JP2004171710A - 基材保持部材および光記録媒体製造装置 - Google Patents
基材保持部材および光記録媒体製造装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】装着用中心孔を介しての樹脂材料の漏洩を回避しつつ所望の厚みの光記録媒体を容易に製造でき、しかも光記録媒体の製造コストを低減する。
【解決手段】保持対象の基材に形成された装着用中心孔の内径よりもその外径が小径に形成されて光記録媒体製造装置におけるターンテーブルの中心部に配設され、かつ、上端部11および下端部12間が圧縮させられて中央部13が拡径するように弾性変形し、その際に周面3bが装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能に構成され、中央部13の内径が上端部11および下端部12の内径よりも大径に形成されて中央部13に薄肉部16が形成されると共に厚肉部14,15が形成され、圧縮機構によって圧縮させられることによって薄肉部16の周面が装着用中心孔の口縁に当接して装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能に構成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】保持対象の基材に形成された装着用中心孔の内径よりもその外径が小径に形成されて光記録媒体製造装置におけるターンテーブルの中心部に配設され、かつ、上端部11および下端部12間が圧縮させられて中央部13が拡径するように弾性変形し、その際に周面3bが装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能に構成され、中央部13の内径が上端部11および下端部12の内径よりも大径に形成されて中央部13に薄肉部16が形成されると共に厚肉部14,15が形成され、圧縮機構によって圧縮させられることによって薄肉部16の周面が装着用中心孔の口縁に当接して装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能に構成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮機構によって圧縮されることによって弾性変形して周面が装着用中心孔の口縁に当接させられることによって装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能な基材保持部材、およびその基材保持部材を備えて構成された光記録媒体製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の基材保持部材を備えた光記録媒体製造装置として、2枚のディスク(Da,Db)を保持して回転させることにより、両ディスク間のUV硬化樹脂接着剤(接着剤L)を延伸させる装置(以下、「光記録媒体製造装置」という)が特開2001−184740号公報に開示されている。この光記録媒体製造装置は、ディスク(Da)を吸着して保持する回転支持体(1)と、パイプ(2)を介して回転支持体の中心部に取り付けられた弾性保持部材(基材保持部材:3)とを備えて構成されている。この場合、弾性保持部材は、中空円筒形(バルーン形状)に形成されると共に、両ディスクの中心孔に挿通させられた状態で内部空間にエアーを供給されることにより、その周面が中心孔の口縁部に当接するように膨張させられて中心孔を閉塞しつつ両ディスクを保持する。
【0003】
この光記録媒体製造装置を用いて両ディスクを貼り合わせる際には、まず、貼り合わせ面を上向きにしてディスク(Da)を回転支持体に保持させる。この際には、給排気装置によって内部空間のエアーを排出することによって弾性保持部材を収縮させておく。次に、回転支持体を低速回転させると共に、ディスク(Da)の貼り合わせ面に接着剤を滴下する。次いで、貼り合わせ面を下向きにしてディスク(Db)をディスク(Da)上に重ね合わせる。続いて、弾性保持部材にエアーを供給することによって膨張させて両ディスクの中心孔を閉塞させて、両ディスクを保持させる。次に、回転支持体を高速回転させることにより、両ディスクの外周部に向けて接着剤を延伸させる。この際には、両ディスク間の接着剤が中央部から外周部に向けて移動するのに伴い、ディスク(Db)がディスク(Da)に向けて徐々に下降する。この後、両ディスク間の接着剤に紫外線を照射して硬化させることにより、両ディスクの貼り合わせが完了する。
【0004】
一方、出願人は、2枚のディスク(基材DおよびスタンパS)間に樹脂材料(上記の例における接着剤)を延伸させる光記録媒体製造装置として、図12に示す製造装置31を開発している。この製造装置31は、グルーブやランド等の凹凸形状を有する樹脂層を基材D上に形成するための装置であって、基材Dを載置可能に構成されたターンテーブル2と、ターンテーブル2に基材DおよびスタンパSを保持させるための保持部材33とを備えて構成されている。この場合、保持部材33は、シリコーンゴムなどの弾性材料によって、その外径が基材DやスタンパSの装着用中心孔Hの内径(一例として15mm)よりも僅かに小径(一例として14.7mm)の円筒状に形成されている。また、保持部材33は、その中心孔33aに挿通されたプレッシャピン4が押し下げられて筒長方向に圧縮させられることで筒長方向における中央部の外径が拡径するように弾性変形する。したがって、前述した光記録媒体製造装置における中空円筒形の弾性保持部材とは異なり、給排気装置等の複雑な機構を不要としつつ、装着用中心孔Hを閉塞して基材DやスタンパSを保持することが可能となっている。
【0005】
この製造装置31を用いて基材D上に樹脂層を形成する際には、図13に示すように、まず、表面Daを上向きにして、かつ装着用中心孔Hに保持部材33が挿通するようにしてターンテーブル2の上に基材Dを載置する。この際には、保持部材33が非圧縮状態のため、基材Dにおける装着用中心孔Hの口縁部と保持部材33の周面33bとの間に隙間が形成されている。次に、図14に示すように、プレッシャピン4を押し下げることにより、プレッシャピン4の鍔部4aとターンテーブル2における凹部2aの底面とで保持部材33を挟み込むようにして圧縮する。この際には、圧縮によって保持部材33の中央部が外側に向かって押し出されるようにして弾性変形し、その周面33bが基材Dの装着用中心孔Hにおける口縁部に当接させられる。この結果、弾性変形した保持部材33によって装着用中心孔Hが閉塞して基材Dがターンテーブル2に保持される。また、保持部材33は、その中央部の周面33bが装着用中心孔Hの口縁部に当接することによって、当接部位が括れた瓢箪形に変形する。次いで、ターンテーブル2を低速回転させつつ、基材Dの表面Daにおける中央部(保持部材33の近傍)に樹脂層形成用の樹脂R(図15参照)を滴下する。この際に、保持部材33の弾性変形に伴って、その周面33bが装着用中心孔Hの口縁部に強く押し付けられているため、表面Daに滴下された樹脂Rが装着用中心孔Hを通過して基材Dの裏面側に漏洩する事態が回避される。
【0006】
次に、図15に示すように、ターンテーブル2上の基材DにスタンパSを覆い被せる。この際に、グルーブやランドを形成するための凹凸パターンが形成された裏面Saを下向きにすると共に装着用中心孔Hの口縁部に保持部材33の上端部が線的接触するようにスタンパSを覆い被せる。次いで、この状態のターンテーブル2を高速回転させることにより、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rを外周部に向けて延伸させる。この際に、図16に示すように、樹脂Rが外周部に向けて移動するのに伴ってスタンパSが基材Dに向けて下降する。この場合、保持部材33が弾性変形してその外径が拡がっているため、スタンパSは、装着用中心孔Hの口縁部を保持部材33の周面33bに擦り付けるようにして下降する。この結果、スタンパSの装着用中心孔Hを介しての表面側への樹脂Rの漏洩が回避される。続いて、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rに例えば紫外線を照射して硬化させることによって樹脂層を形成した後に、プレッシャピン4をターンテーブル2から引き上げる。この際には、プレッシャピン4による圧縮が解除されて保持部材33が円筒形状態に復帰する結果、保持部材33の周面33bと基材DおよびスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部との間に隙間が形成されて、基材DおよびスタンパSに対する保持が解除される。この後、基材D、樹脂層およびスタンパSの積層体をターンテーブル2から取り外すと共に、樹脂層からスタンパSを剥離する。これにより、基材D上への樹脂層の形成が完了する。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−184740号公報(第3−4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、出願人が開発した製造装置31には、以下の改善すべき課題がある。すなわち、この製造装置31では、筒長方向に圧縮されて弾性変形した保持部材33の周囲に樹脂Rを滴下すると共に、この状態の保持部材33が装着用中心孔Hを挿通するようにスタンパSを覆い被せた後に樹脂Rを延伸させている。この場合、樹脂Rの延伸に伴ってスタンパSが下降する際に、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の角部が保持部材33の周面33bに強く押し付けられる。したがって、その口縁部と保持部材33の周面33bとの間からの樹脂Rの漏洩が回避されるものの、角部が強く押し付けられることに起因して周面33bが傷付くことがある。この場合、周面33bが傷付いた保持部材33を使用し続けた際には、樹脂RがスタンパSの表面側に漏洩したり、スタンパSのスムーズな下降が妨げられることに起因して樹脂層を所望の厚みに形成するのが困難となったりする。このため、この製造装置31には、保持部材33が大きく傷付くのに先立って短期間で早めに交換する必要があり、これに起因して光記録媒体の製造コストの低減が困難となっているという課題がある。
【0009】
また、製造装置31によって使用されている保持部材33は、非圧縮状態における外径が装着用中心孔Hの内径よりも僅かに小径に規定され、プレッシャピン4によって圧縮した際には、保持部材33の外径が装着用中心孔Hの内径よりも大径となる。このため、その大径化した保持部材33が装着用中心孔Hを挿通するようにスタンパSを基材Dに覆い被せるのが非常に難しい作業となっている。したがって、例えばスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部が保持部材33の上端面に引っ掛かった状態で樹脂Rが延伸されるおそれがあり、このような場合には、保持部材33によってスタンパSの下降が妨げられる結果、所望の厚みの樹脂層の形成が困難となるという課題がある。この場合、保持部材33を小径化することで、圧縮状態における保持部材33が装着用中心孔Hを容易に挿通可能となる。しかし、このような構成を採用した場合、装着用中心孔Hの口縁部と保持部材33の周面33bとの間に隙間が形成されて、その隙間からスタンパSの表面側に樹脂Rが漏洩するおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる改善すべき点に鑑みてなされたものであり、装着用中心孔を介しての樹脂材料の漏洩を回避しつつ所望の厚みの光記録媒体を容易に製造でき、しかも光記録媒体の製造コストを低減し得る基材保持部材および光記録媒体製造装置を提供することを主目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る基材保持部材は、保持対象の基材に形成された装着用中心孔の内径よりもその外径が小径の円筒状に形成されて光記録媒体製造装置におけるターンテーブルの中心部に配設され、かつ、その筒長方向の上端部および下端部間が圧縮機構によって圧縮させられることによって当該筒長方向の中央部における外径が拡径するように弾性変形し、その際に当該中央部の周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成された基材保持部材であって、前記中央部の内径が前記上端部および前記下端部の内径よりも大径に形成されて当該中央部に第1の薄肉部が形成されると共に当該上端部側および当該下端部側に上端側厚肉部および下端側厚肉部が形成され、前記圧縮機構によって圧縮させられることによって前記第1の薄肉部の前記周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成されている。
【0012】
この場合、その外径が前記上端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成するのが好ましい。
【0013】
また、その外径が前記下端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成するのが好ましい。
【0014】
さらに、その下端側の内径が前記上端部側から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように前記上端側厚肉部を形成するのが好ましい。
【0015】
また、前記筒長方向の高さが前記下端側厚肉部の高さよりも低くなるように前記上端側厚肉部を形成するのが好ましい。
【0016】
さらに、前記第1の薄肉部と前記下端側厚肉部との間にその内径が当該第1の薄肉部の内径よりも大径の第2の薄肉部を形成してもよい。
【0017】
また、本発明に係る光記録媒体製造装置は、上記に記載の基材保持部材と、前記基材を載置可能にその上面が平坦に形成された前記ターンテーブルと、前記基材保持部材を前記筒長方向に圧縮する前記圧縮機構と、前記ターンテーブルを回転させる回転機構とを備えて構成されている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る基材保持部材を備えた光記録媒体製造装置の好適な発明の実施の形態について説明する。
【0019】
最初に、本発明における光記録媒体製造装置に相当する製造装置1の構成について、図面を参照して説明する。
【0020】
製造装置1は、図1に示すように、ターンテーブル2、基材保持部材(以下、「保持部材」ともいう)3、プレッシャピン4および係止機構5を備えて構成されている。また、製造装置1は、基材Dの上に樹脂R(図6参照)を滴下する滴下装置と、ターンテーブル2を回転させるための回転機構と、滴下装置および回転機構を駆動させる制御部と(いずれも図示せず)を備えている。この場合、基材(第1の基材)Dは、例えばポリカーボネイトによって円板状に形成されている。また、基材Dには、その中心部に内径15mmの装着用中心孔Hが形成されると共に、その表面Daには、射出成形時にグルーブやランド等の凹凸パターンが形成されている。一方、スタンパ(第2の基材)Sは、例えばポリカーボネイトによって円板状に形成されている。また、スタンパSには、その中心部に内径15mmの装着用中心孔Hが形成されると共に、その裏面Saには、基材D上に形成する樹脂層にグルーブやランド等を形成するための凹凸パターンが形成されている。
【0021】
ターンテーブル2は、基材Dを載置可能に上面が平坦に形成されて回転機構に取り付けられている。また、ターンテーブル2の中心部には、保持部材3を取り付けるための凹部2aと、プレッシャピン4を挿入可能な挿入孔2bとが形成されている。さらに、ターンテーブル2には、プレッシャピン4の上下動を規制するための係止機構5が取り付けられている。この係止機構5は、いわゆるボールプランジャであって、コイルスプリング5aによって矢印Aの向きに付勢されることによってその一部分が挿入孔2b内に突出させられてプレッシャピン4を係止するボール5bを備えて構成されている。
【0022】
保持部材3は、図2に示すように、例えばシリコーンゴム等の弾性材料によって円筒状に成形されている。この場合、図3に示すように、保持部材3は、その外径R1が一例として基材Dの装着用中心孔Hよりも僅かに小径の14.7mmに規定されている。また、保持部材3は、その上端部11および下端部12の外径R2,R2が11mmに規定されて、その周面3bの外径が上端部11から中央部(薄肉部)13にかけて徐々に大径となり、かつ下端部12から中央部13にかけて徐々に大径となるようにそれぞれテーパ状に形成されている。さらに、保持部材3の中心孔3aは、中央部13の内径R4が上端部11側および下端部12側の内径R3,R3よりも大径に形成されている。具体的には、一例として、上端部11側および下端部12側の内径R3,R3は、例えば、プレッシャピン4の外径に合わせて8mmに規定され、中央部13の内径R4は、上端部11側および下端部12側の内径R3よりも3mm大径の11mmに規定されている。これにより、本発明における上端側厚肉部に相当する厚肉部14と、本発明における下端側厚肉部に相当する厚肉部15と、本発明における第1の薄肉部に相当してその厚みが約1.85mmの薄肉部16とが構成されている。この場合、厚肉部14における下端部側(薄肉部16側)の内面は、中心孔3aの内径が上端部11側から薄肉部16にかけて徐々に大径となるようにテーパ状に形成されている。
【0023】
プレッシャピン4は、本発明における圧縮機構に相当し、図1に示すように、ターンテーブル2と相俟って保持部材3を圧縮するための鍔部4aと、プレッシャピン4の押し下げおよび引き上げ用の把持部4bとが円柱状の本体部に一体的に形成されている。また、本体部の周面には、係止機構5のボール5bが係合することによってプレッシャピン4をターンテーブル2に係止するための係止用溝4c,4dが形成されている。この場合、ボール5bが係止用溝4cに係合している状態(図1に示す状態)では,保持部材3の上端部11と鍔部4aとの間に隙間が形成されて保持部材3が非圧縮状態となる。一方、ボール5bが係止用溝4dに係合している状態(図5に示す状態)では,ターンテーブル2における凹部2aの底面と鍔部4aの下面とが保持部材3の全長よりも接近して保持部材3が圧縮された状態となる。
【0024】
次に、製造装置1を用いて基材D上に樹脂層を形成する光記録媒体の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0025】
まず、図4に示すように、表面Daを上向きにし、かつ装着用中心孔Hに保持部材3が挿通するようにしてターンテーブル2の上に基材Dを載置する。この際には、プレッシャピン4を引き上げた状態(ボール5bが係止用溝4cに係合した状態)とすることで保持部材3を非圧縮状態にしておく。これにより、装着用中心孔Hの口縁部と保持部材3の周面3bとの間に隙間が形成されるため、ターンテーブル2上に基材Dを容易に載置することができる。次に、図5に示すように、把持部4bを押圧してプレッシャピン4を押し下げることにより、プレッシャピン4の鍔部4aとターンテーブル2における凹部2aの底面とで保持部材3を挟み込むようにして圧縮する。
【0026】
この際に、保持部材3の厚肉部14は、その内面(中心孔3aを形成する内壁面)がプレッシャピン4の本体部に接触させられているため、内向きへの変形が阻止されている。また、厚肉部14は、前述したように、その周面3bが上端部11から下方にかけて外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されているため、プレッシャピン4によって上端部11に加えられた力が外向きに拡がるように作用する。したがって、厚肉部14は、プレッシャピン4を介して加えられた押圧力によって、その下端部側(薄肉部16側)が外向きに押し出されるように(大径化するように)変形する。一方、厚肉部15は、その内面がプレッシャピン4の本体部に接触しているため、厚肉部14と同様にして、内向きへの変形が阻止されている。また、厚肉部15は、その周面3bが下端部12から薄肉部16にかけて外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されているため、プレッシャピン4によって加えられた力が外向きに拡がるように作用する。したがって、厚肉部15は、その上端部側(薄肉部16側)が外向きに押し出されるように(大径化するように)変形する。このため、保持部材3は、厚肉部14,15が大径化するのに伴って薄肉部16が大径化するように弾性変形する。この結果、薄肉部16の周面3bが基材Dの装着用中心孔Hにおける口縁部に当接させられる。これにより、保持部材3の薄肉部16によって装着用中心孔Hが閉塞されて基材Dがターンテーブル2に保持される。
【0027】
次いで、回転機構を駆動させてターンテーブル2を低速回転させつつ、図6に示すように、滴下装置によって基材Dの表面Daにおける中央部(保持部材3の近傍)に樹脂層形成用の樹脂Rを滴下する。この際に、保持部材3の周面3bが基材Dにおける装着用中心孔Hの口縁部に強く押し付けられると共に基材Dとの当接部位の上方および下方において外向きに突出する膨らみがそれぞれ形成されているため、滴下した樹脂Rが基材Dの装着用中心孔Hを介して裏面側に漏洩する事態を確実に回避することができる。続いて、図7に示すように、裏面Saを下向きにしてスタンパSを基材Dに覆い被せる。この際には、保持部材3が装着用中心孔Hに挿入されるようにスタンパSを覆い被せる。この場合、保持部材3の上端部11の外径R2が11mm程度に形成されているため、装着用中心孔Hに保持部材3を容易に挿通させることができる。また、保持部材3の上端部11側がテーパ状に形成されると共に圧縮に伴って厚肉部14の下端部側が大径化するように変形しているため、スタンパSは、下降する際に、保持部材3によって案内されてターンテーブル2の中心(すなわち、基材Dと同心)に位置決めされる。
【0028】
次に、この状態のターンテーブル2を高速回転させることにより、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rを外周部に向けて延伸させる。この際には、図8に示すように、樹脂Rが外周部に向けて移動するのに伴ってスタンパSが基材Dに向けて下降する。この際に、保持部材3が弾性変形して薄肉部16の外径R1が装着用中心孔Hの内径よりも拡がっているため、スタンパSは、装着用中心孔Hの口縁部を保持部材3の周面3bに擦り付けるようにして下降する。この場合、保持部材3における薄肉部16の厚みが1.85mmと薄厚のため、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の当接部位が内向きに変形する。また、スタンパSがある程度下降した際には、保持部材3におけるスタンパSとの当接部位の上方および下方において外向きに突出する膨らみが形成される。この結果、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の角部が保持部材3の周面3bに必要以上に強く押し当てられるのを回避しつつ、スタンパSの上下に形成される膨らみによって装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を回避することができる。また、従来の保持部材33とは異なり、薄肉部16が内向きに容易に変形するため、下降を妨げる力がスタンパSに殆ど作用しない結果、スタンパSがスムーズに下降する。したがって、図9に示すように、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rが所望の厚みとなるように延伸される。
【0029】
続いて、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rに例えば紫外線を照射することによって硬化させた後に、プレッシャピン4を引き上げる。この際には、プレッシャピン4による圧縮が解除されることによって保持部材3が図3に示す状態(円筒形状態)に復帰する。したがって、保持部材3の周面3bと基材DおよびスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部との間に隙間が形成されて、基材D、樹脂層およびスタンパSからなる積層体の保持が解除される。この後、積層体をターンテーブル2から取り外すと共に基材D上に形成された樹脂層からスタンパSを剥離する。これにより、基材D上への樹脂層の形成が完了する。
【0030】
このように、この製造装置1によれば、その中央部13の内径R4を上端部11および下端部12の内径R3,R3よりも大径に形成して中央部13に薄肉部16を形成すると共に上端部11側および下端部12側に厚肉部14,15を形成した保持部材3を備えたことにより、スタンパSの下降に伴って薄肉部16が内向きに容易に変形してその周面3bにスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部が必要以上に強く押し当てられるのを回避することができる。このため、装着用中心孔Hの口縁部の角部によって保持部材3の周面3bが傷付けられるのを十分に回避することができる。この結果、保持部材3を長期間に亘って繰り返して使用することができるため、光記録媒体の製造コストを低減することができる。また、薄肉部16が内向きに容易に変形することで下降を妨げる力がスタンパSに殆ど作用しないため、スタンパSがスムーズに下降する結果、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。
【0031】
また、この製造装置1によれば、その外径が上端部11から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を備えたことにより、装着用中心孔Hに保持部材3を容易に挿通させることができる。この結果、スタンパSが上端部11に引っ掛かった状態で樹脂Rを延伸させてしまう事故を確実に回避することができる。このため、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。また、プレッシャピン4によって保持部材3を圧縮した際に、その力が厚肉部14の下端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、薄肉部16の上端部側が外向きに押し出される結果、基材DやスタンパSとの当接部位の上方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0032】
さらに、この製造装置1によれば、その外径が下端部12から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を備えたことにより、プレッシャピン4によって保持部材3を圧縮した際に、その力が厚肉部15の上端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、薄肉部16の下端部側が外向きに押し出される結果、基材Dとの当接部位の下方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0033】
また、この製造装置1によれば、その下端側の内径を上端部11側から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように厚肉部14を形成した保持部材3を備えたことにより、薄肉部16の上端部側が確実に外向きに押し出される結果、装着用中心孔Hを介してのスタンパSの上面側への樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限らず、適宜変更が可能である。例えば、本発明の実施の形態では、厚肉部14の内径が薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を例に挙げて説明したが、本発明における基材保持部材の構成はこれに限定さず、図3に破線で示すように、中心孔3aの内壁面が厚肉部14Aから薄肉部16Aにかけて階段状となるように保持部材23を構成することができる。この場合、同図に示す保持部材23のように、厚肉部14Aの高さH1が厚肉部15の高さH2よりも低くなるように形成することにより、この保持部材23を圧縮した際には、圧縮する力が厚肉部14Aの下端部を外向きに押し出す方向に作用し易くなるため、その外径が大径化するように薄肉部16Aを確実に変形させることができる。したがって、装着用中心孔Hを介してのスタンパSの上面側への樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0035】
また、図10に示す保持部材23Aのように、薄肉部16と厚肉部15との間にその内径R5が薄肉部16の内径R4よりも大径の薄肉部17(本発明における第2の薄肉部)を形成する構成を採用することもできる。この保持部材23Aによれば、薄肉部16よりも薄肉に形成されている分だけ薄肉部17が外向きに変形し易いため、図11に示すように、基材Dを保持した際に基材Dの裏面側に大きな膨らみを形成することができる。したがって、装着用中心孔Hを介しての基材Dの裏面側への樹脂Rの漏洩をより確実に回避することができる。
【0036】
さらに、本発明の実施の形態では、基材Dと、基材D上に樹脂層を形成するためのスタンパSとを保持部材3によって保持する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば両面2層タイプの光記録媒体の製造に際して貼り合わせる2枚の基材D,Dを保持部材3によって保持することもできる。また、基材Dは円板状に限らず、各種形状の基材を用いることができる。さらに、本発明の実施の形態では、シリコーンゴム製の保持部材3を採用した例を説明したが、本発明における基材保持部材は、これに限定されず、樹脂Rの剥離性に優れ、かつ弾性変形可能な素材である限り、各種ゴムをはじめとしてフッ素系材料やポリオレフィンなどの各種素材で構成することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における中央部の内径を上端部および下端部の内径よりも大径に形成して中央部に第1の薄肉部を形成すると共に上端部側および下端部側に上端側厚肉部および下端側厚肉部を形成したことにより、基材の下降に伴って第1の薄肉部が内向きに容易に変形してその周面に基材における装着用中心孔の口縁部が必要以上に強く押し当てられるのを回避することができる。このため、装着用中心孔の口縁部の角部によって基材保持部材の周面が傷付けられるのを十分に回避することができる。この結果、基材保持部材を長期間に亘って繰り返して使用することができるため、光記録媒体の製造コストを低減することができる。また、第1の薄肉部が内向きに容易に変形することで下降を妨げる力が基材に殆ど作用しないため、基材がスムーズに下降する結果、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。
【0038】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材の外径が上端部から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成したことにより、装着用中心孔に基材保持部材を容易に挿通させることができる。この結果、例えばスタンパなどの基材が上端部に引っ掛かった状態で樹脂を延伸させてしまう事故を確実に回避することができる。このため、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。また、圧縮機構によって基材保持部材を圧縮した際に、その力が上端側厚肉部の下端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、第1の薄肉部の上端部側が外向きに押し出される結果、基材との当接部位の上方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材の外径が下端部から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成したことにより、圧縮機構によって基材保持部材を圧縮した際に、その力が下端側厚肉部の上端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、第1の薄肉部の下端部側が外向きに押し出される結果、基材との当接部位の下方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0040】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における下端側の内径を上端部側から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように上端側厚肉部を形成したことにより、第1の薄肉部の上端部側が確実に外向きに押し出される結果、装着用中心孔を介しての例えばスタンパなどの基材の上面側への樹脂の漏洩をより確実に防止することができる。
【0041】
さらに、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における筒長方向の高さが下端側厚肉部よりも低くなるように上端側厚肉部を形成したことにより、基材保持部材を圧縮する力が上端側厚肉部の下端部を外向きに押し出す方向に作用し易くなるため、その外径が大径化するように第1の薄肉部を確実に変形させることができる。したがって、装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0042】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における第1の薄肉部と下端側厚肉部との間に第1の薄肉部の内径よりも大径の第2の薄肉部を形成したことにより、第1の薄肉部よりも薄肉に形成されている分だけ第2の薄肉部が外向きに変形し易いため、基材を保持した際に基材の裏面側に大きな膨らみを形成することができる。したがって、装着用中心孔を介しての基材の裏面側への樹脂の漏洩をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造装置1のターンテーブル2、保持部材3、プレッシャピン4、係止機構5、並びに保持対象の基材DおよびスタンパSの断面図である。
【図2】保持部材3の外観斜視図である。
【図3】保持部材3および本発明の他の実施の形態に係る保持部材23の断面図である。
【図4】ターンテーブル2上に基材Dを載置した状態の断面図である。
【図5】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材3を弾性変形させた状態の断面図である。
【図6】基材Dの表面Daに樹脂Rを滴下した状態の断面図である。
【図7】図6の状態の基材D上にスタンパSを覆い被せた状態の断面図である。
【図8】図7に示す状態のスタンパSが樹脂Rの移動に伴って下降した状態の断面図である。
【図9】図8に示す状態のスタンパSがさらに下降した状態の断面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る保持部材23Aの断面図である。
【図11】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材23Aを弾性変形させた状態の断面図である。
【図12】出願人が開発している製造装置31のターンテーブル2、保持部材33、プレッシャピン4、係止機構5、並びに保持対象の基材DおよびスタンパSの断面図である。
【図13】ターンテーブル2上に基材Dを載置した状態の断面図である。
【図14】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材33を弾性変形させた状態の断面図である。
【図15】樹脂Rの滴下が完了した基材D上にスタンパSを覆い被せた状態の断面図である。
【図16】図15に示す状態のスタンパSが樹脂Rの移動に伴って下降した状態の断面図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 ターンテーブル
3,23,23A 保持部材
3a 中心孔
3b 周面
4 プレッシャピン
5 係止機構
11 上端部
12 下端部
13 中央部
14,14A,15 厚肉部
16,16A,17 薄肉部
D 基材
Da 表面
H 装着用中心孔
H1,H2 高さ
R 樹脂
R1,R2 外径
R3,R4,R5 内径
S スタンパ
Sa 裏面
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮機構によって圧縮されることによって弾性変形して周面が装着用中心孔の口縁に当接させられることによって装着用中心孔を閉塞して基材を保持可能な基材保持部材、およびその基材保持部材を備えて構成された光記録媒体製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の基材保持部材を備えた光記録媒体製造装置として、2枚のディスク(Da,Db)を保持して回転させることにより、両ディスク間のUV硬化樹脂接着剤(接着剤L)を延伸させる装置(以下、「光記録媒体製造装置」という)が特開2001−184740号公報に開示されている。この光記録媒体製造装置は、ディスク(Da)を吸着して保持する回転支持体(1)と、パイプ(2)を介して回転支持体の中心部に取り付けられた弾性保持部材(基材保持部材:3)とを備えて構成されている。この場合、弾性保持部材は、中空円筒形(バルーン形状)に形成されると共に、両ディスクの中心孔に挿通させられた状態で内部空間にエアーを供給されることにより、その周面が中心孔の口縁部に当接するように膨張させられて中心孔を閉塞しつつ両ディスクを保持する。
【0003】
この光記録媒体製造装置を用いて両ディスクを貼り合わせる際には、まず、貼り合わせ面を上向きにしてディスク(Da)を回転支持体に保持させる。この際には、給排気装置によって内部空間のエアーを排出することによって弾性保持部材を収縮させておく。次に、回転支持体を低速回転させると共に、ディスク(Da)の貼り合わせ面に接着剤を滴下する。次いで、貼り合わせ面を下向きにしてディスク(Db)をディスク(Da)上に重ね合わせる。続いて、弾性保持部材にエアーを供給することによって膨張させて両ディスクの中心孔を閉塞させて、両ディスクを保持させる。次に、回転支持体を高速回転させることにより、両ディスクの外周部に向けて接着剤を延伸させる。この際には、両ディスク間の接着剤が中央部から外周部に向けて移動するのに伴い、ディスク(Db)がディスク(Da)に向けて徐々に下降する。この後、両ディスク間の接着剤に紫外線を照射して硬化させることにより、両ディスクの貼り合わせが完了する。
【0004】
一方、出願人は、2枚のディスク(基材DおよびスタンパS)間に樹脂材料(上記の例における接着剤)を延伸させる光記録媒体製造装置として、図12に示す製造装置31を開発している。この製造装置31は、グルーブやランド等の凹凸形状を有する樹脂層を基材D上に形成するための装置であって、基材Dを載置可能に構成されたターンテーブル2と、ターンテーブル2に基材DおよびスタンパSを保持させるための保持部材33とを備えて構成されている。この場合、保持部材33は、シリコーンゴムなどの弾性材料によって、その外径が基材DやスタンパSの装着用中心孔Hの内径(一例として15mm)よりも僅かに小径(一例として14.7mm)の円筒状に形成されている。また、保持部材33は、その中心孔33aに挿通されたプレッシャピン4が押し下げられて筒長方向に圧縮させられることで筒長方向における中央部の外径が拡径するように弾性変形する。したがって、前述した光記録媒体製造装置における中空円筒形の弾性保持部材とは異なり、給排気装置等の複雑な機構を不要としつつ、装着用中心孔Hを閉塞して基材DやスタンパSを保持することが可能となっている。
【0005】
この製造装置31を用いて基材D上に樹脂層を形成する際には、図13に示すように、まず、表面Daを上向きにして、かつ装着用中心孔Hに保持部材33が挿通するようにしてターンテーブル2の上に基材Dを載置する。この際には、保持部材33が非圧縮状態のため、基材Dにおける装着用中心孔Hの口縁部と保持部材33の周面33bとの間に隙間が形成されている。次に、図14に示すように、プレッシャピン4を押し下げることにより、プレッシャピン4の鍔部4aとターンテーブル2における凹部2aの底面とで保持部材33を挟み込むようにして圧縮する。この際には、圧縮によって保持部材33の中央部が外側に向かって押し出されるようにして弾性変形し、その周面33bが基材Dの装着用中心孔Hにおける口縁部に当接させられる。この結果、弾性変形した保持部材33によって装着用中心孔Hが閉塞して基材Dがターンテーブル2に保持される。また、保持部材33は、その中央部の周面33bが装着用中心孔Hの口縁部に当接することによって、当接部位が括れた瓢箪形に変形する。次いで、ターンテーブル2を低速回転させつつ、基材Dの表面Daにおける中央部(保持部材33の近傍)に樹脂層形成用の樹脂R(図15参照)を滴下する。この際に、保持部材33の弾性変形に伴って、その周面33bが装着用中心孔Hの口縁部に強く押し付けられているため、表面Daに滴下された樹脂Rが装着用中心孔Hを通過して基材Dの裏面側に漏洩する事態が回避される。
【0006】
次に、図15に示すように、ターンテーブル2上の基材DにスタンパSを覆い被せる。この際に、グルーブやランドを形成するための凹凸パターンが形成された裏面Saを下向きにすると共に装着用中心孔Hの口縁部に保持部材33の上端部が線的接触するようにスタンパSを覆い被せる。次いで、この状態のターンテーブル2を高速回転させることにより、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rを外周部に向けて延伸させる。この際に、図16に示すように、樹脂Rが外周部に向けて移動するのに伴ってスタンパSが基材Dに向けて下降する。この場合、保持部材33が弾性変形してその外径が拡がっているため、スタンパSは、装着用中心孔Hの口縁部を保持部材33の周面33bに擦り付けるようにして下降する。この結果、スタンパSの装着用中心孔Hを介しての表面側への樹脂Rの漏洩が回避される。続いて、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rに例えば紫外線を照射して硬化させることによって樹脂層を形成した後に、プレッシャピン4をターンテーブル2から引き上げる。この際には、プレッシャピン4による圧縮が解除されて保持部材33が円筒形状態に復帰する結果、保持部材33の周面33bと基材DおよびスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部との間に隙間が形成されて、基材DおよびスタンパSに対する保持が解除される。この後、基材D、樹脂層およびスタンパSの積層体をターンテーブル2から取り外すと共に、樹脂層からスタンパSを剥離する。これにより、基材D上への樹脂層の形成が完了する。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−184740号公報(第3−4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、出願人が開発した製造装置31には、以下の改善すべき課題がある。すなわち、この製造装置31では、筒長方向に圧縮されて弾性変形した保持部材33の周囲に樹脂Rを滴下すると共に、この状態の保持部材33が装着用中心孔Hを挿通するようにスタンパSを覆い被せた後に樹脂Rを延伸させている。この場合、樹脂Rの延伸に伴ってスタンパSが下降する際に、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の角部が保持部材33の周面33bに強く押し付けられる。したがって、その口縁部と保持部材33の周面33bとの間からの樹脂Rの漏洩が回避されるものの、角部が強く押し付けられることに起因して周面33bが傷付くことがある。この場合、周面33bが傷付いた保持部材33を使用し続けた際には、樹脂RがスタンパSの表面側に漏洩したり、スタンパSのスムーズな下降が妨げられることに起因して樹脂層を所望の厚みに形成するのが困難となったりする。このため、この製造装置31には、保持部材33が大きく傷付くのに先立って短期間で早めに交換する必要があり、これに起因して光記録媒体の製造コストの低減が困難となっているという課題がある。
【0009】
また、製造装置31によって使用されている保持部材33は、非圧縮状態における外径が装着用中心孔Hの内径よりも僅かに小径に規定され、プレッシャピン4によって圧縮した際には、保持部材33の外径が装着用中心孔Hの内径よりも大径となる。このため、その大径化した保持部材33が装着用中心孔Hを挿通するようにスタンパSを基材Dに覆い被せるのが非常に難しい作業となっている。したがって、例えばスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部が保持部材33の上端面に引っ掛かった状態で樹脂Rが延伸されるおそれがあり、このような場合には、保持部材33によってスタンパSの下降が妨げられる結果、所望の厚みの樹脂層の形成が困難となるという課題がある。この場合、保持部材33を小径化することで、圧縮状態における保持部材33が装着用中心孔Hを容易に挿通可能となる。しかし、このような構成を採用した場合、装着用中心孔Hの口縁部と保持部材33の周面33bとの間に隙間が形成されて、その隙間からスタンパSの表面側に樹脂Rが漏洩するおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる改善すべき点に鑑みてなされたものであり、装着用中心孔を介しての樹脂材料の漏洩を回避しつつ所望の厚みの光記録媒体を容易に製造でき、しかも光記録媒体の製造コストを低減し得る基材保持部材および光記録媒体製造装置を提供することを主目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る基材保持部材は、保持対象の基材に形成された装着用中心孔の内径よりもその外径が小径の円筒状に形成されて光記録媒体製造装置におけるターンテーブルの中心部に配設され、かつ、その筒長方向の上端部および下端部間が圧縮機構によって圧縮させられることによって当該筒長方向の中央部における外径が拡径するように弾性変形し、その際に当該中央部の周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成された基材保持部材であって、前記中央部の内径が前記上端部および前記下端部の内径よりも大径に形成されて当該中央部に第1の薄肉部が形成されると共に当該上端部側および当該下端部側に上端側厚肉部および下端側厚肉部が形成され、前記圧縮機構によって圧縮させられることによって前記第1の薄肉部の前記周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成されている。
【0012】
この場合、その外径が前記上端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成するのが好ましい。
【0013】
また、その外径が前記下端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成するのが好ましい。
【0014】
さらに、その下端側の内径が前記上端部側から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように前記上端側厚肉部を形成するのが好ましい。
【0015】
また、前記筒長方向の高さが前記下端側厚肉部の高さよりも低くなるように前記上端側厚肉部を形成するのが好ましい。
【0016】
さらに、前記第1の薄肉部と前記下端側厚肉部との間にその内径が当該第1の薄肉部の内径よりも大径の第2の薄肉部を形成してもよい。
【0017】
また、本発明に係る光記録媒体製造装置は、上記に記載の基材保持部材と、前記基材を載置可能にその上面が平坦に形成された前記ターンテーブルと、前記基材保持部材を前記筒長方向に圧縮する前記圧縮機構と、前記ターンテーブルを回転させる回転機構とを備えて構成されている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る基材保持部材を備えた光記録媒体製造装置の好適な発明の実施の形態について説明する。
【0019】
最初に、本発明における光記録媒体製造装置に相当する製造装置1の構成について、図面を参照して説明する。
【0020】
製造装置1は、図1に示すように、ターンテーブル2、基材保持部材(以下、「保持部材」ともいう)3、プレッシャピン4および係止機構5を備えて構成されている。また、製造装置1は、基材Dの上に樹脂R(図6参照)を滴下する滴下装置と、ターンテーブル2を回転させるための回転機構と、滴下装置および回転機構を駆動させる制御部と(いずれも図示せず)を備えている。この場合、基材(第1の基材)Dは、例えばポリカーボネイトによって円板状に形成されている。また、基材Dには、その中心部に内径15mmの装着用中心孔Hが形成されると共に、その表面Daには、射出成形時にグルーブやランド等の凹凸パターンが形成されている。一方、スタンパ(第2の基材)Sは、例えばポリカーボネイトによって円板状に形成されている。また、スタンパSには、その中心部に内径15mmの装着用中心孔Hが形成されると共に、その裏面Saには、基材D上に形成する樹脂層にグルーブやランド等を形成するための凹凸パターンが形成されている。
【0021】
ターンテーブル2は、基材Dを載置可能に上面が平坦に形成されて回転機構に取り付けられている。また、ターンテーブル2の中心部には、保持部材3を取り付けるための凹部2aと、プレッシャピン4を挿入可能な挿入孔2bとが形成されている。さらに、ターンテーブル2には、プレッシャピン4の上下動を規制するための係止機構5が取り付けられている。この係止機構5は、いわゆるボールプランジャであって、コイルスプリング5aによって矢印Aの向きに付勢されることによってその一部分が挿入孔2b内に突出させられてプレッシャピン4を係止するボール5bを備えて構成されている。
【0022】
保持部材3は、図2に示すように、例えばシリコーンゴム等の弾性材料によって円筒状に成形されている。この場合、図3に示すように、保持部材3は、その外径R1が一例として基材Dの装着用中心孔Hよりも僅かに小径の14.7mmに規定されている。また、保持部材3は、その上端部11および下端部12の外径R2,R2が11mmに規定されて、その周面3bの外径が上端部11から中央部(薄肉部)13にかけて徐々に大径となり、かつ下端部12から中央部13にかけて徐々に大径となるようにそれぞれテーパ状に形成されている。さらに、保持部材3の中心孔3aは、中央部13の内径R4が上端部11側および下端部12側の内径R3,R3よりも大径に形成されている。具体的には、一例として、上端部11側および下端部12側の内径R3,R3は、例えば、プレッシャピン4の外径に合わせて8mmに規定され、中央部13の内径R4は、上端部11側および下端部12側の内径R3よりも3mm大径の11mmに規定されている。これにより、本発明における上端側厚肉部に相当する厚肉部14と、本発明における下端側厚肉部に相当する厚肉部15と、本発明における第1の薄肉部に相当してその厚みが約1.85mmの薄肉部16とが構成されている。この場合、厚肉部14における下端部側(薄肉部16側)の内面は、中心孔3aの内径が上端部11側から薄肉部16にかけて徐々に大径となるようにテーパ状に形成されている。
【0023】
プレッシャピン4は、本発明における圧縮機構に相当し、図1に示すように、ターンテーブル2と相俟って保持部材3を圧縮するための鍔部4aと、プレッシャピン4の押し下げおよび引き上げ用の把持部4bとが円柱状の本体部に一体的に形成されている。また、本体部の周面には、係止機構5のボール5bが係合することによってプレッシャピン4をターンテーブル2に係止するための係止用溝4c,4dが形成されている。この場合、ボール5bが係止用溝4cに係合している状態(図1に示す状態)では,保持部材3の上端部11と鍔部4aとの間に隙間が形成されて保持部材3が非圧縮状態となる。一方、ボール5bが係止用溝4dに係合している状態(図5に示す状態)では,ターンテーブル2における凹部2aの底面と鍔部4aの下面とが保持部材3の全長よりも接近して保持部材3が圧縮された状態となる。
【0024】
次に、製造装置1を用いて基材D上に樹脂層を形成する光記録媒体の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0025】
まず、図4に示すように、表面Daを上向きにし、かつ装着用中心孔Hに保持部材3が挿通するようにしてターンテーブル2の上に基材Dを載置する。この際には、プレッシャピン4を引き上げた状態(ボール5bが係止用溝4cに係合した状態)とすることで保持部材3を非圧縮状態にしておく。これにより、装着用中心孔Hの口縁部と保持部材3の周面3bとの間に隙間が形成されるため、ターンテーブル2上に基材Dを容易に載置することができる。次に、図5に示すように、把持部4bを押圧してプレッシャピン4を押し下げることにより、プレッシャピン4の鍔部4aとターンテーブル2における凹部2aの底面とで保持部材3を挟み込むようにして圧縮する。
【0026】
この際に、保持部材3の厚肉部14は、その内面(中心孔3aを形成する内壁面)がプレッシャピン4の本体部に接触させられているため、内向きへの変形が阻止されている。また、厚肉部14は、前述したように、その周面3bが上端部11から下方にかけて外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されているため、プレッシャピン4によって上端部11に加えられた力が外向きに拡がるように作用する。したがって、厚肉部14は、プレッシャピン4を介して加えられた押圧力によって、その下端部側(薄肉部16側)が外向きに押し出されるように(大径化するように)変形する。一方、厚肉部15は、その内面がプレッシャピン4の本体部に接触しているため、厚肉部14と同様にして、内向きへの変形が阻止されている。また、厚肉部15は、その周面3bが下端部12から薄肉部16にかけて外径が徐々に拡径するテーパ状に形成されているため、プレッシャピン4によって加えられた力が外向きに拡がるように作用する。したがって、厚肉部15は、その上端部側(薄肉部16側)が外向きに押し出されるように(大径化するように)変形する。このため、保持部材3は、厚肉部14,15が大径化するのに伴って薄肉部16が大径化するように弾性変形する。この結果、薄肉部16の周面3bが基材Dの装着用中心孔Hにおける口縁部に当接させられる。これにより、保持部材3の薄肉部16によって装着用中心孔Hが閉塞されて基材Dがターンテーブル2に保持される。
【0027】
次いで、回転機構を駆動させてターンテーブル2を低速回転させつつ、図6に示すように、滴下装置によって基材Dの表面Daにおける中央部(保持部材3の近傍)に樹脂層形成用の樹脂Rを滴下する。この際に、保持部材3の周面3bが基材Dにおける装着用中心孔Hの口縁部に強く押し付けられると共に基材Dとの当接部位の上方および下方において外向きに突出する膨らみがそれぞれ形成されているため、滴下した樹脂Rが基材Dの装着用中心孔Hを介して裏面側に漏洩する事態を確実に回避することができる。続いて、図7に示すように、裏面Saを下向きにしてスタンパSを基材Dに覆い被せる。この際には、保持部材3が装着用中心孔Hに挿入されるようにスタンパSを覆い被せる。この場合、保持部材3の上端部11の外径R2が11mm程度に形成されているため、装着用中心孔Hに保持部材3を容易に挿通させることができる。また、保持部材3の上端部11側がテーパ状に形成されると共に圧縮に伴って厚肉部14の下端部側が大径化するように変形しているため、スタンパSは、下降する際に、保持部材3によって案内されてターンテーブル2の中心(すなわち、基材Dと同心)に位置決めされる。
【0028】
次に、この状態のターンテーブル2を高速回転させることにより、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rを外周部に向けて延伸させる。この際には、図8に示すように、樹脂Rが外周部に向けて移動するのに伴ってスタンパSが基材Dに向けて下降する。この際に、保持部材3が弾性変形して薄肉部16の外径R1が装着用中心孔Hの内径よりも拡がっているため、スタンパSは、装着用中心孔Hの口縁部を保持部材3の周面3bに擦り付けるようにして下降する。この場合、保持部材3における薄肉部16の厚みが1.85mmと薄厚のため、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の当接部位が内向きに変形する。また、スタンパSがある程度下降した際には、保持部材3におけるスタンパSとの当接部位の上方および下方において外向きに突出する膨らみが形成される。この結果、スタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部の角部が保持部材3の周面3bに必要以上に強く押し当てられるのを回避しつつ、スタンパSの上下に形成される膨らみによって装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を回避することができる。また、従来の保持部材33とは異なり、薄肉部16が内向きに容易に変形するため、下降を妨げる力がスタンパSに殆ど作用しない結果、スタンパSがスムーズに下降する。したがって、図9に示すように、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rが所望の厚みとなるように延伸される。
【0029】
続いて、基材DおよびスタンパS間の樹脂Rに例えば紫外線を照射することによって硬化させた後に、プレッシャピン4を引き上げる。この際には、プレッシャピン4による圧縮が解除されることによって保持部材3が図3に示す状態(円筒形状態)に復帰する。したがって、保持部材3の周面3bと基材DおよびスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部との間に隙間が形成されて、基材D、樹脂層およびスタンパSからなる積層体の保持が解除される。この後、積層体をターンテーブル2から取り外すと共に基材D上に形成された樹脂層からスタンパSを剥離する。これにより、基材D上への樹脂層の形成が完了する。
【0030】
このように、この製造装置1によれば、その中央部13の内径R4を上端部11および下端部12の内径R3,R3よりも大径に形成して中央部13に薄肉部16を形成すると共に上端部11側および下端部12側に厚肉部14,15を形成した保持部材3を備えたことにより、スタンパSの下降に伴って薄肉部16が内向きに容易に変形してその周面3bにスタンパSにおける装着用中心孔Hの口縁部が必要以上に強く押し当てられるのを回避することができる。このため、装着用中心孔Hの口縁部の角部によって保持部材3の周面3bが傷付けられるのを十分に回避することができる。この結果、保持部材3を長期間に亘って繰り返して使用することができるため、光記録媒体の製造コストを低減することができる。また、薄肉部16が内向きに容易に変形することで下降を妨げる力がスタンパSに殆ど作用しないため、スタンパSがスムーズに下降する結果、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。
【0031】
また、この製造装置1によれば、その外径が上端部11から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を備えたことにより、装着用中心孔Hに保持部材3を容易に挿通させることができる。この結果、スタンパSが上端部11に引っ掛かった状態で樹脂Rを延伸させてしまう事故を確実に回避することができる。このため、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。また、プレッシャピン4によって保持部材3を圧縮した際に、その力が厚肉部14の下端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、薄肉部16の上端部側が外向きに押し出される結果、基材DやスタンパSとの当接部位の上方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0032】
さらに、この製造装置1によれば、その外径が下端部12から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を備えたことにより、プレッシャピン4によって保持部材3を圧縮した際に、その力が厚肉部15の上端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、薄肉部16の下端部側が外向きに押し出される結果、基材Dとの当接部位の下方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔Hを介しての樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0033】
また、この製造装置1によれば、その下端側の内径を上端部11側から薄肉部16にかけて徐々に大径となるように厚肉部14を形成した保持部材3を備えたことにより、薄肉部16の上端部側が確実に外向きに押し出される結果、装着用中心孔Hを介してのスタンパSの上面側への樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限らず、適宜変更が可能である。例えば、本発明の実施の形態では、厚肉部14の内径が薄肉部16にかけて徐々に大径となるように形成した保持部材3を例に挙げて説明したが、本発明における基材保持部材の構成はこれに限定さず、図3に破線で示すように、中心孔3aの内壁面が厚肉部14Aから薄肉部16Aにかけて階段状となるように保持部材23を構成することができる。この場合、同図に示す保持部材23のように、厚肉部14Aの高さH1が厚肉部15の高さH2よりも低くなるように形成することにより、この保持部材23を圧縮した際には、圧縮する力が厚肉部14Aの下端部を外向きに押し出す方向に作用し易くなるため、その外径が大径化するように薄肉部16Aを確実に変形させることができる。したがって、装着用中心孔Hを介してのスタンパSの上面側への樹脂Rの漏洩を確実に防止することができる。
【0035】
また、図10に示す保持部材23Aのように、薄肉部16と厚肉部15との間にその内径R5が薄肉部16の内径R4よりも大径の薄肉部17(本発明における第2の薄肉部)を形成する構成を採用することもできる。この保持部材23Aによれば、薄肉部16よりも薄肉に形成されている分だけ薄肉部17が外向きに変形し易いため、図11に示すように、基材Dを保持した際に基材Dの裏面側に大きな膨らみを形成することができる。したがって、装着用中心孔Hを介しての基材Dの裏面側への樹脂Rの漏洩をより確実に回避することができる。
【0036】
さらに、本発明の実施の形態では、基材Dと、基材D上に樹脂層を形成するためのスタンパSとを保持部材3によって保持する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば両面2層タイプの光記録媒体の製造に際して貼り合わせる2枚の基材D,Dを保持部材3によって保持することもできる。また、基材Dは円板状に限らず、各種形状の基材を用いることができる。さらに、本発明の実施の形態では、シリコーンゴム製の保持部材3を採用した例を説明したが、本発明における基材保持部材は、これに限定されず、樹脂Rの剥離性に優れ、かつ弾性変形可能な素材である限り、各種ゴムをはじめとしてフッ素系材料やポリオレフィンなどの各種素材で構成することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における中央部の内径を上端部および下端部の内径よりも大径に形成して中央部に第1の薄肉部を形成すると共に上端部側および下端部側に上端側厚肉部および下端側厚肉部を形成したことにより、基材の下降に伴って第1の薄肉部が内向きに容易に変形してその周面に基材における装着用中心孔の口縁部が必要以上に強く押し当てられるのを回避することができる。このため、装着用中心孔の口縁部の角部によって基材保持部材の周面が傷付けられるのを十分に回避することができる。この結果、基材保持部材を長期間に亘って繰り返して使用することができるため、光記録媒体の製造コストを低減することができる。また、第1の薄肉部が内向きに容易に変形することで下降を妨げる力が基材に殆ど作用しないため、基材がスムーズに下降する結果、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。
【0038】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材の外径が上端部から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成したことにより、装着用中心孔に基材保持部材を容易に挿通させることができる。この結果、例えばスタンパなどの基材が上端部に引っ掛かった状態で樹脂を延伸させてしまう事故を確実に回避することができる。このため、樹脂層を確実に所望の膜厚に形成することができる。また、圧縮機構によって基材保持部材を圧縮した際に、その力が上端側厚肉部の下端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、第1の薄肉部の上端部側が外向きに押し出される結果、基材との当接部位の上方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材の外径が下端部から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成したことにより、圧縮機構によって基材保持部材を圧縮した際に、その力が下端側厚肉部の上端部側を外向きに押し出す向きに作用するため、第1の薄肉部の下端部側が外向きに押し出される結果、基材との当接部位の下方に外向きに突出する膨らみを形成して装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0040】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における下端側の内径を上端部側から第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように上端側厚肉部を形成したことにより、第1の薄肉部の上端部側が確実に外向きに押し出される結果、装着用中心孔を介しての例えばスタンパなどの基材の上面側への樹脂の漏洩をより確実に防止することができる。
【0041】
さらに、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における筒長方向の高さが下端側厚肉部よりも低くなるように上端側厚肉部を形成したことにより、基材保持部材を圧縮する力が上端側厚肉部の下端部を外向きに押し出す方向に作用し易くなるため、その外径が大径化するように第1の薄肉部を確実に変形させることができる。したがって、装着用中心孔を介しての樹脂の漏洩を確実に防止することができる。
【0042】
また、本発明に係る基材保持部材および光記録媒体製造装置によれば、基材保持部材における第1の薄肉部と下端側厚肉部との間に第1の薄肉部の内径よりも大径の第2の薄肉部を形成したことにより、第1の薄肉部よりも薄肉に形成されている分だけ第2の薄肉部が外向きに変形し易いため、基材を保持した際に基材の裏面側に大きな膨らみを形成することができる。したがって、装着用中心孔を介しての基材の裏面側への樹脂の漏洩をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造装置1のターンテーブル2、保持部材3、プレッシャピン4、係止機構5、並びに保持対象の基材DおよびスタンパSの断面図である。
【図2】保持部材3の外観斜視図である。
【図3】保持部材3および本発明の他の実施の形態に係る保持部材23の断面図である。
【図4】ターンテーブル2上に基材Dを載置した状態の断面図である。
【図5】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材3を弾性変形させた状態の断面図である。
【図6】基材Dの表面Daに樹脂Rを滴下した状態の断面図である。
【図7】図6の状態の基材D上にスタンパSを覆い被せた状態の断面図である。
【図8】図7に示す状態のスタンパSが樹脂Rの移動に伴って下降した状態の断面図である。
【図9】図8に示す状態のスタンパSがさらに下降した状態の断面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る保持部材23Aの断面図である。
【図11】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材23Aを弾性変形させた状態の断面図である。
【図12】出願人が開発している製造装置31のターンテーブル2、保持部材33、プレッシャピン4、係止機構5、並びに保持対象の基材DおよびスタンパSの断面図である。
【図13】ターンテーブル2上に基材Dを載置した状態の断面図である。
【図14】プレッシャピン4を押し下げることによって保持部材33を弾性変形させた状態の断面図である。
【図15】樹脂Rの滴下が完了した基材D上にスタンパSを覆い被せた状態の断面図である。
【図16】図15に示す状態のスタンパSが樹脂Rの移動に伴って下降した状態の断面図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 ターンテーブル
3,23,23A 保持部材
3a 中心孔
3b 周面
4 プレッシャピン
5 係止機構
11 上端部
12 下端部
13 中央部
14,14A,15 厚肉部
16,16A,17 薄肉部
D 基材
Da 表面
H 装着用中心孔
H1,H2 高さ
R 樹脂
R1,R2 外径
R3,R4,R5 内径
S スタンパ
Sa 裏面
Claims (7)
- 保持対象の基材に形成された装着用中心孔の内径よりもその外径が小径の円筒状に形成されて光記録媒体製造装置におけるターンテーブルの中心部に配設され、かつ、その筒長方向の上端部および下端部間が圧縮機構によって圧縮させられることによって当該筒長方向の中央部における外径が拡径するように弾性変形し、その際に当該中央部の周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成された基材保持部材であって、
前記中央部の内径が前記上端部および前記下端部の内径よりも大径に形成されて当該中央部に第1の薄肉部が形成されると共に当該上端部側および当該下端部側に上端側厚肉部および下端側厚肉部が形成され、前記圧縮機構によって圧縮させられることによって前記第1の薄肉部の前記周面が前記装着用中心孔の口縁に当接して当該装着用中心孔を閉塞して当該基材を保持可能に構成されている基材保持部材。 - その外径が前記上端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成されている請求項1記載の基材保持部材。
- その外径が前記下端部から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成されている請求項1または2記載の基材保持部材。
- 前記上端側厚肉部は、その下端側の内径が前記上端部側から前記第1の薄肉部にかけて徐々に大径となるように形成されている請求項1から3のいずれかに記載の基材保持部材。
- 前記上端側厚肉部は、前記筒長方向の高さが前記下端側厚肉部の高さよりも低く形成されている請求項1から4のいずれかに記載の基材保持部材。
- 前記第1の薄肉部と前記下端側厚肉部との間にその内径が当該第1の薄肉部の内径よりも大径の第2の薄肉部が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の基材保持部材。
- 請求項1から6のいずれかに記載の基材保持部材と、前記基材を載置可能にその上面が平坦に形成された前記ターンテーブルと、前記基材保持部材を前記筒長方向に圧縮する前記圧縮機構と、前記ターンテーブルを回転させる回転機構とを備えて構成されている光記録媒体製造装置。
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JP2002338753A JP2004171710A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | 基材保持部材および光記録媒体製造装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002338753A Pending JP2004171710A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | 基材保持部材および光記録媒体製造装置 |
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JP (1) | JP2004171710A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002338753A patent/JP2004171710A/ja active Pending
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