JP3991771B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、操舵補助力の発生源として電動モータを採用した電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助する電動パワーステアリング装置では、たとえば、予め定められたアシスト特性に従って、ステアリング機構に入力される操舵トルクの大きさに応じたアシスト電流値が設定される。アシスト電流値は、電動モータに供給すべき電流の値であり、このアシスト電流値とモータに実際に流れる電流値とが一致するようにモータドライバを制御することによって、操舵トルクに応じた操舵補助力を電動モータから発生させることができる。
【0003】
アシスト特性では、零を含む一定の操舵トルク範囲が不感帯(トルク不感帯)として設定されており、ステアリング機構に入力される操舵トルクが不感帯内にある時には、アシスト電流値がほぼ零に設定されて、積極的な操舵補助が行われないようになっている。これにより、車両の直進時などにおいて、所望しない操舵補助が行われることによる車両のふらつきなどを防止でき、操舵安定感を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の電動パワーステアリング装置では、車両の走行速度(車速)やステアリング操作の速度(操舵速度)にかかわらず、不感帯の幅が一定であるため、ステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われたり、逆に、運転者がステアリング機構の動作にひっかかりを感じたりすることがあった。
そこで、この発明の目的は、トルク不感帯の幅を車速および操舵速度に応じて適切に変更することができ、これにより良好な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、電動モータ(M)からの発生トルクをステアリング機構(3)に与えて操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、上記ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(4)と、この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクに基づいて、電動モータに供給すべきアシスト電流値を設定するアシスト電流値設定手段(2)と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の走行速度である車速を検出する車速検出手段(5)と、上記ステアリング機構の操舵速度を検出する操舵速度検出手段(2,4,S1)と、上記アシスト電流値設定手段によってアシスト電流値が不感帯アシスト電流値(たとえば、一定の低電流値)に設定される操舵トルク範囲である不感帯の幅を、上記車速検出手段によって検出される車速をa乗(a:正の定数)した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗(b:正の定数)した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更する不感帯幅変更手段(2,S3)とを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、不感帯の幅が、下記第(1)式に従って、車速および操舵速度に応じた値に変更される。
不感帯幅=K×(車速)−a×(操舵速度)b ・・・・・・(1)
ここで、aは、正の定数であって、0<a<3の不等式を満たすことが好ましい。また、bは、正の定数であって、0<b<3の不等式を満たすことが好ましい。
【0007】
これにより、操舵速度が小さい時には不感帯幅が小さくされ、操舵速度が大きい時には不感帯幅が大きくされる。また、車速が小さい時には不感帯幅が大きくされ、車速が大きい時には不感帯幅が小さくされる。
よって、車速が大きく、かつ、操舵速度が小さい場合には、不感帯幅が小さくされるので、高速走行中の緩やかなステアリング操作に対しては、良好な応答性で操舵補助が行われ、ステアリング機構の動作のひっかかり感を運転者に与えるおそれがない。一方、高速走行中であっても、道路上の障害物を避けるために素早いステアリング操作が行われた場合には、不感帯幅が大きくされるので、その素早いステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われるおそれがない。
【0008】
また、車速が小さく、かつ、操舵速度が大きい場合には、不感帯幅が大きくされるので、ステアリング機構にトルクが入力されていない状態で操舵トルク検出手段が操舵トルクを検出するといった不具合が発生していても、積極的な操舵補助のためのアシスト電流値が設定されるおそれがなく、たとえば、車庫入れ時などに不所望な操舵補助が行われるおそれがない。
請求項2記載の発明は、上記不感帯幅変更手段(2,S2,S3,S4)は、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が予め定めるしきい値(α)未満であれば、不感帯の幅を上記車速検出手段によって検出される車速をa乗した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更し、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が上記しきい値以上であれば、不感帯の幅を所定の範囲内の一定値に変更するものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
【0009】
この発明によれば、操舵速度が予め定めるしきい値以上である場合には、不感帯の幅が所定の範囲内の一定値(零であってもよい。)に変更される。これにより、たとえば、人や車両の飛び出しがあり、その人や車両との衝突を回避するために緊急操舵が行われた場合に、その緊急操舵に対して良好な応答性で操舵補助を行うことができる。
なお、上記所定の範囲は、0〜1Nmの範囲であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイール1の操作に基づいて、電子制御ユニット2が電動モータMを駆動制御し、これにより電動モータMから発生されるトルクをステアリング機構3に与えて操舵補助を達成するように構成されている。
【0011】
ステアリング機構3は、ステアリングホイール1に結合されたステアリング軸31と、ステアリング軸31の先端に設けられたピニオンギア32と、車両の幅方向に直線運動可能に設けられたラックバー33とを含む。ステアリングホイール1を操作すると、ステアリング軸31が回転し、この回転に伴ってピニオンギア32が回転する。ピニオンギア32の回転は、ラックバー33を車両の幅方向(ラックバー33の長手方向)に直線運動させる。ラックバー33の直線運動は、図示しないタイロッドやナックルアームなどによって、舵取り用の前左右車輪の転舵力に変換される。電動モータMの発生トルクは、たとえば、減速機34を介してラックバー33に入力されるようになっている。
【0012】
ステアリング軸31に関連して、ステアリングホイール1の操舵角およびステアリングホイール1に入力された操舵トルクを検出するアングルトルクセンサ4が設けられている。具体的には、ステアリング軸31は、ステアリングホイール1に結合された入力軸31Aとピニオンギア32を介してラックバー33に結合された出力軸31Bとをトーションバー35で連結した構成になっており、アングルトルクセンサ4は、入力軸31Aおよび出力軸31Bの回転角をそれぞれ検出して、その検出した入力軸31Aの回転角に応じた信号を操舵角検出信号として出力し、また、入力軸31Aと出力軸31Bとの回転角差にトーションバー35の弾性定数を乗じた値に応じた信号を操舵トルク検出信号として出力する。このアングルトルクセンサ4の出力信号は、電子制御ユニット2に与えられるようになっている。電子制御ユニット2には、さらに、車速を検出する車速センサ5の出力信号が与えられるようになっている。
【0013】
電子制御ユニット2には、マイクロコンピュータが備えられており、このマイクロコンピュータに内蔵されたメモリには、たとえば、基本となるアシスト特性が格納されている。アシスト特性は、操舵トルクに対するアシスト電流値(電動モータMに供給すべき電流値)の特性を定めたもので、操舵トルクの値にかかわらずアシスト電流値が不感帯アシスト電流値(たとえば、零に近い一定の低電流値)に設定される不感帯を有している。また、不感帯外の操舵トルクに対しては、たとえば、予め定める傾きの1次関数に従って、操舵トルクの絶対値が大きいほどアシスト電流値が大きな値となるように定められている。
【0014】
なお、操舵トルクは、ステアリングホイール1に右方向操舵のための力が加えられた時に正の値をとり、ステアリングホイール1に左方向操舵のための力が加えられた時に負の値をとるものとする。
電子制御ユニット2では、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号および車速センサ5から入力される車速検出信号に基づいて、基本となるアシスト特性が電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性に変更される。すなわち、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号および車速センサ5から入力される車速検出信号に基づいて不感帯の幅を変更し、その不感帯幅の変更に応じて1次関数の部分を平行移動させることにより、基本となるアシスト特性が電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性に変更される。そして、その変更後のアシスト特性に従って、アングルトルクセンサ4から入力される操舵トルク検出信号に応じたアシスト電流値が設定される。そして、そのアシスト電流値に等しい電流が電動モータMに流れるようにモータドライバが制御される。
【0015】
図2は、アシスト特性の不感帯幅を変更するための処理について説明するためのフローチャートである。電子制御ユニット2では、まず、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号が表す操舵角を時間微分することにより、操舵角の時間変化量である操舵速度が検出される(ステップS1)。そして、その検出した操舵速度が予め定めるしきい値αよりも小さいか否かが調べられる(ステップS2)。しきい値αは、通常では行われないような緊急操舵が行われた時の操舵速度であり、たとえば、1000deg/secに設定されている。
【0016】
操舵速度がしきい値αよりも小さい場合には、アシスト特性の不感帯幅が、車速センサ5から入力される車速検出信号が表す車速をa乗(a:車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された正の定数)した値の逆数と、操舵速度をb乗(b:車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された正の定数)した値と、車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された比例定数とを乗じることにより得られる値に変更される。つまり、下記第(2)式に従って、電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性の不感帯の幅が決定される(ステップS3)。
【0017】
不感帯幅=K×(車速)−a×(操舵速度)b ・・・・・・(2)
これにより、図3および図4に示すように、操舵速度が小さい時には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定され、操舵速度が大きい時には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定される。また、図3と図4とを比較して判るように、車速が小さい時には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定され、車速が大きい時には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定される。
【0018】
よって、車速が大きく、かつ、操舵速度が小さい場合には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定されることになるので、高速走行中の緩やかなステアリング操作に対しては、良好な応答性で操舵補助が行われ、ステアリング機構3の動作のひっかかり感を運転者に与えるおそれがない。一方、高速走行中であっても、道路上の障害物を避けるためにステアリングホイール1が素早く操作されたような場合には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定されるので、その素早いステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われるおそれがない。
【0019】
また、車速が小さく、かつ、操舵速度が大きい場合には、アシスト特性の不感帯幅が大きく設定されるので、ステアリングホイール1に力が加えられていない状態でアングルトルクセンサ4が操舵トルクを検出するといった不具合(アングルトルクセンサ4の中点ずれ)が発生していても、積極的な操舵補助のためのアシスト電流値が設定されるおそれがない。よって、たとえば、車庫入れ時などに、アングルトルクセンサ4の中点ずれに起因した不所望な操舵補助が行われるおそれがない。
【0020】
一方、操舵速度がしきい値α以上である場合には、アシスト特性の不感帯の幅が零に変更される(ステップS4)。これにより、たとえば、人や車両の飛び出しがあり、その人や車両との衝突を回避するために緊急操舵が行われた場合に、その緊急操舵に対して良好な応答性で操舵補助を行うことができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。たとえば、操舵速度がしきい値α以上である場合には、不感帯の幅が零に近い一定値に変更されるようにしてもよい。つまり、操舵速度がしきい値α以上である場合には、不感帯の幅が0〜1Nmの範囲内の一定値に変更されるとよい。
【0021】
また、上記の実施形態では、操舵角および操舵トルクの両方を検出するアングルトルクセンサ4が設けられた構成を例にとったが、操舵角を検出するための操舵角センサと操舵トルクを検出するためのトルクセンサとが別々に設けられた構成が採用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図2】アシスト特性の不感帯の幅を変更するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】車速が比較的大きい場合におけるアシスト特性の変更例を示す図である。
【図4】車速が比較的小さい場合におけるアシスト特性の変更例を示す図である。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 電子制御ユニット(アシスト電流値設定手段、操舵速度検出手段、不感帯幅変更手段)
3 ステアリング機構
4 アングルトルクセンサ(操舵トルク検出手段、操舵速度検出手段)
5 車速センサ
31 ステアリング軸
31A 入力軸
31B 出力軸
32 ピニオンギア
33 ラックバー
34 減速機
35 トーションバー
M 電動モータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、操舵補助力の発生源として電動モータを採用した電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動モータが発生するトルクをステアリング機構に与えて操舵補助する電動パワーステアリング装置では、たとえば、予め定められたアシスト特性に従って、ステアリング機構に入力される操舵トルクの大きさに応じたアシスト電流値が設定される。アシスト電流値は、電動モータに供給すべき電流の値であり、このアシスト電流値とモータに実際に流れる電流値とが一致するようにモータドライバを制御することによって、操舵トルクに応じた操舵補助力を電動モータから発生させることができる。
【0003】
アシスト特性では、零を含む一定の操舵トルク範囲が不感帯(トルク不感帯)として設定されており、ステアリング機構に入力される操舵トルクが不感帯内にある時には、アシスト電流値がほぼ零に設定されて、積極的な操舵補助が行われないようになっている。これにより、車両の直進時などにおいて、所望しない操舵補助が行われることによる車両のふらつきなどを防止でき、操舵安定感を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の電動パワーステアリング装置では、車両の走行速度(車速)やステアリング操作の速度(操舵速度)にかかわらず、不感帯の幅が一定であるため、ステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われたり、逆に、運転者がステアリング機構の動作にひっかかりを感じたりすることがあった。
そこで、この発明の目的は、トルク不感帯の幅を車速および操舵速度に応じて適切に変更することができ、これにより良好な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、電動モータ(M)からの発生トルクをステアリング機構(3)に与えて操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、上記ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(4)と、この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクに基づいて、電動モータに供給すべきアシスト電流値を設定するアシスト電流値設定手段(2)と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の走行速度である車速を検出する車速検出手段(5)と、上記ステアリング機構の操舵速度を検出する操舵速度検出手段(2,4,S1)と、上記アシスト電流値設定手段によってアシスト電流値が不感帯アシスト電流値(たとえば、一定の低電流値)に設定される操舵トルク範囲である不感帯の幅を、上記車速検出手段によって検出される車速をa乗(a:正の定数)した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗(b:正の定数)した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更する不感帯幅変更手段(2,S3)とを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0006】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、不感帯の幅が、下記第(1)式に従って、車速および操舵速度に応じた値に変更される。
不感帯幅=K×(車速)−a×(操舵速度)b ・・・・・・(1)
ここで、aは、正の定数であって、0<a<3の不等式を満たすことが好ましい。また、bは、正の定数であって、0<b<3の不等式を満たすことが好ましい。
【0007】
これにより、操舵速度が小さい時には不感帯幅が小さくされ、操舵速度が大きい時には不感帯幅が大きくされる。また、車速が小さい時には不感帯幅が大きくされ、車速が大きい時には不感帯幅が小さくされる。
よって、車速が大きく、かつ、操舵速度が小さい場合には、不感帯幅が小さくされるので、高速走行中の緩やかなステアリング操作に対しては、良好な応答性で操舵補助が行われ、ステアリング機構の動作のひっかかり感を運転者に与えるおそれがない。一方、高速走行中であっても、道路上の障害物を避けるために素早いステアリング操作が行われた場合には、不感帯幅が大きくされるので、その素早いステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われるおそれがない。
【0008】
また、車速が小さく、かつ、操舵速度が大きい場合には、不感帯幅が大きくされるので、ステアリング機構にトルクが入力されていない状態で操舵トルク検出手段が操舵トルクを検出するといった不具合が発生していても、積極的な操舵補助のためのアシスト電流値が設定されるおそれがなく、たとえば、車庫入れ時などに不所望な操舵補助が行われるおそれがない。
請求項2記載の発明は、上記不感帯幅変更手段(2,S2,S3,S4)は、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が予め定めるしきい値(α)未満であれば、不感帯の幅を上記車速検出手段によって検出される車速をa乗した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更し、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が上記しきい値以上であれば、不感帯の幅を所定の範囲内の一定値に変更するものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
【0009】
この発明によれば、操舵速度が予め定めるしきい値以上である場合には、不感帯の幅が所定の範囲内の一定値(零であってもよい。)に変更される。これにより、たとえば、人や車両の飛び出しがあり、その人や車両との衝突を回避するために緊急操舵が行われた場合に、その緊急操舵に対して良好な応答性で操舵補助を行うことができる。
なお、上記所定の範囲は、0〜1Nmの範囲であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイール1の操作に基づいて、電子制御ユニット2が電動モータMを駆動制御し、これにより電動モータMから発生されるトルクをステアリング機構3に与えて操舵補助を達成するように構成されている。
【0011】
ステアリング機構3は、ステアリングホイール1に結合されたステアリング軸31と、ステアリング軸31の先端に設けられたピニオンギア32と、車両の幅方向に直線運動可能に設けられたラックバー33とを含む。ステアリングホイール1を操作すると、ステアリング軸31が回転し、この回転に伴ってピニオンギア32が回転する。ピニオンギア32の回転は、ラックバー33を車両の幅方向(ラックバー33の長手方向)に直線運動させる。ラックバー33の直線運動は、図示しないタイロッドやナックルアームなどによって、舵取り用の前左右車輪の転舵力に変換される。電動モータMの発生トルクは、たとえば、減速機34を介してラックバー33に入力されるようになっている。
【0012】
ステアリング軸31に関連して、ステアリングホイール1の操舵角およびステアリングホイール1に入力された操舵トルクを検出するアングルトルクセンサ4が設けられている。具体的には、ステアリング軸31は、ステアリングホイール1に結合された入力軸31Aとピニオンギア32を介してラックバー33に結合された出力軸31Bとをトーションバー35で連結した構成になっており、アングルトルクセンサ4は、入力軸31Aおよび出力軸31Bの回転角をそれぞれ検出して、その検出した入力軸31Aの回転角に応じた信号を操舵角検出信号として出力し、また、入力軸31Aと出力軸31Bとの回転角差にトーションバー35の弾性定数を乗じた値に応じた信号を操舵トルク検出信号として出力する。このアングルトルクセンサ4の出力信号は、電子制御ユニット2に与えられるようになっている。電子制御ユニット2には、さらに、車速を検出する車速センサ5の出力信号が与えられるようになっている。
【0013】
電子制御ユニット2には、マイクロコンピュータが備えられており、このマイクロコンピュータに内蔵されたメモリには、たとえば、基本となるアシスト特性が格納されている。アシスト特性は、操舵トルクに対するアシスト電流値(電動モータMに供給すべき電流値)の特性を定めたもので、操舵トルクの値にかかわらずアシスト電流値が不感帯アシスト電流値(たとえば、零に近い一定の低電流値)に設定される不感帯を有している。また、不感帯外の操舵トルクに対しては、たとえば、予め定める傾きの1次関数に従って、操舵トルクの絶対値が大きいほどアシスト電流値が大きな値となるように定められている。
【0014】
なお、操舵トルクは、ステアリングホイール1に右方向操舵のための力が加えられた時に正の値をとり、ステアリングホイール1に左方向操舵のための力が加えられた時に負の値をとるものとする。
電子制御ユニット2では、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号および車速センサ5から入力される車速検出信号に基づいて、基本となるアシスト特性が電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性に変更される。すなわち、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号および車速センサ5から入力される車速検出信号に基づいて不感帯の幅を変更し、その不感帯幅の変更に応じて1次関数の部分を平行移動させることにより、基本となるアシスト特性が電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性に変更される。そして、その変更後のアシスト特性に従って、アングルトルクセンサ4から入力される操舵トルク検出信号に応じたアシスト電流値が設定される。そして、そのアシスト電流値に等しい電流が電動モータMに流れるようにモータドライバが制御される。
【0015】
図2は、アシスト特性の不感帯幅を変更するための処理について説明するためのフローチャートである。電子制御ユニット2では、まず、アングルトルクセンサ4から入力される操舵角検出信号が表す操舵角を時間微分することにより、操舵角の時間変化量である操舵速度が検出される(ステップS1)。そして、その検出した操舵速度が予め定めるしきい値αよりも小さいか否かが調べられる(ステップS2)。しきい値αは、通常では行われないような緊急操舵が行われた時の操舵速度であり、たとえば、1000deg/secに設定されている。
【0016】
操舵速度がしきい値αよりも小さい場合には、アシスト特性の不感帯幅が、車速センサ5から入力される車速検出信号が表す車速をa乗(a:車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された正の定数)した値の逆数と、操舵速度をb乗(b:車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された正の定数)した値と、車両および電動パワーステアリング装置の特性に応じて決定された比例定数とを乗じることにより得られる値に変更される。つまり、下記第(2)式に従って、電動モータMの制御に用いられるべきアシスト特性の不感帯の幅が決定される(ステップS3)。
【0017】
不感帯幅=K×(車速)−a×(操舵速度)b ・・・・・・(2)
これにより、図3および図4に示すように、操舵速度が小さい時には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定され、操舵速度が大きい時には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定される。また、図3と図4とを比較して判るように、車速が小さい時には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定され、車速が大きい時には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定される。
【0018】
よって、車速が大きく、かつ、操舵速度が小さい場合には、不感帯幅の小さなアシスト特性が設定されることになるので、高速走行中の緩やかなステアリング操作に対しては、良好な応答性で操舵補助が行われ、ステアリング機構3の動作のひっかかり感を運転者に与えるおそれがない。一方、高速走行中であっても、道路上の障害物を避けるためにステアリングホイール1が素早く操作されたような場合には、不感帯幅の大きなアシスト特性が設定されるので、その素早いステアリング操作に対して過剰な応答性で操舵補助が行われるおそれがない。
【0019】
また、車速が小さく、かつ、操舵速度が大きい場合には、アシスト特性の不感帯幅が大きく設定されるので、ステアリングホイール1に力が加えられていない状態でアングルトルクセンサ4が操舵トルクを検出するといった不具合(アングルトルクセンサ4の中点ずれ)が発生していても、積極的な操舵補助のためのアシスト電流値が設定されるおそれがない。よって、たとえば、車庫入れ時などに、アングルトルクセンサ4の中点ずれに起因した不所望な操舵補助が行われるおそれがない。
【0020】
一方、操舵速度がしきい値α以上である場合には、アシスト特性の不感帯の幅が零に変更される(ステップS4)。これにより、たとえば、人や車両の飛び出しがあり、その人や車両との衝突を回避するために緊急操舵が行われた場合に、その緊急操舵に対して良好な応答性で操舵補助を行うことができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。たとえば、操舵速度がしきい値α以上である場合には、不感帯の幅が零に近い一定値に変更されるようにしてもよい。つまり、操舵速度がしきい値α以上である場合には、不感帯の幅が0〜1Nmの範囲内の一定値に変更されるとよい。
【0021】
また、上記の実施形態では、操舵角および操舵トルクの両方を検出するアングルトルクセンサ4が設けられた構成を例にとったが、操舵角を検出するための操舵角センサと操舵トルクを検出するためのトルクセンサとが別々に設けられた構成が採用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図2】アシスト特性の不感帯の幅を変更するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】車速が比較的大きい場合におけるアシスト特性の変更例を示す図である。
【図4】車速が比較的小さい場合におけるアシスト特性の変更例を示す図である。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 電子制御ユニット(アシスト電流値設定手段、操舵速度検出手段、不感帯幅変更手段)
3 ステアリング機構
4 アングルトルクセンサ(操舵トルク検出手段、操舵速度検出手段)
5 車速センサ
31 ステアリング軸
31A 入力軸
31B 出力軸
32 ピニオンギア
33 ラックバー
34 減速機
35 トーションバー
M 電動モータ
Claims (2)
- 電動モータからの発生トルクをステアリング機構に与えて操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、
上記ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
この操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクに基づいて、電動モータに供給すべきアシスト電流値を設定するアシスト電流値設定手段と、
当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の走行速度である車速を検出する車速検出手段と、
上記ステアリング機構の操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
上記アシスト電流値設定手段によってアシスト電流値が不感帯アシスト電流値に設定される操舵トルク範囲である不感帯の幅を、上記車速検出手段によって検出される車速をa乗(a:正の定数)した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗(b:正の定数)した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更する不感帯幅変更手段と
を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記不感帯幅変更手段は、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が予め定めるしきい値未満であれば、不感帯の幅を上記車速検出手段によって検出される車速をa乗した値の逆数と上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度をb乗した値と予め定められた比例定数とを掛け合わせた値に変更し、上記操舵速度検出手段によって検出された操舵速度が上記しきい値以上であれば、不感帯の幅を所定の範囲内の一定値に変更するものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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