JP4352191B2 - ピロメリット酸の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドまたはその酸化誘導体を酸化して、ピロメリット酸を製造する方法に関する。
ピロメリット酸はプラスチック工業において、樹脂、可塑剤を合成するための中間体として使用される。ピロメリット酸は脱水して無水ピロメリット酸に転換することが多いが、特にポリイミド樹脂製造における原料として使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、芳香族ポリカルボン酸はポリアルキルベンゼンの酸化によって製造されており、プソイドクメンからのトリメリット酸、メシチレンからのトリメシン酸、ジュレンからのピロメリット酸及びイソジュレンからのメルファン酸等が知られている。
これらのアルキルベンゼン類の対応する芳香族ポリカルボン酸への酸化は、全て同様な条件下で行いうるという訳ではなく、メチル基の置換位置によって反応性が異なる。プソイドクメン又はジュレン等の場合生成するトリメリット酸又はピロメリット酸での二つのカルボキシル基がオルト位構造のため重金属触媒の活性を低下させ、このような構造をもたないポリメチルベンゼンの場合に比して酸化収率が低下する。
そのため触媒系に対する種々の改良法が提案されており、たとえば特開平2−184652号には、ジュレンを液相酸化してピロメリット酸を製造する方法において、コバルト、マンガン、臭素触媒存在下で酸化するに際し、触媒を2段階添加し、回分式に反応させることが記載されている。
また芳香族ポリカルボン酸の製造法としてポリアルキル芳香族アルデヒドを酸化する方法が知られており、特開昭57−38745号には、芳香族アルデヒドをコバルト、マンガンおよび臭素存在下、酢酸溶媒で酸化してトリメリット酸又はピロメリット酸を製造する方法が示されている。
特公平7−116097号には芳香族アルデヒドを鉄、マンガンおよび臭素存在下、水溶媒で酸化してピロメリット酸を製造する方法が示されている。
【0003】
【発明が解決しょうとする課題】
酸化反応を回分式で行う特開平2−184652号の方法は、触媒系に対する改良により酸化収率が向上するものの、反応方式が複雑である。該方法は生成したピロメリット酸が触媒活性を低下させるので連続方式には適用できない。
特開昭57−38745号のコバルト、マンガン及び臭素触媒系は反応速度及び収率に関し、改良の必要がある。特公平7−116097号では臭素濃度が高く腐食の問題が生じる。
本発明の目的は2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体を液相酸化するに際して、従来のコバルト、マンガン及び臭素触媒系に代わる高活性触媒を開発し、ピロメリット酸を連続的に工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の如き課題を有するピロメリット酸の製造方法について鋭意検討した結果、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体を液相酸化するに際して、マンガン−鉄−ジルコニウム−セリウム−臭素触媒が、従来のコバルト−マンガン−臭素系触媒よりも高活性であり、また水濃度を特定範囲に厳密にすることで連続酸化が可能となることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、臭素、マンガンおよび鉄、もしくは更にジルコニウム及び/又はセリウムを含む触媒の存在下、10〜90重量%の酢酸溶媒を用いて、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体を180〜240℃の温度で連続的に液相酸化することを特徴とするピロメリット酸の製造法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では液相酸化の原料として2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体を使用する。該酸化誘導体としては2,4,5−トリメチル安息香酸、1,2−カルボキシ−4,5−フタリド、メチルトリメリット酸等が挙げられる。
本発明において液相酸化の溶媒には含水酢酸が用いられ、これにより液相酸化を連続的に行うことが出来る。使用する溶媒の水含有量は10〜90重量%であり、好ましくは20〜70重量%である。水分濃度が該範囲より低い場合にはピロメリット酸と触媒マンガンが金属塩を形成して触媒活性を失い、反応中間体が残り易い。また水分濃度が低い場合には結晶化する際に金属塩がピロメリット酸結晶に混入するので触媒を循環使用することができず、工業的に連続反応を行うことが困難となる。水分が高過ぎる場合は反応速度が低下し、収率も低下する。このため水分が高いと臭素使用量を増加しなければならず、腐食性が増大することから、反応器にジルコニウム等の高級材質を用いることが必要となる。
溶媒の使用量は2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体に対して、1〜25重量倍、好ましくは3〜15重量倍である。
【0006】
本発明において使用される酸化触媒は、マンガン化合物及び臭素化合物に、ジルコニウム、セリウム、鉄化合物を加えたものである。
これらのマンガン、ジルコニウム、セリウム、鉄化合物としては有機酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩等が例示され、特に酢酸塩、臭化物が好ましい。
臭素化合物としては反応系で溶解し、臭素イオンを発生するものであれば、如何なるものでも良く、臭化水素、臭化ナトリウム及び臭化コバルト等の無機臭化物、テトラブロモエタン等の有機臭化物が例示されるが、特に臭化水素、臭化コバルト、臭化マンガンが好ましい。
【0007】
本発明によりマンガン−臭素系触媒に、鉄を適量加えることで有機物の燃焼抑制が高まり、大幅に収率向上し、溶媒の損失が抑えられる。またジルコニウムやセリウムを加えることで収率が向上する。
溶媒中の臭素濃度は0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。臭素濃度が少な過ぎると反応が進まなくなり、臭素濃度が多過ぎると腐食が激しくなる。 重金属触媒の臭素イオンに対する原子比は0.5〜15、好ましくは0.8〜8の範囲である。
溶媒中のマンガン、ジルコニウム、セリウム、鉄化合物の全重金属濃度は0.03〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。全重金属濃度が低すぎると反応が進行せず、触媒濃度が高すぎると反応に悪影響を与える。鉄濃度は溶媒に対して1〜200ppm、ジルコニウム濃度は溶媒に対して0〜500ppm、セリウム濃度は溶媒に対して0〜500ppmが好ましい。
マンガンにジルコニウム、セリウム、鉄を添加した場合の重金属触媒の組成比は、各金属の合計量に対して、ジルコニウム含量が0.1〜15重量%、セリウム含量が0.1〜15重量%、鉄含量が0.1〜15重量%、マンガン含量が55〜99.7重量%の範囲が好ましい。
【0008】
本発明の液相酸化には酸素含有ガスが用いられる。酸素ガスや、酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスと混合したガスが挙げられるが、空気が最も一般的である。
酸化反応器としては撹拌槽や気泡塔などが用いられるが、反応器内の撹拌を充分に行なう為に撹拌槽が好適である。反応の形式としては半回分式または連続式が好適に用いられる。連続式では反応収率を高める為に複数の反応器を直列に設けることが望ましい。複数の反応器を直列に設けた場合の通算滞留時間は0.5〜10時間の範囲である。
液相酸化の温度は180〜240℃、好ましくは190〜230℃である。この温度範囲外では副生物を増加し、また収率を低下させる。
酸化反応では酸素含有ガスを反応器に連続的に供給し、反応後のガスは圧力が5〜40kg/cm2 G 、好ましくは10〜30kg/cm2 G となるように連続的に反応器から抜き出される。反応器には還流冷却器を設け、排ガスに同伴される多量の溶媒及び酸化反応で生成する水を凝縮させる。凝縮した溶媒及び水は通常反応器に還流されるが、反応器内の水分濃度を調整するために、その一部を反応系外に抜き出すことも行なわれる。反応器からの排ガス中の酸素濃度は0.1〜8容量%、好ましくは1〜5容量%である。
【0009】
酸化反応混合物は冷却されて約10℃から約120℃、好ましくは約20℃から約40℃の範囲とし、得られた固体状酸化生成物を反応混合物から濾過または遠心分離により分離する。分離されたピロメリット酸粗生成物は水あるいは含水酢酸で、リスラリー洗浄あるいはリンスされ、結晶に含有する有機不純物、金属等が除去される。分離された反応母液は酸化反応系へ大部分が循環使用される。反応母液の一部は反応生成水を除くために蒸留し、溶媒として再使用される。
【0010】
【実施例】
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
なお、各実施例および比較例の結果を示す表中のPMAはピロメリット酸である。またPMA収率は原料の2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドまたは2,4,5−トリメチル安息香酸に対するピロメリット酸の収率、中間体収率は原料の2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドまたは2,4,5−トリメチル安息香酸に対するメチルトリメリット酸と1,2−カルボキシ−4,5−フタリドの収率を示す。
【0011】
実施例1
還流冷却器付きのガス排出管、ガス吹き込み管、原料連続送液ポンプ及び撹拌器を有する2Lのチタン製オートクレーブに臭化第2鉄、酢酸マンガン4水塩、47重量%臭化水素水溶液、氷酢酸、水を混合し、鉄濃度0.0008重量%、マンガン濃度0.35重量%、臭素濃度0.4重量%で、水分濃度50重量%、酢酸濃度49重量%の触媒液を1000g仕込み、窒素雰囲気下、圧力25kg/cm2 G、温度210℃に昇圧、昇温した。2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドを100g/hおよび前記濃度の触媒液を800g/hで供給し、空気を導入し、オフガスの酸素濃度が2容量%となるように流量を調節し、反応を行った。液面が一定になるように反応生成物を連続的に抜き出した。滞留時間は63分である。
反応を8時間継続し、原料、触媒液の供給を停止し、酸素濃度が15容量%となるまで空気の吹き込みを継続した。
次に反応生成物を分析し、収率を求めた。結果を表1に示す。
【0012】
比較例1
実施例1と同じ装置で、臭化第2鉄を入れないで、他は実施例1と同じ条件で反応を行った。結果を表1に示す。鉄を微量添加することにより、収率および反応速度が高くなることが分かる。
【0013】
比較例2
実施例1と同じ装置で、臭化第2鉄を入れないで、酢酸コバルト4水塩を入れて、マンガン濃度0.25重量%、コバルト濃度0.10重量%、臭素濃度0.4重量%で、水分濃度50重量%、酢酸濃度49重量%で、他は実施例1と同じ条件で反応を行った。結果を表1に示す。従来のコバルト−マンガン−臭素系触媒よりも本発明の鉄−マンガン−臭素系触媒の方が、収率および反応速度が高くなることが分かる。
【0014】
【表1】
【0015】
実施例2,3,4,5
実施例1と同じ装置を用い、マンガンにジルコニウム、セリウム、鉄を添加した場合の反応を行った。ジルコニウム化合物には酢酸ジルコニウム、セリウム化合物には臭化第一セリウム5水塩を用い、触媒液を1000g仕込んだ。
2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドを40g/h及び触媒液を380g/hで供給した。触媒液の水濃度は50重量%とした。圧力25kg/cm2 G、温度210℃で、オフガスの酸素濃度が5容量%となるように空気を吹き込み、反応を行った。液面が一定になるように反応生成物を連続的に抜き出した。滞留時間は約120分である。反応を8時間継続し、原料、触媒液の供給を停止し、酸素濃度が15容量%となるまで空気の吹き込みを継続した。
反応生成物を分析し、収率を求めた。触媒液の組成及び結果を表2に示す。
【0016】
【表2】
【0017】
表2から次のようなことが分かる。
▲1▼実施例2と実施例3の比較から、鉄にジルコニウムを微量添加することで収率が向上する。
▲2▼実施例3と実施例4の比較から、鉄とジルコニウムにセリウムを微量添加することで収率が向上する。
【0018】
実施例6,7および比較例3
実施例1と同じ装置を用い、溶媒中の水分濃度を変えて反応を行った。触媒液を1000g仕込み、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドを40g/h及び触媒液を380g/hで供給した。圧力25kg/cm2 G 、温度210℃で、オフガスの酸素濃度が5容量%となるように空気を吹き込んで反応を行い、液面が一定になるように反応生成物を連続的に抜き出した。滞留時間は約120分である。反応を8時間継続し、原料、触媒液の供給を停止し、酸素濃度が15容量%となるまで空気の吹き込みを継続した。
反応生成物を分析し、収率を求めた。触媒液の組成及び結果を表3に示す。これより水分濃度が低すぎると触媒活性が落ちて収率が低下することが分かる。
【0019】
【表3】
【0020】
実施例8
実施例1と同じ装置で、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドの代わりに2,4,5−トリメチル安息香酸を44g/hで供給し、他は実施例7と同じ条件で反応を行った。その結果、ピロメリット酸の収率は76.5mol%、中間体収率は3.8mol%であった。
【0021】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明によりマンガン−臭素触媒に鉄、ジルコニウム、セリウムを含む触媒と、特定範囲の水分を含む含水酢酸溶媒を用いて、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒドやその酸化誘導体を液相酸化することにより、ピロメリット酸が連続的に高収率で得られる。
本発明の触媒は活性が高く、特定範囲の水分を含む含水酢酸溶媒を用いることにより低臭素濃度で反応が行われることから腐食性が低い。従って本発明により従来困難であったピロメリット酸を、反応器にジルコニウム等の高級材質を用いずに、連続的に高収率で得ることができるようになるので、本発明の工業的意義は大きい。
Claims (4)
- 臭素、マンガンおよび鉄と、更にジルコニウム及び/又はセリウムを含む触媒の存在下、水含有量が10〜90重量%の酢酸溶媒を用いて、溶媒中の臭素イオン濃度が0.05〜2重量%、溶媒中のマンガン、鉄、ジルコニウム、セリウムの全重金属原子濃度が0.03〜2重量%、臭素イオンに対する全重金属原子比が0.5〜15の範囲であり、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド及び/又はその酸化誘導体を180〜240℃の温度で、酸素含有ガスにより連続的に液相酸化することを特徴とするピロメリット酸の製造法。
- マンガン、鉄、ジルコニウム、セリウムの全重金属の合計量に対するマンガン含量が55〜99.7重量%、鉄含量が0.1〜15重量%、ジルコニウム含量が0.1〜15重量%、セリウム含量が0.1〜15重量%である請求項1に記載のピロメリット酸の製造法。
- 溶媒中の鉄濃度が1〜200ppm、ジルコニウム濃度が0〜500ppm、セリウム濃度が0〜500ppmの範囲である請求項1に記載のピロメリット酸の製造法。
- 前記の液相酸化反応を複数の直列の反応器で連続的に液相酸化する請求項1に記載のピロメリット酸の製造法。
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