JP2004168688A - エラグ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高収率、短時間でエラグ酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させ、次い酸処理を行うことによりエラグ酸を合成するにあたり、該酸素流通を供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件下に行うことを特徴とするエラグ酸の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させ、次い酸処理を行うことによりエラグ酸を合成するにあたり、該酸素流通を供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件下に行うことを特徴とするエラグ酸の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエラグ酸の製造方法に関する。詳しくは、没食子酸エステルを出発原料としてエラグ酸を高収率で製造することのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エラグ酸は、抗酸化剤、抗ガン剤、美白用化粧品の有効成分など用途があり有用な化合物である。一般には、エラグタンニンの加水分解、酸化により製造されているが、その原料であるタンニンの抽出効率が低いことから高価なものとなっている。一方、没食子酸エステルの酸化カップリング、及びそれに続く酸処理によりエラグ酸を合成できることは、非常に古くから知られている。例えば、炭酸水素ナトリウムもしくはアンモニアの存在下に没食子酸メチルを空気で酸化し、さらに酸性で処理することによりエラグ酸が得られることが報告されている(非特許文献1参照)が、この方法により得られるエラグ酸の収率は非常に低い。また、アンモニア水中で没食子酸メチルを空気酸化及び酸処理してエラグ酸を得る方法が開示されているが、室温で2日間の反応を行った結果、収率は最大50%となっており、工業的に実施可能なレベルではない(非特許文献2参照)。
【0003】
更に、炭酸水素ナトリウム水溶液中で、室温、40時間で空気酸化を行っている例があるが、収率は40〜50%にとどまっている(非特許文献3参照)。
【0004】
【非特許文献1】
「リービクス アナーレン デア ゲミ」(Liebigs Annalen der Chemie)、(独国)、1871年、第159号、p.32
【非特許文献2】
「モナッヘフテ フゥアー ゲミ」(Monatshefte fuer Chemie)、(独国)、1908年、第29号、p.277
【非特許文献3】
「リービクス アナーレン デア ゲミ」(Liebigs Annalen der Chemie)、(独国)、1984年、P.929
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように従来の方法は、いずれも塩基性化合物の存在下に空気を流通させて酸化カップリング反応を行ったものであるが、いずれも収率が低く50%以下にとどまっている。
本発明の目的は、酸化カップリング反応の効率を高め、効率的なエラグ酸の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一般に、この種の酸化反応は、酸素の供給が多いほど反応がよく進行すると考えるのが常識である。酸素の供給に最適値がある場合の多くは、生成物がさらに酸化を受けて副成物に変化する場合であるが、本反応では、反応時間を長くしてもほとんど収率に影響がないことから、このような生成物の追酸化の影響のみで酸素供給量が制限されるのではないことは推測される。本発明者らはこの酸素条件について種々の検討を行った結果、酸素の供給量によって収率が影響を受けることに知見し、しかもそれが驚くべきことに、酸化反応にもかかわらず酸素供給量が少ない方が収率が高いという現象を見出した。そして、この酸素供給量を制御することにより、従来報告されていた収率より高い値でエラグ酸を得ることに成功した。 即ち、本発明の要旨は、没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させ、次いで酸処理を行うことによりエラグ酸を合成するにあたり、該酸素流通を、供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件下に行うことを特徴とするエラグ酸の製造方法、に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のエラグ酸の製造方法において、出発原料は没食子酸エステルを用いる。
エステル部分は特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数23以下、中でも炭素数1以上、10以下のアルコキシ基であり、このアルコキシ部分には、炭素数1以上22以下、中でも1以上、10以下のアルコキシ基、フェニル基等の炭素数6〜22のアリール基、クロロ基、フ゛ロモ基等のハロケ゛ン基、ニトロ基等の置換基が1つ以上で、酸化カップリング反応をそこなわないかぎり存在しても構わない。具体的には、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル等が好ましく用いられる。
【0008】
反応系中の没食子酸エステルの存在量は、反応系全体に対し、通常1wt%以上、好ましくは5wt%以上であり、また通常99wt%以下、好ましくは50wt%以下の範囲で選ぶことができる。但し反応生成物が沈殿として生じる場合は、原料濃度が高すぎると撹拌が難しくなる傾向があり、そのような場合は希薄な溶液、例えば20wt%以下で行うことが好ましい。また、必ずしも必須条件ではないが、原料の没食子酸エステルが反応初期に反応溶液に溶解している方が好ましく、溶解させるために、エステル基の種類、溶媒の種類、反応温度を適宜選択すべきである。
【0009】
反応系中の没食子酸エステルの存在量は、反応系全体に対し、通常1vol%以上、好ましくは5vol%以上であり、また通常99vol%以下、好ましくは50vol%以下の範囲で選ぶことができる。但し反応生成物が沈殿として生じる場合は、原料濃度が高すぎると攪拌が難しくなる傾向があり、そのような場合は希薄な溶液、例えば5vol%以下で行うことが好ましい。
【0010】
本発明において、没食子酸エステルを酸化カップリング反応させる際の反応溶媒は特に限定されないが、例えば、アルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられ、原料の没食子酸エステルが可溶なものが好ましい。中でもアルコール類又はアルコール水溶液が、後述するpH調節剤としての塩基性化合物を溶解しやすいか又はpH調節剤の水溶液と混和しやすく、更に反応後の生成物が不溶であるので分離が容易になるので好ましい。アルコール類としては、通常、炭素数1〜10のアルコールが用いられ、中でもメタノールが好ましい。アルコール水溶液の場合、水溶液中のアルコール類の含有量は、反応容積全体に対して、通常1vol%以上、好ましくは5vol%以上であり、また、通常99vol%以下、好ましくは80vol%以下の範囲内である。
【0011】
水溶液中のアルコール類の含有量を増やすことに没食子酸エステルを溶解させる量が多くなり、結果として同体積での生産性向上につながるが、例えば後述する塩基性化合物が炭酸水素ナトリウム等の無機塩の場合、アルコールの含有量が多すぎるとこれら無機塩の溶解性が悪くなり、反応速度に影響が出る場合があるので、アルコール含有量は適宜選択されるべきである。
【0012】
本発明においては、没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させる際の酸素流通を、供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件で行うことを必要とする。
酸素流通は、通常、原料である没食子酸エステルを溶解もしくは懸濁させた溶液に、酸素を含有するガスを流通させることによって行われる。酸素を含有するガスとは、通常、酸素濃度が1000ppm以上、好ましくは1%以上であり、上限が通常100%以下、好ましくは30%以下であるガスであれば良く、通常は空気が用いられる。
【0013】
供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、反応器のガス供給口と反応器からのガス排出出口の各酸素濃度の比として算出することができる。多段の反応器を経て酸化カップリング反応を行なう場合には一連の酸化カップリング反応を開始する反応器のガス供給口と、反応を終了する反応器出口のガス排出出口とで対比すればよい。この値が大きすぎると収率が低い。つまり消費酸素量に対して供給酸素量が多過ぎる場合は、後述するように追酸化ではないなんらかの副反応、もしくは、反応そのものへの阻害が起っていることを示しており、これを制御することにより高い収率でエラグ酸を得ることができる。供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、好ましくは40倍以下、更に好ましくは30倍以下、最も好ましくは20倍以下がよい。この値が大きすぎると、条件によっては反応の進行は早いが収率は50%以下にとどまり、即ち、半分以上の原料が無駄となる結果となる。実施例で示すように、反応に足りうる酸素があれば、反応は進行する、つまり消費酸素量と供給酸素量がほぼ等しい場合でも反応が可能であるので、下限値は特に制限はないが、このような場合、反応の進行が特に反応の後半で非常に遅くなる可能性があるので、供給酸素量は消費酸素量よりも若干過剰な方がよい。そういう意味であえて下限値を設けるとすれば1.5倍以上となる。
【0014】
反応系内の酸素が過多であると収率が低下する原因としては、推測ではあるが、没食子酸エステルからジケト化合物が生じる副反応が起こることが原因と考えられる。(下記反応式参照)。これらジケト化合物は、さらに酸素による酸化を受けてジカルボン酸などに変換される。実際、同定はできていないが、3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルが沈降した後の上澄み溶液のNMRを測定すると、種々の環境にあるカルボキシル基が観測される。
【0015】
【化1】
また、このジケト化合物も没食子酸エステルと酸化カップリングすることが考えられるが、同様に、このジケト基部分が酸素によって開環しやすいので、例えば下記のようなルートを通って過多な酸素により副生物に導かれるこが予想できる。
【0016】
【化2】
なお、酸素と有機化合物はある温度、ある圧力領域、組成領域において、爆発性混合物を作る可能性があるのでその危険性を回避することが必要である。酸素の分圧は通常0.001Mpa以上であれば反応は進行するが、酸素分圧が低いと反応速度が遅くなる傾向があり、触媒の失活が懸念される。好ましい酸素分圧は、温度、触媒濃度との関係で決定する必要があるが、本発明においては、0.001Mpa以上であり、上限は10Mpa以下とするのが良い。
【0017】
酸素を含有するガスの供給は、酸素を含むカ゛スを攪拌翼によって細かい気泡とする手法、反応器の内側に邪魔板を設け酸素カ゛スを細かい気泡とする手法、ノス゛ルより高線速で系中に噴霧するといった手法により、反応溶液系への酸素の溶解に有効な手法を採用することができる。
本発明においては、酸化カップリング反応時に、周期表5〜11族に属する金属元素を含有する化合物を触媒として使用してもよい。具体的な金属元素としては、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、銅、銀が挙げられ、特に、マンガン、コバルト、鉄の少なくとも1種を含有するものが好ましい。最も好ましい金属元素はマンガン、コバルトである。この場合の触媒は均一系でも不均一系でもよい。これらの金属化合物としては、塩化物、臭化物等の金属塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が代表的である。具体的には、コバルト化合物の例を挙げると、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)等の塩化物、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(III)等の臭化物、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)等の無機酸塩、酢酸コバルト(II)、酢酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、シュウ酸コバルト(III)、ギ酸コバルト、アセチルアセトンコバルト等の各種の塩又は配位化合物の形態で反応に供することができる。
【0018】
上記周期表5〜11族から選ばれる金属元素の使用量の上限値は、没食子酸エステルに対し通常、当量以下、好ましくは、0.1当量以下である。下限値は、没食子酸エステルに対し、通常、0.00001当量以上、好ましくは、0.0001当量以上である。
また、触媒の濃度は、一般的に低濃度であることが経済的な観点では好ましいが、生産性という観点では、反応速度が触媒濃度に対して負の相関が無い領域においては、ある程度高濃度化した方が好ましい。これらの観点において金属化合物の濃度は、全反応液重量に対して、通常0.001wt%以上、好ましくは0.01wt%以上、また通常10wt%以下、好ましくは5wt%以下の範囲である。高濃度下条件では、反応速度の濃度依存性が低濃度条件下とは異なる挙動を示し、触媒効率が悪くなる傾向にあるため、経済的な観点から効率的な濃度が選択されるべきである。
【0019】
本発明においては、酸化カップリング反応時の反応系内のpHは酸性側でも若干反応するが、反応効率の点でpH7以上であることが好ましい。pHの上限値は14以下、好ましくは、11以下、特に好ましくは9以下である。酸化カップリングの際に主として生成する3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルは、アルカリ性溶液中では、いくらかは、エステル交換反応によりエラグ酸で存在すると思われる。エラグ酸は、アルカリ溶液中では酸化されやすい性質があることが知られており、特に高pH条件でエラグ酸が溶解した状態では酸化を受け易いので、pHは弱塩基性である方がより好ましい。塩基性条件下で、反応がより効率よく反応するのは、塩基性条件下で、フェノール性水酸基のプロトンを引き抜かれた形の没食子酸エステルアニオンからのラジカル種の発生が、没食子酸エステルそのものよりも容易なため、反応の進行がより効率的になると推測される。
【0020】
反応系のpHを調節する手段としては、塩基性の化合物を添加する方法が挙げられる。塩基性の化合物とは具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの塩基性固体、アンモニア、アミンなどの有機化合物、陰イオン交換樹脂などの塩基性固体などが挙げられる。中でも、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。これら塩基性化合物の添加量は、少量でも効果があるが、好ましくは没食子酸エステルとモル等量以上、さらに好ましくは2倍モル量以上が好ましい。
【0021】
反応は塩基性条件で行われるのが好ましいので、反応器の材質としては、ガラスのような塩基に弱いものは避けるべきである。
酸化カップリング反応時の反応温度は、通常10℃以上であれば反応が進行することが確認できるが、本発明の反応の温度依存性は大きいので、より高温が好ましい。しかしながら爆発性混合物の形成条件を回避すること、及び、高温領域で進行しやすくなる副生物の増大は避けるべきことであり、これらの観点から反応温度は選択されるべきであるが、一般的には本反応は、20℃以上、好ましくは30℃以上の温度領域で行うことが好ましい。上限は通常100℃以下、経済的に有利な反応速度を得るためには80℃以下とするのが好ましい。
【0022】
上記酸化カップリング反応は、一般的な酸化の方法に従って行うことができる。回分反応器により特定の反応時間、没食子酸エステルと酸素を含有するカ゛スとを接触させて酸化反応を進行させることもできるし、連続相反応器により、酸素を含有するカ゛ス及び没食子酸エステルを連続的又は間歇的に供給して酸化重合反応を進行させることができる。また反応段数は一段であっても多段であってもよい。一方、触媒成分が固定化されている場合においては、前述の液相反応を使用することもできるし、固定床に触媒を充填し、液相状態として対応する没食子酸エステル及び必要により酸素を含有するガスを供給するいわゆるトリクルヘ゛ット゛方式を採用することもできる。
【0023】
酸化カップリング反応後には、主として3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルを生じて、これを酸処理することによりエラグ酸を得る。
酸処理は、反応溶液に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ヘテロホ゜リ酸等のホ゜リ酸、イオン交換樹脂、セ゛オライト、粘土等の固体酸等の酸を添加して中和すればよく、さらに添加を続けて液性を酸性にしてもよい。酸化カップリング反応時にアンモニア等の有機塩基を用いた場合は、加熱等により塩基を揮発除去した後に酸を添加してもよい。また酸化カップリング反応時に反応溶媒として、酸化カップリング反応生成物が不溶な溶媒もしくは混合溶媒を使用した場合は、酸化カップリング反応後の生成物は固形分として得られるため、ろ過等の固液分離の後に酸を添加するか、あるいは固液分離した生成物を酸性の溶液に懸濁させる等の処理をしてもよい。
【0024】
上記のうち、例えば縣濁処理に用いる酸性溶液の量は、通常懸濁溶液の生成物濃度が5〜50重量%になるように調整すればよく、縣濁時間は、通常10分〜1時間であるが、さらに長い時間懸濁してもよく、また懸濁処理の際に、超音波を照射させる等の処理を行ってもよい。
固液分離の際には、水等で洗浄した後に酸処理することも可能である。上記の濾過処理により分離された濾液中の触媒は、反応器にリサイクルして使用することができる。
【0025】
反応後の反応混合物に直接酸を添加する場合、又は一度生成物を濾別した後、水に懸濁した状態で酸を添加する場合の、いずれの場合も、高濃度の酸を添加・滴下するとエラグ酸に黄色の着色が見られる場合がある。従って、これを避けるためには、添加・滴下する酸の濃度を、好ましくは80wt%以下、さらに好ましくは50wt%以下の水溶液として添加するのがよい。
【0026】
このようにして得られたエラグ酸は、通常、乾燥処理により精製を行う。精製における圧力は特に限定されないが、常圧、もしくは常圧より低い減圧下が好ましい。乾燥温度は、通常88℃以上であり、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限は、窒素雰囲気下では通常、470℃以下、好ましくは220℃以下であり、空気雰囲気下では、200℃以下が好ましい。乾燥時間は、選択される乾燥温度にもよるが、例えば常圧、150℃の場合、1時間で十分精製することができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
8.5gの炭酸水素ナトリウム水溶液200mlを入れた直径3cm高さ35cmメスシリンダー型の円筒状反応器をウオーターバスに入れ、マグネットスターラーで攪拌しながら30℃に保った。これに先にガラスフィルター(G4)を付けたノズルを底から1cm程度に据え付け,毎分5mlの流量で空気をバブリングさせた。さらに没食子酸メチル3.75gを20mlのメタノールに溶解させた溶液を加え,反応を開始した。後述する所定の時間後,攪拌,空気(酸素濃度21%)の流通を止めて静置したところ,緑色の沈殿物を得た。これを濾別した後,10%硫酸水溶液200mlに1時間懸濁させ,濾別することにより粗エラグ酸を得た。
【0028】
この粗エラグ酸を5%硫酸水溶液200mlに1時間懸濁させた後,濾別した。濾別されたエラグ酸を洗液がpH7になるまで洗浄した。さらに,これを水200mlに懸濁させ,懸洗した後,再び濾別した。これを減圧下60℃で3時間乾燥させた後,常圧で150℃1時間加熱処理をして,精製したエラグ酸を得た。
反応時間が3時間の場合、収率は7.84%, 5時間で13.4%、12時間で40.88%、18時間で57.2%、24時間で67%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたが、ほとんど変化がなく、66%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、10.1倍、9.90倍、7.75倍、8.33倍、9.43倍であった。
【0029】
実施例2
空気の流量を毎分21mlとした他は実施例1と同様に反応を行った。
反応時間が6時間の場合、収率は26%,12時間で46%、18時間で52%、24時間で56%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたがほとんど変化がなく、55%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、それぞれ、25.6倍、28.6倍、38.5倍、47.6倍であった。
【0030】
比較例1
空気の流量を毎分100mlとした他は実施例1と同様に反応を行った。
反応時間が3時間の場合、収率は26%, 5時間で43%、8時間で44%、12時間で46%、18時間で43%、24時間で42%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたが、ほとんど変化がなく、40%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、それぞれ58.8倍、62.5倍、100倍、142.9倍、250倍、333倍であった。
【0031】
即ち、反応終了後(反応時間を延ばしても収率がこれ以上増えない時点)での供給酸素量の消費酸素量に対する割合と、収率の関係は以下の表−1ようになる。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、没食子酸エステルの酸化カップリング反応の効率を高め、反応時間を短縮化することのできるので、非常に効率的にエラグ酸を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はエラグ酸の製造方法に関する。詳しくは、没食子酸エステルを出発原料としてエラグ酸を高収率で製造することのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エラグ酸は、抗酸化剤、抗ガン剤、美白用化粧品の有効成分など用途があり有用な化合物である。一般には、エラグタンニンの加水分解、酸化により製造されているが、その原料であるタンニンの抽出効率が低いことから高価なものとなっている。一方、没食子酸エステルの酸化カップリング、及びそれに続く酸処理によりエラグ酸を合成できることは、非常に古くから知られている。例えば、炭酸水素ナトリウムもしくはアンモニアの存在下に没食子酸メチルを空気で酸化し、さらに酸性で処理することによりエラグ酸が得られることが報告されている(非特許文献1参照)が、この方法により得られるエラグ酸の収率は非常に低い。また、アンモニア水中で没食子酸メチルを空気酸化及び酸処理してエラグ酸を得る方法が開示されているが、室温で2日間の反応を行った結果、収率は最大50%となっており、工業的に実施可能なレベルではない(非特許文献2参照)。
【0003】
更に、炭酸水素ナトリウム水溶液中で、室温、40時間で空気酸化を行っている例があるが、収率は40〜50%にとどまっている(非特許文献3参照)。
【0004】
【非特許文献1】
「リービクス アナーレン デア ゲミ」(Liebigs Annalen der Chemie)、(独国)、1871年、第159号、p.32
【非特許文献2】
「モナッヘフテ フゥアー ゲミ」(Monatshefte fuer Chemie)、(独国)、1908年、第29号、p.277
【非特許文献3】
「リービクス アナーレン デア ゲミ」(Liebigs Annalen der Chemie)、(独国)、1984年、P.929
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように従来の方法は、いずれも塩基性化合物の存在下に空気を流通させて酸化カップリング反応を行ったものであるが、いずれも収率が低く50%以下にとどまっている。
本発明の目的は、酸化カップリング反応の効率を高め、効率的なエラグ酸の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一般に、この種の酸化反応は、酸素の供給が多いほど反応がよく進行すると考えるのが常識である。酸素の供給に最適値がある場合の多くは、生成物がさらに酸化を受けて副成物に変化する場合であるが、本反応では、反応時間を長くしてもほとんど収率に影響がないことから、このような生成物の追酸化の影響のみで酸素供給量が制限されるのではないことは推測される。本発明者らはこの酸素条件について種々の検討を行った結果、酸素の供給量によって収率が影響を受けることに知見し、しかもそれが驚くべきことに、酸化反応にもかかわらず酸素供給量が少ない方が収率が高いという現象を見出した。そして、この酸素供給量を制御することにより、従来報告されていた収率より高い値でエラグ酸を得ることに成功した。 即ち、本発明の要旨は、没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させ、次いで酸処理を行うことによりエラグ酸を合成するにあたり、該酸素流通を、供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件下に行うことを特徴とするエラグ酸の製造方法、に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のエラグ酸の製造方法において、出発原料は没食子酸エステルを用いる。
エステル部分は特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数23以下、中でも炭素数1以上、10以下のアルコキシ基であり、このアルコキシ部分には、炭素数1以上22以下、中でも1以上、10以下のアルコキシ基、フェニル基等の炭素数6〜22のアリール基、クロロ基、フ゛ロモ基等のハロケ゛ン基、ニトロ基等の置換基が1つ以上で、酸化カップリング反応をそこなわないかぎり存在しても構わない。具体的には、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル等が好ましく用いられる。
【0008】
反応系中の没食子酸エステルの存在量は、反応系全体に対し、通常1wt%以上、好ましくは5wt%以上であり、また通常99wt%以下、好ましくは50wt%以下の範囲で選ぶことができる。但し反応生成物が沈殿として生じる場合は、原料濃度が高すぎると撹拌が難しくなる傾向があり、そのような場合は希薄な溶液、例えば20wt%以下で行うことが好ましい。また、必ずしも必須条件ではないが、原料の没食子酸エステルが反応初期に反応溶液に溶解している方が好ましく、溶解させるために、エステル基の種類、溶媒の種類、反応温度を適宜選択すべきである。
【0009】
反応系中の没食子酸エステルの存在量は、反応系全体に対し、通常1vol%以上、好ましくは5vol%以上であり、また通常99vol%以下、好ましくは50vol%以下の範囲で選ぶことができる。但し反応生成物が沈殿として生じる場合は、原料濃度が高すぎると攪拌が難しくなる傾向があり、そのような場合は希薄な溶液、例えば5vol%以下で行うことが好ましい。
【0010】
本発明において、没食子酸エステルを酸化カップリング反応させる際の反応溶媒は特に限定されないが、例えば、アルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられ、原料の没食子酸エステルが可溶なものが好ましい。中でもアルコール類又はアルコール水溶液が、後述するpH調節剤としての塩基性化合物を溶解しやすいか又はpH調節剤の水溶液と混和しやすく、更に反応後の生成物が不溶であるので分離が容易になるので好ましい。アルコール類としては、通常、炭素数1〜10のアルコールが用いられ、中でもメタノールが好ましい。アルコール水溶液の場合、水溶液中のアルコール類の含有量は、反応容積全体に対して、通常1vol%以上、好ましくは5vol%以上であり、また、通常99vol%以下、好ましくは80vol%以下の範囲内である。
【0011】
水溶液中のアルコール類の含有量を増やすことに没食子酸エステルを溶解させる量が多くなり、結果として同体積での生産性向上につながるが、例えば後述する塩基性化合物が炭酸水素ナトリウム等の無機塩の場合、アルコールの含有量が多すぎるとこれら無機塩の溶解性が悪くなり、反応速度に影響が出る場合があるので、アルコール含有量は適宜選択されるべきである。
【0012】
本発明においては、没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させる際の酸素流通を、供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件で行うことを必要とする。
酸素流通は、通常、原料である没食子酸エステルを溶解もしくは懸濁させた溶液に、酸素を含有するガスを流通させることによって行われる。酸素を含有するガスとは、通常、酸素濃度が1000ppm以上、好ましくは1%以上であり、上限が通常100%以下、好ましくは30%以下であるガスであれば良く、通常は空気が用いられる。
【0013】
供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、反応器のガス供給口と反応器からのガス排出出口の各酸素濃度の比として算出することができる。多段の反応器を経て酸化カップリング反応を行なう場合には一連の酸化カップリング反応を開始する反応器のガス供給口と、反応を終了する反応器出口のガス排出出口とで対比すればよい。この値が大きすぎると収率が低い。つまり消費酸素量に対して供給酸素量が多過ぎる場合は、後述するように追酸化ではないなんらかの副反応、もしくは、反応そのものへの阻害が起っていることを示しており、これを制御することにより高い収率でエラグ酸を得ることができる。供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、好ましくは40倍以下、更に好ましくは30倍以下、最も好ましくは20倍以下がよい。この値が大きすぎると、条件によっては反応の進行は早いが収率は50%以下にとどまり、即ち、半分以上の原料が無駄となる結果となる。実施例で示すように、反応に足りうる酸素があれば、反応は進行する、つまり消費酸素量と供給酸素量がほぼ等しい場合でも反応が可能であるので、下限値は特に制限はないが、このような場合、反応の進行が特に反応の後半で非常に遅くなる可能性があるので、供給酸素量は消費酸素量よりも若干過剰な方がよい。そういう意味であえて下限値を設けるとすれば1.5倍以上となる。
【0014】
反応系内の酸素が過多であると収率が低下する原因としては、推測ではあるが、没食子酸エステルからジケト化合物が生じる副反応が起こることが原因と考えられる。(下記反応式参照)。これらジケト化合物は、さらに酸素による酸化を受けてジカルボン酸などに変換される。実際、同定はできていないが、3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルが沈降した後の上澄み溶液のNMRを測定すると、種々の環境にあるカルボキシル基が観測される。
【0015】
【化1】
また、このジケト化合物も没食子酸エステルと酸化カップリングすることが考えられるが、同様に、このジケト基部分が酸素によって開環しやすいので、例えば下記のようなルートを通って過多な酸素により副生物に導かれるこが予想できる。
【0016】
【化2】
なお、酸素と有機化合物はある温度、ある圧力領域、組成領域において、爆発性混合物を作る可能性があるのでその危険性を回避することが必要である。酸素の分圧は通常0.001Mpa以上であれば反応は進行するが、酸素分圧が低いと反応速度が遅くなる傾向があり、触媒の失活が懸念される。好ましい酸素分圧は、温度、触媒濃度との関係で決定する必要があるが、本発明においては、0.001Mpa以上であり、上限は10Mpa以下とするのが良い。
【0017】
酸素を含有するガスの供給は、酸素を含むカ゛スを攪拌翼によって細かい気泡とする手法、反応器の内側に邪魔板を設け酸素カ゛スを細かい気泡とする手法、ノス゛ルより高線速で系中に噴霧するといった手法により、反応溶液系への酸素の溶解に有効な手法を採用することができる。
本発明においては、酸化カップリング反応時に、周期表5〜11族に属する金属元素を含有する化合物を触媒として使用してもよい。具体的な金属元素としては、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、銅、銀が挙げられ、特に、マンガン、コバルト、鉄の少なくとも1種を含有するものが好ましい。最も好ましい金属元素はマンガン、コバルトである。この場合の触媒は均一系でも不均一系でもよい。これらの金属化合物としては、塩化物、臭化物等の金属塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が代表的である。具体的には、コバルト化合物の例を挙げると、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)等の塩化物、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(III)等の臭化物、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)等の無機酸塩、酢酸コバルト(II)、酢酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、シュウ酸コバルト(III)、ギ酸コバルト、アセチルアセトンコバルト等の各種の塩又は配位化合物の形態で反応に供することができる。
【0018】
上記周期表5〜11族から選ばれる金属元素の使用量の上限値は、没食子酸エステルに対し通常、当量以下、好ましくは、0.1当量以下である。下限値は、没食子酸エステルに対し、通常、0.00001当量以上、好ましくは、0.0001当量以上である。
また、触媒の濃度は、一般的に低濃度であることが経済的な観点では好ましいが、生産性という観点では、反応速度が触媒濃度に対して負の相関が無い領域においては、ある程度高濃度化した方が好ましい。これらの観点において金属化合物の濃度は、全反応液重量に対して、通常0.001wt%以上、好ましくは0.01wt%以上、また通常10wt%以下、好ましくは5wt%以下の範囲である。高濃度下条件では、反応速度の濃度依存性が低濃度条件下とは異なる挙動を示し、触媒効率が悪くなる傾向にあるため、経済的な観点から効率的な濃度が選択されるべきである。
【0019】
本発明においては、酸化カップリング反応時の反応系内のpHは酸性側でも若干反応するが、反応効率の点でpH7以上であることが好ましい。pHの上限値は14以下、好ましくは、11以下、特に好ましくは9以下である。酸化カップリングの際に主として生成する3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルは、アルカリ性溶液中では、いくらかは、エステル交換反応によりエラグ酸で存在すると思われる。エラグ酸は、アルカリ溶液中では酸化されやすい性質があることが知られており、特に高pH条件でエラグ酸が溶解した状態では酸化を受け易いので、pHは弱塩基性である方がより好ましい。塩基性条件下で、反応がより効率よく反応するのは、塩基性条件下で、フェノール性水酸基のプロトンを引き抜かれた形の没食子酸エステルアニオンからのラジカル種の発生が、没食子酸エステルそのものよりも容易なため、反応の進行がより効率的になると推測される。
【0020】
反応系のpHを調節する手段としては、塩基性の化合物を添加する方法が挙げられる。塩基性の化合物とは具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの塩基性固体、アンモニア、アミンなどの有機化合物、陰イオン交換樹脂などの塩基性固体などが挙げられる。中でも、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。これら塩基性化合物の添加量は、少量でも効果があるが、好ましくは没食子酸エステルとモル等量以上、さらに好ましくは2倍モル量以上が好ましい。
【0021】
反応は塩基性条件で行われるのが好ましいので、反応器の材質としては、ガラスのような塩基に弱いものは避けるべきである。
酸化カップリング反応時の反応温度は、通常10℃以上であれば反応が進行することが確認できるが、本発明の反応の温度依存性は大きいので、より高温が好ましい。しかしながら爆発性混合物の形成条件を回避すること、及び、高温領域で進行しやすくなる副生物の増大は避けるべきことであり、これらの観点から反応温度は選択されるべきであるが、一般的には本反応は、20℃以上、好ましくは30℃以上の温度領域で行うことが好ましい。上限は通常100℃以下、経済的に有利な反応速度を得るためには80℃以下とするのが好ましい。
【0022】
上記酸化カップリング反応は、一般的な酸化の方法に従って行うことができる。回分反応器により特定の反応時間、没食子酸エステルと酸素を含有するカ゛スとを接触させて酸化反応を進行させることもできるし、連続相反応器により、酸素を含有するカ゛ス及び没食子酸エステルを連続的又は間歇的に供給して酸化重合反応を進行させることができる。また反応段数は一段であっても多段であってもよい。一方、触媒成分が固定化されている場合においては、前述の液相反応を使用することもできるし、固定床に触媒を充填し、液相状態として対応する没食子酸エステル及び必要により酸素を含有するガスを供給するいわゆるトリクルヘ゛ット゛方式を採用することもできる。
【0023】
酸化カップリング反応後には、主として3,3‘,4,4’,5,5‘−ヘキサヒドロキシ−2,2’−ジ安息香酸エステルを生じて、これを酸処理することによりエラグ酸を得る。
酸処理は、反応溶液に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ヘテロホ゜リ酸等のホ゜リ酸、イオン交換樹脂、セ゛オライト、粘土等の固体酸等の酸を添加して中和すればよく、さらに添加を続けて液性を酸性にしてもよい。酸化カップリング反応時にアンモニア等の有機塩基を用いた場合は、加熱等により塩基を揮発除去した後に酸を添加してもよい。また酸化カップリング反応時に反応溶媒として、酸化カップリング反応生成物が不溶な溶媒もしくは混合溶媒を使用した場合は、酸化カップリング反応後の生成物は固形分として得られるため、ろ過等の固液分離の後に酸を添加するか、あるいは固液分離した生成物を酸性の溶液に懸濁させる等の処理をしてもよい。
【0024】
上記のうち、例えば縣濁処理に用いる酸性溶液の量は、通常懸濁溶液の生成物濃度が5〜50重量%になるように調整すればよく、縣濁時間は、通常10分〜1時間であるが、さらに長い時間懸濁してもよく、また懸濁処理の際に、超音波を照射させる等の処理を行ってもよい。
固液分離の際には、水等で洗浄した後に酸処理することも可能である。上記の濾過処理により分離された濾液中の触媒は、反応器にリサイクルして使用することができる。
【0025】
反応後の反応混合物に直接酸を添加する場合、又は一度生成物を濾別した後、水に懸濁した状態で酸を添加する場合の、いずれの場合も、高濃度の酸を添加・滴下するとエラグ酸に黄色の着色が見られる場合がある。従って、これを避けるためには、添加・滴下する酸の濃度を、好ましくは80wt%以下、さらに好ましくは50wt%以下の水溶液として添加するのがよい。
【0026】
このようにして得られたエラグ酸は、通常、乾燥処理により精製を行う。精製における圧力は特に限定されないが、常圧、もしくは常圧より低い減圧下が好ましい。乾燥温度は、通常88℃以上であり、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限は、窒素雰囲気下では通常、470℃以下、好ましくは220℃以下であり、空気雰囲気下では、200℃以下が好ましい。乾燥時間は、選択される乾燥温度にもよるが、例えば常圧、150℃の場合、1時間で十分精製することができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
8.5gの炭酸水素ナトリウム水溶液200mlを入れた直径3cm高さ35cmメスシリンダー型の円筒状反応器をウオーターバスに入れ、マグネットスターラーで攪拌しながら30℃に保った。これに先にガラスフィルター(G4)を付けたノズルを底から1cm程度に据え付け,毎分5mlの流量で空気をバブリングさせた。さらに没食子酸メチル3.75gを20mlのメタノールに溶解させた溶液を加え,反応を開始した。後述する所定の時間後,攪拌,空気(酸素濃度21%)の流通を止めて静置したところ,緑色の沈殿物を得た。これを濾別した後,10%硫酸水溶液200mlに1時間懸濁させ,濾別することにより粗エラグ酸を得た。
【0028】
この粗エラグ酸を5%硫酸水溶液200mlに1時間懸濁させた後,濾別した。濾別されたエラグ酸を洗液がpH7になるまで洗浄した。さらに,これを水200mlに懸濁させ,懸洗した後,再び濾別した。これを減圧下60℃で3時間乾燥させた後,常圧で150℃1時間加熱処理をして,精製したエラグ酸を得た。
反応時間が3時間の場合、収率は7.84%, 5時間で13.4%、12時間で40.88%、18時間で57.2%、24時間で67%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたが、ほとんど変化がなく、66%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、10.1倍、9.90倍、7.75倍、8.33倍、9.43倍であった。
【0029】
実施例2
空気の流量を毎分21mlとした他は実施例1と同様に反応を行った。
反応時間が6時間の場合、収率は26%,12時間で46%、18時間で52%、24時間で56%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたがほとんど変化がなく、55%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、それぞれ、25.6倍、28.6倍、38.5倍、47.6倍であった。
【0030】
比較例1
空気の流量を毎分100mlとした他は実施例1と同様に反応を行った。
反応時間が3時間の場合、収率は26%, 5時間で43%、8時間で44%、12時間で46%、18時間で43%、24時間で42%であった。これ以上反応を長くしても若干の減少はみられたが、ほとんど変化がなく、40%の最終収率であった。それぞれの反応時間での供給酸素量の消費酸素量に対する割合は、それぞれ58.8倍、62.5倍、100倍、142.9倍、250倍、333倍であった。
【0031】
即ち、反応終了後(反応時間を延ばしても収率がこれ以上増えない時点)での供給酸素量の消費酸素量に対する割合と、収率の関係は以下の表−1ようになる。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、没食子酸エステルの酸化カップリング反応の効率を高め、反応時間を短縮化することのできるので、非常に効率的にエラグ酸を製造することができる。
Claims (2)
- 没食子酸エステルを酸素流通下に酸化カップリング反応させ、次いで酸処理を行うことによりエラグ酸を合成するにあたり、該酸素流通を、供給酸素量の消費酸素量に対する割合が50倍以下となる条件下に行うことを特徴とするエラグ酸の製造方法。
- 酸化カップリング反応時の反応系内のpHが7以上である請求項1に記載のエラグ酸の製造方法。
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