアヌレートと燐酸エステル化合物とである難燃剤を6質量部から65質量部を混合した樹脂混合物より形成された難燃性フィルムを積層してなる構成とする。繊維基材と被覆材料の両者に難燃性をバランスよく持たせることにより、被覆材料に用いる樹脂への難燃剤の添加量を少なくしながらも、高い難燃性を得ることが可能になる。よって、繊維基材の強度を保持しながら、樹脂自体の強度や伸び等の特性も生かすことができる。非ハロゲン系難燃剤を用いているため、環境への負荷も少ない。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装材、床材、住宅壁材等、難燃性が必要な膜材に用いられる難燃性積層体に関し、特に、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤を用いず、焼却時のダイオキシンの発生などが問題とならない難燃性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃化された塩化ビニール樹脂で布帛を被覆加工したターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装材、床材、住宅壁材(紙)などが製造されている。しかし塩化ビニール樹脂は、低コストで加工性が良いなど種々の長所を有する反面、埋立て処分すると樹脂中に添加された可塑剤や安定剤などが土壌や水を汚染し、焼却処分すると有毒な塩素系ガスや煙が発生するという深刻な問題を有している。
【0003】
近年、塩化ビニール樹脂に代えて他のオレフィン系材料を難燃化する技術が開発されており、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物や、酸化亜鉛、三酸化アンチモンなどの金属酸化物を用いる技術は一般に公開されている。しかし金属酸化物は他のハロゲン系難燃剤との併用で素晴らしい効果が得られるものの、ハロゲン系難燃剤なしでは効果がなくなり、それゆえに燃焼時のダイオキシンの問題を免れ得ない。また難燃性を得るためにはこれら金属水和物、金属酸化物を多量に添加する必要があり、樹脂物性の低下を来たしてしまう。このような問題を解決すべく、燐系難燃剤、特に少量で効果の高い赤燐、又は膨張性黒鉛、又はチッソ系難燃剤などを用いることが提案されている。
【0004】
たとえば、赤燐を使用した難燃性のシート(たとえば特許文献1、特許文献2参照)や、エチレン系共重合体にポリ燐酸アンモニウムと硫酸メラミンとを併用した難燃性積層体等(たとえば特許文献3参照)や、ポリオレフィンディスパージョンとポリウレタンディスパージョンの混合物にジシアンジアミドを加え熱可塑性フィルムの片面に積層した難燃シート(たとえば特許文献4参照)や、エチレン酢ビ共重合樹脂にメラミンシアヌレートを添加した難燃性フィルムまたはシート(たとえば特許文献5参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3310710号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平10−182895号公報
【0007】
【特許文献3】
特開2000−53836号公報
【0008】
【特許文献4】
特開2001−47567号公報
【0009】
【特許文献5】
特開2001−172404号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1、2で使用された赤燐は独特の赤みを持った強い着色力があるため、これを添加した製品には容易に白色の色相を出せず、意匠性に富んだ着色が困難になる。白の色相を得るためには多量の酸化チタンなどの添加が必要となり、樹脂の特性を損なう恐れがある。このため、白色に近い色相で且つ多量の添加量を要さない難燃剤成分が望まれるが、充分な性能を有する難燃剤成分はこれまで見いだされていない。
【0011】
特許文献3で使用されたポリ燐酸アンモニウムは水溶性が高いため、これを添加した製品を屋外で使用するとポリ燐酸アンモニウムの溶出が起き、難燃性の低下が起きる。
【0012】
特許文献4で使用されたポリオレフィンとポリウレタンとは基本的に相溶性が低く、開示されたように多量の難燃剤を添加すると、フィルム強度が極めて低くなることは明白である。このため熱可塑性フィルムを片面若しくは両面に貼ることで強度低下をカバーする方法がとられているが、使用される熱可塑性フィルムには難燃性が無いため、折角の難燃性を低下させる結果となる。
【0013】
特許文献5で使用されたエチレン酢ビ共重合樹脂は酢酸ビニール含有率50−80%であるため、樹脂自体のベタツキが強く、低温でブロッキングしやすく、ターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装材、床材、壁紙等などの用途には使用できない。
【0014】
さらに、燐系難燃剤、膨張性黒鉛、チッソ系難燃剤は、金属水和物、金属酸化物などに比べると添加量が少なくてすむとはいえ、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系共重合体などのオレフィン系材料は、難燃性の指標である限界酸素指数(LOI値)が17から18程度というように非常に燃えやすい材料であるため、十分な難燃効果を得るためには未だ多量の添加を要する。
【0015】
樹脂への難燃剤添加部数を見ると、特許文献3では、エチレン系共重合体にポリ燐酸アンモニウムを最大200質量部と硫酸メラミンを併用する例が開示されている。特許文献4では、ポリオレフィンディスパージョンとポリウレタンディスパージョンの混合物に最大200質量部のジシアンジアミドが用いられている。特許文献5では、エチレン酢ビ共重合樹脂に対してメラミンシアヌレートを最大300質量部添加する例が開示されている。いずれも、難燃剤の最大添加部数が200から300質量部と多く、換言すると樹脂量よりも難燃剤量が多く、難燃剤を樹脂で固めた程度のものとも言える。
【0016】
そのためこれらの難燃性材料では、多量に添加される難燃剤によって本来の樹脂強度が低下し、樹脂の屈曲性や伸度が大きく低下することになる。この問題を解決すべく樹脂架橋を行って強度を上げる方法も考えられるが、ターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装材、床材、壁紙等は、接合される際に熱または高周波ウェルダーが用いられることが多く、架橋によってもたらされる樹脂融点の上昇は溶融接着性を阻害することになる。
【0017】
本発明は上記問題を解決するもので、ターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装材、床材、壁材等の難燃規制される膜材に要求される難燃性と十分な強度とを確保することができ、着色も容易であり、使い易く、環境への負荷も少ない難燃性積層体を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の難燃性積層体は、難燃成分含有繊維より形成された難燃性布帛の少なくとも一方の面に、オレフィン系樹脂100質量部に対して、NOR型光安定剤とメラミンシアヌレートと燐酸エステル化合物とである難燃剤を6質量部から65質量部を混合した樹脂混合物より形成された難燃性フィルムを積層して構成したことを特徴とする。
【0019】
積層体としては、布帛の難燃性と被覆材料の難燃性とをバランスよく設定することにより、少ない難燃剤量で高い難燃性を得ることが可能になる。本発明のオレフィン系難燃性積層体は、難燃性布帛を用いることで、難燃性を付与していない布帛を用いる場合に比べて被覆材料の樹脂に混合する難燃剤量を低減し、樹脂自体の強度や伸び等の特性を生かすものである。
【0020】
本発明に繊維基材として使用する難燃性布帛は、繊維主成分たるポリマー主鎖に、難燃性成分(燐,燐含有基など)がそれを含んだ難燃性モノマーとして共重合によってあるいは後加工によって化学的に結合されるか、またはポリマーの溶融時に難燃剤(燐,燐化合物,NOR型光安定剤など)が添加混合されることで形成されたものや、ガラス繊維など、難燃性の長繊維、短繊維を用いた織物、編み物及び不織布等を言う。
【0021】
マテリアルリサイクル性の観点からは、被覆材料に用いられるオレフィン系樹脂と容易に溶融混合する点で、難燃性ポリプロピレン繊維からなる布帛が好ましい。しかし強度の高いPETなどを繊維成分とする難燃性ポリエステル繊維の布帛を用いることもできる。ポリエステルはマテリアルリサイクル性を阻害するものの、ハロゲン系成分を持たないためサーマルリサイクルする場合にダイオキシンの問題がなく、ケミカルリサイクルによる油化等も可能である。ガラス繊維を用いる場合は、寸法安定性、強度に優れた積層体を得ることができる。
【0022】
被覆材料に用いるオレフィン系樹脂は、特に限定されるものではないが、メルトフローレート(MFR)0.3〜30程度、あるいは分子量2万〜20万程度のものを好適に使用できる。MFRが0.3より小さいと、カレンダー法での樹脂流動性が悪くなり、MFRが30を越えると、成膜されたフィルムの経時変化によって熱溶着性の低下や印刷性の低下など、表面状態の変化が起き易くなる。これは低分子量のものが表面に移行するためと思われる。分子量が2万より小さいと、光や熱などによる劣化が早くなり、20万を越えると、加工の際の流動性が小さくなり加工性が悪化する。
【0023】
オレフィン系樹脂としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン酢ビ共重合体、エチレンエチルアセテート、エチレンメチルメタクリレート、EPDM(ethylene−propylene−diene terpolymer)、EPR(ethylene−propylene rubber)等のゴム成分の内の少なくとも1種を用いることができ、複数種を混合する場合にはその樹脂成分の種類、配合割合に拠って所望の柔らかさを得ることができる。
【0024】
これらの樹脂成分は、分子構造上、オレフィン主鎖を持つため極めて相溶性がよい。その内、スチレン系エラストマー、エチレン酢ビ共重合体、エチレンエチルアセテート、エチレンメチルメタクリレートは、ポリエチレン、ポリプロピレンの相溶化剤としての効果も期待できる。
【0025】
その中で、エチレン酢ビ共重合体、エチレンエチルアセテート、エチレンメチルメタクリレートなどのエチレンビニルアセテート系樹脂は、高周波発熱性に富み、高周波溶着性が必要な時にこれらの成分比率を上げることによって、所望の高周波適性を得ることが可能である。
【0026】
オレフィン系樹脂100質量部に対して、NOR型光安定剤とメラミンシアヌレートと燐酸エステル化合物とである難燃剤を6質量部から65質量部を混合するのが適当である。難燃剤の添加量が6質量部より少ないと所望の難燃性が得られず、65質量部を越えるとフィルムの性能が劣化する。
【0027】
難燃剤としては、NOR型光安定剤と燐酸エステル化合物とメラミンシアヌレートとを併用する。
NOR型光安定剤(NOR型ヒンダードアミン系耐光安定剤)は、樹脂の耐候助剤としての使用が知られるが、燃焼初期に速いラジカルトラップ作用を発揮するものと推定される。ラジカルトラップ作用のためには0.8質量部以上の添加が望ましいが、併用する燐酸エステルも同様の効果を持つため、過剰に添加しても効果は飽和する。このことから、また経済性からも、好ましい添加量の上限は10質量部程度である。
【0028】
燐酸エステルとしては、非ハロゲン系燐酸エステル、非ハロゲン系縮合燐酸エステル、反応型燐酸エステルなどを使用することができ、特に非ハロゲン系縮合燐酸エステルが好適である。これら燐酸エステルは、固層で炭化物形成するとともに、気層で燃焼の際に発生するラジカルを捕捉するラジカルトラップ作用を発揮し、燃焼を抑制する。そのためには0.8質量部以上の添加が望ましく、4質量部程度の添加がより好ましい。燐酸エステルのトラップ作用は上記したNOR型光安定剤に比べて遅いが、比較的多い添加量とすることで、時間差を利用して効率よくラジカルトラップ作用を発揮させることができる。NOR型光安定剤が燃焼初期のラジカルトラップを行い、それを上回るラジカルが発生した時に燐酸エステルがその補助的なトラップ作用を発揮して燃焼を抑える機構である。但し、過剰に添加しても性能は飽和するため、好ましい添加量の上限は4質量部程度である。
【0029】
メラミンシアヌレート(チッソ系難燃剤)は溶融滴下物を生じる。燃焼時に上記した燐酸エステル及びNOR型光安定剤がラジカルトラップ作用を発揮しても、厚みのある積層体にあっては燃焼物が融けながら着火点に留まる傾向があり、その溶融玉に空気の対流によって酸素が充分に供給され延焼が起きる。メラミンシアヌレートを存在させておくと、その特徴である溶融滴下物が生成し、それによる吸熱効果や可燃源(溶融玉)の除去効果によって燃焼が停止する。そのためにはメラミンシアヌレートの添加量は5質量部以上とするが、多量の添加は樹脂物性の低下を引き起こし、コストアップにもつながるので、好ましい添加量の上限は30質量部程度である。
【0030】
このように、燐酸エステルとNOR型光安定剤とメラミンシアヌレートとを併用することにより、燐酸エステル及びNOR型光安定剤のラジカルトラップ作用と、メラミンシアヌレートの溶融滴下物による吸熱効果および可燃源の除去効果との相乗効果で、高い燃焼抑止効果を得ることができる。このことにより、難燃剤の添加量を従来に比べて極めて少なくしても高い難燃性を得ることが可能になり、難燃剤が添加混合されるオレフィン系樹脂の特性、たとえば皮膜強度や伸びなどを生かすことが可能になる。
【0031】
その結果、難燃性積層体に、住宅壁材、床材、ターポリン、テント、レザー、テント倉庫膜材、車両内装等の難燃性が要求される膜材に必要な物性、消防法に規定された防炎性能試験に合格する物性を付与することが可能となる。
【0032】
積層体の被覆樹脂性能向上のために、難燃性や強度やマテリアルリサイクル性などの上記特性を阻害しない範囲で、撥水剤、着色剤、他の難燃剤(窒素系難燃剤、燐系難燃剤、金属水和物、膨張性黒鉛など)、紫外線吸収剤、制電剤、導電剤、防カビ剤、熱安定剤、防汚剤、抗菌剤、防臭剤、発泡剤、無機充填剤等を含有させてもよい。
【0033】
たとえば、色相濃色で問題がない場合に赤燐や膨張性黒鉛を添加することで、NOR型光安定剤及び燐酸エステルの一部を代替し難燃剤の総添加量を下げたり、あるいは金属水和物を添加することでコストダウンを図ることが可能である。チッソ系難燃剤、特にジシアンジアミドなどはメラミンシアヌレートの代替が可能であるが、結晶性が高く、また材料の湿気による凝集が起こり易いため、マスターバッチなどにして用いる必要がある。
【0034】
難燃性布帛を難燃性樹脂混合物のフィルムで被覆する方法としては、公知の方法、例えばカレンダー法、ラミネート法、エクストルージョンラミネート法等を使用することができるが、これらに限定されるものでない。必要に応じて複数層に被覆してもよい。
【0035】
布帛に対する難燃性樹脂混合物の使用量は、特に限定されるものではないが、100〜800質量%程度が好適である。布帛の質量と強度とは比例関係にあって、布帛の質量が小さい場合は当然ながら強度が低いものとなり、樹脂被覆を厚くしても強度を大きく高めることはできないため、布帛質量に対応する小さい厚みで被覆して軽量の積層体を作成し、負荷の小さい用途に用いる。一方、布帛の質量が大きい場合は当然ながら強度が高いものとなるため、樹脂被覆を厚くして耐久性の高い積層体を作成し、負荷の大きい用途に用いる。
【0036】
たとえば、建築養生シートとして用いるターポリンは、ポリエステル布帛(250d,50g/m2)にトータル厚み0.25mmとなるように樹脂被覆することで作成することができ、この場合、布帛に対する樹脂混合物の使用量は、樹脂の種類や難燃剤量にもよるが約600質量%となり、固定枠に貼り付けられる程度の強度となる。一方、フレキシブルコンテナは、ポリエステル布帛(1000d,170g/m2)にトータル厚み0.85mmとなるように樹脂被覆することで作成することができ、この場合、布帛に対する樹脂混合物の使用量は約650質量%となり、1トン近い内容物を搬送するなど、負荷の高い用途に使用可能となる。ポリエステル合繊帆布などの帆布を作成する場合は、布帛に対して樹脂混合物200質量%程度が好ましい樹脂被覆量であり、片面のみ樹脂被覆する場合は布帛に対して樹脂混合物100質量%程度が好ましい樹脂被覆量である。
【0037】
積層体の防汚性を高めるべく、形成された樹脂皮膜の表面に、アクリル系、フッ素系、スチレン系等の樹脂(共重合体、単独重合体)を単独であるいは混合して用いて、コーティングを施してもよく、防汚性フィルムのラミネートも可能である。
【0038】
積層体の着色は、形成された樹脂皮膜の表面へのグラビアプリント、転写法、樹脂練り込み等によっても行なうことができる。また、仕上げ機械によるエンボス加工やケミカルエンボス加工などによって、目的とする品位に仕上げることも出来る。
【0039】
以下、消防法に規定された防炎性能試験について説明する。
消防法では、工事用シートなどについて、樹脂加工された基材(本発明でいう積層体)が重量450g/m2以下のものに対しては45度ミクロバーナー法(JIS L−1091 A−1法の区分3に相当する)が適用され、重量450g/m2を越えるものに対しては45度メッケルバーナー法(JIS L−1091 A−2法の区分3に相当する)が適用され、いずれも、バーナーによる燃焼で溶融する場合にはさらにコイル法(JIS L−1091 D法の区分2に相当する)が適用される。なおここに記載する重量は質量と同意義である。
<45度メッケルバーナー法・45度ミクロバーナー法>
試験試料を適切な前処理の後に長方形に切り取り、四辺とも枠に取り付けて45度に固定する。この試験試料に、規定のバーナーにて規定高さの炎を設定時間だけ当てる。この際に、難燃性のない試料は着炎して延焼し、バーナー消火後も燃え続けて、規程の面積以上に燃焼する結果となる。
【0040】
45度ミクロバーナー法(基材重量450g/m2以下のものに適用)の判定基準;1分加熱で、炭化面積30cm2以下、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下、炭化距離20cm以下であり、着炎3秒後も同値が得られることが合格の条件である。
【0041】
45度メッケルバーナー法(基材重量が450g/m2を越えるものに適用)の判定基準;2分加熱で、炭化面積40cm2以下、残炎時間5秒以下、残じん時間20秒以下、炭化距離20cm以下であり、着炎6秒後も同値が得られることが合格の条件である。
【0042】
しかるに、難燃性の試験試料には二つの燃焼パターンがある。第一のパターン・・ガラス繊維を基材とし難燃性塩化ビニールを塗布したような高難燃性試料では、炎が試料を貫通することはなく、バーナー消火後に燃焼停止する。この場合、バーナーの炎が接していた面積にほぼ近い面積の樹脂層が燃焼するが、規定面積内で燃焼が停止する。第二のパターン・・ポリエステル繊維を基材とし難燃性塩化ビニールを塗布したような難燃性試料では、着炎後に炎が試料を貫通する。炎の貫通によって試験試料に穴が空き、炎の周囲から試料が遠ざかるため延焼が起きない。
【0043】
つまり、45度ミクロバーナー法・45度メッケルバーナー法でみると、第二のパターンの燃焼を起こす材料でも規程の面積以内の燃焼にとどまり、合格レベルと判定されることになる。このため、溶融を起こす材料については上述したようにコイル法の適用が義務づけられている。
<コイル法>
試験試料を長さ10cm、重さ1gとなるように切り取り、直径10mm、巻きピッチ2mm、傾斜角45度に設定されたステンレスコイルの中に入れる。この試料の下端に規定長さの炎を近づけ、試料が燃焼又は収縮して炎から遠ざかり燃焼停止した場合は、試料が炎に近づくようにコイルを移動させることを繰り返す。3回の接炎後に試料が10mm以上残ることが合格の条件となる。
【0044】
このように45度に保持される45度ミクロバーナー法・45度メッケルバーナー法、コイル法は、水平保持されるFMVSS試験(JIS D−1021に相応する)やエアーミックスバーナー法などの防炎性能試験よりも遙かに条件が厳しい。燃焼時の炎は上に燃え上がるので、水平保持よりも45度保持の方が燃焼し易いためである。本発明は、45度メッケルバーナー法・45度ミクロバーナー法、及びコイル法に合格するオレフィン系難燃性積層体を提供するものである。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、具体例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1)
ポリプロピレンエラストマー(商品名 キャタロイ359P モンテルJPO製;ホモポリプロピレン/エチレン−プロピレンランダムコポリマー/エチレン−プロピレンゴムを順次に重合させた熱可塑性のポリプロピレン系エラストマー、融点142℃、メルトフローレート12)75質量部、ポリプロピレンエラストマー(商品名 キャタロイ353P モンテルJPO製;前記キャタロイ359Pと同様のポリプロピレンエラストマー、融点142℃、メルトフローレート0.45)25質量部、NOR型光安定剤(商品名 フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤(商品名 アデカスタブFP500 旭電化製)4部、メラミンシアヌレート(商品名 MC610 日産化学製)14質量部、滑剤1質量部、白色着色剤としての酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(厚さ0.18mm)を得た。
【0046】
このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(三菱レイヨン製 PP6840F 平織り組織;溶融紡糸の際に非ハロゲン系難燃剤を用いたもの)の両面にそれぞれ貼り合わせて、難燃性積層体を得た。貼り合わせは、160℃のフィルムを巻き取った試験ロールとゴムロールとを並列に配置して回転させ、その間に布帛を挿入しニップして布帛の片面にフィルムを貼り合わせる方法を、布帛の片面ずつに順次に行なった。
【0047】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
なお、ここに示す各実施例、比較例において、積層体の難燃性試験として、45度メッケルバーナー法、45度ミクロバーナー法、コイル法の内のいずれを実施するか、および、その判定基準は、既述した通りとした。コイル法では1つの積層体について5点の試験片で接炎回数を調べ、その平均値が3回以上であって、2回以下を含まない場合に合格とした。
【0048】
難燃性判定結果を示すに当たって、45度メッケルバーナー法・45度ミクロバーナー法のいずれか1法とコイル法との両方に合格の場合に○とし、一方のみ合格の場合に△とし、両方不合格の場合に×とした。
(実施例2)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)25質量部、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)16質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP500)4質量部、メラミンシアヌレート(MC610)14質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(厚さ0.15mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0049】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
(実施例3)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、スチレン系エラストマー(商品名 セプトン2007 クラレ製)40質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.15mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP3849F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0050】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
(実施例4)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)40質量部、酢ビ量25%のエチレン酢酸ビニール共重合樹脂(商品名 エバフレックスP2505 三井デュポンポリケミカル製)60質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)4質量部、メラミンシアヌレート(MC610)14質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルムを得た。このフィルム(0.18mm)を基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0051】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。又、この積層体を二枚重ねにしてウェルダー(山本ビニター製YD3500、出力3.5KW)にて陽極電流値0.42Aで溶着させた。溶着面を手で剥がして溶着状態を見たところ、積層体同士が溶着しウェルダー適性があることが確認された。結果を表1に示した。
(実施例5)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP500)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.15mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0052】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
(実施例6)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0053】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
(実施例7)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.15mm)を得た。このフィルムを基布としての難燃ポリエステルスパンボンド(不織布 旭化成RF1100)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0054】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも合格レベルであった。結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例6と同様の処方にてフィルム(0.15mm)を作成し、このフィルムを基布としての難燃性処理していないポリプロピレン繊維(平織り組織 三菱レイヨン製PP6840N)の両面にそれぞれ貼り合わせて積層体を得た。
【0055】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも不合格レベルであった。結果を表2に示した。
(比較例2)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)4質量部、メラミンシアヌレート(MC610)20質量部、滑剤を1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.20mm)を得た。このフィルムを基布としての難燃性処理していないポリプロピレン繊維(ダイワボウPP7020)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0056】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも不合格レベルであった。結果を表2に示した。
(比較例3)
難燃剤の相乗効果を確認すべくNOR型光安定剤を抜いた処方で積層体を作成した。
【0057】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)40質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)8質量部、メラミンシアヌレートMC61080質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.15mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP3849F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0058】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、各試験とも不合格レベルであった。結果を表2に示した。
(比較例4)
NOR型光安定剤の下限添加量を確認すべく以下の処方で積層体を作成した。
【0059】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)50質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)50質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)0.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)20質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0060】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、45度メッケルバーナー法は合格したが、コイル法は平均2.2回と規定値を下回り不合格となった。結果を表2に示す。
(比較例5)
難燃剤の相乗効果を確認すべく燐酸エステル系難燃剤を抜いた処方で積層体を作成した。
【0061】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)50質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)50質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、MC610を20質量部、滑剤を1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0062】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、45度メッケルバーナー法は合格したが、コイル法は平均1回と規定値を下回り不合格となった。結果を表2に示す。
【0063】
メラミンシアヌレートの効果を確認すべく、メラミンシアヌレートを使用せず種々の積層体を作成した。
(比較例6)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)75質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)25質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)4質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.15mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP3849F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0064】
この積層体について45度ミクロバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、45度ミクロバーナー法は合格したが、コイル法は平均1回と規定値を下回り不合格となった。結果を表3に示す。
(比較例7)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP500)2質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP2000)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.20mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP3849F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0065】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも不合格となった。結果を表3に示す。
(比較例8)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)50質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)30質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP500)6質量部、チッソ系難燃剤である硫酸二メラミン20質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.22mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0066】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも不合格となった。結果を表3に示す。
(比較例9)
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)50質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)30質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)2質量部、燐酸エステル系難燃剤(アデカスタブFP500)4質量部、発泡系チッソ系難燃剤(商品名 KBH−30 大塚化学製)20質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.20mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて積層体を得た。
【0067】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも不合格となった。結果を表3に示す。
(比較例10)
比較例の9の発泡系チッソ系難燃剤(KBH−30)を他のチッソ系難燃剤であるポリ燐酸メラミン(日産化学工業製PMP200)に置き換えて、均一なフィルム(0.20mm)を作成し、基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0068】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも不合格となった。結果を表3に示す。
(比較例11)
比較例の9の発泡系チッソ系難燃剤(KBH−30)を他のチッソ系難燃剤(メルム日産化学工業製)に置き換えて均一なフィルム(0.20mm)を作成し、基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0069】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも不合格となった。結果を表3に示す。
比較例7〜11に示したようにメラミンシアヌレートを他の材料で代替しても効果がなかった。比較例10、11に用いたチッソ系難燃剤はメラミンシアヌレートに近い構造を有するが、分解温度が、比較例10で用いたPMP200で350℃、比較例11で用いたメルムで400℃近く、樹脂の分解温度と乖離しているため効果が低いと言える。これに対し、メラミンシアヌレートの分解温度は300℃であり、燃焼時に効率よく働くと言える。
(比較例12)
メラミンシアヌレートの下限量を確認すべく以下の処方で積層体を作成した。
【0070】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)3.5質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0071】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、45度メッケルバーナー法は合格するが、コイル法は平均1回となり不合格となった。結果を表4に示す。
(実施例8)
NOR型光安定剤の好ましい添加量の上限を確認すべく以下の処方で積層体を作成した。
【0072】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0073】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、45度メッケルバーナー法、コイル法とも合格した。ただし、難燃性能が飽和していると思われ、コスト面で問題となるレベルである。結果を表4に示す。
(実施例9)
燐酸エステルの好ましい添加量の上限を確認すべく以下の処方で積層体を作成した。
【0074】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)10質量部、メラミンシアヌレート(MC610)10質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0075】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも合格した。ただし、試料作成後数日で燐酸エステルが表面にブリードアウトした。これは、主成分であるポリプロピレン系材料との相溶性の限界に近いためと判断される。また、難燃性能は飽和していると思われ、コスト面で問題となるレベルである。結果を表4に示す。
(実施例10)
メラミンシアヌレートの好ましい添加量の上限を確認すべく以下の処方で積層体を作成した。
【0076】
ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ359P)60質量部、ポリプロピレンエラストマー(キャタロイ353P)20質量部、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂(エバフレックスP2505)20質量部、NOR型光安定剤(フレームスタブNOR116)1.5質量部、燐酸エステル系難燃剤トリフェニルフォスフェート(TPP)2質量部、メラミンシアヌレート(MC610)50質量部、滑剤1質量部、酸化チタン3質量部を160℃に設定した試験ロールで練り合わせ、均一なフィルム(0.18mm)を得た。このフィルムを基布としてのポリプロピレン難燃性布帛(平織り組織 三菱レイヨン製 PP6840F)の両面にそれぞれ貼り合わせて難燃性積層体を得た。
【0077】
この積層体について45度メッケルバーナー法、コイル法にて難燃性試験を実施した結果、両試験とも合格した。ただし難燃性能は飽和していると思われ、コスト面で問題となるレベルである。結果を表4に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
(耐光性)
上記した実施例1の処方にて白着色ターポリン(以下、本発明品1と称す)を作成するとともに、実施例1の処方にシアニンブルー系顔料を添加してライトブルー色の調色品ターポリン(以下、本発明品2と称す)を作成した。着色は自由に行なうことができ、得られたターポリンはフレキシブルであった。
【0083】
本発明品1、2について、耐光促進試験を実施し、変退色度合い(色差ΔE)より耐光性を評価した。比較試料として、本発明品2に近いライトブルー色の軟質塩化ビニールターポリン(カンボウプラス製 商品名アップルスター APC400;以下、従来品と称す)を用いた。この従来品は一般の用途では何ら支障ない耐光性を備えるものである。
【0084】
試験条件は、サイクルモード(LIGHT4時間;DEW4時間)、ブラックパネル温度63℃を使用した。光照射には岩崎電気アイスーパーUVを使用し、測色にはミノルタ色彩色差計CR200を使用した。結果を表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
本発明品1、2は、従来品と比較して色差が遙かに小さく、耐光性のレベルが高いことがわかる。色差は物の色の違いを判定する基準であるが、色差0.3は人間の目で見て色の違いがほとんど判らない程度である。本発明品が高い耐光性を示した理由は、難燃剤として用いた光安定剤の効果と見られる。
【0087】
【発明の効果】
以上のように本発明の難燃性積層体は、基材となる布帛にも難燃性を持たせ、かつ被覆材料に添加する難燃剤に燐酸エステルとNOR型光安定剤とメラミンシアヌレートとを併用するようにしたため、被覆材料の樹脂成分100質量部に対して6から65質量部という少ない難燃剤量で充分な難燃性を得ることが可能となった。
【0088】
このため、樹脂自体の強度や伸び等の特性を生かすことができ、折り曲げた際に白化することが多かった従来の難燃製品に比べてフレキシブルな膜材となり、また自由に着色できるため意匠性を高めることができ、多くの難燃製品に利用可能となった。耐光性も極めて高く、同様の仕様の軟質塩化ビニール製品を遙かにしのぐ。難燃剤量の低減は当然ながら低コストにつながるものである。
【0089】
しかも、被覆材料にオレフィン樹脂を用いているため環境負荷が小さく、繊維基材にもポリプロピレン布帛を用いた場合は、マテリアルリサイクル性にも優れることになる。
Claims (3)
- 難燃成分含有繊維より形成された難燃性布帛の少なくとも一方の面に、オレフィン系樹脂100質量部に対して、NOR型光安定剤とメラミンシアヌレートと燐酸エステル化合物とである難燃剤を6質量部から65質量部を混合した樹脂混合物より形成された難燃性フィルムを積層してなる難燃性積層体。
- オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン酢ビ共重合体、エチレンエチルアセテート、エチレンメチルメタクリレート、EPDM、EPRの内の少なくとも1種である請求項1記載の難燃性積層体。
- オレフィン系樹脂100質量部に対して、NOR型光安定剤0.8質量部から10質量部、メラミンシアヌレート5質量部から30質量部、燐酸エステル化合物0.8質量部から4質量部が混合された請求項1記載の難燃性積層体。
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