JP2004168162A - 負圧ブースタ付きマスタシリンダ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マスタシリンダMに,液圧室10f,10r,11に対する作動ピストン7f,7rの有効加圧面積を大から小に切り換えるように作動する切換手段27を設ける一方,負圧ブースタBには,入力杆45及びブースタピストン42相互間の所定距離以下の接近を検知するセンサ52,55,56を設け,このセンサ52及び切換手段27間に,該センサ52の検知信号に応じて該切換手段27を作動する制御手段53を接続した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,自動車のブレーキ等の作動に使用されるもので,マスタシリンダに,その作動ピストンに出力杆を連接する負圧ブースタを結合してなる,負圧ブースタ付きマスタシリンダの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる負圧ブースタ付きマスタシリンダは,例えば下記特許文献1に開示されているように,既に広く知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭54−90459号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の負圧ブースタ付きマスタシリンダでは,エンジンの始動時等,負圧源の負圧が低い場合に急制動を行うと,負圧ブースタは早期に,倍力比が1となる倍力限界を迎える。そこで,このように早期に倍力限界を迎えた場合でも,マスタシリンダに所望の出力を付与し得るようにするためには,負圧ブースタの容量を充分大きく確保して,倍力限界点を極力高く設定する必要があるが,そうすることはブースタの小型化を困難にする。
【0005】
またブースタの倍力失陥時でも,マスタシリンダでは或る程度の液圧を発生させる必要から,ペダルレシオ及び油圧レシオを大きく設定せざるを得ず,結果的にそれがペダルのストロークを長くする一因となっており,操作フィーリングの犠牲を強いている。
【0006】
一方,別の命題として,急制動時には充分な制動力を発生させるブレーキアシスト機能をブースタが持つことを要求され,そのために,ペダル操作速度やペダル踏力などを検知する各種センサと,そのセンサの検知信号に応じて作動して制動力を増大させるポンプとを付設したものが従来知られているが,こうしたものは構造が複雑であり,コスト高となるを免れない。
【0007】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,負圧ブースタの小型化を可能にし,しかも通常使用領域での操作フィーリングを損なうことなく,倍力限界点を高めることができ,その上,アシスト機能を発揮し得る,簡単で安価な負圧ブースタ付きマスタシリンダを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,マスタシリンダに,その作動ピストンに出力杆を連接する負圧ブースタを結合してなる,負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,マスタシリンダに,液圧室に対する作動ピストンの有効加圧面積を大から小に切り換えるように作動する切換手段を設ける一方,負圧ブースタには,その所定の作動状態を検知するセンサを設け,このセンサ及び切換手段間に,該センサの検知信号に応じて該切換手段を作動する制御手段を接続したことを第1の特徴とする。
【0009】
尚,前記作動ピストンは,後述する本発明の実施例中の前部及び後部作動ピストンに対応し,また前記液圧室は,主前部及び後部液圧室,並びに補助液圧室に対応し,前記切換手段は,電磁弁27に対応する。
【0010】
この第1の特徴によれば,負圧ブースタの作動時,センサがその所定の作動状態を検知すると,その検知信号に基づき制御手段が切換手段を作動するので,作動ピストンの有効加圧面積が大面積から小面積に切り換えられることで,液圧室からの出力液圧を効果的に増圧することができる。したがって,通常使用領域での操作フィーリングを損なうことなく,倍力限界点を高めることができ,負圧ブースタの小型化に寄与し得る。
【0011】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの入力杆及びブースタピストンの相互間距離が所定値以下となることを検知するように構成したことを第2の特徴とする。
【0012】
この第2の特徴によれば,上記センサが入力杆及びブースタピストン相互間の所定距離以下の接近を検知したときは,作動ピストンの有効加圧面積が大面積から小面積に切り換えられることになり,液圧室からの出力液圧を効果的に増圧することができ,これにより負圧ブースタの倍力限界点を向上させる得ることは勿論,急操作時には特別な加圧ポンプを用いることなくアシスト効果をもたらすことができ,簡単で安価な負圧ブースタ付きマスタシリンダを提供することができる。
【0013】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの負圧室の負圧が所定値以下となることを検知するように構成したことを第3の特徴とする。
【0014】
この第3の特徴によれば,上記センサが負圧ブースタの負圧室の負圧の所定値以下の低下を検知したときも,作動ピストンの有効加圧面積が大面積から小面積に切り換えられることになり,負圧ブースタの非作動によるも,液圧室から必要な出力液圧を出力することができる。
【0015】
さらにまた本発明は,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの負圧源の負圧が所定値以下となることを検知するように構成したことを第4の特徴とする。
【0016】
この第4の特徴によれば,上記センサが負圧源の負圧の所定値以下の低下を検知したときも,作動ピストンの有効加圧面積が大面積から小面積に切り換えられることになり,負圧源の非作動によるも,液圧室から必要な出力液圧を出力することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,図面に示す本発明の好適な実施例に基づき以下に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例に係る負圧ブースタ付きマスタシリンダの縦断側面図である。
【0019】
先ず,図1において,符号Mは自動車の2系統式ブレーキ用のタンデム型マスタシリンダであり,そのシリンダ本体1の上面に開口する前後一対の作動液入口20f,20rにリザーバRの,作動液を貯留する前後一対の液溜め室21f,21rが接続される。
【0020】
シリンダ本体1には,前端壁を有する前部シリンダ孔2fと,この前部シリンダ孔2fの後端に環状段部を介して同軸に連なる,前部シリンダ孔2fより大径のスリーブ孔3が形成されており,スリーブ孔3には,前方から環状のシールホルダ4,前部スリーブ5f及び後部スリーブ5rが順次嵌合して固定される。その前部スリーブ5f及び後部スリーブ5rの内側は,前部シリンダ孔2と同径で同軸に並ぶ中央シリンダ孔2s及び後部シリンダ孔2rとされる。
【0021】
前部シリンダ孔2fには,その前端壁に前端面を当接させる固定ピストン6がシール部材9aを介して嵌装される。この固定ピストン6は,後方へ突出する小径ピストン部6aを一体に有する。中央シリンダ孔2sには前部作動ピストン7fが,また後部シリンダ孔2rには後部作動ピストン7rがそれぞれ摺動可能に嵌装される。前部作動ピストン7fは,その前端面に開口する中空部8fを有しており,その中空部8fに前記小径ピストン部6aを相対摺動可能に嵌合させている。中空部8fには,固定ピストン6を前部シリンダ孔2fの前端壁側に押し付けると共に,前部作動ピストン7fを後退方向に付勢する前部戻しばね15fが縮設される。
【0022】
而して,前部シリンダ孔2fには,固定ピストン6及び前部作動ピストン7fにより環状の前部主液圧室10fが画成され,小径ピストン部6aの外周には,前部作動ピストン7fの内周面に接して,前部作動ピストン7fの中空部8fから前部主液圧室10fへの一方向のみ作動液の流れを許容する,一方向弁機能をもったカップシール部材16aが装着される。
【0023】
前部作動ピストン7fは,後方へ突出する小径ピストン部7faを一体に有する。また後部作動ピストン7rは,後端壁を持った中空部8rを有しており,この中空部8rに上記小径ピストン7faの後端部が相対摺動可能に嵌装されると共に,中空部8rには,後部作動ピストン7rを後退方向に付勢する後部戻しばね15rが縮設される。この後部戻しばね15rのセット荷重は,前部戻しばね15fのそれより小さく設定される。
【0024】
而して,中央シリンダ孔2sには,スリーブ孔3には,シールホルダ4及び前部スリーブ5fにより環状の液圧室12が画成され,また前部作動ピストン7f及び後部作動ピストン7rにより環状の液圧室13が画成され,この両液圧室12,13は,前部スリーブ5fの内周面又は前部作動ピストン7fの外周に形成される複数条の軸方向溝17(図には,そのうちの一本のみを示す。)により相互に連通されることで,一連の後部主液圧室10rを構成する。この後部主液圧室10rに臨んで前部作動ピストン7fの外周に密接するカップシール部材16eがシールホルダ4に装着される。
【0025】
後部作動ピストン7rの後端壁には,小径ピストン部7faの後端壁の通孔18を貫通する連結ボルト19が植設される。この連結ボルト19の先端には上記後端壁の内側面に当接する膨大頭部19aを一体に有する。この連結ボルト19は,後部作動ピストン7rの,前部作動ピストン7fに対する前進を許容するが,後部作動ピストン7rの後退時には,膨大頭部19aを介して前部作動ピストン7fを引き戻すようになっている。
【0026】
前部及び後部作動ピストン7f,7rの中空部8f,8rと,それらを相互に連通する通孔18とにより一つの補助液圧室11が構成される。
【0027】
前部作動ピストン7fの小径ピストン部7faの後端部には,後部作動ピストン7rの内周面に接するカップシール部材16bが装着され,この後部カップシール部材16bは,補助液圧室11から後部主液圧室10rへの一方向のみ作動液の流れを許容する一方向弁機能を持つ。
【0028】
シリンダ本体1には,前部作動液入口20fを前部作動ピストン7fの外周面に連通する前部サプライポート22fが前記シールホルダ4の前面に隣接した設けられ,この前部サプライポート22fを前部主液圧室10fに連通する環状配列の複数の切欠き溝23fが前部作動ピストン7fの前端部外周面に設けられ,その前端部外周面に接するカップシール部材16cが前部シリンダ孔2fの後端部に装着される。このカップシール部材16cは,これが前部作動ピストン7f外周面の切欠き溝23fが存在する部分に接する前部作動ピストン7fの後退限では,前部サプライポート22f及び前部主液圧室10f間を連通させるが,後部作動ピストン7rが一定量前進して,切欠き溝23fがカップシール部材16cより前方へ移動したときは,前部主液圧室10fから前部サプライポート22fへの作動液の逆流を阻止するようになっている。
【0029】
また後部スリーブ5rには,後部作動液入口20rを後部作動ピストン7rの外周面に連通する後部サプライポート22rが設けられる。この後部サプライポート22rを後部主液圧室10rに連通する環状配列の複数の切欠き溝23rが後部作動ピストン7rの前端部外周面に設けられ,その前端部外周面に接するカップシール部材16dが前部スリーブの後端部に装着される。このカップシール部材216dは,これが後部作動ピストン7r外周面の切欠き溝23rが存在する部分に接する後部作動ピストン7rの後退限では,後部サプライポート22r及び後部主液圧室10r間を連通させるが,後部作動ピストン7rが一定量前進して,切欠き溝23rがカップシール部材16dより前方へ移動したときは,後部主液圧室10rから後部サプライポート22rへの作動液の逆流を阻止するようになっている。
【0030】
シリンダ本体1及び固定ピストン6には,リザーバRの前部作動液入口20fを補助液圧室11に接続する通路25が形成される。この通路25は,途中で二股に分かれて固定ピストン6を通る一対の分岐路25a,25bを有しており,一方の分岐路25aに介入する一方向弁26が固定ピストン6に設けられ,他方の分岐路25bに介入する電磁弁27がシリンダ本体1に取り付けられる。したがって,一方向弁26及び電磁弁27は,リザーバR及び補助液圧室11間の通路25に並列に挿入されることになる。一方向弁26は,一方の分岐路25aでの作動液の流れをリザーバR側から補助液圧室11側への一方向のみ許容するように構成され,また電磁弁27は,通電時のみ開弁する常閉型に構成される。
【0031】
前部主液圧室10fに開口する前部出力ポート14fは,自動車の一方の系統のブレーキの作動油室に接続され,後部主液圧室10rに開口する後部出力ポート14rは,他方の系統のブレーキの作動油室に接続される。
【0032】
シリンダ本体1は,車体に取り付けられる負圧ブースタBのブースタシェル40の前端壁に結合される。負圧ブースタBは,ブースタシェル40の内部を,前部の負圧室41fと後部の作動室41rとに区画するブースタピストン42に反力機構43を介して出力杆44を連結し,この出力杆44に反力機構43を介して入力杆45を連結して構成される。入力杆45及びブースタピストン42間には,入力杆45の進退に応じて作動室41rを大気と負圧室41fとに連通を切り換える切換弁46が設けられる。入力杆45は,図示しないブレーキペダルに,また出力杆44は前記後部作動ピストン7rの後端にそれぞれ連接される。
【0033】
負圧室41fは,負圧源V,例えばエンジンの吸気管内から負圧導管51を介して常時負圧を導入するようになっており,負圧導管51には,負圧源Vの非作動時,負圧室41fから負圧源Vへの負圧の逆流を阻止する負圧保持弁54が介装される。
【0034】
而して,入力杆45の前進時,作動室41rは負圧室41fと遮断されると共に,大気が導入され,入力杆45への入力は,大気を導入した作動室41rと負圧室41fと間の気圧差により前進作動するブースタピストン42により倍力されて,出力杆44へと伝達され,後部作動ピストン7rを前方へ押圧することになり,入力杆45への入力を解除すると,作動室41rが大気と遮断されると共に負圧室41fと連通され,ブースタピストン42は,負圧室41f内の戻しばね57の付勢力により後退し,同時に出力杆44を後退させることになる。
【0035】
反力機構43は,入力杆45の先端に連結される小径の反力ピストン47と,ブースタピストン42に一体に連設される駆動ピストン48と,これら入力ピストン45及び駆動ピストン48の前端面に当接する弾性ピストン49と,出力杆44の基端を支持しながら駆動ピストン48の外周に摺動可能に嵌合し,弾性ピストン49を収容する出力ピストン50とからなっていて,入力杆45に対する操作入力(ペダル踏力)と,ブースタピストン42の推力とを合算して出力杆44に伝達するようになっている。したがって出力杆44の出力の一部は入力杆45にフィードバックされることになる。
【0036】
以上は負圧ブースタBの一般的構成であり,本発明では,反力ピストン47及びブースタピストン42に,その間が所定距離以下になるとオン状態となるスイッチ52(第1センサ)を構成する一対の接点52a,52bがそれぞれ埋設される。
【0037】
また負圧ブースタBには,負圧保持弁54を挟んで,負圧導管51の上流側と下流側の負圧がそれぞれ所定値以下となることを検知する第2及び第3センサ55,56が設けられる。これら第1〜第3センサ52,55,56と前記電磁弁27との間に,各センサ52,55,56の検知信号に応じて該電磁弁27に通電(開弁)する制御手段53が接続される。
【0038】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0039】
前部主液圧室10f,後部主液圧室10r及び補助液圧室11は,リザーバRから供給された作動液によって満たされている。
<通常制動時>
いま,負圧ブースタBを作動して,その出力杆44により後部作動ピストン7rを前方に押圧すると,先ず,後部主液圧室10r及び補助液圧室11が加圧され,これによって後部主液圧室10rに発生した液圧は,前部作動ピストン7fを前方に押圧すると共に,後部出力ポート14rから対応する系統のブレーキに供給され,また前部主液圧室10fに発生した液圧は,それに対応する系統のブレーキに供給される。
【0040】
補助液圧室11に発生した液圧は,カップシール部材16aを通して前部主液圧室10fに,またカップシール部材16bを通して後部主液圧室10rに供給される。
【0041】
このときの前部及び後部作動ピストン7f,7rの前部主液圧室10f及び後部主液圧室10rに対するそれぞれの有効加圧面積Aは,各ピストン7f,7rの最大直径をDとすると,
A=πD2 /4
となる。したがって,前部及び後部作動ピストン7f,7rの比較的少ない前進ストロークにより,比較的多量の作動液を前部及び後部出力ポート14f,14rから送り出すことができ,各系統のブレーキの無効作動間隙を速やかに排除して,ブレーキの応答性を高めることができる。また同時に前部及び後部作動ピストン7f,7rのストロークの増加を極力抑えて,操作フィーリングを良好にすることができる。
<倍力限界時>
負圧ブースタBの作動が倍力限界に達すると,入力杆45に対する操作入力の増大に伴ない,入力杆45に連結した反力ピストン47が弾性ピストン49に圧縮変形を与えながらブースタピストン42を直接押圧するようになり,その結果,スイッチ52(第1センサ)がオン状態となり,制御手段53がそのオン信号を受けて電磁弁27に通電して,それを開弁させる。
【0042】
すると,補助液圧室11は,通路25を通して,大気圧状態のリザーバR内に開放される。このとき,前部及び後部主液圧室10f,10rから補助液圧室11への液圧の逆流は,カップシール部材16a,16bにより阻止される。
【0043】
こうして,補助液圧室11が前部及び後部主液圧室10f,10rの昇圧に関与しなくなると,前部及び後部作動ピストン7f,7rの前部主液圧室10f及び後部主液圧室10rに対するそれぞれの有効加圧面積A′は,各ピストン7f,7rの最大直径をD,前部作動ピストン7fの小径ピストン部7faの直径をdとすると,
A′=π(D−d)2 /4
と,先刻の場合より減少する。したがって,前部及び後部作動ピストン7f,7rの前進により,前部及び後部主液圧室10f,10rを効果的に増圧せしめ,各系統のブレーキを強力に作動することができ,見掛け上,倍力限界点が上がることになり,負圧ブースタBの小型化に寄与し得る。
<急制動時>
入力杆45を急速に前進作動する急制動時には,ブースタピストン42の倍力作動の応答性に或る限界があるため,入力杆45がブースタピストン42を押圧するように前進して,スイッチ52(第1センサ)をオン状態にする。その結果,先刻と同様の作用により,前部及び後部作動ピストン7f,7rの前部主液圧室10f及び後部主液圧室10rに対するそれぞれの有効加圧面積が減少して,前部及び後部主液圧室10f,10rを効果的に増圧せしめ,続いてブースタピストン42の推力が前部及び後部作動ピストン7f,7rに加わることで,各系統のブレーキを遅れなく強力に作動することができる。したがって特別な加圧ポンプを用いることなく,ブレーキアシスト効果をもたらすことができる。
<負圧源V又は負圧室41fの失陥に伴なう非倍力操作時>
万一,負圧源Vが失陥して,負圧導管51に負圧を供給し得なくなった場合には,負圧保持弁54より上流側の負圧導管51に接続された第2センサ55がその状態を検知して,検知信号を制御手段53に出力する。
【0044】
またブースタピストン42のダイヤフラムの損傷等による負圧室41fの失陥により,負圧室41fが負圧を蓄えられなくなった場合には,負圧保持弁54より下流側の負圧導管51に接続された第3センサ56がその状態を検知して,検知信号を制御手段53に出力する。
【0045】
したがって,上記何れの場合でも,制御手段53は,電磁弁27に通電して,それを開弁させるので,非倍力操作時には,当初から前部及び後部作動ピストン7f,7rの前部主液圧室10f及び後部主液圧室10rに対するそれぞれの有効加圧面積を減少させた状態で,前部及び後部主液圧室10f,10rを加圧することになるから,必要な制動力を確保することができる。
<制動解除>
ブレーキを解除すべく,ブースタBの出力杆44を後退させる,前部及び後部作動ピストン7f,7rは,前部及び後部戻しばね15f,15rの反発力によりそれぞれ図1の状態の後退限まで後退する。このとき,前部主液圧室10fに減圧があれば,リザーバRの前部液溜め室21fの作動液が前部サプライポート22fを通過した後,カップシール部材16cを撓ませながら前部主液圧室10fに補給され,また後部主液圧室10rに減圧があれば,リザーバRの後部液溜め室21rの作動液が後部サプライポート22rを通過した後,カップシール部材16dを撓ませながら後部主液圧室10rに補給される。また補助液圧室11に減圧があれば,通路25中の一方向弁26がリザーバRから補助液圧室11への作動液の流れを許容するので,リザーバRの作動液が補助液圧室11に補給される。
【0046】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,負圧ブースタ付きマスタシリンダは,ブレーキ以外の負荷機器の作動にも使用可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,マスタシリンダに,その作動ピストンに出力杆を連接する負圧ブースタを結合してなる,負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,マスタシリンダには,液圧室に対する作動ピストンの有効加圧面積を大から小に切り換えるように作動する切換手段を設ける一方,負圧ブースタには,その所定の作動状態を検知するセンサを設け,このセンサ及び切換手段間に,該センサの検知信号に応じて該切換手段を作動する制御手段を接続したので,通常使用領域での操作フィーリングを損なうことなく,倍力限界点を高めることができ,負圧ブースタの小型化に寄与し得る。
【0048】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの入力杆及びブースタピストンの相互間距離が所定値以下となることを検知するように構成したので,負圧ブースタの倍力限界点を向上させる得ることは勿論,急操作時には特別な加圧ポンプを用いることなくアシスト効果をもたらすことができ,簡単で安価な負圧ブースタ付きマスタシリンダを提供することができる。
【0049】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの負圧室の負圧が所定値以下となることを検知するように構成したので,負圧ブースタの非作動によるも,液圧室から必要な出力液圧を出力することができる。
【0050】
さらにまた本発明の第4の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記センサを,負圧ブースタの負圧が所定値以下となることを検知するように構成したので,負圧源の非作動によるも,液圧室から必要な出力液圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る負圧ブースタ付きマスタシリンダの縦断側面図
【符号の説明】
B・・・・・・・・・負圧ブースタ
M・・・・・・・・・マスタシリンダ
V・・・・・・・・・負圧源
7f・・・・・・・・作動ピストン(前部作動ピストン)
7r・・・・・・・・作動ピストン(後部作動ピストン)
10f・・・・・・・液圧室(前部主液圧室)
10r・・・・・・・液圧室(後部主液圧室)
11・・・・・・・・液圧室(補助液圧室)
27・・・・・・・・切換手段(電磁弁)
41f・・・・・・・負圧室
41r・・・・・・・作動室
42・・・・・・・・ブースタピストン
44・・・・・・・・出力杆
45・・・・・・・・入力杆
52・・・・・・・・第1センサ(スイッチ)
55・・・・・・・・第2センサ
56・・・・・・・・第3センサ
Claims (4)
- マスタシリンダ(M)に,その作動ピストン(7f,7r)に出力杆(44)を連接する負圧ブースタ(B)を結合してなる,負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,
マスタシリンダ(M)に,液圧室(10f,10r,11)に対する作動ピストン(7f,7r)の有効加圧面積を大から小に切り換えるように作動する切換手段(27)を設ける一方,負圧ブースタ(B)には,その所定の作動状態を検知するセンサ(52,55,56)を設け,このセンサ(52,55,56)及び切換手段(27)間に,該センサ(52,55,56)の検知信号に応じて該切換手段(27)を作動する制御手段(53)を接続したことを特徴とする,負圧ブースタ付きマスタシリンダ。 - 請求項1記載の負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,前記センサ(52)を,負圧ブースタ(B)の入力杆(45)及びブースタピストン(42)の相互間距離が所定値以下となることを検知するように構成したことを特徴とする,負圧ブースタ付きマスタシリンダ。
- 請求項1記載の負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,前記センサ(56)を,負圧ブースタ(B)の負圧室(41f)の負圧が所定値以下となることを検知するように構成したことを特徴とする,負圧ブースタ付きマスタシリンダ。
- 請求項1記載の負圧ブースタ付きマスタシリンダにおいて,前記センサ(55)を,負圧ブースタ(B)の負圧源(V)の負圧が所定値以下となることを検知するように構成したことを特徴とする,負圧ブースタ付きマスタシリンダ。
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