JP2004164878A - 固体電解質型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本固体電解質形燃料電池の製造方法は、平板状固体電解質体1(ジルコニア系、ランタンガレード系等)と、該固体電解質体1の一方の面に設けられた燃料極3と、該固体電解質体1の一方の面又は他方の面に設けられた空気極4と、該固体電解質体1と該燃料極3及び該空気極4の少なくとも一方との間に設けられたCe1−xLnxO2−δ組成(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の反応防止層21,22とから構成される。上記反応防止層21,22はスクリーン印刷法又はテープキャスト法等による湿式法を用いて形成され、該反応防止層21,22の形成に用いるCe1−xLnxO2−δ原料粉末(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の比表面積が6〜45m2/gである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平板型固体電解質体の表面に燃料極及び空気極を有し、固体電解質体の電極界面に反応防止層を設けた平板型の固体電解質型燃料電池の製造方法に関する。更に詳しくは、固体電解質体と各電極との反応を防止する緻密な反応防止層を、容易に作製することができる固体電解質型燃料電池の製造方法に関する。本発明により製造された固体電解質型燃料電池は、発電所等の大規模発電、燃料電池車及び家庭用コジェネレーション等の用途に広く利用される。
【0002】
【従来の技術】
ジルコニア系固体電解質を用いた固体電解質型燃料電池(以下、燃料電池と略す)を作製する際、固体電解質体と空気極材料との反応性が高いため、電極焼付け時に固体電解質体と空気極との界面において高抵抗の反応相が生成して燃料電池全体の内部抵抗が増加し、燃料電池の出力低下を招く問題があった。また、ランタンガレード系固体電解質と燃料極材料及び空気極材料との反応性も高いため、同様に固体電解質体と各電極との界面に反応相が生成して燃料電池の出力低下を招く問題があった。
【0003】
その問題に対し、酸化セリウムを主成分とした反応防止層用の未焼成成形体を固体電解質体上に焼成して反応防止層を形成し、この反応防止層上に空気極を焼成することで、反応を防止する検討が非特許文献1及び非特許文献2等でなされている。
【0004】
【非特許文献1】
S.P.Simner, J.W.Stevenson, K.D.Meinhardt, N.L.Canfield, Pacific Northwest National Laboratory、「DEVELOPMENT OF FABRICATION TECHNIQUESAND ELECTRODES FOR SOLID OXIDE FUEL CELLS」、Electrochemical Society Proceedings Volume 2001−16、平成13年、p.1051−1060
【非特許文献2】
H.Uchida, S.Arisaka, M.Watanabe、「High performance electrodesfor medium−temperature solid oxide fuel cells: Activation of La(Sr)CoO3cathode with highly dispersed Pt metal electrocatalysts」、Solid State Ionics 135、平成12年、p.347−351
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献1の反応防止層は、反応防止層のSm0.2Ce0.8O1.9粒子がネック(粒子間の接合部)成長している程度で緻密な反応防止層となっていない。緻密な反応防止層の方が、電気抵抗が小さいことが一般に知られており、この緻密でない反応防止層の電気抵抗が大きいことが予想される。また、非特許文献2では反応防止層が薄いため、固体電解質体と電極が直接接触するような気孔が所々に見られる。この気孔を介して電極材料と固体電解質体とが直接接触して反応し、この部分で電気抵抗が大きい反応相が生成し、燃料電池の性能が低くなる恐れがある。
【0006】
更に、反応防止層は酸素イオン伝導性が高くなるようにより緻密であることが好ましいが、反応防止層に一般的に使用されるセリア系材料は難焼結性材料であり、緻密に作製することが困難であった。
また、反応防止層用原料粉末をペースト等にして成形する湿式法は、成形等の過程で生じた気泡等が気孔として反応防止層内に残ることがあり、厚さが薄い反応防止層を作製すると非特許文献2に示す反応相が生成される恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、反応防止層内の気孔が少なく、固体電解質体と各電極との反応を効果的に防止する反応防止層を湿式法で作製する固体電解質型燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体電解質型燃料電池の製造方法は、平板状固体電解質体と、該固体電解質体の一方の面に設けられた燃料極と、該固体電解質体の一方の面又は他方の面に設けられた空気極と、該固体電解質体と該燃料極及び該空気極の少なくとも一方との間に設けられたCe1−xLnxO2−δ組成(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の反応防止層と、から構成された固体電解質型燃料電池の製造方法であって、上記反応防止層は湿式法を用いて形成され、該反応防止層の形成に用いるCe1−xLnxO2−δ原料粉末(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の比表面積が6〜45m2/gであることを特徴とする。
【0009】
また、上記Ce1−xLnxO2−δ原料粉末の平均粒径を0.1〜1μmとすることができる。
更に、(1)上記固体電解質体、上記燃料極及び上記空気極、(2)該固体電解質体、該燃料極及び該空気極の製造に用いられる仮焼成形体、並びに(3)該固体電解質体、該燃料極及び該空気極の製造に用いられる未焼成成形体から選択される1種のうちの少なくとも一方の面に、上記反応防止層用の成形体をスクリーン印刷法により成形することができる。また、上記固体電解質体、上記燃料極及び上記空気極の製造に用いられる未焼成成形体から選択される1種のうちの少なくとも一方の面に、上記反応防止層用の成形体をテープキャスト法により成形することができる。
更に、上記反応防止層用の成形体厚さを1〜20μmとすることができる。また、上記固体電解質用の成形体の表面に上記反応防止層用成形体を積層した積層体を形成し、その後、該積層体を焼成することができる。
【0010】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型燃料電池の製造方法によれば、反応防止層用原料粉末の比表面積の範囲を限定することによって、反応防止層を緻密にすることができ、高いイオン伝導性の反応防止層を得ることができる。また、二次粒子の生成を抑制することができ、反応防止層に気孔が生じることが抑制されるため、固体電解質体と空気極又は燃料極間との反応を防止することができる。
また、反応防止層用原料粉末の平均粒径を限定することによって、より一層反応防止層を緻密にすることができ、高いイオン伝導性を得ることができる。
更に反応防止層をスクリーン印刷法又はテープキャスト法を用いることによって低コストで形成することができる。
また、本発明に用いる未焼成成形体は気孔による短絡が生じることがなく、薄く形成することができる。更に、各層を積層した後に焼成することで製造工程を簡略にすることができ、且つ反応防止層を緻密化することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記「固体電解質体」は、任意の材質を選択することができ、ジルコニア系酸化物、LaGaO3系酸化物、BaCeO3系酸化物等を挙げることができる。ジルコニア系酸化物としてはY、Sc、Ln(ただし、Lnは希土類元素)で安定化したジルコニア(ZrO2)を挙げることができる。また、LaGaO3系酸化物としては、Sr及びMgのうちのいずれか一方又は両方をドープしたランタンガレード(LaGaO3)を挙げることができる。
これらはイオン伝導性が優れている材料であるため、燃料電池用の固体電解質体として安定して使用することができる。ただし、ジルコニア系固体電解質は、空気極との反応が起こりやすいため、固体電解質体と空気極との界面へ上記本発明の反応防止層を導入することが好ましく、上記本発明の反応防止層を用いることで、燃料電池特性が有効に向上される。
また、ランタンガレード系固体電解質は燃料極と固体電解質体との界面及び空気極と固体電解質体との界面の両方において構成元素の拡散が起こりやすいため、両方の界面へ反応防止層を導入することが好ましい。
【0012】
上記「燃料極」は、いずれの従来公知の材料で形成しても良いが、例えば、Au、Pd、Ni及びFe等の金属、又は前記金属とZrO2、CeO2及びMnO2等の金属酸化物との混合物を挙げることができる。また、上記「空気極」は、いずれの従来公知の材料で形成しても良いが、例えば、白金、又は金属酸化物が挙げられ、金属酸化物としては酸化ランタン、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化マンガン及び酸化鉄、又は複数の金属元素を含有する複合酸化物等を例示することができる。
【0013】
上記「反応防止層」は、固体電解質体と、燃料極及び/又は空気極との間に形成されればよく、固体電解質体、燃料極及び空気極、並びにこれらの製造に用いられる仮焼成形体又は未焼成成形体のいずれかから選択される1種に対して形成することができる。
【0014】
上記「Ce1−xLnxO2−δ」を構成するLnは、希土類元素、つまりSm、Gd、Sc及びY等からなる群から選ばれる少なくとも一種である。また、この希土類元素のうち、Sm及びGdが好ましい。更に、具体例としては、Ce0.8Sm0.2O1.9(以下SDCと表記)及びCe0.8Gd0.2O1.9(以下GDCと表記)を挙げることができる。また、xの範囲は0.05≦x≦0.3である。尚、上記反応防止層は、イオン伝導性を阻害せず、しかも上記反応を防止する効果を損なわない限り、他の目的で種々の成分や添加剤等を含んでいてもかまわない。
【0015】
上記Ce1−xLnxO2−δ原料粉末の比表面積は6〜45m2/g(好ましくは7〜41m2/g、更に好ましくは8〜40m2/g、特に好ましくは10〜39m2/g)とすることが好ましい。上記範囲に限定する理由は比表面積が6m2/g未満の原料粉末は、反応防止層が焼結しにくく緻密となりにくいため好ましくない。また、45m2/g超の原料粉末は、原料粉末が凝集して複雑な形状の二次粒子が生成され、成形時に二次粒子間の隙間が気孔として残るため、緻密化しにくく好ましくない。
【0016】
また、上記反応防止層の原料粉末の平均粒径は、0.1〜1.0μm(好ましくは、0.2〜0.9μm、更に好ましくは0.3〜0.8μm)が好ましい。上記範囲に限定する理由は反応防止層の原料粉末の平均粒径が0.1μm未満であると、原料粉末が凝集して二次粒子が生成され、緻密化しにくく好ましくない。
一方、平均粒径が1.0μmを超えると、反応防止層用未焼成成形体の粉末充填密度が低くなってしまい、焼成をしても反応防止層中に気孔が残りやすく、気孔率を制御することが困難であるため好ましくない。
【0017】
反応防止層用未焼成成形体の作製方法はCe1−xLnxO2−δ原料粉末をペースト等の状態にしてから形成する湿式法であればよく、任意の方法を選択することができる。
例えばスクリーン印刷は条件を最適化することにより、反応防止層の欠陥を少なくすることができ、簡単でばらつきの少ない安定した工程となりうるため、安定した性能を持つ燃料電池作製には適した手法である。
また、スクリーン印刷は、固体電解質体、燃料極及び空気極、並びにこれらの製造に用いられる仮焼成形体又は未焼成成形体のいずれかから選択される1種に対して行うことができる。また、いずれかの片面側のみに対して反応防止層用未焼成成形体を形成してもよいし、両面に反応防止層用未焼成成形体を形成してもよい。
また、テープキャスト法は、スクリーン印刷と同様に反応防止層の欠陥を少なくすることができ、薄膜を安定した工程で大量に作製することに適しているため、固体電解質体、燃料極又は空気極の製造に用いられる未焼成成形体に反応防止層用未焼成成形体を形成するときには特に適している。
尚、上記「仮焼成形体」は、未焼成成形体をその焼結体の焼成温度より低い温度(例えば焼結体の焼成温度が1200〜1500℃に対して700〜1100℃程度)で熱処理(仮焼ともいう)して得たものである。
【0018】
上記反応防止層用成形体(仮焼成形体及び/又は未焼成成形体である)の厚さは1〜20μm(好ましくは、2〜19μm、更に好ましくは、4〜17μm、特に好ましくは5〜16μm)であることが好ましい。厚さが1μm未満であると、気孔によって表裏が連通しやすくなり、気孔部分での固体電解質体と各電極との反応が起こる傾向にあるため、好ましくない。また、反応防止層用成形体を固体電解質用成形体上に固定するための熱処理時にそれらの界面で反応が起こり、高抵抗の反応相を形成しやすいため好ましくない。一方、厚さが20μmを越えると、反応防止層中のイオン移動抵抗が大きくなり、燃料電池性能を悪化させる傾向にあるため、好ましくない。したがって、反応防止層用成形体の厚さは上記範囲内でできる限り薄くすることが好ましい。
【0019】
固体電解質体、燃料極又は空気極の製造に用いられる成形体の表面上に上記反応防止層用成形体を積層した積層体を形成し、その後、この積層体を焼成することにより、固体電解質の焼結時の収縮により、反応防止層を強制的に収縮させ、反応防止層を緻密化でき、気孔率を制御することができる。その後、反応防止層を形成した固体電解質体に、燃料極及び空気極を同時に、又は一方ずつ形成する。燃料極及び空気極を形成する順序は、いずれが先であってもよい。
また、固体電解質用成形体及び反応防止層用成形体を同時に焼成することによって、工程を少なくすることができ、固体電解質型燃料電池作製の上で大きなコスト削減につながる。更に、工程を簡略化することによって、製造過程を管理する上でも有効である。
【0020】
固体電解質型燃料電池は、例えば、次に示すように製造することができる。
固体電解質用成形体の両面に、それぞれ反応防止層用成形体を形成して積層体を形成し、その後焼成する。次いで、積層体の焼結体の各反応防止層に、それぞれ燃料極用成形体、及び空気極用成形体を形成し、その後焼成する。
【0021】
このようにして作製された固体電解質型燃料電池を図1に示す。この固体電解質型燃料電池は、平板状の固体電解質体1の両面に反応防止層21、22が形成されている。また、燃料極3が反応防止層21の表面に形成されている。このため、反応防止層21は、固体電解質体1と燃料極3の間に位置する。また、空気極4が反応防止層22の表面に形成されている。このため反応防止層22は、固体電解質体1と空気極4の間に位置する。
【0022】
尚、固体電解質型燃料電池を構成する固体電解質体1、反応防止層21、22、燃料極3及び空気極4が形成される順番は上記順番に限らず、任意の順番で形成することができる。例えば、燃料極3、反応防止層21、固体電解質体1、反応防止層22及び空気極4の各成形体を形成し、順次焼成することができる。また、空気極4、反応防止層22、固体電解質体1、反応防止層21及び燃料極3の成形体をこの順で形成し、順次焼成することもできる。
更に、反応防止層21、22のうち、一方のみ具備する固体電解質型燃料電池を製造する場合であっても、反応防止層21、22の両方を具備する固体電解質型燃料電池と同様に、固体電解質体1、反応防止層21又は22、燃料極3及び空気極4を任意の順番で形成することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の固体電解質型燃料電池の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
1.試料の作製方法
本発明の固体電解質型燃料電池の製造方法の検証に用いる試料を以下の通りに作製した。
(1)固体電解質用未焼成成形体、固体電解質用仮焼成形体及び固体電解質体の作製
イットリア安定化ジルコニア(8mol%Y2O3−92mol%ZrO2、以下8YSZと略称する)粉末を原料とし、分散剤1質量部、及び有機溶媒30質量部をそれぞれ加え、アルミナ製ポットミルを用いて24時間混合した。
その後、可塑剤5質量部、及びバインダー14質量部をそれぞれ加えて、更に3時間混合し、スラリーとした。そのスラリーをテープキャスト法で厚さ200μmのシート状に形成し、30mm×30mmの固体電解質用未焼成成形体を得た。
【0024】
また、固体電解質用未焼成成形体に対して1000℃、1時間の条件で熱処理を行い、固体電解質用仮焼成形体を得た。更に、固体電解質用未焼成成形体に対して1500℃、1時間の条件で焼成を行い、焼結体である固体電解質体を得た。
【0025】
(2)反応防止層の成形
初めに表1に示す比表面積及び平均粒径(試料1〜10参照)の反応防止層用の原料粉末を作製した。この原料粉末は、SDCである。
即ち、比表面積が5m2/g(試料6)、12m2/g(試料7)、15m2/g(試料1〜4、10)のSDC原料粉末は、固相法により得たSDC粉末にエタノール溶媒を加えてこれらの比表面積になるように時間を変え、湿式粉砕して作製した。
また、比表面積が32m2/g(試料8)、39m2/g(試料5)、50m2/g(試料9)のSDC原料粉末は、共沈法により沈殿物を得た後、これらの比表面積になるように時間を変え、湿式粉砕して作製した。
【0026】
SDC原料粉末を反応防止層用成形体に成形する方法は、スクリーン印刷法及びテープキャスト法を用いた。
[1]スクリーン印刷法
表1に示す試料1〜3、5〜10は、スクリーン印刷法により反応防止層用成形体を形成した。即ち、SDC原料粉末に溶媒を約20質量部加え、混合したペーストを作製した。次いで、固体電解質用未焼成成形体、固体電解質用仮焼成形体又は固体電解質体にこのペーストをスクリーン印刷することによって反応防止層用成形体を形成した。
【0027】
[2]テープキャスト法
表1に示す試料4は、テープキャスト法により反応防止層用成形体を形成した。即ち、SDC原料粉末、溶媒30質量部、バインダー14質量部、可塑剤5質量部及び分散剤1質量部を投入し、厚さ1〜20μmのシートを得た。次いで、このシートを固体電解質用未焼成成形体、固体電解質用仮焼成形体又は固体電解質体に圧着して反応防止層未焼成成形体を形成した。
【0028】
(3)焼成
反応防止層未焼成成形体を形成した後、1400℃、1時間の条件で焼成を行い、反応防止層未焼成成形体の緻密化、及び固体電解質体への焼付けを行い、焼結体である試料1〜10を得た。
【0029】
2.特性の測定
〔1〕測定方法
本実施例では、以下(1)〜(4)に示す測定を行った。その詳細を次に示す。
(1)比表面積測定
吸着ガスとして窒素、キャリアガスとしてヘリウムを用いてNelsen法で測定した結果を用いてBET吸着等温式で吸着量を算出し、その3回の平均値を比表面積として求めた。
(2)平均粒径測定
ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に粉末を分散させ、レーザ回析式粒度分布測定装置で粒度分布を測定した。その結果から得られた平均粒径を測定結果として示した。
【0030】
(3)反応防止層用未焼成成形体の厚さ測定
反応防止層を成形する前の固体電解質体の厚さと、反応防止層用未焼成成形体を成形した後の反応防止層用未焼成成形体を含む固体電解体質の厚さとをデジタルマイクロメータで測定し、その測定値の差から反応防止層用未焼成成形体の厚さを測定した。
(反応防止層用未焼成成形体厚さ)=(反応防止層用未焼成成形体を成形した固体電解質体の合計厚さ)−(反応防止層用未焼成成形体の成形前の固体電解質体厚さ)
【0031】
(4)反応防止層緻密度の確認
一般にセラミックスの欠陥を確認する際に用いる、水溶性のレッドチェック液を用いて、反応防止層が緻密であるかどうかを以下の手順で確認した。
[1]水溶性のレッドチェック液を容器に用意する。
[2]反応防止層形成後の試料をレッドチェック液の中に30分浸漬する。
[3]試料を取り出し、水でよく洗う。
[4]反応防止層がレッドチェック液で染まっていないものを緻密(○)になっていると判断し、反応防止層が僅かに染まっているものはほぼ緻密(△)、反応防止層が多く染まっているものは緻密(×)でないと判断した。同時に反応防止層に穴、ひび割れなどの欠陥がないか目視で確認した。
【0032】
〔2〕測定結果
上記測定により得られた各試料1〜10についての結果の一覧を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すように、実施例である試料1〜5は、原料粉末が比表面積6〜45m2/g(特に15〜39m2/g)、平均粒径0.1〜1μm(特に0.3〜1.61μm)であり、反応防止層用成形体の厚さが1〜20μm(特に5〜16μm)であり、レッドチェック液に染まらず緻密な反応防止層が得られていることがわかった。また、ひび割れなどの欠陥も見当たらなかった。
また、固体電解質体については、焼結体(試料1参照)、仮焼成形体(試料2参照)、未焼成成形体(試料3参照)のいずれの上に反応防止層を成形しても緻密な反応防止層が得られることがわかった。
更に、反応防止層の成形法としては、試料3のスクリーン印刷法、及び試料4のテープキャスト法のいずれも、緻密な反応防止層を作製するのに適した手法であることがわかった。
【0035】
また、緻密ではない試料6〜9、及び穴の欠陥がある試料10について、走査型電子顕微鏡で観察を行った。試料6は、原料粉末の比表面積が5m2/gと小さく、粉末間の空隙がそのまま気孔となったため、反応防止層を構成する粒子同士のつながりが少なく、僅かにネック成長が起こっているだけであった。
試料7は、互いの粒子はよくつながりあっているものの、原料粉末の平均粒径が、1.1μmと大きいために多くの隙間が残り、緻密化できないことが原因であることがわかった。
【0036】
試料8はSDC原料粉末の平均粒径が0.09μmと小さく、試料9は比表面積が50m2/gと大きい。このため、反応防止層用未焼成成形体の作製中にSDC原料粉末が凝集してできた二次粒子が生じやすいことがわかった。また、二次粒子は塊状に固まりやすく隙間が大きくなるため十分に緻密にできないことが推察される。更に、反応防止層中でSDC粒子が塊状に固まっている様子が見られ、原料粉末が二次粒子を生成したためだとわかった。
【0037】
試料10は、反応防止層は緻密になっているものの、反応防止層表面に数カ所成形時の気泡が原因とされる穴が存在していた。このため、1μm以下の厚さで反応防止層を成形した場合、成形時に発生する極小さな気泡が問題となることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本製造方法によって作製された固体電解質型燃料電池の構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1;固体電解質体、21、22;反応防止層、3;燃料極、4;空気極。
Claims (6)
- 平板状固体電解質体と、該固体電解質体の一方の面に設けられた燃料極と、該固体電解質体の一方の面又は他方の面に設けられた空気極と、該固体電解質体と該燃料極及び該空気極の少なくとも一方との間に設けられたCe1−xLnxO2−δ組成(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の反応防止層と、から構成された固体電解質型燃料電池の製造方法であって、
上記反応防止層は湿式法を用いて形成され、該反応防止層の形成に用いるCe1−xLnxO2−δ原料粉末(Lnは希土類元素、0.05≦x≦0.3)の比表面積が6〜45m2/gであることを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法。 - 上記Ce1−xLnxO2−δ原料粉末の平均粒径が0.1〜1μmである請求項1記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- (1)上記固体電解質体、上記燃料極及び上記空気極、(2)該固体電解質体、該燃料極及び該空気極の製造に用いられる仮焼成形体、並びに(3)該固体電解質体、該燃料極及び該空気極の製造に用いられる未焼成成形体から選択される1種のうちの少なくとも一方の面に、上記反応防止層用の成形体をスクリーン印刷法により成形する請求項1又は2記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 上記固体電解質体、上記燃料極及び上記空気極の製造に用いられる未焼成成形体から選択される1種のうちの少なくとも一方の面に、上記反応防止層用の成形体をテープキャスト法により成形する請求項1又は2記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 上記反応防止層用の成形体の厚さが1〜20μmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 上記固体電解質用の成形体の表面に上記反応防止層用の成形体を積層した積層体を形成し、その後、該積層体を焼成する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
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