JP2004174762A - シート用パッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】サイド部において上層部と下層部との積層構造を持つシート用パッドを、サイド部における成形性を確保し、上層部と下層部との境界面における形状精度を確保しつつ製造する。
【解決手段】下型6にソフト発泡原料92を注入し、第1上型7を閉じて下型6との間に形成された第1発泡空間51内でソフト発泡原料92を発泡充填させることでメイン部2及びサイド上層部32を成形し、次いで、成形されたサイド上層部32上にハード発泡原料94を注入し、不織布10を内面に取り付けた第2上型8を閉じてサイド上層部32と第2上型8との間に第2発泡空間52を形成し、この空間52内で該ハード発泡原料94を発泡充填させることで、裏面に不織布10が接着一体化されたハード層からなるサイド下層部61を、ソフト層からなるメイン部2及びサイド上層部32に対して積層一体化する。
【選択図】 図4
【解決手段】下型6にソフト発泡原料92を注入し、第1上型7を閉じて下型6との間に形成された第1発泡空間51内でソフト発泡原料92を発泡充填させることでメイン部2及びサイド上層部32を成形し、次いで、成形されたサイド上層部32上にハード発泡原料94を注入し、不織布10を内面に取り付けた第2上型8を閉じてサイド上層部32と第2上型8との間に第2発泡空間52を形成し、この空間52内で該ハード発泡原料94を発泡充填させることで、裏面に不織布10が接着一体化されたハード層からなるサイド下層部61を、ソフト層からなるメイン部2及びサイド上層部32に対して積層一体化する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用や家具用のシートに用いられるシート用パッドの製造方法に関するものであり、特に、異硬度の発泡体を積層一体化してなるシート用パッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シート用パッドに優れた特性を付与するため、硬度の異なる発泡体を積層した構造を持つ積層構造のシート用パッドが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特公平3−60280号公報。
【0004】
【特許文献2】特開2002−200626号公報。
【0005】
上記特許文献1には、下型に2つの上型をそれぞれヒンジ継手にて開閉自在に設けて、まず、下型に第1発泡原料を注入し、第1上型を閉めて下型と第1上型との間で第1発泡原料を発泡充填させて上層部を形成し、次いで、この成形された上層部の上に第2発泡原料を注入し、第2上型を閉めて上層部と第2上型との間で第2発泡原料を発泡充填させて下層部を積層一体化する方法が記載されている。
【0006】
上記特許文献2には、下型の凹部に可撓性フィルムを開口部が形成されるように配置し、該開口部よりフィルムの内側に第1発泡原料を注入するとともに、開口部以外の箇所に第2発泡原料を注入し、次いで、下型と上型を閉じて、フィルムを境界層として第1発泡原料と第2発泡原料とを一体に発泡させることで、第1発泡原料からなる第1発泡体と第2発泡原料からなる第2発泡体との二層構造を有するシート用パッドの製造方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1の方法によれば、上層部と下層部との境界面を金型(第1上型)で規定しているので、該境界面における形状精度に優れたシート用パッドを得ることができる。しかしながら、特許文献1では、下層部の全面がハードフォームで構成されており、下層部の一部をその他の部分とは硬度の異なる発泡体で成形する方法については開示されていない。また、該特許文献1に記載された方法では、サイド部が上層部と下層部との境界面となるパーティングラインよりも下方に凸形状をなす場合に、この凸部に成形時、ガス溜まりが生じて欠肉やボイドの原因になり、サイド部の成形性を損なうという問題がある。
【0008】
一方、上記特許文献2の方法では、可撓性フィルムを境界層として第1発泡体と第2発泡体を積層一体化するものであるため、両発泡体の境界面の形状が安定せず、そのため、座り心地などシート用パッドとしての一定の品質を確保しにくいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、少なくともサイド部において上層部と下層部との積層構造を持つシート用パッドを、サイド部における成形性を確保し、かつ、上層部と下層部との境界面における形状精度を確保しつつ製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のシート用パッドの製造方法は、メイン部とその左右両側のサイド部を備えて該サイド部の下層部が上層部とは異硬度の発泡体からなるシート用パッドを、下型と第1上型と第2上型とを備える成形型を用いて製造する方法であって、前記下型の凹部内に第1発泡原料を注入し、前記第1上型を閉じて前記下型と第1上型との間に第1発泡空間を形成し、該第1発泡空間内で前記第1発泡原料を発泡充填させることで前記上層部を含む第1発泡体を成形し、次いで、前記第1上型を開けて、成形された前記第1発泡体上に第2発泡原料を注入し、多孔質シート材を内面に取り付けた前記第2上型を前記下型に閉じて前記第1発泡体の上面と第2上型との間に第2発泡空間を形成し、該第2発泡空間内で前記第2発泡原料を発泡充填させることで、裏面に前記多孔質シート材が接着一体化された前記サイド部下層部を成形するものである。
【0011】
本発明の製造方法であると、第1発泡体上にサイド部下層部を積層一体化する際に、第2上型に不織布等の多孔質シート材を取り付けておいて、該第2上型により閉じられた第2発泡空間内で第2発泡原料を発泡充填させるため、発泡空間内のガスを多孔質シート材内部で吸収し、又は該シート材を介して第2上型に設けたベント孔から成形型外に抜くことができる。そのため、下型と第1上型及び第2上型とのパーティングラインがサイド部における高さ方向の中間位置に設定されている場合であっても、即ち、成形時にサイド部においてパーティングラインよりも上方に突出する凸部を有する場合であっても、多孔質シート材の存在により該凸部における成形性を確保することができる。また、本発明では、前記サイド部下層部と第1発泡体との境界面が成形型により規定されるので、境界面における形状精度を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記シート用パッドは、前記サイド部下層部が前記メイン部及び前記サイド部上層部よりも硬度の高い発泡体からなる場合がある。このようにサイド部下層部をメイン部及びサイド部上層部よりも硬くすることにより、パッド表面全体でソフト感を保持しつつ着座者のホールド感にも優れるシート用パッドが得られる。また、この場合、サイド部のみの積層構造となっており、性能面やコスト面で設計自由度が向上する。
【0013】
また、このようにサイド部のみ積層構造とする場合、第1発泡体の成形時におけるサイド部上面に凹部を設けておけば、該凹部内に第2発泡原料を注入することができ、サイド部下層部の成形が容易となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1,2に示すように、本実施形態では、着座部であるメイン部2と、その左右両側において上方に隆起状に形成されたサイド部3,3とからなる自動車用シートのためのクッションパッド1について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、バックパッドや車両用以外の各種シート用パッドにも同様に適用できるものである。
【0016】
クッションパッド1は、サイド部3の下層部31と、その他の部分、即ちメイン部2及びサイド部3の上層部32とが、硬度の異なる軟質ポリウレタンフォームで形成され、両者が境界面11で積層一体化された積層構造のシート用パッドである。詳細には、左右のサイド下層部31,31のみがハード層とされ、メイン部2及びサイド上層部32,32がソフト層とされている。
【0017】
図1に示すパッド断面形状において、左右のサイド部3,3は、隆起した表面形状に対応して、その裏面形状が中央のメイン部2から一旦上方に陥没した後、下方に凸状に形成されており、従って、クッションパッド1はサイド部3,3において下方に突出する凸部33,33を備える。そして、サイド上層部32とサイド下層部31との境界面11は、サイド部3の表面形状に対応して上方に隆起状に設定され、パッド側面において高さ方向の中間位置、詳細には略中央にパーティングライン12が位置するように設けられている。従って、サイド部3はパーティングライン12よりも下方に突出する凸部33を備えて形成されている。
【0018】
パッド表面、即ちパッド上層部には着座安定溝が設けられている。着座安定溝は、メイン部2とその両側のサイド部3,3との境界を前後方向に延びる左右一対の縦溝41,41と、両者をその前後方向中央部で接続する左右方向に延びる横溝42とからなる平面視略H字状に形成されている。
【0019】
クッションパッド1の裏面、即ち下面には、不織布10が接着一体化されている。不織布10は、パッド1の裏面の略全体に配されているが、ハード層である左右のサイド下層部31,31の裏面との間でのみ接着一体化されており、中央のメイン部2の裏面との間では接着されていない。
【0020】
このクッションパッド1を成形する金型5は、図3〜5に示すように、パッド1の表面側を成形する凹状の下型6と、この下型6を開閉可能な2つの上型である第1上型7及び第2上型8とからなる。第1上型7と第2上型8は、下型6に対して不図示のヒンジ継手により開閉自在に取り付けられている。
【0021】
下型6は、メイン部2を成形するメイン成形部61と、その左右両側において下方に陥没してサイド部3,3を成形するサイド成形部62,62とからなる。下型6には、メイン成形部61とサイド成形部62との境界において、パッド表面に上記縦溝41を形成する左右一対の縦突条63,63が設けられ、また、左右の縦突条63,63を接続してパッド表面に上記横溝42を形成する不図示の横突条が設けられている。
【0022】
第1上型7は、メイン部2の裏面を成形するとともに、サイド部3において下層部31と上層部32との境界面11を規定する金型であり、中央のメイン成形部71と、その左右両側において下型6の形状に対応して下方に陥没したサイド成形部72,72とからなる。
【0023】
第2上型8は、左右のサイド下層部31,31の裏面側を成形する金型であり、左右両側部において下型6の形状に対応して下方に陥没したサイド成形部81,81を備える。サイド成形部81は、上記サイド部3の下方への凸部33を成形するために上方に凸状に形成されており、従って下型6と第1上型7及び第2上型8とのパーティングライン12よりも上方に突出した凸状部83を備える。
【0024】
第2上型8は、図4(b)に示すようにその内面の略全体にわたって上記不織布10が取り付けられるようになっており、例えば不織布10は不図示の掛止爪により第2上型8に対しその型面形状に沿った状態に掛止されるようになっている。また、第2上型8にはベント孔82が設けられている。ベント孔82は、後記の発泡空間52の上端部であって、メイン部2近傍の不織布10により覆われる箇所に設けられている。なお、不織布10は、サイド成形部81の上方への凸状部83の上端からその内側の陥没部84を経てメイン部2近傍のベント孔82に至るまでの領域の型面を少なくとも覆うように取り付けられることが好ましい。
【0025】
この金型5を用いてクッションパッド1を成形する際には、図3(a)に示すように、下型6の凹部、詳細には中央のメイン成形部61と左右のサイド成形部62,62のそれぞれに、ソフト層を形成するソフト発泡原料92をソフト用注入装置91を用いて注入する。その際、金型は50〜100℃の範囲内で加熱しておいてもよい。そして、注入後、図3(b)に示すように、第1上型7を閉じて、下型6との間にソフト層のための密閉された発泡空間51を形成し、この発泡空間51内でソフト発泡原料92を発泡充填させて、ソフト層からなるメイン部2及びサイド上層部32,32を成形する。その際、第1上型7の左右の陥没したサイド成形部72,72により、成形されたサイド上層部32の上面に凹部34が形成される。
【0026】
次いで、メイン部2及びサイド上層部32の発泡体のタックフリータイムの終了直前又は直後に第1上型7を開けて、図4(a)に示すように、成形されたサイド上層部32上に、詳細にはサイド上層部32の上記凹部34内に、ハード層を形成するハード発泡原料94をハード用注入装置93を用いて注入する。注入後、図4(b)に示すように、第2上型8を下型6に閉じて、サイド上層部32の上面と第2上型8との間にサイド下層部31を成形するための発泡空間52を形成する。その際、第2上型8には予め上記不織布10を取り付けておく。このようにして形成された発泡空間52内にハード発泡原料94が発泡充填され、図5(a)に示すようにハード層からなるサイド下層部31,31が成形されるので、その後、キュアし、更に図5(b)に示すように脱型することで、上記ソフト層とハード層とが積層一体化され、かつ、ハード層であるサイド下層部31の裏面に不織布10が接着一体化されたクッションパッド1が得られる。
【0027】
以上説明した本実施形態であると、サイド下層部31を積層一体化する際に第2上型8の型面に不織布10が取り付けられているため、発泡空間52内のガスが不織布10内部で吸収され、また不織布10を介してベント孔82から成形型5外に抜くこともできる。そのため、第2上型8のサイド成形部81がパーティングライン12よりも上方に突出する形状でありながら、その凸状部83上端部での成形性を確保することができる。また、サイド下層部31とその他の部分との境界面11が金型である第1金型7により規定されるので、境界面11における形状精度を確保することができる。
【0028】
また、得られたクッションパッド1は、メイン部2及びサイド上層部32が柔らかく、またサイド下層部31が硬く形成されているので、パッド表面全体でソフト感を保持しつつ乗員のホールド感にも優れる。
【0029】
なお、上記実施形態では不織布を使用したが、内部にガスを吸収保持することができ、また通気性を有する柔軟なシートであれば、例えば織布、編布等の繊維シートの他、連続気泡フォームからなるシートなど、各種の多孔質シート材を使用することができる。
【0030】
また、上記実施形態においては第2上型8にベント孔82を設けたが、ベント孔は必ずしも設けなくてもよく、不織布10内部にガスを逃がし、また、不織布10を介してメイン部2と第2上型8との間隙にガスを逃がすことにより、サイド部3の成形性を確保することもできる。
【0031】
更に、上記実施形態ではサイド部のみを積層構造としたが、本発明はサイド部を含む下層部の全面がハード層で形成されたシート用パッドにおいても適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくともサイド部において上層部と下層部との積層構造を持つシート用パッドを、サイド部における成形性を確保し、かつ、上層部と下層部との境界面における形状精度を確保しつつ製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態におけるクッションパッドの断面図であり、図2のI−I線断面図である。
【図2】同クッションパッドの平面図である。
【図3】(a)は下型へのソフト発泡原料注入時における断面図、(b)はその後第1上型を閉めた状態における断面図である。
【図4】(a)は下型へのハード発泡原料注入時における断面図、(b)はその後第2上型を閉めた状態における断面図である。
【図5】(a)はハード発泡原料の発泡充填時における断面図、(b)は脱型時の断面図である。
【符号の説明】
1……クッションパッド(シート用パッド)
2……メイン部
3……サイド部
31……サイド下層部
32……サイド上層部
34……サイド部の凹部
5……成形型
51,52……発泡空間
6……下型
7……第1上型
8……第2上型
10……不織布
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用や家具用のシートに用いられるシート用パッドの製造方法に関するものであり、特に、異硬度の発泡体を積層一体化してなるシート用パッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シート用パッドに優れた特性を付与するため、硬度の異なる発泡体を積層した構造を持つ積層構造のシート用パッドが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特公平3−60280号公報。
【0004】
【特許文献2】特開2002−200626号公報。
【0005】
上記特許文献1には、下型に2つの上型をそれぞれヒンジ継手にて開閉自在に設けて、まず、下型に第1発泡原料を注入し、第1上型を閉めて下型と第1上型との間で第1発泡原料を発泡充填させて上層部を形成し、次いで、この成形された上層部の上に第2発泡原料を注入し、第2上型を閉めて上層部と第2上型との間で第2発泡原料を発泡充填させて下層部を積層一体化する方法が記載されている。
【0006】
上記特許文献2には、下型の凹部に可撓性フィルムを開口部が形成されるように配置し、該開口部よりフィルムの内側に第1発泡原料を注入するとともに、開口部以外の箇所に第2発泡原料を注入し、次いで、下型と上型を閉じて、フィルムを境界層として第1発泡原料と第2発泡原料とを一体に発泡させることで、第1発泡原料からなる第1発泡体と第2発泡原料からなる第2発泡体との二層構造を有するシート用パッドの製造方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1の方法によれば、上層部と下層部との境界面を金型(第1上型)で規定しているので、該境界面における形状精度に優れたシート用パッドを得ることができる。しかしながら、特許文献1では、下層部の全面がハードフォームで構成されており、下層部の一部をその他の部分とは硬度の異なる発泡体で成形する方法については開示されていない。また、該特許文献1に記載された方法では、サイド部が上層部と下層部との境界面となるパーティングラインよりも下方に凸形状をなす場合に、この凸部に成形時、ガス溜まりが生じて欠肉やボイドの原因になり、サイド部の成形性を損なうという問題がある。
【0008】
一方、上記特許文献2の方法では、可撓性フィルムを境界層として第1発泡体と第2発泡体を積層一体化するものであるため、両発泡体の境界面の形状が安定せず、そのため、座り心地などシート用パッドとしての一定の品質を確保しにくいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、少なくともサイド部において上層部と下層部との積層構造を持つシート用パッドを、サイド部における成形性を確保し、かつ、上層部と下層部との境界面における形状精度を確保しつつ製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のシート用パッドの製造方法は、メイン部とその左右両側のサイド部を備えて該サイド部の下層部が上層部とは異硬度の発泡体からなるシート用パッドを、下型と第1上型と第2上型とを備える成形型を用いて製造する方法であって、前記下型の凹部内に第1発泡原料を注入し、前記第1上型を閉じて前記下型と第1上型との間に第1発泡空間を形成し、該第1発泡空間内で前記第1発泡原料を発泡充填させることで前記上層部を含む第1発泡体を成形し、次いで、前記第1上型を開けて、成形された前記第1発泡体上に第2発泡原料を注入し、多孔質シート材を内面に取り付けた前記第2上型を前記下型に閉じて前記第1発泡体の上面と第2上型との間に第2発泡空間を形成し、該第2発泡空間内で前記第2発泡原料を発泡充填させることで、裏面に前記多孔質シート材が接着一体化された前記サイド部下層部を成形するものである。
【0011】
本発明の製造方法であると、第1発泡体上にサイド部下層部を積層一体化する際に、第2上型に不織布等の多孔質シート材を取り付けておいて、該第2上型により閉じられた第2発泡空間内で第2発泡原料を発泡充填させるため、発泡空間内のガスを多孔質シート材内部で吸収し、又は該シート材を介して第2上型に設けたベント孔から成形型外に抜くことができる。そのため、下型と第1上型及び第2上型とのパーティングラインがサイド部における高さ方向の中間位置に設定されている場合であっても、即ち、成形時にサイド部においてパーティングラインよりも上方に突出する凸部を有する場合であっても、多孔質シート材の存在により該凸部における成形性を確保することができる。また、本発明では、前記サイド部下層部と第1発泡体との境界面が成形型により規定されるので、境界面における形状精度を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記シート用パッドは、前記サイド部下層部が前記メイン部及び前記サイド部上層部よりも硬度の高い発泡体からなる場合がある。このようにサイド部下層部をメイン部及びサイド部上層部よりも硬くすることにより、パッド表面全体でソフト感を保持しつつ着座者のホールド感にも優れるシート用パッドが得られる。また、この場合、サイド部のみの積層構造となっており、性能面やコスト面で設計自由度が向上する。
【0013】
また、このようにサイド部のみ積層構造とする場合、第1発泡体の成形時におけるサイド部上面に凹部を設けておけば、該凹部内に第2発泡原料を注入することができ、サイド部下層部の成形が容易となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1,2に示すように、本実施形態では、着座部であるメイン部2と、その左右両側において上方に隆起状に形成されたサイド部3,3とからなる自動車用シートのためのクッションパッド1について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、バックパッドや車両用以外の各種シート用パッドにも同様に適用できるものである。
【0016】
クッションパッド1は、サイド部3の下層部31と、その他の部分、即ちメイン部2及びサイド部3の上層部32とが、硬度の異なる軟質ポリウレタンフォームで形成され、両者が境界面11で積層一体化された積層構造のシート用パッドである。詳細には、左右のサイド下層部31,31のみがハード層とされ、メイン部2及びサイド上層部32,32がソフト層とされている。
【0017】
図1に示すパッド断面形状において、左右のサイド部3,3は、隆起した表面形状に対応して、その裏面形状が中央のメイン部2から一旦上方に陥没した後、下方に凸状に形成されており、従って、クッションパッド1はサイド部3,3において下方に突出する凸部33,33を備える。そして、サイド上層部32とサイド下層部31との境界面11は、サイド部3の表面形状に対応して上方に隆起状に設定され、パッド側面において高さ方向の中間位置、詳細には略中央にパーティングライン12が位置するように設けられている。従って、サイド部3はパーティングライン12よりも下方に突出する凸部33を備えて形成されている。
【0018】
パッド表面、即ちパッド上層部には着座安定溝が設けられている。着座安定溝は、メイン部2とその両側のサイド部3,3との境界を前後方向に延びる左右一対の縦溝41,41と、両者をその前後方向中央部で接続する左右方向に延びる横溝42とからなる平面視略H字状に形成されている。
【0019】
クッションパッド1の裏面、即ち下面には、不織布10が接着一体化されている。不織布10は、パッド1の裏面の略全体に配されているが、ハード層である左右のサイド下層部31,31の裏面との間でのみ接着一体化されており、中央のメイン部2の裏面との間では接着されていない。
【0020】
このクッションパッド1を成形する金型5は、図3〜5に示すように、パッド1の表面側を成形する凹状の下型6と、この下型6を開閉可能な2つの上型である第1上型7及び第2上型8とからなる。第1上型7と第2上型8は、下型6に対して不図示のヒンジ継手により開閉自在に取り付けられている。
【0021】
下型6は、メイン部2を成形するメイン成形部61と、その左右両側において下方に陥没してサイド部3,3を成形するサイド成形部62,62とからなる。下型6には、メイン成形部61とサイド成形部62との境界において、パッド表面に上記縦溝41を形成する左右一対の縦突条63,63が設けられ、また、左右の縦突条63,63を接続してパッド表面に上記横溝42を形成する不図示の横突条が設けられている。
【0022】
第1上型7は、メイン部2の裏面を成形するとともに、サイド部3において下層部31と上層部32との境界面11を規定する金型であり、中央のメイン成形部71と、その左右両側において下型6の形状に対応して下方に陥没したサイド成形部72,72とからなる。
【0023】
第2上型8は、左右のサイド下層部31,31の裏面側を成形する金型であり、左右両側部において下型6の形状に対応して下方に陥没したサイド成形部81,81を備える。サイド成形部81は、上記サイド部3の下方への凸部33を成形するために上方に凸状に形成されており、従って下型6と第1上型7及び第2上型8とのパーティングライン12よりも上方に突出した凸状部83を備える。
【0024】
第2上型8は、図4(b)に示すようにその内面の略全体にわたって上記不織布10が取り付けられるようになっており、例えば不織布10は不図示の掛止爪により第2上型8に対しその型面形状に沿った状態に掛止されるようになっている。また、第2上型8にはベント孔82が設けられている。ベント孔82は、後記の発泡空間52の上端部であって、メイン部2近傍の不織布10により覆われる箇所に設けられている。なお、不織布10は、サイド成形部81の上方への凸状部83の上端からその内側の陥没部84を経てメイン部2近傍のベント孔82に至るまでの領域の型面を少なくとも覆うように取り付けられることが好ましい。
【0025】
この金型5を用いてクッションパッド1を成形する際には、図3(a)に示すように、下型6の凹部、詳細には中央のメイン成形部61と左右のサイド成形部62,62のそれぞれに、ソフト層を形成するソフト発泡原料92をソフト用注入装置91を用いて注入する。その際、金型は50〜100℃の範囲内で加熱しておいてもよい。そして、注入後、図3(b)に示すように、第1上型7を閉じて、下型6との間にソフト層のための密閉された発泡空間51を形成し、この発泡空間51内でソフト発泡原料92を発泡充填させて、ソフト層からなるメイン部2及びサイド上層部32,32を成形する。その際、第1上型7の左右の陥没したサイド成形部72,72により、成形されたサイド上層部32の上面に凹部34が形成される。
【0026】
次いで、メイン部2及びサイド上層部32の発泡体のタックフリータイムの終了直前又は直後に第1上型7を開けて、図4(a)に示すように、成形されたサイド上層部32上に、詳細にはサイド上層部32の上記凹部34内に、ハード層を形成するハード発泡原料94をハード用注入装置93を用いて注入する。注入後、図4(b)に示すように、第2上型8を下型6に閉じて、サイド上層部32の上面と第2上型8との間にサイド下層部31を成形するための発泡空間52を形成する。その際、第2上型8には予め上記不織布10を取り付けておく。このようにして形成された発泡空間52内にハード発泡原料94が発泡充填され、図5(a)に示すようにハード層からなるサイド下層部31,31が成形されるので、その後、キュアし、更に図5(b)に示すように脱型することで、上記ソフト層とハード層とが積層一体化され、かつ、ハード層であるサイド下層部31の裏面に不織布10が接着一体化されたクッションパッド1が得られる。
【0027】
以上説明した本実施形態であると、サイド下層部31を積層一体化する際に第2上型8の型面に不織布10が取り付けられているため、発泡空間52内のガスが不織布10内部で吸収され、また不織布10を介してベント孔82から成形型5外に抜くこともできる。そのため、第2上型8のサイド成形部81がパーティングライン12よりも上方に突出する形状でありながら、その凸状部83上端部での成形性を確保することができる。また、サイド下層部31とその他の部分との境界面11が金型である第1金型7により規定されるので、境界面11における形状精度を確保することができる。
【0028】
また、得られたクッションパッド1は、メイン部2及びサイド上層部32が柔らかく、またサイド下層部31が硬く形成されているので、パッド表面全体でソフト感を保持しつつ乗員のホールド感にも優れる。
【0029】
なお、上記実施形態では不織布を使用したが、内部にガスを吸収保持することができ、また通気性を有する柔軟なシートであれば、例えば織布、編布等の繊維シートの他、連続気泡フォームからなるシートなど、各種の多孔質シート材を使用することができる。
【0030】
また、上記実施形態においては第2上型8にベント孔82を設けたが、ベント孔は必ずしも設けなくてもよく、不織布10内部にガスを逃がし、また、不織布10を介してメイン部2と第2上型8との間隙にガスを逃がすことにより、サイド部3の成形性を確保することもできる。
【0031】
更に、上記実施形態ではサイド部のみを積層構造としたが、本発明はサイド部を含む下層部の全面がハード層で形成されたシート用パッドにおいても適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくともサイド部において上層部と下層部との積層構造を持つシート用パッドを、サイド部における成形性を確保し、かつ、上層部と下層部との境界面における形状精度を確保しつつ製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態におけるクッションパッドの断面図であり、図2のI−I線断面図である。
【図2】同クッションパッドの平面図である。
【図3】(a)は下型へのソフト発泡原料注入時における断面図、(b)はその後第1上型を閉めた状態における断面図である。
【図4】(a)は下型へのハード発泡原料注入時における断面図、(b)はその後第2上型を閉めた状態における断面図である。
【図5】(a)はハード発泡原料の発泡充填時における断面図、(b)は脱型時の断面図である。
【符号の説明】
1……クッションパッド(シート用パッド)
2……メイン部
3……サイド部
31……サイド下層部
32……サイド上層部
34……サイド部の凹部
5……成形型
51,52……発泡空間
6……下型
7……第1上型
8……第2上型
10……不織布
Claims (4)
- メイン部とその左右両側のサイド部を備えて該サイド部の下層部が上層部とは異硬度の発泡体からなるシート用パッドを、下型と第1上型と第2上型とを備える成形型を用いて製造する方法であって、
前記下型の凹部内に第1発泡原料を注入し、前記第1上型を閉じて前記下型と第1上型との間に第1発泡空間を形成し、該第1発泡空間内で前記第1発泡原料を発泡充填させることで前記上層部を含む第1発泡体を成形し、
次いで、前記第1上型を開けて、成形された前記第1発泡体上に第2発泡原料を注入し、多孔質シート材を内面に取り付けた前記第2上型を前記下型に閉じて前記第1発泡体の上面と第2上型との間に第2発泡空間を形成し、該第2発泡空間内で前記第2発泡原料を発泡充填させることで、裏面に前記多孔質シート材が接着一体化された前記サイド部下層部を成形する
ことを特徴とするシート用パッドの製造方法。 - 前記シート用パッドは、前記サイド部下層部が前記メイン部及び前記サイド部上層部よりも硬度の高い発泡体からなる請求項1記載のシート用パッドの製造方法。
- 前記第1発泡体の成形時におけるサイド部上面に凹部を設けて、該凹部内に前記第2発泡原料を注入する請求項2記載のシート用パッドの製造方法。
- 前記多孔質シート材が不織布である請求項1記載のシート用パッドの製造方法。
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- 2002-11-25 JP JP2002341196A patent/JP2004174762A/ja not_active Withdrawn
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