JP2004170174A - トルク検出装置及びそれを備えた電動パワーステアリング制御装置 - Google Patents

トルク検出装置及びそれを備えた電動パワーステアリング制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】入力値に対する出力値の変動を抑えるとともに、入力値の急激な変化に対する出力値の追従性を向上させたトルク検出装置、及びそれを備えた電動パワーステアリング制御装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング制御装置は、トルク検出装置と、操舵トルクを補助するモータ6と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、モータ6を制御するモータ駆動装置35とを備える。そして、トルク検出装置は、ステアリング軸を回転させたとき、ステアリング軸に加わる操舵トルクに応じた信号を出力するトルクセンサ4と、信号をアナログ値からデジタル値に変換して出力するA/D変換部18aと、A/D変換部18aから入力したデータに対し、ヒステリシス処理を行い、データを基にしてヒステリシス幅内に納めたデータを生成して出力値として出力するフィルタ部31とを備える。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や操舵系にモータによるアシスト力を付与するのに用いられるトルク検出装置、及びトルク検出装置を備えた電動パワーステアリング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、操舵系の操舵トルクを検出し、この操舵トルクに応じて電動モータの駆動電流を制御し、操舵トルクをアシストするのに用いられるトルク検出装置やトルク検出装置を備えた電動パワーステアリング装置が種々提案されている。
【0003】
このようなトルク検出装置や電動パワーステアリング装置においては、ドライバが加えた操舵力をセンサで検知し、その値を入力値としてアナログからデジタルにA/D変換してマイコンに取り込む。そして、この入力値に基づいてアシスト制御のための演算を行い出力値を算出し、この出力値を自動車や操舵系にモータによるアシスト力を付与する。
【0004】
上記の過程において、A/D変換のときの切り捨て誤差(量子化誤差)や演算誤差が発生し、たとえ実際の入力値が一定であっても演算結果の出力値が変化してしまい、異音が出たり操舵フィーリングが悪化したりする。
【0005】
そこで、一般的に、入力値の情報の変動を抑えるために、従来の電動パワーステアリング装置では装置内に設けたマイクロコンピュータが、図8に示すプログラムのフローチャートで示すように、入力値を平均化する平均フィルタ処理を行っている。図8において、先ず、S101で操舵トルクに応じた信号を取得すると、S102でこの信号に基づいて操舵トルクを演算する。そして、S103でこの操舵トルクが、この制御プログラムを実行した際の初めての値か否かを判定し、初めての値であればS104に移行し、演算した操舵トルクを出力値とする。又、S103で初めての値ではないと判定すると、S106に移行し、操舵トルクは平均フィルタ処理し、ここで求められた値を出力値とする。この平均フィルタ処理は、過去の制御周期で得られた複数の操舵トルクの値(データ)と今回演算して得られた操舵トルクの値を加算して平均化する手段である。次に、S105では、S104又はS106で今回の制御周期での出力値とした値を過去の出力値としてRAM等の記憶装置に格納し、この制御プログラムを一旦終了する。
【0006】
このように、順次入力値に対する出力値が得られる。なお、図8に示す処理に加えて、更に、フィルタ処理を複数回行ったり、メディアンフィルタ処理を行う場合もある。このようにして、入力値に対して変動の抑制されたデータ値が出力される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の装置では、単に平均化処理をしているため、入力値に対する出力値の変動は抑えられるが、急激な変化に対して、入力値に対する制御の応答性悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は入力値に対する出力値の変動を抑えるとともに、入力値の急激な変化に対する出力値の追従性を向上させたトルク検出装置、及びそれを備えた電動パワーステアリング制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリング軸を回転させたとき、ステアリング軸に加わる操舵トルクに応じた信号を出力する出力手段と、前記信号をアナログ値からデジタル値に変換して出力する変換手段と、前記変換手段から入力したデータに対し、ヒステリシス処理を行い、前記データを基にしてヒステリシス幅内に納めたデータを生成して出力値として出力するヒステリシス処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
又、請求項2に記載の発明は、ステアリング軸を回転させたとき、ステアリング軸に加わる操舵トルクに応じた信号を出力する出力手段と、前記信号をアナログ値からデジタル値に変換する変換手段と、前記変換手段から出力された信号の過去のデータと、現在のデータの平均処理を行う平均化処理手段と、前記平均化処理手段にて平均化されたデータと閾値との大小関係を判定する判定手段と、前記判定手段が、前記閾値よりも平均化されたデータの方が大きいと判定したときは、前記変換手段から入力したデータに対し、ヒステリシス処理を行い、前記データを基にしてヒステリシス幅内に納めたデータを生成して出力値として出力するヒステリシス処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
更には、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、電動モータを制御するモータ制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
又、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、電動モータを制御するモータ制御手段とを備え、前記モータ制御手段は、前記判定手段が、前記閾値よりも平均化されたデータの方が大きいと判定したときは、ヒステリシス処理手段のヒステリシス処理後の出力値を操舵トルクとして前記モータトルクを求め、前記判定手段が、平均化されたデータが前記閾値以下と判定したときは、平均化処理手段が平均化したデータを操舵トルクとしてモータトルクを求めることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を電動パワーステアリング装置に具体化した実施形態を、図1乃至図7を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、電動パワーステアリング装置の概略図である。
ステアリングホイール1に連結したステアリング軸2には、トーションバー3が設けられている。このトーションバー3には、トルクセンサ4が装着されている。
【0015】
そして、ステアリングホイール1に操舵トルクが加えられ、ステアリング軸2が回転されると、加わった力に応じてトーションバー3が捩れる。すると、この捩れ、即ちステアリング軸2に加わる前記操舵トルクに応じた信号が、出力手段としてのトルクセンサ4から出力される。このトルクセンサ4は、ステアリングホイール1の操舵トルクに応じた電圧を出力する。
【0016】
又、ステアリング軸2にはピニオンシャフト8が固着されている。ピニオンシャフト8の先端には、ピニオン9が固着されるとともに、このピニオン9はラック10と噛合している。前記ラック10とピニオン9とによりラックアンドピニオン機構が構成されている。前記ラック10の両端には、タイロッド12が固設されており、そのタイロッド12の先端部にはナックル13が回動可能に連結されている。このナックル13には、タイヤとしての前輪14が固着されている。又、ナックル13の一端は、クロスメンバ15に回動可能に連結されている。
【0017】
又、ラック10と同軸的に、操舵トルクを補助する電動モータ(以下、モータ6という)が配置されている。モータ6は操舵トルクに対応するモータトルク(アシスト力)をボールナット機構6aを介してラック10に伝達する。
【0018】
従って、モータ6が回転すると、その回転はボールナット機構6aによってラック10に伝達される。そして、ラック10は、タイロッド12を介してナックル13に設けられた前輪14の向きを変更して車両の進行方向を変えることができる。
【0019】
又、前輪14には、車速センサ16が設けられている。車速センサ16は、その時の車速を前輪14の回転数に相対する周期のパルス信号として出力する。
更に、上記の電動パワーステアリング装置には、制御部20が電気的に連結されている。
【0020】
この制御部20は、中央処理装置(CPU21)と、読み込み専用メモリ(ROM22)と、データを一時記憶する読み出し及び書き込み専用メモリ(RAM23)と、モータ駆動装置35とを備えている。
【0021】
このROM22には、CPU21による演算処理を行わせるための制御プログラムが格納されている。又、ROM22には、後述する基本アシストマップが格納されている。
【0022】
RAM23は、CPU21が演算処理を行うときの演算処理結果等を一時保管する。
又、モータ駆動装置35には、又、モータ6に実際に流れる駆動電流(実電流)を検出する電流センサ36が設けられており、その駆動電流の検出信号がCPU21へ出力されるようになっている。
【0023】
本実施形態では、CPU21は、ヒステリシス処理手段、モータ制御手段に相当する。
次に、上記の電動パワーステアリング装置の電気的構成について説明する。
【0024】
図2は制御部20のブロック図である。同図において、CPU21の枠内はCPU21の制御ブロックを示し、プログラムで実行する機能を示している。従って、制御ブロックは独立したハードウエアを示すものではない。
【0025】
図2に示すように、CPU21では、入力される操舵トルク及び車速に基づいて、モータ駆動装置35へ送出すべきPWM(pulse width modulation)指令値を決定する。モータ駆動装置35は、CPU21から送出されたPWM指令値に対応する駆動電流をモータ6へ出力する。そして、モータ6は、運転者によるステアリング軸2の操舵力を補助するためのモータトルク(操舵補助トルク)を発生する。
【0026】
図2に示すように、トルクセンサ4からの操舵トルク信号は、インターフェース17aを介して変換手段であるA/D変換器18aでアナログ値からデジタル値に変換され、操舵トルクτとしてCPU21に入力される。
【0027】
CPU21は、ROM22に格納したヒステリシス処理プログラムにより、後述するヒステリシス処理をする。図2において、フィルタ部31(CPU21)はヒステリシス処理するヒステリシス処理手段に相当する。そして、このフィルタ部31にて求められた操舵トルクτ*を出力値としてアシスト指令部32に入力する。なお、説明の便宜上、入力値としての操舵トルクはτを付し、出力値としての操舵トルクにはτ*を付す。また、フィルタ部31での処理は後述する。
【0028】
又、車速センサ16からの車速信号は、インターフェース17bを介してタイマ18bでパルス周期をカウントし、CPU21のアシスト指令部32に車速Vとして入力される。
【0029】
この操舵トルクτ*及び車速Vに基づいて、アシスト指令部32において、電流指令値IAが決定される。この電流指令値IAは、図6に示すアシストマップに基づいて決定される。
【0030】
ここで、アシストマップについて説明する。
アシストマップは、操舵トルクτ*に対するモータ6の目標電流である電流指令値IAを求めるためのものであり、ROM22に格納されている。このアシストマップにおいて、入力された操舵トルクτ*と車速Vから、対応する目標電流である電流指令値IAが検索して求められる。
【0031】
なお、図6において、V1〜V8は車速Vを表し、操舵トルクτ*に対する電流指令値IAは車速Vにより変化することを示している。最も車速の小さいV1から、最も車速の大きいV8にかけて、順次車速Vは増加している。車速V1〜V8においては、車速Vが小さい程操舵トルクτ*に対する電流指令値IAが大きくなるように設定されている。又、それぞれの車速V1〜V8において、操舵トルクτ*が比較的小さい場合に比して、操舵トルクτ*が比較的大きい場合には、操舵トルクτ*に対する電流指令値IAが大きくなるように設定されている。
【0032】
PI制御部33によって、上記アシスト指令部32から出力された電流指令値IAに対して電圧指令値Vnが生成される。更に、この電圧指令値VnによりPWM演算部34でモータ駆動装置35に送出するPWM指令値が送出される。
【0033】
モータ駆動装置35は、PWMによりON/OFF制御されるスイッチング素子としてFET35a〜35dを備えたHブリッジで構成されている。
左側のFET35a,35dは、上側のFET35aがONのとき下側のFET35dがOFF、上側のFET35aがOFFのとき下側のFET35dがONとなるようにON/OFF制御される。右側のFET35b,35cも同様に、上側のFET35bがONのとき下側のFET35cがOFF、上側のFET35bがOFFのとき下側のFET35cがONとなるようにON/OFF制御される。そして、FET35a〜35dをそれぞれ異なるデューティー比Da,Db,Dc(=1−Db),Dd(=1−Da)でON/OFFすることにより、モータ6を制御する。
【0034】
又、CPU21は、電流センサ36で検出したモータ電流に基づくフィードバック制御を行う。電流センサ36からのモータ電流に対応した検出信号は、インターフェース17cを介して、A/D変換器18cに入力され、同A/D変換器18cによりデジタル変換されてPI制御部33に入力される。このフィードバック制御では、CPU21は、例えば、操舵トルクが一定である状態において、何らかの理由によりモータ電流が低下した場合、前記操舵トルクの落ち込みを防止すべく、モータ駆動電圧を増加させる。
【0035】
なお、第1実施形態において、トルク検出装置は、出力手段であるトルクセンサ4と、変換手段であるA/D変換器18aと、ヒステリシス処理手段であるCPU21等を備えて構成されている。又、電動パワーステアリング制御装置は、このトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求めモータ6を制御するモータ制御手段であるCPU21等を備えて構成されている。
【0036】
〔フィルタ部31での処理〕
ここで、CPU21が実行するヒステリシス処理プログラムについて、図3のフローチャートを参照して説明する。このプログラムは、定期周期毎に実行する。
【0037】
S1では、A/D変換器18aから出力された操舵トルク信号をRAM23の所定領域から読込む。
S2では、S1で読込まれた操舵トルク信号に基づいて演算を行い、操舵トルクτを得る。
【0038】
S3では、このプログラムによって得られた操舵トルクτが、図示しないイグニッションスイッチがオンされた後、初めての値か否かを判定する。初めてであれば、S4に移行し、操舵トルクτを操舵トルクτ*とする。初めてでなければ、S6に移行する。S6では、後述するヒステリシス処理を行う。
【0039】
次に、S5では、S4又はS6で今回の制御周期での出力値とした値の操舵トルクτ*を過去のデータとしてRAM23等の記憶装置に格納し、この制御プログラムを一旦終了する。
【0040】
ここで、上記ヒステリシス処理について説明する。
このヒステリシス処理では、A/D変換器18aから得られた操舵トルク信号を基にして算出された操舵トルクτを入力値Iとしてヒステリシス処理を行う。
【0041】
即ち、まず、変化量Δを下記式にて算出する。
変化量Δ=今回の入力値I−前回出力値Om ……(1)
次に、変化量Δがヒステリシス幅H以下、即ち、
変化分D(=変化量Δ−ヒステリシス幅H)≦0 ……(2)
であるか否かを判定する。
【0042】
なお、この判定の場合、変化量Δが正の時は、ヒステリシス幅Hも正の値を取り、変化量Δが負のときは、ヒステリシス幅Hも負の値とするが、絶対値は同じ数値である。
【0043】
そして、この変化量Δがヒステリシス幅H以下の場合(変化分Dが0以下の場合)には、今回の出力値として、前回出力値と同じ値を出力する。
即ち、
今回の出力値Ok=前回出力値Om ……(3)
又、この変化量Δがヒステリシス幅Hよりも大きい場合(変化分Dが0よりも大きい場合)には、今回の出力値Okとして、前回出力値Omに変化分Dを加算して出力する。
【0044】
今回の出力値Ok=前回出力値Om+変化分D ……(4)
なお、この場合のヒステリシス幅Hは、前述したように変化量Δが正の時は、ヒステリシス幅Hも正の値を取り、変化量Δが負のときは、ヒステリシス幅Hも負の値とするが、絶対値は同じ数値である。
【0045】
前記(4)式は、(1)式及び(2)式、を代入すると
Figure 2004170174
となる。
【0046】
即ち、今回の出力値Okは今回の入力値Iから、ヒステリシス幅Hを減算した値となる。この場合、変化量Δが正の時は、ヒステリシス幅Hも正の値を取り、変化量Δが負のときは、ヒステリシス幅Hも負の値とするが、絶対値は同じ数値である。
【0047】
このように今回の出力値Okは、今回の入力値Iのヒステリシス幅H内に納めた処理を行っている。
具体的には、S6のヒステリシスフィルタにおいて、以下に示す(5)式及び(6)式の演算が順次行われる。
【0048】
W=MIN{Om,I+H} ……(5)
Ok=MAX{W,I―H} ……(6)
先ず、(5)式において、前回出力値Omと、今回の入力値Iにヒステリシス幅Hを加えた値が比較される。そして、小さい方の値が演算値Wとして算出される。
【0049】
次に、(6)式において、(5)式で算出された演算値Wと、今回の入力値Iからヒステリシス幅Hを引いた値が比較される。そして、大きい方の値が今回の出力値Okとして算出される。
【0050】
このように演算されることで、A/D変換器18aから入力された操舵トルク信号に基づいて演算されて得られた操舵トルクτは、ヒステリシス幅H内に収まってフィルタ部31から操舵トルクτ*として出力される。
【0051】
図4には、前記S6のヒステリシス処理を実行した場合の例を示す。この図の縦軸はトルク、横軸は時間軸である。
この例では、説明を簡便にするために、トルクを−4〜4の範囲において、整数値が入力値として入力し或いは出力値として出力するものとし、ヒステリシス幅Hを1とする。又、横軸の1〜29は、前記プログラムの制御の実行回数番号nを示している。
【0052】
図4において、n=1においては、トルク0が入力される。この入力値が初めてのデータであるので、このトルクがそのまま出力値としてフィルタ部31から出力される。
【0053】
そして、n=2においては、トルク1が入力値として入力される。この入力値が図3のS6のヒステリシスフィルタにかけられる。すると、上記の(5)式及び(6)式により、
W=MIN{0,2}=0
Ok=MAX{0,0}=0
となり、フィルタ部31から出力値Ok(=0)が出力される。
【0054】
そして、n=3においては、トルク2が入力される。この入力値が図3のS6のヒステリシスフィルタにかけられる。すると、上記の(5)式及び(6)式により、
W=MIN{0,2}=0
Ok=MAX{0,1}=1
となり、フィルタ部31から出力値Ok(=1)が出力される。
【0055】
このようにして、順次入力値I(操舵トルクτ)に対応する出力値Ok(操舵トルクτ*)が出力され、図4に示す入力値に対する出力値の特性が得られる。
又、図5は、入力値に対する出力値の応答性を図示している。この図の縦軸はトルク、横軸は時間軸である。図5においては、入力値に対して、上述したヒステリシス処理を行った場合の出力値と、2回平均処理を行った場合の出力値とを示している。なお、2回平均処理は、今回の入力値と前回の出力値とを平均化する処理のことである。
【0056】
この例では、入力値は、トルク0の状態から、時間3.0においてトルク100となり、そのままトルク100の状態を維持し、時間11.0の時点から、トルクが0に向かうものとされている。この入力値のトルクの変動に対する出力値(応答性)が、ヒステリシス処理したものと2回平均処理したものとでは異なっている。
【0057】
ヒステリシス処理した方の出力値は、入力値に対する出力値がヒステリシス幅H内に納められるため、入力値とほぼ同一線上となっており、入力値に対する追従性が良いと言える。時間3.0において入力値100が入力されると、上記(5)式及び(6)式から導くと、ヒステリシス処理されて出力値は98とされる。そして、時間11.0において入力値が0とされると、ヒステリシス処理されて出力値は2とされる。
【0058】
又、2回平均処理した方の出力値は、過去の出力値を用いて平均化するため、上記ヒステリシス処理された場合の出力値と比較して追従性が悪い。時間3.0において入力値100が入力されると、出力値は50となる。そして、順次入力値に対して平均化処理することで徐々に入力値100に近づいていく。そして、時間11.0において入力値が0とされると、ヒステリシス処理されて出力値は50とされる。そして、順次入力値に対して平均化処理することで徐々に入力値0に近づいていく。
【0059】
以上説明したように、ヒステリシス処理を行うと、入力値が微細に変動する場合は、図4に示すように、出力値はその変動が抑制される。又、入力値が急激に加わる、又は減少する場合は、図5に示すように、出力値の応答性の低下を防止することができる。
【0060】
従って、上記第1実施形態のトルク検出装置及びパワーステアリング制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態のトルク検出装置は、ステアリング軸2に加わる操舵トルクに応じたデータである操舵トルクτに対しヒステリシス処理を行い、ヒステリシス幅H内に納めたデータを生成して出力値の操舵トルクτ*として出力するヒステリシス処理手段であるCPU21を備える。
【0061】
従って、入力値に対する出力値の変動を抑えるとともに、入力値の急激な変化に対する出力値の追従性を向上させることができる。
(2) 又、本実施形態の電動パワーステアリング制御装置は、上述したトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、モータ6を制御するモータ制御手段であるCPU21とを備えている。
【0062】
従って、上記(1)の効果を好適に得られる電動パワーステアリング制御装置とすることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図7を参照して説明する。なお、以下の第2実施形態の説明では、上述した第1実施形態と同じ構成である部分については、同一符号を付しその説明を省略し、異なるところを説明する。
【0063】
第2実施形態においては、フィルタ部31において行われる演算が上記第1実施形態と異なる。この場合、図2に示すフィルタ部31(CPU21)は平均化処理を行う平均化処理手段、判定処理を行う判定手段、ヒステリシス処理処理を行うヒステリシス処理手段、及びモータ制御手段に相当する。
【0064】
なお、第2実施形態において、トルク検出装置は、出力手段であるトルクセンサ4と、変換手段であるA/D変換器18aと、平均化処理手段、判定手段及びヒステリシス処理手段であるCPU21等を備えて構成されている。又、電動パワーステアリング制御装置は、このトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求めモータ6を制御するモータ制御手段であるCPU21等を備えて構成されている。
【0065】
又、CPU21は、図3に示すS6以外に、更に図7に示すS11〜S13を実行する。
S11にて、2回平均フィルタにかけ、得られた操舵トルクτと前回得られた操舵トルクとの平均化処理を行う。
【0066】
そして、S12にて、平均化処理した操舵トルクと、予め設定された閾値Lとの大小関係を判定する。
S12にて、閾値LよりもS11で得られた操舵トルクの方が大きいと判定したときは、S6に移行し、入力値である操舵トルクτに対しヒステリシス処理を行う。
【0067】
又、S12にて、閾値LよりもS11で得られた操舵トルクの方が小さいと判定したときは、S13において、S11で得られた操舵トルクが出力値の操舵トルクτ*とされる。
【0068】
以上説明したように、2回平均フィルタにより得られた操舵トルクが閾値Lよりも小さい場合は、その値がそのまま出力値の操舵トルクτ*とされる。平均化処理により得られる値は、入力値である操舵トルクτの変動を抑制する(なます)ため、そのままこの値を用いることができる。
【0069】
そして、2回平均フィルタにより得られた操舵トルクが閾値Lよりも大きい場合は、入力値である操舵トルクτに対し、ヒステリシス処理する。これは、図6に示すように、操舵トルク信号に対する操舵トルクτが大きくなると、操舵トルクの微細な変化に対して、操舵トルクτが小さい場合と比較して電流指令値IAの変化が大きくなるためである。このような変化を、ヒステリシス処理することで低減することができる。これにより、量子誤差やノイズ等で起こる微細な変化を取り除くことができる。
【0070】
なお、図7のステップS11において、平均フィルタを2回ではなく、3〜4回とすれば、上述したような微細な変化に対応し追従性を得ることはできるが、そうすると操舵トルクに対する応答性が低下してしまう。
【0071】
そこで、入力値に対して、出力値の変動を抑制するという目的を十分に果たせる場合には平均化処理を行い、出力値の追従性とともに応答性を得たい場合にはヒステリシス処理を行うようにしている。そのため、ヒステリシス処理は必要なときのみに行われることとなり、演算の効率がよい。
【0072】
従って、上記第2実施形態の電動パワーステアリング制御装置によれば、第1実施形態の(1)、(2)の作用効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
(1) 第2実施形態では、A/D変換器18aから出力された信号の過去のデータと、現在のデータの平均処理を行う平均化処理手段と、平均化処理手段にて平均化されたデータと閾値との大小関係を判定する判定手段とを備える。そして、判定手段が閾値よりも平均化されたデータ(平均化処理した操舵トルク)の方が大きいと判定したときは、変換手段から入力したデータ(入力値)に対し、ヒステリシス処理を行い、データ(入力値)を基にしてヒステリシス幅内に納めたデータ(出力値)を生成して出力するヒステリシス処理手段とを備える。
【0074】
従って、必要なときのみヒステリシス処理を行うことにより、効率よく入力値に対する出力値の変動を抑えるとともに、入力値の急激な変化に対する追従性を向上させることができる。
【0075】
(2) 又、上記のトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、モータ6を制御するモータ制御手段とを備える。そして、モータ制御手段は、判定手段が、閾値よりも平均化されたデータの方が大きいと判定したときは、ヒステリシス処理手段のヒステリシス処理後の出力値を操舵トルクとして前記モータトルクを求める。
【0076】
従って、上記(1)の効果を好適に得られる電動パワーステアリング制御装置とすることができる。
(3) 更には、判定手段が、平均化されたデータが閾値以下と判定したときは、平均化処理手段が平均化したデータを操舵トルクとしてモータトルクを求める。
【0077】
従って、ヒステリシス処理は必要なときのみ行われることとなり、演算の効率がよい。
なお、上記各実施形態は以下のような別例に変更してもよい。
【0078】
・ 上記各実施形態では、トルク検出装置は電動パワーステアリング制御装置に用いられる場合について説明したが、これに限定されず、他の装置に用いられてもよい。
【0079】
・ 第2実施形態では、S11を2回平均フィルタとし、2回分の操舵トルクτ(入力値)を平均化するものとしたが、入力値が3回以上の過去の複数回分のデータであってもよい。
【0080】
・ 前記第1実施形態では、ヒステリシスフィルタをソフトで実現したが、ハード構成として、シュミットトリガ回路にて構成してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0081】
(イ) 前記ヒステリシス処理手段は、変換手段から今回入力したデータ(今回入力値)と前回出力した出力値(前回出力値)との差である変化量がヒステリシス幅以内であれば、今回の出力値を前回出力値と同じとし、ヒステリシス幅を超えていれば、前回出力値に変化分を加算して今回の出力値とすることを特徴とする請求項1又は請求項2のトルク検出装置。
【0082】
従って、今回入力値に対する出力値の変動を抑制することができる。なお、今回入力値とは、実施形態においては、出力値としてのデータを得るときに用いられる操舵トルクτのことである。
【0083】
(ロ) 前記ヒステリシス処理手段は、変換手段から今回入力したデータ(今回入力値)と前回出力した出力値(前回出力値)との差である変化量がヒステリシス幅以内であれば、今回の出力値を前回出力値と同じとし、ヒステリシス幅を超えていれば、前回出力値に変化分を加算して今回の出力値とすることを特徴とする請求項3又は請求項4の電動パワーステアリング装置。
【0084】
従って、操舵トルクの大きさに対応して、入力値に対する出力値を得ることができる。
【0085】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1及び請求項2の発明によれば、入力値に対する出力値の変動を抑えるとともに、入力値の急激な変化に対する出力値の追従性を向上させることができる。
【0086】
又、請求項3及び請求項4の発明によれば、上記効果を好適に得られるパワーステアリング制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態及び第2実施形態の電動パワーステアリング装置の概略図。
【図2】同じく電動パワーステアリング装置の制御ブロックダイヤグラム。
【図3】同じく電動パワーステアリング装置のフローチャート。
【図4】同じくヒステリシスフィルタを説明するグラフ。
【図5】同じくヒステリシスフィルタの応答性を説明するグラフ。
【図6】同じくメモリのデータ構成を示すメモリマップ。
【図7】第2実施形態の電動パワーステアリング装置のフローチャート。
【図8】従来の電動パワーステアリング装置のフローチャート。
【符号の説明】
4…トルクセンサ(出力手段)
6…モータ(電動モータ)
18a…A/D変換部(変換手段)
21…CPU(ヒステリシス処理手段、モータ制御手段、判定手段、平均化処理手段)
31…フィルタ部(ヒステリシス処理手段)
35…モータ駆動装置

Claims (4)

  1. ステアリング軸を回転させたとき、ステアリング軸に加わる操舵トルクに応じた信号を出力する出力手段と、
    前記信号をアナログ値からデジタル値に変換して出力する変換手段と、
    前記変換手段から入力したデータに対し、ヒステリシス処理を行い、前記データを基にしてヒステリシス幅内に納めたデータを生成して出力値として出力するヒステリシス処理手段と
    を備えたことを特徴とするトルク検出装置。
  2. ステアリング軸を回転させたとき、ステアリング軸に加わる操舵トルクに応じた信号を出力する出力手段と、
    前記信号をアナログ値からデジタル値に変換する変換手段と、
    前記変換手段から出力された信号の過去のデータと、現在のデータの平均処理を行う平均化処理手段と、
    前記平均化処理手段にて平均化されたデータと閾値との大小関係を判定する判定手段と、
    前記判定手段が、前記閾値よりも平均化されたデータの方が大きいと判定したときは、前記変換手段から入力したデータに対し、ヒステリシス処理を行い、前記データを基にしてヒステリシス幅内に納めたデータを生成して出力値として出力するヒステリシス処理手段と
    を備えたことを特徴とするトルク検出装置。
  3. 請求項1に記載のトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、電動モータを制御するモータ制御手段とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
  4. 請求項2に記載のトルク検出装置と、操舵トルクに対応するモータトルクを求め、電動モータを制御するモータ制御手段とを備え、
    前記モータ制御手段は、前記判定手段が、前記閾値よりも平均化されたデータの方が大きいと判定したときは、ヒステリシス処理手段のヒステリシス処理後の出力値を操舵トルクとして前記モータトルクを求め、
    前記判定手段が、平均化されたデータが前記閾値以下と判定したときは、平均化処理手段が平均化したデータを操舵トルクとしてモータトルクを求めることを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
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